JP3867953B2 - ダイアタッチペースト及び半導体装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、接着性、硬化性に優れた半導体用ダイアタッチペースト及び信頼性に優れた半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造工程における半導体素子の接着、いわゆるダイボンド工程での生産性の向上を目的とし、ダイボンダー、ワイヤボンダー等を同一ライン上に配置したインライン硬化方式が採用され、今後益々増加する傾向にある。このため従来行われてきたバッチ方式によるダイアタッチペーストの硬化条件に比較し、硬化に要する時間は著しく制限され、例えばオーブン硬化方式の場合には、150〜200℃で60〜90分間で硬化を行っていたが、インライン硬化方式の場合には、150〜200℃で15〜90秒間での硬化が要求されている。
又半導体素子のサイズが大型化するに伴い、銅フレームを使用する半導体製品のインライン硬化に際して、半導体素子と銅フレームとの熱膨張係数の差に基づく半導体素子の反り量の最小限化及び銅フレームの酸化防止のためにも低温硬化が求められるようになってきている。
更には環境対応の一環として半導体装置を基板に搭載する際に使用する半田から鉛を除去撤廃するために半田リフロー温度を従来の220〜245℃から260〜270℃にする必要があるが、半田リフロー温度の上昇に伴い発生する熱応力の増加に対する耐性もより一層求められるようになってきている。
【0003】
従来用いられてきたポリイミド樹脂系のダイアタッチペーストの場合、N−2−メチル−ピロリドン、ジメチルホルムアミド等の高沸点溶媒を使用しているため、90秒以下の短時間での硬化は難しく、短時間で硬化を行うためには硬化温度を250℃以上にしなければならないため硬化中に著しくボイドが発生してしまい接着力の低下、導電性、熱伝導性の悪化等の半導体装置の特性低下につながっていた。
一方、現在主流であるエポキシ樹脂系のダイアタッチペーストの場合には、例えばアミン系硬化剤等を用いることにより、60秒程度での硬化は可能であるが、15〜30秒といった超短時間硬化への対応はなされていない。
更に大型半導体素子に対応するため弾性率を小さくして低応力性を重視したダイアッタチペーストの場合、高温での接着力が十分でなく260〜270℃といった高温での半田リフロー時に剥離が発生し、場合によっては半導体素子のクラックに進展し信頼性の点でも不満足なものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、接着性、速硬化に優れた半導体用ダイアタッチペースト性及び特に耐半田クラック性等の信頼性に優れた半導体装置を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
[1](A)数平均分子量500〜5000で、かつ1分子内に少なくとも1つの2重結合を有する炭化水素又はその誘導体、(B)1分子内に少なくとも一つのラジカル重合可能な2重結合を有する化合物、(C)1分子内に少なくとも1つの第一アミノ基を有する化合物、(D)ラジカル重合触媒及び(E)充填材を必須成分とし、エポキシ樹脂を含まない半導体用ダイアタッチペーストであり、成分(C)が[成分(A)+成分(B)]の合計重量100重量部に対し0.3〜10重量部含まれることを特徴とする半導体用ダイアタッチペースト、
[2]1分子内に少なくとも1つの第一アミノ基を有する化合物(C)が、ジシアンジアミド又はヒドラジド化合物である第[1]項記載の半導体用ダイアタッチペースト、
[3]第[1]項又は[2]項記載のダイアタッチペーストを用いて製作されることを特徴とする半導体装置、
である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる数平均分子量500〜5000で、かつ1分子内に少なくとも1つの2重結合を有する炭化水素又はその誘導体(A)としては、例えばブチルゴム、イソプレンゴム、ポリブタジエン等のジエン系ゴム或いはスチレン−ブタジエン共重合体、ヒドロキシカルボニル基、エポキシ基を有するポリブタジエン等又はその誘導体が挙げられ、これらは単独で用いても2種類以上を用いてもかまわない。これらの内で好ましいものとしてはマレイン化ポリブタジエン又はその誘導体とエポキシ化ポリブタジエンとの併用である。これは硬化中にヒドロキシカルボニル基或いはその無水物とエポキシ基の反応により短時間で高分子量化するため良好な硬化性を示し、より短時間での硬化が可能となるためである。又用途がダイアタッチペースト(以下、ペーストという)用のためイオン性の不純物としては100ppm以下のものがより好ましい。
【0007】
数平均分子量500〜5000で、かつ1分子内に少なくとも1つの2重結合を有する炭化水素又はその誘導体(A)を用いるのは、硬化物に柔軟性を付与するためで、硬化物の柔軟性は広い温度域での良好な接着性を発現させ、特に260〜270℃といった高温での高接着性は半田リフロー時に発生する剥離を抑制するために不可欠である。例えば架橋密度が高く柔軟性のない硬化物では、硬化物の凝集力は高いがリードフレーム或いはダイとの界面での良好な接着力を発現することは難しい。
成分(A)の数平均分子量は500〜5000が好ましく、数平均分子量が500未満だと硬化物中に十分な架橋点間距離を導入することが難しく期待する効果が得られない。一方5000を越えると粘度が高く期待する効果を発現するのに必要な量を配合することができないので好ましくない。ここで数平均分子量の測定法は、GPCによるポリスチレン換算値である。
【0008】
本発明で用いられる1分子内に少なくとも一つのラジカル重合可能な2重結合を有する化合物(B)としては、例えば脂環式(メタ)アクリル酸エステル、脂肪族(メタ)アクリル酸エステル、芳香族(メタ)アクリル酸エステル、脂肪族ジカルボン酸(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ジカルボン酸(メタ)アクリル酸エステルの等が挙げられる。
【0009】
本発明に用いられる成分(A)の配合量は、[成分(A)+成分(B)]の合計重量中に20〜70重量%含まれるものが好ましく、20重量%未満であると接着性が悪くなり、70重量%を越えるとペーストの作業性に問題が生じるので好ましくない。
成分(B)の配合量は、[成分(A)+成分(B)]の合計重量中に30〜80重量%含まれるものが好ましく、30重量%未満であるとペーストの作業性が悪くなり、80重量%を越えると接着性に問題が生じるので好ましくない。
【0010】
本発明に用いられる1分子内に少なくとも1つの第一アミノ基を有する化合物(C)としては、ジシアンジアミド或いはイソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、カーボジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物が挙げられ、これらは単独でも混合して用いてもよい。
成分(C)を用いる理由としては、アミノ基がラジカル開始剤分解反応の促進作用を有するため硬化反応の促進が図れることと、ペースト中にカルボニル基を有する化合物がある場合には反応して硬化物の凝集力向上を図れることによる。
成分(C)は、[成分(A)+成分(B)]の合計重量100重量部に対して0.3〜10重量部含まれるものが好ましい。0.3重量部未満だと目的とする効果が十分に発現されず、10重量部を越えるとペースト中の固形分が多くなり過ぎ作業性の悪化につながるので好ましくない。
【0011】
本発明で用いられるラジカル重合触媒(D)は、通常ラジカル重合に用いられている触媒であれば特に限定しないが、望ましいものとしては、急速加熱試験(試料1gを電熱板の上にのせ、4℃/分で昇温した時の分解開始温度)における分解温度が40〜140℃となるものが好ましい。分解温度が40℃未満だと、ペーストの常温における保存性が悪くなり、140℃を越えると硬化時間が極端に長くため好ましくない。
これを満たす触媒としての具体例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシバレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、P−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、桂皮酸パーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、α、α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチ−ルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等が挙げられるが、これらは単独或いは硬化性を制御するため2種類以上を混合して用いることもできる。更にペーストの保存性を向上するために各種重合禁止剤を予め添加してもよい。
ラジカル重合触媒(D)の配合量は、[成分(A)+成分(B)]の合計重量100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、10重量部を越えるとペーストの粘度の経時変化が大きくなり作業性に問題が生じ、0.1重量部未満だと期待する硬化性を発現できないおそれがあり好ましくない。
【0012】
本発明に用いる充填材(E)としては、通常銀粉が使用されるが、金粉、窒化アルミニウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ等も使用可能である。
本発明のペーストには、必要によりカップリング剤、消泡剤、界面活性剤等の添加剤を用いることができる。
本発明のペーストは、例えば各成分を予備混合した後、3本ロールを用いて混練した後真空下脱泡することにより製造することができる。
本発明のペーストを用いて半導体装置を製作する方法は、公知の方法を用いることができる。
【0013】
以下実施例を用いて本発明を具体的に説明する。
配合割合は重量部で示す。
【実施例】
実施例1〜5、比較例1〜3
成分(A)として、マレイン化ポリブタジエン(数平均分子量:約1000、日本石油化学(株)製、M−1000−80)又はアクリル変性ポリブタジエン(マレイン化ポリブタジエンとメタアクリル酸のエチレングリコールとのエステル化物とを反応させた化合物)(数平均分子量:約1000、日本石油化学(株)製、MM−1000−80)、エポキシ変性ポリブタジエン(数平均分子量:約1000、日本石油化学(株)製、E−1000−8)、成分(B)としてラウリルアクリレート(共栄社化学(株)製、ライトエステルLA)、成分(C)としてジシアンジアミド(試薬、融点209.5℃、以下DICY)、セバチン酸ジヒドラジド(日本ヒドラジン工業(株)製、SDH、融点185〜189℃)、成分(D)としてジクミルパーオキサイド(急速加熱試験における分解温度:126℃、日本油脂(株)製、パークミルD)、成分(E)として平均粒径3μm、最大粒径20μmのフレーク状銀粉(以下銀粉)、グリシジル基を有するシランカップリング剤(信越化学工業(株)製、KBM−403E)を表1のように配合し、3本ロールを用いて混練し、脱泡後ペーストを得た。なお比較例3ではビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応により得られるジグリシジルビスフェノールA(エポキシ当量180、室温で液体、以下ビスAエポキシ)、クレジルグリシジルエーテル(エポキシ当量185、以下CGE)、フェノールノボラック樹脂(水酸基当量104、軟化点85℃、以下PN)、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業(株)製、キュアゾール2PHZ)を使用した。得られたペーストを以下の方法により評価した。評価結果を表1に示す。
【0014】
評価方法
・粘度:E型粘度計(3°コーン)を用い25℃、2.5rpmでの値をダイアタッチペースト作製直後と25℃、48時間放置後に測定した。作製直後の粘度が15〜25Pa.sの範囲内で、かつ48時間後の粘度増加率が20%未満の場合を合格とした。粘度増加率の単位は%。
・接着強度:ペーストを用いて、6×6mmのシリコンチップを銅フレームにマウントし、200℃のホットプレート上で30秒ならびに60秒硬化した。硬化後、自動接着力測定装置を用い260℃での熱時ダイシェア強度を測定した。260℃熱時ダイシェア強度が50N/チップ以上の場合を合格とした。又30秒硬化での値に比較し60秒硬化での値の変化率が20%未満の場合を合格とした。接着強度の単位はN/チップ。接着強度変化率の単位は%。
・耐半田クラック性:表1に示すペースト組成物を用い、下記のリードフレームとシリコンチップを、下記の硬化条件により硬化し、接着した。その後スミコンEME−7026(住友ベークライト(株)製)の封止材料を用い、封止したパッケージを60℃、相対湿度60%、192時間吸湿処理した後、IRリフロー処理(260℃、10秒、3回リフロー)を行い、処理後のパッケージを超音波探傷装置(透過型)により剥離の程度を測定した。ダイアタッチ部の剥離面積が10%未満の場合を合格とした。剥離面積の単位は%。
パッケージ:QFP(14x20x2.0mm)
リードフレーム:スポットメッキした銅フレーム
チップサイズ:6×6mm
ダイアタッチペースト硬化条件:ホットプレート上で200℃、60秒
【0015】
【表1】
Figure 0003867953
【0016】
【発明の効果】
本発明のダイアタッチペーストは、接着強度、速硬化性に優れ、特に銅リードフレームと半導体素子の接着に用いた場合、得られた半導体装置は耐半田クラック性に優れており、その結果高信頼性の半導体装置を得ることができる。

Claims (3)

  1. (A)数平均分子量500〜5000で、かつ1分子内に少なくとも1つの2重結合を有する炭化水素又はその誘導体、(B)1分子内に少なくとも一つのラジカル重合可能な2重結合を有する化合物、(C)1分子内に少なくとも1つの第一アミノ基を有する化合物、(D)ラジカル重合触媒及び(E)充填材を必須成分とし、エポキシ樹脂を含まない半導体用ダイアタッチペーストであり、成分(C)が[成分(A)+成分(B)]の合計重量100重量部に対し0.3〜10重量部含まれることを特徴とする半導体用ダイアタッチペースト。
  2. 1分子内に少なくとも1つの第一アミノ基を有する化合物(C)が、ジシアンジアミド又はヒドラジド化合物である請求項1記載の半導体用ダイアタッチペースト。
  3. 請求項1又は2記載のダイアタッチペーストを用いて製作されることを特徴とする半導体装置。
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