JP3874855B2 - 音像定位システム - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、劇場やホールなどにおいて、演技者や歌手といった話者が移動しながら演じるとか、あるいは、オーケストラで異なる楽器が独奏されるなどといった場合に、話者などの音源の位置に、スピーカで形成される音像を一致させて、それらの音源の位置を観客が容易に認識できながら楽しむことのできる音像定位システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
上述のように音源の位置が変更されるような場合、殊に、ミュージカルや歌舞伎やステージ劇といった演劇では、その演技者の動作を見ながら楽しむものであるため、観客は、どの方向に音源があるかを判別できなければ、楽しさが減少してしまう。
【0003】
そのため、従来では、図7の概略平面図に示すように(ここでは、一例としてスピーカを5個設け、話者を二人とした場合で説明する)、ステージ1を5個の第1ないし第5のエリアZ1,Z2,Z3,Z4,Z5に分割し、それらの第1ないし第5のエリアZ1,Z2,Z3,Z4,Z5内それぞれに第1ないし第5のスピーカS1,S2,S3,S4,S5を配置している。
【0004】
そして、話者(音源)AまたはBがどのエリアにあるかを認識し、そのエリアを制御装置に入力指示し、話者AまたはBの位置に対応するエリアのスピーカから他のスピーカよりも優先して音声を出力させ、観客に優先出力したスピーカ側を向かせることにより音像を定位させていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
例えば、図7に示すように、ステージ1の観客Gから遠い側の袖から第1の話者Aが声を出しながら第4のエリアZ4側の位置A’に移動した場合、移動のいかんにかかわらず、第5のエリアZ5に位置するために、第5のスピーカS5から音声が出力され、観客Gは第5のスピーカS5側を、すなわち、第5のエリアZ5側を向くことになる。
【0006】
しかしながら、第1の話者Aに次いで、第3のエリアZ3に位置する第2の話者Bが声を出したようなとき、第3のエリアZ3に対応する第3のスピーカS3から音声が出力され、観客Gは第3のスピーカS3側を向く。
【0007】
ところが、第3のスピーカS3側の先には、移動後の第1の話者A’が見え、実際には第2の話者Bが声を出しているにもかかわらず、第1の話者A’が声を出しているように感じられてしまう。このように、従来例の場合、観客の位置によっては音像定位が不正確になる欠点があった。
【0008】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたものであって、請求項1に係る音像定位システムは、多数のスピーカを観客席に分散して設けた場合でも、音像定位を良好に行うことができるようにすることを目的とし、そして、請求項2に係る発明の音像定位システムは、音源のステージでの奥行き方向の移動をも感知できるようにすることを目的とし、更に、請求項3に係る音像定位システムは、音源からの出力音声をより明瞭に聴かせることができるようにすることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明の音像定位システムは、上述のような目的を達成するために、ステージ上での音源の位置を特定する音源位置特定手段と、観客席を複数に分けた観客領域それぞれに対応させて設けられて音源からの音声を拡声するスピーカと、音源位置特定手段によって特定された音源の位置と観客領域の所定箇所に設定された基準位置との第1の距離から、基準位置とスピーカとの第2の距離を差し引いた距離差を算出する距離差算出手段と、その距離差算出手段によって算出された距離差に応じて、音源からの音声が距離差分を伝播するに要する設定時間分だけスピーカの音声出力タイミングを遅らせる出力遅延手段とを備えて構成する。
【0010】
(削除)
【0011】
(削除)
【0012】
(削除)
【0013】
(削除)
【0014】
また、請求項2に係る発明の音像定位システムは、上述のような目的を達成するために、請求項2に係る発明の音像定位システムにおいて、
音源位置特定手段によって特定された音源の位置とステージ上またはステージの前部近傍に設定した基準位置との距離を算出する奥行き距離算出手段と、その奥行き距離算出手段によって算出された距離に応じて、音源からの音声が基準位置に到達するまでに減衰する振幅の減衰量を算出する振幅減衰量算出手段と、その振幅減衰量算出手段によって算出された振幅の減衰量分だけ音源での出力音声に対して減衰させた音声、あるいは、その減衰音声を設定量増幅させた音声をスピーカそれぞれから出力する補完音声出力手段とを備えて構成する。
【0015】
また、請求項3に係る発明の音像定位システムは、上述のような目的を達成するために、請求項1または2に係る発明の音像定位システムにおいて、
スピーカを天井に設けて構成する。
【0016】
【作用】
請求項1に係る発明の音像定位システムの構成によれば、観客領域それぞれにおいて、音源から出力された音声と、観客領域それぞれに対応するスピーカから出力された音声とを観客領域それぞれの基準位置に同時に到達させるようにして、多数のスピーカを三次元的に設ける場合にも音像定位を行うことができる。
【0017】
(削除)
【0018】
(削除)
【0019】
(削除)
【0020】
(削除)
【0021】
(削除)
【0022】
(削除)
【0023】
(削除)
【0024】
(削除)
【0025】
いま、図4に示すように、第1ないし第11のスピーカS1,…,S11が観客席の上方の天井側に分散して設けられているような場合に、例えば、話者Aがステージ1の第1のスピーカS1に近い位置で音声を出力しているとして、第6、第7および第8の観客領域Z6,Z7,Z8での音像定位について考察する。 第6、第7および第8の観客領域Z6,Z7,Z8それぞれには、個別に対応する第6、第7および第8のスピーカS6,S7,S8が設けられ、かつ、各観客領域の所定箇所に第6、第7および第8の基準位置P6,P7,P8が設定されている。
【0026】
基準位置とスピーカの位置との第2の距離は互いに等しい。そのため、出力タイミングは話者Aの位置と基準位置との第1の距離の変化に依存する。その距離差分を話者Aからの音声が伝播するに要する時間分だけスピーカの音声出力タイミングを遅らせるから、話者Aからの音声Wが第8の基準位置P8に到達したときに、同時に、第8のスピーカS8から出力された音声V8も第8の基準位置P8に到達する。ところが、その時点では、第1の距離が短い、第6および第7のスピーカS6,S7からは音声V6,V7が上方から出力され、観客席の床に吸収されている。この第6および第7のスピーカS6,S7からの音声V6,V7は、それぞれ第6および第7の基準位置P6,P7に到達したときに観客に話者Aの音声Wとして聴かれる。この音声の伝播状態を見れば明らかなように、第7の基準位置P7では、音声V6が音声V7より一瞬早く観客の耳に入ってから、その時間差によって観客は話者Aの方向から音声が聴こえたと認識する。同様に、第7のスピーカS7からの音声V7は、第8のスピーカS8からの音声V8よりも先行して第8の基準位置P8に到達する。この結果、第8の基準位置P8付近の観客は、その時間差によって観客は話者Aの方向から音声が聴こえたと認識するのである。更に、その直後に第8のスピーカS8からの音声V8も第8の基準位置P8に到達するから、音声V6,V7,V8の合成波はあたかも話者Aの位置から拡がった音波の様に観客面を伝播して行くのである。
【0027】
また、請求項2に係る音像定位システムの構成によれば、前述のように音源の方向を認識した上で、音源の位置とステージ上またはステージの前部近傍に設定した奥行き基準位置との距離に応じて、音源からの音声が奥行き基準位置に到達するまでに減衰する振幅の減衰量を求め、各スピーカからは、振幅の減衰量分だけ音源での出力音声に対して減衰させた音声、あるいは、その減衰音声を設定量増幅させた音声を出力させ、ステージの奥行き方向への移動に伴って、観客が聴く音声を変化させることができる。
【0028】
また、請求項3に係る音像定位システムの構成によれば、スピーカから出力される音声を観客領域の上方から基準位置に到達させることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0030】
図1は、本発明に係る音像定位システムの実施例に至る前の第1開発例を示す全体概略構成図であり、ステージ1の前面前方の右側、中央、左側の3箇所に第1、第2および第3のスピーカS1,S2,S3が設けられている。
【0031】
また、ステージ1の前面側の3箇所に右側から順に第1、第2および第3の固定マイク2a,2b,2cが設けられるとともに、ステージ1の上方に、ステージ1全体を映すビデオカメラ3が設けられている。ステージ1には、右側から順に音源としての第1、第2および第3の話者A,B,Cが存在し、それぞれが第1、第2および第3のワイヤレスマイクA,B,C(以下、話者と同じとして同一符号を付す。)を携帯している。
【0032】
前記第1、第2および第3のワイヤレスマイクA,B,Cそれぞれからの音は受信アンテナ4に集音されるように構成されている。受信アンテナ4それぞれは、ワイヤレスマイク受信器5を介して音方向制御回路6に接続されている。第1、第2および第3の固定マイク2a,2b,2cそれぞれはミキシングコンソール7を介して音方向制御回路6に接続されている。また、第1、第2および第3のスピーカS1,S2,S3それぞれと音方向制御回路6とがパワーアンプ8a,8b,8cを介して接続されている。
【0033】
一方、ビデオカメラ3はパーソナルコンピュータ9に接続され、ビデオカメラ3で映されたステージ1上の画像をディスプレー装置10に表示するように構成されている。パーソナルコンピュータ9には、ディスプレー装置10に表示された画像を見ながら第1、第2および第3の話者A,B,Cのステージ1上での位置を特定する、音源位置特定手段としてのビジュアルコントローラ11が接続され、かつ、パーソナルコンピュータ9に音方向制御回路6が接続されている。音方向制御回路6としては、パーソナルコンピュータ9内に組み込むものであっても良い。ビジュアルコントローラ11には、ステージ1の左右方向の位置を特定する3個のダイヤル11aと、ステージ1の奥行き方向の位置を特定する3個のスライダー11bとが設けられている。
【0034】
音方向制御回路6には、図2のブロック図に示すように、距離算出手段12と、音声出力遅延手段13と、振幅減衰量算出手段14と、補完音声出力手段15とが備えられている。
【0035】
距離算出手段12は、ビジュアルコントローラ11によって特定されるとともにワイヤレスマイク受信器5からの信号によって識別される第1、第2および第3の話者A,B,Cのステージ1上の位置に基づき、声を出している話者と、予め決まっている第1、第2および第3のスピーカS1,S2,S3それぞれとの距離を算出するように構成されている。
【0036】
すなわち、第1の話者Aが声を出している場合を考え、その位置を三次元座標で(xA ,yA ,zA )とし、同様に、予め決まっている各スピーカの位置を(xi ,yi ,zi )とすると、第1の話者Aとスピーカとの距離rAiは、
rAi=√[(xA −xi )2 +(yA −yi )2 +(zA −zi )2]……(1)で求められる。第2および第3の話者B,Cそれぞれについても同様にして求められる。
【0037】
音声出力遅延手段13は、上述距離算出手段12によって算出された距離に応じて、第1、第2および第3の話者A,B,Cからの音声が第1、第2および第3のスピーカS1,S2,S3それぞれに到達するに要する時間分だけ第1、第2および第3のスピーカS1,S2,S3それぞれの音声出力タイミングを遅らせるように構成されている。
【0038】
すなわち、音速をc(m/sec )、第1の話者Aからの音声がスピーカに到達するに要する時間をti とすれば、
ti =rAi/c(sec )……(2)
で求められる。第2および第3の話者B,Cそれぞれについても同様にして求められる。
【0039】
振幅減衰量算出手段14では、音源からの音声が第1、第2および第3のスピーカS1,S2,S3それぞれに到達するまでに減衰する振幅の減衰量を算出するように構成されている。
【0040】
すなわち、第1の話者Aからの音声が各スピーカに到達したときに減衰する音圧の振幅APAiは距離rAiに反比例するため、その振幅APAi[単位:デシベル(dB)]は、
APAi=−20log10(rAi)[dB]……(3)
で求められる。第2および第3の話者B,Cそれぞれについても同様にして求められる。
【0041】
補完音声出力手段15では、振幅減衰量算出手段14によって算出された振幅の減衰量分を補完し、第1、第2および第3の話者A,B,Cそれぞれの位置での出力音声に対して振幅の減衰量分だけ減衰させた音声をパワーアンプ8a,8b,8cを介して第1、第2および第3のスピーカS1,S2,S3それぞれから出力するように構成されている。したがって、観客は、図8に示すように、第1、第2および第3の話者A,B,Cそれぞれの位置に第1、第2および第3のスピーカS1,S2,S3を集合させた状態の音声を聴くことができる。なお、ここでは、上述の減衰させた音声を設定量増幅させた音声を第1、第2および第3のスピーカS1,S2,S3それぞれから出力するように構成しても良い。この増幅すべき設定量は、スピーカの設置個数やステージ1やホールの規模などに応じて決定すれば良い。
【0042】
また、補完音声出力手段15には、音声出力遅延手段13からの遅延データが入力され、第1、第2および第3のスピーカS1,S2,S3それぞれから所定時間音声出力タイミングを遅らせて、前述の所定振幅の音声を第1、第2および第3のスピーカS1,S2,S3それぞれから出力するようになっている。
【0043】
以上の構成により、観客がどの位置に存在しようとも、前述したのと同様に、話者とスピーカとの距離と、観客とスピーカとの距離との和が最も短くなるように位置するスピーカからの音が最初に観客に到達し、音像定位を良好に行うことができる。各スピーカから、減衰した振幅量だけ補完された音声を受け、話者の生あるいはそれに近い音を明瞭に聴くことができる。
【0044】
図2では省略しているが、上述第1開発例において、司会とか歌などで、第1、第2および第3の固定マイク2a,2b,2cを使用する場合には、前述同様に、その第1、第2および第3の固定マイク2a,2b,2cそれぞれが音源となり、各スピーカに対する距離が算出されて同様に処理される。
【0045】
図3は具体構成を示す第2開発例の全体平面図であり、ステージ1の前部に8個のスピーカS1,S2,…,S8が設けられ、更に、ホールの両壁それぞれに、指向性を後方側にする状態で、7個づつスピーカS9,S10,…,S15、S16,S17,…,S22が設けられている。
【0046】
この第2開発例によれば、ホール内のより多くの観客に、話者の生あるいはそれに近い音を明瞭に聴かせることができる。なお、天井の中央箇所に、ステージ1から離れる方向に所定間隔を隔ててスピーカを設置するとか、また、天井に、ステージ1から離れる方向に所定間隔を隔てるとともにステージ1と平行な方向に複数個づつ並べてスピーカを設置するとか、更には、ホールHの床にスピーカを設置するなど、ホールの規模などに応じて適宜スピーカの個数を増減し、話者の生音あるいはそれに近い音をより良好に明瞭に聴かせることができるようにするのが好ましい。
【0047】
図4の(a)は第1実施例を示す全体概略側面図、(b)は第1実施例を示す全体概略平面図であり、ステージ1の前部の上方に5個の第1ないし第5のスピーカS1,S2,S3,S4,S5が並設され、そして、観客席の天井に、ステージ1から遠近する方向に所定間隔を隔てて、それぞれ3個づつの第6ないし第8のスピーカS6,S7,S8、ならびに、第9ないし第11のスピーカS9,S10,S11が並設されている。
【0048】
そして、観客席が、前記第1ないし第11のスピーカS1,…,S6,…,S11それぞれを個別に対応させるように11個の第1ないし第11の観客領域Z1,…,Z6,…,Z11に分けられ、各観客領域それぞれにおいて、その全体の中心となる箇所に第1ないし第11の基準位置P1,…,P6,…,P11が設定されている。この観客領域は、スピーカの指向性を考慮しながら仮想的に設定されるものであり、その個数ならびにパターンは適宜設定すれば良い。また、基準位置も各領域の中心に限定されるものではない。
【0049】
図5のブロック図に示すように、パーソナルコンピュータ9に、距離差算出手段16と出力遅延手段17とを備えたコントローラ(図示せず)が接続され、第1開発例と同様の構成により、音源位置特定手段によって特定された音源としての話者Aの位置がパーソナルコンピュータ9を介して距離差算出手段16に入力されるようになっている。コントローラはパーソナルコンピュータ9に外付けされるものでも良いが、このコントローラを無くして、距離差算出手段16と出力遅延手段17の構成プログラムをパーソナルコンピュータ9内に組み込むものでも良い。
【0050】
距離差算出手段16には、第1ないし第11の基準位置P1,…,P6,…,P11と話者Aの位置との第1の距離から、予め定められる第1ないし第11の基準位置P1,…,P6,…,P11とそれぞれに対応する第1ないし第11のスピーカS1,…,S6,…,S11との第2の距離を差し引いた距離差を算出する第1ないし第11の距離差算出手段16a,…,16f,…,16kが備えられている。この距離の計算は、第1開発例と同様にして行う。
【0051】
出力遅延手段17には、第1ないし第11の距離差算出手段16a,…,16f,…,16kで算出された距離差に応じて、その距離差分を話者Aからの音声が伝播するに要する時間が求められる(この時間の計算も、第1開発例と同様にして行う)とともに、その時間分だけ第1ないし第11のスピーカS1,…,S6,…,S11それぞれの音声出力タイミングを遅らせる第1ないし第11の出力遅延手段17a,…,17f,…,17kが備えられている。
【0052】
以上の構成により、前述したように、観客席の天井といった高所などに多数のスピーカが設置されている場合でも、話者Aの方向を正しく認識できながら、話者Aの音声が第1ないし第11の基準位置P1,…,P6,…,P11に到達したときに、それぞれに対応する第1ないし第11のスピーカS1,…,S6,…,S11から出力された音声を同時的に到達させることができ、話者Aの音声を明瞭に聴くことができる。
【0053】
図6は、本発明に係る音像定位システムの第2実施例を示すブロック図であり、パーソナルコンピュータ9に奥行き制御手段18が接続され、第1開発例と同様の構成により、音源位置特定手段によって特定された音源としての話者Aの位置がパーソナルコンピュータ9を介して奥行き制御手段18に入力されるようになっている。奥行き制御手段18はパーソナルコンピュータ9に外付けされるものでも良いが、このコントローラを無くして、その構成プログラムをパーソナルコンピュータ9内に組み込むものでも良い。
【0054】
奥行き制御手段18には、奥行き距離算出手段19と、振幅減衰量算出手段20と、補完音声出力手段21とが備えられている。
奥行き距離算出手段19では、予め、例えば、ステージの最後尾とかあるいは最前端縁など、ステージ上またはステージの前部近傍に設定された奥行き基準位置と話者Aの位置とを入力し、両者間の距離、すなわち、話者Aの奥行き距離を算出するように構成されている。奥行き基準位置は、ステージの奥行き方向に直交する基準線として設定され、話者Aの位置から基準線までの垂線の長さを奥行き距離として算出するようになっている。
【0055】
振幅減衰量算出手段20では、奥行き距離算出手段19によって算出された距離に応じて、話者Aからの音声が奥行き基準位置としての基準線に到達するまで、すなわち、算出された奥行き距離分を伝播するまでに減衰する振幅の減衰量を算出するようになっている。
【0056】
補完音声出力手段21では、話者Aそれぞれの位置での出力音声に対して、振幅減衰量算出手段20によって算出された振幅の減衰量分だけ減衰させた音声を、第1ないし第11のスピーカS1,…,S6,…,S11から出力するようになっている。このとき上述の減衰させた音声を設定量増幅させた音声を各スピーカそれぞれから出力するように構成しても良い。この増幅すべき設定量は、スピーカの設置個数やステージ1やホールの規模などに応じて決定すれば良い。奥行き距離算出手段19および補完音声出力手段21には、ワイヤレスマイク受信器5からの信号が入力され、複数の話者がいるときに、音声を出力している話者がどの話者かを判別するとともに、その話者の出力音声を入力するようになっている。他の構成は第1実施例と同じであり、その説明は省略する。
【0057】
上記開発例および実施例では、音源である話者の位置を特定するのに、ビジュアルコントローラ11を用いて人為的に行っているが、音源位置特定手段として、次のように、音源である話者の位置を自動的に特定できるように構成しても良い(特開平7−308000号参照)。
【0058】
(1) ステージ全面に所定の配置で多数分散して磁気センサを設け、一方、話者に磁石などの磁性体を携帯させ、磁気によってステージ上での話者の位置を特定できるように構成する。
【0059】
(2) 話者に非可聴域の設定周波数の音波を発信する音波発振器を携帯させ、一方、ステージの所定の三箇所に音波発振器から発信された音波を受信する受信器をを設け、音波発振器からの音波の発信時と、各受信器での音波の受信時との時間差に基づき、話者と受信器との距離を求め、その距離からステージ上での話者の位置を特定できるように構成する。
【0060】
(3) 話者とは別の所定の複数箇所に第1の集音マイクを設けるとともに、話者に第2の集音マイクを設け、第2の集音マイクが音声信号を受信した時点と、第1の集音マイクが音声信号を受信した時点との時間差により、話者と第1の集音マイクとの距離を求め、その距離からステージ上での話者の位置を特定できるように構成する。
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る発明の音像定位システムによれば、スピーカと話者と観客との三次元的な配置関係を考慮してスピーカの出力タイミングを遅らせるから、多数のスピーカを観客席に分散して設けた場合でも、音像定位を良好に行うことができるようになった。
しかも、観客領域に対応するスピーカからの音声と音源の音声とが同時的に到達するから、音声を明瞭に聴くことができるようになった。
【0062】
(削除)
【0063】
(削除)
【0064】
(削除)
【0065】
また、請求項2に係る発明の音像定位システムによれば、音源のステージ上での奥行き方向での移動をも、観客が聴く音声の大きさの変化によって認識できるから、舞台の自然感をより一層向上できるようになった。
【0066】
また、請求項3に係る発明の音像定位システムによれば、スピーカからは、観客席の上方から音声を出力するから、例えば、観客席の横側方にスピーカを設けるような場合であれば、基準位置とそこから離れた位置とでスピーカからの出力音声の到達時期に違いが出やすいが、観客席の上方から面的な拡がりでスピーカからの出力音声を同時的に到達させることができ、音源からの出力音声をより一層明瞭に聴かせることができ、劇場やホールなどの広い場所においてもより一層優れた効果を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る音像定位システムの実施例に至る前の第1開発例を示す全体概略構成図である。
【図2】 ブロック図である。
【図3】 第2開発例を示す全体平面図である。
【図4】 (a)は第1実施例を示す全体概略側面図、(b)は第1実施例を示す全体概略平面図である。
【図5】 ブロック図である。
【図6】 第2実施例を示すブロック図である。
【符号の説明】
1…ステージ
11…ビジュアルコントローラ
16a〜16k…第1〜第11距離差算出手段
17a〜17k…第1〜第11出力遅延手段
19…奥行き距離算出手段
20…振幅減衰量算出手段
21…補完音声出力手段
A…音源としての第1のワイヤレスマイク(第1の話者)
B…音源としての第2のワイヤレスマイク(第2の話者)
C…音源としての第3のワイヤレスマイク(第3の話者)
P1〜P11…基準位置
S1〜S11…スピーカ
Z1〜Z11…観客領域
Claims (3)
- ステージ上での音源の位置を特定する音源位置特定手段と、
観客席を複数に分けた観客領域それぞれに対応させて設けられて前記音源からの音声を拡声するスピーカと、
前記音源位置特定手段によって特定された前記音源の位置と前記観客領域の所定箇所に設定された基準位置との第1の距離から、前記基準位置と前記スピーカとの第2の距離を差し引いた距離差を算出する距離差算出手段と、
前記距離差算出手段によって算出された距離差に応じて、前記音源からの音声が距離差分を伝播するに要する設定時間分だけ前記スピーカの音声出力タイミングを遅らせる出力遅延手段とを備えたことを特徴とする音像定位システム。 - 請求項1に記載の音像定位システムにおいて、
音源位置特定手段によって特定された音源の位置とステージ上またはステージの前部近傍に設定した奥行き基準位置との距離を算出する奥行き距離算出手段と、
前記奥行き距離算出手段によって算出された距離に応じて、前記音源からの音声が前記奥行き基準位置に到達するまでに減衰する振幅の減衰量を算出する振幅減衰量算出手段と、
前記振幅減衰量算出手段によって算出された振幅の減衰量分だけ前記音源での出力音声に対して減衰させた音声、あるいは、その減衰音声を設定量増幅させた音声をスピーカそれぞれから出力する補完音声出力手段とを備えてある音像定位システム。 - 請求項1または2に記載の音像定位システムにおいて、
スピーカを天井に設けてある音像定位システム。
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