JP3863076B2 - トルクセンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トルク伝達軸に作用するトルクによる磁歪材の透磁率変化をコイルにより検出するトルクセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種のトルクセンサにおいては、トルクが伝達されるトルク伝達軸の外周面に磁歪材を設け、この磁歪材の外周囲に検出コイルを配設し、そして、トルク伝達軸をフレームにより軸受を介して支承した構成で、トルク伝達軸に作用するトルクにより、磁歪材に引張りや圧縮の応力が及ぶことによる逆磁歪効果で磁歪材の透磁率が変化することに合わせ、その透磁率変化を検出コイルにより検出するようになっている。
しかして、このものの場合、検出コイルは、端末にリード線が接続され、このリード線がフレーム外に導出されて、更に、そのフレーム外で他の電気部品との接続に供するリード線に接続されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のものの場合、検出コイルの接続が、フレーム内、フレーム外のいずれにおいてもリード線との接続であるため、厄介であった。
又、そのリード線をフレーム内からフレーム外に導出するのも厄介であり、組立て作業が一層面倒になっていた。
加えて、トルク伝達軸には、該トルク伝達軸とフレームとの間に介在された軸受の位置を規制する止め輪を装着するが、この止め輪を装着するための溝をトルク伝達軸に専用に形成していたため、コスト高となっていた。
【0004】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、従ってその目的は、検出コイルの接続が容易にできるトルクセンサを提供し、併せて、止め輪装着溝を有するトルク伝達軸を安価に形成できるトルクセンサを提供するにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のトルクセンサは、トルクが伝達されるトルク伝達軸と、このトルク伝達軸の外周面に設けられた磁歪材と、この磁歪材の外周囲に配設された検出コイルと、前記トルク伝達軸を支承するフレームとを具備するものにおいて、そのフレームの軸方向の外側に、前記トルク伝達軸が貫通する孔を有する中継用基板を設け、この中継用基板に、前記検出コイルを接続して前記フレーム外に導出された接続ピンを接続したことを特徴とする(請求項1の発明)。
このものによれば、検出コイルの接続は中継用基板に対して行えば良く、従来のリード線に接続したもののような面倒を要しない。
【0006】
この場合、検出コイルは、フランジ部を四角形に形成したボビンに巻装されて磁歪材の外周囲に配設され、そのボビンの角部に接続ピンを設けると良い(請求項1の発明)。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例につき、図面を参照して説明する。
まず、図2には、トルク伝達軸1を示しており、これはステンレス鋼など金属にて円柱状に形成したもので、トルク(回転動力)が伝達されるようになっている。このトルク伝達軸1の外周面には、図中左右の中間部の近接した二箇所に、凹凸部2,3を形成し、この凹凸部2,3の外周面、従って又、トルク伝達軸1の外周面に、それぞれ磁歪材4,5を設けている。
【0012】
なお、凹凸部2,3は、この場合、トルク伝達軸1の外周面に例えば転造により形成したものであり、そのパターンは、トルク伝達軸1に作用するトルクによる応力が磁歪材4,5に最も有効に及ぶように、いずれもトルクの印加方向(回転方向)に対して約45度角の傾きで形成しているが、図中左側の凹凸部2と右側の凹凸部3とでは、その傾きの方向を逆にしており、この結果、磁歪材4,5には互いに反対の応力が及ぶようになっている。
【0013】
又、磁歪材4,5は、ともに例えばニッケルと鉄との合金から成るもので、これを凹凸部2,3の外周面(トルク伝達軸1の外周面)にメッキにより設けている。但し、トルク伝達軸1の外周面には必ずしも凹凸部2,3を形成する必要はなく、磁歪材4,5もメッキ以外、例えば箔帯で接着するようなものであっても良い。
更に、トルク伝達軸1の磁歪材4,5を設けた部分の両端部分には、それぞれ溝6を環状に形成しており、このほか、トルク伝達軸1の全体の両端部には、それらをトルク伝達のためにそれぞれ非円筒形と成す平坦部7を形成している。
【0014】
磁歪材4,5の外周囲には、図1に示すように、検出コイル8,9を、共通のボビン10に巻装した状態で配設している。ボビン10は、プラスチックなど電気絶縁材から成るもので、中間部に検出コイル8,9間を仕切る仕切部10aを有し、両端部に仕切部10aよりも大きなフランジ部10b,10cを有している。
【0015】
フランジ部10b,10cは又、図3にフランジ部10bで代表して示すように、四角形に形成しており、このフランジ部10b,10cには、それぞれ、前記トルク伝達軸1が貫通する孔11の周囲に位置して円形の浅底な凹部12を形成し、この凹部12の周縁部に段部13を形成している。加えて、図1及び図4中、左側のフランジ部10bの図3に示す四つの角部には、それぞれ、孔14と、この孔14に連なって外方に突出する筒部15とを形成すると共に、それの近傍に位置して同じく外方に少しく突出する凸部16を複数、例えば2個ずつ形成している。なお、右側のフランジ部10cの四つの角部には、凸部16のみを形成している(図4参照)。
【0016】
しかして、上記ボビン10の孔14から筒部15には、それぞれ、導電材から成る接続ピン17を挿通して固着しており、この接続ピン17のボビン10内側部分に前記検出コイル8,9を接続している。なお、この接続ピン17に対する検出コイル8,9の接続は、接続ピン17のボビン10内側部分に検出コイル8,9の端末部分8a,9aを巻き付けた上で、半田18付けをすることにより行っている。
【0017】
そして、図1に示すように、ボビン10の両外側に位置したトルク伝達軸1の前記溝6には、それぞれ止め輪19を装着している。又、トルク伝達軸1の磁歪材4,5を設けた部分の両側には、軸受20,21をそれぞれ止め輪19に当接して位置規制されるまで装着して、これらを又、ボビン10のフランジ部10b,10cの段部13にそれぞれ嵌合して固着している。なお、このボビン10に対する軸受20,21の固着は、接着剤による接着を伴って行うようにするとなお良い。
【0018】
又、この場合、軸受20,21は、磁歪材4,5に対する検出コイル6,7の位置精度の出しやすいボールベアリングであるが、それよりも安価なブッシュメタル(焼結軸受)としても良い。
【0019】
軸受20,21からボビン10にはフレーム22を被装している。このフレーム22は、図1中左側の部分22aと右側の部分22cとから成るもので、その左側の部分22aには、前記ボビン10の筒部15とそれぞれ対応する部分に孔23を形成し、この孔23からその筒部15を貫通させて突出させており、それによって同時に前記接続ピン17を突出させている。なお、このとき、フレーム22の両部分22a,22bの内面をボビン10の前記凸部16に当接させて軸方向の位置決めをしている。又、フレーム22の両部分22a,22bの内面と軸受20,21との各間には、それぞれ与圧ばね24とワッシャ25とを介在させている。
【0020】
更に、フレーム22は軸受20,21の外周に嵌着しており、これによって、フレーム22がトルク伝達軸1を支承、中でも軸受20,21を介して回転可能に支承するようにしている。
加えて、フレーム22は磁性体で形成しており、これによって磁歪材4,5と検出コイル8,9に外部磁界の影響が及ばないようにする磁気シールド構成を採用している。
【0021】
そして、フレーム22の図1中左側の部分22aには、トルク伝達軸1が貫通した孔26の周縁部から外方に突出する突出部27をあらかじめ形成している。この突出部27は、この場合、バーリングによって形成しており、その関係上、円筒形を成している。
【0022】
これに対して、28は中継用基板を示しており、この中継用基板28には後述する各種電気部品29を実装しており、且つ、中央部には孔30を形成していて、この孔30を上記フレーム22の突出部27に嵌合して固定し、これによって中継用基板28をフレーム22の外側に設けている。又、この折り、中継用基板28の検出コイル接続部分には、前記フレーム22から突出した接続ピン17の先端部を貫通させて半田31付けをすることにより接続しており、もって、検出コイル8,9を接続ピン17を介して中継用基板28に接続している。
【0023】
ここで、図5は前記検出コイル8,9を含むトルクセンサ、特にはその検出回路32を示しており、検出コイル8,9と抵抗33,34とによってブリッジ回路35を形成し、このブリッジ回路35の入力端子に直流電源Eをスイッチング素子36を介して接続している。スイッチング素子36は、スイッチング素子制御部37によってスイッチングが制御されるようになっている。
【0024】
一方、ブリッジ回路35の出力端子間に増幅器、特には差動増幅器38を接続し、この差動増幅器38の出力端子を整流回路39を介して検出出力端子40に接続している。
なお、前記中継用基板28に実装した電気部品29は、上述の抵抗33,34と、スイッチング素子36、スイッチング素子制御部37、差動増幅器38、整流回路39、及び検出出力端子40を含んでおり、更に、図示しない外部リード線を接続するコネクタ等をも含んでいる。
【0025】
以上の構成で、ブリッジ回路35には、直流電源Eから、スイッチング素子制御部37によってスイッチングが制御されるスイッチング素子36を介して例えば10〔kHz〕程度の高周波の方形波電源が印加されるものであり、それがブリッジ回路35の検出コイル8と抵抗33とに分圧されると共に、検出コイル9と抵抗34とに分圧されて、ブリッジ回路35からは電圧V1、V2が出力される。
【0026】
そして、それらが差動増幅器38に入力されて差動出力されることにより、該差動増幅器38からは電圧V3が出力され、その出力電圧V3が整流回路39により整流されて、検出出力端子40からは電圧Voutが出力される。
【0027】
こうした状況で、トルク伝達軸1にトルクが伝達されると、トルク検出軸1にはそれに応じた応力が所定の傾き角度で発生する。この応力に対し、トルク検出軸1の外周面部の二箇所に傾きの方向を逆にして設けた磁歪材4,5のうち、一方の磁歪材4には例えば引張りの応力が及び、他方の磁歪材5にはそれとは反対の例えば圧縮の応力が及ぶ。このうち、引張りの応力が及んだ一方の磁歪材4では、それの透磁率が大きくなり、圧縮の応力が及んだ他方の磁歪材5では、それの透磁率が小さくなる。このため、検出コイル8,9のうち、引張りの応力が及んだ一方の磁歪材4に対応した検出コイル8では、インダクタンスが大きくなり、圧縮の応力が及んだ他方の磁歪材5に対応したコイル9では、インダクタンスが小さくなる。
【0028】
この結果、ブリッジ回路35からの出力電圧V1と出力電圧V2との差が大きくなり、差動増幅器38の出力電圧V3が大きくなることによって、検出出力端子40の出力電圧Voutも大きくなる。かくして、トルク伝達軸1に伝達されたトルクが検出される。
【0029】
このように、本構成のものでは、トルクが伝達されるトルク伝達軸1の外周面に磁歪材4,5を設け、この磁歪材4,5の外周囲に検出コイル8,9を配設し、そして、トルク伝達軸1をフレーム22により支承したものにおいて、そのフレーム22の外側に検出コイル8,9が接続される中継用基板28を設けている。これにより、検出コイル8,9の接続は中継用基板28に対して行えば良く、従来のリード線に接続したもののような面倒を要しないので、検出コイル8,9の接続が容易にでき、作業性の向上を達成できる。
【0030】
又、その中継用基板28については、フレーム22のトルク伝達軸1が貫通する孔26の周縁部から外方に突出部27を形成し、この突出部27に中継用基板28を嵌合して固定している。これにより、中継用基板28が堅固に固定されるので、該中継用基板28に接続した外部リード線の引張り外力や、その接続のためのコネクタに対する相手コネクタの差込みの外力等が検出コイル8,9の接続部である接続ピン17の接続部に及ぶことがなくなり、もしくは少なくなって、該接続ピン17の接続状態(検出コイル8,9の接続状態)を堅固に維持できる。
【0031】
更に、検出コイル8,9を巻装したボビン10については、それのフランジ部10bを四角形に形成し、その角部に接続ピン17を設け、この接続ピン17のボビン10内側部分に検出コイル8,9を接続している。これにより、検出コイル8,9はそれぞれ端末部分8a,9aを接続ピン17に接続すれば良く、従来のリード線に接続したもののような面倒を要しない上、フレーム22内からフレーム22外への導出も接続ピン17で行えば良く、従来のリード線を導出させたもののような面倒を要しないので、これによっても、検出コイル8,9の接続が容易にでき、作業性の向上を達成できる。
【0032】
加えて、トルク伝達軸1の磁歪材4,5が設けられた部分の両端部分には溝6を形成している。ここで、図6はトルク伝達軸1に溝6を形成していない場合における、トルク伝達軸1のトルク作用状態を発明者の実験結果で示しており、作用したトルクによる局部的な集中応力Pがトルク伝達軸1の磁歪材4,5が設けられた部分(特には図示例では、右側端部の平坦部7からトルクが作用している関係上、該右側端部の平坦部7に近い磁歪材5が設けられた部分)に及んでいる。
【0033】
これに対して、図7はトルク伝達軸1に溝6を形成した本構成のものにおける、トルク伝達軸1のトルク作用状態を同じく発明者の実験結果で示しており、作用したトルクによる局部的な集中応力Pは、溝6の存在のために、溝6まで発生するに留まり、トルク伝達軸1の磁歪材4,5が設けられた部分に及ぶことが阻止されている。
【0034】
このように、トルク伝達軸1に形成した溝6は、トルク伝達軸1に作用したトルクによる局部的な集中応力Pがトルク伝達軸1の磁歪材4,5が設けられた部分に及ぶことを阻止するもので、これにより、磁歪材4,5に集中応力Pのない均一な応力を及ぼさせ、安定した透磁率の変化を出させることができるので、検出精度を良くすることができる。
【0035】
そして又、本構成のものの場合、上述の溝6にはそれぞれ止め輪19を装着し、これによって軸受20,21の位置を規制するようにしている。従って、本構成のものの場合には、トルク伝達軸1に作用したトルクによる局部的な集中応力Pがトルク伝達軸1の磁歪材4,5が設けられた部分に及ぶことを阻止するための溝6を利用して、軸受20,21の位置を規制する止め輪19の装着ができるもので、その結果、トルク伝達軸1に止め輪19装着用の溝を別途形成する必要がなくなり、その分、トルク伝達軸1の加工が容易になるので、止め輪装着溝を有するトルク伝達軸1を安価に形成することができる。
【0036】
このほか、本構成のものにおいては、軸受20,21をボビン10に嵌合しており、これによって、トルク伝達軸1外周の磁歪材4,5に対する検出コイル8,9の位置決めが容易且つ確実にできるので、組立て容易にして検出精度を高く得ることができる。
又、上記軸受20,21とボビン10とを接着剤にて接着することにより、トルク伝達軸1外周の磁歪材4,5に対する検出コイル8,9の位置決めがより確実にできるので、検出精度も一層高く得ることができる。
【0037】
更に、ボビン10の前記フランジ部10bには、接続ピン17を挿通する筒部15を形成していて、この筒部15をフレーム22の孔23に挿通しており、これによって、接続ピン17とフレーム22との電気絶縁がボビン10の筒部15でできる。なお、この場合、中継用基板28を筒部15の先端に当接するように配置すれば、中継用基板28とフレーム22との電気絶縁までボビン10の筒部15でできることになる。
【0038】
又、中継用基板28には、増幅器、特には差動増幅器38を実装しており、これによって、外来ノイズに対するS/N比を良くすることができる。
なお、本発明は上記し且つ図面に示した実施例にのみ限定されるものではなく、特に磁歪材はトルク伝達軸の一箇所にのみ設けられていても良いなど、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のトルクセンサによれば、トルク伝達軸を支承するフレームの軸方向の外側に、前記トルク伝達軸が貫通する孔を有する中継用基板を設け、この中継用基板に、前記検出コイルを接続して前記フレーム外に導出された接続ピンを接続したことによって、検出コイルの接続が容易にできて、作業性の向上を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す全体の縦断側面図
【図2】トルク伝達軸単体の側面図
【図3】ボビンの正面図
【図4】検出コイルを巻装したボビンの縦断側面図
【図5】検出回路の結線図
【図6】発明者の実験結果を示す図その1
【図7】発明者の実験結果を示す図その2
【符号の説明】
1はトルク伝達軸、4,5は磁歪材、6は溝、8,9は検出コイル、10はボビン、10bはボビンのフランジ部、17は接続ピン、19は止め輪、20,21は軸受、22はフレーム、26は孔、27は突出部、28は中継用基板、30は孔を示す。
Claims (2)
- トルクが伝達されるトルク伝達軸と、このトルク伝達軸の外周面に設けられた磁歪材と、この磁歪材の外周囲に配設された検出コイルと、前記トルク伝達軸を支承するフレームとを具備し、
前記フレームの軸方向の外側に、前記トルク伝達軸が貫通する孔を有する中継用基板を設け、この中継用基板に、前記検出コイルを接続して前記フレーム外に導出された接続ピンを接続したことを特徴とするトルクセンサ。 - 検出コイルが、フランジ部を四角形に形成したボビンに巻装されて磁歪材の外周囲に配設され、そのボビンの角部に接続ピンを設けたことを特徴とする請求項1記載のトルクセンサ。
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