JP3876277B2 - 複合材製パイプ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複合材製パイプに関し、更に詳しくは接合部を改良した繊維強化プラスチック製パイプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にガラス繊維や炭素繊維等の高強度の繊維を使用して強化したプラスチックである複合材製パイプ(以下FRPパイプという)は、他の構造物と接合して使用される場合が多いが、その場合はFRPパイプの端部にプラスチック製あるいは金属製のフランジを接着固定してこのフランジと構造物との間をボルト締めする方法が行なわれている。また、FRPパイプどうしの接合にはフランジどうしをボルト締めしている。
【0003】
更に、FRPパイプの端部の内径を接合するパイプの外径に合わせて直径を拡開し、これを前記パイプに嵌合して接着剤で接合する方法が行なわれている。
【0004】
【発明の解決すべき課題】
前記のようにFRPパイプの端部にフランジを接着する方法においては、フランジ部分まで繊維層を設けることができないためにFRPパイプとフランジとの接合強度があまり高くなく、接合強度を高めるためにはフランジにパイプ部分と接合する短管部を持つ特種な構造にしなければならない。しかし、このようなフランジを使用してもパイプの軸方向に作用する張力に対して十分に対抗することができない。
【0005】
一方、接合するパイプに合わせてFRPパイプの端部を拡大する場合は、この接合部に合わせてFRPパイプの端部を拡大する必要があり、正確な寸法のパイプ部分を形成することが困難である上に製造コストが高くなり、更に製品管理上に問題がある。
【0006】
近来、比較的深海域での海洋開発が活発となっており、その一つにライザー管を用いた石油掘削がある。このライザー管は長さが2000mにも達する場合があり、ライザー管が金属管である場合はその重量が大きく、従って大きな軸方向に張力(軸力)が発生するために厚肉の金属管を使用しなければならないという問題がある。そこでこの大きな軸力の発生を軽減するためにFRPパイプを使用する方法が検討されている。
【0007】
FRPパイプは金属管に比較して軽量であることから、金属管に比較して軸力を大幅に低減することが可能であるが、接合部の構造に問題があり、その強度を向上させなければならないという問題がある。
本発明は、端部にフランジ、特に金属製フランジを簡単に取付けることができるFRPパイプを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
A)本発明は前記した従来技術の問題点を解決することを目的としており、パイプ部の両端に金属製の短管を配置し、前記パイプ部と短管の端面を含む表面部分に繊維層をフイラメントワインデイング法によって巻回形成した複合材製パイプ体であって、前記短管は、中央部の大径部と、その両側の端面に向かって球状あるいは円錐状に縮小した第1の縮小部と第2の縮小部とを形成すると共に、前記第1の縮小部側にネジ部を設け、更に前記第2の縮小部は前記パイプ部に接続する寸法に形成し、前記短管の第1の縮小部における繊維層は、編組ないし配列した状態で該第1の縮小部の端面の表面を覆って形成し、前記パイプ部に発生した軸力を、前記第1の縮小部を覆う繊維層に伝達し、この第1の縮小部において半径方向の力に変換して前記第1の縮小部を前記繊維層によって圧縮抱持するように構成しており、更に、前記短管にフランジ体を螺合して固定したことを特徴とする
【0009】
B)パイプ部の両端に金属製の短管を配置し、前記パイプ部と短管の端面を含む表面部分に繊維層をフイラメントワインデイング法によって巻回形成した複合材製パイプ体であって、前記短管は、中央部の大径部を、その両側の端面に向かって球状あるいは円錐状で縮小した第1の縮小部と第2の縮小部とを形成すると共に、前記第1の縮小部側にネジ部を設け、更に前記第2の縮小部は前記パイプ部に接続する寸法に形成し、前記第1の縮小部に管状部を前記繊維層を超えて突出して形成し、前記短管の第1の縮小部における繊維層は、編組ないし配列した状態で該第1の縮小部の端面の表面を覆って形成すると共に前記パイプ部に発生した軸力を、前記第1の縮小部を覆う繊維層に伝達し、この第1の縮小部において半径方向の力に変換して前記第1の縮小部を前記繊維層によって圧縮抱持するように構成しており、更に、前記第1の縮小部に設けた管状部にフランジ部を溶接したことを特徴とする
【0010】
C)前記複合材製パイプは、海水中に浸漬した状態で流体を輸送する用途に使用されることを特徴とする
【0011】
本発明は、フイラメントワインデイング法によるFRPパイプ、つまり複合材製パイプの構造において、パイプ体の両端にフランジ体を固定する構造として、特殊な形状の金属製の短管を配置し、これを繊維層によって包み込んで全体を強化した複合材パイプを提供するものである。
このフランジ体を固定するための手段は、マンドレル上に複合材パイプ体を構成する工程において、パイプ部の両端に金属製の短管を配置しておき、そしてフイラメントワインデイングによってフイラメント(長繊維)を全体的にスパイラル巻きする際に前記パイプ部と短管の端面に至るまで繊維を巻き、短管を構成している第1の縮小部の表面を繊維層を編組ないしは配列した状態に形成しておく点に特徴がある。
金属製短管は、中央部に大径部を配置し、その両側を円弧状あるいは円錐状、更にこれらに類似の形状に縮小したもので、パイプ部と反対側に第1の縮小部を配置し、第2の縮小部をパイプ部側に配置し、パイプ部と第1の縮小部の表面までフイラメントワインデイングによってスパイラル状に繊維層を巻いている。
従って、この短管の少なくとも第1の縮小部は編組あるいは配列した状態の繊維層で包み込まれており、パイプ部に発生する軸力を第1の縮小部の全体に伝達する。
金属製の短管は、後述する図に示すように、恰もラッキョウのような形状をしており、第1の縮小部側が太い球状を形成し、第の2縮小部側がなだらかな円錐ないし球状を形成している。そしてフイラメントワインデイング法によって繊維を巻回する際には、中央のパイプ部と共にパイプ部の両端の第1の縮小部まで連続して巻回していくのである。
FRPパイプの中央部のパイプ部の繊維層と第1の縮小部を包む繊維層とは連続してフイラメントワインデイングにより形成されていることから、パイプ部を形成している繊維層に軸力が発生すると、この軸力は第1の縮小部の繊維層まで伝達され、この第1の縮小部において分散されて半径方向に変換されて分散されるのである。この半径方向に分散された力によって、恰も繊維層が拡げられるような状態となり、短管とハイプ部との接着強度がさほど大きくなくても、大きな軸力に耐えることになるのである
【0012】
【発明の実施の形態】
次に図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明に係る複合材製パイプの端部の断面図であって、炭素繊維やガラス繊維あるいはアラミド繊維等の高強度の繊維とプラスチックとからなる複合材製パイプPのパイプ部1の端部の内径部に金属製の短管2が埋込まれ、この短管2を包んで繊維層からなる厚肉部3による接合部4が形成されている。
【0013】
前記短管2は中間部に大径部2aを持ち、この大径部2aの一方のパイプ部1の端部側に断面が小さな円弧状の第1の縮小部2bを、パイプ部1の主体となる側に外形が円錐状の第2の縮小部2cをそれぞれ形成し、この短管2の内径とパイプ部1内径とを合致させている。
【0014】
前記短管2の各部の作用を説明すると、パイプ部1の端部側に形成した第1の縮小部2bは、繊維層で形成した厚肉部3を介してパイプ部1に発生する軸力を半径方向に力に変換してこの第1の縮小部2bを圧縮するように作用させ、そしてこの軸力を分散させて負担する部分であり、重要な役目をしている。
【0015】
従って、軸力が作用するとこの第1の縮小部2bに恰も編組ないしは配列した繊維層が引っかかり、そして拡げられるような状態となり、短管2と複合材からなるパイプ部1との接着強度がさほど大きくなくても、大きな軸力に耐えることができるのである。
【0016】
そしてこの実施の形態においては、大径部2aから前記パイプ部1の内径部まで縮小する第2の縮小部2cはなだらかな円錐形の表面を有しており、この第2の縮小部2cで変換した半径方向の力をこの部分でパイプ部1側に向かう軸力に変換しており、この意味においてこの第2の縮小部2cは大径部2aからパイプ部1に円滑に軸力が発生するような外形を採用するのが良い。
【0017】
この第2の縮小部2cは図1に示すように円錐形の他、断面が外面に僅かに膨出する円弧状のものであっても良い。
更に前記厚肉部3は、短管2の外周部を囲んで形成した繊維層からなる部分であって、パイプ部1の端部において、第1の縮小部2bの部分の作用で半径方向に変換された軸力を、その肉厚を調節して負担するようにしており、従って、この肉厚の調節によって接合部4を短く形成することができる。なお、図1においてはこの厚肉部3の外形を円柱状の部分と円錐状の部分とで形成しているが、この部分は円柱状の部分からパイプ部1にわたってなだらかに曲面が形成されるようにしても良い。
【0018】
前記短管2の第1の縮小部2b側の内径部にはネジ部5が形成されており、フランジ部6aと短管部6bからなるフランジ体6の、前記短管部6bの外周面に形成したネジ部6cを前記ネジ部5内に螺合して接合部4の端部にフランジ体6を固定している。そしてこのフランジ体6を接続する図示しないパイプのフランジ体と対面させて両者の間をボルト締めによって連結するようになっている。
【0019】
次に、前記複合材製パイプPの製造工程を図2乃至図5を参照して説明する。図2に示すように、マンドレル10の両端に金属製の短管2A,2Bを嵌合する。そして図3に示すようにマンドレル10を図示しないフイラメントワインデイング装置のスピンドルに取付けて回転させながら、前記短管2Aと2Bとこれらの間のマンドレル10の周面上にフイラメントワインデイング法によってガラス繊維や炭素繊維等の補強繊維11を、トラバース装置11aを介して矢印のようにトラバース運動させながら巻回して所定の厚みの繊維層11aを形成する。
【0020】
次に、図3のフイラメントワインデイング工程を経て繊維層11aを囲んでいたプラスチックの未反応物を、常法にしたがって加熱等によって重合させて図4に示すように複合材製パイプPの原型を製造する。
【0021】
次いでこのパイプPの原型の中央部に配置されているマンドレル10を抜き取って所定の長さの複合材製パイプPを製造する。なお、前記図2の準備段階が終了すると、マンドレル10と短管2A、2Bの外表面にプラスチックが付着しないように離型剤の層ないしはこれと同様な作用をするシート材等の層を形成しておく。
【0022】
図4においてマンドレル10を複合材製パイプPより抜いて図5の状態とすると、このパイプPの両端部には、図1に示したように短管2A、2Bが内蔵されており、この短管2A、2Bのネジ部5にフランジ体6の短管部6bのネジ部6cを螺合して固定してパイプPの両端にフランジ部6aを固定する。
【0023】
図6は本発明の別の実施の形態を示す複合材製パイプPの接合部4の断面を示すものであって、短管20の中央部に大径部20aが形成され、これの両側に断面が円弧状の第1の縮小部20bと第2の縮小部20cがなだらかに形成され、更にこれらの第1と第2の縮小部20b、20cの端部より管状部20dと20eがそれぞれ延長されている。
【0024】
そして図7に示すフイラメントワインデイング工程により前記短管20の表面を包むようにパイプ部1Aの膨張された端部1Bが形成され、この部分が図1に示す接合部4に対応している。そしてパイプPよりマンドレル10を抜き取ったのち前記管状部20d側にフランジ体6Aを嵌合し、溶接部6dによって固定している。
【0025】
なお、図6に示した実施の形態においては第1の縮小部20bと第2の縮小部20cが断面円弧状に形成されているが、この部分は前記のように円錐形や断面円弧状と円錐形との複合した形状であっても良い。
本発明の複合材製パイプによれば、パイプPの端部に金属製の短管2、20が内蔵されており、この短管2、20を利用してフランジ体6、6Aを簡単に固定することができる。
【0026】
しかも、この短管2、20は、中央部に大径部2a、20aを、パイプPの端部側に第1の縮小部2b、20bを、パイプ部1、1A側に第2の縮小部2c、20cをそれぞれ形成しているので、これらの第1の縮小部2b、20bによって補強材としての繊維層を介してパイプPに作用する軸力を、半径方向の力に変換して分散負担することができるために、かなり大きな軸力に耐えることができる。
【0027】
従って、本発明に係る複合材製パイプによれば、石油掘削用の長尺なライザー管等に有効に利用することができる。
【0028】
【発明の効果】
本発明は、繊維層で補強した複合材製パイプの端部に金属製の短管を内蔵させ、この短管は少なくとも前記パイプの端部側に縮小部を形成しており、そしてこの短管を覆うように繊維層を形成している。
従って前記縮小部によってパイプに発生する軸力を、半径方向の力に変換して分散支持するように形成し、更に前記短管の内面に形成したネジ部、もしくは前記縮小部より延長した管状部に別体のフランジ体を固定するようにしている。
【0029】
従って本発明によれば、複合材製パイプの端部に内蔵配置した短管を利用して簡単にフランジ体を取付けることができる。
この短管は、パイプの端部側に形成した縮小部によってこのパイプの軸力を半径方向の力に変換して分散して負担するので、複合材製パイプでありながら、大きな軸力に耐えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】複合材製パイプの端部の接合部の断面図である。
【図2】複合材製パイプの製造工程を示す斜視図である。
【図3】複合材製パイプの製造工程を示す斜視図である。
【図4】複合材製パイプの製造工程を示す斜視図である。
【図5】製造した複合材製パイプの両端にフランジ体を螺合する状態を示す斜視図である。
【図6】前記の実施の形態に係わる複合材製パイプの端部の断面図である。
【図7】図6に示す複合材製パイプの製造工程の説明図である。
【符号の説明】
P 複合材製パイプ
1、1A パイプ部 2、2A、2B 短管
2a 大径部 2b 第1の縮小部 2c 第2の縮小部 3 厚肉部
4 接合部 5 ネジ部 6、6A フランジ体 6a フランジ部
6b 短管部 6c ネジ部 6d 溶接部

Claims (3)

  1. パイプ部の両端に金属製の短管を配置し、前記パイプ部と短管の端面を含む表面部分に繊維層をフイラメントワインデイング法によって巻回形成した複合材製パイプ体であって、
    前記短管は、中央部の大径部と、その両側の端面に向かって球状あるいは円錐状に縮小した第1の縮小部と第2の縮小部とを形成すると共に、前記第1の縮小部側にネジ部を設け、更に前記第2の縮小部は前記パイプ部に接続する寸法に形成し、前記短管の第1の縮小部における繊維層は、編組ないし配列した状態で該第1の縮小部の端面の表面を覆って形成し、
    前記パイプ部に発生した軸力を、前記第1の縮小部を覆う繊維層に伝達し、この第1の縮小部において半径方向の力に変換して前記第1の縮小部を前記繊維層によって圧縮抱持するように構成しており、更に、前記短管にフランジ体を螺合して固定したことを特徴とする複合材製パイプ。
  2. パイプ部の両端に金属製の短管を配置し、前記パイプ部と短管の端面を含む表面部分に繊維層をフイラメントワインデイング法によって巻回形成した複合材製パイプ体であって、
    前記短管は、中央部の大径部を、その両側の端面に向かって球状あるいは円錐状で縮小した第1の縮小部と第2の縮小部とを形成すると共に、前記第1の縮小部側にネジ部を設け、更に前記第2の縮小部は前記パイプ部に接続する寸法に形成し、前記第1の縮小部に管状部を前記繊維層を超えて突出して形成し、
    前記短管の第1の縮小部における繊維層は、編組ないし配列した状態で該第1の縮小部の端面の表面を覆って形成すると共に前記パイプ部に発生した軸力を、前記第1の縮小部を覆う繊維層に伝達し、この第1の縮小部において半径方向の力に変換して前記第1の縮小部を前記繊維層によって圧縮抱持するように構成しており、
    更に、前記第1の縮小部に設けた管状部にフランジ部を溶接したことを特徴とする複合材製パイプ。
  3. 前記複合材製パイプは、海水中に浸漬した状態で流体を輸送する用途に使用されることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の複合材製パイプ。
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