JP3876084B2 - アクティブ振動台 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大型供試体の非弾性実験を精度良く実現することが出来る振動台に関する。
(用語の説明)
(a)「質量比」
質量比とは、供試体の質量mを振動台の質量Mで割った値のことをいう。
【0002】
したがって、質量比=m/M となる。
【0003】
【従来の技術】
従来の技術を図8〜図10に示す。
(従来の技術その1)
図8に従来の振動台(1)の構成を示す。
【0004】
図8に示す従来の振動台では、振動台の質量Mのみを考慮した制御則によるオープンループ制御をを行っている。
【0005】
そのため、モデル化誤差、製作誤差等により、理論と実現象とのズレは、そのまま振動台上の波形歪となって現れる。
【0006】
そして、質量比=m/Mが大きくなるに従い、前記制御則で採用されていた振動台の質量Mとのズレが大きくなるため、振動台の波形歪が現れる。
(従来の技術その2)
図9〜図10に従来の振動台(2)、(3)の構成を示す。
【0007】
図9〜図10に示す従来の振動台では、実験の前に試加振を行い、供試体を含んだ全体の振動特性を取得する。
【0008】
これで得られた振動パラメータを制御に使用するため、質量比(m/M)の大小に影響されずに、安定した制御をすることが出来る。
【0009】
更に、振動台の応答波形をセンシングすることにより、理論と実現象の誤差を補償するため(すなわち、フィードバック制御をやっているため)精度のよい加振実験を実現することが出来る。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の技術には、次のような問題がある。
(1)従来の技術その1(図8の振動台)の場合
図8の振動台では、その振動台における許容積載荷重に近い供試体を用いて実施する場合、供試体の質量や非線形挙動の影響が振動台システムに波及するため、所要の振動台上の加速度を精度良く再現できなくなる(波形歪の発生)という問題がある。
(2)従来の技術その2(図9〜図10の振動台)の場合
図9〜図10の振動台では、破壊実験、座屈実験等の非弾性実験をする場合、本試験中に供試体の振動特性が変化する。
【0011】
しかし、制御則内で使用されている振動パラメータは試験前の線形領域における試加振データであるため、コントローラは正しくシステムをとらえていない。その結果、振動台の波形歪が発生する。
【0012】
ただし、図9〜図10の振動台においても、質量比=m/Mが非常に小さい場合には、供試体の振動特性変化は振動台制御に大きな影響を与えないので、波形歪は発生しない。線形の範囲ならば、ノイズの範囲としてカバーすることが出来る。
【0013】
従って、上記のような問題が発生するのは、質量比=m/Mがある程度以上、例えば、0.05〜0.1以上の大きい場合である。
(3)制御理論の改善によるソフト的改良
ハード的には、図9〜図10の振動台と全く同様であるが、ソフト的に制御則を改善することにより、問題を解決しょうとしているのが現在の振動台メーカの方向である。
【0014】
代表的な制御則改善の1つは、制御理論としてH制御を採用することである。H制御は系の振動特性の変化を、基本振動特性からのズレとして位置付け、この量が不確定性を有することを前提として、制御則を構築しょうとするものである。
【0015】
しかし、現状では、質量比(m/M)が大きく、かつ、地震入力のような短時間非定常入力のシステムに対しては、十分な効果(改善)が見られない場合が多い。
【0016】
それとともに、既存のH制御等を実施していない振動台に、波形歪改善の点から、上記のようなソフト的改良を追設することになる場合、既存の制御則との整合性を含めて制御システムの見直しが必要になる。
【0017】
本発明は、これらの問題を解決することができる振動台、すなわち、アクティブ振動台を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
発明に係るアクティブ振動台は、(A)振動台(テーブル)1と、供試体2と、加速度センサ3と、歪ゲージ(またはロードセル)4と、慣性質量5と、第1アクチュエータ11と、第1コントローラ21と、第2アクチュエータ12と、第2コントローラ22とからなり、(B)前記供試体2と加速度センサ3と慣性質量5は振動台1に搭載され、前記歪ゲージ(またはロードセル)4は、供試体2と振動台(テーブル)1の間に装着され、前記第1アクチュエータ11は、振動台(テーブル)1と地上の固定物体9の間に装着され、前記第2アクチュエータ12は、振動台1の上に移動可能に搭載された慣性質量5と振動台1の間に装着され、(C)前記第1コントローラ21は、加速度センサ3からの信号を入力し、第1アクチュエータ11に制御信号を出力し、(D)前記第2コントローラ22は、歪ゲージ(またはロードセル)4からの信号を入力し、線形モデルによる支持部反力F1の計算(S1)と,計測値による支持部反力F2の計算(S2)と、F1とF2の差の計算(S3)と、アクティブ制御力F3の計算(S4)と、制御信号の計算(S5)を行い、第2アクチュエータ12に制御信号を出力することを特徴とする
【0019】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態を図1に示す。
【0020】
図1は、第1の実施形態に係るアクティブ振動台(慣性反力利用方式)の説明図である。
【0021】
第1の実施形態に係るアクティブ振動台は、振動台(テーブル)1と、供試体2と、加速度センサ3と、歪ゲージ(またはロードセル)4と、慣性質量5と、第1アクチュエータ11と、第1コントローラ21と、第2アクチュエータ12と、第2コントローラ22と、からなり、
前記供試体2と加速度センサ3と慣性質量5は振動台1に搭載され、
前記歪ゲージ(またはロードセル)4は、供試体2と振動台(テーブル)1の間に装着され、
前記第1アクチュエータ11は、振動台(テーブル)1と地上の固定物体9の間に装着され、
前記第2アクチュエータ12は、振動台1の上に移動可能に搭載された慣性質量5と振動台上の固定物体6の間に装着され、
前記第1コントローラ21は、加速度センサ3からの信号を入力し、第1アクチュエータ11に制御信号を出力し、
前記第2コントローラ22は、歪ゲージ(またはロードセル)4からの信号を入力し、線形モデルによる支持部反力F1の計算(S1)と,計測値による支持部反力F2の計算(S2)と、F1とF2の差の計算(S3)と、アクティブ制御力F3の計算(S4)と、制御信号の計算(S5)を行い、第2アクチュエータ12に制御信号を出力する。
【0022】
第1コントローラ21と、第2コントローラ22の内部での信号処理は、アナログ式でも、ディジタル式でもよい。
【0023】
慣性反力利用方式は、建築物の地震、風に対するアクティブ制振方法として採用され、多くの実績を有している。
(第比較例
本発明の第比較例を図2に示す。
【0024】
図2は、第比較例に係るアクティブ振動台(直接加力方式)の説明図である。
【0025】
比較例に係るアクティブ振動台は、振動台(テーブル)1と、供試体2と、加速度センサ3と、歪ゲージ(またはロードセル)4と、第1アクチュエータ11と、第1コントローラ21と、第2アクチュエータ12と、第2コントローラ22とからなり、前記供試体2と加速度センサ3は振動台1に搭載され、前記歪ゲージ(またはロードセル)4は、供試体2と振動台(テーブル)1の間に装着され、前記第1アクチュエータ11および第2アクチュエータ12は、前記振動台(テーブル)1と地上の固定物体9の間に装着され、前記第1コントローラ21は、加速度センサ3からの信号を入力し、第1アクチュエータ11に制御信号を出力する。
【0026】
前記第2コントローラ22は、歪ゲージ(またはロードセル)4からの信号を入力し、線形モデルによる支持部反力F1の計算(S1)と,計測値による支持部反力F2の計算(S2)と、F1とF2の差の計算(S3)と、アクティブ制御力F3の計算(S4)と、制御信号の計算(S5)を行い、第2アクチュエータ12に制御信号を出力する。
【0027】
第1コントローラ21と、第2コントローラ22の内部での信号処理は、アナログ式でも、ディジタル式でもよい。
【0028】
比較例に係るアクティブ振動台は、振動台テーブルへ、もっとも効率的な加力を期待できる振動台である。
(第比較例
本発明の第2の比較例を図3に示す。
【0029】
図3は、第比較例に係るアクティブ振動台の説明図である。
【0030】
比較例に係るアクティブ振動台は、振動台(テーブル)1と、供試体2と、加速度センサ3と、歪ゲージ(またはロードセル)4と、第1アクチュエータ11と、第1コントローラ21と、第2コントローラ22とからなり、前記供試体2と加速度センサ3は振動台1に搭載され、前記歪ゲージ(またはロードセル)4は、供試体2と振動台(テーブル)1の間に装着され、前記第1アクチュエータ11は、前記振動台(テーブル)1と地上の固定物体9の間に装着され、前記第2コントローラ22は、歪ゲージ(またはロードセル)4からの信号を入力し、線形モデルによる支持部反力F1の計算(S1)と,計測値による支持部反力F2の計算(S2)と、F1とF2の差の計算(S3)と、アクティブ制御力F3の計算(S4)を行い、第1コントローラ21に制御信号を出力し、前記第1コントローラ21は、加速度センサ3からの信号と第2コントローラ22からの信号を入力し、第1アクチュエータ11に制御信号を出力する。
【0031】
第1コントローラ21と、第2コントローラ22の内部での信号処理は、アナログ式でも、ディジタル式でもよい。
【0032】
したがって、次のように作用する。
【0033】
本発明のアクティブ振動台によれば、供試体が本試験中に非弾性領域に突入しても、振動台の制御システム側からみれば、供試体は弾性領域(線形振動領域)にあると錯覚させるように振動台に外部からの力を作用させることができる。
【0034】
そのため、従来の振動台制御システムには全く手を加えないで(影響を与えないで)、その振動台にとって、大規模供試体の非弾性実験を精度良く行うことができる。
(シミュレーションによる確認)
図4はアクチュエータ部から強制変位させられる振動台のモデルを示す図、
図5はシミュレーションにおける供試体固有振動数の変化の仮定を示す図、
図6はシミュレーションにおける理想的な波形を示す図、
図7はシミュレーション結果示す図である。
【0035】
以下においては、予備試加振により線形振動の範囲における全系の振動特性が十分に把握されているものとして、これにアクチュエータ部から強制変位させられる振動台モデル(図4〜図5)を用いて検討する。
【0036】
諸定数は次のように仮定する。
【0037】
振動台系の固有振動数 fT =50Hz
供試体の固有振動数fP
初期fP0=30Hz とし
1.1 秒後に座屈して、fP =0.7fP0になったものと仮定(図5)
アクチュエータ部から強制変位
正弦波加振とする(加振周波数:2Hz)
質量比=m/M=5.0
シミュレーションにおける理想的な波形を図6に、シミュレーション結果を図図7に示す。
【0038】
図6および図7の縦軸は加速度(gal=cm/s2 )に示し、横軸は時間 (sec)を示す。
【0039】
図6(A)は、供試体が無い時の振動台(テーブル)上の加速度波形(理想的な加速度波形)を示し、
図6(B)は、供試体がある時に、振動台(テーブル)に、図6(A)と同じ加速度波形(理想的な加速度波形)を与えた時の供試体の非線形応答加速度波形を示す。
【0040】
図7(A)および図7(B)はアクティブ振動台の場合の波形を示し、
図7(C)および図7(D)は通常の振動台の場合の波形を示す。
【0041】
アクティブ振動台の場合は、図7(A)および図7(B)に示すように、振動台(テーブル)上に加速度歪みの影響もなく、供試体は理想的な状態(図6)と同様の応答波形を示している。
【0042】
通常の振動台の場合は、図7(C)および図7(D)に示すように、供試体の座屈発生(t=1.1秒)の影響を受けて、振動台波形は1.1秒以降大きく歪む。そのため、供試体の応答波形も理想的な状態(図6)とは大きく異なることになる。
【0043】
理想的な簡略振動モデルを使ったシミュレーションではあるが,図6〜図7に示すように、本発明のアクティブ振動台は成立するという見通しが得られた。
【0044】
【発明の効果】
本発明は前述のように構成されているので、以下に記載するような効果を奏する。
(1)従来の振動台制御システムには全く手を加えないため、既存の振動台(自社製、他社製、油圧式、電磁式、を問わず)への追設が可能になる。
【0045】
そのため、振動台の能力アップを比較的簡単に実現することが出来る。
(2)非弾性実験対象の供試体重量が仕様として設定された場合にも、従来の振動台に比べ、振動台重量の軽減化を促進することが出来る。
(3)終局強度実験用の最大供試体重量が仕様として設定された場合にも、従来の振動台に比べ、振動台重量の大幅な軽減化を促進することが出来る。
(4)そのため、低コストの振動台を実現をすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る振動台の構成を示す図。
【図2】 本発明の第比較例に係る振動台の構成を示す図。
【図3】 本発明の第比較例に係る振動台の構成を示す図。
【図4】アクチュエータ部から強制変位させられる振動台モデルを示す図。
【図5】シミュレーションにおける供試体固有振動数の変化の仮定を示す図。
【図6】シミュレーションにおける理想的な波形を示す図。
【図7】シミュレーション結果示す図。
【図8】従来の振動台(1)の構成を示す図。
【図9】従来の振動台(2)の構成を示す図。
【図10】従来の振動台(3)の構成を示す図。
【符号の説明】
1 …振動台(テーブル)
2 …供試体
3 …加速度センサ
4 …歪ゲージ(またはロードセル)
5 …慣性質量
6 …振動台上の固定物体
9 …地上の固定物体
10…アクチュエータ
11…第1アクチュエータ
12…第2アクチュエータ
20…コントローラ(制御器)
21…第1コントローラ(制御器)
22…第2コントローラ(制御器)
S1…線形モデルによる支持部反力F1の計算
S2…計測値による支持部反力F2の計算
S3…F1とF2の差の計算
S4…アクティブ制御力F3の計算
S5…制御信号の計算
t …時間

Claims (1)

  1. (A)振動台と、供試体と、加速度センサと、歪ゲージまたはロードセルと、慣性質量と、第1アクチュエータと、第1コントローラと、第2アクチュエータと、第2コントローラとからなり、(B)前記供試体と加速度センサと慣性質量は前記振動台に搭載され、
    前記歪ゲージまたはロードセルは、供試体と振動台の間に装着され、
    前記第1アクチュエータは、前記振動台と地上の固定物体の間に装着され、
    前記第2アクチュエータは、前記振動台の上に移動可能に搭載された前記慣性質量と振動台の間に装着され、
    (C)前記第1コントローラは、前記加速度センサからの信号を入力し、前記第1アクチュエータに制御信号を出力し、(D)前記第2コントローラは、前記歪ゲージまたはロードセルからの信号を入力し、線形モデルによる支持部反力F1の計算と,計測値による支持部反力F2の計算と、F1とF2の差の計算と、アクティブ制御力F3の計算と、制御信号の計算を行い、前記第2アクチュエータに制御信号を出力することを特徴とするアクティブ振動台
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