JP3865418B2 - ヒトインターロイキン−8に対する再構成ヒト抗体 - Google Patents

ヒトインターロイキン−8に対する再構成ヒト抗体 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒトインターロイキン−8(IL−8)に対するマウスモノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)及び可変領域(V領域)、並びにヒトIL−8に対するヒト/マウスキメラ抗体、ヒト軽鎖(L鎖)可変領域及びヒト重鎖(H鎖)可変領域の相補性決定領域(CDR)がヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体のCDRにより置き換えられている再構成(reshaped)ヒト抗体に関する。本発明はさらに、上記の抗体又はその部分をコードするDNAを提供する。本発明はさらに、前記DNAを含んで成るベクター、特に発現ベクター、並びに該ベクターにより形質転換された宿主に関する。本発明はさらに、ヒトIL−8に対するキメラ抗体の製造方法、及びヒトIL−8に対する再構成ヒト抗体の製造方法を提供する。
【0002】
【従来の技術】
インターロイキン−8(IL−8)は、リポ多糖(LPS)で刺激した単球の培養上清より見いだされ、monocyte−derived neutrophil chemotactic factor(MDNCF)あるいはneutrophil activating protein−1(NAP−1)等と称されていた遊走性サイトカイン(chemokine)である。IL−8は様々な細胞により産生され、多形核白血球およびリンパ球に作用して、その濃度勾配に沿って遊走(chemotaxis)させる活性を有している。また、好中球に対してはその遊走を誘導するばかりでなく、脱顆粒、活性酸素の放出、内皮細胞への接着亢進などの好中球の機能をも活性化させる作用を有している。
【0003】
炎症性疾患、より詳しくは、嚢胞性肺線維症、特発性肺線維症、成人呼吸促迫症候群、サルコイドーシス、化膿性胸膜炎などの呼吸器疾患、並びに乾癬などの皮膚疾患、並びに慢性リウマチ関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎などの疾患においては、それらの病巣部位に白血球浸潤が病理学的に認められている。また、これら疾患の患者由来の被検物質に、IL−8が検出されており、炎症において中心的役割を果たしていると考えられている。
【0004】
(McElvaney,N.G.ら、J.Clin.Invest.,90,1296−1301,1992、Lynch III,J.P.ら、Am.Rev.Respir.Dis.,145,1433−1439,1992、Donnelly,S.C.ら、Lancet,341,643−647,1993、Car,B.D.ら、Am.J.Respir.Crit.Care Med.,149,655−659,1994、Antony,V.B.ら、J.Immunol.,151,7216−7223,1993、Takematsu,H.ら、Arch.Dermatol.,129,74−80,1993、Brennan,F.M.ら、Eur.J.Immunol.,20,2141−2144,1990、Izzo,R.S.ら、Scand.J.Gastroenterol.,28,296−300,1993、Izzo,R.S.ら、Am.J.Gastroenterol.,87,1447−1452,1992)。
【0005】
Ko,Y−C.らは、ヒトIL−8を抗原としてマウスに免疫することにより、ヒトIL−8に結合し、かつ、その結合によってヒトIL−8が好中球に結合することを阻害する、すなわちヒトIL−8が有する生物学的活性を中和するマウスモノクローナル抗体WS−4を調製した。マウスモノクローナル抗体WS−4のアイソタイプは、κ型L鎖及びCγ1型H鎖であることが明らかになっている(J.Immunol.Methods,149,227−235,1992)。
【0006】
WS−4以外の抗ヒトIL−8抗体としては、A.5.12.14(Boylan,A.M.ら、J.Clin.Invest.,89,1257−1267,1992)、国際特許出願WO92−04372に開示されている抗Pep−1抗体または抗Pep−3抗体あるいはDM/C7(Mulligan,M.S.ら、J.Immunol.,150,5585−5595,1993)等が知られている。
【0007】
家兎を用いた実験系に於て、マウスモノクローナル抗体WS−4を投与することによって、肺虚血・再灌流障害(Sekido,N.ら、Nature,365,654−657,1993)、LPS誘導の皮膚炎(Harada,A.ら、Internatl.Immunol.,5,681−690,1993)、LPSあるいはインターロイキン−1(IL−1)誘導の関節炎(Akahoshi,T.ら、Lymphokine and Cytokine Res.,13,113−116,1994)における好中球浸潤が抑制されたことが見いだされた。
【0008】
家兎にもヒトIL−8の相同体(homologue)が存在し、ウサギIL−8と称されている。マウスモノクローナル抗体WS−4はウサギIL−8に対して交差反応し、ウサギIL−8がウサギ好中球に結合するのを阻害することが明らかになっている(Harada,A.ら、Internatl.Immunol.,5,681−690,1993)ので、これらのことは、ヒトにおける炎症性疾患の治療のための療法剤として抗ヒトIL−8抗体が有用であることを示唆している。
【0009】
ヒト以外の哺乳類由来のモノクローナル抗体はヒトにおいて高度に免疫原性(「抗原性」という場合もある)があり、そしてこの理由のため、ヒトにおけるそれらの医学療法的価値は制限される。例えば、マウス抗体をヒトに投与しても異物として代謝されうるので、ヒトにおけるマウス抗体の半減期は比較的短く、期待された効果を充分に発揮できない。さらに、投与したマウス抗体に対して発生するヒト抗マウス抗体は、血清病あるいは他のアレルギー反応など、患者にとって不都合で危険な免疫応答を惹起する。そしてこの理由のため、ヒトにマウス抗体を頻回投与することはできない。
【0010】
これらの問題を解決するため、ヒト型化(humanized)抗体の製造方法が開発された。マウス抗体は2つの方法でヒト型化することができる。より簡単な方法としては、可変領域(V領域)はもとのマウスモノクローナル抗体に由来し、定常領域(C領域)は適当なヒト抗体に由来するキメラ抗体を作製する方法がある。得られるキメラ抗体はもとのマウス抗体の可変領域を完全なかたちで含有するので、もとのマウス抗体と同一の特異性をもって抗原に結合することが期待できる。
【0011】
さらに、キメラ抗体ではもとのマウス抗体に比べヒト以外の動物に由来する蛋白質配列の比率が実質的に滅少しているためもとのマウス抗体に比べて免疫原性が低いと予想される。キメラ抗体は抗原によく結合しそして免疫原性が低いが、それでもなおマウス可変領域に対する免疫応答が生ずる可能性がある(LoBuglio,A.F.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86,4220−4224,l989)。
【0012】
マウス抗体をヒト型化するための第二の方法は一層複雑であるが、しかしマウス抗体が有する潜在的な免疫原性を大幅に低下させるものである。この方法においては、マウス抗体の可変領域から相補性決定領域(complementarity determining region;CDR)のみをヒト可変領域に移植して「再構成」(reshaped)ヒト可変領域を作製する.ただし必要によっては、再構成ヒト可変領域のCDRの構造をより一層もとのマウス抗体の構造に近づけるために、CDRを支持しているフレームワーク領域(FR)の一部の蛋白質配列をマウス抗体の可変領域からヒト可変領域に移植する場合がある。
【0013】
次に、これらの再構成ヒト可変領域をヒト定常領域に連結する。最終的に再構成されたヒト抗体のヒト以外の蛋自質配列に由来する部分はCDR、および、極く一部のFRのみである。CDRは超可変蛋自質配列により構成されており、これらは種特異的配列を示さない。この理由のため、マウスCDRを担持する再構成ヒト抗体はもはやヒトCDRを含有する天然ヒト抗体より強い免疫原性を有しないはずである。
【0014】
再構成ヒト抗体についてはさらに、Riechmann,L.ら、Nature,332,323−327,l988;Verhoeyen,M.ら、Science,239,l534−l536,l988;Kettleborough,C.A.ら、Protein Eng.,4,773−783,l99l;Maeda,H.ら、Hum.Antibodies Hybridomas,2,l24−l34,l99l;Gorman,S.D.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88,4l8l−4l85,l99l;Tempest,P.R.ら、Bio/Technology,9,266−27l,l99l;Co,M.S.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88,2869−2873,l99l;Carter,P.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89,4285−4289,l992;Co,M.S.ら、J.Immunol.,l48,ll49−ll54,l992;およびSato,K.ら、Cancer Res.,53,85l−856,l993を参照のこと。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
前記のごとく、再構成ヒト抗体は療法目的のために有用であると予想されるが、ヒトIL−8に対する再構成ヒト抗体は知られていない。さらに、再構成ヒト抗体の製造方法において任意の抗体に普遍的に適用し得る画一的な方法は存在しない。従って、特定の抗原に対して十分な結合活性あるいは/ならびに中和活性を示す再構成ヒト抗体を作製するためには種々の工夫が必要である(例えば、Sato,K.ら、Cancer Res.,53,85l−856,l993)。従って、本発明はヒトIL−8に対する、免疫原性の低い抗体を提供するものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明はヒトIL−8に対する再構成ヒト抗体を提供する。本発明はまた、該再構成ヒト抗体の作製の過程で有用であるヒト/マウスキメラ抗体を提供する。本発明はさらに、再構成ヒト抗体の断片を提供する。並びに本発明はキメラ抗体、再構成ヒト抗体およびそれらの断片の製造のための発現系を提供する。本発明はさらにまた、ヒトIL−8に対するキメラ抗体およびそれらの断片の製造方法、及びヒトIL−8に対する再構成ヒト抗体およびそれらの断片の製造方法を提供する。
【0017】
さらに具体的には、本発明は、
(1)ヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体のL鎖V領域;並びに
(2)ヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体のH鎖V領域;
を提供する。
本発明はさらに、
(1)ヒトL鎖C領域、及びヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体のL鎖V領域を含んで成るL鎖;並びに
(2)ヒトH鎖C領域、及びヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体のH鎖V領域を含んで成るH鎖;
を提供する。
【0018】
本発明はさらにまた、
(1)ヒトL鎖C領域、及びヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体のL鎖V領域を含んで成るL鎖;並びに
(2)ヒトH鎖C領域、及びヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体のH鎖V領域を含んで成るH鎖;
を含んで成る、ヒトIL−8に対するキメラ抗体を提供する。
本発明はさらに、
(1)ヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体WS−4のL鎖V領域;並びに
(2)ヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体WS−4のH鎖V領域;を提供する。
【0019】
本発明はさらに、
(1)ヒトL鎖C領域、及びヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体WS−4のL鎖V領域を含んで成るL鎖;並びに
(2)ヒトH鎖C領域、及びヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体WS−4のH鎖V領域を含んで成るH鎖;
を提供する。
本発明はさらにまた、
(1)ヒトL鎖C領域、及びヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体WS−4のL鎖V領域を含んで成るL鎖;並びに
(2)ヒトH鎖C領域、及びヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体WS−4のH鎖V領域を含んで成るH鎖;
を含んで成る、ヒトIL−8に対するキメラ抗体を提供する。
【0020】
本発明はさらに、
(1)ヒトIL−8に対するモノクローナル抗体のL鎖V領域のCDR;並びに
(2)ヒトIL−8に対するモノクローナル抗体のH鎖V領域のCDR;を提供する。
本発明はさらに、
(1)ヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体のL鎖V領域のCDR;並びに
(2)ヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体のH鎖V領域のCDR;を提供する。
【0021】
本発明はさらに、
(1)ヒトL鎖V領域のフレームワーク領域(FR);並びに
(2)ヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体のL鎖V領域のCDR;を含んで成る、ヒトIL−8に対する抗体の再構成ヒトL鎖V領域;並びに
(1)ヒトH鎖V領域のFR;並びに
(2)ヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体のH鎖V領域のCDR;を含んで成る、ヒトIL−8に対する抗体の再構成ヒトH鎖V領域を提供する。
【0022】
本発明はさらに、
(1)ヒトL鎖C領域;並びに
(2)ヒトL鎖FR、及びヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体のL鎖CDRを含んで成るL鎖V領域;を含んで成る、ヒトIL−8に対する抗体の再構成ヒトL鎖;並びに
(1)ヒトH鎖C領域;並びに
(2)ヒトH鎖FR、及びヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体のH鎖CDRを含んで成るH鎖V領域;を含んで成る、ヒトIL−8に対する抗体の再構成ヒトH鎖を提供する。
【0023】
本発明はさらにまた、
(A)(1)ヒトL鎖C領域、並びに
(2)ヒトL鎖FR、及びヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体のL鎖CDRを含んで成るL鎖;並びに
(B)(1)ヒトH鎖C領域、並びに
(2)ヒトH鎖FR、及びヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体のH鎖CDRを含んで成るH鎖;
を含んで成る、ヒトIL−8に対する再構成ヒト抗体を提供する。
【0024】
本発明はさらに詳しくは
(1)以下のアミノ酸配列に示す又はその一部を有する、ヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体WS−4のL鎖V領域のCDR、
Figure 0003865418
並びに
(2)以下のアミノ酸配列に示す又はその一部を有する、ヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体WS−4のH鎖V領域のCDR、
Figure 0003865418
を提供する。
【0025】
本発明はさらに、
(1)ヒトL鎖V領域のフレームワーク領域(FR);並びに
(2)ヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体WS−4のL鎖V領域のCDR;を含んで成る、ヒトIL−8に対する抗体の再構成ヒトL鎖V領域;並びに
(1)ヒトH鎖V領域のFR;並びに
(2)ヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体WS−4のH鎖V領域のCDR;を含んで成る、ヒトIL−8に対する抗体の再構成ヒトH鎖V領域
を提供する。
【0026】
本発明はさらに、
(1)ヒトL鎖C領域;並びに
(2)ヒトL鎖FR、及びヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体WS−4のL鎖CDRを含んで成るL鎖V領域;
を含んで成る、ヒトIL−8に対する抗体の再構成ヒトL鎖;並びに
(1)ヒトH鎖C領域;並びに
(2)ヒトH鎖FR、及びヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体WS−4のH鎖CDRを含んで成るH鎖V領域;
を含んで成る、ヒトIL−8に対する抗体の再構成ヒトH鎖を提供する。
【0027】
本発明はさらにまた、
(A)(1)ヒトL鎖C領域、並びに
(2)ヒトL鎖FR、及びヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体WS−4のL鎖CDRを含んで成るL鎖;並びに
(B)(1)ヒトH鎖C領域、並びに
(2)ヒトH鎖FR、及びヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体WS−4のH鎖CDRを含んで成るH鎖;
を含んで成る、ヒトIL−8に対する再構成ヒト抗体を提供する。
【0028】
前記ヒトL鎖FRは以下のアミノ酸配列を有するものが挙げられる。
Figure 0003865418
【0029】
または、
Figure 0003865418
【0030】
前記ヒトH鎖FRは以下のアミノ酸配列を有するものが挙げられる。
Figure 0003865418
【0031】
Figure 0003865418
【0032】
Figure 0003865418
【0033】
Figure 0003865418
【0034】
Figure 0003865418
【0035】
Figure 0003865418
【0036】
Figure 0003865418
【0037】
または、
Figure 0003865418
【0038】
本発明はまた、前記種々の抗体を構成するポリペプチド、又はその断片をコードするDNAに関する。本発明はまた、上記DNAを含んで成るベクター、例えば発現ベクターに関する。本発明はさらに、上記ベクターにより形質転換された宿主を提供する。
本発明はさらにまた、ヒトIL−8に対するキメラ抗体およびその断片の製造方法、及びヒトlL−8に対する再構成ヒト抗体およびその断片の製造方法を提供する。
【0039】
【具体的な説明】
マウスV領域をコードするDNAのクローニング
ヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体のV領域をコードする遺伝子をクローニングするためには、該遺伝子の取得源として、ヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマを作製することが必要である。ハイブリドーマからmRNAを抽出した後、既知の方法により一本鎖cDNAに変換し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて目的とするDNAを増幅することで得られる。この遺伝子の取得源として、Ko,Y−C.らが作製した、ヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマWS−4があげられる。このハイブリドーマの作製方法はJ.Immunol.Methods,149,227−235,1992に記載されており、これを参考例1に後記する。
【0040】
(1)全RNAの採取
マウスモノクローナル抗体のV領域をコードする目的のDNAをクローン化するため、グアニジンチオシアネート処理によりハイブリドーマ細胞を破壊し、塩化セシウム密度勾配遠心(Chirgwin,J.M.ら、Biochemistry、18、5294−5299,1979)をおこなって全RNAを得ることができる。なお、他の蛋白質の遺伝子をクローニングする際に用いられたすでに報告されている方法、例えばバナジウム複合体などのリボヌクレアーゼ(RNase)インヒビター存在下で、界面活性剤処理、フェノール処理をおこなう方法(Berger,S.L.ら、Biochemistry、18,5143−5149,1979)を用いることもできる。
【0041】
(2)cDNAの合成
次に、mRNAの3′末端に局在するpolyA鎖に相補的なオリゴヌクレオチドであるオリゴ(dT)をプライマーとして、上記のごとくして得た全RNAに含まれているmRNAを鋳型に、逆転写酵素で処理してmRNAに相補的な一本鎖cDNAを合成することができる(Larrick,J.W.ら、Bio/Technology、7、934−938,1989)。また、その時にランダムプライマーを用いても良い。なお、mRNAだけを取得する場合は、全RNAをオリゴdTセルロースカラムにかけpolyA鎖を有するmRNAだけを分離することができる。
【0042】
(3)ポリメラーゼ連鎖反応によるV領域をコードするDNAの増幅
次に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて前記V領域をコードするcDNAを特異的に増幅する。マウスモノクローナル抗体のカッパ(κ)型L鎖V領域の増幅のため、配列番号;1〜11に示す11種のオリゴヌクレオチドプライマー(Mouse Kappa Variable;MKV)及び配列番号:12に示すオリゴヌクレオチドプライマー(Mouse Kappa Constant;MKC)をそれぞれ5′末端プライマー及び3′末端プライマーとして使用する.前記MKVプライマーはマウスカッパ型L鎖リーダー配列をコードするDNA配列とハイブリダイズし、そして前記MKCプライマーはマウスカッパ型L鎖C領域をコードするDNA配列とハイブリダイズする。
【0043】
マウスモノクローナル抗体のH鎖V領域の増幅のため、配列番号:13〜24に示す12種のオリゴヌクレオチドプライマー(Mouse Heavy Variable;MHV)及び配列番号:25に示すオリゴヌクレオチドプライマー(Mouse Heavy Constant;MHC)をそれぞれ5′未端プライマー及び3′末端プライマーとして使用する。前記MHVプライマーはマウスH鎖リーダー配列をコードするDNA配列とハイブリダイズし、そして前記MHCプライマーはマウスH鎖C領域をコードするDNA配列とハイブリダイズする。
【0044】
なお、全ての5′末端プライマー(MKV及びMHV)はその5′末端近傍に制限酵素SalI切断部位を提供する配列GTCGACを含有し、そして、全ての3′末端プライマー(MKC及びMHC)はその5′末端近傍に制限酵素XmaI切断部位を提供するヌクレオチド配列CCCGGGを含有する。これらの制限酵素切断部位は両V領域をコードする目的のDNA断片をそれぞれのクローニングベクターにサブクローニングするために用いられる。これらの制限酵素切断部位が、両V領域をコードする目的のDNA配列中にも存在する場合、それぞれのクローニングベクターにサブクローニングするために用いられる限り、他の制限酵素切断部位でも良い。
【0045】
(4)V領域をコードするDNAの単離
次に、目的とするマウスモノクローナル抗体のV領域をコードするDNA断片を得るために、PCR増幅生成物を低融点アガロースゲルあるいはカラム〔PCR産物精製用キット(QIAGEN PCR Purification Spin Kit:QIAGEN社製)、DNA精製用キット(GENECLEAN II :BIO 101社製)〕等により、分離、精製をおこなう。その精製物を制限酵素Sal I及びXma Iで酵素処理して、マウスモノクローナル抗体の目的とするV領域をコードするDNA断片を得る。
【0046】
他方、プラスミドpUC19のごとき適当なクローニングベクターを同じ制限酵素Sal I及びXma Iにより切断させ、このpUC19に前記DNA断片を酵素的に連結することにより、マウスモノクローナル抗体の目的とするV領域をコードするDNA断片を含むプラスミドを得る。クローニングされたDNAの配列決定は任意の常法に従って行うことができ、例えば、自動DNAシークエンサー(Applied Biosystems Inc.製)が挙げられる。目的とするDNAのクローニング及びその配列決定を実施例l及び実施例2に具体的に記載する。
【0047】
相補性決定領域(CDR)
本発明はさらに、ヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体のV領域の超V領域又は相補性決定領域(CDR)を提供する。抗体のL鎖及びH鎖の両V領域は抗原結合部位を形成する。L鎖及びH鎖上のこの領域は類似する基本的構造を有する。両鎖のV領域は配列が比較的保存された4個のフレームワーク領域を含み、それらは3個の超V領域又はCDRにより連結されている(Kabat,E.A.ら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」,US Dept.Health and Human Services 1991)。
【0048】
前記4個のフレームワーク領域(FR)の多くの部分はβ−シート構造をとり、3個のCDRはループを形成する。CDRはある場合にはβ−シート構造の一部分を形成することもある。FRによって3個のCDRは相互に立体的に非常に近い位置に保持され、そして、対をなす3個のCDRと共に抗原結合部位の形成に寄与する。本発明は、ヒト型化抗体の素材として有用なこれらのCDR、及びそれをコードするDNAをも提供する。これらのCDR領域は、V領域の既知アミノ酸配列と照合することによって、Kabat,E.A.ら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」の経験則から決定することができ、実施例3において具体的に説明する。
【0049】
キメラ抗体の作製
ヒトIL−8に対する抗体の再構成ヒトV領域を設計するに先立って、使用するCDRが実際に抗原結合領域を形成することを確かめる必要がある。この目的のため、キメラ抗体を作製した。キメラ抗体を作製するためにキメラ抗体のL鎖並びにH鎖をコードするDNAを構築する必要がある。両DNAを構築する基本的な方法は、PCR−クローン化cDNAに見られるマウスリーダー配列及びマウスV領域配列のそれぞれのDNA配列を、哺乳類細胞発現ベクター中にすでに存在するヒトC領域をコードするDNA配列に連結することである。
【0050】
前記ヒト抗体C領域は、任意のヒトL鎖C領域および任意のヒトH鎖C領域であることができ、例えば、L鎖についてはヒトL鎖CκあるいはCλ、H鎖についてはIgGであればCγ1,Cγ2,Cγ3あるいはCγ4(Ellison,J.ら、DNA,1,11−18(1981),Takahashi,N.ら、Cell,29,671−679(1982),Krawinkel,U.ら、EMBO J.1,403−407(1982))あるいは他のアイソタイプをそれぞれ挙げることができる。
【0051】
キメラ抗体の製造のためには2種類の発現ベクターを作製する。即ち、エンハンサー/プロモーター系のような発現制御領域による制御のもとで、マウスL鎖V領域ならびにヒトL鎖C領域をコードするDNAを含んでなる発現ベクター、およびエンハンサー/プロモーター系のような発現制御領域による制御のもとで、マウスH鎖V領域ならびにヒトH鎖C領域をコードするDNAを含んでなる発現ベクターを作製する。次に、これらの両発現ベクターにより哺乳類細胞などの宿主細胞を同時形質転換し、そして形質転換された細胞をイン−ビトロまたはイン−ビボで培養してキメラ抗体を製造する(例えば、WO91−16928)。
【0052】
あるいは、マウスL鎖V領域ならびにヒトL鎖C領域をコードするDNAおよびマウスH鎖V領域ならびにヒトH鎖C領域をコードするDNAを単一の発現ベクターに導入し、そして、該ベクターを用いて宿主細胞を形質転換し、そして形質転換された細胞をイン−ビトロまたはイン−ビボで培養してキメラ抗体を製造することもできる。
【0053】
モノクローナル抗体WS一4からのキメラ抗体の作製を実施例4に記載する。マウスWS−4κ型L鎖リーダー領域及びV領域をコードするcDNAをPCR法を用いてクローニングし、ヒトL鎖Cκ領域をコードするヒトゲノムDNAを含有する発現ベクターに連結する。同様にマウスWS−4抗体のH鎖リーダー領域及びV領域をコードするcDNAをPCR法を用いてクローニングし、ヒトCγ1領域をコードするゲノムDNAを含有する発現ベクターに連結する。
【0054】
より詳しくは、特に設計されたPCRプライマーを用いて、マウスWS−4抗体のV領域をコードするcDNAをそれらの5′及び3′末端において適当な塩基配列を導入して(1)それらが発現ベクターに容易に挿人されるように、且つ(2)それらが該発現ベクター中で適切に機能するようにした(例えば、本発明ではKozak配列を導入することにより転写効率を上げるよう工夫してある)。
【0055】
次に、これらのプライマーを用いてPCRにより増幅して得たマウスWS−4抗体のV領域をコードするDNAを、所望のヒトC領域をすでに含有するHEF発現ベクター(図1参照)に挿人した。これらのベクターは、種々の哺乳類細胞系における遺伝子操作された抗体の一過性(transient)発現又は安定な発現のために適当である。
このように作製したキメラWS−4抗体の結合活性を試験したところ、キメラWS−4抗体はヒトIL−8に結合する活性を示した(図2参照)。従って、正しいマウスV領域がクローニングされ、そして正しく配列が決定されていたことが示された。
【0056】
再構成ヒトWS−4抗体の設計
マウスモノクローナル抗体のCDRがヒト抗体に移植されている再構成ヒト抗体を作製するためには、移植するCDRを有するマウスモノクローナル抗体のFRのアミノ酸配列と、CDRが移植されるヒトモノクローナル抗体のFRのアミノ酸配列との間に高い同一性が存在することが望ましい。
【0057】
この目的のためには、マウスモノクローナル抗体のFRのアミノ酸配列とヒトモノクローナル抗体のFRのアミノ酸配列とを比較することにより、再構成ヒトWS−4抗体のV領域の設計の基礎となるヒトV領域を選択することが可能になる。具体的には遺伝子解析ソフトGENETX(Software Development Co.,Ltd.)を用いてマウスWS−4抗体のL鎖及びH鎖のV領域を、National Biomedical Research Foundation(NBRF)のデータベースに見出されるすべての既知のヒトのV領域と比較した。
【0058】
マウスWS−4抗体のL鎖V領域は、既知のヒト抗体L鎖V領域との比較においてヒト抗体HAU(Watanabe,S.ら、Hoppe−Seyler’s Z.Physiol.Chem.351,1291−1295,1970)のL鎖V領域に最も類似しており、69.2%の同一性が存在する。一方、WS−4抗体のH鎖V領域は、既知のヒト抗体H鎖V領域との比較においてヒト抗体VDH26(Buluwela.,L.ら、EMBO J.,7,2003−2010,1988)に最も類似しており、71.4%の同一性が存在する。
【0059】
一般的に、マウスV領域のアミノ酸配列のヒトV領域のアミノ酸配列に対する同一性は、マウスV領域のアミノ酸配列に対する同一性よりも低い。これはマウスWS−4抗体のV領域がヒトV領域に完全には類似していないこと示し、そして同時に、ヒト患者における免疫原性の問題を解決するためにマウスWS−4のV領域をヒト型化する(humanize)ことが最善であることを示している。
【0060】
マウスWS−4抗体のV領域をさらに、Kabat,E.A.ら、(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest.Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,U.S.Government Printing 0fficeにより定義されるヒトV領域サブグループのコンセンサス配列と比較し、V領域のFR間で対比された。その結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
Figure 0003865418
【0062】
マウスWS−4抗体のL鎖V領域のFRはヒトL鎖V領域のサブグループ I(HSG I)のFRのコンセンサス配列に最も類似しており、64.4%の同一性が存在する。一方、マウスWS−4のH鎖V領域のFRはヒトH鎖V領域のサブグループ III(HSG III)のFRのコンセンサス配列に最も類似しており、62.3%の同一性が存在する。
【0063】
これらの結果は、既知のヒト抗体との比較から得られた結果を支持しており、ヒト抗体HAU中のL鎖V領域はヒトL鎖V領域のサブグループ Iに属し、そしてヒト抗体VDH26中のH鎖V領域はヒトH鎖V領域のサブグループ IIIに属する。再構成ヒトWS−4抗体L鎖V領域の設計のためにはサブグループI(HSG I)に属するヒトL鎖V領域を使用し、そして再構成ヒトWS−4抗体H鎖V領域の設計のためにはサブグループ III(HSG III)に属するヒト抗体H鎖V領域を用いるのが最善であろう。
【0064】
既知ヒト抗体L鎖V領域との比較において、マウスWS−4抗体のL鎖V領域はヒトL鎖V領域のサブグループ Iの1構成員であるヒト抗体REIのL鎖V領域にも類似していた。従って、再構成ヒトWS−4抗体L鎖V領域の設計においてREIのFRを使用した。REIに基くこれらのヒトFR中には、原著のヒトREI(Palm,Wら、Hoppe−Seyler’s Z.Physiol.Chem.,356,167−191,1975;Epp,O.ら、Biochemistry,14,4943−4952,1975)に比較して5個のアミノ酸(位置39,71,104,105及び107;表2を参照)の相違が存在する。
【0065】
なお、表におけるアミノ酸番号はKabat,E.A.ら(1991)の経験に基づいている。位置39及び71における2個のアミノ酸の変化はラットCAMPATH−1H抗体のL鎖V領域のFR中に存在するアミノ酸にもどる変化であった(Riechmannら、1988)。Kabatら、(1991)によれば、FR4中の3個のアミノ酸の変化(位置104,105及び107)は他のヒトκL鎖からのJ領域に基いており、ヒトから逸脱するものではない。
【0066】
再構成ヒトWS−4抗体L鎖V領域の2つのバージョンを設計した。第一のバージョンRVLaにおいては、FRは再構成ヒトCAMPATH−1H抗体中に存在するREIに基くFR(Riechmannら、1988)と同一であり、そしてCDRはマウスWS−4抗体のL鎖V領域中のCDRと同一にした。第二のバージョンRVLbはRVLaに基き、ヒトFR3中の位置71におけるアミノ酸1個のみを異にする。Chothia,C.ら、J.Mol.Biol.196:901−917,1987により定義されるごとく、残基71はL鎖V領域のCDR1の標準的(canonical)構造の部分である。
【0067】
この位置のアミノ酸はL鎖V領域のCDR1ループの構造に直接影響すると予想され、それ故に抗体結合に大きく影響すると考えられている。再構成ヒトWS−4抗体L鎖V領域のRVLbにおいては、位置71のフェニルアラニンがチロシンに変えられている。表2は、マウスWS−4抗体のL鎖V領域、再構成ヒトCAMPATH−1H抗体中での使用のために修飾されたREIのFR(Riechmannら、1988)及び再構成ヒトWS−4抗体のL鎖V領域の2種類のバージョンの、それぞれのアミノ酸配列を示す。
【0068】
【表2】
Figure 0003865418
【0069】
注:REIのFRは再構成ヒトCAMPATH−1H抗体中に見出されるものである(Riechmannら、1988)。REIのFR中の5個の下線を付したアミノ酸はヒトREIのアミノ酸配列と異なるアミノ酸である。なお、アミノ酸は一文字表記による。アミノ酸番号はKabatらの定義によるものである。
マウスWS−4抗体のH鎖V領域中のFRはサブグループIII に属するヒトH鎖V領域に最も類似している(表1)。
【0070】
マウスWS−4抗体のH鎖V領域は、既知のヒトH鎖V領域との比較において、FR1からFR3までは、ヒトH鎖V領域のサブグループIII の1構成員であるヒト抗体VDH26のH鎖V領域(Buluwela,L.ら、EMBO J.,7,2003−2010,1988)に最も類似していた。FR4については、VDH26のFR4の配列が明らかになっていなかったため、サブグループIII に属するヒト抗体4B4(Sanz,I.ら、J.Immunol.,142,883−887,1989)のFR4のアミノ酸配列を用いることとした。これらのヒトH鎖V領域を、再構成ヒトWS−4抗体のH鎖V領域の設計のための基礎として用いた。
【0071】
再構成ヒトWS−4抗体H鎖V領域の8種類のバージョンを設計した。8種類のバージョンのすべてにおいて、ヒトFR1,2及び3はヒト抗体VDH26のFR1,2及び3に、FR4はヒト抗体4B4のFR4に基いており、そして、マウスCDRはマウスWS−4抗体H鎖V領域のCDRと同一である。
表3および4に、マウスWS−4抗体のH鎖V領域、鋳型のヒト抗体VDH26のFR1〜3、ヒト抗体4B4のFR4および再構成ヒトWS−4抗体のH鎖V領域の8種類のバージョンの、それぞれのアミノ酸配列を示す。
【0072】
【表3】
Figure 0003865418
【0073】
【表4】
Figure 0003865418
【0074】
再構成ヒトWS−4抗体V領域をコードするDNAの作製
再構成ヒトWS−4抗体V領域の作製を実施例5に具体的に記載する。
再構成ヒトWS−4抗体L鎖及びH鎖V領域のそれぞれの第一バージョンをコードするDNAを合成した。そして配列決定して、再構成ヒトWS−4抗体L鎖及びH鎖V領域のバージョン「a」の全体DNA配列が正しいアミノ酸配列をコードしていることを確認した。再構成ヒトWS−4抗体L鎖V領域バージョン「a」の配列を配列番号:62に、再構成ヒトWS−4抗体H鎖V領域バージョン「a」の配列を配列番号:38に示す。
【0075】
再構成ヒトWS−4抗体V領域の他のバージョンをコードするDNAは、第一バージョン「a」を鋳型に、公表されているPCR−変異誘発法(Kammann,Mら、Nucleic Acids Res.,17,5404,1989)にわずかな変更を加えた方法を用いて作製した。再構成ヒトWS−4抗体V領域の設計に関して記載したように、再構成ヒトWS−4抗体L鎖V領域の1つの追加のバージョン(バージョン「b」)をコードするDNAを作製し、そして再構成ヒトWS−4抗体H鎖V領域の7種類の追加のバージョン(バージョン「b」,「c」,「d」,「e」,「f」,「g」及び「h」)をコードするDNAを作製した。
【0076】
これらの追加のバージョンは、第一バージョンからのアミノ酸配列の一連の微細な変化を含み、アミノ酸配列のこれらの微細な変化はPCR変異誘発を用いてDNA配列の微細な変更を行うことにより達成された。DNA配列に必要な変化を導入するPCRプライマーが設計された。一連のPCR反応に続き、PCR生成物をクローン化し、そして配列決定してDNA配列中の変化が計画通りに起っていることを確認した。再構成ヒトWS−4抗体L鎖V領域バージョン「b」の配列を配列番号:65に、再構成ヒトWS−4抗体H鎖V領域バージョン「b」,「c」,「d」,「e」,「f」,「g」,「h」のそれぞれの配列を配列番号41,44,45,48,51,54,55に示す。
【0077】
再構成ヒトWS−4抗体V領域の種々のバージョンのDNA配列を配列決定により確認した後、再構成ヒトWS−4抗体V領域をコードするDNAを、ヒトC領域をコードするDNAをすでに含有する哺乳類細胞発現ベクターにサブクローニングした。即ち、再構成ヒトWS−4抗体V鎖L領域をコードするDNAをヒトL鎖C領域をコードするDNA配列に、再構成ヒトWS−4抗体H鎖V領域をコードするDNAをヒトCγ1領域をコードするDNA配列にそれぞれ連結した。
【0078】
次に再構成ヒトL鎖V領域バージョン「a」あるいは「b」と、H鎖V領域バージョン「a」〜「h」のすべての組合せをヒトIL−8への結合について試験し、そしてその結果、図7に記載するように、L鎖バージョン「a」または「b」とH鎖バージョン「g」とを含んで成る両再構成ヒト抗体(RVLa/RVHg及びRVLb/RVHg)がキメラWS−4抗体と同じレベルでIL−8に結合する能力を示した。
【0079】
ヒトIL−8に対する本発明のキメラ抗体又は再構成ヒト抗体の製造のために任意の発現系、例えば真核細胞、例えば動物細胞、例えば樹立された哺乳類細胞系、真糸状菌細胞、及び酵母細胞、並びに原核細胞、例えば細菌細胞、例えば大腸菌細胞等を使用することができる。好ましくは、本発明のキメラ抗体又は再構成抗体は哺乳類細胞、例えばCOS細胞又はCHO細胞中で発現される。
【0080】
これらの場合、哺乳類細胞での発現のために有用な常用のプロモーターを用いることができる。例えば、ヒト・サイトメガロウィルス前期(human cytomegalovirus immediate early;HCMV)プロモーターを使用するのが好ましい。HCMVプロモーターを含有する発現ベクターの例には、HCMV−VH−HCγ1 、HCMV−VL−HCκ等があり、pSV2neoに由来するもの(国際公開出願WO92−19759を参照)が含まれる。
【0081】
また、その他に本発明に用いることのできる哺乳動物細胞に於ける遺伝子発現のプロモーターとしては、レトロウィルス、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、シミアンウィルス40(SV40)等のウィルスプロモーター、あるいは、ヒト・ポリペプチド・チェーン・エロンゲーション・ファクター−1α(HEF−1α)等の哺乳動物細胞由来のプロモーターを用いればよい。例えば、SV40のプロモーターを使用する場合は、Mulligan,R.C.らの方法(Nature,277,108−114,1979)、また、HEF−1αプロモーターを使用する場合は、Mizushima,S.らの方法(NucleicAcids Res.,18,5322,1990)に従えば実施することができる。
【0082】
本発明のために有用なプロモーターの他の具体例はHEF−1αプロモーターである。このプロモーターを含有する発現ベクターにはHEF−VH−gγ1及びHEF−VL−gκ(図1)が含まれる。複製起点としては、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、SV40、牛パピローマウィルス(BPV)等の由来のDNA配列を用いることができ、さらに、宿主細胞系中での遺伝子コピー数増幅のため、選択マーカーとして、アミノグルコシド3′−ホスホトランスフェラーゼあるいはneo耐性遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(XGPRT)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子を用いることができる。
【0083】
要約すれば、本発明はまず、ヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体のL鎖V領域及びH鎖V領域、並びに該L鎖V領域をコードするDNA及び該H鎖V領域をコードするDNAを提供する。これらは、ヒトIL−8に対するヒト/マウスキメラ抗体及び再構成ヒト抗体の作製のために有用である。モノクローナル抗体としては、例えばWS−4があげられる。L鎖V領域は例えば配列番号:26に示すアミノ酸配列を有し、そしてH鎖V領域は例えば配列番号:27に示すアミノ酸配列を有する。これらのアミノ酸配列は例えばそれぞれ配列番号:26,27に示すヌクレオチド配列によりコードされている。
【0084】
本発明のヒトIL−8に対するキメラ抗体は、
(1)ヒトL鎖C領域及びマウスL鎖V領域;並びに
(2)ヒトH鎖C領域及びマウスH鎖V領域;
から構成される。
マウスL鎖V領域及びマウスH鎖V領域並びにこれらをコードするDNAは前記の通りである。前記ヒトL鎖C領域は任意のヒトL鎖C領域であることができ、そして例えばヒトCκあるいはCλ領域である。前記ヒトH鎖C領域は任意のヒトH鎖C領域であることができ、そして例えばヒトCγ1,Cγ2,Cγ3あるいはCγ4領域(Ellison,J.ら、DNA,1,11−18(1981),Takahashi,N.ら、Cell,29,671−679(1982),Krawinkel,Uら、EMBO J.,1,403−407(1982))である。
【0085】
キメラ抗体の製造のためには2種類の発現ベクター、すなわちエンハンサー/プロモーター系のごとき発現制御領域による制御のもとでマウスL鎖V領域及びヒトL鎖C領域をコードするDNAを含んで成る発現ベクター、並びにエンハンサー/プロモーター系のごとき発現制御領域のもとでマウスH鎖V領域及びヒトH鎖C領域をコードするDNAを含んで成る発現ベクターを作製する。次に、これらの発現ベクターにより哺乳類細胞のごとき宿主細胞を同時形質転換し、そして形質転換された細胞をイン−ビトロ又はイン−ビボで培養してキメラ抗体を製造する。
【0086】
あるいは、マウスL鎖V領域及びヒトL鎖C領域をコードするDNA並びにマウスH鎖V領域及びヒトH鎖C領域をコードするDNAを単一の発現ベクターに導入し、そして該ベクターを用いて宿主細胞を形質転換し、次にこの形質転換された宿主をイン−ビボ又はイン−ビトロで培養して目的とするキメラ抗体を生産させる。
【0087】
本発明の再構成ヒトWS−4抗体は、
(A)(1)ヒトL鎖C領域、及び
(2)ヒトL鎖FR、及びヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体WS−4のL鎖CDRを含んで成るL鎖V領域、を含んで成るL鎖;並びに
(B)(1)ヒトH鎖C領域、及び
(2)ヒトH鎖FR、及びヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体WS−4のH鎖CDRを含んで成るH鎖V領域、を含んで成るH鎖;
から構成される。
【0088】
好ましい態様においては、前記L鎖CDRは配列番号:26に示されるアミノ酸配列であって、該アミノ酸配列の範囲が表5において定義されるアミノ酸配列を有し、前記H鎖CDRは配列番号:27に示されるアミノ酸配列であって該アミノ酸配列の範囲が表5において定義されるアミノ酸配列を有し;前記ヒトL鎖FRがREIに由来するものであり;前記ヒトH鎖FR1,2および3はVDH26に、FR4は4B4に由来するものであり;前記ヒトL鎖C領域はヒトCκ領域であり;そして前記ヒトH鎖C領域はヒトCγ1領域である。また、前記ヒトH鎖C領域はヒトCγ4領域であってもよく、あるいは前記ヒトL鎖C領域および/またはヒトH鎖C領域のかわりにラジオアイソトープを結合させてもよい。
特定の抗原に対して十分に活性がある再構成ヒト抗体を作製するために、前記ヒトFRのアミノ酸配列の一部を置換することが望ましい。
【0089】
好ましい態様においては、L鎖V領域は表2においてRVLaあるいはRVLbとして示されるアミノ酸配列を有し、H鎖V領域は表3および表4にRVHa、RVHb、RVHc、RVHd、RVHe、RVHf、RVHg又はRVHhとして示されるアミノ酸配列を有する。さらに、H鎖V領域FR2中の41位のアミノ酸がプロリンであること、同47位のアミノ酸がトリプトファンであること、および/または同FR3中の67位のアミノ酸がフェニルアラニンであることがよく、RVHb,RVHd,RVHe,RVHf,RVHg又はRVHhとして示されるアミノ酸配列を有するものがより好ましい。このうち、RVHgがH鎖V領域として最も好ましい。
【0090】
再構成抗体の製造のためには、2種類の発現ベクター、すなわちエンハンサー/プロモーター系のごとき発現制御領域による制御のもとに前に定義した再構成ヒトL鎖をコードするDNAを含んで成る発現ベクター、及びエンハンサー/プロモーター系のごとき発現制御領域のもとに前に定義した再構成ヒトH鎖をコードするDNAを含んで成るもう一つの発現ベクターを作製する。次に、これらの発現ベクターを用いて哺乳類細胞のごとき宿主細胞を同時形質転換し、そしてこの形質転換された細胞をイン−ビボ又はイン−ビトロで培養して再構成ヒト抗体を生産せしめる。
【0091】
あるいは、再構成ヒトL鎖をコードするDNA及び再構成ヒトH鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに導入し、そしてこのベクターを用いて宿主を形質転換し、次にこの形質転換された宿主細胞をイン−ビボ又はイン−ビトロで培養して目的とする再構成ヒト抗体を生産せしめる。
こうして生産されたキメラ抗体又は再構成ヒト抗体は、常法に従って、例えばプロテインAアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過等により単離、精製することができる。
【0092】
本発明のキメラL鎖又は再構成ヒトL鎖はH鎖と組合わせることにより完全な抗体を作製するために使用することができる。同様に本発明のキメラH鎖又は再構成ヒトH鎖はL鎖と組合わせることにより完全な抗体を作製するために用いることができる。
本発明のマウスL鎖V領域、再構成ヒトL鎖V領域、マウスH鎖V領域、及び再構成ヒトH鎖V領域は、本来、抗原であるヒトIL−8と結合する領域であり、それ自体として、又は他の蛋白質との融合蛋白質として医薬、診断薬等として有用であると考えられる。
また、本発明のL鎖V領域CDR及びH鎖V領域CDRも、本来、抗原であるヒトIL−8と結合する部分であり、それ自体として又は他の蛋白質との融合蛋白質として医薬、診断薬等として有用であると考えられる。
【0093】
本発明のマウスL鎖V領域をコードするDNAはキメラL鎖をコードするDNA又は再構成ヒトL鎖をコードするDNAの作製のために有用である。同様にマウスH鎖V領域をコードするDNAはキメラH鎖をコードするDNA又は再構成ヒトH鎖をコードするDNAの作製のために有用である。また、本発明のL鎖V領域CDRをコードするDNAは再構成ヒトL鎖V領域をコードするDNA及び再構成ヒトL鎖をコードするDNAの作製のために有用である。
【0094】
同様に本発明のH鎖V領域CDRをコードするDNAは再構成ヒトH鎖V領域をコードするDNA及び再構成ヒトH鎖をコードするDNA作製のために有用である。さらには、再構成ヒト抗体のF(ab′)2 ,FabあるいはFvを、又は、H鎖及びL鎖の両Fvを連結させたシングルチェーンFvを適当な宿主で産生させ、前述の目的に使用することができる(例えば、Bird,R.E.ら、TIBTECH,9,132−137,1991を参照)。
【0095】
シングルチェインFvは、ヒトIL−8に対する再構成ヒト抗体のH鎖V領域とL鎖V領域を連結してなる。このシングルチェインFvにおいて、H鎖V領域とL鎖V領域はリンカー、好ましくは、ペプチドリンカーを介して連結されている(Huston,J.S.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,85,5879−5883,1988)。
【0096】
シングルチェインFvにおけるH鎖V領域およびL鎖V領域は、再構成ヒト抗体のH鎖およびL鎖V領域として前記記載されたもののいずれであってもよい。具体例として、配列番号38,41,44,45,48,51,54,55のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるH鎖V領域と、配列番号62,65のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるL鎖V領域を含んでなるシングルチェインFvが挙げられる(WO88−01649を参照)。
これらのV領域は、好ましくは、ペプチドリンカーによって連結されている。ペプチドリンカーとしては、例えばアミノ酸12〜19残基からなる任意の一本鎖ペプチドが用いられる(WO88−09344を参照)。
【0097】
シングルチェインFvをコードするDNAは、前記記載の再構成ヒト抗体のH鎖または、H鎖V領域をコードするDNA、およびL鎖または、L鎖V領域をコードするDNAを鋳型とし、それらの配列のうちの所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を、その両端を規定するプライマー対を用いて、PCR法により増幅し、次いで、さらにペプチドリンカー部分をコードするDNAおよびその両端を各々H鎖、L鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合せて増幅することにより得られる。
【0098】
また、一旦シングルチェインFvをコードするDNAが作成されれば、それらを含有する発現ベクター、および該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができ、また、その宿主を用いて常法に従って、シングルチェインFvを得ることができる。
シングルチェインFvは、抗体分子に比べ、組織への移行性が優れており、ラジオアイソトープ標識によるイメージングへの利用、および再構成ヒト抗体と同様の機能を有する治療剤としての利用が期待される。
【0099】
本発明のヒトIL−8に対するキメラ抗体、再構成ヒト抗体およびそのF(ab′)2 ,Fab,FvあるいはシングルチェーンFvの結合活性を確認する方法として、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法),EIA(酵素免疫測定法)、RIA(放射免疫測定法)あるいは蛍光抗体法を用いることができる。例えば、キメラ抗体、再構成ヒト抗体について、酵素免疫測定法を用いる場合、抗ヒトIL−8ポリクローナル抗体をコートしたプレートにヒトIL−8を添加し、ここにヒトIL−8に対するキメラ抗体、再構成ヒト抗体を産生する細胞の培養上清あるいは精製サンプルを加え、アルカリフォスファターゼ等の酵素で標識した適切な二次抗体を添加する。プレートのインキュベーションおよび洗浄の後、p−ニトロフェニル燐酸などの酵素基質を加えて吸光度を測定することで抗原結合活性を評価することができる。
【0100】
本発明のヒトIL−8に対するキメラ抗体、再構成ヒト抗体およびそのF(ab′)2 ,Fab,FvあるいはシングルチェインFvのIL−8レセプターに対するIL−8結合阻害活性は、通常のリガンドレセプター結合阻害アッセイにより評価される。例えば、好中球上のIL−8レセプターに対するIL−8の結合阻害アッセイには、ヘパリン採血などにより得られる好中球を遠心分離等の手段で分離した後、上記アッセイに好適な数の細胞懸濁液となるよう調製して用いることができる。
【0101】
125Iなどで適当に標識したIL−8と非標識のIL−8を含む溶液と適当な濃度に調製した本発明の抗体またはその断片を含む溶液を混合し、次いでこれを上記好中球懸濁液に添加する。一定時間の後、好中球を分離し、好中球上の標識された活性を測定すればよい。
本発明の抗体またはその断片による好中球遊走作用(ケモタキシス;chemotaxis)の阻害能を評価するには通常知られた方法、例えばGrob,P.M.らJ.Biol.Chem.,265,8311−8316,1990に記載された方法を用いることができる。
【0102】
市販のケモタキシスチャンバーを用いる場合、本発明の抗体またはその断片を適当な培養液で希釈した後、IL−8を加え、これをチャンバーに分注する。ついで、調製した好中球懸濁液をチャンバーに添加し、一定時間放置する。遊走する好中球は、チャンバーに装着されたフィルターに付着するので、その好中球の数を染色液あるいは蛍光抗体等の通常の方法で測定すればよい。また、顕微鏡下での肉眼による判定や機械を用いる自動測定も可能である。
【0103】
本発明のヒトIL−8に対するキメラ抗体、再構成ヒト抗体およびそのF(ab′)2 ,Fab,FvあるいはシングルチェーンFvは、メンブレンフィルターによる濾過滅菌の後、好ましくは非経口的に、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射等によりあるいは経気道的に、例えばネブライザー(nebulizer)により医薬療法剤として投与することができる。ヒトに対する投与量は、患者の状態、年齢等により異なるがおよそ1〜1000mg/bodyであり、1−10mg/kg/週の分割用量を選択することができる。
【0104】
本発明のヒトIL−8に対するキメラ抗体、再構成ヒト抗体およびそのF(ab′)2 ,Fab,FvあるいはシングルチェーンFvは、精製され結合活性を評価された後に、生理活性タンパク質の製剤化に通常用いられる方法により、医薬療法剤として製剤化される。たとえば、注射用製剤は精製されたヒトIL−8に対するキメラ抗体、再構成ヒト抗体およびそのF(ab′)2 ,Fab,FvあるいはシングルチェーンFvを、溶剤、例えば、生理食塩水、緩衝液などに溶解し、それに吸着防止剤、例えば、Tween80、ゼラチン、ヒト血清アルブミン(HSA)などを加えたものであり、または使用前に溶解再構成するために凍結乾燥したものであってもよい。凍結乾燥のための賦形剤としては、糖アルコール又は糖、例えばマンニトール、ブドウ糖などをもちいることができる。
【0105】
【実施例】
次に、本発明を下記の実施例により具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。
実施例1. ヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体のV領域をコードするDNAのクローニング
ヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体の可変領域をコードするDNAを次の様にしてクローニングした。
【0106】
1.全RNAの調製
ハイブリドーマWS−4からの全RNAを、Chirgwin,J.M.ら、Biochemistry,18,5294−5299,1979により記載されている塩化セシウム密度勾配遠心法を修飾して調製した。
すなわち、1×107 個のハイブリドーマWS−4の細胞を25mlの4Mグアニジンチオシアネート(Fulka社製)中で完全にホモジナイズさせた。ホモジネートを遠心管中の5.7M塩化セシウム溶液層上に重層し、次にこれをBeckman SW40ローター中で31,000rpm にて20℃で14時間遠心分離することによりRNAを沈澱させた。
【0107】
RNA沈澱物を80%エタノールにより洗浄し、そして10mM EDTA及び0.5% N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウムを含有する20mM Tris−HCl(pH7.5)200μl中に溶解し、そしてそれにProtenase(Boehringer社製)を0.5mg/mlとなるように添加した後、37℃にて30分間温浴中でインキュベートした。混合物をフェノール及びクロロホルムで抽出し、そしてRNAをエタノールで沈澱させた。次に、RNA沈澱物を1mM EDTAを含有する10mM Tris−HCl(pH7.5)200μlに溶解した。
【0108】
2.メッセンジャーRNA(mRNA)の抽出
マウスモノクローナル抗体WS−4H鎖をコードするmRNAを抽出するため、Fast Track mRNA Isolation Kit Version 3.2(Invitrogen社製)を用いて、その指示書に記載の方法に従い、上記1.で得られた全RNAからpoly(A)ポジティブなmRNAを抽出した。
【0109】
3.一本鎖cDNAの合成
cDNA Cycle Kit(Invitrogen社製)を用いて、その指示書に記載の方法に従い、上記2.で得られた約40ngのmRNAより一本鎖cDNAを合成し、マウスH鎖V領域をコードするcDNAの増幅に用いた。尚、マウスL鎖V領域をコードするcDNAを増幅するために、約10μgの上記全RNAより一本鎖cDNAを合成した。
【0110】
4.抗体可変領域をコードする遺伝子のPCR法による増幅
(1)マウスH鎖V領域をコードするcDNAの増幅
PCRのためのプライマーは、配列番号:13〜24に示すMHV(MouseHeavy Variable)プライマー1〜12、及び配列番号:25に示すMHC(Mouse Heavy Constant)プライマー(Jones,S.T.ら、Bio/Technology,9,88−89,1991を使用した。
【0111】
PCR溶液100μlは、10mM Tris−HCl(pH8.3),50mM KCl,0.1mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、1.5mM MgCl2 ,0.001%(W/V)ゼラチン,5ユニットのDNAポリメラーゼAmpliTaq(Perkin Elmer Cetus社)、0.25μMの配列番号:13〜24に示すMHVプライマーのうち一つと1.75μMの配列番号:25に示すMHCプライマー及び上記3.で得られた一本鎖cDNA溶液1.5μlを含有し、MHV1〜12プライマーの各々について別々に用意した。これを50μlの鉱油で覆った後、94℃の初期温度にて3分間そして次に94℃にて1分間、55℃にて1分間及び72℃にて1分間、この順序で加熱した。この温度サイクルを30回反復した後、反応混合物をさらに72℃にて10分間インキュベートした。
【0112】
(2)マウスL鎖V領域をコードするcDNAの増幅
PCRのためのプライマーとして配列番号:1〜11に示すMKV(Mouse Kappa Variable)プライマー1〜11、及び配列番号:12に示すMKC(Mouse Kappa Constant)プライマー(Jones,S.T.ら、Bio/Technology,9,88−89,1991)を使用した。
【0113】
cDNAの増幅は、それぞれ0.25μMのMKVプライマー混合物と3.0μMのMKCプライマーを用いて増幅した点を除いて、前記4.(1)においてH鎖V領域遺伝子の増幅について記載したのと同じ方法により上記3.で得られた一本鎖cDNA溶液2.0μlから増幅を行なった。
【0114】
5.PCR生成物の精製および断片化
前記のようにしてPCR法により増幅したH鎖V領域およびL鎖V領域それぞれのDNA断片を1.5%低融点アガロース(Sigma社製)を用いるアガロースゲル電気泳動により分離した。約450bp長のH鎖DNA断片と約400bp長のL鎖DNA断片を含有するアガロース片をそれぞれ切り取り、そして65℃にて5分間溶融せしめ、そしてこれと同容積の2mM EDTA及び300mM NaClを含有する20mM Tris−HCl(pH7.5)を加えた。
【0115】
この混合物をフェノール及びクロロホルムにより抽出し、そしてDNA断片をエタノール沈澱により回収し、そして1mM EDTAを含有する10mM Tris−HCl(pH7.5)に溶解した。次に、10mM MgCl2 及び1mMジチオスレイトールを含有する10mM Tris−HCl(pH7.9)中で5ユニットの制限酵素Xma I(New England BioLabs社製)を用いて37℃にて3時間消化した。次に、40ユニットの制限酵素Sal I(宝酒造社製)により37℃にて2時間消化し、そして生ずるDNA断片を、1.5%低融点アガロース(Sigma社製)を用いるアガロースゲル電気泳動により分離した。
【0116】
DNA断片を含有するアガロース片を切り取りそして65℃にて5分間溶融せしめ、そしてこれと同容積の2mM EDTA及び300mM NaClを含有する20mM Tris−HCl(pH7.5)を加えた。この混合物をフェノール及びクロロホルムにより抽出し、そしてDNA断片をエタノール沈澱により回収し、そして1mM EDTAを含有する10mM Tris−HCl(pH7.5)に溶解した。
こうして、マウスκ型L鎖V領域をコードする遺伝子を含んで成るDNA断片、及びマウスH鎖V領域をコードする遺伝子を含んで成るDNA断片を各々得た。上記DNA断片はいずれもその5′末端にSalI接着末端を有し、そしてその3′末端にXmaI接着末端を有する。
【0117】
6.連結及び形質転換
上記のようにして調製したマウスカッパ型L鎖V領域をコードする遺伝子を含んで成るSalI−XmaI DNA断片約0.3μgを、SalI、XmaI及び大腸菌由来のアルカリフォスファターゼ(BAP;宝酒造社製)で消化することにより調製したpUC19ベクター(宝酒造社製)約0.1μgと、1ユニットT4 DNAリガーゼ(GIBCO BRL社製)及び添付のバッファーを含有する反応混液中で、16℃にて4時間反応させ連結した。
【0118】
次に、5μlの上記連結混合物を大腸菌DH5αのコンピテント細胞(GIBCO BRL社製)50μlに加え、そしてこの細胞を氷上で30分間、42℃にて1分間そして再び氷上で1分間静置した。次いで400μlの2×YT培地(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press,(1989))を加え、37℃にて1時間インキュベートした後、50μg/mlのアンピシリン(明治製菓社製)を含有する2×YT寒天培地(Molecular Cloning:A LaboratoryManual,Sambrookら、Cold Spring HarborLaboratory Press,(1989))上にこの大腸菌をまき、37℃にて一夜インキュベートして大腸菌形質転換体を得た。
【0119】
尚、この際選択マーカーとしてX−Gal(5−bromo−4−chloro−3−indolyl−β−D−galactoside,宝酒造社製)50μgを塗布した。
この形質転換体を、50μg/mlのアンピシリンを含有する2×YT培地10ml中で37℃にて一夜培養し、そしてこの培養物から、QIAGEN plasmid mini kit(QIAGEN社製)を用いて、その指示書に記載の方法に従ってプラスミドDNAを調製した。
【0120】
こうして得られた、ハイブリドーマWS−4に由来するマウスκ型L鎖V領域をコードする遺伝子を含有するプラスミドをpUC−WS4−VLと命名した。大腸菌コンピテント細胞をJM109を用いた点を除いて、上記の同じ方法に従って、ハイブリドーマWSー4に由来するマウスH鎖V領域をコードする遺伝子を含有するプラスミドをSal I−Xma I DNA断片から作成し、そしてpUC−WS4−VHと命名した。
【0121】
実施例2. DNAの塩基配列の決定
前記のプラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列を、シークエンスプライマーとしてM13 Primer RVおよびM13 Primer M4(両者とも宝酒造社製)、自動DNAシークエンサー(Applied Biosystem Inc製)およびTaq Dye Deoxy Terminator Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystem Inc製)を用いて、メーカー指定のプロトコールに従って塩基配列を決定した。プラスミドpUC−WS4−VLに含まれるマウスWS−4抗体のL鎖V領域をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号:26に示す。また、プラスミドpUC−WS4−VHに含まれるマウスWS−4抗体のH鎖V領域をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号:27に示す。
【0122】
実施例3. CDRの決定
L鎖及びH鎖のV領域の基本的構造は、互いに類似性を有しており、それぞれ4つのフレームワーク領域が3つの超可変領域、即ち相補性決定領域(CDR)により連結されている。フレームワークのアミノ酸配列は、比較的良く保存されているが、一方、CDR領域のアミノ酸配列の変異性は極めて高い(Kabat,E.A.ら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」US Dept.Health and Human Services,1991)。
【0123】
この様な事実に基づき、ヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体の可変領域のアミノ酸配列をKabatらにより作成された抗体のアミノ酸配列のデータベースにあてはめて、相同性を調べることによりCDR領域を表5に示す如く決定した。
【0124】
【表5】
Figure 0003865418
【0125】
実施例4. クローン化cDNAの発現の確認(キメラWS−4抗体の作製)
発現ベクターの作製
キメラWS−4抗体を発現するベクターを作製するため、それぞれマウスWS−4L鎖及びH鎖V領域をコードするcDNAクローンpUC−WS4−VL及びpUC−WS4−VHをPCR法により修飾した。そしてHEF発現ベクター(前記、WO92−19759及び図1を参照のこと)に導入した。
【0126】
L鎖V領域のための後方プライマー(配列番号:28)及びH鎖V領域のための後方プライマー(配列番号:29)は、各々のV領域のリーダー配列の最初をコードするDNAにハイブリダイズし且つKozakコンセンサス配列(Kozak,M.ら、J.Mol.Biol.196,947−950,1987)及びHindIII 制限部位を有するように設計した。L鎖V領域のための前方プライマー(配列番号:30)及びH鎖V領域のための前方プライマー(配列番号:31)は、J領域の末端をコードするDNA配列にハイブリダイズし、且つ、スプライスドナー配列及びBamHI制限部位を付加するように設計した。
【0127】
20mM Tris−HCl(pH8.2)、10mM KCl、6mM(NH4 2 SO4 ,1%TritonX−100 100μM dNTPs、1.5mM MgCl2 、100pmole ずつの各プライマー、100ngの鋳型DNA(pUC−VL又はpUC−VH)、及び2.5UのAmpli Taq酵素を含有する100μlのPCR反応混合物を50μlの鉱油で覆い、94℃にて3分間最初の変性の後、94℃にて1分間、55℃にて1分間、72℃にて1分間のサイクルを30回行い、最後に72℃にて10分間インキュベートした。
【0128】
PCR生成物を1.5%低融点アガロースゲルを用いて精製し、HindIII 及びBamHIで消化し、そしてL鎖V領域については、HEF発現ベクターHEF−VL−gκに、H鎖V領域についてはHEF発現ベクターHEF−VH−gγ1にそれぞれクローニングした。DNA配列決定の後、正しいDNA配列を有するDNA断片を含むプラスミドをそれぞれHEF−chWS4L−gκ,HEF−chWS4H−gγ1と命名した。
【0129】
COS細胞へのトランスフェクション
キメラWS−4抗体の一過性発現を観察するため、前記発現ベクターをCOS細胞において試験した。HEF−chWS4L−gκならびにHEF−chWS4H−gγ1をGene Pulser装置(BioRad社製)を用いてエレクトロポレーションによりCOS細胞に同時形質転換した。各DNA(10μg)を、PBS中1×107 細胞/mlの0.8mlのアリコートに加え、1.5kV、25μFの容量にてパルスを与えた。
【0130】
室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を、5%のγ−グロブリンフリーウシ胎児血清を含有するDMEM培養液(GIBCO社製)15mlに懸濁し、組織培養シャーレに添加した。96時間のインキュベーションの後、培養上清を集め、遠心分離により細胞破片を除去し、直径0.45μmのディスクフィルター(Gelman Science社製)にて濾過した。
【0131】
ELISA
抗原結合測定および抗体濃度測定のためのELISAプレートを次のようにして調整した。抗原結合活性測定のためのELISAプレートは次の様にして調製した。96穴プレート(Nunc社製)の各ウェルを、濃度2μg/mlで固層化バッファー(0.1M 炭酸水素ナトリウム、0.02% アジ化ナトリウム)に溶解したヤギ抗ヒトIL−8ポリクローナル抗体(R&D systems社製)100μlで固層化し、希釈バッファー(50mM Tris−HCl,pH7.2,1%ウシ血清アルブミン(BSA),1mM MgCl2 ,0.15M NaCl,0.05% Tween20,0.02% アジ化ナトリウム)200μlでブロッキングの後、濃度5ng/ml組換えヒトIL−8(Amersham社製)100μlを添加した。
【0132】
キメラ抗体の精製サンプル、あるいはこれらを発現させたCOS細胞の培養上清を順次希釈して、各ウェルに加え、次に濃度1μg/mlのアルカリホスファターゼ標識ヤギ抗ヒトIgG抗体(TAGO社製)100μlを加えた。インキュベーション及び洗浄の後、基質溶液(1mg/ml p−ニトロフェニル燐酸)を加え、次に405nmでの吸光度を測定した。
【0133】
抗体濃度測定には、96穴プレートを濃度1μg/mlヤギ抗−ヒトIgG抗体(TAGO社製)100μlで固層化し、ブロッキングの後、キメラ抗体の精製サンプル、あるいはこれらを発現させたCOS細胞の培養上清を順次希釈して、各ウェルに加え、次に濃度1μg/mlのアルカリホスファターゼ結合ヤギ抗−ヒトIgG抗体(TAGO社製)100μlを加えた。インキュベーション及び洗浄の後、基質溶液(1mg/ml p−ニトロフェニル燐酸、Sigma社製)を加え、次に405nmでの吸光度を測定した。
その結果、キメラ抗体WS−4がIL−8に特異的に結合したことにより、このキメラ抗体がマウスモノクローナル抗体WS−4のV領域の正しい構造を有することが示唆された(図2を参照のこと)。
【0134】
なお、前記プラスミドHEF−chWS4L−gκを有する大腸菌はEscherichia coli DH5α(HEF−chWS4L−gκ)、および前記プラスミドHEF−chWS4H−gγ1 を有する大腸菌はEscherichia coli JM109(HEF−chWS4H−gγ1 )として工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番3号)に、平成6年7月12日に各々FERM BP−4739、およびFERM BP−4740としてブタペスト条約に基づき国際寄託された。
【0135】
実施例5. 再構成ヒトWS−4抗体の作製
再構成ヒトWS−4抗体H鎖V領域の作製
再構成ヒトWS−4抗体H鎖V領域をコードするDNAを次の様にして設計した。ヒト抗体VDH26のFR1〜3およびヒト抗体4B4のFR4をコードするそれぞれ既知のDNA配列をマウスWS−4抗体H鎖V領域のCDRをコードするDNA配列が連結されるように再構成ヒトWS−4抗体H鎖V領域をコードする全長DNAを設計した。
【0136】
次に、このDNA配列のそれぞれ5′側及び3′側にHindIII 認識部位/KOZAKコンセンサス配列及びBamHI認識部位/スプライスドナー配列をそれぞれ付加して、HEF発現ベクターに挿入できるようにした。こうして設計したDNA配列をほぼ均等な4本のオリゴヌクレオチドに分け、そして次に、これらのオリゴヌクレオチドのアセンブリーを妨害する可能性のあるオリゴヌクレオチド中の二次構造についてコンピューター解析した。
【0137】
4本のオリゴヌクレオチド配列を配列番号:32〜35に示す。これらのオリゴヌクレオチドは113〜143塩基の長さを有し、隣接する2本のオリゴヌクレオチドは互いに20塩基のオーバラップ領域を有する。4本のオリゴヌクレオチドの内HF1(配列番号:32)、HF3(配列番号:34)はセンスDNA配列を有し、そして他のHF2(配列番号:33)、HF4(配列番号:35)はアンチセンスDNA配列を有する。これらのオリゴヌクレオチドを自動DNA合成装置(Applied Biosystems社)によって合成した。
【0138】
また、これら4本のオリゴヌクレオチドのPCR法によるアッセンブリーの方法を図3に記す。約100ngずつのHF1とHF2、HF3とHF4を組み合わせて、2.5uのPfu DNAポリメラーゼを含有する最終容量98μlのPCR反応液に添加した。94℃にて3分間の最初の変性の後、94℃にて2分間、55℃にて2分間及び72℃にて2分間を1サイクルとし、これを2サイクル行った。
【0139】
PCR反応液の半量を相互に交換したのち、さらに2サイクルのインキュベーションを行った。100pmoleずつのRVH5′プライマー(配列番号:36)及びRVH3′プライマー(配列番号:37)を外部プライマーとして添加した後、PCR反応液を50μlの鉱油で覆い、そして94℃にて3分間の最初の変性の後、94℃にて1分間、55℃にて1分間及び72℃にて1分間の45サイクルを行い、そして次に72℃にて10分間インキュベートした。
【0140】
約450塩基対のDNA断片を1.5%低融点アガロースゲルを用いて精製し、HindIII 及びBamH Iにより消化し、そして次にHEF発現ベクターHEF−VH−gγ1にクローニングした。EF−1プライマー(配列番号:66)およびHIPプライマー(配列番号:67)を用いてDNA配列決定の後、正しいH鎖V領域のアミノ酸配列をコードするDNA断片を含むプラスミドをHEF−RVHa−gγ1と命名した。本プラスミドHEF−RVHa−gγ1に含まれるH鎖V領域のアミノ酸配列および塩基配列を配列番号:38に示す。
【0141】
再構成ヒトWS−4抗体H鎖V領域の各バージョン「b」,「c」,「d」,「e」,「f」,「g」,「h」を以下のようにして作製した。
バージョン「b」(RVHb)は、47位のロイシンがトリプトファンに変異するように設計した変異原プライマーLTW1(配列番号:39)およびLTW−2(配列番号:40)を用い、両端を規定するプライマーとしてはRVH5′(配列番号:36)およびRVH3′(配列番号:37)を用いて、プラスミドHEF−RVHa−gγ1を鋳型DNAとして、PCR法により増幅し、プラスミドHEF−RVHb−gγ1を得た。本プラスミドHEF−RVHb−gγ1に含まれるH鎖V領域のアミノ酸配列および塩基配列を配列番号:41に示す。
【0142】
バージョン「c」は、41位のグルタミンがプロリンに変異するように設計した変異原プライマーQTP1(配列番号:42)およびQTP2(配列番号:43)を用い、プラスミドHEF−RVHa−gγ1を鋳型DNAとして、PCR法により増幅し、プラスミドHEF−RVHc−gγ1を得た。本プラスミドHEF−RVHc−gγ1に含まれるH鎖V領域のアミノ酸配列および塩基配列を配列番号:44に示す。
【0143】
バージョン「d」は、変異原プライマーとしてQTP1およびQTP2を用い、プラスミドHEF−RVHb−gγ1を鋳型DNAとしてプラスミドHEF−RVHd−gγ1を得た。本プラスミドHEF−RVHd−gγ1に含まれるH鎖V領域のアミノ酸配列および塩基配列を配列番号:45に示す。
バージョン「e」は、40位のアラニンがプロリンに変異するように設計した変異原プライマーATP1(配列番号:46)およびATP2(配列番号:47)を用い、プラスミドHEF−RVHd−gγ1を鋳型DNAとして増幅し、プラスミドHEF−RVHe−gγ1を得た。本プラスミドHEF−RVHe−gγ1に含まれるH鎖V領域に含まれるアミノ酸配列および塩基配列を配列番号:48に示す。
【0144】
バージョン「f」は、44位のグリシンがアラニンに変異するように設計した変異原プライマーGTA1(配列番号:49)およびGTA2(配列番号:50)を用い、プラスミドHEF−RVHd−gγ1を鋳型DNAとして増幅し、プラスミドHEF−RVHf−gγ1を得た。本プラスミドHEF−RVHf−gγ1に含まれるH鎖V領域のアミノ酸配列および塩基配列を配列番号:51に示す。
【0145】
バージョン「g」は、67位のロイシンがフェニルアラニンに変異するように設計した変異原プライマーLTF1(配列番号:52)およびLTF2(配列番号:53)を用い、プラスミドHEF−RVHd−gγ1を鋳型DNAとして増幅し、プラスミドHEF−RVHg−gγ1を得た。本プラスミドHEF−RVHg−gγ1に含まれるH鎖V領域のアミノ酸配列および塩基配列を配列番号:54に示す。
【0146】
バージョン「h」は、変異原プライマーとしてLTF1およびLTF2を用い、プラスミドHEF−RVHb−gγ1を鋳型DNAとして増幅し、プラスミドHEF−RVHh−gγ1を得た。本プラスミドHEF−RVHh−gγ1に含まれるH鎖V領域のアミノ酸配列および塩基配列を配列番号:55に示す。
【0147】
再構成ヒトWS−4抗体L鎖V領域の作製
再構成ヒトWS−4抗体L鎖V領域をコードするDNAを次の様にして設計した。ヒト抗体REIのFRをコードするDNA配列とマウスWS−4抗体L鎖V領域のCDRをコードするDNA配列が連結されるように再構成ヒトWS−4抗体L鎖V領域をコードする全長DNAを設計した。
【0148】
次に、このDNA配列のそれぞれ5′側及び3′側にHindIII 認識部位/KOZAKコンセンサス配列及びBamHI認識部位/スプライスドナー配列をそれぞれ付加して、HEF発現ベクターに挿入できるようにした。こうして設計したDNA配列をほぼ均等な長さの4本のオリゴヌクレオチドに分け、そして次に、これらのオリゴヌクレオチドのアセンブリーを妨害する可能性のあるオリゴヌクレオチド中の二次構造についてコンピューター解析した。
【0149】
4本のオリゴヌクレオチド配列を配列番号:56〜59に示す。これらのオリゴヌクレオチドは106〜124塩基の長さを有し、隣接する2本のオリゴヌクレオチドは互いに19〜23塩基のオーバラップ領域を有する。4本のオリゴヌクレオチドの内LF1(配列番号:56)、LF3(配列番号:58)はセンスDNA配列を有し、そして他のLF2(配列番号:57)、LF4(配列番号:59)はアンチセンスDNA配列を有する。これらオリゴヌクレオチドを前記のHF1〜4と同様の方法で合成した。
【0150】
アッセンブリーは、100ngずつの4種のオリゴヌクレオチド及び5uのAmpli Taqを含有する98μlのPCR混合物を、94℃にて3分間の最初の変性の後、94℃にて2分間、55℃にて2分間及び72℃にて3分間を1サイクルとし、これを2サイクル行った。100pmoleずつのRVL5′プライマー(配列番号:60)及びRVL3′プライマー(配列番号:61)を外部プライマーとして添加した後、PCR反応液を50μlの鉱油で覆い、そして94℃にて3分間の最初の変性の後、94℃にて1分間、55℃にて1分間及び72℃にて1分間を1サイクルとしてこれを30サイクルを行い、そして次に72℃にて10分間インキュベートした(図3参照)。
【0151】
約400塩基対のDNA断片を1.5%低融点アガロースゲルを用いて精製し、HindIII 及びBamHIにより消化し、そして次にHEF発現ベクターHEF−VL−gκにクローニングした。EF−1プライマー(配列番号:66)およびKIPプライマー(配列番号:68)を用いてDNA配列決定の後、正しいL鎖V領域のアミノ酸配列をコードするDNA断片を含むプラスミドをHEF−RVLa−gκと命名した。本プラスミドHEF−RVLa−gκに含まれるH鎖V領域のアミノ酸配列および塩基配列を配列番号:62に示す。
【0152】
バージョン「b」(RVLb)は、71位のフェニルアラニンがチロシンに変異するように設計した変異原プライマーFTY1(配列番号:63)およびFTY2(配列番号:64)を用い、両端を規定するプライマーとしてはRVL5′(配列番号:60)およびRVL3′(配列番号:61)を用いて、プラスミドHEF−RVLa−gκを鋳型DNAとして、PCR法により増幅し、プラスミドHEF−RVLb−gκを得た。本プラスミドHEF−RVLb−gκに含まれるL鎖V領域のアミノ酸配列および塩基配列を配列番号:65に示す。
【0153】
再構成ヒトWS−4抗体の各鎖の抗原結合活性を評価するため、まず、再構成ヒトWS−4抗体L鎖の「a」バージョンための発現ベクターHEF−RVLa−gκとキメラWS−4抗体H鎖のための発現ベクターHEF−chWS4H−gγ1とによりCOS細胞を前記のようにして同時トランスフェクションし、前記のようにして培養上清を回収した後、前記実施例4ELISAに記載のとおりの方法を用いて、産生された抗体について産生抗体量および抗原結合活性を測定した。この結果を図4に示す。図4に示すように陽性対照としてのキメラ抗体(chL/chH)および再構成L鎖とキメラH鎖とからなる抗体(RVLa/chH)との間には抗原結合性に差がないことが確認された。
【0154】
同時に、キメラWS−4抗体L鎖のための発現ベクターHEF−chWS4L−gκと再構成ヒトWS−4抗体H鎖の「a」バージョンとの組み合せを評価するため、両者をCOS細胞に同時トランスフェクションし、前記実施例4ELISAに記載のとおりの方法を用いて、得られた抗体について産生抗体量および抗原結合活性を測定した。その結果、この抗体(chL/RVHa)には抗原結合活性が見られなかった(図4を参照のこと)。
【0155】
前記のごとく、再構成ヒトWS−4抗体L鎖の「a」バージョン(RVLa)はキメラWS−4抗体L鎖と同等の結合活性を示したので、これ以後の再構成H鎖各バージョンの評価には、再構成H鎖各バージョンと再構成ヒトWS−4抗体L鎖の「a」バージョン(RVLa)をCOS細胞に同時トランスフェクションすることにより行なった。
【0156】
その結果、「b」,「d」,「e」,「f」,「g」,「h」の各再構成H鎖バージョンを有する抗体は、陽性対照であるキメラWS−4抗体(chL/chH)に匹敵する程度の抗原結合性を示し、この組み合せがヒト抗体における機能的抗原結合部位を形成することが示唆された。しかし、産生量については、「g」バージョン(RVHg)以外はいずれもキメラWS−4抗体(chL/chH)より低かった。なお、H鎖バージョン「c」を有する抗体には抗原結合活性が見られなかった(図5を参照のこと)。
【0157】
このことから、再構成ヒトWS−4抗体L鎖の「a」バージョン(RVLa)ならびに再構成ヒトWS−4抗体H鎖の「g」バージョン(RVHg)を有する抗体は、良好な抗原結合性を示す機能的抗原結合部位を再形成し、COS細胞に同時トランスフェクションすることによりキメラWS−4抗体(chL/chH)に匹敵する程度の産生量を示すことが示唆された。
【0158】
次に、再構成ヒトWS−4抗体L鎖の「b」バージョン(RVLb)を用いて、H鎖各バージョンとCOS細胞に同時トランスフェクションし、再構成ヒトWS−4抗体L鎖の「b」バージョン(RVLb)の評価をおこなった。その結果、再構成ヒトWS−4抗体H鎖「g」バージョンを有する抗体(RVLb/RVHg)だけが、陽性対照であるキメラWS−4抗体(chL/chH)に匹敵する程度の抗原結合性を示し、この組み合せがヒト抗体における機能的抗原結合部位を形成することが示唆された。また、産生量についても、「g」バージョン(RVHg)以外はいずれもキメラWS−4抗体(chL/chH)より低かった(図6を参照のこと)。
【0159】
前記の評価において、キメラWS−4抗体(chL/chH)に匹敵する産生量とIL−8に対する結合活性を示した2種の再構成ヒト抗体(RVLa/RVHgとRVLb/RVHg)をそれぞれプロティンAカラムで精製して、実施例4ELISAに記載の方法で結合活性をより正確に評価した。その結果、キメラWS−4抗体(chL/chH)、RVLa/RVHg抗体並びにRVLb/RVHg抗体のいずれも同程度の結合活性を示した(図7参照のこと)。
【0160】
このことから、再構成ヒトWS−4抗体L鎖の「a」バージョン(RVLa)あるいは「b」バージョン(RVLb)と、再構成ヒトWS−4抗体H鎖の「g」バージョン(RVHg)を有する抗体は、良好な抗原結合性を示す機能的抗原結合部位を再形成し、COS細胞に同時トランスフェクションすることによりキメラWS−4抗体(chL/chH)に匹敵する程度の産生量を示すことが示唆された。
【0161】
再構成ヒトWS−4抗体のL鎖「a」バージョン(RVLa)と同H鎖「g」バージョン(RVHg)、または同L鎖「b」バージョン(RVLb)と同H鎖「g」バージョン(RVHg)からなる再構成ヒト抗体のIL−8レセプターに対するIL−8結合阻害活性を、リガンドレセプター結合阻害アッセイにより評価した。
【0162】
健常人よりヘパリン採血した約100mlの血液を、15mlのMono−Poly分離溶液(ICN Biomedicals社製)に35mlずつ重層し、添付の指示書に従い遠心分離をおこなってヒト好中球層を単離した。この細胞を1%BSA添加RPMI−1640培地にて洗浄した後、混入した赤血球を150mMの塩化アンモニウム溶液にて除去した。これを遠心分離した後、細胞を1%BSA添加RPMI−1640培地にて洗浄し、2x107 Cells/mlの細胞濃度になるように再懸濁した。この細胞懸濁液の好中球の含有率は、サイトスピン(Shandon社)による塗抹標本をDiff−Quik(ミドリ十字社製)染色して測定した結果95%以上であった。
【0163】
上記好中球懸濁液を遠心分離し、結合バッファー(1%BSA及び0.1%アジ化ナトリウムを含むD−PBS)にて細胞濃度2x107 Cells/mlになるように再懸濁した。この時、好中球上のFcレセプターをあらかじめ飽和する目的で、本発明のヒト抗体と同一のFc部分を有するSK2キメラ抗体(国際特許出願出願番号PCT/JP94/00859参照)とその抗原であるヒトIL−6をそれぞれ濃度約50μg/mlおよび約40ng/mlになるように添加し、氷温中で30分間インキュベートした。
【0164】
125Iで放射標識したIL−8(74TBq/mmol,Amersham社製)と未標識IL−8(Amersbam社製)を各濃度が4ng/mlになるように結合バッファーにて混合し調製した。キメラWS−4抗体(chL/chH)、再構成ヒト抗体(RVLa/RVHgおよびRVLb/RVHg)、陰性対照のヒト抗体(PAESEL+LOREI社製)あるいは陽性対照のマウスWS−4抗体のそれぞれを結合バッファーにて濃度2000ng/mlから約8ng/mlまで2倍段階希釈した。IL−8溶液ならびに各抗体溶液をそれぞれ50μlずつ混合し氷温中で30分間インキュベートした。その後、上記好中球懸濁液100μlを添加し、更に15分毎に撹拌しながら氷温中で1時間インキュベートした。インキュベート後、この細胞懸濁液を200μlの20%サッカロース溶液に重層し、遠心、凍結させた。細胞に結合したIL−8を測定するため、細胞沈渣を切断し、γ−カウンター(アロカ社製)で放射活性を測定した。その結果を図8に示す。
【0165】
再構成ヒトWS−4抗体のL鎖「a」バージョン(RVLa)と同H鎖「g」バージョン(RVHg)、または同L鎖「b」バージョン(RVLb)と同H鎖「g」バージョン(RVHg)を有する抗体は、IL−8レセプターに対するIL−8の結合に対して、キメラ抗体(chL/chH)と同程度の結合阻害活性を有することが明らかになった。
【0166】
なお、前記プラスミドHEF−RVLa−gκを有する大腸菌はEscherichia coli DH5α(HEF−RVLa−gκ)、およびプラスミドHEF−RVHg−gγ1を含有する大腸菌はEscherichia coli JM109(HEF−RVHg−gγ1)として工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番3号)に、平成6年7月12日に、各々FERM BP−4738および、FERM BP−4741としてブタペスト条約に基づき国際寄託された。
【0167】
参考例1. ハイブリドーマWS−4の作製
抗ヒトIL−8モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、ヒトIL−8で免疫したBALB/cマウスの脾臓細胞とマウス骨髄腫細胞P3X63−Ag8.653をポリエチレングリコールを用いた常法により融合して作製した。ヒトIL−8と結合する活性を指標としたスクリーニングを行い、ハイブリドーマWS−4を樹立した(Ko,Y−C.ら、J.Immunol.Methods,149,227−235,1992)。
【0168】
【発明の効果】
本発明はヒトIL−8に対する再構成ヒト抗体を提供し、この抗体においてはヒト抗体のV領域のCDRがヒトIL−8に対するマウスモノクローナル抗体のCDRにより置き換えられている。この再構成ヒト抗体の大部分がヒト抗体に由来し、そしてCDRは元来、抗原性が低いことから、本発明の再構成ヒト抗体はヒトに対する抗原性が低く、そしてそれ故に医学療法用として期待される。
【0169】
【配列表】
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【0170】
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【0171】
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【0172】
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【0174】
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【0176】
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【0178】
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【0179】
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【0180】
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【0190】
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【0195】
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【0200】
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【0209】
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【0210】
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【0212】
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【0222】
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【0223】
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【0224】
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【0225】
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【0226】
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【0227】
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【0228】
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【0229】
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【0230】
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【0231】
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【0232】
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【0233】
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【0234】
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【0235】
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【0236】
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【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、それぞれ本発明の抗体のL鎖およびH鎖の発現のために有用な、ヒト・エロンゲーション・ファクター−1α(HEF−1α)プロモーター/エンハンサー系を含んで成る発現ベクターHEF−VL−gκおよびHEF−VH−gγ1を示す。
【図2】図2は、COS細胞の培養上清中に産生された本発明のキメラWS−4抗体(chL/chH)のヒトIL−8に対する結合能の確認のためのELISAの結果を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明の再構成ヒトWS−4抗体のH鎖V領域の第一バージョン「a」(RVHa)、および再構成ヒトWS−4抗体のL鎖V領域の第一バージョン「a」(RVLa)の各アミノ酸配列をコードするDNAを構築するためのダイヤグラムである。
【図4】図4は、本発明の再構成ヒトWS−4抗体のL鎖V領域(RVLa)ならびにH鎖V領域(RVHa)を、それぞれキメラWS−4抗体H鎖V領域(chH)ならびにキメラWS−4抗体L鎖V領域(chL)とCOS細胞に発現させ、ヒトIL−8に対する結合能と産生量を、COS細胞の培養上清中に産生された本発明のキメラWS−4抗体(chL/chH)と比較するためのELISAの結果を示すグラフである。
【図5】図5は、COS細胞の培養上清中に産生された本発明のRVLaを含んでなる8種の再構成ヒトWS−4抗体(RVLa/RVHa,RVLa/RVHb,RVLa/RVHc,RVLa/RVHd,RVLa/RVHe,RVLa/RVHf,RVLa/RVHg,RVLa/RVHh)のヒトIL−8に対する結合能と産生量を、COS細胞の培養上清中に産生された本発明のキメラWS−4抗体(chL/chH)と比較するためのELISAの結果を示すグラフである。
【図6】図6は、COS細胞の培養上清中に産生された本発明のRVLbを含んでなる8種の再構成ヒトWS−4抗体(RVLb/RVHa,RVLb/RVHb,RVLb/RVHc,RVLb/RVHd,RVLb/RVHe,RVLb/RVHf,RVLb/RVHg,RVLb/RVHh)のヒトIL−8に対する結合能と産生量を、COS細胞の培養上清中に産生された本発明のキメラWS−4抗体(chL/chH)と比較するためのELISAの結果を示すグラフである。
【図7】図7は、精製した本発明の再構成ヒトWS−4抗体RVLa/RVHg並びにRVLb/RVHgのヒトIL−8に対する結合能を、精製した本発明のキメラWS−4抗体(chL/chH)と比較するためのELISAの結果を示すグラフである。
【図8】図8は、精製した本発明の再構成ヒト型化抗体RVLa/RVHgならびにRVLb/RVHgのIL−8レセプターに対するIL−8の結合阻害活性をマウスWS−4抗体ならびに本発明のキメラWS−4抗体(chL/chH)と比較するための、リガンドレセプター結合阻害アッセイの結果を示すグラフである。

Claims (22)

  1. L鎖V領域ペプチドが配列番号:62のアミノ酸番号1〜107のアミノ酸配列の又は配列番号:65のアミノ酸番号1〜107のアミノ酸配列で示され、そしてH鎖V領域ペプチドが配列番号:54のアミノ酸番号1〜122のアミノ酸配列で示される抗IL-8再構成ヒト抗体。
  2. ヒトL鎖C領域がヒトCκ領域であり、そしてヒトH鎖C領域がヒトCγ1領域である、請求項1に記載の抗IL-8再構成ヒト抗体。
  3. ヒトL鎖C領域がヒトCκ領域であり、そしてヒトH鎖C領域がヒトCγ4領域である、請求項1に記載の抗IL-8再構成ヒト抗体。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載のL鎖V領域ペプチドとH鎖V領域ペプチドとを12〜19個のアミノ酸からなるリンカーを介して接続したシングルチェインFv。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載の再構成ヒト抗体から作製されるF(ab')2フラグメント又はFabフラグメント。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載のIL-8再構成ヒト抗体のL鎖ペプチドをコードするDNA。
  7. L鎖V領域ペプチドが配列番号:62のアミノ酸番号1〜 107 で示されるアミノ酸配列又は配列番号:65のアミノ酸番号1〜 107 で示されるアミノ酸配列からなる、請求項に記載のDNA。
  8. ヒトL鎖C領域がヒトL鎖Cκ領域である請求項又はに記載のDNA。
  9. 請求項1〜のいずれか1項に記載のIL-8再構成ヒト抗体のH鎖ペプチドをコードするDNA。
  10. H鎖V領域ペプチドが配列番号:54のアミノ酸番号1〜 122で示されるアミノ酸配列からなる、請求項に記載のDNA。
  11. ヒトH鎖C領域がヒトH鎖Cγ1領域である、請求項又は10に記載のDNA。
  12. ヒトH鎖C領域がヒトH鎖Cγ4領域である、請求項又は10に記載のDNA。
  13. 請求項1〜のいずれか1項に記載のL鎖V領域ペプチドをコードするDNAとH鎖V領域ペプチドをコードするDNAとを任意の12〜19個のアミノ酸のペプチドリンカーをコードするDNAリンカーで接続した、シングルチェインFvをコードするDNA。
  14. 請求項のいずれか1項に記載のDNAを含む発現ベクター。
  15. 請求項12のいずれか1項に記載のDNAを含む発現ベクター。
  16. 請求項のいずれか1項に記載のDNA、及び請求項12のいずれか1項に記載のDNAを含む発現ベクター。
  17. 請求項13に記載のDNAを含む発現ベクター。
  18. 請求項14に記載の発現ベクター及び請求項15に記載の発現ベクターにより同時に形質転換された宿主細胞。
  19. 請求項16に記載のベクターにより形質転換された宿主細胞。
  20. 請求項17に記載のベクターにより形質転換された宿主細胞。
  21. 請求項18又は19に記載の宿主細胞を培養し、そして目的とする抗体を回収する段階を含んでなる再構成ヒト抗体の製造方法。
  22. 請求項20に記載の宿主細胞を培養し、そして目的とする抗体を回収する段階を含んでなるシングルチェインFvの生産方法。
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