JP3870810B2 - 薄膜ガスセンサの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池駆動に適した低消費電力型の薄膜ガスセンサの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的にガスセンサは、ガス漏れ警報器などの用途に用いられ、ある特定ガス、例えば、CO、CH4 、C3H8、CH3OH 等に選択的に感応するデバイスであり、その性格上、高感度、高選択性、高応答性、高信頼性、低消費電力が必要不可欠である。
【0003】
ところで、家庭用として普及しているガス漏れ警報器には、都市ガス用やプロパンガス用の可燃性ガスの検知を目的としたものと燃焼機器の不完全燃焼ガスの検知を目的としたもの、または、両方の機能を合わせ持ったものなどがあるが、いずれもコストや設置性の問題から普及率はそれほど高くはない。
ガスセンサの普及率向上をはかるべく、設置性の改善、具体的には電池駆動としコードレス化することが望まれている。
【0004】
電池駆動を実現するためにはガス漏れ警報器の低消費電力化が最も重要である。接触燃焼式や半導体式のガスセンサ素子を200 ℃〜500 ℃の高温に加熱して検知する必要があり、SnO2などの粉体が焼結されてなる従来のガスセンサでは、スクリーン印刷等を用いてもガスセンサの厚みを薄くするには限界があり、電池駆動を適用するには熱容量が大きすぎた。そこで、ヒーターおよびガス感知膜を1 μm 以下の薄膜でSi基板(ウェハー)上に形成した後、深堀エッチィング加工プロセスによりヒーターおよびガス感知膜に対向するSiを除去してダイヤフラム構造とし、低熱容量および断熱構造を図った薄膜ガスセンサの実現が待たれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
図2はダイヤフラム構造の薄膜ガスセンサの断面図である。
両面に熱酸化膜2aが形成されたSi基板1 上に、ダイヤフラム用の熱酸化膜2aと共に第1の絶縁膜2 を構成する支持膜2bおよび熱絶縁膜2cとしてSi3N4 膜およびSiO2膜が順次プラズマCVDにより形成されている。次に金属のヒーター層がスパッタ成膜された後パターニングによりヒーター3 が形成され、第2の絶縁膜4 としてSiO2膜がスパッタにより形成される。その上に感知膜電極5 およびガス感知膜6 がそれぞれ成膜された後パターニングされて形成される。ガス感知膜5 の上には図示しないAl2O3 、Cr2O3 、Fe2O3 、Ni2O3 、ZnO 、SiO2などの多孔質金属酸化物からなるフィルタ(選択燃焼層)がスクリーン印刷などにより形成されている場合もある。
【0006】
最後にSi基板1 の裏面よりエッチングし、ヒーター3 やガス感知膜5 とその近傍に対向する部分のSiが除去され、第1の絶縁膜2 および第2の絶縁膜4 がダイヤフラムとしてSi基板のダイヤフラム孔1hに張られたダイヤフラム構造とされる。この工程をダイヤフラム化工程という。
一般に集積回路(IC)の形成されたSiウェハーをチップ化する場合(チップ化工程)では、極薄のダイヤモンド工具を有するダイサーを用いてシリコン基板を切断する。このとき、シリコンの切断屑やダイヤモンド工具からの砥粒を除去することと、ダイヤモンド砥石の温度上昇を抑える目的で、シリコン基板とダイヤモンド工具が接触する点に純水を注ぎかける。
【0007】
ところが、薄膜ガスセンサのチップ化工程においては、ダイヤフラムの厚さが1 〜2 μm の極薄の膜であるため、大量の注ぎかけられた純水の圧力によりダイヤフラムが割れてしまい、著しい製造歩留まりの低下をきたしていた。
本発明の目的は、水を用いずにチップ化工程を行うことができ、歩留りの高い薄膜ガスセンサの製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的を達成するために、Siウェハー上に、薄膜ガスセンサの構成部材である、少なくとも第1の絶縁性薄膜、薄膜ヒーター、第2の絶縁性薄膜および薄膜ヒーターに重なる位置にガス感知膜が順に形成された後、薄膜ヒーターおよびガス感知膜およびその近傍に対向する部分のSiが除去されて、少なくとも第1の絶縁性薄膜がダイヤフラムとして形成されるダイヤフラム化工程および薄膜ガスセンサが個別化されるチップ化工程が行われる薄膜ガスセンサの製造方法において、前記チップ化工程の前に、隣り合った薄膜ガスセンサの境界線であるスクライブラインに対向したスクライブ用溝がウェハー裏面に形成されることとする。
【0009】
前記スクライブ用溝の深さはシリコンウェハー厚さの60%以上95% 以下望ましくは70ないし90%であると良い。
前記スクライブ用溝の形成は前記ダイヤフラム化工程と同時に行われると良い。
前記チップ化工程はスクライブラインに沿ってダイヤモンド工具で切り欠きをいれた後、シリコン基板に曲げ応力を与えることによって薄膜ガスセンサのチップを分離させる工程であると良い。
【0010】
本発明によれば、シリコン基板裏面にスクライブ用溝を形成しておいたため、シリコン基板表面からスクライブラインに沿ってダイヤモンド工具により注水せずに極めて浅い切り欠きをいれ、シリコン基板に曲げ応力を与えることによって薄膜ガスセンサのチップを分離させる。このため、チップ分離時に流しかけられる純水によってダイヤフラム部が割れることはなく、薄膜ガスセンサの製造歩留まりが著しく向上することが期待できる。
【0011】
また、スクライブ用溝をダイヤフラム化工程と同時に行うため、スクライブ用溝形成工程を別途行う必要がなく、製造方法工程は短縮されるので、薄膜ガスセンサのコスト低減に寄与できると期待される。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る製造方法におけるスクライブ用溝の形成されたSiウェハーの部分断面図である。
薄膜ガスセンサの構成は図2と同じであり、同じ部材には同じ符号を付してある。
【0013】
薄膜ガスセンサの分離に用いる境界線すなわちスクライブラインL は第 1の絶縁膜2 の熱絶縁膜2c、および第2の絶縁膜4 の一部がパターニング工程を経て除去された部分である。スクライブラインL は第2の絶縁膜4 上の例えば感知膜電極用の金属膜をパターニングしたものでもよい。このスクライブラインL に対向している部分にはスクライブ用溝1gが形成されている。
【0014】
チップ化工程は次のように行われる。
先ずスクライブラインL に沿ってダイヤモンド工具でSiウェハーまで達する切り欠きをいれた後、Siウェハーに曲げ応力を与えると容易に割れ目が入り薄膜ガスセンサは分離され、チップ化される。
また、割れ目が入る方向とシリコンウェハーのへき開面の方向を一致させておけば、ダイヤモンド工具で形成させる切り欠きはスクライブラインの全領域に入れる必要はなく、点線状やウェハーの端部のみに切り欠きを入れるだけで、薄膜ガスセンサのチップ分離が可能である。
【0015】
発明者らが行ったスクライブ用溝1gの形状とチップ化との関係を調べた実験によれば、溝1gの深さはシリコン基板厚さの60%以上、望ましくは70ないし90%であり、最も広い入口部分の幅が10μm 以上、望ましくは10ないし30μm が最適であることが判った。
スクライブ用溝の深さが60〜70%の範囲では、シリコンウェハーがスクライブ用溝に沿って割れない場合があり、90%以上ではシリコンウェハーがチップ化工程以前の工程で割れてしまうことがある。また、スクライブ用溝の入口部分の幅が10μm 以下の場合には、以下に説明する加工法でスクライブ用溝を加工すると溝深さが浅すぎ、30μm 以上では、以下に説明する加工法でスクライブ用溝を加工すると溝は深くなりすぎる。
【0016】
次に本発明に係るスクライブ用溝の形成方法について説明する。
ダイヤフラム構造のガスセンサの製造においては、ダイヤフラムを形成するために除去された部分すなわちダイヤフラム孔は、熱酸化膜2aをストップ層とするドライエッチングまたはウェットエッチングによって加工される。この時マスクとしてアルミニウム膜やレジスト膜を用い、円形のダイヤフラム孔の場合は、所望のダイヤフラム径の10〜20% 小さな径の窓をマスクに形成してエッチングを行う。これはエッチング工程においては、通常ダイヤフラム孔の側壁がエッチングされてダイヤフラム径はマスク径より大きく加工されるからである。
【0017】
同様に、スクライブ用溝1g用のマスクの幅は、所望のスクライブ用溝幅より10〜20% 狭い幅の窓をマスクに形成してスクライブ用溝1gエッチングを行う。
本発明においては、上記のマスクにダイヤフラム孔用の窓とスクライブ用溝用の窓を同時に開けておき、同時にドライエッチングまたはウェットエッチングにより加工する。このように、ダイヤフラム孔とスクライブ用溝を同時にエッチングするので工数が少ない。
【0018】
ドライエッチングまたはウェットエッチングによる加工法について説明したが、シリコンウェハーにダイヤフラム溝やスクライブ用溝を加工する方法はこれに限定される訳ではなく、サンドブラストや放電加工などを適用しても本発明の趣旨を逸脱するものではない。
実施例1
図1に従う製造方法を適用した。
【0019】
厚さ400 μm のSiウェハーを用いた。
各薄膜の成膜はRFマグネトロンスパッタリング装置を用い、通常のスパッタリングによった。成膜条件は次の通りである。感知膜電極5 としてPtあるいはAu膜を、Arガス圧力1Pa 、基板温度300 ℃、RFパワー 2 W/cm2で、膜厚は200nm とした。次に、ガス感知膜7 であるSnO2を、RFマグネトロンスパッタリング装置を用い、反応性スパッタリングによって行った。ターゲットにはSbを0.5wt%とPt6.0wt%を含有するSnO2を用いた。成膜条件はAr+O2 ガス圧力 2Pa、基板温度150 〜300 ℃、RFパワー 2 W/cm2で、膜厚を500nm とした。感知層7 の上にはフィルター層として多孔質のAl2O3 をスクリーン印刷して形成した。
【0020】
スクライブ用溝用のマスクとして幅15μm の、またダイヤフラム用マスクとして直径450 μm のレジスト除去部をそれぞれ形成した。そして、ウェハー裏面のドライエッチングによりSiを除去し、スクライブ用溝およびダイヤフラム孔を同時に形成した。スクライブ用溝の深さは320 μm であった。
このウェハーのスクライブラインに沿ってダイヤモンドソーにより、注水せずに、ガスセンサ側からSiウェハーに深さ数μm の切り込みを入れた後、Siウェハーを反らせてチップ化を行った。顕微鏡を用いた目視検査の結果、98% の良品率が達成できた。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、シリコン基板裏面にスクライブ用溝を形成しておいたため、シリコン基板表面からスクライブラインに沿ってダイヤモンド工具により注水せずに極めて浅い切り欠きをいれ、シリコン基板に曲げ応力を与えることによって薄膜ガスセンサのチップを分離させることができる。このため、チップ化工程時に流しかけられる純水によってダイヤフラム部が割れることはなく、薄膜ガスセンサの製造歩留まりが著しく向上する。
【0022】
また、スクライブ用溝の形成をダイヤフラム化工程と同時に行うため、スクライブ用溝形成工程を別途行う必要がなく、製造方法工程は短縮されるので、薄膜ガスセンサのコスト低減に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る製造方法におけるスクライブ用溝の形成されたSiウェハーの部分断面図である。
【図2】ダイヤフラム構造の薄膜ガスセンサの断面図である。
【符号の説明】
1 Siウェハー
1g スクライブ用溝
1h ダイヤフラム孔
2 第1の絶縁膜
2a 熱酸化膜
2b 支持膜
2c 熱絶縁膜
3 薄膜ヒーター
4 第2の絶縁膜
5 感知膜電極
6 ガス感知膜
L スクライブライン
Claims (2)
- Siウェハー上に、薄膜ガスセンサの構成部材である、少なくとも第1の絶縁性薄膜、薄膜ヒーター、第2の絶縁性薄膜および薄膜ヒーターに重なる位置にガス感知膜が順に形成された後、薄膜ヒーターおよびガス感知膜およびその近傍に対向する部分のSiが除去されて、少なくとも第1の絶縁性薄膜がダイヤフラムとして形成されるダイヤフラム化工程および薄膜ガスセンサが個別化されるチップ化工程が行われる薄膜ガスセンサの製造方法において、
前記チップ化工程の前に、隣り合った薄膜ガスセンサの境界線であるスクライブラインに対向したスクライブ用溝がウェハー裏面に形成され、
前記スクライブ用溝の深さはシリコンウェハー厚さの 70 ないし 90 %であり、
前記チップ化工程はスクライブラインに沿ってダイヤモンド工具で切り欠きをいれた後、シリコン基板に曲げ応力を与えることによって薄膜ガスセンサのチップを分離させる工程であることを特徴とする薄膜ガスセンサの製造方法において、
前記、切り欠きはスクライブラインの全領域に入れる必要はなく、点線状やウェハーの端部のみに切り欠きを入れるだけで、薄膜ガスセンサのチップ分離が可能であることを特徴とする薄膜ガスセンサの製造方法。 - 前記スクライブ用溝の形成は前記ダイヤフラム化工程と同時に行われることを特徴とする請求項1に記載の薄膜ガスセンサの製造方法。
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