JP3879023B2 - インク容器およびインク充填装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、インクジェットプリンタで使用されるインク容器および同容器へのインク充填装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、インク容器として、可撓性を有するインク袋と、インク袋を収める剛性を有する外箱と、インク袋内に収められて袋内が負圧になるようにインク袋を押し広げるばね部材とを備えているものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のインク容器によると、インク量の減少に伴ってばね部材の弾性力が変化し、インクが空になった状態では、ばねの弾性力が大きく、インクを再充填することができなかった。
【0004】
この発明の目的は、上記実状に鑑み、再充填が容易なインク容器および同容器へのインク充填装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
この発明によるインク容器は、可撓性を有するインク袋と、インク袋を収める外箱と、インク袋内が負圧になるように付勢するばね部材とを備えているインク容器において、ばね部材が形状記憶合金製とされることにより、ばね部材は、応力が所定値を超えると、その後は、ひずみが増加しても応力がほとんど変化しない領域を有しており、ばね部材に、インクが満タンから空になるまでのばね部材のひずみ量がこの領域に含まれるように、初期応力が付与されていることを特徴とするものである。
【0006】
形状記憶合金は、応力が所定値を超えると、その後は、ひずみが増加しても応力がほとんど変化しない領域を有しており、ばね部材には、インクが満タンから空になるまでのばね部材のひずみ量がこの領域に含まれるように、初期応力が付与される。これにより、インク使用に伴ってばねの変形量が増加しても、応力は急激には増大せず、負圧はほぼ一定に保たれる。インク使用により変形した形状記憶合金製ばね部材をインク再充填により初期変形量に戻す際に、常温のままこの操作を行った場合、ひずみと応力との関係がヒステリシス線に乗った状態で変化するため、発生する負圧が変化し、インク容器としての使用が不可能となる。この問題を解消するために、インク再充填操作をばね部材を加熱しながら行うことにより、負圧が最初の状態に戻り、インク容器が再使用可能となる。
【0007】
この発明のインク容器によると、容器内のインクがなくなった場合には、充填用インクタンクに連通するインク供給針を容器のインク供給口に差し込むとともに、ばね部材を加熱することにより、形状記憶合金製のばね部材が温度上昇によって元の状態に復帰し、容器内へのインク充填を容易に行うことができる。
【0008】
ばね部材は、外箱内面とインク袋外面との間に設けられてこれらを互いに引き合う方向に付勢するものであることが好ましい。このようにすると、ばね部材を加熱しながらインクを再充填していく際に、インクがばね部材に触れることによるばね部材の温度低下を防止することができる。
【0009】
インク容器は、ばね部材への通電手段をさらに備えていることが好ましい。通電手段は、たとえば、外箱の外面に設けられた電極と、ばね部材と電極とを電気的に接続する配線とよりなるものとされる。このようにすると、通電手段の電極に電圧を印加することにより、合金製であるばね部材を容易に加熱することができる。
【0010】
この発明によるインク充填装置は、上記のインク容器にインクを再充填する装置であって、充填用インクタンクを収めた充填ケースと、インクタンクに連通するインク供給針と、充填ケースに設けられた容器載せ部と、充填ケースに設けられかつ容器載せ部にインク容器が載せられた際にこれの電極に接続される電源電極とを備えているものである。
【0011】
この発明のインク充填装置によると、インク供給針をインク容器の供給口に差し込み、かつ、充填ケースの容器載せ部にインク容器を載せることにより、ばね部材が加熱され、インク容器が負圧になって、インク容器にインクが充填される。
【0012】
この装置において、インク供給針がインク容器内に差し込まれた後に、充填ケースの電源電極とインク容器の電極とが接続されるようになされていることが好ましい。このようにすると、インク供給針がインク容器に刺さってからばね部材の加熱が行われるので、インク容器内に空気を取り込んでしまうことが少なくなる。
【0013】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。
【0014】
この発明によるインク容器(1)は、図1および図2に示すように、可撓性を有する扁平なインク袋(2)と、インク袋(2)を収める直方体の蓋(4)付きの外箱(3)と、蓋(4)内面とインク袋(2)外面との間に設けられて蓋(4)とインク袋(2)とを互いに引き合う方向に付勢する形状記憶合金製ばね部材(5)とを備えている。
【0015】
インク袋(2)には、突出状のインク吐出部(2a)が設けられており、この吐出部(2a)が外箱(3)周壁に設けられた貫通孔(3a)から露出させられている。
【0016】
ばね部材(5)は、竹の子ばねとされており、インク袋(2)には、ばね部材(5)の一端を取り付けるばね取付け板(6)が固定されている。ばね部材(5)の他端は、蓋(4)の内面に固定されている。
【0017】
蓋(4)の外面には、一対の電極(7)が設けられている。そして、ばね部材(5)の一端が一方の電極(7)に、他端が他方の電極(7)に配線(8)により接続されている。これらの電極(7)および配線(8)によってばね部材(5)への通電手段が形成され、したがって、蓋(4)の外面の電極(7)間に電圧を印加することにより、ばね部材(5)に電流が流れ、ばね部材(5)を加熱することができる。
【0018】
形状記憶合金は、応力が所定値を超えると、その後は、ひずみが増加しても応力がほとんど変化しない領域(超弾性領域)を有しており、ばね部材(5)には、インクが満タンから空になるまでのばね部材(5)のひずみ量がこの超弾性領域に含まれるように、初期応力が付与されている。
【0019】
上記のインク容器(1)によると、容器(1)内のインクがなくなった場合には、充填用インクタンクに連通するインク供給針をインク容器(1)に差し込むとともに、ばね部材(5)を加熱することにより、形状記憶合金製のばね部材(5)が温度上昇によって元の状態に復帰し、容器(1)内が負圧になるため、容器(1)内へのインク充填を容易に行うことができる。
【0020】
図2には、上記インク容器(1)にインクを再充填する際に使用されるインク充填装置(10)の1実施形態が示されている。同装置(10)は、充填用インクタンク(12)を収めた充填ケース(11)と、インクタンク(12)に連通するインク供給針(13)と、充填ケース(11)の上面に設けられた容器載せ部(14)と、充填ケース(11)に設けられかつ容器載せ部(14)にインク容器(1)が載せられた際にこれの電極(7)に接続される電源電極(15)と、電源電極(15)に電圧を印加する電源(16)とを備えている。
【0021】
電源電極(15)は、容器載せ部(14)の面よりも上方に位置させられており、インク容器(1)の電極(7)は、インク容器(1)の吐出部(2a)が設けられている面が容器載せ部(14)の面に当たった際に、電源電極(15)に接続されるように、蓋(2)の吐出部(2a)側の端部に設けられている。
【0022】
充填用インクタンク(12)は、剛性を有していてもよく、また、可撓性を有していてもよい。充填用インクタンク(12)が剛性を有している場合には、大気との連通を保持する孔がインクタンク(12)に設けられる。
【0023】
図2に示した状態からインク容器(1)を下方に移動させて、これをインク充填装置(10)の容器載せ部(14)に載せると、充填時供給口を兼ねるインク吐出部(2a)とインク供給針(13)とが合わされて、インク供給針(13)がインク容器(1)内に差し込まれる。そして、インク供給針(13)がインク容器(1)内に差し込まれた後に充填ケース(11)の電源電極(15)とインク容器(1)の電極(7)とが接続され、これにより、ばね部材(5)に電流が流れ、ばね部材(5)が加熱される。この結果、ばね部材(5)が温度上昇によって元の状態に復帰して、容器(1)内が負圧になり、容器(1)内にインクが再充填される。
【0024】
形状記憶合金製のばね部材(5)の特性とインク容器(1)内のインク量との関係は、図3に示すようになっている。
【0025】
図3(a)の■は、インク使用開始の状態を示し、インク袋(2)はインクで満タンであり、形状記憶合金製ばね部材(5)は、常温における応力とひずみの関係の超弾性領域に保たれている。図3(b)の■は、インク使用終了の状態を示し、インク袋(2)内のインクは、形状記憶合金の超弾性領域内ですべて使用し終る。図3(c)の■は、インク再充填開始の状態を示し、ばね部材(5)を加熱すると、応力とひずみの関係が変わり、その際に発生する回復力でインク袋(2)が開かれることによって、充填用インクタンク(12)からインクがインク容器(1)のインク袋(2)内に流れる。図3(d)の■は、インク充填終了の状態を示し、インク袋(2)がインクで満タンになった時点で加熱を止め、ばね部材(5)を自然冷却して常温に戻すと、ばね部材(5)のひずみは拘束されているので、図3(a)に示す応力とひずみの関係と同じ状態に戻る。こうして、インク容器(1)を繰り返して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるインク容器を示す分解斜視図である。
【図2】この発明のインク容器および同容器へのインク充填装置を示す断面図である。
【図3】ばね部材の特性(歪み−応力特性)とインク容器内のインク量との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
(1) インク容器
(2) インク袋
(3) 外箱
(4) 蓋
(5) ばね部材
(7) 電極
(8) 配線
(10) インク充填装置
(11) 充填ケース
(12) 充填用インクタンク
(13) インク供給針
(14) 容器載せ部
(15) 電源電極
Claims (6)
- 可撓性を有するインク袋と、インク袋を収める外箱と、インク袋内が負圧になるように付勢するばね部材とを備えているインク容器において、ばね部材が形状記憶合金製とされることにより、ばね部材は、応力が所定値を超えると、その後は、ひずみが増加しても応力がほとんど変化しない領域を有しており、ばね部材に、インクが満タンから空になるまでのばね部材のひずみ量がこの領域に含まれるように、初期応力が付与されていることを特徴とするインク容器。
- ばね部材は、外箱内面とインク袋外面との間に設けられてこれらを互いに引き合う方向に付勢するものである請求項1のインク容器。
- ばね部材への通電手段をさらに備えており、通電によってばね部材を加熱しながらインク再充填操作を行うことが可能とされている請求項1または2のインク容器。
- 通電手段は、外箱の外面に設けられた電極と、ばね部材と電極とを電気的に接続する配線とよりなる請求項3のインク容器。
- 請求項4のインク容器にインクを再充填する装置であって、充填用インクタンクを収めた充填ケースと、インクタンクに連通するインク供給針と、充填ケースに設けられた容器載せ部と、充填ケースに設けられかつ容器載せ部にインク容器が載せられた際にこれの電極に接続される電源電極とを備えているインク充填装置。
- インク供給針がインク容器内に差し込まれた後に、充填ケースの電源電極とインク容器の電極とが接続されるようになされている請求項5のインク充填装置。
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