JP3863757B2 - ダクタイル鋳鉄の脆化抑制方法 - Google Patents

ダクタイル鋳鉄の脆化抑制方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダクタイル鋳鉄の脆化抑制方法に関し、さらに詳細には、水による脆化を抑制した高強度ダクタイル鋳鉄を提供することのできる、ダクタイル鋳鉄の脆化抑制方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高強度ダクタイル鋳鉄が、水に濡れると脆化する現象は、今まで知られていなかった。引張り強度120Kg/mm以上のオーステンパ処理したダクタイル鋳鉄から成る仮設構造物用組立金具、またはオーステンパ処理したダクタイル鋳鉄、焼きならし処理したダクタイル鋳鉄、および高強度の鋳放したダクタイル鋳鉄のテストピースに脆化現象が生じた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
高強度ダクタイル鋳鉄が、水に濡れると引張り強度および伸びが著しく低下し、脆化現象が生じるという不都合を解消し、水に濡れても引張り強度および伸びの低下を防ぎ、かつ脆化現象が生じない高強度ダクタイル鋳鉄を得るための、ダクタイル鋳鉄の脆化抑制方法を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、オーステンパ処理ダクタイル鋳鉄、焼きならし処理ダクタイル鋳鉄では、表面に少なくとも20μm以上のフェライト層を形成することを特徴とする。また塗装による塗膜又はめっき層を形成することを特徴とする。さらにまた錆止め油又は潤滑油を塗布することを特徴とする。さらにまた表面に少なくとも20μm以上のフェライト層を形成し、その後、その上に塗装による塗膜又はめっき層を形成することを特徴とする。さらにまた表面に少なくとも20μm以上のフェライト層を形成し、その後、その上に錆止め油又は潤滑油を塗布することを特徴とする。
【0005】
また高強度の鋳放しダクタイル鋳鉄では、塗装による塗膜又はめっき層を形成することを特徴とする。さらにまた錆止め油又は潤滑油を塗布することを特徴とする。
【0006】
【作用】
オーステンパ処理ダクタイル鋳鉄,焼きならし処理ダクタイル鋳鉄では、表面に少なくとも20μm以上のフェライト層を形成し、また塗装による塗膜又はめっき層を形成し、また錆止め油または潤滑油を塗布し、さらにまた表面に少なくとも20μm以上のフェライト層を形成した後、その上に塗装による塗膜又はめっき層を形成し、さらにまた表面に少なくとも20μm以上のフェライト層を形成した後、その上に錆止め油又は潤滑油を塗布し、一方高強度の鋳放しダクタイル鋳鉄では、塗装による塗膜又はめっき層を形成し、また錆止め油又は潤滑油を塗布するので、高強度ダクタイル鋳鉄が水に濡れても、水により脆化する現象を抑制することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
テストピース−1の準備
オーステナイト化処理900℃×1.5〜2hおよび恒温変態処理330℃×1.5hで、ダクタイル鋳鉄製仮設構造物組立金具(以下、G型金具と称す)にオーステンパ処理を施した。G型金具の表面のフェライト層厚さは、オーステナイト化時の保持時間と雰囲気(フェライト層を形成する場合は大気雰囲気、フェライト層を形成させない場合は窒素ガス雰囲気)をコントロールし調整した。塗装はフタル酸樹脂エナメルを使用し、平均29μmの厚さの塗膜を形成した。錆止め油剤の塗布には、錆止め潤滑油を使用した。これらを適当に組み合わせ、テストピース−1とした。
【0008】
テストピース−1の化学分析結果は、以下の通りである。
【0009】
【表1】
Figure 0003863757
【0010】
テストピース−1にティッシュペーパーを巻き、このティッシュペーパーに水を含浸させて、引張り試験用試料とした。比較例として、テストピース−1にティッシュペーパーを巻かない物および巻いた物を用いた。両者の引張り試験で得られた引張り強さ(ton)を表2に示す。
【0011】
【表2】
Figure 0003863757
【0012】
表2の結果より、本発明の方法を施した物は比較例と比較して、乾燥状態の比較例と同等な引張り強さであり、かつ水濡れ状態の比較例よりも大きい引張り強さであり、脆化現象を防止できることが判る。
【0013】
(実施例2)
テストピース−2の準備
オーステナイト化処理900℃×1〜2.5hおよび恒温変態処理330℃×1.5hで、JIS4号引張り試験片にオーステンパ処理を施した。表面のフェライト層厚さは、実施例1と同様にオーステナイト化時の保持時間と雰囲気をコントロールし調整した。塗装は、フタル酸樹脂エナメルを使用し、平均39μmの厚さの塗膜を形成した。錆止め油剤の塗布には、錆止め潤滑油を使用した。これらを適当に組み合わせ、テストピース−2とした。
【0014】
テストピース−2の化学分析結果は、以下の通りである。
【0015】
【表3】
Figure 0003863757
【0016】
実施例1と同様に、テストピース−2にティッシュペーパーを巻き、このティッシュペーパーに水を含浸させて、引張り試験用試料とした。比較例として、テストピース−2にティッシュペーパーを巻かない物および巻いた物を用いた。両者の引張り試験で得られた引張り強さ(N/mm2 )および伸び(%)を表4に示す。
【0017】
【表4】
Figure 0003863757
【0018】
表4の結果より、本発明の方法を施した物の引張り強さは、比較例と比較して、乾燥状態の比較例と同等で水濡れ状態の比較例より大きな引張り強さであり、また伸びは比較例と比較して乾燥状態の比較例と同等もしくはそれ以下ではあるが、水濡れ状態の比較例より大きく、脆化現象を抑制できることが判る。
【0019】
(実施例3)
テストピース−3の準備
焼きならし処理温度900℃×1〜2hでオーステナイト化処理後空冷し、JIS4号引張り試験片に焼きならし処理を施した。表面のフェライト層厚さは、オーステナイト化の保持時間でコントロールした。表面にフェライト層のないテストピースは、丸棒状態で焼きならし処理した後、JIS4号引張り試験片に加工して作製した。塗装はフタル酸樹脂エナメルを使用し、平均36μmの厚さの塗膜を形成した。錆止め油剤の塗布には、錆止め潤滑油を使用した。これらを適当に組み合わせ、テストピース−3とした。
【0020】
テストピース−3の化学分析結果は、以下の通りである。
【0021】
【表5】
Figure 0003863757
【0022】
実施例1と同様に、テストピース−3にティッシュペーパーを巻き、このティッシュペーパーに水を含浸させて、引張り試験用試料とした。比較例として、テストピース−3にティッシュペーパーを巻かない物および巻いた物を用いた。両者の引張り試験で得られた引張り強さ(N/mm2 )および伸び(%)を表6に示す。
【0023】
【表6】
Figure 0003863757
【0024】
表6の結果より、本発明の方法を施した物の引張り強さは、比較例と比較して、乾燥状態の比較例と同等で水濡れ状態の比較例より大きな引張り強さであり、また伸びは比較例と比較して乾燥状態の比較例と同等もしくはそれ以下であるが、水濡れ状態の比較例より大きく、脆化現象を抑制できることが判る。
【0025】
(実施例4)
テストピース−4の準備
高強度の鋳放しダクタイル鋳鉄から、JIS4号引張り試験片を作製した。塗装はフタル酸樹脂エナメルを使用し、平均40μmの厚さの塗膜を形成した。錆止め油剤の塗布には、錆止め潤滑油を使用した。これらをテストピース−4とした。
【0026】
テストピース−4の化学分析結果は、以下の通りである。
【0027】
【表7】
Figure 0003863757
【0028】
実施例1と同様に、テストピース−4にティッシュペーパーを巻き、このティッシュペーパーに水を含浸させて、引張り試験用試料とした。比較例として、テストピース−4にティッシュペーパーを巻かない物および巻いた物を用いた。両者の引張り試験で得られた引張り強さ(N/mm2 )および伸び(%)を表8に示す。
【0029】
【表8】
Figure 0003863757
【0030】
表8の結果より、本発明の方法を施した物の引張り強さは、比較例と比較して、乾燥状態の比較例と同等で水濡れ状態の比較例より大きな引張り強さであり、また伸びは比較例と比較して乾燥状態の比較例と同等もしくはそれ以下であるが、水濡れ状態の比較例より大きく、脆化現象を抑制できることが判る。
【0031】
【発明の効果】
本発明のダクタイル鋳鉄の脆化抑制方法によれば、上述のように構成されているため、高強度ダクタイル鋳鉄が水に濡れると引張り強度および伸びが著しく低下して脆化現象が生じるという不都合を解消し、水に濡れても引張り強度および伸びの低下を防ぎ、かつ脆化現象が生じない高強度ダクタイル鋳鉄を得ることができる。

Claims (2)

  1. オーステンパ処理または焼きならし処理を施したダクタイル鋳鉄の表面に、少なくとも20μm以上のフェライト層を形成し、その後、その上に塗装による塗膜を形成することを特徴とする、ダクタイル鋳鉄の脆化抑制方法。
  2. オーステンパ処理または焼きならし処理を施したダクタイル鋳鉄の表面に、少なくとも20μm以上のフェライト層を形成し、その後、その上に錆止め油または潤滑油を塗布することを特徴とする、ダクタイル鋳鉄の脆化抑制方法。
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