JP3877878B2 - 熱処理炉 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗料,印刷インキ,接着剤を乾燥させる乾燥炉のように加熱することにより有害成分が発生するワークを加熱処理する熱処理炉に関し、特に塗装用乾燥炉に用いて好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば自動車ボディの塗膜を乾燥する塗装用乾燥炉(熱処理炉)は、塗料に含まれる有機溶剤などの有害成分がそのまま炉外へ排出されないように、これらの有害成分を含む排ガスを炉外へ導出して排ガス処理装置で浄化処理した後、その浄化ガスを外部へ放出すると共に、これによって炉内温度が低下しないように高温空気を炉内ヘ供給している。
【0003】
排ガス処理装置としては、排ガスに含まれる有害成分を700〜800℃の温度下で直接燃焼させて浄化処理するものと、350〜450℃の温度下で触媒燃焼させて浄化処理するものがある。
そして、触媒燃焼タイプの排ガス処理装置は、直接燃焼タイプ型のものに比して、処理温度が低いことからエネルギー消費量が少なく、小型に形成することができるというメリットがある。
【0004】
しかし、電着塗膜を乾燥させる乾燥炉で発生する排ガスのように有害成分の濃度が高くヤニ成分が多い場合には、触媒燃焼タイプの排ガス処理装置を用いると触媒が目詰まりしたり触媒毒の作用により短期間で処理能力が低下するため、エネルギー消費量の多い大型の直接燃焼タイプの排ガス処理装置を使用せざるを得ない。
このため最近では、省エネ型の直接燃焼タイプの排ガス処理装置が提案されており、これは、排ガス処理装置で発生する熱を蓄熱層に回収して再利用するもので、一般に蓄熱型排ガス処理装置と称されている(特開平5−332523号,同332524号,同66005号公報参照)。
【0005】
この蓄熱型の排ガス処理装置は、排ガスに含まれる有害成分を直接燃焼させて浄化処理する排ガス処理室に対して、高温の浄化ガスの熱を回収する蓄熱層を配した複数の蓄熱室が並列に設けられており、一の蓄熱室から排ガスを導入して他の蓄熱室から浄化ガスを排出すると共に、その導入側及び排出側を順次交互に切り換えて連続的に浄化処理を行うようになされている。
【0006】
そして、この場合に、各蓄熱室の蓄熱層は、排ガス処理室から高温の浄化ガスを排出する際にその排ガスの熱を蓄えると共に、炉内から送給された比較的低温の排ガスを導入する際に当該蓄熱層の熱を放熱して排ガスを予熱するように成されている。
このように、蓄熱型の排ガス処理装置は、排ガスを浄化するために消費したエネルギーを回収して再利用しているので、熱の利用効率がかなり高く、省エネ効果も高い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、全長100m以上もある塗装用乾燥炉から排出される排ガスの処理量は膨大であり、排ガス処理装置の負荷が大きく、しかも、この排ガスに含まれる有害成分を直接燃焼により浄化処理するためには800℃前後の高温に維持する必要があることから、熱の利用効率の優れた蓄熱型排ガス処理装置を使用して省エネを図っても、エネルギーの絶対的な消費量はまだ多く、そのランニングコストも嵩むという問題がある。
また、直接燃焼タイプの排ガス処理装置は、排ガス処理室や個々の蓄熱室も大きく装置全体が大型になり、設備費が嵩むだけでなく、広い設置スペースが必要となるという問題があった。
【0008】
一方、工業用の気体原動機としてガスタービンエンジンが知られているが、これは、有効回転出力を速度型膨張機であるタービンから取り出すもので、燃焼室で発生した高温高圧空気でタービンを回転させ、そのタービンで圧縮機を回転させて、燃焼室への酸素消費量を増大させると共に、燃焼室内の圧力を上昇させる。
これにより、さらに大きな有効回転出力を得て、その回転出力を利用して発電機を駆動したり、他の動力源として用いたりするものである。
そして、このガスタービンエンジンの燃焼室は、高い圧力を得るために比較的小型に形成されており、本発明者らの実験によれば、運転中の燃焼室内温度は900℃前後の均一な温度分布になるため、排ガスを浄化処理する条件に適していることが判明し、また、タービンを通過した後の空気も、500〜600℃前後の高温に維持されていた。
【0009】
そこで本発明は、このような知見に基づき、ガスタービンエンジンの技術を利用することにより熱処理炉の排ガス処理装置を小型化し、熱処理炉全体の設備費を軽減し、ランニングコストを節約することを技術的課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために、本発明は、炉内へ高温空気を導入する熱風供給系と、炉内で発生した有害成分を含む排ガスを排ガス処理装置で浄化処理する排ガス処理系を備え、前記熱風供給系に、炉内から排ガス処理装置へ送給すべき排ガスの一部を強制的に熱風発生装置に還流させて再び炉内へ供給する熱風循環系が形成された熱処理炉において、前記熱風発生装置が、前記熱風循環系に介装された燃焼室と、燃焼室から炉内に供給される高温高圧空気により回転駆動されるタービンと、当該タービンの回転力を電気エネルギーに変換する発電機と、前記タービンの回転軸に取り付けられて回転されることにより外気を加圧して前記燃焼室に供給する圧縮機を備えたことを特徴としている。
【0011】
本発明によれば、炉内に高温空気を供給する熱風供給系と、炉内で生じた排ガスを排ガス処理装置で浄化処理する排ガス処理系と、前記排ガス処理装置に送給すべき排ガスの一部を前記熱風供給系を介して再び炉内に送給する熱風循環系を備えている。
【0012】
熱風供給系に介装された熱風発生装置は、外気が加圧されて燃焼室に供給されるので、その分、酸素供給量が多くなり、燃焼が促進されて燃焼室内が高温になり、この燃焼室に、炉内で生じた排ガスの一部を送給すれば、排ガスに含まれる可燃性の有害成分が燃焼されて浄化され、しかも高温の浄化ガスとして排出されるので、この浄化ガスが熱処理炉の熱源となる高温空気として再び炉内に送給される。
【0013】
したがって、燃焼室に排ガスを還流させる分、排ガス処理装置で処理すべき排ガス処理量を減少させることができるので、小型の排ガス処理装置でも十分に排ガスを処理することができ、その設備費,ランニングコストが低減される。
【0014】
また、燃焼室で生成された高温高圧空気でタービンが駆動されて圧縮機が回転されるので、外気を加圧供給するためのエネルギーを別途供給する必要がない。
さらに、タービンにより発電機を駆動させて、電力会社から購入するコストより安価に電気エネルギーを得ることができるので、これを利用することにより省エネを図り、または、余剰電気エネルギーがある場合にはこれを電力会社に売却することによりその利益をコストに還元することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図1は本発明に係る熱処理炉の一例として塗装用乾燥炉を示すフローシートである。
【0016】
本例の塗装用乾燥炉(熱処理炉)1は、炉内2へ高温空気を導入する熱風供給系3と、炉内2で発生した有害成分を含む排ガスを排ガス処理装置4で浄化処理する排ガス処理系5と、前記排ガス処理装置4へ送給すべき排ガスの一部を再び炉内2へ供給する熱風循環系6を備えている。
【0017】
熱風供給系3は、外気採入口8inから採り入れた外気を熱風発生装置8で高温に加熱して、その高温空気を熱風供給ダクト7を介して送給し、乾燥炉1に形成された輻射加熱ゾーンや対流加熱ゾーンなどの各ゾーンごとに高温空気を循環するゾーン循環系2Cを介して炉内2に送給されるように成されている。なお,ゾーン循環系2Cには、ファン2f,フィルタ2sが介装され、熱風送風ダクト7はファン2fの吸込口側に接続されている。
【0018】
この熱風発生装置8は、高温高圧空気を生成する燃焼室9と、当該燃焼室9で生成された高温高圧空気により回転駆動されるタービン10と、当該タービン10の回転力を電気エネルギーに変換する発電機11と、前記タービン10の回転軸10aに取り付けられて回転され、外気を燃焼室9に加圧供給する圧縮機12とを備えている。
この燃焼室9は、空気を加熱するバーナ9aを備えると共に、加熱された空気を熱膨張させて高い圧力を得るために比較的小型に形成されており、運転中の燃焼室9内は、排ガスを浄化処理する条件に適した900℃前後の均一な温度分布になる。
【0019】
また、タービン10を通過した後の空気温度は500〜600℃程度に維持されていることから、この熱は塗装用乾燥炉1の熱源として用いても余りある十分な温度を有している。
したがって、熱風供給ダクト7には、タービン10を通過した高温空気の余剰の熱を回収する熱交換器7aが介装され、熱交換器7aで回収された熱は熱媒送給管7bを介して任意の熱機器の熱源として利用できる。
【0020】
熱風循環系6は、炉内2で生成された排ガスを前記燃焼室9内に還流させる還流ダクト13と、前記熱風供給系3の熱風供給ダクト7からなる。
そして、還流ダクト13にはターボブロア,コンプレッサなどの送風機14が介装されており、炉内2で発生した排ガスを燃焼室9の圧力に抗して所要量だけ強制的に送給できるように成されている。
【0021】
また、排ガス処理系5は、炉内2で生成された排ガスの一部を排ガス送給ダクト3inを介して排ガス処理装置4に導入して浄化処理し、その浄化ガスを浄化ガス送給ダクト3out を通して外部に排出し、または、必要に応じてさらにその一部を炉内2に還流するように成されている。
【0022】
この排ガス処理装置4は、例えば蓄熱型の直接燃焼タイプのものが用いられており、蓄熱層21A,21Bを配した二つの蓄熱室22A,22Bが、排ガスを700〜900℃程度に加熱してその排ガスに含まれる可燃性有害成分を直接燃焼させることにより浄化処理する排ガス処理室23に対して並列に設けられている。
【0023】
各蓄熱室22A,22Bには、前記排ガス送給ダクト3inから分岐形成された排ガス導入ダクト24A,24Bと、排ガス処理室23で浄化された浄化ガスを排出する浄化ガス送給ダクト3out に合流接続された浄化ガス排出ダクト25A,25Bと、前記排ガス送給ダクト3inに介装された送風ファン26の吸込口側に接続されたパージダクト27A,27Bが夫々配管されている。
なお、28は、パージダクト27A,27Bを介して、各蓄熱室22A,22Bから排出される残留排ガスを一時的に貯留するストレージタンクである。
【0024】
この排ガス処理装置4によれば、一の蓄熱室22A(22B)から排ガスを導入して他の蓄熱室22B(22A)から浄化ガスを排出すると共に、その導入側及び排出側を順次交互に切り換えて連続的に浄化処理を行う。
この場合に、各蓄熱室22A,22Bの蓄熱層21A,21Bは、排ガス処理室23から高温の浄化ガスを排出する際にその排ガスの熱を蓄えると共に、炉内2から送給された低温の排ガスを導入する際に当該蓄熱層21A,21Bの熱を放熱して排ガスを予熱するように成されている。
【0025】
以上が本発明の一例構成であって、次にその作用を説明する。
まず、熱風発生装置8を起動して燃焼室9のバーナ9aを点火し、必要に応じて始動モータ(図示せず)によりタービン10を回転させると、圧縮機12が同時に回転され、燃焼室9内に外気を加圧供給されるので、酸素供給量が多くなると同時に、燃焼室9内の圧力が高まって900℃前後の高温高圧空気が生成されることとなる。
そして、燃焼室9から高温高圧空気が排出されると、その圧力でタービン10が回転駆動されるので、以後はタービン10を回転させる動力は必要としない。
【0026】
また、タービン10が回転すると発電機11が起動され、熱エネルギーが電気エネルギーに変換されて発電される。
発明者らの実験によれば、燃焼室9を900 ℃程度に維持したときに、その高温高圧空気でタービン10を回転することにより、発電機11から約 300kWhの電力が得られ、タービン10の通過後も空気の温度は 570℃程度であった。
そして、その空気の熱を熱交換器7aで回収した後も、 300℃の高温空気を炉内2へ送給することができた。
【0027】
次いで、このように炉内2に高温空気を供給して所定の乾燥温度まで昇温させ、自動車ボディの塗膜を乾燥させると、塗料に含まれる有機溶剤などが蒸発して有害成分を含んだ排ガスが生ずる。
炉内2で発生する排ガスは、その体積が9000〜 12000Nm3 /h, 温度が 170〜200 ℃程度であり、このうちの5000〜6000Nm3 /hの排ガスが熱風循環系6の還流ダクト13を介して送風機14により熱風発生装置8の燃焼室9に強制的に送給される。
【0028】
このとき燃焼室9内は、 900℃程度の略均一な温度分布に維持されているので、排ガスを浄化処理する条件として適しており、炉内2で生じた排ガスを燃焼室9に供給することにより、その排ガスに含まれる可燃性の有害成分が浄化される。
したがって、燃焼室9で浄化された浄化ガスには、有害成分が含まれていないので、これを高温空気として炉内2に送給しても塗膜に悪影響を与えることがない。
【0029】
また、熱風供給系3及び熱風循環系6により、熱風発生装置8から炉内2に供給される高温空気の総量は、炉内2から排出される排ガスの総量とバランスするように9000〜 12000Nm3 /h程度に設定され、乾燥炉1の出入口から排ガスや高温空気が漏洩したり、外気が流入しないようになっている。
なお、炉内2から熱風発生装置8の燃焼室9に還流される排ガスの量が5000〜6000Nm3 /hであるから、圧縮機12により燃焼室9に加圧供給される外気の量は4000〜6000Nm3 /h程度である。
【0030】
また、排ガス処理系5の排ガス処理装置4で浄化処理される排ガスの量は、熱風発生装置8へ還流されない残りの4000〜6000Nm3 /h程度となる。
したがって、排ガス処理装置4で浄化処理すべき排ガス量は、排ガスの総量の1/2程度で済み、排ガス処理装置4は、処理容量が従来の1/2程度の小型のものを用いることができ、その分、設備費,ランニングコストを低減できる。
【0031】
さらに、熱風発生装置8の発電機11により300kWhの電力が出力され、その発電コストは電力会社へ支払う電気代よりも安価なので、これを自分で利用すれば、その分電気代を節約することができると同時に、省エネを図ることができ、さらに、余剰電力を電力会社に売却することによりその利益をコストに還元することができる。
【0032】
なお、上述の説明では、排ガス処理装置4として、蓄熱型の直接燃焼タイプを使用した場合について説明したが、これに限らず、蓄熱型の触媒燃焼タイプのものや、非蓄熱型の直接燃焼タイプ,触媒燃焼タイプなど任意の排ガス処理装置を採用し得る。
【0033】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、熱風供給系に、ガスタービンエンジン型の熱風発生装置が介装されており、その燃焼室内は900℃前後の略均一な温度分布に維持され、排ガスに含まれる有害成分を燃焼させて浄化処理する条件に適しているので、炉内で生じた排ガスの一部を熱風発生装置に還流して浄化することができ、また、その浄化ガスを再び炉内へ供給して、その熱源として使用することができるという効果がある。
【0034】
さらに、排ガス処理装置で処理すべき排ガスの一部が、熱風発生装置に送給されて浄化処理されるので、排ガス処理装置の排ガス処理量が減少され、排ガス処理装置は小型のもので足り、その設備費,ランニングコストを低減することができるという大変優れた効果がある。
【0035】
しかも、熱風発生装置は、高温空気で駆動されるタービンと同軸に設けた圧縮機により、外気を燃焼室へ圧縮供給するようにしているので、少ない燃料で燃焼室を高温に維持することができ、また、タービンにより発電機を駆動させて、電力会社から購入するコストより安価に電気エネルギーを得ることができるので、これを利用することにより省エネを図り、または、余剰電気エネルギーがある場合にはこれを電力会社に売却することによりその利益をコストに還元することができるという優れた効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る熱処理炉である塗装用乾燥炉を示すフローシート。
【符号の説明】
1・・・塗装用乾燥炉(熱処理炉) 2・・・炉内
3・・・熱風供給系 4・・・排ガス処理装置
5・・・排ガス処理系 6・・・熱風循環系
7・・・熱風供給ダクト 8・・・熱風発生装置
9・・・燃焼室 10・・・タービン
10a・・回転軸 11・・・発電機
12・・・圧縮機 13・・・還流ダクト
14・・・送風機
Claims (1)
- 炉内へ高温空気を導入する熱風供給系と、炉内で発生した有害成分を含む排ガスを排ガス処理装置で浄化処理する排ガス処理系を備え、前記熱風供給系に、炉内から排ガス処理装置へ送給すべき排ガスの一部を強制的に熱風発生装置に還流させて再び炉内へ供給する熱風循環系が形成された熱処理炉において、
前記熱風発生装置が、前記熱風循環系に介装された燃焼室と、燃焼室から炉内に供給される高温高圧空気により回転駆動されるタービンと、当該タービンの回転力を電気エネルギーに変換する発電機と、前記タービンの回転軸に取り付けられて回転されることにより外気を加圧して前記燃焼室に供給する圧縮機を備えたことを特徴とする熱処理炉。
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