JP3869046B2 - 超音波装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波装置に関し、特に、超音波により物体を非破壊検査する装置、あるいは、医療診断に用いる超音波診断装置等の信号処理装置のディジタル化に適用して有効な技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の超音波装置は、図11に示すように、被検体に超音波を送波および受波する短冊状の超音波振動子が複数個配列された超音波探触子1と、超音波の送波と受波とを切り替えるアナログ送受切り替え回路2と、各超音波振動子を駆動する送波回路3と、各超音波振動子によって受波された受波信号に対して、各超音波振動子間のフォーカス点(受波フォーカス点)までの到達時間を補正するm個の受波信号処理手段4と、各受波処理手段の出力を加算し一つの信号に合成する加算手段5と、フィルタリング、圧縮、エッジ強調、時間可変増幅、スキャン変換等の信号処理を行う信号処理手段6と、処理後の信号を画像情報として表示する表示手段7とから構成されていた。
【0003】
なお、前述するm個の受波信号処理手段4は、それぞれ1個に対して超音波振動子が1個接続されていた。
【0004】
送波回路3に駆動された超音波振動子は、各超音波振動子ごとに設定された遅延時間で決定される送波フォーカス点の位置および送波方向(ビーム方向)に、超音波を送波する。
【0005】
一方、被験者の生体内で反射された超音波は、超音波探触子1に設けられた各超音波振動子で受波された後、アナログ送受切り替え回路2により、それぞれに超音波振動子に接続される受波信号処理手段4に導かれる。
【0006】
各超音波振動子に対応した受波信号処理手段4は、それぞれ所定量の遅延時間を持つ遅延手段を有しており、受波信号をアナログ信号のままで処理する場合はアナログ遅延線のタップを選択するにより、基準となる超音波振動子との遅延を行なっていた。なお、このときの遅延データは、タップ選択データとなっていた。
【0007】
一方、受波信号をディジタル処理する場合は、まず、受波信号をA/D変換手段でサンプリング(A/D変換)した後、このデジタル信号をメモリに書き込み、このメモリからの読みだしアドレスを各受波信号処理手段間で変えることにより、遅延を行なっていた。
【0008】
なお、このときの遅延データは、メモリの読み出しアドレスであった。
【0009】
次に、遅延を与えられた受波信号は、位相をそろえた後、加算手段5で加算され、受波超音波ビームとなる。
【0010】
その後、整相加算された受波信号は、信号処理手段6により、前述するフィルタリング、圧縮、エッジ強調、時間可変増幅、スキャン変換等の信号処理を施される。
【0011】
以上の操作を超音波ビームの方向を順次ずらしながら走査することにより、表示手段7に断層像を表示する。
【0012】
ただし、前述する各手段は、全体制御手段29により制御される。
【0013】
従来のディジタル処理を行う超音波装置では、回路部品の定数のバラツキ、回路部品の定数の温度ドリフト、能動回路部品の飽和等のアナログ回路では回避できない不具合を解消することが試みられている。
【0014】
しかしながら、単に信号処理をディジタル化した場合、従来のアナログ回路を使用する超音波装置と同様に、整相精度(遅延精度)10ns以上を実現するためには、100MHz以上の高速なADC(アナログ−ディジタル変換器、A/D変換器)が必要となる。
【0015】
したがって、低速のADCでディジタル化し、信号処理(補間処理)で高精度な整相を実現する方法が知られている。
【0016】
この方法では、基本的にはサンプリングされたデータがメモリに記憶され、読み出し、あるいは書き込みのアドレスによって、サンプリング単位での受波信号の遅延が行なわれる。
【0017】
しかしながら、このサンプリング周期で遅延の精度が得られない場合には、各種の補間処理により受波信号の微小遅延がなされる。あるいは、サンプリングクロックを多層にし、この多層クロックの時間差で微小遅延を行い、メモリに記憶しサンプリング単位で受波信号の遅延を行なうという波面同期(凹面)サンプル技術も知られている。
【0018】
前述する方法を用いる場合、従来ではメモリの読み出しアドレスを直接外部より受波信号のフォーカス切り替えに応じて与えていた。
【0019】
以下、図12は従来の超音波装置の受波処理手段の概略構成を示すブロック図を示し、メモリの読み出しアドレスの指定方法を説明する。なお、図12に示す受波処理手段は、補間によって微小遅延を行う構成となっている。
【0020】
図12に示す受波処理手段では、受波信号はADC9により量子化(サンプリング)され、遅延メモリ10に書き込まれていた。このとき、遅延メモリ10に書き込まれるアドレスは、メモリアドレス設定部13で設定されていた。同様に、読み出しアドレスもまた、メモリアドレス設定部13で別に設定されていた。
【0021】
たとえば、読み出し時に受波信号に遅延を与える場合、まず、遅延を与える読み出しアドレスが、受波フォーカスデータメモリ32より読み出され、遅延メモリ10のアドレスが設定される。
【0022】
次に、このアドレスから遅延メモリ10の読み出しアドレスを順次カウントアップし、遅延メモリ10から受波データが順次読み出される。受波フォーカスが切り替わるとき、再び、遅延メモリ10の読みだしアドレスを受波フォーカスデータメモリ32から、同様に読み出していく。
【0023】
一方、補間手段11は、補間係数メモリ16から読み出された各種係数に基づいて、遅延メモリ10から読み出された受波データを補間処理することによって、低速のADCでディジタル化した受波データから高精度な整相を得ていた。
【0024】
次に、補間係数メモリ16から補間係数を読み出す手順を、図12に基づいて説明すると、まず、受波フォーカスデータメモリ32から補間係数メモリ16のアドレスが読み出される。
【0025】
次に、このアドレスに基づいて、補間係数メモリ16から補間係数を読み出し、この補間係数を補間手段11に出力する。補間手段11では、入力された補間係数に基づいて、補間演算を行うことにより、微小な遅延を補正した受波信号を出力する。
【0026】
このとき、たとえば、ADCのサンプルクロックが高速、あるいは、多層クロックで隣接間でのADC間のサンプルクロックの差が小さい場合等のように、遅延メモリ10での遅延量子化単位が所望の微小遅延の精度を満たしている場合には、補間手段11およびその制御系は不要となる。
【0027】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、前記従来技術を検討した結果、以下の問題点を見いだした。
【0028】
従来の超音波装置では、ADCのサンプルクロックが低速であるために、計測値すなわち遅延メモリ10に格納される計測データから超音波像を生成する際に、遅延メモリ10から読み出した計測データを補間するための補間手段11、および、補間手段11に補間に必要な補間係数を与えるための手段が必要となる。
【0029】
一方、従来の超音波装置では、図12に示すように、遅延メモリ10、補間係数メモリ16のアドレスを受波フォーカスデータとして受波フォーカスデータメモリ32に全て記憶していたので、たとえば、遅延メモリ10の容量が8kワードのときには、13bitのアドレスデータが必要となる。
【0030】
したがって、受波信号を遅延させるための受波フォーカスデータがフォーカス段数とラスタ数との積の数だけ必要となるので、受波フォーカスデータメモリ32の容量が大きくなってしまうという問題があった。
【0031】
また、受波フォーカスデータメモリ32の容量が大きくなるので、受波処理手段を構成する回路が占める面積が大きくなってしまうという問題があった。
【0032】
本発明の第1の目的は、ディジタル化された受波ビ−ムの形成に使用する受波フォーカスデータを軽減した超音波装置を提供することにある。
【0033】
本発明の第2の目的は、受波信号処理手段を構成する回路の面積が小さい超音波装置を提供することにある。
【0034】
本発明の第3の目的は、各処理手段における超音波診断装置個々に特有の時間ばらつきを補正した超音波装置を提供することにある。
【0035】
本発明の第4の目的は、被検体内の各部位で音速分布が異なることにより生じる遅延誤差を補正することが可能な超音波装置を提供することにある。
【0036】
本発明の第5の目的は、遅延メモリの記憶容量が小さい超音波装置を提供することにある。
【0037】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面によって明らかになるであろう。
【0038】
【課題を解決するための手段】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記のとおりである。
【0039】
(1)超音波を送波および受波する複数の超音波振動子と、該超音波振動子が受波した超音波信号を各々デジタル信号に変換する複数の変換手段と、該変換手段の出力を格納する複数の受波データ格納手段と、該受波データ格納手段に格納される受波データを読み出して加算する信号加算手段と、該加算した信号を所定の順番に出力する出力制御手段と、該出力信号に基づいた超音波画像を表示する表示手段とを有する超音波装置であって、前記受波データ格納手段に格納される受波信号データの内、一番目に読み出す受波信号データのアドレス値を格納する初期アドレス格納手段と、各フォーカス段毎のアドレス値の差分値を格納する差分値格納手段と、前記一番目に読み出すアドレス値あるいは前段のアドレス値と前記差分値とを加算するアドレス加算手段とを具備し、前記受波信号データ読み出し時には、前記初期アドレス格納手段に格納されるアドレス値あるいはフォーカス前段のアドレス値と、前記差分値格納手段に格納される差分値とに基づいて、前記フォーカス段に該当する受波信号データを順次読み出して遅延処置する。
【0040】
(2)超音波を送波および受波する複数の超音波振動子と、該超音波振動子が受波した超音波信号をデジタル信号に変換する変換手段と、該変換手段の出力を格納する格納手段と、該格納手段に格納される受波信号を読み出して遅延し、該遅延された受波信号に補間処理する補間処理手段と、該補間処理後の複数の受波信号を加算する信号加算手段と、該加算した信号を所定の順番に出力する出力制御手段と、該出力信号に基づいた超音波画像を表示する表示手段とを有する超音波装置であって、補間係数を格納する補間係数格納手段と、該補間係数格納手段に格納される補間係数の内、1番目に読み出す補間係数アドレス値を格納する初期補間係数アドレス格納手段と、各フォーカス段毎の補間係数アドレス値の差分値を格納する補間係数差分値格納手段と、前記一番目に読み出す補間係数のアドレス値あるいは前段の補間係数のアドレス値と前記差分値とを加算する補間係数アドレス加算手段とを具備し、補間係数読み出し時には、前記初期補間係数アドレス格納手段に格納される補間係数アドレス値あるいは前段のアドレス値と、前記補間係数差分値格納手段に格納される差分値とに基づいて、前記フォーカス段に該当する補間係数を読み出し、前記格納手段から読み出された受波信号を補間処理する。
【0041】
(3)超音波を送波および受波する複数の超音波振動子と、該超音波振動子が受波した超音波信号をデジタル信号に変換する変換手段と、該変換手段の出力を格納する格納手段と、該格納手段に格納される受波信号を読み出し順番に補間処理する補間処理手段と、該補間処理後の複数の受波信号を加算する信号加算手段と、該加算した信号を所定の順番に出力する出力制御手段と、該出力信号に基づいた超音波画像を表示する表示手段とを有する超音波装置であって、前記受波データ格納手段に格納される受波信号データの内、一番目に読み出す受波信号データのアドレス値を格納する初期アドレス格納手段と、各フォーカス段毎のアドレス値の差分値を格納する差分値格納手段と、前記一番目に読み出すアドレス値あるいは前段のアドレス値と前記差分値とを加算するアドレス加算手段と、補間係数を格納する補間係数格納手段と、該補間係数格納手段に格納される補間係数の内、1番目に読み出す補間係数アドレス値を格納する初期補間係数アドレス格納手段と、各フォーカス段毎の補間係数アドレス値の差分値を格納する補間係数差分値格納手段と、前記一番目に読み出す補間係数のアドレス値あるいは前段の補間係数のアドレス値と前記差分値とを加算する補間係数アドレス加算手段とを具備し、前記受波信号データ読み出し時には、前記初期アドレス格納手段に格納されるアドレス値あるいはフォーカス前段のアドレス値と、前記差分値格納手段に格納される差分値とに基づいて、前記フォーカス段に該当する受波信号データを順次読み出すと共に、前記初期補間係数アドレス格納手段に格納される補間係数アドレス値あるいは前段のアドレス値と、前記補間係数差分値格納手段に格納される差分値とに基づいて、前記フォーカス段に該当する補間係数を読み出し、前記格納手段から読み出された受波信号を補間処理する。
【0042】
(4)前述する(1)ないし(3)のいずれかに記載の超音波装置において、複数の超音波振動子により受信された受信信号を遅延し位相合わせをした受信信号における各超音波振動子間の前記受信信号の位相ずれを検出する位相ずれ検出手段と、該位相ずれ検出手段の出力値に基づいて、位相ずれの補正値に相当するアドレス値を計算する補正アドレス計算手段と、該補正アドレス値を格納する位相ずれアドレス値格納手段と、該位相ずれアドレス値に基づいて、前記アドレス加算手段および前記補間係数アドレス加算手段に入力する差分値を補正する手段とを具備する。
【0043】
(5)前述する(1)ないし(4)のいずれかに記載の超音波装置において、装置ごとの個体差に基づく超音波計測特性を予め計測し、該計測値に基づいて算出した補正値に相当するアドレス値を格納するばらつき値アドレス格納手段と、該ばらつき値アドレス格納手段のアドレス値に基づいて、前記初期アドレス値および前記初期補間係数アドレス値を補正する手段とを具備する。
【0044】
(6)前述する(1)ないし(5)のいずれかに記載の超音波装置において、前記受波データ格納手段は、前記変換手段でデジタル信号に変換した超音波信号を所定の容量内で順番に格納していき、変換後の超音波信号が前記受波データ格納手段の容量を超えたときには、前記受波データ格納手段の先頭から容量を超えた分の超音波信号を格納する手段である。
【0045】
(7)前述する(6)に記載の超音波装置において、前記アドレス加算手段の出力するアドレス値と前記受波データ格納手段の容量とを比較し、前記アドレス加算手段の出力するアドレス値が前記受波データ格納手段の容量を越えるアドレス値となった場合、該越えたアドレス値から前記受波データ格納手段の容量分のアドレス値を減算し、該アドレス値に基づいて、前記フォーカス段に該当する受波信号データを順次読み出す読み出しアドレス設定手段を具備する。
【0046】
前述した(1)の手段によれば、初期アドレス格納手段に格納される一番目に読み出す受波信号データのアドレス値、すなわち、前記受波データ格納手段に格納される受波信号データの内、一番目に読み出す受波信号データのアドレス値と、差分格納手段に格納される各フォーカス段毎のアドレス値の差分値とを加算するアドレス加算手段の出力値を、受波データ格納手段に入力する読み出しアドレスとすることにより、まず、受波データ格納手段から1番目のフォーカス段に該当する受波信号データを読み出し、それ以降は、アドレス加算手段が出力する1段前のフォーカス段の読み出しアドレスと差分値との加算値を受波データ格納手段から受波信号データを読み出す際のアドレス値とするので、各フォーカス段を読み出すためのアドレス値を全て格納しておくための手段が必要なくなるので、ディジタル化された受波ビ−ムの形成に使用する受波フォーカスデータの内、読み出しアドレス値を格納しておく手段の容量分が軽減できる。
【0047】
したがって、変換手段と、受波データ格納手段と、受波データ格納手段から受波データを読み出すためのアドレス値を指定するための手段とからなる受波信号処理手段を構成するの回路の面積を小さくできる。
【0048】
前述した(2)の手段によれば、初期補間係数アドレス格納手段に格納され、1番目に読み出されることになる補間係数のアドレス値と、補間係数差分値格納手段に格納される各フォーカス段毎の補間係数アドレス値とを加算する補間係数アドレス加算手段の出力値を、補間係数格納手段に入力する読み出しアドレスとすることにより、まず、補間係数格納手段から1番目のフォーカス段に該当する補間係数を読み出し、それ以降は、補間係数アドレス加算手段が出力する1段前のフォーカス段の読み出しアドレスと差分値との加算値を、補間係数格納手段から補間係数を読み出す際のアドレス値とするので、各フォーカス段を読み出すための補間係数アドレス値を全て格納しておくための手段が必要なくなるので、低速のA/D変換器を用いた場合であっても、ディジタル化された受波ビ−ムの形成に使用する受波フォーカスデータの内、補間係数の読み出しアドレス値を格納しておく手段の容量分が軽減できる。
【0049】
したがって、変換手段と、補間手段と、補間係数格納手段と、補間係数格納手段から補間係数を読み出すためのアドレス値を指定するための手段とからなる受波信号処理手段を構成するの回路の面積を小さくできる。
【0050】
前述した(3)の手段によれば、初期アドレス格納手段に格納される一番目に読み出す受波信号データのアドレス値、すなわち、前記受波データ格納手段に格納される受波信号データの内、一番目に読み出す受波信号データのアドレス値と、差分格納手段に格納される各フォーカス段毎のアドレス値の差分値とを加算するアドレス加算手段の出力値を、受波データ格納手段に入力する読み出しアドレスとすることにより、まず、受波データ格納手段から1番目のフォーカス段に該当する受波信号データを読み出し、それ以降は、アドレス加算手段が出力する1段前のフォーカス段の読み出しアドレスと差分値との加算値を受波データ格納手段から受波信号データを読み出す際のアドレス値とするので、各フォーカス段を読み出すためのアドレス値を全て格納しておくための手段が必要なくなるので、ディジタル化された受波ビ−ムの形成に使用する受波フォーカスデータの内、読み出しアドレス値を格納しておく手段の容量分が軽減できる。
【0051】
また、初期補間係数アドレス格納手段に格納され、1番目に読み出されることになる補間係数のアドレス値と、補間係数差分値格納手段に格納される各フォーカス段毎の補間係数アドレス値とを加算する補間係数アドレス加算手段の出力値を、補間係数格納手段に入力する読み出しアドレスとすることにより、まず、補間係数格納手段から1番目のフォーカス段に該当する補間係数を読み出し、それ以降は、補間係数アドレス加算手段が出力する1段前のフォーカス段の読み出しアドレスと差分値との加算値を、補間係数格納手段から補間係数を読み出す際のアドレス値とするので、各フォーカス段を読み出すための補間係数アドレス値を全て格納しておくための手段が必要なくなるので、低速のA/D変換器を用いた場合であっても、ディジタル化された受波ビ−ムの形成に使用する受波フォーカスデータの内、補間係数の読み出しアドレス値を格納しておく手段の容量分が軽減できる。
【0052】
したがって、変換手段と、受波データ格納手段と、受波データ格納手段から受波データを読み出すためのアドレス値を指定するための手段と、補間手段と、補間係数格納手段と、補間係数格納手段から補間係数を読み出すためのアドレス値を指定するための手段とからなる受波信号処理手段を構成するの回路の面積を小さくできる。
【0053】
前述した(4)の手段によれば、前述する効果に加え、各超音波振動子間の位相ずれを検出する位相ずれ検出手段の出力値に基づいて、補正アドレス計算手段が計算する位相ずれの補正値に相当するアドレス値を格納する位相ずれアドレス値格納手段に格納される位相ずれアドレス値に基づいて、アドレス加算手段および補間係数アドレス加算手段に入力する差分値を補正する手段が、アドレス加算手段および補間係数アドレス加算手段に入力する差分値をそれぞれ補正するので、被検体内の各部位で音速分布が異なることにより生じる遅延誤差を補正することができる。
【0054】
前述した(5)の手段によれば、たとえば、装置の出荷前等の予め計測した装置ごとの個体差に基づく超音波計測特性を補正するためのアドレス値をばらつき値アドレス格納手段に格納しておき、装置の使用時に、初期アドレス値および初期補間係数アドレス値を補正する手段が、このばらつき値アドレス格納手段のアドレス値に基づいて、初期アドレス値および初期補間係数アドレス値を補正するので、各処理手段における超音波診断装置個々に特有の時間ばらつきを補正できる。
【0055】
また、このとき前述する効果もある。
【0056】
前述した(6)および(7)の手段によれば、受波データ格納手段は、変換手段でデジタル信号に変換した超音波信号を所定の容量内で順番に格納していき、変換後の超音波信号が前記受波データ格納手段の容量を超えたときには、受波データ格納手段の先頭から容量を超えた分の超音波信号を格納する手段であり、このとき、読み出しアドレス設定手段がアドレス加算手段の出力するアドレス値と受波データ格納手段の容量とを比較し、アドレス加算手段の出力するアドレス値が受波データ格納手段の容量を越えるアドレス値となった場合、越えたアドレス値から受波データ格納手段の容量分のアドレス値を減算し、アドレス値に基づいて、フォーカス段に該当する受波信号データを順次読み出すので、受波データ格納手段(遅延メモリ)の記憶容量を小さくできる。
【0057】
また、このとき前述する効果もある。
【0058】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面によって明らかになるであろう。
【0059】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、発明の実施の形態(実施例)とともに図面を参照して詳細に説明する。
【0060】
なお、発明の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0061】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の超音波装置の概略構成を示すブロック図であり、1は超音波探触子、2はアナログ送受切り替え回路、3は送波回路、4は受波信号処理手段、5は加算手段(信号加算手段)、6は信号処理手段(出力制御手段)、7は表示手段、29は全体制御手段を示す。
【0062】
図1において、超音波探触子1は周知の超音波探触子であり、複数個の短冊状の超音波振動子から構成される。超音波振動子は送波回路3からアナログ送受切り替え回路2を介して供給される駆動信号に対応する超音波を発生し、図示しない被検体に送波する。また、被検体の内部すなわち生体内で反射されてくる超音波を電気信号に変換する。
【0063】
アナログ送受切り替え回路2は周知の切り替え回路であり、全体制御手段29の制御出力(指示)に基づいて、送波回路3から出力される駆動信号を超音波探触子の各超音波振動子に伝達する系と、超音波振動子から出力されるアナログの受波信号を受波信号処理手段に伝達する系とを切り替える。
【0064】
送波回路3は、全体制御手段29の制御出力に基づいて、送波フォーカス点までの各振動子間の到達時間差を補正する遅延時間差で、超音波探触子1の各超音波振動子を駆動する駆動信号を発生し出力する周知の送波回路である。
【0065】
受波信号処理手段4は、各超音波振動子に1個づつ接続されており、各超音波振動子によって受波したアナログの受波信号をデジタルの受波信号(以下、受波信号と略記する)すなわちデジタルデータに変換した後、各超音波振動子で受波された受波信号に対する各素子間(超音波振動子間)の受波フォーカス点までの到達時間を補正するための遅延処理を行い、次に、低速のADCでの変換に伴う欠落信号の補間処理を行う手段であり、詳細については後述する。
【0066】
加算手段5は、全体制御手段29の制御出力に基づいて、m個の各受波信号処理手段4から出力される補間処理後の受波信号を加算する手段であり、本実施の形態1においては図示しない情報処理装置上で実行されるプログラムによって実現する。
【0067】
加算手段5は、受波信号処理手段4から出力される補間処理および位相揃え後の受波信号の整相加算を行った後、補間処理後の受波信号から受波超音波ビームを作成する。
【0068】
信号処理手段6は、フィルタリング、圧縮、エッジ強調、時間可変増幅およびスキャン変換等の画像補正処理を行った後、この補正処理後の受波信号を表示手段に出力するためのビデオ信号に変換する手段である。本実施の形態1においては、信号処理手段6は、前述する画像補正処理は図示しない情報処理装置上で実行されるプログラムによって実現し、画像補正処理後の受波信号をビデオ信号に変換する処理は周知の変換手段によって実現する。
【0069】
表示手段7は周知の表示手段であり、たとえば、CRT(Cathode Ray Tube)を用いた、いわゆる、カラーCRTディスプレイ装置である。
【0070】
全体制御手段29は、アナログ送受切り替え回路2、送波回路3、受波信号処理手段4、加算手段5、信号処理手段6および表示手段7の動作を制御する手段であり、本実施の形態1においては、たとえば、情報処理装置上で実行されるプログラムの内で、特に、この情報処理装置に接続される外部機器であるアナログ送受切り替え回路2および送波回路3を制御する手段である。
【0071】
次に、図1に基づいて、本実施の形態1の超音波装置の動作を説明すると、まず、送波回路3は各超音波振動子を送波フォーカス点までの各超音波振動子間の到達時間差を補正する遅延時間差で、超音波探触子1の各超音波振動子を駆動し、図示しない被検体に超音波を送波する。また、このとき送波回路3は、超音波ビームの方向をも制御する。
【0072】
被検体からの反射信号は、超音波探触子1の各超音波振動子で受波され、アナログ送受切り替え回路2を介して受波信号処理手段4に導かれる。
【0073】
受波信号処理手段4では、まず、入力されたアナログ信号である受波信号を図示しないADCによってデジタル信号に変換する。次に、デジタル信号に変換された受波信号(以下、特記しない場合は、デジタル信号に変換された受波信号をただ単に受波信号と記す)は、各超音波振動子のフォーカス点までの到達時間差を遅延により補正し、サンプリング間隔以下の微小遅延を補間処理によって行った後、加算手段5に出力される。
【0074】
加算手段5に入力された受波信号は、加算手段5でいわゆる整相加算された後、次の信号処理手段6でフィルタリング、圧縮、エッジ強調、時間可変増幅およびスキャン変換等の画像補正処理が行われ、その後ビデオ信号に変換され表示手段7に表示される。
【0075】
このとき、表示手段7には、加算手段5によって整相加算された超音波ビームが、たとえば、その方向を順次ずらしながら走査されることによって、断層像が表示される。
【0076】
図2および図3は本発明の実施の形態1の受波信号処理手段の1チャンネル分の概略構成を示すブロック図であり、特に、図2は受波信号処理手段の1チャンネル分の基本構成を説明するためのブロック図であり、図3は実施の形態1の受波信号処理手段の概略構成を示すブロック図である。
【0077】
図2および図3において、9はアナログ−ディジタル変換器(ADC、A/D変換器、変換手段)、10は遅延メモリ(受波データ格納手段)、11は補間手段、12は第1の初期値記憶手段(初期アドレス格納手段)、13はメモリアドレス設定手段(読み出しアドレス設定手段)、14はアドレス加算手段、15は第1の差分データ付与手段(差分値格納手段)、16は補間係数メモリ(補間係数格納手段)、17は補間データアドレス加算手段(補間係数アドレス加算手段)、18は第2の差分データ付与手段(補間係数差分値格納手段)、19は第2の初期値記憶手段(初期補間係数アドレス格納手段)、24は第1のセレクタ、25は第2のセレクタ、28は差分受波フォーカスデータ手段を示す。
【0078】
図2および図3におけるADC9は周知のA/D変換器であり、本実施の形態1においては、低速のA/D変換器を使用する。
【0079】
遅延メモリ10は、デジタル信号に変換された受波信号を格納する周知のメモリであり、たとえば、読み書き可能な周知の半導体メモリを使用する。
【0080】
補間手段11は、補間係数メモリ16から読み出される補間係数に基づいて、遅延メモリから読み出される受波信号に対する微小遅延を行う手段であり、たとえば、情報処理装置で実行されるプログラムによって実現可能である。
【0081】
第1の初期値記憶手段12は、ラスタが切り替わり、受波の読み出しが開始されるときの遅延メモリ10の読み出し開始アドレスを予め記憶しておく手段であり、たとえば、該当素子が第1の受波フォーカス点までの基準素子との到達時間差(遅延量)によって計算されたアドレス値が格納される。
【0082】
メモリアドレス設定手段13は、遅延メモリ10に格納される受波信号の読み出しアドレスを設定する手段であり、たとえば、周知のラッチ回路と周知のカウンタ回路とから構成される。
【0083】
また、このメモリアドレス設定手段13は、後述するサンプリングクロックに同期して、出力値を更新する。
【0084】
アドレス加算手段14は、第1のセレクタ24から出力されるアドレス値と、差分データ付与手段15により付与される差分データ(アドレス値)とに基づいて、遅延メモリ10に格納される受波信号の読み出しアドレス値を計算する手段であり、たとえば、周知の加算器で構成する。
【0085】
第1の差分データ付与部15は、差分受波フォーカスデータ手段28から出力される差分データ、すなわち、自分自身の前のデータとの差分値をアドレス加算手段14に出力するための手段であり、本実施の形態1においては、周知のラッチ回路によって実現する。
【0086】
補間係数メモリ16は、所定の補間係数(補間データ)が格納されているメモリであり、たとえば、読み書き可能な半導体メモリを使用することにより実現する。
【0087】
補間データアドレス加算手段17は、補間係数メモリ16から補間データを読み出す際の読み出しアドレスを設定する手段であり、本実施の形態1においては、第2のセレクタ25から出力されるデータと、第2の差分データ付与手段18から出力されるデータとを加算し、アドレスデータとする。
【0088】
第2の差分データ付与手段18は、差分受波フォーカスデータ手段28から出力される補間係数の差分データ、すなわち、自分自身の前のデータとの差分値を補間データアドレス加算手段17に出力するための手段であり、本実施の形態1においては、周知の読み書き可能な周知のラッチ回路によって実現する。
【0089】
第2の初期値記憶手段19は、ラスタが切り替わり、受波の読み出しが開始されるときの補間係数メモリ16の読み出し開始アドレスを予め記憶しておく手段であり、たとえば、微少遅延を実現する補間演算に必要な係数のアドレス値が格納される。
【0090】
差分受波フォーカスデータ手段28は、第1の差分データ付与手段15および第2の差分データ付与手段18に、それぞれ遅延メモリの読み出しアドレスの差分データおよび補間メモリの読み出しアドレスの差分データを出力する手段である。
【0091】
ただし、遅延メモリの読み出しアドレスの差分データおよび補間メモリの読み出しアドレスの差分データは、後述する図示しないフォーカスデータメモリ内に格納されているか、図示しない演算部によって演算されるものである。
【0092】
第1のセレクタ24は、アドレス加算手段14に入力するアドレス値を切り替える周知の手段であり、第1の初期値記憶手段12に格納される読み出しアドレスの初期値と、メモリアドレス設定手段13とから出力されるアドレス値と選択しアドレス加算手段14に入力する。
【0093】
このとき第1のセレクタ24は、ラスタが切り替わり、受波の読み出しが開始されるときは第1の初期値記憶手段12に格納される読み出しアドレスの初期値を選択し、それ以降はメモリアドレス設定手段13から出力されるアドレス値を選択する。
【0094】
第2のセレクタ25は、補間データアドレス加算手段17に入力するアドレス値を切り替える周知の手段であり、第2の初期値記憶手段19に格納される補間データアドレスの初期値と、補間係数メモリ16とから出力されるアドレス値と選択し補間データアドレス加算手段17に入力する。
【0095】
このとき第2のセレクタ25は、ラスタが切り替わり、受波の読み出しが開始されるときは第2の初期値記憶手段19に格納される補間データの読み出しアドレスの初期値を選択し、それ以降は補間係数メモリ16から出力されるアドレス値を選択する。
【0096】
次に、図8に本実施の形態1の受波信号処理手段の動作を説明するための図を示し、以下、図8に基づいて、本実施の形態1の受波信号処理手段の動作を説明すると、まず、受波信号は、ADC9により量子化され、遅延メモリ10に書き込まれる。
【0097】
このときの書き込みアドレスは、メモリアドレス設定部13で設定される。また、読み出しアドレスもメモリアドレス設定部13で設定される。
【0098】
たとえば、図8に示すように、遅延メモリ10の読み出しアドレスによりチャンネル間の受波信号に遅延を与える場合、受波ビームのフォカース切り替え時に、切り替えられる次の受波フォーカス段の読み出し開始アドレスA111が、アドレス加算部14の出力として与えられ、切り替えパルスに同期して遅延メモリ10のアドレスA111に記憶されているデータが読み出される。
【0099】
なお、前述するアドレスA111において、添字は左側から順番にそれぞれ、チャンネル番号、ラスタ番号、フォーカス段番号を示す。
【0100】
すなわち、第1のセレクタ24が第1の初期値記憶手段に格納されるアドレス値をアドレス加算手段14に入力するとともに、差分受波フォーカスデータ手段が第1の差分データ付与手段15に差分データを出力する。
【0101】
次に、メモリアドレス設定手段13が、ADC9のサンプリングクロックまたはデータ読み出しクロックを計数して、読み出しアドレスA111をA111+1、A111+2、…、と順番に更新して、遅延メモリ10に出力することにより、受波データが読み出されて補間手段11へと順次入力される。
【0102】
次の受波フォーカス段に移行するときには、同様に遅延メモリ10の読み出し開始アドレスA112がアドレス加算部14の出力として与えられ、受波フォーカスの切り替えパルスに同期して、遅延メモリ10のアドレスA112から読み出しが開始される。
【0103】
この間、受波フォーカスの切り替えに伴い、受波フォーカスデータの欠如が起こらないようにタイミングが設定されることはいうまでもない。
【0104】
従来は、この受波フォーカスの切り替えに伴う開始アドレスは、図12に示したように、受波フォーカスデータメモリ32にアドレスデータとして記憶していた。
【0105】
一方、本実施の形態1では、ラスタが切り替わり、受波の読み出しが開始されるときの読み出し開始アドレスを、予め初期値記憶部12、19に記憶しておく。
【0106】
すなわち、受波フォーカスの遅延を計算する基準となる超音波振動子に対する読み出しアドレスの差、たとえば、256が初期値であり、受波信号の受波フォーカスの2段目が基準チャンネルに対して、アドレスの差がたとえば240、受波信号のサンプリング周期がT(ns)(ただし、nsは10~9秒を示す)とした場合、最初の受波フォーカスの遅延量は256×T(ns)、2段目は240×T(ns)となる。
【0107】
したがって、本実施の形態1では、256を初期値として第1の初期値記憶手段12に記憶しておき、2段目の受波フォーカス切り替えの時、初段のアドレス256の2段目の遅延量240との差分値を差分データ付与部15より、アドレス加算手段14に与える。
【0108】
遅延メモリ10に与える受波フォーカス2段目の受波フォーカスデータは、256と240との差である16が、第1の差分データ付与手段15よりアドレス加算手段14に与えられる。また、受波フォーカス切り替え時の遅延メモリ10のアドレスを第1のセレクタ24により選択し、アドレス加算に与えられ、遅延メモリに与えられるアドレスが計算され、メモリアドレス設定手段13により遅延メモリ10に与えられる。
【0109】
これにより、遅延メモリのアドレスとして240を2進数で表すために、8bitのアドレスデータが必要であったものが、読み出しアドレスの差である16を2進数で表すための4bitのアドレスデータですむので、データ数を減らせる。
【0110】
次に、受波信号処理手段4をhチャンネル、ラスタ数をM、受波フォーカス段数をnとした場合の1番目のチャンネルについて説明する。
【0111】
まず、1番目のラスタの1番目の受波フォーカスデータに対する遅延メモリ読みだし開始アドレスが、予め全体制御手段29より入力され、第1の初期値記憶手段12に記憶されている。
【0112】
これは、電源投入時、超音波探触子を判定して、全体制御手段29にある図示しないROMから転送される。
【0113】
なお、第1の初期値記憶手段12および第2の初期値記憶手段19は、全ラスタの各受波フォーカスデータの初期値を記憶しておいてもよい。
【0114】
また、図示しない情報処理装置の演算部(CPU、DSP)で、超音波探触子データに関連する、周波数、振動子ピッチ、走査タイプ等のデータから演算により与えてもよい。
【0115】
1番目のラスタの受波フォーカスの1段目の受波フォーカスデータは、この場合、遅延メモリ10の最初の読み出しアドレスA111を第1の初期値記憶手段12から読み出し、アドレス加算手段14に入力する。
【0116】
一方、差分データΔA111が、差分受波フォーカスデータ部28から第1の差分データ付与手段15に入力され、差分データΔA111が第1の差分データ付与手段15からアドレス加算手段14に入力され、メモリアドレス設定手段13の出力であるA111と、第1の差分データ付与手段の出力であるΔA111とが加算される。このとき、受波フォーカスの段数は1なので、当然ΔA111は0である。
【0117】
したがって、読み出し開始クロックに同期して、遅延メモリ10からアドレスA111に記憶された受波信号が読み出される。
【0118】
一方、補間手段11においても遅延メモリ10の制御と同様であるが、一般に補間は、種々の係数を設定する必要があるので、受波フォーカス位置が変わるまで、すなわち、受波フォーカスの段数が変わるまで、それまでの係数が記憶されている補間係数メモリ16のアドレスは一定である。ただし、遅延メモリの場合は、受波フォーカスデータは同様に切り替え開始時に一つ与えるが、遅延メモリ10の読み出しアドレスは、基本的にサンプリングクロックでカウントアップされていく。
【0119】
第2の初期値記憶手段19に1番目のラスタの受波フォーカスの1段目の受波フォーカスデータである補間係数B111が記憶されており、読み出されたデータが補間データアドレス加算手段17に入力され、差分データであるΔB111が差分受波フォーカスデータ手段28から第2の差分データ付与手段18に入力され、差分データΔB111が第2の差分データ付与手段18から補間アドレス加算手段17に入力され、第2のセレクタ25の出力であるB111と、第2の差分データ付与手段の出力であるΔB111とが加算される。
【0120】
このとき、受波フォーカスの段数は1なので当然ΔB111は0である。したがって、読み出し開始クロックに同期して補間係数メモリ16のB111のアドレスに記憶されている補間データが補間手段11に設定され、補間処理される。
【0121】
なお、補間データは、補間方法により異なり、1個の場合もあるし複数の場合もある。
【0122】
次に、受波フォーカス段が1だけ進んだ2段目の場合について、図2および図3に基づいて説明する。
【0123】
遅延記憶部10の読み出しアドレスは、次の受波フォーカスの切り替えまでにk個の受波信号を処理すると仮定すると、切り替え時の遅延記憶部10の読み出しアドレスは、A111+kである。
【0124】
2段目の差分受波フォーカスデータがΔA112とすると、A111+kを差分の基準とする必要が生じる。すなわち、実際に遅延メモリ10の読み出しに必要なアドレスは、A111+k+ΔA112である。
【0125】
したがって、遅延記憶部10のアドレスであるメモリアドレス設定手段13の出力を第1のセレクタ24に入力し、初段の受波フォーカスのみ初期値を選択し、次の受波フォーカスの段からは、遅延記憶部10のアドレスを選択することによって、遅延メモリ10に付与すべき遅延アドレスを実現する。
【0126】
また、遅延メモリ10を、受波ビーム形成において必要な最大遅延時間を実現するワード数より少し多めにしたワード数で構成したメモリとした場合には、アドレス加算手段14および補間アドレス加算手段17の出力が、その遅延メモリ10の最大ワード数(最大アドレス数)を超えた場合、この超えた分のアドレスをデータとしてメモリアドレス設定手段13や、補間係数メモリのアドレスとして与えることによって、遅延メモリ10の容量を小さくできる。
【0127】
このとき、受波データの遅延メモリへの書き込みは、最大アドレスを超えたら最初の0アドレスに戻ることになる。
【0128】
補間手段11においても遅延メモリの制御と同様であり、図3に示すように、補間係数メモリ16のアドレスを第2のセレクタ25でフィードバックすることで実現する。
【0129】
本実施の形態1において、同時に複数の受波ビームを形成する場合、前述するように構成した受波信号処理手段4と、加算手段5とを複数ビーム分だけ並列に設け、各々で遅延メモリ10、補間手段11の受波フォーカスデータの付与を前述の複ビームでない場合と同様の処理を行なうことにより、受波フォーカスデータの軽減を実現できる。
【0130】
また、受波信号処理手段4の1個分の回路を使用して、受波データの処理を時分割処理して行なう場合は、受波開始の受波フォーカスデータの初期値を同時に形成するビーム数の分だけ第1の初期値記憶手段12および第2の初期値記憶手段19に記憶しておき、遅延制御手段10、補間手段11による制御(このときの制御は、アドレス制御、補間係数の読み出し制御である)は、時分割で処理する。
【0131】
本実施の形態1に用いるフォーカスデータメモリのメモリ構成の一例を図10に示し、以下、図10に基づいて、フォーカスデータメモリの概略構成を説明する。
【0132】
なお、図10に示すフォーカスデータメモリは、たとえば、1ワードが8ビットのメモリであり、第1および第2の初期値記憶手段12、19に記憶されるアドレス初期値が8ビット、第1および第2の差分データ付与手段15、18に記憶される差分が4ビットである。
【0133】
フォーカスデータメモリのアドレス0(ゼロ)に第1番目のラスタの遅延メモリ10の読み出しアドレス初期値A111、アドレス1に補間係数メモリアドレスB111を、アドレス2に、遅延メモリ10の読み出しアドレスΔA111、補間係数メモリアドレスΔB111、アドレス3に、同じく1番目のラスタのフォーカス2段目の差分データがはいる。
【0134】
フォーカス段数をnとした場合、メモリアドレスn+2に2番目のラスタのデータが1番目のラスタと同様の順番に入る。
【0135】
また、ラスタの数がMであるとする場合、これをM回繰り返す構成となる。
【0136】
以上、図10に示すように、本実施の形態1においては、フォーカスデータメモリに格納するアドレス情報は、ラスタの数とそれぞれ同数の第1および第2の初期値記憶手段12、19に記憶されるアドレス初期値が8ビットであり、他の差分は4ビットとなるので、フォーカスデータメモリを低減できる。
【0137】
したがって、受波信号処理手段を構成する回路規模を小さくできる。
【0138】
(実施の形態2)
図4は本発明の実施の形態2の受波信号処理手段の1チャンネル分の概略構成を示すブロック図であり、20は第1の検出時間誤差付与手段(位相ずれアドレス値格納手段)、21は第2の検出時間誤差付与手段(位相ずれアドレス値格納手段)を示す。
【0139】
図4において、第1の検出時間誤差付与手段20は、生体内の音速不均一により生じる受波フォーカスのぼけを補正するためのアドレス値を格納する手段であり、特に、遅延メモリ10に格納される受波信号を読み出す際の隣接チャンネル間での検出時間の誤差分に相当するアドレス値を格納する。
【0140】
第2の検出時間誤差付与手段21は、生体内の音速不均一により生じる受波フォーカスのぼけを補正するためのアドレス値を格納する手段であり、特に、補間手段11に与える補間データを選択する際の隣接チャンネル間での検出時間の誤差分に相当するアドレス値を格納する。
【0141】
なお、本実施の形態2の第1の検出時間誤差付与手段20および第2の検出時間誤差付与手段21に格納するアドレス値の算出方法については、後述する。
【0142】
図5は、隣接チャンネル間での検出時間の誤差分に相当するアドレス値を求める手段の一例の概略構成を示すブロック図であり、22は相関器(位相ずれ検出手段)、23は受波フォーカスデータ変換手段(補正アドレス計算手段)を示す。
【0143】
図5において、相関器22は隣接チャンネルの遅延後の信号間の位相差を求める周知の相関器であり、本実施の形態においては、隣接する超音波振動子に接続する受波信号処理手段4の出力に基づいて、隣接チャンネルの遅延後の信号間の位相差を求める。また、その出力は、受波フォーカスデータ変換手段23に接続される。
【0144】
受波フォーカスデータ変換手段23は、相関器22の位相差出力に基づいて、時間差および補間係数に対応するアドレス値を求める手段であり、たとえば、情報処理装置で実行されるプログラム、あるいは、予め周知のROM(Read Only Memory)に格納したデータを読み出すことによって実現可能である。
【0145】
次に、図4および図5に基づいて、本実施の形態2の受波信号処理手段4の動作を説明すると、受波フォーカスデータは、生体内の音速を均一とみなした想定音速によって、受波フォーカス点までの距離差による遅延時間を計算し、各振動子で受波する受波信号に与えて、受波フォーカスを実現している。このとき、送波も同様である。
【0146】
しかしながら、実際には生体内の音速の不均一の存在のために、遅延時間に誤差を生じ超音波ビームが正しく受波フォーカスされないということが周知であり、本実施の形態2では、遅延した後で隣接する超音波振動子間の位相差を検出(遅延時間が正しければ位相差0)して、想定音速より求めた遅延時間を補正する方法を適用している。
【0147】
したがって、図5に示すように、相関器22によって、まず、受波信号処理手段4による隣接チャンネルの遅延後の信号間の位相差を求め、次に、この位相差を受波フォーカスデータ変換手段23で時間差および補間係数に変換した後、各々のアドレス値を求める。
【0148】
このときの時間差は、サンプリング時間で量子化して遅延メモリ10のアドレス増減分値とできる。また、補間係数値も補間係数メモリ16の係数値の量子化単位で量子化して、その値を補間係数メモリのアドレスの増減分値とする。
【0149】
前述するようにして求めた増減分値のアドレス値を、図4に示す第1および第2の検出時間誤差付与手段20、21に保持する。
【0150】
次に、前述する実施の形態1で説明した受波フォーカスデータの第1および第2の差分データ付与手段15、18より与えられる差分値と、第1および第2のセレクタ24、25で選択された受波フォーカス開始アドレスとを、各々の加算器すなわちアドレス加算手段14および補間データアドレス加算手段17で加算することにより、生体不均一による受波フォーカスデータのずれを補正する。
【0151】
このとき、たとえば、第1番目の受波信号処理手段4と第2番目の受波信号処理手段4とで遅延時間の誤差としてΔC、補間係数の誤差をアドレス変換してΔDが、それぞれ検出された場合、チャンネル2すなわち第2番目の受波信号処理手段4の1番目のラスタで2段目の受波フォーカスは以下に示すようになる。
【0152】
次の受波フォーカスの切り替えまでにk個の受波信号を処理すると仮定すると、切り替え時の遅延メモリ10の読み出しアドレスは、A211+kとなる。
【0153】
2段目の差分受波フォーカスデータがΔA212とすると、必要なアドレスは、A211+k+ΔA212+ΔCとなり、一方、補間係数メモリ16のアドレスは、B211+ΔB212+ΔDとなる。
【0154】
すなわち、第1の検出時間誤差付与手段20にはΔCが、第2の検出時間誤差付与手段21にはΔDが格納され、差分データと共にそれぞれアドレス加算手段14および補間データアドレス加算手段17に出力される。
【0155】
したがって、遅延メモリ10から読み出される受波信号、および、この受波信号に補間を行うために補間係数メモリ16から読み出される補間係数に含まれることになる生体不均一による受波フォーカスデータのずれを、より少ないメモリ量で補正できる。
【0156】
(実施の形態3)
図6は本発明の実施の形態3の受波信号処理手段の1チャンネル分の概略構成を示すブロック図であり、26は第1の初期処理ばらつき付与手段(ばらつき値アドレス格納手段)、27は第2の初期処理ばらつき付与手段(ばらつき値アドレス格納手段)を示す。
【0157】
図6において、第1の初期処理ばらつき付与手段26は、各超音波振動子から各受波信号処理手段4に至るまでの受波信号の初期の時点における各超音波診断装置に固有の誤差を補正するための定数を格納しておく手段であり、特に、遅延メモリ10に格納される受波信号を読み出す際の各超音波診断装置に固有の誤差を補正するための定数を格納する。
【0158】
第2の初期処理ばらつき付与手段27は、各超音波振動子から各受波信号処理手段4に至るまでの受波信号の初期の時点における各超音波診断装置に固有の誤差を補正するための定数を格納しておく手段であり、特に、補間係数メモリ16に格納される補間係数を読み出す際の各超音波診断装置に固有の誤差を補正するための定数を格納する。
【0159】
なお、本実施の形態3においては、第1の初期処理ばらつき付与手段26および第2の初期処理ばらつき付与手段27は、遅延メモリ10および補間係数メモリ16の読み出しアドレス値を補正するための定数を格納する手段であり、たとえば、全体制御手段29の図示しない記憶部に記憶しておき、超音波装置の電源投入と共に主メモリ上に読み出すことにより実現する。
【0160】
また、第1および第2の初期処理ばらつき手段26,27のデータは、オフセットとして、それぞれ第1および第2の初期値記憶手段12,19に図示しない加算器により加算されるものである。
【0161】
次に、図6に基づいて、本実施の形態3の受波信号処理手段4の動作を説明すると、まず、各超音波振動子から各受波信号処理手段4に至るまでの受波信号の初期の時点における超音波診断装置に固有の誤差、すなわち、受波回路での受波信号の初期処理ばらつきの補正について説明する。
【0162】
受波回路の初期処理ばらつきすなわち誤差を検出するには、種々の方法が考えられるが、本実施の形態3では、たとえば、生体内の音速の不均一補正の検出手段である実施の形態2の図5に示す相関処理を用いる。
【0163】
すなわち、超音波装置の出荷時の検査や、超音波装置の電源投入時に隣接する超音波振動子間の位相差をを測定するものである。
【0164】
前者の場合、たとえば、超音波探触子1を水槽にセットし、次に、平板ターゲットをこの超音波探触子1と平行にセットした後、超音波の送受波を行なう。このとき、ある程度超音波装置をエージングしておくことにより、受波を行うアナログ回路部分の温度差による特性の変化の影響がないようにして、すなわち、超音波装置全体の温度が落ち着いてから隣接する超音波振動子間の位相差の測定を行なう。
【0165】
このとき、予め設定した特定のラスタで、図5に示す相関器22よって計測した位相差が超音波装置特有の遅延時間のばらつきの値となる。
【0166】
このばらつきの値が受波フォーカスデータ手段23によって、受波フォーカスデータの誤差アドレスに変換される。変換後の誤差アドレスの値は、前述するように、たとえば、全体制御手段29の図示しない記憶部に記憶しておき、超音波装置の使用時にその値を読み出し、第1および第2の初期処理ばらつき付与手段26、27にセットする。
【0167】
すなわち、実施の形態3の超音波装置に接続される超音波探触子全てについて、予め装置の出荷前の段階で装置毎に特有の遅延時間のばらつきの測定を行ない、得られた遅延時間のばらつきを装置内のたとえば外部記憶装置等に記憶しておく。
【0168】
超音波装置の使用時には、たとえば、全体制御手段29の図示しない選択手段が接続される超音波探触子1を認識して、その超音波探触子1を接続した時に該当する遅延時間ばらつきデータを選択し、第1および第2の初期処理ばらつき付与手段26、27に選択した超音波探触子1を接続した時の遅延時間ばらつきデータをセットすることによって、超音波装置特有の遅延時間のばらつきを補正できる。
【0169】
ただし、遅延時間ばらつきデータは、セクタ走査のときには口径移動がないので超音波振動子から受波信号の通過経路が一定であるので、ラスタによらず一定と考えられ、診断開始時に第1および第2の初期処理ばらつき付与手段26、27に一度記憶する。
【0170】
一方、リニア等の口径移動のある超音波探触子1を用いる場合は、各受波信号処理段4までの経路が異なるので、ラスタ毎に補正値を診断開始時に第1および第2の初期処理ばらつき付与手段26、27に記憶しておく。
【0171】
診断開始時に第1および第2の初期処理ばらつき付与手段26、27に口径移動に伴う経路の違いによる遅延時間の誤差が少ないと考えられる場合には、セクタ走査の場合と同様に、超音波装置特有の遅延時間のばらつきデータは一つでよい。また、このときの補正アドレスは、全体制御手段29において、初期値に取り入れてから各受波信号処理手段4の第1および第2の初期値記憶手段12、19に転送してもよいことはいうまでもない。
【0172】
(実施の形態4)
図7は本発明の実施の形態4の受波信号処理手段の1チャンネル分の動作を説明するための図であり、図7(a)は受波信号処理手段の1チャンネル分の概略構成を示すブロック図であり、図7(b)は多層サンプリングクロックの選択の方法を説明するための図である。
【0173】
図7において、31は多層サンプリングクロック発生手段、33は誤差補正付与手段を示ており、多層サンプリングクロック発生手段31は、周知の多層クロック発生手段である。
【0174】
誤差補正付与手段33は、超音波装置固有の特性ばらつきや、生体の音速不均一による遅延時間誤差を補正するために必要な遅延時間を有するサンプリングクロックを選択する手段であり、詳細は後述する。
【0175】
本実施の形態4の受波信号処理手段は、微小遅延を補間処理ではなく、公知技術であるサンプリングクロックを多層有して、基準となる受波信号処理手段4のADCサンプリングクロックから所定の微小時間ずれたクロックを選択し、このクロックで受波信号をサンプリングすることによって、基準となる超音波振動子との遅延時間をサンプリング時間間隔より小さな微小遅延を実現し、そのサンプリングされた受波信号を遅延メモリ10に記憶し、遅延を受波信号の遅延をサンプリング間隔で行う、周知の波面同期サンプル(凹面サンプル)へ本発明を適用した場合の実施の形態である。
【0176】
ただし、本実施の形態4においては、ADC9のサンプリングクロックは、サンプリングクロック発生手段31により与えられる。
【0177】
次に、図7(b)に基づいて実施の形態4の受波信号処理手段の動作を説明すると、この図に示すように、サンプリングクロックの周期はTであり、ΔT時間単位でずらしたサンプリングクロックを複数もつ。
【0178】
なお、本実施の形態4では、サンプリングクロックは4層とする。
【0179】
各受波信号処理手段4のADC9は、その4層のサンプリングクロックのどれかを選択する。この4層のサンプリングクロックを選択するためには、2bitの制御信号が必要となる。このサンプリングクロックの選択データが、受波フォーカスデータの一つである。
【0180】
さらには、サンプリング間隔での遅延が、前述の場合と同じであり、第1の初期値記憶手段12、第1の差分データ付与手段15、アドレス加算手段14およびメモリアドレス設定手段13により与えられる。
【0181】
サンプリングクロック発生手段31は4層のサンプリングクロックを選択する選択データに、前述するのと同様に、超音波装置固有の特性ばらつきや、生体の音速不均一による遅延時間誤差を補正するための補正値を検出し、サンプリング周期で量子化した余りをさらに、多層サンプリングクロックの差ΔTで量子化し、後者の値でサンプリングクロックを補正する(選択するデータ)データに、受波フォーカスデータ変換手段23で変換する。
【0182】
受波フォーカスデータ変換手段23は、変換されたサンプリングクロック選択データを差補正付与部33に与える。
【0183】
たとえば、サンプリング間隔40ns、多層クロック間の差ΔTがΔT=10ns、想定音速による差分遅延量が220nsの場合、Tでの量子化により、アドレスが5で、その余りは20nsとなり、微小遅延が20nsとなる。
【0184】
このとき、遅延メモリ10の遅延量は200nsとなる。
【0185】
また、微小遅延クロック選択データが2(微小遅延クロック選択データ=1、2、3でそれぞれ、基準チャンネルとのクロック差が10ns、20ns、30nsとする)、遅延メモリ10の差分アドレスが、200ns/40ns=5となる。
【0186】
種々の誤差の合計が+90nsであった場合、−90nsの補正が必要となる。
【0187】
したがって、90/40=2余り10nsであるから、サンプリングクロック発生手段31に与える微小遅延クロック選択データに−1を与え、2−1=1であり、10nsのずれのサンプリングクロックが選択される。
【0188】
また、遅延メモリ10の検出時間誤差には、−2が入力される。
【0189】
この結果として、5−2=3が差分データとなり、補正がされることになる。
【0190】
以上に示す実施の形態1〜4において、各受波信号処理手段4を一つあるいは複数チャンネル集積することにより、超音波診断装置を小形、低価格化できることはいうまでもない。
【0191】
また、この集積化ASICには、制御手段として、CPU(Central Processing Unit、中央演算装置)、または、DSP(Digital Signal Processer、)の様な演算手段を集積して、受波フォーカスデータや生体内の音速の不均一の検出の演算等を行わせることにより、超音波診断装置の受波フォーカスの全体制御を軽減できることはいうまでもない。
【0192】
さらには、基板単位、超音波装置全体でのCPU制御でもよい。
【0193】
また、本実施の形態では、ADC9のサンプリングクロックと、後段の受波処理のクロックは同じものとしてその動作の説明をしたが、たとえば、図9に示すように、ADC9の後に、複素ミキシング手段34を設け、この出力により複素信号とし、低周波(あるいはゼロ周波数)に移動することによって、オーバーサンプリングを実現し、低周波に移動してフィルタ35でその成分を抽出した後、デシメートして信号数を減らし、その後の遅延メモリ10、補間手段11のクロックを遅くすることもできる。
【0194】
このとき、クロックはそのままでもよいことはいうまでもない。
【0195】
また、ゼロ周波数に移動した受信信号を遅延メモリ10に移動し、前述と同様に読み出しでサンプリング間隔の遅延をし、その複素信号を補間手段11で処理する。この処理は位相を回転する処理となる。
【0196】
なお、本実施の形態の超音波装置は、セクタ走査方式の超音波装置であるが、口径移動するリニア方式およびコンベックス方式等の他の方式の超音波装置にも適用可能なことはいうまでもない。
【0197】
また、本発明は低速のADCの内でも、そのサンプリング周期が、たとえば、20MHzから60MHzのものに対して、特に、前述する効果が顕著となる。
【0198】
以上、本発明者によってなされた発明を、前記発明の実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記発明の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
【0199】
【発明の効果】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記の通りである。
【0200】
(1)超音波装置において、ディジタル化された受波ビ−ムの形成に使用する受波フォーカスデータを軽減できる。
【0201】
(2)超音波装置において、受波信号処理手段を構成する回路の面積を小さくできる。
【0202】
(3)超音波装置において、各処理手段における超音波診断装置個々に特有の時間ばらつきを補正できる。
【0203】
(4)超音波装置において、被検体内の各部位で音速分布が異なることにより生じる遅延誤差を補正できる。
【0204】
(5)超音波装置において、遅延メモリの記憶容量を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の超音波装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1の受波信号処理手段の1チャンネル分の基本構成を説明するためのブロック図である。
【図3】実施の形態1の受波信号処理手段の概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態2の受波信号処理手段の1チャンネル分の概略構成を示すブロック図である。
【図5】隣接チャンネル間での検出時間の誤差分に相当するアドレス値を求める手段の一例の概略構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態3の受波信号処理手段の1チャンネル分の概略構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態4の受波信号処理手段の1チャンネル分の動作を説明するための図である。
【図8】本実施の形態1の受波信号処理手段の動作を説明するための図である。
【図9】ADCのサンプリングクロックと後段の受波信号処理手段のクロックとが異なる超音波装置の概略構成を示すブロック図である。
【図10】本実施の形態1のフォーカスデータメモリのメモリ構成の一例を示す図である。
【図11】従来の超音波装置の概略構成を示すブロック図である。
【図12】従来の超音波装置の受波処理手段の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1…超音波探触子、2…アナログ送受切り替え回路、3…送波回路、4…受波信号処理手段、5…加算手段、6…信号処理手段、7…表示手段、9…アナログ−ディジタル変換器、10…遅延メモリ、11…補間手段、12…第1の初期値記憶手段、13…メモリアドレス設定手段、14…アドレス加算手段、15…第1の差分データ付与手段、16…補間係数メモリ、17…補間データアドレス加算手段、18…第2の差分データ付与手段、19…第2の初期値記憶手段、20…第1の検出時間誤差付与手段、21…第2の検出時間誤差付与手段、22…相関器、23…受波フォーカスデータ変換手段、24…第1のセレクタ、25…第2のセレクタ、26…第1の初期処理ばらつき付与手段、27…第2の初期処理ばらつき付与手段、28…差分受波フォーカスデータ手段、29…全体制御手段、31…多層サンプリングクロック発生手段、32…受波フォーカスデータメモリ、33…誤差補正付与手段、34…複素ミキシング手段、35…フィルタ。

Claims (5)

  1. 超音波を送波および受波する複数の超音波振動子と、該超音波振動子が受波した超音波信号をデジタル信号に変換する変換手段と、該変換手段の出力を格納する受波データ格納手段と、該受波データ格納手段に格納される受波信号を読み出す際のアドレス値を可変し遅延処理するメモリアドレス設定手段と、該遅延された受波信号を補間処理し微小遅延を行う補間処理手段と、該補間処理後の複数の受波信号を加算する信号加算手段と、該加算した信号を所定の順番に出力する出力制御手段と、該出力信号に基づいた超音波画像を表示する表示手段とを有する超音波装置であって、
    前記受波データ格納手段に格納される受波信号データの内、1番目に読み出す受波信号のアドレス値を格納する初期アドレス格納手段と、各フォーカス段毎の受波信号のアドレス値の差分値を格納する差分値格納手段と、前記差分値格納手段から前段の受波信号のアドレス値との差分値を出力する受波信号アドレス値の差分データ付与手段と、前記1番目に読み出す受波信号のアドレス値と前記受波信号アドレス値の差分データ付与手段から出力されるアドレス値とを加算するアドレス加算手段と、
    補間係数を格納する補間係数格納手段と、該補間係数格納手段に格納される補間係数の内、1番目に読み出す補間係数のアドレス値を格納する初期補間係数アドレス格納手段と、各フォーカス段毎の補間係数アドレス値の差分値を格納する補間係数差分値格納手段と、前記補間係数差分値格納手段から前段の補間係数アドレス値との差分値を出力する補間係数アドレス値の差分データ付与手段と、前記1番目に読み出す補間係数のアドレス値と前記補間係数アドレス値の差分データ付与手段から出力されるアドレス値とを加算する補間係数アドレス加算手段とを具備し、
    前記メモリアドレス設定手段は前記アドレス加算手段で得られるアドレス位置から順次受波信号を得て遅延処理し、前記補間処理手段は前記補間係数格納手段から前記補間係数アドレス加算手段で得られるアドレス位置に格納される補間係数を得て、該補間係数に基づいて前記遅延された受波信号を補間処理することを特徴とする超音波装置。
  2. 前記複数の超音波振動子により受信された受信信号を遅延し位相合わせをした受信信号における各超音波振動子間の前記受信信号の位相ずれを検出する位相ずれ検出手段と、該位相ずれ検出手段の出力値に基づいて、位相ずれの補正値に相当するアドレス値を計算する補正アドレス計算手段と、該補正アドレス値を格納する位相ずれアドレス値格納手段と、該位相ずれアドレス値に基づいて、前記アドレス加算手段に入力する前記受波信号のアドレス値の差分値または/および前記補間係数アドレス加算手段に入力する前記補間係数アドレス値の差分値を補正する手段とを具備することを特徴とする請求項1に記載の超音波装置。
  3. 装置ごとの個体差に基づく超音波計測特性を予め計測し、該計測値に基づいて算出した補正値に相当するアドレス値を格納するばらつき値アドレス格納手段と、該ばらつき値アドレス格納手段のアドレス値に基づいて、前記1番目に読み出す受波信号のアドレス値または/および前記1番目に読み出す補間係数のアドレス値を補正する手段とを具備することを特徴とする請求項1または2に記載の超音波装置。
  4. 前記受波データ格納手段は、前記変換手段でデジタル信号に変換した超音波信号を所定の容量内で順番に格納していき、変換後の超音波信号が前記受波データ格納手段の容量を超えたときには、前記受波データ格納手段の先頭から容量を超えた分の超音波信号を格納する手段であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の超音波装置。
  5. 前記アドレス加算手段の出力するアドレス値と前記受波データ格納手段の容量とを比較し、前記アドレス加算手段の出力するアドレス値が前記受波データ格納手段の容量を越えるアドレス値となった場合、該越えたアドレス値から前記受波データ格納手段の容量分のアドレス値を減算し、該アドレス値に基づいて、前記フォーカス段に該当する受波信号を順次読み出す読み出しアドレス設定手段を具備することを特徴とする請求項4に記載の超音波装置。
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