JP3867971B2 - 高温用トリチウム増殖材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、核融合炉用トリチウム増殖材料において、結晶粒が微細化し機械的強度も増大するとともに、高温使用時でも結晶粒の粗大化が抑制され、トリチウム保持量が小さく、さらに機械的強度の低下もなく、かつ化学的に安定な性能を有する高温用トリチウム増殖材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
核融合炉ブランケットは核融合炉内部で使用される機器であり、プラズマの熱や放射線から炉容器を防護するとともに、発電のための熱交換を行い、さらにプラズマから放射された中性子を利用して核融合炉燃料であるトリチウムを製造する機能を有する。トリチウムは、ブランケット内部に装荷したトリチウム増殖材料中のリチウムと中性子との反応により製造される。そのためトリチウム増殖材料は、核融合実験炉での使用温度200℃〜400℃で、優れた熱伝導性、熱的安定性、化学的安定性、優れた機械的特性、照射環境における構造安定性、及び優れたトリチウム放出特性が要求される。トリチウム増殖材料の候補材としては、リチウムタイタネート(Li2TiO3)や酸化リチウム(Li2O)が挙げられており、特に、Li2TiO3は、核融合実験炉における使用温度(200〜400℃)条件下でトリチウム増殖材料として適用可能な見通しが得られている。
【0003】
また、Proc. of the 8th International Workshop on Ceramic Breeder Blanket Interactions(1999)、富山大学水素同位体機能研究センター研究報告第20巻(2000)、Proc. of the 9th International Workshop on Ceramic Breeder Blanket Interactions(2000)、及びFusion Technology, vol.39(2001)には、酸化チタン(TiO2)を添加したリチウムタイタネート(Li2TiO3)となる材料が核融合実験炉における使用温度(200〜400℃)条件下でトリチウム増殖材料としても適応可能となったことが記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
発電用核融合炉でトリチウム増殖材料を使用する場合、使用温度が600〜1000℃であるため、トリチウム増殖材料は高温時使用の裕度を考慮して1100℃までの温度で上記特性を有することが必要である。しかしながら、現在のトリチウム増殖材候補材料であるリチウムタイタネート(Li2TiO3)は、1100℃の高温で結晶粒が最大15μmまで成長するため、トリチウム保持量が約10倍大きくなり安全性に問題があるとともに、機械的強度が約30%以上低下し、割れ及びクラックが生じた。さらに、還元作用によりリチウム化合物が分解され、リチウムタイタネートが粉々になり、スイープガスの流路閉塞が生じる可能性があることから、使用不可能であった。なお、上記4つの文献には、酸化チタン(TiO2)を添加したリチウムタイタネート(Li2TiO3)となる材料について記載されているが、1100℃までの高温で使用可能であることについては開示されていない。
【0005】
しかし、本発明においては、現在のトリチウム増殖材料の候補材であるリチウムタイタネートに酸化物を添加することにより、結晶粒が微細化し、リチウムタイタネートよりも2倍の機械的強度となる。更に900〜1100℃の使用温度状況下で高い放射線場に晒されても、その健全性を保持しつつ、内部での核発熱を利用して適切な温度範囲で制御されるとともに、結晶粒成長を起こさず、低いトリチウム保持量を有し、機械的強度の低下も小さく、かつ化学的に安定でリチウム化合物の還元反応を起こさない高温用トリチウム増殖材料を開発するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、トリチウム増殖材料であるリチウムタイタネート(Li2TiO3)に各種酸化物を添加して、結晶粒の粗大化が抑制され、かつ化学的に安定で還元反応を起こさない高温用トリチウム増殖材料の開発をした。
【0007】
リチウムタイタネートに添加される酸化物としては、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化ベリリウム、酸化カルシウム、酸化ガドリウム及び/又は酸化ジルコニウムが使用されるが、その化学系及び融点は下記の表1に示すとおりである。
【0008】
本発明の高温用トリチウム増殖材料に添加する酸化物は、基材となるリチウムタイタネート(Li2TiO3)と酸化物との化学的反応性が小さいこと、Li2TiO3の融点(約1500℃)よりも高融点を有すること及び不活性ガス中での還元反応が小さい元素から構成されるものを選択した。また、添加する酸化物は、中性子照射により放射化量が小さいことも必要である。なお、トリチウム増殖比(TBR)を1以上確保するため、リチウムタイタネートに添加される酸化物の添加量は1〜20mol%とした。
【0009】
【実施例】
上記に記述した酸化物として、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化ベリリウム、酸化カルシウム、酸化ガドリウム及び/又は酸化ジルコニウムについて、上記条件を満足するために実施した具体的な実施例について述べる。
【0010】
(実施例1)
表1に示されるように、リチウムタイタネート微粉末(平均粒子径:約0.5μm)、1〜20mol%の各種酸化物(粒子径:0.1〜1.0μm)及びバインダー(ステアリン酸、5〜9wt%)をエタノール中にて湿式混合した。混合は均一化を図るため、1時間程度攪拌した後、造粒した。混合、造粒終了後、数時間加熱することによりエタノールを完全除去した。次に、上記造粉した粉末を1.5 t/cm2〜2.0 t/cm2にて圧粉体に成形した。最後に、バインダー除去後、そのまま昇温し、所定の温度(900℃〜1400℃)で焼結した。
【0011】
得られたディスク形状の各種酸化物を添加したリチウムタイタネートを各々ヘリウムガス雰囲気中600℃で500時間及び1100℃で500時間の使用模擬試験を行い、試験後、ディスク試料の外観観察及び走査電子顕微鏡(SEM)観察による結晶粒径の測定をした。
【0012】
これらの結果、ディスクの外観に割れ及びクラックは生じていなかったことから、機械的強度は保持されていたことを確認した。また、使用模擬温度が600℃の時は、結晶粒の成長は試験前と比較して最大1μm、使用模擬温度が1100℃の時は、結晶粒の成長は試験前と比較して最大3μmであり、酸化物を添加していないリチウムタイタネート(比較材)ディスクの結晶粒の成長と比較して小さかった。さらに、酸化物を添加したリチウムタイタネートの還元反応は、前記比較材よりも小さかった。
【0013】
(実施例2)
リチウムタイタネート微粉末(平均粒子径:約0.5μm)及び1〜20mol%の各種酸化物(粒子径:0.1〜1.0μm)を混合し、原料粉末を調整した。この原料粉末を高分子樹脂化合物(ポリビニルアルコール(PVA))の水溶液中に分散させて滴下原液を調整し、滴下原液をノズルから液浴であるアセトン中に滴下した。アセトン中に滴下した滴下原液は、粒の形を形成させると同時に粒状となった液滴を液浴と接触させてポリビニルアルコール水溶液をゲル化させて湿潤ゲル球体を製作した。湿潤ゲル球を乾燥後、仮焼してポリビニルアルコールを取り除き、所定の温度(900℃〜1400℃)で焼結し、直径1mmの微小球を製作した。なお、得られた酸化物を添加したリチウムタイタネート(Li2TiO3)微小球の圧潰荷重を測定したところ、同じ結晶粒径をもつリチウムタイタネート(比較材)微小球の圧潰荷重の約2倍大きい値であった。
【0014】
この微小球形状の各種酸化物を添加したリチウムタイタネートをヘリウムガス雰囲気中600℃で500時間及び1100℃で500時間の使用模擬試験を行った。試験後、微小球試料の外観観察及び走査電子顕微鏡(SEM)観察による結晶粒径の測定をした。これらの結果、ディスクの外観に割れ及びクラックは生じていなかったことから、機械的強度は保持されていたことを確認した。また、使用模擬温度が600℃の時は、結晶粒の成長は試験前と比較して最大1μm、使用模擬温度が1100℃の時は、結晶粒の成長は試験前と比較して最大3μmであり、酸化物を添加していないリチウムタイタネート微小球(比較材)の結晶粒の成長と比較して小さかった。さらに、酸化物を添加したリチウムタイタネートの還元反応は、前記比較材よりも小さかった。
【0015】
これらの結果と前述した条件とを比較評価し、酸化物を添加した場合のリチウムタイタネートの特性として表1に示した。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
【表3】
【0019】
【発明の効果】
本発明により、リチウムタイタネート(Li2TiO3)微小球に各種酸化物を添加することにより、結晶粒が微細化し機械的強度も2倍程度増大するとともに、高温で長時間使用時における結晶粒の粗大化が抑制され、低いトリチウム保持量を有するとともに、機械的強度の低下がなく、かつ化学的安定性を有するトリチウム増殖材料を得ることができた。
Claims (1)
- トリチウム増殖材料の候補材料であるリチウムタイタネート(Li2TiO3)を基材に、これに粒子径 0.1 〜 1 μ m であり、添加量 1 〜 20mol% である酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化ベリリウム、酸化カルシウム、酸化ガドリウム又は酸化ジルコニウムを添加後成形し、900℃〜1400℃で焼結することにより結晶粒の粗大化が抑制できる高温用トリチウム増殖材料であって、ヘリウムガス雰囲気中600℃で500時間及び1100℃で500時間の加熱後の結晶粒径の成長が、加熱前と比較して、それぞれ最大1μm及び最大3μmである、前記材料。
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