JP3873122B2 - 有機修飾したシリカ多孔体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、両親媒性の有機官能基を有するシラン化合物により表面修飾されたシリカ多孔体に関するものであり、更に詳しくは、親水的な官能基としてポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン又はポリオキシブチレン基を、疎水的な官能基としてアルキレン基又はビニレン基から選択される1種を有しているシラン化合物でシリカ多孔体の表面修飾を行うことで高い構造安定性を付与し、修飾密度を変化させることで孔径を制御せしめ、更には、有機官能基の親水性又は疎水性を制御することで、水蒸気の吸着又は脱着の起こる相対圧を自在に制御せしめた、有機修飾したシリカ多孔体の製造方法及びそのシリカ多孔体に関するものである。
本発明の有機修飾したシリカ多孔体は、例えば、有機官能基の特異な物性を利用した吸湿・吸水作用を有する機能的部材、シリカ多孔体表面近傍に存在する疎水的な孔内空間を利用した特殊反応場、親水的な孔内空間を利用した特殊反応場への応用が期待できる多機能性シリカ多孔体等として有用である。
【0002】
【従来の技術】
一般に、シリカゲルに代表されるシリカ多孔体は、吸着剤等に利用されており、また、例えば、オクタデシル基で表面修飾した材料は、クロマトグラムのカラム充填剤等に広く利用されている。また、シリカ多孔体の特殊な例として、例えば、有機分子集合体を利用して均一なメソ孔を付与した材料があり、その材料は、大きな比表面積や細孔容積を有するという特徴を備えている。これらの材料は、比較的大きい分子の吸着や拡散を可能にするものであり、大容量の吸着材料や特殊反応場として大いに期待されている。また、それらの均一な孔径の存在は、応答速度が速い調湿材料としての用途にも有効である。
【0003】
シリカ多孔体の細孔構造をより有効に利用するために、触媒活性点を導入する目的で、ケイ素の一部をアルミニウム等の異種元素で置換した多孔質材料を合成することは、シリカ多孔体に、選択的吸着特性や特異的触媒特性を付与するための重要な試みである。
シリカ多孔体の表面には、シラノール基(Si−OH)が存在し、その分布や密度は、それ自体孔表面の性質を支配する重要な因子である。また、表面修飾を行う際にもシラノール基との反応が利用されるため、修飾後の表面特性にも大きな影響を及ぼす。シリル化剤による修飾は、最も期待できる反応であり、カラム充填剤として実用化されている表面修飾シリカゲルは、シリカ多孔体の表面改質を利用した代表的な材料である。
【0004】
シリカ多孔体表面に、例えば、オクタデシル基の様な有機基を固定化し、吸着質との親和性を制御することで、より効率的な吸着特性や分離特性を付与することができる。
均一メソ孔を有するシリカ多孔体においても、表面修飾体に関する研究開発が数多く行われており、アミノ基の存在を利用した錯体合成場の構築や、メルカプト基と重金属との親和性を利用した有害重金属の溶液中からの除去等、様々な応用が期待されている(例えば、非特許文献1〜3参照)。
【0005】
【非特許文献1】
P. Sutra, D. Brunel, Chemical Communications, 1996, 2485
【非特許文献2】
J. F. Diaz et al., MRS Symosium Proceedings, 1996, 431, 89
【非特許文献3】
T. Kimura et al., Langmuir, 1999, 15, 2794
【0006】
しかしながら、これまでの表面修飾シリカ多孔体は、孔表面に存在する有機官能基の疎水性が強く、極端に疎水化した表面特性を有する多孔質材料しか得ることができなかった。従って、シリカ多孔体自身のもつ水蒸気吸着特性は、表面修飾によって消失してしまうという問題がある。
また、シリカ多孔体自身のもつ水蒸気吸着特性を利用することで、自律型調湿材料を開発することが可能であるが、例えば、相対湿度を40〜70%の範囲で制御する様な調湿材料としては、その孔径が2〜6nmの範囲に制御されたものでなくてはならない。ところが、調湿機能を発現している過程において、シリカ多孔質の骨格構造が水蒸気の存在により変性してしまうため、定常的な調湿機能を発現をさせるような材料開発は非常に困難である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上記従来技術の諸問題を解消することが可能なシリカ多孔体の表面特性を制御する新しい方法を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、両親媒性の有機官能基を有するシラン化合物を孔表面に固定化することにより所期の目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、孔表面に固定化した有機基の示す疎水性を緩衝させることを課題として、親水性を同時に有する有機官能基を固定化して得られる構造安定性の付与及びその表面特性、特に、水蒸気吸着特性を実現した新しい有機修飾シリカ多孔体及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術手段から構成される。
(1)両親媒性の有機官能基を有するシラン化合物によりシリカ多孔体の表面修飾をすることにより有機修飾したシリカ多孔体を製造する方法であって、1)前記両親媒性の有機官能基を有するシラン化合物が、親水的な官能基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン又はポリオキシブチレン基から選択される1種以上を有している、2)疎水的な官能基としてアルキレン基又はビニレン基から選択される1種を有している、3)上記表面修飾により水蒸気吸着特性を付与した有機修飾シリカ多孔体を作製する、ことを特徴とするシリカ多孔体の製造方法。
(2)両親媒性の有機官能基を有するシラン化合物の修飾密度を変化させることにより、細孔径を制御せしめる、前記(1)に記載のシリカ多孔体の製造方法。
(3)両親媒性の有機官能基を有するシラン化合物の修飾密度を低くすることにより、孔表面に親水基と疎水基を露出せしめる、前記(1)に記載のシリカ多孔体の製造方法。
(4)前記有機官能基の親水部と疎水部の各々或いはどちらか一方の長さを変化させることにより、水蒸気の吸着又は脱着が起こる相対圧を制御せしめる、前記(1)に記載のシリカ多孔体の製造方法。
(5)前記有機官能基の親水部をポリオキシエチレンからポリオキシプロピレン又はポリオキシブチレン基に変化させることにより、水蒸気の吸着又は脱着が起こる相対圧を制御せしめる、前記(4)に記載のシリカ多孔体の製造方法。
(6)前記(1)から(5)のいずれかに記載の方法により作製したシリカ多孔体であって、1)両親媒性の有機官能基を有するシラン化合物により表面修飾されている、2)前記両親媒性の有機官能基を有するシラン化合物が、親水的な官能基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン又はポリオキシブチレン基から選択される1種以上を有している、3)疎水的な官能基としてアルキレン基又はビニレン基から選択される1種を有している、4)水蒸気吸着特性が付与されている、ことを特徴とするシリカ多孔体。
(7)吸着した水蒸気を全て脱着せしめる作用を有することを特徴とする前記(6)に記載のシリカ多孔体。
(8)表面修飾に伴うシリカ多孔体の孔径変化に依存せずに、一定の相対圧での水蒸気の吸着又は脱着を可能とする、前記(6)に記載のシリカ多孔体。
(9)シリカ多孔体の孔内全てを両親媒性の有機官能基で充填した、前記(6)に記載のシリカ多孔体。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、両親媒性の有機官能基によって修飾することにより、その表面特性、特に、水蒸気吸着特性を付与した有機修飾シリカ多孔体を提供するものである。本発明は、シリカ多孔体が、例えば、シリカゲルの様な無定形構造材料、有機分子集合体を利用して構造規則性を付与した材料、及びそれらのケイ酸骨格中に異種ユニットを導入した材料であって、任意の孔径を有する材料に適用されるものである。
【0010】
本発明の有機修飾したシリカ多孔体は、好適には、例えば、シリカ多孔体を分散した溶液に、両親媒性の有機官能基を有するシラン化合物を添加することにより生成せしめることができる。本発明では、両親媒性の有機官能基として、好適には、例えば、親水基としてポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン又はポリオキシブチレン基の内から選択される1種以上、疎水基としてアルキレン又はビニレン基の内から選択される1種を有するシラン化合物が用いられる。これらのシラン化合物は、加水分解反応によりシラノール基を生成し、シリカ多孔体表面に存在するシラノール基との脱水縮合反応を経て、孔表面に固定化することができる。
【0011】
上記両親媒性の有機官能基を持つシラン化合物が、シリカ多孔体表面に固定化されると、シリカ多孔体の微細構造を形成しているシリカ骨格の表面には新たなシロキサン結合が生成する。有機官能基の存在が水分子のシリカ骨格への接近を抑制するだけでなく、新たに形成されたシロキサン結合の存在が水分子による解裂反応を受けても、微細構造を形成している主骨格の変化が抑制されるため、有機修飾したシリカ多孔体の構造安定性は大幅に向上する。
【0012】
前記有機修飾したシリカ多孔体表面に固定化された有機官能基は、その修飾密度に応じて配向が変化する。低修飾密度では、有機官能基が孔表面を覆うように横たわる。修飾密度が高くなると、有機官能基同士がぶつかり合うようになり、孔の中心方向に有機官能基が向くようになる。修飾密度を更に増加させると、最終的には、孔内全てを有機官能基が充填するようになる。従って、本発明では、修飾密度を制御することで、有機官能基の配向を変化させることができ、それに伴い、有機修飾したシリカ多孔体の孔径が制御できるようになる。更に、極めて低い修飾密度の場合には、両親媒性の有機官能基が完全に孔表面に横たわり、親水性と疎水性が交互に配列した特異な表面構造を有する有機修飾シリカ多孔体が得られるようになる。
【0013】
次に、両親媒性の有機官能基を有するシラン化合物により表面修飾したシリカ多孔体の水蒸気吸着特性について説明する。一般に、シリカ多孔体の水蒸気の吸着又は脱着の挙動は、シリカ多孔体の孔径を用いて解釈することができる。端的には、孔径が小さくなると水蒸気を吸着又は脱着する相対圧力も低くなる。この理論に依ると、前記有機修飾したシリカ多孔体の孔径は、未修飾のシリカ多孔体よりも必ず小さくなるため、水蒸気の吸着又は脱着する相対圧力が低くなることが予想できる。
【0014】
しかしながら、例えば、2−[メトキシ(ポリオキシエチレン)プロピル]トリメトキシシランで修飾したシリカ多孔体の水蒸気の吸着又は脱着は、未修飾のシリカ多孔体とほぼ同様な相対圧力付近で観察され、上記の理論に従うものにはならなかった。このことは、有機修飾に伴う孔径変化だけで上記問題を解決することができないことを意味する。例えば、孔表面にブチル基が存在するシリカ多孔体では、殆ど水蒸気の吸着が認められず、極めて疎水的な表面特性を示す。従って、2−[メトキシ(ポリオキシエチレン)プロピル]トリメトキシシランで修飾したシリカ多孔体の場合には、孔表面に疎水的なプロピレン基が存在しているにも関わらず、親水的なポリオキシエチレン基の存在により水蒸気の吸着が観察される相対圧に変化が生じたと解釈することができる。
【0015】
更に、両親媒性の有機官能基の親水部又は疎水部の各々或いはどちらか一方の分子構造に変化を与えることで、両親媒性の有機官能基の持つ親水性並びに疎水性を制御することが可能となり、これにより、所望の水蒸気吸着特性を発現させることができる。例えば、より疎水的な性質を示すポリオキシプロピレン又はポリオキシブチレン基を有するシラン化合物から選択させる1種以上を、ポリオキシエチレン基を有するシラン化合物と同時に表面修飾して固定化した有機官能基の割合を制御することで、より疎水的な表面特性を有する材料が得られる。また、ポリオキシプロピレン又はポリオキシブチレン基を有するシラン化合物から選択させる1種以上のみを表面修飾することでも、より疎水的な表面特性を有する材料が得られる。
特別な例として、親水性及び疎水性を上手く制御することで、未修飾のシリカ多孔体の水蒸気吸着特性を殆ど保持した有機修飾シリカ多孔体の製造も可能である。即ち、本発明により、構造安定性が向上した吸水材、吸湿材を製造することが可能である。
【0016】
また、孔内全てを両親媒性の有機官能基で充填したシリカ多孔体では、水蒸気の吸着可能な空間が存在しないが、水蒸気の吸着及び脱着する様子が観察された。このことは、両親媒性の有機官能基の親水部への水蒸気の吸着が、親水部の配列に変化を与えるため、若干量の水蒸気の吸着が可能となることを示している。
【0017】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。また、本発明の効果をより顕著にするために、孔径が均一なシリカ多孔体を用いて有機修飾した実施例を示す。
実施例1
トルエン溶媒中(50ml)に、2−[メトキシ(ポリオキシエチレン)プロピル]トリメトキシシラン(0.5ml)を加えて撹拌し、乾燥させたシリカ多孔体(1g)を、分散させた後に、110℃で24時間乾留を行った。その後、回収した試料は、アセトンで数回洗浄してから風乾した。
【0018】
孔径が均一なシリカ多孔体は、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを鋳型として用いて合成しており、二次元六方構造を有するシリカ多孔体である。これを未修飾試料として取り扱うが、未修飾体の窒素吸着測定から算出した比表面積は1176m2 g-1、細孔容積は0.91cm3 g-1、孔径は3.2nmであった。粉末X回折(XRD)分析から、得られた表面修飾体は、二次元六方構造を保持していることが確認された。29SiMASNMR測定から、2−[メトキシ(ポリオキシエチレン)プロピル]トリメトキシシラン中のSiが酸素原子を介してシリカ多孔体表面と共有結合により固定化されていることが明らかとなった。この様な新たなシロキサン結合の生成は、これらが、シリカ多孔体の主骨格表面を覆っているため、シリカ多孔体の構造安定を向上させる役割も担っている。
【0019】
また、窒素吸着測定から、有機修飾に伴い得られた表面修飾体の比表面積(668m2 g-1)、細孔容積(0.35cm3 g-1)及び孔径(2.4nm)は、いずれも減少していることが示された。ここで、細孔容積は、メソ孔表面への修飾を評価するため、相対圧90%での窒素吸着量から算出した。以上から、シリカ多孔体表面に存在するシラノール基と2−[メトキシ(ポリオキシエチレン)プロピル]トリメトキシシランとが反応することで、孔表面を初め、シリカ多孔体の表面全てが2−[メトキシ(ポリオキシエチレン)プロピル]シリル基で覆われた表面修飾体が生成したことが明らかとなった。
【0020】
加えて、ポリオキシエチレン基部分が、ポリオキシプロピレン又はポリオキシブチレン基となったシラン化合物を用いても同様な結果が得られており、2−[メトキシ(ポリオキシエチレン)プロピル]トリメトキシシラン、2−[メトキシ(ポリオキシプロピレン)プロピル]トリメトキシシラン又は2−[メトキシ(ポリオキシブチレン)プロピル]トリメトキシシランから選択される1種以上のシラン化合物を用いた表面修飾も確認された。また、プロピル基をブチルやヘキシル基等のアルキレン基又はフェニレン基にしたシラン化合物での修飾体の合成も可能であった。
【0021】
実施例2
上記実施例1と同様の手順で、2−[メトキシ(ポリオキシエチレン)プロピル]トリメトキシシランの添加量を変化(0.25、0.50、0.75又は1.00ml)させて、修飾密度の異なる表面修飾体の合成を行った。XRD分析から、実施例1と同様に、得られた表面修飾体は、二次元六方構造を保持していることが確認された。各表面修飾体の炭素含有量を元素分析により算出した結果、2−[メトキシ(ポリオキシエチレン)プロピル]トリメトキシシランの添加量の増加に伴い、表面修飾体中の炭素含有量も増加し、修飾密度の異なる表面修飾体の合成が可能であることが明らかとなった。次に、各表面修飾体の窒素吸着測定の結果を表1に示す。修飾密度の増加と共に、比表面積、細孔容積及び孔径がいずれも減少していく様子がはっきりとわかる。以上の結果は、シラン化合物の添加量を変化させるだけで、修飾密度を制御することが可能であることを意味しており、修飾密度を制御することが、孔径制御を同時に可能にすることを示している。
【0022】
【表1】
【0023】
低修飾密度では、有機官能基が孔表面を覆うように横たわる。修飾密度が高くなると、有機官能基同士がぶつかり合うようになり、孔の中心方向に有機官能基が向くようになる。修飾密度を更に増加させると、最終的には孔内全てを有機官能基が充填するようになる。従って、修飾密度を制御することで、有機官能基の配向を変化させることができ、それに伴い、有機修飾したシリカ多孔体の孔径が制御できるようになる。更に、極めて低い修飾密度の場合には、両親媒性の有機官能基が完全に孔表面に横たわり、親水性と疎水性が交互に配列した特異な表面構造を有する有機修飾シリカ多孔体が得られるようになる。
【0024】
実施例3
次に、上記実施例2に示した表面修飾体の水蒸気吸着測定を行い、水蒸気の吸着又は脱着の挙動を調査した。修飾密度の異なるシリカ多孔体の水蒸気吸着脱着等温線を図1に示す。メチル、ブチル又はオクチル基の様なアルキル基のみを有するシラン化合物で表面修飾したシリカ多孔体では、疎水的なアルキル基が孔表面に存在するため、水蒸気の吸着がほとんど観察されない極端に疎水的な性質を有する表面修飾体が生成することが知られており、アミノプロピル基の様に親水性を示すアミノ基が存在するシラン化合物で表面修飾しても、その効果はほとんど現れず、疎水的な表面特性を有するシリカ多孔体しか得ることはできない。
【0025】
これらに対して、本発明の2−〔メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル〕トリメトキシシランで表面修飾したシリカ多孔体では、親水部が非常に大きいために、その特性が得られた表面修飾体の表面特性にも反映され、シリカ多孔体自身が持つ水蒸気吸着特性を保持した表面修飾体の合成が可能となった。また、未修飾体と比較して、得られた表面修飾体では吸着した水蒸気のほとんど全てが脱着している様子が観察された。この挙動は、吸着した水蒸気がシロキサン結合の解裂にほとんど消費されていないことを示しており、構造安定性が向上していること、繰り返しの利用が可能であることなどと関連した結果である。
【0026】
また、2−〔メトキシ(ポリオキシエチレン)プロピル〕シリル基の修飾密度の増加に伴い、細孔容積の減少を反映して最大水蒸気吸着量は減少するが、修飾密度に関わらず、ほぼ一定の相対圧で水蒸気が吸着する挙動が観察された。このことは、両親媒性の有機官能基を有するシラン化合物でシリカ多孔体の表面修飾を行うことで、シリカ多孔体の表面特性を自在に制御することが可能であることを示している。例えば、2−〔メトキシ(ポリオキシエチレン)プロピル〕トリメトキシシランの代わりに、2−〔メトキシ(ポリオキシプロピレン)プロピル〕トリメトキシシラン又は2−〔メトキシ(ポリオキシブチレン)プロピル〕トリメトキシシランを使用したり、2−〔メトキシ(ポリオキシエチレン)プロピル〕トリメトキシシラン、2−〔メトキシ(ポリオキシプロピレン)プロピル〕トリメトキシシラン又は2−〔メトキシ(ポリオキシブチレン)プロピル〕トリメトキシシランから選択される1種以上のシラン化合物を用いて表面修飾することで、有機官能基の親水部の性質に変化を与えることが可能であり、得られる表面修飾体の特性に変化を与えられる。
【0027】
一方、プロピル基をブチルやヘキシル基等のアルキレン基又はフェニレン基にしたシラン化合物を用いることで、疎水部の性質に変化を与えることができる。更には、孔内全てを2−〔メトキシ(ポリオキシエチレン)プロピル〕シリル基で充填した試料では、細孔容積はほとんどないにも関わらず、水蒸気の吸着が観察された。このことは、ポリオキシエチレン基が存在しているために水蒸気の吸着を可能とし、本表面修飾体が特殊反応場としての応用が可能であることを示唆している。
【0028】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、シリカ多孔体に両親媒性の有機官能基を有するシラン化合物で表面修飾を行い、特異な水蒸気吸着特性や構造安定性を付与するものであり、本発明により、表面修飾したシリカ多孔体は、1)孔径が自在に制御できる、2)有機官能基中の親水基と疎水基の両方又は片方を変化させ、水蒸気の吸着又は脱着が生じる相対圧を制御できる、3)吸着した水蒸気を殆ど全て脱着することが可能であり、繰り返しの利用が可能である、4)孔径に依存しない相対圧での水蒸気の吸着及び脱着が可能である、5)孔径全てが有機官能基で充填されるまで表面修飾しても水蒸気の吸着が起こる、6)上記有機修飾したシリカ多孔体は、その特異な孔表面の構造を利用した吸湿及び放湿作用を有する機能性部材や特殊反応場への応用が期待できる、という格別の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2で合成した有機修飾したシリカ多孔体の水蒸気吸着等温線を示す。
Claims (9)
- 両親媒性の有機官能基を有するシラン化合物によりシリカ多孔体の表面修飾をすることにより有機修飾したシリカ多孔体を製造する方法であって、1)前記両親媒性の有機官能基を有するシラン化合物が、親水的な官能基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン又はポリオキシブチレン基から選択される1種以上を有している、2)疎水的な官能基としてアルキレン基又はビニレン基から選択される1種を有している、3)上記表面修飾により水蒸気吸着特性を付与した有機修飾シリカ多孔体を作製する、ことを特徴とするシリカ多孔体の製造方法。
- 両親媒性の有機官能基を有するシラン化合物の修飾密度を変化させることにより、細孔径を制御せしめる、請求項1に記載のシリカ多孔体の製造方法。
- 両親媒性の有機官能基を有するシラン化合物の修飾密度を低くすることにより、孔表面に親水基と疎水基を露出せしめる、請求項1に記載のシリカ多孔体の製造方法。
- 前記有機官能基の親水部と疎水部の各々或いはどちらか一方の長さを変化させることにより、水蒸気の吸着又は脱着が起こる相対圧を制御せしめる、請求項1に記載のシリカ多孔体の製造方法。
- 前記有機官能基の親水部をポリオキシエチレンからポリオキシプロピレン又はポリオキシブチレン基に変化させることにより、水蒸気の吸着又は脱着が起こる相対圧を制御せしめる、請求項4に記載のシリカ多孔体の製造方法。
- 請求項1から5のいずれかに記載の方法により作製したシリカ多孔体であって、1)両親媒性の有機官能基を有するシラン化合物により表面修飾されている、2)前記両親媒性の有機官能基を有するシラン化合物が、親水的な官能基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン又はポリオキシブチレン基から選択される1種以上を有している、3)疎水的な官能基としてアルキレン基又はビニレン基から選択される1種を有している、4)水蒸気吸着特性が付与されている、ことを特徴とするシリカ多孔体。
- 吸着した水蒸気を全て脱着せしめる作用を有することを特徴とする請求項6に記載のシリカ多孔体。
- 表面修飾に伴うシリカ多孔体の孔径変化に依存せずに、一定の相対圧での水蒸気の吸着又は脱着を可能とする、請求項6に記載のシリカ多孔体。
- シリカ多孔体の孔内全てを両親媒性の有機官能基で充填した、請求項6に記載のシリカ多孔体。
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