JP3866132B2 - 親水性ポリイミド膜の形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、熱交換器に被覆する防食膜などに用いるため、親水化処理を施した高分子膜、特にポリイミド膜の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば空調機器用など、外部環境下においても長期にわたって耐久性能が求められる熱交換器の防食加工として、6価クロムを用いたクロムメッキによる防食膜をその表面に塗膜することが行われていた。金属クロムは毒性の強い重金属ゆえ、処理後に環境を介して人体に危険が及ぶおそれがあり、処理廃液に厳格な管理を要するなどの問題があった。このため、耐腐食性機能を有する有機化合物がその代替材料となり得るが、有機化合物を用いる場合、その熱伝導性がクロムなどの金属に比べて劣るため、熱交換性能を維持する目的で膜厚を数μm以下に留めて防食膜を形成する必要がある。
【0003】
ところが、塗装や塗布などにより数μm以下の膜厚で塗膜を行うのは容易ではなく、さらに、特に放熱板など熱交換器の構成部品は、放熱効率を増大させるため複雑な形状に形成されており、このような複雑形状の表面に、膜厚を均一に保って薄く塗膜を行うことは相当の困難を伴う。
【0004】
また、有機化合物は、その炭化水素骨格から、一般に、疎水性であるため、これにより防食膜などの被覆表面を形成すると、外気中の水分が結露として熱交換器表面に付着する。結露は、有機化合物にはじかれた微小の水分粒子を核として、その背後に水滴として形状保持できる限界まで成長して形成されるので、相当量の体積の水分を蓄積している。このような結露が、熱交換器の表面に付着する頻度が多くなると、有機化合物膜の膜厚をできるだけ小さくする要請と相俟って、結局、熱交換器表面の防食性能が低下してしまう。
【0005】
このため、上記のように有機化合物で構成される被覆表面にプラズマ表面処理などの親水化処理を行って湿潤性を向上させ、これにより有機化合物膜の表面の結露発生を防止することが行われている。しかし、プラズマ表面処理によるものでは、複雑形状の表面に処理を行う場合、プラズマ照射が行き届かない部分もあり、また、膜内部まで充分に親水化処理を行えないという問題が残る。さらに、それでも親水化処理の問題とは別に、有機化合物に用いる溶剤の廃液処理の取扱い問題が依然として解決されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑み、例えば、結露発生による防食性などの機能性の低下や、廃液処理等の環境問題を招かずに、熱交換器などの被覆対象物の表面に親水性イミド膜を形成する方法を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、ポリイミドの原料モノマーと、蒸着重合反応から孤立して存し得る親水性基を有する原料モノマーを1種類以上用いた蒸着重合反応により、形成される高分子に残る親水性基に基づいて当該高分子膜全体で湿潤性を有する親水性ポリイミド膜を形成するものとした。
蒸着重合法は、共蒸着させた1種類以上のモノマーを重合反応させて高分子(ポリイミド)薄膜が形成される乾式法であるので、このようにして被覆対象物の表面に高分子薄膜として形成するときに、廃液処理などの環境問題の発生を防止できる。
また、表面全体に気体状態のモノマー分子が流入して蒸着重合反応を行うことにより、例えば、熱交換器などの複雑形状の被覆対象物表面に均一な膜厚の高分子膜を形成することができる。そして、蒸着重合条件の設定により膜厚の制御が容易であるうえに不純物の混入が抑制されるという利点がある。
【0008】
さらに、本発明においては、原料モノマーとして、蒸着重合反応から孤立して存し得る親水性基を有するものを用いているため、形成される高分子に残る親水性基により高分子膜全体で湿潤性が良好で、結露の防止を抑制できる。また、この親水性基は、高分子膜の内部に一様に存在するため、このように形成された高分子膜は、外部環境にさらされて表面が侵食されても、その湿潤性能の経時劣化を抑制することができる。
【0009】
なお、上記した湿潤性によって高分子膜表面は、いわゆるぬれ性を保持することになるが、これによる水分環境は、結露の場合と比べて保持される水分量は相対的に小さく、上記した防食性能などの機能低下は限定的である。
【0010】
この場合、蒸着重合反応から孤立して存し得る親水性基は、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ケトン基及びスルホ基を好適例として例示することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、蒸着重合対象物に対して高分子薄膜から成る防食膜を被覆させるための蒸着重合装置の略断面図である。図1を参照して、蒸着重合装置1には、それぞれ図外のガス導入バルブを介してモノマーガスを導入する一対の第1ガス導入口2及び第2ガス導入口3と、図外の油拡散ポンプに連なる排気バルブ(図示せず)を介して排気作動を行うための真空排気口4とが設けられている。また、蒸着重合装置1の内部には、蒸着重合対象物として熱交換器5がその放熱板5aを前面にして配置されている。このとき、熱交換器5は、蒸着重合装置1の天井部1aから必要な張力に充分耐え得る索条6により懸吊されるなどして、そのいずれの面も遮蔽されることなく装置1内に露出されるようにしている。
【0012】
また、蒸着重合装置1は、内部の温度を制御できる図外の温度制御手段が設置されており、蒸着重合反応に必要な熱を供給できるように構成されている。そして、蒸着重合対象物たる熱交換器5の表面は、上記した温度制御手段により加熱された装置1の内壁からの輻射熱で全体が均等に加熱される。
【0013】
このように構成された蒸着重合装置1を用い、その内部に熱交換器5を配置した状態で、最初に真空排気口4に連なる図外の排気バルブにより真空排気を作動させて装置1の内部圧力を10―2Paに減圧し、この圧力状態を保ちながら図外の温度制御手段によりその内部を200℃に加熱してこの状態を保持する。そして、あらかじめ190.5℃に加熱した容器内の気体状態のピロメリット酸二無水物(PMDA)を第1ガス導入口2から、また、あらかじめ200℃に加熱した容器内の気体状態のジアミノ安息香酸(DBA)を第2ガス導入口3から同時に導入して、この状態で、熱交換器5の表面で蒸着重合反応を1時間に亘って進行させ、熱交換器5の表面全体に1μmの膜厚のポリイミド防食膜を均等に被覆する。
【0014】
このようにして形成されたポリイミド防食膜は、ポリイミド分子中に、ジアミノ安息香酸内のカルボキシル基が、蒸着重合反応に関与せずに残存しており、これに由来して、親水性を備えている。したがって、このときに得られた防食膜はこれにより湿潤性が向上して、熱交換器5の表面上に結露が付着することを防止できる。さらに、重合反応はポリイミド防食膜の内部全体で均等に行われるため、防食膜全体で湿潤性を有することができる。このため、外部環境にさらされて防食膜表面が侵食されても、その湿潤性能の経時劣化を抑制することができ、さらに、通常の親水化処理では困難であった、複雑形状の表面に対する湿潤性向上も可能となる。
【0015】
このようにして得られたポリイミド防食膜を被覆した熱交換器表面の水に対する接触角は約9°であり、良好な湿潤性を示すことが分かる。これに対して、ポリイミドの原料モノマーとして、上記したジアミノ安息香酸(DBA)の替りに、例えば、メタフェニレンジアミン(m−PDA)を用いて同様に、ポリイミド防食膜を形成し、これを被覆した熱交換器の表面に対し水に対する接触角を測定したところ、約80〜90°を示し、湿潤性に劣ることが分かる。
【0016】
このような結果は、メタフェニレンジアミン(m−PDA)は、残存親水性基、即ち、蒸着重合反応に関与せずに生成物中に残存するような親水性基(ジアミノ安息香酸(DBA)におけるカルボキシル基)を有する構造でないことが原因であると考えられる。
【0017】
なお、上記した湿潤性によって高分子膜表面は、いわゆるぬれ性を保持することになる。このような形での親水化は、結露の場合と比べて保持される水分量が小さく、例えば、防食性能などの機能低下は限定的であるといえる。
【0018】
また、本実施の形態に用いた蒸着重合反応条件により本発明が限定されるものではない。例えば、ポリイミド防食膜を反応生成させる場合の一方の成分、即ち、第2ガス導入口3から導入すべきアミノ成分のモノマーガスの例として、上記したDBA以外に、3,5-ジアミノベンジルアルコール(残存親水性基:水酸基)、2,5-ジアミノ安息香酸(残存親水性基:カルボキシル基)、3,5-ジアミノフェニル酢酸(残存親水性基:カルボキシル基)などを挙げることができる。
【0019】
そして、他方の成分、即ち、第1ガス導入口2から導入すべき酸成分のモノマーガスの例として、上記したPMDAに、蒸着重合反応に関与せずに生成物中に残存する親水性基を有する構造としたPMDA誘導体を用いても良い。
【0021】
ところで、本発明の実施の形態では、親水性ポリイミド膜の被覆対象物として空調器用の熱交換器を例示したが、それ以外にも、例えば屋外照明灯用金属製部品や船舶及び航空機用金属製部品、屋外観測機器用部品など、大きな変化を伴う外部環境に晒されて使用される多種類の耐久製品用途に適用可能である。
【0022】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の親水性ポリイミド膜の形成方法は、蒸着重合反応によるものであるため、例えば、熱交換器などの複雑形状の表面に対しても所望の膜厚の被膜を形成することができる。
【0023】
そして、原料モノマーとして、蒸着重合反応から孤立して存し得る親水性基を有するものを用いているため、形成される高分子に残存する親水性基により高分子膜全体で湿潤性が良好で、結露防止などに効果がある。
【0024】
また、この親水性基は、高分子膜の内部に一様に存在するため、このように形成された高分子膜は、湿潤性能の経時劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】蒸着重合装置の略断面図
【符号の説明】
1 蒸着重合装置
5 熱交換器
Claims (2)
- ポリイミドの原料モノマーと、蒸着重合反応から孤立して存し得る親水性基を有する原料モノマーを1種類以上用いた蒸着重合反応により、形成される高分子に残る親水性基に基づいて当該高分子膜全体で湿潤性を有することを特徴とする親水性ポリイミド膜の形成方法。
- 前記親水性基は、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ケトン基及びスルホ基のいずれかから成ることを特徴とする請求項1に記載の親水性ポリイミド膜の形成方法。
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