JP3866471B2 - 光ディスク装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディスク状情報記録媒体を使用し、再生した信号からクロストーク成分を除去する光ディスク装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ディスクの高密度化は、線密度の増加とトラックピッチの縮小を基本として達成される。また、ディスクを再生する光学系も、高密度化と同時にビームスポツト径の縮小が要求される。ビームスポット径は、光源の波長に比例し、対物レンズの開口数(NA)に反比例する。したがって高密度化に伴い光源の波長は短波長化する必要がある。また、ディスクの基板厚を一定とすると、ディスクチルト時に発生するコマ収差は波長に反比例して増加するため、短波長化分だけコマ収差が増加することになる。ここでチルトとはビームの光軸と、ディスクの情報記録面の垂線とが成す角を示し、特に信号再生時のクロストーク増加において問題となるのはディスクラジアル方向(半径方向)のチルトである。
【0003】
従って、高密度化によりトラックピッチが縮小されるとディスクラジアルチルト時のクロストークが急激に増加することが懸念される。
【0004】
このような信号中に漏れ込むクロストーク成分を信号処理によって取り除く試みがこれまでになされてきた。例えば、特開平3−40225に開示されている光ディスク信号再生装置では、中央トラックおよび両隣トラックの3トラックからの再生信号を同時に得ることができるようなピックアップを用い、得られた3つの再生信号を信号処理することでクロストーク成分の除去を行なっている。
【0005】
この公知例では、3ビームによる再生信号をそれぞれ独立に周波数特性を可変できる周波数特性変換器群に入力し、中央のビームによる再生信号に対する周波数特性変換器出力と、両隣接ビームによる再生信号に対する周波数特性変換器出力とを合成して出力する。
【0006】
これらの周波数変換器の周波数特性は、予め定められたプリアンブル信号を再生しているときは、各周波数特性変換器の出力を加算して得られる再生出力と、予め定められたプリアンブル信号系列に等しいリファレンス信号系列を用いて、LMS適応アルゴリズムにより周波数特性変換器のタップ係数を更新する。
【0007】
また、プリアンブル信号の再生が終了したときには、上記の再生出力と再生出力の判定器出力を用いてLMS適応アルゴリズムによりタップ係数を更新していく。
【0008】
このように、信号処理を行なうことによりプリアンブル信号以外のデータを、クロストーク成分および符号間干渉を除去して再生することができるというものである。
【0009】
また、他の公知例としては特開平9−320200に開示されている記録情報再生装置がある。この従来の記録情報再生装置においても、中央トラックおよび両隣トラックの3トラックからの再生信号を同時に得ることができるピックアップを用い、得られた3つの再生信号を信号処理することでクロストーク成分の除去を行なっている。
【0010】
このとき、記録媒体上のトラックから記録情報の再生を行ない、中央トラックからの第1の再生信号を得ると共に、このトラックに隣接する隣接トラックから第2の再生信号を得て、これら第1、第2の再生信号を各々サンプリングして第1サンプリング値系列及び第2サンプリング値系列に各々変換する。次に、かかる第2サンプル値系列を可変係数フィルタにてフィルタリング処理することによりクロストーク成分を求め、上記第1サンプリング値系列からこのクロストーク成分を減算したものをサンプル値系列として得る。この際、かかるサンプル値系列のデータのうち、ゼロクロスサンプル値を抽出し、このゼロクロスサンプル値が0に収束するようにLMS適応アルゴリズムを用いて上記可変係数フィルタのフィルタ係数を更新する。
【0011】
すなわち、第1の再生信号が本来0となるべきタイミングでのサンプル値を抽出して、このサンプル値が0でない場合には、その誤差分に応じたクロストークが生じていると判断し、この誤差分に対応したサンプル値が0に収束するように可変係数フィルタのフィルタ係数を更新するのである。
【0012】
このように更新したフィルタのタップ係数を用いた上記可変フィルタにて第1および第2のサンプル値系列をフィルタリング処理し、第1サンプル値系列から第2サンプル値系列を減算するとクロストーク成分が除去されたサンプル値系列が得られる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、今後高密度化が進むにつれてクロストークの影響の増大が懸念される。従って、クロストーク除去装置の性能としてもより高い性能が要求されることとなる。
【0014】
上記の特開平3−40225に開示されている光ディスク信号再生装置では、周波数特性変換器のタップ係数を更新するときに適応アルゴリズムを用いている。適応アルゴリズムではタップ係数が逐次、例えば1チャネルビット毎に得られることが特徴である。しかしその反面、プリアンブル信号長によっては十分なタップ係数値に収束しないという問題がある。言い換えると、十分なタップ係数値に収束するためには、プリアンブル信号長を長く取る必要があり、その分光ディスクのユーザデータの記録容量が低下してしまうという問題がある。
【0015】
また、この光ディスク信号再生装置では、プリアンブル信号以外を再生しているときには、再生出力を二値化した信号をリファレンス信号の代わりに用いてタップ係数の更新を続行している。しかし、この方式では、プリアンブル信号以外信号領域において、タップ係数が最適値から劣化する方向に変化してしまい、クロストーク除去の性能が悪化してしまうという問題もある。
【0016】
一方、上記の特開平9−320200に開示されている記録情報再生装置の場合は、中央トラックからの信号の値が0近辺の領域のみを参照してクロストーク成分の除去を行なうので、中央トラックの取り得る全信号レベル領域におけるクロストーク成分の漏れ込み特性の変化に対応していない。したがって、十分にクロストーク成分を除去できないという問題があった。
【0017】
そこで、本発明は、高密度化された光ディスク装置において、目標トラックを再生したときの再生信号に漏れ込むクロストーク成分を効率良く除去し、特にディスクがチルトした場合など、クロストークが急増したときに問題となる再生信号の信頼性の低下を抑制することができる光ディスク装置を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記の問題点を解決するために本発明の光ディスク装置は、光ディスク上の目標トラックとその両側隣接トラックの3トラックに光ビームを同時に照射し、その反射光を検出し前記3トラックに記録された情報を電気信号に変換し、再生信号として提供する再生手段と、前記再生手段から提供される前記3トラックの再生信号の周波数特性を各々補正し、トランスバーサルフィルタで構成された等化手段と、前記等化手段の補正特性を制御する制御手段と、前記等化手段による等化後の前記目標トラック再生信号から、等化後の両隣接トラック再生信号を減算する減算手段と、前記減算手段による減算後の信号から記録情報を復調する復調手段とを具備する。
【0019】
前記制御手段は、前記トランスバーサルフィルタのタップ係数群を変化させることで前記等化手段の周波数特性を補正する回路であって、前記3トラックより再生された信号値系列を観測値系列として入力し、前記目標トラックより再生された信号値系列に対応した予め決められた信号値系列を理想値系列として有する。更に前記制御手段は、前記観測値系列と前記タップ係数群の関係式であって、前記タップ係数群の一次結合で表される関係式によって求まる測定値系列と、前記理想値系列との残差の複数チャネルビットに渡る二乗和が、最小となる条件を満たすタップ係数群を一括処理により求め、これをトランスバーサルフィルタのタップ係数とすることによりクロストーク成分を除去する。
【0020】
前記制御手段は、前記タップ係数群の導出の際、前記目標トラックにおける既知の学習データ系列を複数チャネルビットに渡って再生した信号値系列を用いる。つまり、前記タップ係数群は前記学習データ系列再生信号のmチャネルビットに渡る測定値系列及び理想値系列を用いた一括処理により求められる。
【0021】
また、前記制御手段は、前記再生手段が前記目標トラックの前記学習データ系列と学習データ系列の中間を再生しているときには、直前の学習データ系列にて求めたタップ係数群の値を保持するように、前記等化手段を制御する。
前記学習データ系列としては、ユーザデータ中に含まれる同期コード、またはヘッダ領域に含まれるID、またはヘッダ領域に含まれるアドレスマークを用いることができる。
【0022】
前記光ディスク上の学習データ系列の再生においては、目標トラックにのみ予め決められたデータが記録されており、その両隣接トラックには通常のユーザデータが記録されている。
【0023】
前記光ディスク上に前記学習データ系列と同一のデータ系列が、クロストークが低減された状態で記録された理想値系列生成用データ領域を設け、該理想値系列生成用データ領域を再生したときの再生信号をサンプリングしたデータを、前記理想値系列として用いることができる。この学習データ系列はディスクのリードイン、リードアウト領域に設けることができる。
【0024】
前記光ディスク上の学習データ領域のデータは、単一の周波数信号ではなく、ユーザデータの占有周波数帯域内の一定あるいは全帯域幅を占有するデータパターンである。
【0025】
従って本発明によれば、高密度化された光ディスク装置において、目標トラックを再生したときの再生信号に漏れ込むクロストーク成分を効率良く除去し、特にディスクがチルトした場合など、クロストークが急増したときにおいても再生信号の信頼性を損なわない光ディスク装置を提供することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0027】
図1は本発明の一実施形態にかかる光ディスク装置の構成を表す図である。
【0028】
レーザ光源1より放射された光ビームはコリメートレンズ2で平行光となり、回折格子3に入射する。光ビームは回折格子3において回折されて0次光、および±1次光の3本のビームとなり、偏光ビームスプリッタ(以下PBS)4、4分の1波長板5を透過し、対物レンズ6により光ディスク7の情報記録面に集光される。
【0029】
集光されたビームは、図示しないフォーカスサーボ・トラッキングサーボ系により、記録面上に最良の微小スポットが得られる状態で維持されるように制御される。
【0030】
このときの光ディスク記録面上でのビームスポットの配置の例を図2に示す。
【0031】
3個のビームスポットのうちセンタビームが再生すべきデータが記録された目標トラック(トラックn)に照射され、その両隣接トラック(トラックn−1、トラックn+1)に左および右ビームが照射される。
【0032】
これらのビームスポットによる反射光は対物レンズ6を逆方向に透過し、再度平行光となる。
【0033】
反射光は4分の1波長板5を透過し、入射光に対して垂直な偏光を持ち、PBS4では反射される。PBS4で反射されたビームは集光レンズ8により収束光となり、光検出器9に入射される。光検出器9は複数の領域に分割されており、3ビームによる信号は独立に検出される。このとき、センタビームによる反射光は光電変換されて信号Scとなり、左ビームおよび右ビームによる反射光は各々信号Sl、Srとなる。
【0034】
信号Sl、Sc、Srは、それぞれ遅延回路11、12、13に送られ、各ビームの照射位置のトラック走査方向の時間的ずれが補正される。すなわち、遅延回路11、12、13通過後の信号は3ビームが互いに真横を走査した場合の信号となる。
【0035】
したがって、光ディスク上で最も先行した位置を再生したビーム(図2では左ビーム)に対する遅延量は最も長く、最後方を再生したビーム(図2では右ビーム)に対する遅延量は最も短くなる。このとき、遅延回路11〜13のうち最も短い遅延量を与える遅延回路は省略しても構わない。
【0036】
遅延回路11、12、13で各々の位相ずれが補正された信号Sl′、Sc′、Sr′は波形等化回路14、15、16で各々独立に周波数特性が補正される。波形等化回路14、15、16は例えば5タップのトランスバーサルフィルタで構成される。すべての波形等化回路の等化特性はタップ係数演算回路17からの制御信号、例えばタップ係数値により制御される。タップ係数演算回路17は、波形等化回路14、15、16からのタップ信号群を入力として、後述する手法によりセンタビームによる信号Sc′に含まれるクロストーク成分を効率良く除去するために、波形等化特性を制御する制御信号を波形等化回路14、15、16に出力する。波形等化回路14、15、16により周波数特性が適当に補正された信号Sl″、Sc″、Sr″は減算器18においてSc″からSl″およびSr″が減算されることによりクロストーク成分が除去され、信号SEが得られる。信号SEが復調回路19にて所定のデータ復調動作が行なわれることによりユーザデータが生成される。
【0037】
次に、クロストークキャンセラ20の内部構成について詳細に説明する。
【0038】
波形等化回路14、15、16は、例えば図3のようなトランスバーサルフィルタからなる。この図では5タップのトランスバーサルフィルタを示すが、特にタップ数に理論的な制限はなく、タップ数が多い程詳細な周波数特性の補正が可能となる。ただしあまりタップ数が多いと回路規模が大きくなりコストアップにつながることになるので、設計の際には注意が必要である。
【0039】
図3はセンタビームからの信号Sc′に対して適用されるトランスバーサルフィルタの例である。このトランスバーサルフィルタは、遅延回路30と係数乗算器35〜39および加算器40から構成される。図1の遅延回路12からの信号Sc′は、遅延回路30に入力される。遅延回路30は複数段、この例では4段の単位遅延素子31〜34を縦続接続したものであり、複数個のタップC1〜C5を有する。各遅延素子は信号Sc′がアナログ信号である場合には例えばディレイラインによって構成される。デジタル信号である場合には例えばDフリップフロップにて構成することが出来る。この例では全ての遅延素子はτの遅延時間をもつ素子であるが、各々異なる遅延時間を持たせることも可能である。
【0040】
各タップC1〜C5からの出力信号は各々乗算器35〜39にて重み係数β1〜β5が乗じられた後、加算器40にて足し合わされて、波形等化された信号Sc″が得られる。なお、タップ信号C1〜C5はタップ係数演算回路17に出力されタップ係数の算出に用いられる。乗算器35〜39における係数は可変係数であり、各係数β1〜β5は、タップ係数演算回路17により制御され、決定される。トランスバーサルフィルタの周波数応答は、そのタップ係数により自在に変化させることが可能である。本発明では、タップ係数演算回路17が波形等化回路14、15、16の等化特性を制御する。
【0041】
なお、左及び右ビームからの信号Sl′、Sr′に対するトランスバーサルフィルタも基本的に図3と同一構成のものが適用され、各々タップ係数演算回路17からタップ係数を制御されることにより隣接トラックからのクロストーク成分に対応した信号Sl″、Sr″が得られる。なお、Sl′、Sr′に対するトランスバーサルフィルタのみタップ数を7タップにするなどの仕様の変更は可能である。
【0042】
次にタップ係数演算回路17の内部構成を図4にて説明する。
【0043】
タップ係数演算回路17は理想値系列テーブル52を有している。この理想値系列テーブル52は、光ディスク7上の予め決められたデータが記録されている学習データ領域のデータパターンを、クロストークがない条件で再生したときの理想波形をサンプリングした理想値系列が記録されている。これは予め光ディスク装置メーカにおいて理想条件における再生波形を記憶させておいても良いし、光ディスク7上の例えばリードインエリアにクロストークが無い、すなわち両隣接トラックにマーク列が無いデータ領域に学習データパターンを記録しておき、そのデータ領域を再生したときの波形を理想値として取り込んで理想値系列テーブル52に記録しても良い。
【0044】
図5に学習データ領域のマーク列とそれに対応した理想値系列の例を示す。トラックnの学習データ領域の特定パターンに対応した理想的な再生信号を、例えば1チャネルビット毎にサンプリングして離散データとしてmチャネルビット分のデータを保有する。この場合は1チャネルビット辺り8bitの分解能とすると、理想値系列保存用にメモリ51上のm×8bit分の領域を占有する。
【0045】
一方、タップ係数演算回路17は、光ディスク7上の学習データ領域を再生した際の、波形等化回路14、15、16からのタップ信号L1〜L5、C1〜C5、R1〜R5を観測値としてメモリ51に蓄積する。このとき、5×3=15タップによるタップ信号を理想値系列のサンプリング周期と同一周期、例えば1チャネルビット毎にサンプリングする。データ長も理想値系列長と同じく、例えばmチャネルビット分のデータをメモリ51に蓄える。この場合は1チャネルビット辺り8bitの分解能とすると、15×m×8bit分のメモリ51上の領域を3ビームにより再生信号系列用に必要とする。
【0046】
以上の例ではm=1000とすると、理想値系列と再生信号値系列用に合わせて128Kbitの容量をメモリ51上に占有することになる。
【0047】
こうして、学習データ領域を再生した後では、例えば学習データ領域のデータ長がmチャネルビットであるとすると、mチャネルビット分の3ビーム再生信号値(観測値)系列(15×m)と、理想値系列テーブル52からの理想値系列(1×m)がメモリ51に蓄えられることになる。
【0048】
さて、ここでタップ係数演算回路17にタイミング信号を送信するタイミング検出回路21の動作について説明する。タイミング検出回路21は、センタビームによる再生信号Sc′をモニタし、学習データ領域の終了部を検出し、そのタイミング信号をタップ係数演算回路17内部のバス54に送信する。学習データ領域は既知のデータを記録しておくので、その終了部を検出するのは可能である。マイコン53は、バス54よりタイミング信号を検出し、学習データ領域の再生終了と同時に、以下に詳述するような線形最小二乗法アルゴリズムにより、タップ係数を乗じた観測値系列と理想値系列との残差の二乗和が最も少なくなるような、すなわち観測値系列が理想値系列に最も近付くようなタップ係数の最適解を求めて出力する。
【0049】
マイコン53では、タイミング検出回路21からのタイミング信号が検出される毎にタップ係数の演算を行なって、タップ係数を更新する。また、タイミング信号とタイミング信号の間では、前回の演算結果のタップ係数群の値をホールドして出力する。すなわち、ある学習データ領域から次の学習データ領域までの間のユーザデータを再生している時には、直前の学習データ領域で計算したタップ係数値をホールドして、波形等化回路14、15、16に出力しておくのである。これは、学習データ領域以外においては理想値系列が得られないためであり、例えばユーザデータを二値化した結果を理想値系列として仮に設定しても、結果としてクロストークキャンセルに十分有効なタップ係数値が求まらないからである。つまり、未知のユーザデータを再生しているときには、学習データ領域で求めたタップ係数値をホールドしておいた方が良好な結果が得られることになるため、このような構成とする。
【0050】
さて、線形最小二乗法によるタップ係数の決定には、まず観測値系列と未知数系列(この場合タップ係数)との関係式fから、各チャネルビット毎に測定値yを求める。このとき関係式fは未知数についての一次結合であればどのような式でもよいが、図3のようなトランスバーサルフィルタを考えた場合、関係式は各タップに重み付けのタップ係数を乗算した式、
【0051】
【数1】
【0052】
のように表される。ここで、qi1〜qi15はi番目のチャネルビットにおける観測値、すなわちタップ信号L1〜L5、C1〜C5、R1〜R5である。またx1〜x15が未知数、すなわちタップ係数α1〜α5、β1〜β5、γ1〜γ5である。
【0053】
【数2】
【0054】
(2)が各パラメータxjに関して最小となるためにはその微分が0となればよい。
【0055】
【数3】
【0056】
これを未知パラメータxj ′(j′=1〜15)に関して整理すると、
【0057】
【数4】
【0058】
となる。これは、次のような連立一次方程式である。
【0059】
【数5】
【0060】
ただし、
【0061】
【数6】
【0062】
であり、これらはすべて既知の量で表される定数である。よって、式(2)に基づく最小二乗条件を満たすタップ係数は、上の連立一次方程式を解くことによって求まる。すなわち、
【0063】
【数7】
【0064】
によって求めたタップ係数を記述することができる。
【0065】
したがって、マイコン53では、メモリ51上の観測値系列および理想値系列から上述のような連立方程式の解を求める問題を解くことによりタップ係数の最適解を求めることができる。
【0066】
このように、複数チャネルビット(mビット)に渡る観測値系列と理想値系列を用いて一括処理によりタップ係数を求めることにより、従来の適応アルゴリズムを用いた場合に比べて、タップ係数の最適値への収束性が向上する。例として、最小二乗法の解法アルゴリズムによるタップ係数の収束性の違いを表したグラフを図6に示す。
【0067】
横軸がタップ係数の計算に用いる信号系列の長さ(チャネルビット数)、縦軸がタップ係数値である。理論的には信号系列長が無限大の場合には両者は同じ値に収束する。
【0068】
図6より本発明による一括処理アルゴリズムの方が、従来の適応アルゴリズムよりも少ない信号系列長で収束値(この場合約1.75)に近付くことが分かる。したがって、一括処理アルゴリズムを用いた方が、適応アルゴリズムに比べて学習データ系列の長さを短くしても十分な性能が得られることになる。すなわち、学習データ系列によるユーザデータ容量の低下が抑えられ、実質的な容量向上につながる。
【0069】
こうして求まったタップ係数を波形等化回路14、15、16の各タップに適用することにより学習データ領域のデータがクロストークのない場合の波形理想値に近付くように等化係数が調整される。すなわちクロストーク成分が除去されることになるのである。
【0070】
以上詳述したような本発明によるタップ係数の最適化は、学習データ領域のトラックに特定周波数信号を記録し、目標トラックの再生信号に漏れ込む周波数成分を分析してクロストーク成分を漏れ込み量を抽出する公知の方式とは異なり、学習データパターンに特に制限はない。したがって、学習データパターンには通常のユーザデータに現われるパターンと同等のものを用いることが出来る。このように学習データパターンにユーザデータと同等のランダムデータを用いることにより、目標トラックの信号と隣接トラック信号それぞれの信号レベル変動を含む相関をランダムに加味することになり、目標トラックからの信号が0近辺のときのみを参照してクロストーク成分の除去を行なう従来の方式と比べると、よりきめ細かいクロストーク成分の除去が可能となる。
【0071】
また、学習データ領域は目標トラックにのみ既知データが記録されていればよく、両隣接トラックには通常のユーザデータが記録されていても構わない。つまり、両隣接トラックにも既知データを記録しておく必要があるような上記公知の方式にくらべて学習データ領域の容量が低減し、ディスク全体のユーザデータ領域が増加することになる。
【0072】
また、学習データ領域はクロストークキャンセラのために光ディスク7上の一定の領域に設定することが考えられるが、例えばDVDの通常のユーザデータ中に含まれる同期パターン(SYNCコード)を学習データとして用いることもできる。DVDでは、2KBで1セクタを構成しているが、この1セクタ中に26×32bitのSYNCコードが存在する。SYNCコードには予め決められた16種のパターンが繰り返し用いられているため、これらすべてのパターンに対する理想値系列を予め用意しておくことで、SYNCコード自体をタップ係数の最適化のための学習データとして利用できる。こうすることで、クロストークキャンセラのための新たなデータ領域を必要としないため、ユーザ記憶容量の低下を伴うことなくクロストークキャンセラを実現できることになる。
【0073】
また、学習データには、例えばDVD−RAMのヘッダ領域に含まれるIDコードやアドレスマークを用いることも出来る。
【0074】
また、学習データ領域は、ディスクのユーザデータ領域中に一定間隔(例えば1セクタ)を隔てて設置してもよいしディスクの最内周のリードインエリアと最外周のリードアウトエリアにのみ設けておいてもよい。
【0075】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、高密度化された光ディスク装置において、光ディスク上の予め決められたデータが記録された学習データ領域において3ビームにより再生された信号と、この学習データに対応した理想値系列から、3ビーム再生信号に対する波形等化回路のタップ係数を最小二乗法を用いて一括処理にて最適化することにより、目標トラックを再生したときの再生信号に漏れ込むクロストーク成分を効率良く除去し、特にディスクがチルトした場合など、クロストークが急増したときにおいても再生信号の信頼性を損なわない光ディスク装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光ディスク装置の全体構成を表すブロック図。
【図2】光ディスク上での3ビームの配置を表す図。
【図3】本発明の波形等化回路の構成を表す図。
【図4】タップ係数演算回路の構成を表すブロック図。
【図5】学習データ領域の理想値系列を表す図。
【図6】従来の適応アルゴリズムと本発明の一括処理によるタップ係数値の収束性の違いを表す図。
【符号の説明】
1…レーザ光源
2…コリメートレンズ
3…回折格子
4…偏光ビームスプリッタ
5…4分の1波長板
6…対物レンズ
7…光ディスク
8…集光レンズ
9…光検出器
11〜13…遅延回路
14〜16…波形等化回路
17…タップ係数演算回路
Claims (1)
- 光ディスク上の目標トラックとその両側隣接トラックの3トラックに光ビームを同時に照射し、その反射光を検出し前記3トラックに記録された情報を電気信号に変換し、再生信号として提供する再生手段と、
前記再生手段から提供される前記3トラックの再生信号の周波数特性を各々補正し、トランスバーサルフィルタで構成された等化手段と、
前記等化手段の補正特性を制御する制御手段と、
前記等化手段による等化後の前記目標トラック再生信号から、等化後の両隣接トラック再生信号を減算する減算手段と、
前記減算手段による減算後の信号から記録情報を復調する復調手段と、
を具備し、前記制御手段は、
前記トランスバーサルフィルタのタップ係数群を変化させることで前記等化手段の周波数特性を補正する回路であって、
前記3トラックより再生された信号値系列を観測値系列として入力し、前記目標トラックより再生された信号値系列に対応する予め決められた信号値系列を理想値系列として有し、
前記観測値系列と前記タップ係数群の関係式であって、前記タップ係数群の一次結合で表される関係式によって求まる測定値系列と、前記理想値系列との残差の複数チャネルビットに渡る二乗和が、最小となる条件を満たすタップ係数群を一括処理により求め、前記等化手段に適用し、
前記タップ係数群の導出の際、前記目標トラックにおける既知の学習データ系列を複数チャネルビットに渡って再生した信号値系列を用い、
前記再生手段が前記目標トラックの前記学習データ系列と学習データ系列の中間を再生しているときには、直前の学習データ系列にて求めたタップ係数群の値を保持するように、前記等化手段を制御することを特徴とする光ディスク装置。
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