JP3862997B2 - 印刷物の測色方法および測色装置 - Google Patents

印刷物の測色方法および測色装置 Download PDF

Info

Publication number
JP3862997B2
JP3862997B2 JP2001338092A JP2001338092A JP3862997B2 JP 3862997 B2 JP3862997 B2 JP 3862997B2 JP 2001338092 A JP2001338092 A JP 2001338092A JP 2001338092 A JP2001338092 A JP 2001338092A JP 3862997 B2 JP3862997 B2 JP 3862997B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
spectral reflectance
paper
printed matter
ink
coefficient
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2001338092A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2002202191A (ja
JP2002202191A5 (ja
Inventor
徹 杉山
芳明 工藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Dai Nippon Printing Co Ltd
Original Assignee
Dai Nippon Printing Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Dai Nippon Printing Co Ltd filed Critical Dai Nippon Printing Co Ltd
Priority to JP2001338092A priority Critical patent/JP3862997B2/ja
Publication of JP2002202191A publication Critical patent/JP2002202191A/ja
Publication of JP2002202191A5 publication Critical patent/JP2002202191A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3862997B2 publication Critical patent/JP3862997B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Inking, Control Or Cleaning Of Printing Machines (AREA)
  • Spectrometry And Color Measurement (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷物の測色方法および測色装置に関し、特に、光源による測定結果の違いを補正することが可能な測色方法および測色装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
印刷業界では、個々の印刷物の特定の部分についての色を客観的な数値として把握する必要が生じることが少なくない。このため、従来から、印刷物に対する種々の測色方法が知られており、実際に種々の測色装置が利用されている。
【0003】
一般に、物体の色は、その物体のもつ分光反射率と、当該物体に照射される光の分光強度分布と、当該物体を観察する人間の視覚系の分光感度分布と、によって決まる。このため、物体について測定された分光反射率は、当該物体の色を示す重要な客観的なデータになる。しかしながら、物体の色は、当該物体に照射される光の分光強度分布、すなわち、光源の分光強度分布の影響も大きく受けるため、たとえば、赤い色成分を多く含んだ光源の下では、当該物体の色は赤っぽく観察されることになる。したがって、物体の分光反射率を測定する際には、通常、光源の分光強度分布を考慮した補正が行われる。
【0004】
具体的には、たとえば次のような方法により、測色対象となる試料についての分光反射率の測定が行われている。まず、分光反射率が全可視光領域にわたってほぼ1.0に近く、しかも鏡面反射しない平滑な表面をもった板状の物体である「完全白色板」を用意する。通常、硫酸バリウム等の白色粉末を平板の上に塗布して固めたものが、完全白色板として利用されている。次に、ある特定の光源を用いて試料に光を照射し、このとき試料から得られる反射光の分光強度分布を求める。続いて、全く同一の光源を用いて完全白色板に光を照射し、このとき完全白色板から得られる反射光の分光強度分布を求める。分光強度分布を測定する装置としては、分光放射輝度計などが一般に利用されている。最後に、試料について得られた分光強度分布を、完全白色板について得られた分光強度分布で割算することにより、光源に依存しない試料の分光反射率を求めることができる。
【0005】
こうして、試料についての分光反射率が得られたら、これに人間の視覚系の分光感度分布の要素を加味すれば、人間が観察時に感じる色を客観的に示すデータが得られる。ただ、分光反射率は、380nm〜780nmの可視波長域についての反射率を数値として示すデータであり、5nmおきに波長をとったとしても、81組の反射率を示す数値からなるデータになり、取り扱いが不便である。このため、色評価には、国際照明委員会(CIE)が定めたXYZ表色系の三刺激値(XYZ)を用いた色の表記を行うのが一般的である。この三刺激値(XYZ)は、試料の分光反射率と、人間の視覚系の分光感度分布と、観察時に用いた光源の分光強度分布と、を用いた公知の手法(たとえば、ISO/CIE 10527 CIE standard colorimetric observers, 1st Ed., 1991を参照)で求めることができ、一般に測色値と呼ばれている。代表的な光源の分光強度分布としては、たとえば、ISO/CIE 10526 CIE standard colorimetric illuminants, 1st Ed., 1991 に定められている標準の光D65(CIE standard illuminant D65)や補助標準の光D50(CIE illuminant D50)などの分光強度分布を用いることができる。また、人間の視覚系の分光感度分布は、ISO/CIE 10527 CIE standard colorimetric observers, 1st Ed., 1991に定められているXYZ表色系の等色関数を用いることができる。
【0006】
従来の一般的な印刷物の測色装置は、上述した測色方法の原理に基づき、印刷物の特定部分についての色を測定し、分光反射率や測色値などの客観的なデータを求める機能を有している。すなわち、一般的な測色装置は、測色対象となる印刷物に光を照射する光源、分光反射率を測定するための分光放射輝度計、種々の演算を行うための演算処理装置を有しており、通常、補正を行うための完全白色板が添付されている。オペレータが上述した測定手順で必要な操作を行えば、集められたデータに基づいて演算処理装置が必要な演算を実行し、分光反射率や測色値などの客観的なデータが自動的に求められる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述した測色方法によれば、完全白色板を用いた測定結果を利用した補正を行うことにより、光源に依存しない試料の分光反射率や測色値を求めることができるはずである。しかしながら、実際には、オフセット印刷などの面積変調方式によって階調表現を行った印刷物については、従来の測色方法による測定結果が必ずしも人間の認識した色に合致しないケースが少なくない。その原因は、印刷用紙に蛍光増白剤が含まれているためである。蛍光増白剤は、波長420nm付近に相当する青から紫の蛍光を発する無色の繊維質に染まる性質をもった化合物であり、繊維のもつ黄色の補色にあたる色を発光することにより、印刷用紙を増白する機能を有する。具体的には、スチルベンゼン系の染料などが蛍光増白剤として多くの印刷用紙に利用されている。通常の繊維のみからなる紙は黄色っぽく見えるのに対し、蛍光増白剤を添加した紙は、青から紫の色(黄色の補色)が補われるため、白色度が向上することになる。
【0008】
ところが、一般に蛍光発光の強度は、光源の波長に大きく依存し、蛍光増白剤の場合、紫外線成分の多い光を照射すると強い蛍光を発するが、紫外線成分の少ない光を照射すると蛍光も弱まる性質をもっている。したがって、蛍光増白剤が添加された紙は、蛍光灯や昼間の太陽光など、紫外線成分を多く含む光源下で観察すると青みがかって見え、タングステンランプなどの照明光源下で観察すると黄色がかって見えることになる。オフセット印刷などの面積変調方式によって階調表現を行った印刷物では、インキは微小な付着単位(オフセット印刷の場合は網点)の集まりとして印刷される。そして、当該インキによる階調表現は、単位面積当たりのインキ付着部分の面積、すなわち面積率を制御することによってなされる。これは、インクジェットプリンタによるカラー印刷物の場合も同様である。このため、中間調印刷物では、インキが付着していない紙の地肌部分が色を左右する重要な要素になる。たとえば、オフセット印刷の網点面積率がマゼンタ50%という中間調部分は、ピンク色の部分として観察されるが、実際には、マゼンタのインキ付着部分と白い紙の地肌部分とが、半々の面積率で混合して観察されているにすぎない。このため、紙に蛍光増白剤が含まれていると、光源の種類によって、実際に観察される色が大きく左右されることになる。
【0009】
一般的な測色装置では、装置自体の小型化を図るために、タングステンランプを光源として用いることが多い。したがって、このような測色装置での測定環境では、紙に含まれている蛍光増白剤からの蛍光発光は非常に弱いことになる。別言すれば、タングステンランプを光源として用いている測色装置によって得られた分光反射率や測色値は、紙に含まれている蛍光増白剤からの蛍光発光が弱い状態での測定結果ということになる。ところが、この印刷物を蛍光灯下あるいは昼間の太陽光下で観察すると、蛍光増白剤から強い蛍光発光が生じることになるので、弱い蛍光発光という条件下で得られた測定結果が示す色とは異なる色として観察されることになる。このような原因により、蛍光増白剤が含まれている用紙を用いた印刷物の場合、従来の測色方法による測定結果が必ずしも人間の認識した色に合致しないという弊害が生じることになる。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、測色時に用いた光源とは異なる光源下で印刷物を観察した場合にも、正しい色の評価基準を提示することが可能な印刷物の測色方法および測色装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
(1) 本発明の第1の態様は、蛍光増白剤を含む用紙に印刷された印刷物について、所定の照明環境下での分光反射率を求めるための測色方法において、
第1の照明環境下における用紙の分光反射率Pt(λ)と、第2の照明環境下における用紙の分光反射率Pu(λ)と、を測定する第1のステップと、
分光反射率Pu(λ)から分光反射率Pt(λ)を減じた差を、用紙に関しての蛍光増白剤に起因する差成分Fp(λ)として演算する第2のステップと、
印刷物における測色対象領域について、第1の照明環境下における分光反射率Rt(λ)を測定する第3のステップと、
分光反射率Rt(λ)に対して、差成分Fp(λ)に基づく補正を行うことにより、測色対象領域についての第2の照明環境下における推定分光反射率を演算する第4のステップと、
を行い、
第3のステップで、全面積に対するインキ付着領域の面積比がSであるような測色対象領域について、第1の照明環境下における分光反射率 Rt (λ,S)を測定し、
第4のステップで、
Rtu (λ,S)= Rt (λ,S) + Fp (λ)・(1−S) 2
なる演算を行うことにより、測色対象領域についての第2の照明環境下における推定分光反射率 Rtu (λ,S)を求めるようにしたものである。
【0012】
(2) 本発明の第2の態様は、蛍光増白剤を含む用紙に印刷された印刷物について、所定の照明環境下での分光反射率を求めるための測色方法において、
第1の照明環境下における用紙の分光反射率 Pt (λ)と、第2の照明環境下における用紙の分光反射率 Pu (λ)と、を測定する第1のステップと、
分光反射率 Pu (λ)から分光反射率 Pt (λ)を減じた差を、用紙に関しての蛍光増白剤に起因する差成分 Fp (λ)として演算する第2のステップと、
印刷物における測色対象領域について、第1の照明環境下における分光反射率 Rt (λ)を測定する第3のステップと、
分光反射率 Rt (λ)に対して、差成分 Fp (λ)に基づく補正を行うことにより、測色対象領域についての第2の照明環境下における推定分光反射率を演算する第4のステップと、
を行い、
第3のステップで、全面積に対するインキ付着領域の面積比がSであるような測色対象領域について、第1の照明環境下における分光反射率 Rt (λ,S)を測定し、
第4のステップで、外部から同一条件で照明した場合に、単位面積あたりの「インキ付着部に供給される励起エネルギーの総量」の「インキ非付着部に供給される励起エネルギーの総量」に対する割合を示す励起係数CEと、用紙内部で同一条件で蛍光放出が行われている場合に、単位面積あたりの「インキ付着部から放出されて観察される発光エネルギーの総量」の「インキ非付着部から放出されて観察される発光エネルギーの総量」に対する割合を示す発光係数CLとを定義し、測色対象領域についての励起係数CEと発光係数CLとを測定し、
RRtu (λ,S)= Rt (λ,S)
+ Fp (λ)・(1−S(1−CE))・(1−S(1−CL))
なる演算を行うことにより、測色対象領域についての第2の照明環境下における推定分光反射率 RRtu (λ,S)を求めるようにしたものである。
【0013】
(3) 本発明の第3の態様は、蛍光増白剤を含む用紙に印刷された印刷物について、所定の照明環境下での分光反射率を求めるための測色方法において、
第1の照明環境下における用紙の分光反射率 Pt (λ)と、第2の照明環境下における用紙の分光反射率 Pu (λ)と、を測定する第1のステップと、
分光反射率 Pu (λ)から分光反射率 Pt (λ)を減じた差を、用紙に関しての蛍光増白剤に起因する差成分 Fp (λ)として演算する第2のステップと、
印刷物における測色対象領域について、第1の照明環境下における分光反射率 Rt (λ)を測定する第3のステップと、
分光反射率 Rt (λ)に対して、差成分 Fp (λ)に基づく補正を行うことにより、測色対象領域についての第2の照明環境下における推定分光反射率を演算する第4のステップと、
を行い、
第3のステップで、全面積に対して、第1のインキのみが付着した第1の領域、第2のインキのみが付着した第2の領域、第1のインキと第2のインキとの両方が付着した第3の領域、いずれのインキも付着していない第4の領域、の各面積比が、それぞれS 1 、S 2 、S 12 、S p であるような測色対象領域について、第1の照明環境下における分光反射率 Rt (λ,S 1 ,S 2 ,S 12 )を測定し、
第4のステップで、外部から同一条件で照明した場合に、単位面積あたりの「インキ付着部に供給される励起エネルギーの総量」の「インキ非付着部に供給される励起エネルギーの総量」に対する割合を示す励起係数CEと、用紙内部で同一条件で蛍光放出が行われている場合に、単位面積あたりの「インキ付着部から放出されて観察される発光エネルギーの総量」の「インキ非付着部から放出されて観察される発光エネルギーの総量」に対する割合を示す発光係数CLとを定義し、第1の領域、第2の領域、第3の領域のそれぞれについての励起係数CE 1 、CE 2 、CE 12 と、発光係数CL 1 、CL 2 、CL 12 とを測定し、
RRtu (λ,S 1 ,S 2 ,S 12 )= Rt (λ,S 1 ,S 2 ,S 12
+ Fp (λ)・(S p +S 1 ・CE 1 +S 2 ・CE 2 +S 12 ・CE 12
・(S p +S 1 ・CL 1 +S 2 ・CL 2 +S 12 ・CL 12
なる演算を行うことにより、測色対象領域についての第2の照明環境下における推定分光反射率 RRtu (λ,S 1 ,S 2 ,S 12 )を求めるようにしたものである。
【0014】
(4) 本発明の第4の態様は、上述の第2または第3の態様に係る印刷物の測色方法において、
インキ付着部の分光透過率R(λ)、インキ非付着部の分光透過率P(λ)、用紙の励起スペクトルPE(λ)、用紙の発光スペクトルPL(λ)をそれぞれ測定し、
CE= R(λ)・PE(λ)dλ
/ P(λ)・PE(λ)dλ
CL= R(λ)・PL(λ)dλ
/ P(λ)・PL(λ)dλ
なる式を用いて、当該インキ付着部の励起係数CEと発光係数CLとを求めるようにしたものである。
【0015】
(5) 本発明の第5の態様は、蛍光増白剤を含む用紙に印刷された印刷物について、所定の照明環境下での分光反射率を求めるための測色方法において、
第1の照明環境下における用紙の分光反射率 Pt (λ)と、第2の照明環境下における用紙の分光反射率 Pu (λ)と、を測定する第1のステップと、
分光反射率 Pu (λ)から分光反射率 Pt (λ)を減じた差を、用紙に関しての蛍光増白剤に起因する差成分 Fp (λ)として演算する第2のステップと、
印刷物における測色対象領域について、第1の照明環境下における分光反射率 Rt (λ)を測定する第3のステップと、
分光反射率 Rt (λ)に対して、差成分 Fp (λ)に基づく補正を行うことにより、測色対象領域についての第2の照明環境下における推定分光反射率を演算する第4のステップと、
を行い、
第3のステップで、複数のインキを用いた印刷が行われており、単色のインキのみが付着した領域および複数のインキが重複して付着した領域が混合することにより、全部でnとおりのインキ付着領域が形成されており、第i番目の領域の全面積に対する面積比がS i であるような測色対象領域について、第1の照明環境下における分光反射率を測定し、
第4のステップで、外部から同一条件で照明した場合に、単位面積あたりの「インキ付着部に供給される励起エネルギーの総量」の「インキ非付着部に供給される励起エネルギーの総量」に対する割合を示す励起係数CEと、用紙内部で同一条件で蛍光放出が行われている場合に、単位面積あたりの「インキ付着部から放出されて観察される発光エネルギーの総量」の「インキ非付着部から放出されて観察される発光エネルギーの総量」に対する割合を示す発光係数CLとを定義し、nとおりの各領域のそれぞれについての励起係数CEと発光係数CLとを求め、
第4のステップでの演算の際に、測色対象領域内のnとおりのインキ付着領域に関しては、それぞれについて求めた励起係数CEと発光係数CLとに応じて差成分 Fp (λ)に基づく補正を行うようにし、
励起係数CEと発光係数CLとを求める際に、インキ付着部の分光透過率R(λ)、インキ非付着部の分光透過率P(λ)、用紙の励起スペクトルPE(λ)、用紙の発光スペクトルPL(λ)をそれぞれ測定し、
CE= R(λ)・PE(λ)dλ
/ P(λ)・PE(λ)dλ
CL= R(λ)・PL(λ)dλ
/ P(λ)・PL(λ)dλ
なる式を用いて、当該インキ付着部の励起係数CEと発光係数CLとを求めるようにしたものである。
【0016】
(6) 本発明の第6の態様は、上述の第1〜第5の態様に係る印刷物の測色方法において、
第1のステップおよび第3のステップでの測定の際に、完全白色板を用いた分光反射率の測定結果を利用して、用いた照明光の分光強度分布の影響を除外する補正を行うようにしたものである。
【0017】
(7) 本発明の第7の態様は、蛍光増白剤を含む用紙に印刷された印刷物について、所定の照明環境下での XYZ 三刺激値を求めるための測色方法において、
第1の照明環境下における用紙の XYZ 三刺激値 Pt (X), Pt (Y), Pt (Z)と、第2の照明環境下における用紙の XYZ 三刺激値 Pu (X), Pu (Y), Pu (Z)と、を測定する第1のステップと、
XYZ 三刺激値 Pu (X), Pu (Y), Pu (Z)から、それぞれ XYZ 三刺激値 Pt (X), Pt (Y), Pt (Z)を減じた差を、用紙に関しての蛍光増白剤に起因する差成分 Fp (X), Fp (Y), Fp (Z)として演算する第2のステップと、
印刷物における測色対象領域について、第1の照明環境下における XYZ 三刺激値 Rt (X), Rt (Y), Rt (Z)を測定する第3のステップと、
XYZ 三刺激値 Rt (X), Rt (Y), Rt (Z)に対して、それぞれ差成分 Fp (X), Fp (Y), Fp (Z)に基づく補正を行うことにより、測色対象領域についての第2の照明環境下における推定 XYZ 三刺激値を演算する第4のステップと、
を行い、
第3のステップで、全面積に対するインキ付着領域の面積比がSであるような測色対象領域について、第1の照明環境下における XYZ 三刺激値 Rt (X,S), Rt (Y,S), Rt (Z,S)を測定し、
第4のステップで、
Rtu (X,S)= Rt (X,S)+ Fp (X)・(1−S) 2
Rtu (Y,S)= Rt (Y,S)+ Fp (Y)・(1−S) 2
Rtu (Z,S)= Rt (Z,S)+ Fp (Z)・(1−S) 2
なる演算を行うことにより、測色対象領域についての第2の照明環境下における推定 XYZ 三刺激値 Rtu (X,S), Rtu (Y,S), Rtu (Z,S)を求めるようにしたものである。
【0018】
(8) 本発明の第8の態様は、蛍光増白剤を含む用紙に印刷された印刷物について、所定の照明環境下での XYZ 三刺激値を求めるための測色方法において、
第1の照明環境下における用紙の XYZ 三刺激値 Pt (X), Pt (Y), Pt (Z)と、第2の照明環境下における用紙の XYZ 三刺激値 Pu (X), Pu (Y), Pu (Z)と、を測定する第1のステップと、
XYZ 三刺激値 Pu (X), Pu (Y), Pu (Z)から、それぞれ XYZ 三刺激値 Pt (X), Pt (Y), Pt (Z)を減じた差を、用紙に関しての蛍光増白剤に起因する差成分 Fp (X), Fp (Y), Fp (Z)として演算する第2のステップと、
印刷物における測色対象領域について、第1の照明環境下における XYZ 三刺激値 Rt (X), Rt (Y), Rt (Z)を測定する第3のステップと、
XYZ 三刺激値 Rt (X), Rt (Y), Rt (Z)に対して、それぞれ差成分 Fp (X), Fp (Y), Fp (Z)に基づく補正を行うことにより、測色対象領域についての第2の照明環境下における推定 XYZ 三刺激値を演算する第4のステップと、
を行い、
第3のステップで、全面積に対するインキ付着領域の面積比がSであるような測色対象領域について、第1の照明環境下における XYZ 三刺激値 Rt (X,S), Rt (Y,S), Rt (Z,S)を測定し、
第4のステップで、外部から同一条件で照明した場合に、単位面積あたりの「インキ付着部に供給される励起エネルギーの総量」の「インキ非付着部に供給される励起エネルギーの総量」に対する割合を示す励起係数CEと、用紙内部で同一条件で蛍光放出が行われている場合に、単位面積あたりの「インキ付着部から放出されて観察される発光エネルギーの総量」の「インキ非付着部から放出されて観察される発光エネルギーの総量」に対する割合を示す発光係数CLとを定義し、測色対象領域についての励起係数CEと発光係数CLとを測定し、
RRtu (X,S)= Rt (X,S)+ Fp (X)・
(1−S(1−CE))・(1−S(1−CL))
RRtu (Y,S)= Rt (Y,S)+ Fp (Y)・
(1−S(1−CE))・(1−S(1−CL))
RRtu (Z,S)= Rt (Z,S)+ Fp (Z)・
(1−S(1−CE))・(1−S(1−CL))
なる演算を行うことにより、測色対象領域についての第2の照明環境下における推定 XYZ 三刺激値 RRtu (X,S), RRtu (Y,S), RRtu (Z,S)を求めるようにしたものである。
【0019】
(9) 本発明の第9の態様は、上述の第8の態様に係る印刷物の測色方法において、
インキ付着部の分光透過率R(λ)、インキ非付着部の分光透過率P(λ)、用紙の励起スペクトルPE(λ)、用紙の発光スペクトルPL(λ)をそれぞれ測定し、
CE= R(λ)・PE(λ)dλ
/ P(λ)・PE(λ)dλ
CL= R(λ)・PL(λ)dλ
/ P(λ)・PL(λ)dλ
なる式を用いて、当該インキ付着部の励起係数CEと発光係数CLとを求めるようにしたものである。
【0020】
(10) 本発明の第10の態様は、蛍光増白剤を含む用紙に印刷された印刷物について、所定の照明環境下での XYZ 三刺激値を求めるための測色方法において、
第1の照明環境下における用紙の XYZ 三刺激値 Pt (X), Pt (Y), Pt (Z)と、第2の照明環境下における用紙の XYZ 三刺激値 Pu (X), Pu (Y), Pu (Z)と、を測定する第1のステップと、
XYZ 三刺激値 Pu (X), Pu (Y), Pu (Z)から、それぞれ XYZ 三刺激値 Pt (X), Pt (Y), Pt (Z)を減じた差を、用紙に関しての蛍光増白剤に起因する差成分 Fp (X), Fp (Y), Fp (Z)として演算する第2のステップと、
印刷物における測色対象領域について、第1の照明環境下における XYZ 三刺激値 Rt (X), Rt (Y), Rt (Z)を測定する第3のステップと、
XYZ 三刺激値 Rt (X), Rt (Y), Rt (Z)に対して、それぞれ差成分 Fp (X), Fp (Y), Fp (Z)に基づく補正を行うことにより、測色対象領域についての第2の照明環境下における推定 XYZ 三刺激値を演算する第4のステップと、
を行い、
第3のステップで、複数のインキを用いた印刷が行われており、単色のインキのみが付着した領域および複数のインキが重複して付着した領域が混合することにより、全部でnとおりのインキ付着領域が形成されており、第i番目の領域の全面積に対する面積比がS i であるような測色対象領域について、第1の照明環境下における XYZ 三刺激値を測定し、
第4のステップで、外部から同一条件で照明した場合に、単位面積あたりの「インキ付着部に供給される励起エネルギーの総量」の「インキ非付着部に供給される励起エネルギーの総量」に対する割合を示す励起係数CEと、用紙内部で同一条件で蛍光放出が行われている場合に、単位面積あたりの「インキ付着部から放出されて観察される発光エネルギーの総量」の「インキ非付着部から放出されて観察される発光エネルギーの総量」に対する割合を示す発光係数CLとを定義し、nとおりの各領域のそれぞれについての励起係数CEと発光係数CLとを求め、
第4のステップでの演算の際に、測色対象領域内のnとおりのインキ付着領域に関しては、それぞれについて求めた励起係数CEと発光係数CLとに応じて差成分 Fp (X), Fp (Y), Fp (Z)に基づく補正を行うようにし、
励起係数CEと発光係数CLとを求める際に、インキ付着部の分光透過率R(λ)、インキ非付着部の分光透過率P(λ)、用紙の励起スペクトルPE(λ)、用紙の発光スペクトルPL(λ)をそれぞれ測定し、
CE= R(λ)・PE(λ)dλ
/ P(λ)・PE(λ)dλ
CL= R(λ)・PL(λ)dλ
/ P(λ)・PL(λ)dλ
なる式を用いて、当該インキ付着部の励起係数CEと発光係数CLとを求めるようにしたものである。
【0021】
(11) 本発明の第11の態様は、上述の第7〜第10の態様に係る印刷物の測色方法において、
第1のステップおよび第3のステップにおいて、測定により得られた分光反射率を用いた演算によりXYZ三刺激値を求めるようにしたものである。
【0022】
(12) 本発明の第12の態様は、蛍光増白剤を含む用紙に印刷された印刷物について、所定の照明環境下での分光反射率を求めるための測色装置において、
第1の照明環境下で測定対象物の分光反射率を測定する分光反射率測定装置と、
第1の照明環境下における特定の用紙の分光反射率 Pt (λ)を、第2の照明環境下における特定の用紙の分光反射率 Pu (λ)から減じて得られる差成分 Fp (λ)を記憶する記憶装置と、
分光反射率測定装置によって測定された、特定の用紙を用いた印刷物上における測色対象領域についての分光反射率 Rt (λ)に対して、差成分 Fp (λ)に基づく補正を行うことにより、測色対象領域についての第2の照明環境下における推定分光反射率を演算する演算処理装置と、
を設け、
演算処理装置が、測定対象領域内の全面積に対するインキ付着領域の面積比Sを入力する機能を有し、分光反射率測定装置によって測定された測色対象領域についての分光反射率 Rt (λ,S)に対して、
Rtu (λ,S)= Rt (λ,S) + Fp (λ)・(1−S) 2
なる演算を行うことにより、測色対象領域についての第2の照明環境下における推定分光反射率 Rtu (λ,S)を求めるようにしたものである。
【0023】
(13) 本発明の第13の態様は、上述の第12の態様に係る印刷物の測色装置において、
測定対象領域内の全面積に対するインキ付着領域の面積比Sを測定するための面積率測定装置を更に設けるようにしたものである。
【0024】
(14) 本発明の第14の態様は、蛍光増白剤を含む用紙に印刷された印刷物について、所定の照明環境下での分光反射率を求めるための測色装置において、
第1の照明環境下で測定対象物の分光反射率を測定する分光反射率測定装置と、
第1の照明環境下における特定の用紙の分光反射率 Pt (λ)を、第2の照明環境下における特定の用紙の分光反射率 Pu (λ)から減じて得られる差成分 Fp (λ)を記憶する記憶装置と、
分光反射率測定装置によって測定された、特定の用紙を用いた印刷物上における測色対象領域についての分光反射率 Rt (λ)に対して、差成分 Fp (λ)に基づく補正を行うことにより、測色対象領域についての第2の照明環境下における推定分光反射率を演算する演算処理装置と、
を設け、
演算処理装置が、測定対象領域に関して、全面積に対するインキ付着領域の面積比Sと、外部から同一条件で照明した場合に、単位面積あたりの「インキ付着部に供給される励起エネルギーの総量」の「インキ非付着部に供給される励起エネルギーの総量」に対する割合を示す励起係数CEと、用紙内部で同一条件で蛍光放出が行われている場合に、単位面積あたりの「インキ付着部から放出されて観察される発光エネルギーの総量」の「インキ非付着部から放出されて観察される発光エネルギーの総量」に対する割合を示す発光係数CLと、を入力する機能を有し、分光反射率測定装置によって測定された測色対象領域についての分光反射率 Rt (λ,S)に対して、
RRtu (λ,S)= Rt (λ,S)
+ Fp (λ)・(1−S(1−CE))・(1−S(1−CL))
なる演算を行うことにより、測色対象領域についての第2の照明環境下における推定分光反射率 RRtu (λ,S)を求めるようにしたものである。
【0025】
(15) 本発明の第15の態様は、上述の第14の態様に係る印刷物の測色装置において、
測定対象領域内の全面積に対するインキ付着領域の面積比Sを測定するための面積率測定装置と、
測定対象領域内のインキ付着部の分光透過率R(λ)およびインキ非付着部の分光透過率P(λ)を測定する透過率測定装置と、
透過率測定装置によって測定された分光透過率R(λ)および分光透過率P(λ)と、用紙の励起スペクトルPE(λ)および用紙の発光スペクトルPL(λ)とを用いて、
CE= R(λ)・PE(λ)dλ
/ P(λ)・PE(λ)dλ
CL= R(λ)・PL(λ)dλ
/ P(λ)・PL(λ)dλ
なる演算により当該インキ付着部の励起係数CEと発光係数CLとを求める係数演算装置と、
を更に設け、演算処理装置が係数演算装置により求められた励起係数CEと発光係数CLとを利用して演算を実行するようにしたものである。
【0026】
(16) 本発明の第16の態様は、上述の第15の態様に係る印刷物の測色装置において、
用紙の励起スペクトルPE(λ)および用紙の発光スペクトルPL(λ)を測定するための分光蛍光光度計を更に備え、係数演算装置が、分光蛍光光度計によって測定された用紙の励起スペクトルPE(λ)および用紙の発光スペクトルPL(λ)を用いて励起係数CEおよび発光係数CLを求める演算を行うようにしたものである。
【0027】
(17) 本発明の第17の態様は、上述の第12〜第16の態様に係る印刷物の測色装置において、
演算処理装置が、所定の分光反射率に基づいて、 XYZ 三刺激値を演算する機能を有し、測色対象領域についての第2の照明環境下における推定 XYZ 三刺激値を演算するようにしたものである。
【0028】
(18) 本発明の第18の態様は、上述の第17の態様に係る印刷物の測色装置において、
記憶装置が、差成分 Fp (λ)を XYZ 三刺激値の形式で記憶しており、
演算処理装置が、 XYZ 三刺激値の形式で記憶された差成分を用いた演算を行うようにしたものである。
【0029】
(19) 本発明の第19の態様は、上述の第12〜第18の態様に係る印刷物の測色装置における演算処理装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムを用意したものである。
【0030】
(20) 本発明の第20の態様は、上述の第12〜第18の態様に係る印刷物の測色装置における演算処理装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムを用意し、このプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録するようにしたものである。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
<<< §1.本発明に係る測色方法による分光反射率の測定手順 >>>
オフセット印刷などの面積変調方式によって階調表現を行った印刷物について、従来の測色方法による測定を行うと、観察時の照明環境によっては正しい色の評価基準を提示できない理由は、既に述べたように、印刷用紙に蛍光増白剤が含まれているためである。
【0038】
図1に、代表的な蛍光増白剤の励起スペクトルと発光スペクトルを示す。励起スペクトルは、この蛍光増白剤が吸収する光のスペクトルを示しており、発光スペクトルは、この蛍光増白剤から放射される蛍光のスペクトルを示している。ここに示す蛍光増白剤の場合、波長360nm付近の光を最もよく吸収し、この吸収したエネルギーに基づいて波長440nm付近の光を蛍光として最も強く放射する性質をもっている。したがって、蛍光増白剤を含む印刷用紙を、前掲のISO/CIE 10526に定められている標準の光D65(CIE standard illuminant D65)、蛍光灯の光、昼間の太陽光、といった紫外線成分の強い光による照明下で観察すると、蛍光増白剤が紫外線成分を吸収して(図1の励起スペクトル)、紫から青にかけての蛍光を強く発する(図1の発光スペクトル)ため、紙は青みがかって見える。ところが、同じ紙を、タングステンランプのような紫外線成分の弱い光による照明下で観察すると、蛍光増白剤からの蛍光発光はほとんどなくなり、紙は黄色がかって見えることになる。
【0039】
前述したように、一般的な測色装置では、タングステンランプが光源として用いられている。このため、この測色装置で測定した分光反射率は、試料をタングステンランプで照明した場合には、正しい色の評価基準を提示するものになるが、蛍光灯で照明した場合には、正しい色の評価基準にはならない。本発明の基本的な特徴は、たとえば、タングステンランプなどの第1の光源を用いて測定した分光反射率に補正を施すことにより、たとえば、紫外線成分を含んだ光を発する第2の光源(蛍光灯や昼間の太陽光)を用いて観察したときの分光反射率を推定する処理を行う点にある。この方法を用いれば、印刷物について特定の光源を用いた分光反射率さえ測定できれば、当該印刷物を任意の光源による照明下で観察したときの分光反射率を推定することが可能になる。
【0040】
続いて、図2の流れ図に基づいて、本発明に係る印刷物の測色方法による分光反射率の基本的な測定手順を説明する。なお、以下の説明では、便宜上、タングステンランプからなる光源を第1の光源Tと呼び、紫外線を含んだ光源を第2の光源Uと呼び、第1の光源Tを用いて測定した分光反射率に基づいて、第2の光源Uによる照明下で観察したときの分光反射率を推定する例を述べることにする。もちろん、本発明の利用は特定の光源を用いた場合に限定されるものではなく、本発明は、任意の光源に対して適用可能である。
【0041】
図2に示すように、本発明に係る印刷物の測色方法の基本手順は、用紙の分光反射率測定(ステップS1)、蛍光増白剤に起因する差成分算出(ステップS2)、第1の光源Tの照明下で試料の分光反射率測定(ステップS3)、第2の光源Uの照明下での分光反射率推定(ステップS4)、という4つのステップから構成される。以下、これらの各ステップの内容について順に説明する。
【0042】
まず、ステップS1において、用紙の分光反射率が測定される。このステップS1での測定対象は、印刷が行われる前の白紙状態の用紙の分光反射率である。もちろん、印刷物の余白領域などに未印刷部分があれば、そのような余白領域を測定対象としてもかまわない。また、このステップでは、同一の用紙に対して、第1の光源Tによる照明下での測定と第2の光源Uによる照明下での測定との両方を行っておく必要がある。具体的には、まず、第1の光源Tの照明下における用紙からの反射光の分光強度分布Pt-Raw(λ)を測定し、同じ照明下における完全白色板からの反射光の分光強度分布Wt-Raw(λ)を測定する。いずれも波長λの光の強度値を示しており、所定の波長域にわたったスペクトルを示すものになる。なお、本明細書において、(λ)なる表記を含む変数は、いずれも所定の波長域にわたって波長λを変化させたときに得られるスペクトルを意味している。
【0043】
同様にして、第2の光源Uの照明下における用紙からの反射光の分光強度分布Pu-Raw(λ)を測定し、同じ照明下における完全白色板からの反射光の分光強度分布Wu-Raw(λ)を測定する。これらの測定は、一般的な分光放射輝度計を用いて行うことができる。これらの測定結果を利用して、下記に示す式(1) の演算を行うことにより、第1の光源Tによる照明下での用紙の分光反射率Pt(λ)を求めることができ、式(2) の演算を行うことにより、第2の光源Uによる照明下での用紙の分光反射率Pu(λ)を求めることができる。
Pt(λ)=Pt-Raw(λ)/Wt-Raw(λ) (1)
Pu(λ)=Pu-Raw(λ)/Wu-Raw(λ) (2)
いずれの式においても、完全白色板からの反射光の分光強度分布による割算を行うことにより、光源の分光強度分布の影響を受けない用紙固有の分光反射率Pt(λ)およびPu(λ)が求められている。結局、これらの分光反射率は、波長λの光をどの程度反射させるかを示すパラメータになる。ただし、ここで求められた分光反射率Pt(λ),Pu(λ)には、前述したように、用紙に含まれている蛍光増白剤が発する蛍光の影響が含まれているため、Pt(λ)とPu(λ)とは等しくならない。完全白色板を用いた補正は、蛍光成分の影響までは除去することができないのである。
【0044】
続くステップS2では、用紙の蛍光増白剤に起因する差成分Fp(λ)を、式(3) に基づいて算出する演算が行われる。
Fp(λ)=Pu(λ)−Pt(λ) (3)
上述したように、式(1) で求まる用紙の分光反射率Pt(λ)と、式(2) で求まる用紙の分光反射率とが等しくならないのは、用紙に蛍光増白剤が含まれているためであり、第1の光源Tからの光を用紙に照射したときに発せられる蛍光成分と、第2の光源Uからの光を用紙に照射したときに発せられる蛍光成分とに差が生じるためである。したがって、式(3) によって両者の差として求められる蛍光増白剤に起因する差成分Fp(λ)なるスペクトルは、両光源に関しての蛍光増白剤に起因する差を示すパラメータということになる。
【0045】
次に、ステップS3において、第1の光源Tの照明下で試料の分光反射率測定が行われる。ここでは、ステップS1において測定対象とした用紙と同一の用紙上に、オフセット印刷により印刷を行った印刷物を試料とした例を述べる。具体的には、印刷物のうち、網点面積率S(S=0〜1)の印刷領域を試料として用い、分光反射率を求める場合の手順を示す。
【0046】
このステップS3で行われる試料の分光反射率測定の手順は、ステップS1で行われた用紙の分光反射率測定の手順と同様であり、用紙の代わりに試料を用いて同等の作業を行えばよい。すなわち、測色対象となる印刷物の特定の領域(網点面積率Sの印刷領域)に、第1の光源Tからの光を当て、当該領域から得られる反射光の分光強度分布Rt-Raw(λ)を、分光放射輝度計を用いて測定し、続いて、同じ照明下における完全白色板からの反射光の分光強度分布Wt-Raw(λ)を測定する。なお、完全白色板からの反射光の分光強度分布Wt-Raw(λ)は、ステップS1において測定したものをそのまま流用してもかまわない。ただ、第1の光源Tの安定性が十分でなく、光のスペクトルが時間的に変動を生じるような場合には、再度測定するのが好ましい。これらの測定結果から、下記に示す式(4) の演算を行うことにより、第1の光源Tによる照明下での試料(網点面積率Sの印刷領域)の分光反射率Rt(λ,S)を求めることができる。
Rt(λ,S)=Rt-Raw(λ)/Wt-Raw(λ) (4)
結局、このステップS3における測定は、従来の一般的な測色装置を用いた分光反射率の測定と何ら変わることはなく、得られた分光反射率Rt(λ,S)は、タングステンランプで照明したときの試料の分光反射率ということになる。したがって、当該試料を蛍光灯照明下で観察した場合、分光反射率Rt(λ,S)は、正しい色の評価基準としては利用できない。
【0047】
そこで、ステップS4において、第2の光源Uの照明下での分光反射率Ru(λ,S)を推定するための処理が行われる。要するに、このステップS4の処理は、ステップS3で実測した第1の光源Tの照明下での試料の分光反射率Rt(λ,S)に基づいて、第2の光源Uの照明下での分光反射率Ru(λ,S)の推定値を演算により求める処理ということになる。
【0048】
図2の流れ図において、ステップS4は、複数のサブステップS40〜S43によって構成されている。これは、試料となる印刷物上に付着したインキ層を完全な隠蔽層と考えるか否かによって、異なる処理を行う必要があるためである。具体的には、ステップS40において、インキ層を完全な隠蔽層と考えるか否かが選択され、完全な隠蔽層と考えた取扱いを行う場合には、ステップS41の処理を行い、そうでない場合、すなわち、インキ層を光が透過すると考える取扱いを行う場合には、ステップS42,S43の処理を行うことになる。
【0049】
ここでは、インキ層を完全な隠蔽層と考える場合の取り扱い、すなわち、ステップS41の処理から先に説明する。まず、理解を容易にするために、印刷が行われていない白紙の状態の用紙を、測色時とは異なる光源で観察した場合に、どのような演算を行えば、正しい色の評価基準が得られるかを考えてみよう。ステップS1で述べたように、特定の用紙についての第1の光源Tの照明下での分光反射率Pt(λ)は、用紙および完全白色板についての実測値に、式(1) を適用することによって求めることができる。ところが、この用紙を第2の光源Uの照明下で観察した場合、用紙に含まれている蛍光増白剤による蛍光成分の影響が異なってくるため、測定により求めた分光反射率Pt(λ)は、正しい色の評価を与えることはできなくなる。
【0050】
具体的には、タングステンランプ(第1の光源T)を用いた測定によって得られた用紙の分光反射率Pt(λ)がやや黄色がかった色特性を示していたとしても、この用紙を蛍光灯(第2の光源U)の照明下で観察すると、ステップS2で求めた蛍光増白剤に起因する差成分Fp(λ)が重畳されるため、400〜500nmの波長域成分が増強され、青みがかって見えることになる。したがって、タングステンランプを用いた測定によって得られた用紙の分光反射率Pt(λ)に、蛍光増白剤に起因する差成分Fp(λ)を加える補正をしてやれば、理論的には、この用紙を蛍光灯の照明下で測定したときに得られる分光反射率Pu(λ)を演算によって求めることができる。もっとも、このようにして求めた分光反射率Pu(λ)は、実測値ではなく、あくまでも実測値Pt(λ)を用いた演算によって求めた推定値であるため、ここでは、Ptu(λ)と表記することにする。ここで、添字のtuは、「第1の光源Tの下での実測値」から演算により求められた「第2の光源Uの下での推定値」であることを示している。
【0051】
結局、第2の光源Uによる照明下での用紙の推定分光反射率Ptu(λ)は、第1の光源Tによる照明下での用紙の実測分光反射率Pt(λ)に基づいて、式(5) の演算を行うことにより求まる。
Ptu(λ)=Pt(λ)+ Fp(λ) (5)
ここで、Fp(λ)は、蛍光増白剤に起因する差成分であり、ステップS2において、式(3) によって求められたスペクトルである。
【0052】
さて、上述した式(5) は、何ら印刷が行われていない白紙の用紙に適用することが可能な式であるが、実際に印刷が行われた印刷物については、この式(5) をそのまま適用することはできない。ただ、インキ層を完全な隠蔽層と考えた場合、式(5) を若干変更して得られる式(6) を印刷物に適用することが可能になる。
Rtu(λ,S)=Rt(λ,S)+ Fp(λ)・(1−S)2 (6)
ここで、Rt(λ,S)は、ステップS3において、式(4) の演算により求めたスペクトルであり、第1の光源Tによる照明下での試料(網点面積率Sの印刷領域)の実測分光反射率である。また、Fp(λ)は、ステップS2において、式(3) によって求められた蛍光増白剤に起因する差成分のスペクトルであり、Sは、試料の網点面積率である。そして、この式(6) の演算によって求められるRtu(λ,S)は、第2の光源Uによる照明下での試料の推定分光反射率である。
【0053】
式(6) を式(5) と比較すれば、(1−S)2 の項を除いて、両者はほぼ共通していることがわかる。すなわち、基本的には、第1の光源Tによる照明下での試料の実測分光反射率Rt(λ,S)に、蛍光増白剤に起因する差成分Fp(λ)を加える補正を行っている。ただし、補正項である蛍光増白剤に起因する差成分Fp(λ)には、(1−S)2 なる項が乗じられている。これは、式(5) が白紙の用紙に適用する式であるのに対し、式(6) がインキの付着した試料(印刷物)に適用する式であるためである。数値S(S=0〜1)は、試料の網点面積率であり、試料となる測色対象領域の全面積に対するインキ付着部分の面積の割合を示すパラメータである。たとえば、S=0であれば、測色対象領域にはインキは全く付着しておらず、S=1であれば、測色対象領域の全面がインキによって覆われており、S=0.5であれば、測色対象領域内のインキによって覆われている部分の総面積が、全面積の半分ということになる。そして、ここでは、インキ層を完全な隠蔽層と考えた取り扱いを行うので、インキが付着した部分に関しては、光源からの光は用紙の地肌の部分には到達せず、また、たとえ用紙から蛍光が発せられることがあったとしても、インキが付着した部分に関しては、用紙から発せられた蛍光が外部に出ることはない。
【0054】
用紙に含まれている蛍光増白剤が蛍光を発するためには、まず、蛍光を生じさせるためのエネルギーが外部から供給されねばならない。別言すれば、発光のためのエネルギーを供給するために、光源からの光(図1の励起スペクトルの波長域の光)が用紙内部の蛍光増白剤の分子まで到達する必要がある。ところが、用紙の上に隠蔽層として機能するインキ層が形成されていると、その部分については、光源からの光のエネルギーは蛍光増白剤まで届かないことになる。網点面積率がSの試料の場合、測色対象となる全領域のうち、割合Sの部分がインキ層によって覆われているので、光源からの光のエネルギーは、全領域の(1−S)の割合に相当する部分(用紙の地肌が露出している部分)に照射されたものだけが蛍光増白剤まで到達することになる。結局、表面にインキ層が全く形成されていない白紙の用紙の蛍光増白剤に供給される光エネルギーを1とすれば、網点面積率Sの試料の蛍光増白剤に供給される光エネルギーは(1−S)になる。
【0055】
一方、用紙に含まれている蛍光増白剤に外部から何らかのエネルギーが供給され、このエネルギーに起因して蛍光増白剤から蛍光(図1の発光スペクトルの波長域の光)が発せられたとしても、当該蛍光が観察されるためには、観察者のもとまで到達する必要がある。ところが、用紙の上に隠蔽層として機能するインキ層が形成されていると、その部分については、蛍光増白剤から発せられた蛍光は外部まで届かないことになる。結局、表面にインキ層が全く形成されていない白紙の用紙から外部へと発せられる蛍光強度を1とすれば、網点面積率Sの試料から外部へと発せられる蛍光強度は(1−S)になる。
【0056】
式(6) における補正項である蛍光増白剤に起因する差成分Fp(λ)に、(1−S)2 なる二乗の項が乗じられているのは、外部の光源から蛍光増白剤に供給されるエネルギー量が(1−S)に減衰するとともに、内部で発生した蛍光が外部まで届く量が(1−S)に減衰するためである。すなわち、網点面積率Sの試料の場合、白紙の用紙に比較して、蛍光増白剤に供給されるエネルギー量が(1−S)に減ってしまい、更に、外部まで放出される蛍光の量も(1−S)に減ってしまうため、最終的に観察者のもとに届く蛍光の強度は、(1−S)2 になる。ここで、外部光源による蛍光増白剤の励起効率を示すファクター(1−S)と、内部で発生した蛍光の外部への発光効率を示すファクター(1−S)とを乗じる必要があるのは、用紙内部に供給された励起エネルギーは、用紙内部で拡散するため、インキ層によって覆われた部分についても、蛍光増白剤の分子に対する励起が行われると考えられるからである。したがって、外部光源による蛍光増白剤の励起効率を示すファクター(1−S)と、内部で発生した蛍光の外部への発光効率を示すファクター(1−S)とは、別個独立した物理現象に関するファクターであり、最終的に観察者のもとに蛍光成分が届く効率を示すファクターとしては、両者を乗じた(1−S)2 なる値を用いる必要がある。
【0057】
以上のような現象を考えれば、印刷物からなる試料に対して、式(6) を適用することにより、第2の光源Uによる照明下での試料の推定分光反射率Rtu(λ,S)が求まることが理解できよう。もっとも、印刷物に対して式(6) を適用するには、次のような条件を満たしている必要がある。すなわち、当該印刷物が、オフセット印刷などの面積変調方式によって階調表現を行った印刷物であり、かつ、インキ層を完全な隠蔽層として取り扱うことが妥当な印刷物である、という条件である。ここで「完全な隠蔽層として取り扱うことが妥当なインキ層」とは、用紙に含まれている蛍光増白剤の励起スペクトルおよび発光スペクトル(図1参照)における有効な波長領域(300〜500nm程度の領域)における光の透過率が、比較的低いインキ層を意味する。
【0058】
たとえば、一般的な墨インキによる印刷物では、用紙のインキ付着部分に照射される光は、インキ層内でほとんど吸収され、用紙の地肌まではほとんど届くことはない。また、わずかな光が用紙の地肌まで届いたとしても、届いた光に起因して放射された蛍光が、インキ層を再び透過して外部へと出ることはない。したがって、一般的な墨インキで印刷された印刷物は、「インキ層を完全な隠蔽層として取り扱うことが妥当な印刷物」ということになろう。また、墨インキとダークブラウンのインキのように、完全な隠蔽層として取り扱うことが妥当な複数種類のインキ層が形成されている多色刷り部分を試料とする場合にも、式(6) を適用することができる。この場合は、複数のインキの各網点面積率の総和をSとして用いればよい。
【0059】
もちろん、実用上は、ある程度の光透過率をもったインキ層が形成されている場合にも、インキ層を完全な隠蔽層として取り扱うことにして、式(6) を適用してかまわない。インキ層が完全な隠蔽層でない場合も、式(6) は依然として有効な推定値を算出することができる。ただ、後述するステップS42,S43の処理方法を採る場合に比べて、得られる推定値の精度が低くなるというだけのことである。要するに、図2のステップS40における判断は、測定者の恣意的な判断に基づいて行うことができるものである。もちろん、試料のインキ層についての光透過率を実測し、この実測値を所定の基準値と比較することにより、ステップS40の判断を客観的に行うことも可能である。
【0060】
なお、試料の網点面積率Sは、網点面積率計を用いて試料から実測することができる。あるいは、印刷物を作成する際に用いたDTP(Desk Top Publishing)用データが利用可能であれば、当該試料に関する網点面積率の情報を、DTP用データから直接取り込むようにしてもよい。また、本発明において、数値Sは、必ずしも、網点の面積率である必要はなく、面積変調方式によって階調表現を行った印刷物において、試料となる測色対象領域の全面積に対するインキ付着部分の面積の割合を示すパラメータであれば、どのような面積率であってもかまわない。ただ、本発明の実施形態の説明では、便宜上、数値Sを網点面積率とした例を述べる。
【0061】
続いて、図2の流れ図におけるステップS40において、インキ層を完全な隠蔽層とは考えない場合の取り扱いについて説明する。この場合は、ステップS42,S43の処理を行うことになる。上述したように、インキ層を完全な隠蔽層と考えた場合は、インキ付着部については蛍光増白剤から発せられた蛍光成分の影響を全く考慮しない取り扱いを行うことができる。ところが、インキ層を完全な隠蔽層とは考えない場合は、光源からの光がインキ層を透過して蛍光増白剤にエネルギー供給を行うことになり、また、供給されたエネルギーに起因して発せられた蛍光がインキ層を透過して外部へ放出されることになる。したがって、インキ付着部についても、インキ層の透過率に応じた蛍光成分の影響を考慮する必要が生じる。前述したように、ステップS40における判断は、測定者の恣意的な判断に基づいて行うことができるものであるが、シアンやマゼンタのインキなど、短波長域の光の隠蔽性が比較的低いインキ層が形成された試料についての測色を行う場合は、インキ層を完全な隠蔽層とは考えない取り扱いを行う方が、より高い精度の推定値が得られる。
【0062】
いま、図3の側断面図に示すように、用紙10の表面の一部分に、ある程度の光透過率を有するインキ層20が形成されている場合の蛍光発生プロセスを考えてみよう。ここでは、用紙10内に存在する蛍光増白剤の1つの分子M1およびM2についての励起プロセスを考える。ここで、分子M1,M2は、たとえば、用紙の表面からの励起に適した標準的な深さdに位置する任意の1分子と考えればよい。この分子M1あるいはM2を励起するためには、外部からの光Iのエネルギーが分子M1,M2の位置まで到達し、更に、分子M1,M2によって吸収される必要がある。
【0063】
そこで、インキ付着部の分光透過率R(λ)と、インキ非付着部の分光透過率P(λ)とを定義する。R(λ)は、外部からの光Iのうち、分子M1の位置まで到達する割合を個々の波長λごとに示すパラメータであり、たとえば、外部からの光Iに含まれる波長λiの成分の強度を100%としたときに、分子M1の位置に到達した波長λiの成分の強度が30%になっていたとすれば、R(λi)=0.3ということになる。この場合、波長λiの成分のうちの70%がインキ層20あるいは用紙10によって吸収されてしまったことになる(層の界面での反射を考えない場合)。同様に、P(λ)は、外部からの光Iのうち、分子M2の位置まで到達する割合を個々の波長λごとに示すパラメータである。R(λ)もP(λ)も、いずれもスペクトルとして得られる各波長ごとの透過率を示すデータであるが、前者はインキ層20と用紙10内の厚みdの部分とを透過した分光透過率であるのに対し、後者は用紙10内の厚みdの部分のみを透過した分光透過率になる。当然、インキ層20の存在があるため、R(λ)<P(λ)になる。
【0064】
ここで、分子M1,M2まで到達した光は、すべてが励起エネルギーとして利用されるわけではない。各波長の光の励起エネルギーとして利用される割合は、図1に示されている励起スペクトルに基づいて定まる。そこで、用紙10の励起スペクトルをPE(λ)とすれば、分子M1に吸収されて利用されるエネルギーの総量は、全波長域にわたる積分を行うことにより∫R(λ)・PE(λ)dλなる積分値として表される。たとえば、分子M1の位置まで到達した波長λiの成分はR(λi)であるが、このうち分子M1に吸収される割合は、PE(λi)であるから、結局、外部から照射された光Iに含まれる波長λiの成分のエネルギーうち、分子M1の励起に利用される割合は、R(λi)・PE(λi)になる。したがって、これをすべての波長域について積分すれば、上述の積分値が得られ、分子M1に吸収されて利用されるエネルギーの総量が求まることになる。なお、PE(λ)を蛍光増白剤の励起スペクトルではなく、用紙10の励起スペクトルとしているのは、用紙10内には、通常、蛍光増白剤以外にも蛍光を発する分子が含まれているからである。したがって、PE(λ)は蛍光増白剤も含めて、用紙10に含まれているすべての蛍光材料についての励起スペクトルということになる。
【0065】
全く同様にして、分子M2に吸収されて利用されるエネルギーの総量は、全波長域にわたる積分を行うことにより∫P(λ)・PE(λ)dλなる積分値として表される。結局、インキ付着部の分子M1に対して供給されるエネルギーの総量は∫R(λ)・PE(λ)dλなる積分値で求まり、インキ非付着部の分子M2に対して供給されるエネルギーの総量は∫P(λ)・PE(λ)dλなる積分値で求まることになる。そこで、外部から同一条件で照明した場合に、単位面積あたりの「インキ付着部に供給される励起エネルギーの総量」の「インキ非付着部に供給される励起エネルギーの総量」に対する割合を、当該インキ付着部に関する励起係数CEと定義すれば、式(7) が成り立つ。
Figure 0003862997
要するに、この励起係数CEは、図3に示すように、インキ層20が形成されている領域(分子M1が存在する領域)と、形成されていない領域(分子M2が存在する領域)とに、同じ条件で外部からの光Iを照射したときに、分子M1には、分子M2に比べて、どの程度の割合の励起エネルギーが供給されるかを示すパラメータということになる。別言すれば、インキ層の隠蔽度合に関連して定まるパラメータである。
【0066】
続いて、図3の側断面図において、分子M1およびM2から、それぞれ同じエネルギーをもった蛍光が発せられたと仮定した場合に、この発光エネルギーのうちのどの程度の割合が、観察者まで到達するかを考えてみる。そのために、ここでは、用紙内部で同一条件で蛍光放出が行われている場合に、単位面積あたりの「インキ付着部から放出されて観察される発光エネルギーの総量」の「インキ非付着部から放出されて観察される発光エネルギーの総量」に対する割合を、当該インキ付着部に関する発光係数CLと定義する。すると、式(8) が成り立つ。
Figure 0003862997
ここで、R(λ)およびP(λ)は、前述したように、それぞれインキ付着部およびインキ非付着部の分光透過率である。また、PL(λ)は、用紙10の発光スペクトルであり、蛍光増白剤も含めて、用紙10に含まれているすべての蛍光材料についての発光スペクトルということになる。式(7) が外部から用紙10内部へと供給されるエネルギーに関するインキ層の透過効率を示す式であるのに対し、式(8) は用紙10内部から外部へと放出されるエネルギーに関するインキ層の透過効率を示す式ということになる。
【0067】
要するに、この発光係数CLは、図3に示すように、インキ層20が形成されている領域(分子M1が存在する領域)と、形成されていない領域(分子M2が存在する領域)とを考え、分子M1,M2のそれぞれから全く同じエネルギーをもった蛍光が発せられたときに、分子M1から発せられたエネルギーは、分子M2から発せられたエネルギーに比べて、どの程度の割合で観察者まで到達するかを示すパラメータということになる。別言すれば、インキ層の隠蔽度合に関連して定まるパラメータである。
【0068】
図2の流れ図に示すステップS42は、式(7) に基づいて試料の励起係数CEを計算し、式(8) に基づいて試料の発光係数CLを計算する処理である。これらの計算を行うためには、用紙の励起スペクトルPE(λ)、用紙の発光スペクトルPL(λ)、インキ付着部の分光透過率R(λ)、インキ非付着部の分光透過率P(λ)を求める必要がある。なお、波長λに関する積分を行う演算は、実用上は、300〜780nm程度の積分範囲での演算を行えば十分である。したがって、上記PE(λ)、PL(λ)、R(λ)、P(λ)なるスペクトルも、300〜780nm程度の波長域について測定すればよい。
【0069】
用紙の励起スペクトルPE(λ)および用紙の発光スペクトルPL(λ)は、分光蛍光光度計などの装置を用いた公知の方法で測定することが可能である。これらの値は、試料となる印刷物に用いられている用紙と同一の用紙について実測することもできるし、試料となる印刷物における余白部分などを利用して実測することもできる。
【0070】
一方、インキ付着部の分光透過率R(λ)およびインキ非付着部の分光透過率P(λ)は、原理的には、試料となる印刷物を用いて、次のような測定を行うことにより実測することができる。いま、図4の側断面図左半分に示すように、用紙10の表面の一部分に、光透過性を有するインキ層20が形成されているものとし、このインキ層20の上方から図示のとおり、所定の入力光InRを照射し、下方に通り抜けて出てくる出力光OutRを観測する。このとき、入力光InRは、特定の単一波長λiをもった単色光になるようにする。もちろん、実際には、単一波長λiの線スペクトルをもった入力光InRを用意することは困難であるから、たとえば、図5に示すスペクトルのように、単一波長λiの位置に急峻なピークをもつ光を、単一波長λiをもった入力光InRとして照射すれば十分である。ここでは、このような入力光InRを上方から照射したときに、図6に示すようなスペクトルをもった出力光OutRが下方から得られたとしよう。この場合、図5に示す入力光InRの波長λiの強度値h1と、図6に示す出力光OutRの波長λiの強度値h2を測定し、h2/h1なる比の値を求めれば、この値が、インキ付着部(インキ層20だけでなく、その下の用紙10も含めた部分)における波長λiの光についての分光透過率R(λi)になる。別言すれば、上方から照射された波長λi、強度値h1の光が、インキ付着部を透過することにより、強度値h2にまで減衰したことになるので、波長λiに関する透過率はh2/h1で表されることになる。
【0071】
このような測定を、必要なすべての波長域にわたってくり返し行うことにより、インキ付着部の分光透過率R(λ)を求めることができる。同様に、図4の側断面図右半分に示されているインキ非付着部に、上方から図示のとおり、所定の単一波長をもった入力光InPを照射し、下方に通り抜けて出てくる出力光OutPを観測する測定を、必要なすべての波長域にわたってくり返し行うことにより、インキ非付着部の分光透過率P(λ)を求めることができる。
【0072】
しかしながら、実際には、図4において用紙10の下方から透過して出てくる出力光OutRやOutPを測定することは困難な場合が多い。これは、一般的に用いられている用紙10の透光性がかなり低いため、下方から出てくる透過光の強度がかなり減衰してしまうためである。そこで、実用上は、下方から出てくる出力光OutRやOutPを測定する代わりに、上方から出てくる出力光OutR′やOutP′を測定すればよい。照射された入力光InRは、インキ層20や用紙10の内部へと透過しながら、その過程で反射や散乱をくり返しながら、徐々に吸収されてゆくことになるので、上方からも出力光OutR′やOutP′が観測されることになる。しかも、この出力光OutR′やOutP′の強度値は、出力光OutRやOutPの強度値にほぼ比例することが知られており、出力光OutRやOutPの強度値に代用することができる。
【0073】
また、上述の方法でインキ付着部の分光透過率R(λ)やインキ非付着部の分光透過率P(λ)を求める際には、蛍光の影響を受けない値を求める必要がある。すなわち、用紙10内には、蛍光増白剤が含まれており、短波長域の光により励起されて蛍光を発することになる。この蛍光成分は、光の透過率を測定する際には、除外すべき成分であるから、出力光OutR,OutP,OutR′,OutP′などに蛍光成分が含まれていたら、これを除外して強度値を決定する処理を行う必要がある。たとえば、図5に示す入力光InRに対して、図7に示すような出力光OutRが得られた場合、図にハッチングを施したブロードな波長にわたる部分は蛍光成分であるため、波長λiの出力光強度としては、出力された強度値h3から蛍光成分の強度値h4を差し引いた値、すなわち、h3−h4を用いるようにする必要がある。
【0074】
以上述べたように、用紙の励起スペクトルPE(λ)、用紙の発光スペクトルPL(λ)、インキ付着部の分光透過率R(λ)、インキ非付着部の分光透過率P(λ)はすべて測定により求めることができるので、式(7) に基づいて試料の励起係数CEを計算し、式(8) に基づいて試料の発光係数CLを計算することができる。図2の流れ図に示すステップS42は、このような測定および計算を行う処理である。
【0075】
最後に、ステップS43において、第2の光源Uによる照明下での試料の分光反射率RRtu(λ,S)を、式(9) を用いて演算する処理が行われる。
RRtu(λ,S)=Rt(λ,S)
+ Fp(λ)・(1−S(1−CE))・(1−S(1−CL)) (9)
ここで、Rt(λ,S)は、ステップS3において、式(4) の演算により求めたスペクトルであり、第1の光源Tによる照明下での試料(網点面積率Sの印刷領域)の実測分光反射率である。また、Fp(λ)は、ステップS2において、式(3) によって求められた蛍光増白剤に起因する差成分のスペクトルであり、Sは、試料の網点面積率である。なお、前述の式(6) の演算によって求められるRtu(λ,S)も、上述の式(9) の演算によって求められるRRtu(λ,S)も、第2の光源Uによる照明下での試料の分光反射率という点では同じであるが、前者は、インキ層を完全な隠蔽層と考える取扱いにより算出された値であるのに対し、後者は、インキ層を光が透過すると考える取扱いにより算出された値である。
式(6) を式(9) と比較すると、前者における(1−S)2 なる項が、後者では、(1−S(1−CE))・(1−S(1−CL))なる項になっている点のみが異なっている。これは、前者の場合、網点面積率Sの領域が完全に隠蔽されているものとする取り扱いがなされていたのに対し、後者の場合は、次のような取り扱いがなされるからである。すなわち、外部から励起エネルギーを供給する光に関しては、網点面積率Sに相当するインキ付着部についても、励起係数CEに相当する割合がインキ層を透過し、網点面積率の隠蔽に寄与する実効値はS(1−CE)になる。同様に、外部へと放出される発光エネルギーに関しては、やはり網点面積率Sに相当するインキ付着部についても、発光係数CLに相当する割合がインキ層を透過し、網点面積率の隠蔽に寄与する実効値はS(1−CL)になる。以上のような理由から、印刷物からなる試料に対して、式(9) を適用することにより、インキ層を透過する光までを考慮した第2の光源Uによる照明下での試料の推定分光反射率RRtu(λ,S)が求まることが理解できよう。
【0076】
最後に、複数のインキによる網点が重なった場合の取り扱いについて述べておく。たとえば、図8に示すように、試料30(印刷物の中の測色対象となる一部分の領域)の中に、第1の網点31(横線のハッチングを施して示す正方形部分)と、第2の網点32(縦線のハッチングを施して示す正方形部分)とが、部分的に重なり合って存在する場合を考える。実際には、測色対象となる試料内に図示のような2つの網点だけしか存在しないような状況は考えにくいが、ここでは、説明の便宜上、図8に示すように、それぞれ異なるインキによる2つの網点31,32だけが存在するものとしよう。網点31は、第1のインキによるインキ層が用紙に付着してなる部分であり、網点32は、第2のインキによるインキ層が用紙に付着してなる部分である。
【0077】
いま、試料30の面積全体を1としたときに、第1のインキのみが付着した領域の面積がS1、第2のインキのみが付着した領域の面積がS2、両方のインキが重なって付着した領域の面積がS12、いずれのインキも付着していない領域の面積がSpであったとしよう。この場合、試料30内の面積に関して、
1−Sp = S1 + S2 + S12 (10)
なる式が成り立つことになる。
このような場合、試料30についての第2の光源Uによる照明下でのインキ層を透過する光までを考慮した推定分光反射率RRtu(λ,S1,S2,S12)は、式(11) を用いて演算することができる。
Figure 0003862997
ここで、Rt(λ,S1,S2,S12)は、第1の光源Tによる照明下での試料30の実測分光反射率である。また、Fp(λ)は、ステップS2において、式(3) によって求められた蛍光増白剤に起因する差成分のスペクトルである。一方、CE1,CE2,CE12は、それぞれ第1のインキのみが付着した領域、第2のインキのみが付着した領域、両方のインキが重なって付着した領域について求めた励起係数であり、CL1,CL2,CL12は、これら各領域について求めた発光係数である。
【0078】
式(11)は、図8に示すように、2種類のインキからなる網点が形成された試料について適用可能な式であるが、3種類以上のインキからなる網点が形成された試料についても、同様の考え方で、それぞれ適用可能な式が得られる。一般に、複数のインキからなる網点が形成された試料の場合には、個々の領域の面積率を、S1,S2,...,Sn、各領域についての励起係数をCE1,CE2,...,CEn、各領域についての発光係数をCL1,CL2,...,CLnとして定めれば、式(11)と同等の演算を行うことにより、第1の光源Tによる照明下での試料の実測分光反射率に基づいて、第2の光源Uによる照明下での試料の推定分光反射率を求めることができるようになる。
【0079】
より具体的に説明すれば、試料が複数のインキを用いて印刷されており、単色のインキのみが付着した領域および複数のインキが重複して付着した領域が混合することにより、全部でnとおりのインキ付着領域が形成されていた場合には、次のような方法で、第2の光源Uによる照明下での試料の推定分光反射率を求めることができる。まず、第3のステップで、当該試料についての第1の光源Tによる照明下での分光反射率を実測する。続いて、第4のステップで、上記nとおりのインキ付着領域のそれぞれについて、励起係数CEと発光係数CLとを測定し、このnとおりのインキ付着領域に関しては、それぞれについて求めた励起係数CEと発光係数CLとに応じて差成分Fp(λ)に基づく補正を行うようにすればよい。
【0080】
<<< §2.本発明に係る分光反射率の測定方法の手順概略 >>>
ここでは、§1で述べた手順の概略を図9および図10のダイヤグラムに基づいて簡単に説明するとともに、具体的な印刷物に対して適用した結果を示すことにする。
【0081】
図9は、ステップS1およびS2の手順を示すダイヤグラムである。まず、ステップS1において、同一の用紙に対して、第1の光源Tおよび第2の光源Uの照明下で、分光放射輝度計を用いてそれぞれ反射光の強度を測定し、分光反射率Pt(λ)およびPu(λ)を求める。このとき、完全白色板を利用して、式(1) ,(2) による補正演算が行われることは既に述べたとおりである。
【0082】
続いて、ステップS2において、式(3) に基づく減算が行われ、用紙の蛍光増白剤に起因する差成分Fp(λ)が得られる。ここに示す例の場合、第1の光源Tは紫外線成分をほとんど含まないタングステンランプであり、第2の光源Uは紫外線成分を多く含む光源であるため、図9に示すように、分光反射率Pu(λ)のスペクトルの方が分光反射率Pt(λ)のスペクトルよりも、400〜500nmの波長域成分を多く含んでいる。これは、紫外線成分を多く含む第2の光源Uで照明した場合、図1の励起スペクトルに示されるように、蛍光増白剤がこの紫外線成分を吸収し、図1の発光スペクトルに示されるように、400〜500nmの波長域の蛍光を放射するためである。したがって、式(3) により得られる蛍光増白剤に起因する差成分Fp(λ)のスペクトルは、図9に示すように、400〜500nmの波長域に急峻な山形をもつスペクトルになる。逆に、第1の光源を紫外線成分を多く含む光源とし、第2の光源を紫外線成分をほとんど含まない光源とした場合には、式(3) により得られる蛍光増白剤に起因する差成分Fp(λ)のスペクトルは、負の値をもった谷形のスペクトルになる。
【0083】
なお、実用上は、種々の用紙について、予めステップS1およびステップS2の手順を実施しておき、個々の用紙ごとに、蛍光増白剤に起因する差成分Fp(λ)を示すスペクトルを求めておき、これをデータとして保存しておくと便利である。たとえば、どの製紙会社のどの型番の用紙は、どのような蛍光増白剤に起因する差成分スペクトルを有するか、という情報をデータベースとして用意しておけば、ステップS1およびステップS2の手順は、以後、省略することができる。もちろん、このようなデータベースの内容は、個々の光源の組み合わせによっても異なるので、一般的な光源の組み合わせのそれぞれについて、データベースを用意しておくのが好ましい。このような観点からは、図9に示すステップS1およびステップS2の手順は、いわば準備段階の手順と言うことができる。
【0084】
一方、図10は、図2に示す流れ図におけるステップS3およびS4の手順を示すダイヤグラムであり、これらの手順は、実際の試料について測定や演算を行う実測段階の手順になる。まず、ステップS3において、測色対象となる試料(網点面積率Sの印刷物)に対して、第1の光源Tの照明下で、分光放射輝度計を用いて反射光の強度を測定し、分光反射率Rt(λ,S)を求める。このとき、完全白色板を利用した補正演算が行われることは既に述べたとおりである。続いて、ステップS4において、式(6) または式(9) に基づく演算が行われ、第2の光源Uの照明下での試料の推定分光反射率が得られる。この演算は、ステップS3で測定した第1の光源Tの照明下での分光反射率Rt(λ,S)に、ステップS2で求めた蛍光増白剤に起因する差成分Fp(λ)に所定の実効係数を乗じた補正項を加える演算ということになる。
【0085】
図2のステップS40は、いずれの実効係数を用いるかの選択を行うプロセスである。インキ層を完全な隠蔽層と考える取り扱いを行う場合には、実効係数は、(1−S)2 となるので、ステップS41において、網点面積率Sを測定し、式(6) を用いた演算により、第2の光源Uの照明下での試料の推定分光反射率Rtu(λ,S)が求まることになる。一方、インキ層に光が透過して蛍光成分の影響が生じると考える取扱いを行う場合には、実効係数は、(1−S(1−CE))・(1−S(1−CL))となるので、まず、ステップS42において、試料の励起係数CEおよび発光係数CLを求めた後、ステップS43において、網点面積率Sを測定し、式(9) を用いた演算により、第2の光源Uの照明下での試料の推定分光反射率RRtu(λ,S)が求まることになる。
【0086】
続いて、具体的な印刷物に対する本発明の適用結果を示しておく。ここに示す例では、第1の光源Tとして、タングステンランプを用い、第2の光源Uとして、ISO/CIE 10526に定められている標準の光D65(CIE standard illuminant D65)を用いた。まず、図9のステップS1に示すように、各光源を用いて白紙の用紙および完全白色板を照明した状態での分光反射率を分光放射輝度計を用いて測定し、用紙固有の分光反射率Pt(λ)、Pu(λ)を求めた。そして、ステップS2に示すように、両者の差として、蛍光増白剤に起因する差成分Fp(λ)に相当するスペクトルデータを求めた。次に、墨インキを用いて、網点面積率0%、20%、60%、100%の4種類の試料を作成し、これら4種類の試料について、図10のステップS3に示すように、タングステンランプからなる第1の光源Tからの光を照射し、分光放射輝度計を用いて、それぞれの試料についての分光反射率Rt(λ,S)の実測値を得た。そして、ステップS4において、実効係数(1−S(1−CE))・(1−S(1−CL))を用い、すなわち、インキ層に光が透過して蛍光成分の影響が生じると考える取扱いを行い、式(9) の演算により、各試料についての推定分光反射率RRtu(λ,S)を求めた。
【0087】
また、この推定分光反射率RRtu(λ,S)が、第2の光源Uによる照明下で観察したときの試料の色の正しい評価基準を提示しているか否かを検証するために、4種類の試料について、標準の光D65によって照明した状態で、分光放射輝度計を用いて、それぞれ分光反射率Ru(λ,S)を実測した。この実測手順は、図10のステップS3に示す測定手順において、タングステンランプ(第1の光源T)の代わりに、D65光源(第2の光源U)を用いたものに相当する。
【0088】
図11は、この4種類の試料について求められた3とおりの分光反射率を比較するためのグラフである。グラフの右側に記された0%、20%、60%、100%なる数値は、各グラフがそれぞれ網点面積率0%、20%、60%、100%の試料に関する分光反射率であることを示している。そして、破線で示すグラフは、第1の光源T(タングステンランプ)の照明環境下で実測された分光反射率Rt(λ,S)を示している(ステップS3)。また、太い実線で示すグラフは、破線で示すグラフに対して、ステップS4の演算を施すことにより得られた第2の光源U(D65光源)の照明環境下での推定分光反射率RRtu(λ,S)を示している。更に、細い実線で示すグラフ(網点面積率0%や60%のグラフでは、太い実線で示すグラフに重なってしまって認識できない)は、本発明の効果を検証するために、第2の光源U(D65光源)の照明環境下で実測された分光反射率Ru(λ,S)を示している。
【0089】
この結果によれば、破線のグラフと細い実線のグラフ(ほとんどの部分において、太い実線のグラフに重なっている)とは、400〜500nm付近の波長域(蛍光増白剤が発する蛍光の波長域)において、大きな食い違いを見せている。すなわち、実測値を比較する限りにおいては、同一の試料でも照明に用いる光源が異なると、分光反射率のスペクトルが大きく異なることがわかる。ところが、太い実線のグラフと細い実線のグラフとは、かなりの精度で一致しており、本発明により演算された第2の光源Uの下での推定分光反射率が、同じく第2の光源Uの下での実測分光反射率に、かなり近似した結果を提示できることがわかる。
【0090】
前述したように、一般的な測色装置では、装置自体の小型化を図るために、タングステンランプを光源として用いることが多い。本発明を利用すれば、このように、タングステンランプを用いて試料に対する分光反射率の実測を行ったとしても、この実測値に対する補正演算を行うことにより、たとえば、蛍光灯照明下での推定分光反射率を求めることができる。結局、タングステンランプを用いた実測さえ行っておけば、任意の照明環境下における正しい色の評価基準を提示することが可能になる。
【0091】
<<< §3.本発明に係る測色方法による測色値の測定手順 >>>
これまで、本発明に係る測色方法を用いて、印刷物からなる試料について、実測時とは異なる照明環境下での分光反射率を求める方法を述べた。しかしながら、分光反射率は、380nm〜780nmの可視波長域についての反射率スペクトルを示すデータであり、実務上、取り扱いが不便である。このため、一般的な色評価には、国際照明委員会(CIE)が定めたXYZ表色系の三刺激値(XYZ)によって定義される測色値が利用されている。本発明に係る印刷物の測色方法の基本原理は、分光反射率を求める場合だけでなく、XYZ三刺激値によって定義される測色値(以下、単に、測色値という)を求める場合にも適用可能である。そこで、ここでは、これまで述べてきた分光反射率についての方法を、測色値に適用するための変形例を述べておく。
【0092】
測色値を求める場合にも、基本的な作業手順は、これまで述べてきた分光反射率を求める手順と同じである。ただ、利用する演算式が若干異なってくる。そこで、以下、図9および図10のダイヤグラムを参照しながら、利用する演算式の相違を説明する。
【0093】
まず、ステップS1において、同一の用紙に対して、第1の光源Tおよび第2の光源Uの照明下で、分光放射輝度計を用いてそれぞれ反射光の強度を測定し、更に完全白色板を利用した補正を行うことにより、前述の手順と同様に、分光反射率Pt(λ)およびPu(λ)を求める。そして、得られた分光反射率Pt(λ)から、第1の光源Tによる照明環境下での用紙の測色値(XYZ表色系の三刺激値(XYZ))を求める。ここでは、この測色値を、Pt(X),Pt(Y),Pt(Z)と記述することにする。同様に、分光反射率Pu(λ)から、第2の光源Uによる照明環境下での用紙の測色値Pu(X),Pu(Y),Pu(Z)を求める。なお、分光反射率に基づいて三刺激値(XYZ)を求めるには、人間の視覚系の分光感度分布と、観察時に用いる光源の分光強度分布とを用いた公知の手法(たとえば、ISO/CIE 10527 CIE standard colorimetric observers, 1st Ed., 1991を参照)を用いればよいので、ここでは説明を省略する。
【0094】
続いて、これら2つの異なる光源下での測色値の差として、用紙に含まれている蛍光増白剤に起因する差成分についての測色値Fp(X),Fp(Y),Fp(Z)を、次の式(12) を用いて計算する。
Fp(X)=Pu(X)−Pt(X)
Fp(Y)=Pu(Y)−Pt(Y) (12)
Fp(Z)=Pu(Z)−Pt(Z)
これは、前述の手順におけるステップS2において、式(3) により蛍光増白剤に起因する差成分Fp(λ)を求める手順に相当する。すなわち、式(12) で求められた測色値Fp(X),Fp(Y),Fp(Z)は、図9のステップS2に示すFp(λ)のスペクトルに相当するものである。
【0095】
なお、実用上は、予め、種々の用紙について、かつ、種々の光源の組み合わせについて、測色値Fp(X),Fp(Y),Fp(Z)を求めてデータベースに蓄積しておき、必要に応じてこれを利用することにより、ステップS1およびステップS2の手順を毎回実施することを省略することができる。
【0096】
続いて、実際の試料についての実測段階の手順に入る。まず、図10のステップS3に示すように、測色対象となる試料(網点面積率Sの印刷物)に対して、第1の光源Tの照明下で、分光放射輝度計を用いて反射光の強度を測定し、完全白色板を利用した補正を行い、分光反射率Rt(λ,S)を求める。そして、得られた分光反射率Rt(λ,S)から、第1の光源Tによる照明環境下での試料の測色値Rt(X,S),Rt(Y,S),Rt(Z,S)を求める。
【0097】
最後に、図10のステップS4に対応した演算を行うことにより、第2の光源Uによる照明環境下での試料の推定測色値を求める。ここでは、まず、白紙の状態の用紙についての推定測色値Ptu(X),Ptu(Y),Ptu(Z)を考えてみると、これは、式(13) によって定義できることが理解できよう。
Ptu(X)=Pt(X)+ Fp(X)
Ptu(Y)=Pt(Y)+ Fp(Y) (13)
Ptu(Z)=Pt(Z)+ Fp(Z)
この式(13) は、式(5) に対応するものであり、式(12) で得られた蛍光増白剤に起因する差成分を加えることにより、蛍光増白剤から放出される蛍光成分が補われることになる。なお、式(13) における添字のtuは、「第1の光源Tの下での実測値」から演算により求められた「第2の光源Uの下での推定値」であることを示している。
【0098】
これに対して、印刷物からなる試料の場合は、式(12) で得られた蛍光増白剤に起因する差成分の影響が100%表れるわけではないので、これに所定の実効係数を乗じた上で、加算を行う必要がある。図10のステップS4に示されているように、インキ層を完全な隠蔽層と考える場合には、実効係数は(1−S)2 となり、インキ層に光が透過して蛍光成分の影響が生じると考える場合には、実効係数は、(1−S(1−CE))・(1−S(1−CL))となる。よって、前者の考えで求まる第2の光源Uによる照明環境下での試料の推定測色値Rtu(X,S),Rtu(Y,S),Rtu(Z,S)は、式(14) により得られる。
Rtu(X,S)=Rt(X,S)+ Fp(X)・(1−S)2
Rtu(Y,S)=Rt(Y,S)+ Fp(Y)・(1−S)2 (14)
Rtu(Z,S)=Rt(Z,S)+ Fp(Z)・(1−S)2
この式(14) は、式(6) に対応するものである。一方、後者の考えで求まる第2の光源Uによる照明環境下での試料の推定測色値RRtu(X,S),RRtu(Y,S),RRtu(Z,S)は、式(15) により得られる。
Figure 0003862997
この式(15) は、式(9) に対応するものである。
【0099】
なお、ここでは説明を省略するが、図8に示すように、複数のインキの網点が形成された試料についても、式(11) に対応する演算を行うことにより、推定測色値を求めることが可能である。
【0100】
最後に、本発明に係る測色値についての測色方法を、具体的な印刷物の試料に適用した結果を示しておく。まず、所定の試料を用意し、タングステンランプを用いた測定により実測測色値Rt(X,S),Rt(Y,S),Rt(Z,S)を求め、これに式(15) を適用して、標準の光D65(CIE standard illuminant D65)の照明下での推定測色値RRtu(X,S),RRtu(Y,S),RRtu(Z,S)を得た。更に、これらの測色値をLab値へと変換して、当該試料を標準の光D65の照明下においたときの実測値と比較して精度の検証を行ったところ、タングステンランプを用いた測定により求めた実測値との比較では、平均3.44、最大5.14の色差が見られたが、式(15) を用いて算出した推定測色値との比較では、色差が平均1.03、最大2.52と縮小された。この実験によっても、本発明の有効性が示されたことになる。
【0101】
<<< §4.本発明に係る印刷物の測色装置 >>>
最後に、これまで述べてきた印刷物の測色方法を利用した測色装置を述べておく。図12は、本発明の一実施形態に係る印刷物の測色装置の基本構成を示すブロック図である。この測色装置は、蛍光増白剤を含む用紙に印刷された印刷物について、所定の照明環境下での分光反射率を求めるための測色装置であり、その基本構成は、図示のとおり、分光反射率測定装置100、コンピュータ200、面積率測定装置300、透過率測定装置400、分光蛍光光度計500である。ここでは、コンピュータ200を、更に、その機能に着目して、演算処理装置210、記憶装置220、係数演算装置230の3つの構成要素として捉えることにする。
【0102】
分光反射率測定装置100は、第1の光源Tを含む装置であり、この第1の光源Tによる照明環境下で測定対象物の分光反射率を測定する機能をもった装置である。具体的には、一般的な分光放射輝度計により分光反射率測定装置100を構成することができる。装置を小型化するため、実用上は、タングステンランプを光源Tとして内蔵している分光放射輝度計が広く利用されている。したがって、本発明でも、タングステンランプを光源Tとして内蔵している一般的な分光放射輝度計を、分光反射率測定装置100として用いれば十分である。なお、この分光反射率測定装置100には、完全白色板を用いた測定を併せて行うことにより、光源Tの分光強度分布の影響を受けない分光反射率を求める機能が備わっている。
【0103】
記憶装置220には、第1の光源Tによる照明環境下における特定の用紙の分光反射率Pt(λ)、第2の光源Uによる照明環境下における同じ用紙の分光反射率Pu(λ)から減じて得られる差成分Fp(λ)のスペクトルデータが記憶されている。この差成分Fp(λ)は、光源の組み合わせによってもそれぞれ異なるし、用紙の種類によってもそれぞれ異なる。したがって、実用上は、複数とおりの光源の組み合わせごとに、かつ、複数の用紙ごとに、差成分Fp(λ)のスペクトルデータを記憶装置220内にデータベースとして格納しておき、必要に応じて、特定の用紙の特定の光源の組み合わせについての差成分Fp(λ)のスペクトルデータを読み出して用いることができるようにしておくのが好ましい。もちろん、別途、第2の光源Uを用意することができれば、分光反射率測定装置100を利用して、特定の用紙についての分光反射率Pt(λ)および分光反射率Pu(λ)を実測し、その場で差成分Fp(λ)を求めて記憶装置220に格納して利用することも可能である。この記憶装置220に格納されている差成分Fp(λ)は、図10のステップS4に示されている蛍光増白剤に起因する差成分Fp(λ)に相当するものである。
【0104】
係数演算装置230は、インキ付着部の励起係数CEと発光係数CLとを求めるための演算を行う装置である。§1で述べたように、励起係数CEと発光係数CLとは、式(7) および式(8) に示す演算によって求まる。係数演算装置230は、このような演算を行う機能を有している。式(7) および式(8) に示すように、励起係数CEと発光係数CLとを求めるには、測定対象領域内のインキ付着部の分光透過率R(λ)、インキ非付着部の分光透過率P(λ)、用紙の励起スペクトルPE(λ)、用紙の発光スペクトルPL(λ)なるデータが必要になる。透過率測定装置400および分光蛍光光度計500は、これらのデータを用意するための装置である。
【0105】
すなわち、透過率測定装置400は、図4〜図7で説明した原理に基づいて、インキ付着部の分光透過率R(λ)およびインキ非付着部の分光透過率P(λ)を測定する機能を有している。既に述べたとおり、実用上は、図4に示すように、下方から出てくる出力光OutRやOutPを測定する代わりに、上方から出てくる出力光OutR′やOutP′を測定することにより、分光透過率R(λ),P(λ)の測定が可能である。したがって、透過率測定装置400は、一般的な分光放射輝度計(分光反射率測定装置100に用いたものを流用してもよい)などを利用して構成することができる。
【0106】
一方、分光蛍光光度計500は、蛍光成分を含む任意の対象物についての励起スペクトルおよび発光スペクトルを測定する装置として広く利用されている装置であり、用紙を対象物とした測定を行うことにより、用紙の励起スペクトルPE(λ)および用紙の発光スペクトルPL(λ)が得られることになる。なお、予め、種々の用紙についての励起スペクトルPE(λ)および発光スペクトルPL(λ)を測定しておき、その結果を係数演算装置230内にデータとして格納しておくようにすれば、分光蛍光光度計500は、この印刷物の測色装置の構成からは外すことができる。
【0107】
面積率測定装置300は、測定対象領域内の全面積に対するインキ付着領域の面積比Sを測定するための装置である。測定対象となる印刷物が、オフセット印刷で印刷されたものの場合、測定対象領域内のインキ付着領域は、多数の網点の集合によって構成されることになる。このような網点についての面積比Sを測定する装置としては、網点面積率計が広く利用されており、これを面積率測定装置300として用いることができる。面積率測定装置300によって測定された面積比S(網点面積率)は、演算処理装置210へ与えられる。なお、印刷物のもとになったDTPデータなどから、測定対象領域内の網点面積率を認識することができる場合には、認識した網点面積率を直接演算処理装置210に入力するようにすればよい。このような利用形態を採る場合には、面積率測定装置300は、この印刷物の測色装置の構成からは外すことができる。
【0108】
演算処理装置210は、分光反射率測定装置100によって測定された特定の印刷物上における測色対象領域についての分光反射率Rt(λ,S)に対して、記憶装置220内に記憶されている差成分Fp(λ)に基づく補正を行うことにより、この測色対象領域についての第2の光源Uによる照明環境下における推定分光反射率を求める演算を行う。このような演算が、たとえば、式(6) あるいは式(9) に基づいて行われることは、既に述べたとおりである。式(6) は、インキ層を完全な隠蔽層として取り扱う処理を行う場合に適用できる式であり、推定分光反射率Rtu(λ,S)を求めることができる。なお、この式(6) に基づく演算を行う場合には、励起係数CEと発光係数CLとは不要であるので、式(6) に基づく演算のみを実行する測色装置を構成する際には、係数演算装置230、透過率測定装置400、分光蛍光光度計500を設ける必要はない。一方、式(9) は、励起係数CEと発光係数CLとを利用して、インキ層を透過する光を考慮した取り扱いを行う場合に適用できる式であり、推定分光反射率RRtu(λ,S)を求めることができる。
【0109】
この図12に示す印刷物の測色装置は、推定分光反射率を求める装置であるが、§3でも述べたとおり、本発明は、色をXYZ三刺激値として表す場合にも適用可能である。したがって、図12に示す装置を、推定XYZ三刺激値を求める装置として利用することも可能である。この場合、演算処理装置210は、推定分光反射率の代わりに、推定XYZ三刺激値を出力することになる。
【0110】
また、この図12に示す印刷物の測色装置における演算処理装置210、記憶装置220、係数演算装置230は、実際には、コンピュータ200によって構成されている構成要素であり、いずれも上述したような処理を実行するためのプログラムをコンピュータに組み込むことによって実現できる。また、そのようなプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して配付することが可能である。
【0111】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明に係る印刷物の測色方法および測色装置を用いれば、測色時に用いた光源とは異なる光源下で印刷物を観察した場合にも、正しい色の評価基準を提示することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】代表的な蛍光増白剤の励起スペクトルと発光スペクトルを示すグラフである。
【図2】本発明に係る印刷物の測色方法を用いた分光反射率の基本的な測定手順を示す流れ図である。
【図3】用紙10の表面の一部分に、ある程度の光透過率を有するインキ層20が形成されている場合の蛍光発生プロセスを示す側断面図である。
【図4】インキ付着部の分光透過率R(λ)およびインキ非付着部の分光透過率P(λ)を測定する原理を説明する側断面図である。
【図5】図4の入力光InRのスペクトルの一例を示す図である。
【図6】図4の出力光OutRのスペクトルの一例を示す図である。
【図7】図4の出力光OutRの蛍光成分を含んでいるスペクトルの一例を示す図である。
【図8】複数のインキによる網点が重なった場合の取り扱いを説明するための試料の網点を示す平面図である。
【図9】図2に示す流れ図におけるステップS1およびS2の手順を示すダイヤグラムである。
【図10】図2に示す流れ図におけるステップS3およびS4の手順を示すダイヤグラムである。
【図11】4種類の試料について求められた3とおりのスペクトルを比較するためのグラフである。
【図12】本発明の一実施形態に係る印刷物の測色装置の基本構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
10…用紙
20…インキ層
30…試料(印刷物中の測色対象となる一部分の領域)
31…第1の網点
32…第2の網点
100…分光反射率測定装置(分光放射輝度計)
200…コンピュータ
210…演算処理装置
220…記憶装置
230…係数演算装置
300…面積率測定装置
400…透過率測定装置
500…分光蛍光光度計
CE…励起係数
CL…発光係数
d…分子の標準的な深さ位置
Fp(λ)…蛍光増白剤に起因する差成分
h1,h2,h3,h4…スペクトル強度値
I…外部からの光
InR,InP…入力光
M1,M2…蛍光増白剤の分子
OutR,OutP,OutR′,OutP′…出力光
P(λ)…インキ非付着部の分光透過率
Pt(λ)…第1の光源下で測定した用紙の分光反射率
Pu(λ)…第2の光源下で測定した用紙の分光反射率
PE(λ)…用紙の励起スペクトル
PL(λ)…用紙の発光スペクトル
R(λ)…インキ付着部の分光透過率
Rt(λ,S)…第1の光源下で測定した網点面積率Sの試料の分光反射率
Rtu(λ,S),RRtu(λ,S)…第2の光源下で測定した網点面積率Sの試料の推定分光反射率
S…網点面積率
S1〜S43…流れ図の各ステップ
S1,S2,S12,Sp…各領域の面積
λ,λi…波長

Claims (20)

  1. 蛍光増白剤を含む用紙に印刷された印刷物について、所定の照明環境下での分光反射率を求めるための測色方法であって、
    第1の照明環境下における前記用紙の分光反射率Pt(λ)と、第2の照明環境下における前記用紙の分光反射率Pu(λ)と、を測定する第1のステップと、
    前記分光反射率Pu(λ)から前記分光反射率Pt(λ)を減じた差を、前記用紙に関しての蛍光増白剤に起因する差成分Fp(λ)として演算する第2のステップと、
    前記印刷物における測色対象領域について、前記第1の照明環境下における分光反射率Rt(λ)を測定する第3のステップと、
    前記分光反射率Rt(λ)に対して、前記差成分Fp(λ)に基づく補正を行うことにより、前記測色対象領域についての前記第2の照明環境下における推定分光反射率を演算する第4のステップと、
    を有し、
    前記第3のステップで、全面積に対するインキ付着領域の面積比がSであるような測色対象領域について、前記第1の照明環境下における分光反射率 Rt (λ,S)を測定し、
    前記第4のステップで、
    Rtu (λ,S)= Rt (λ,S) + Fp (λ)・(1−S) 2
    なる演算を行うことにより、前記測色対象領域についての前記第2の照明環境下における推定分光反射率 Rtu (λ,S)を求めることを特徴とする印刷物の測色方法。
  2. 蛍光増白剤を含む用紙に印刷された印刷物について、所定の照明環境下での分光反射率を求めるための測色方法であって、
    第1の照明環境下における前記用紙の分光反射率 Pt (λ)と、第2の照明環境下における前記用紙の分光反射率 Pu (λ)と、を測定する第1のステップと、
    前記分光反射率 Pu (λ)から前記分光反射率 Pt (λ)を減じた差を、前記用紙に関しての蛍光増白剤に起因する差成分 Fp (λ)として演算する第2のステップと、
    前記印刷物における測色対象領域について、前記第1の照明環境下における分光反射率 Rt (λ)を測定する第3のステップと、
    前記分光反射率 Rt (λ)に対して、前記差成分 Fp (λ)に基づく補正を行うことにより、前記測色対象領域についての前記第2の照明環境下における推定分光反射率を演算する第4のステップと、
    を有し、
    前記第3のステップで、全面積に対するインキ付着領域の面積比がSであるような測色対象領域について、前記第1の照明環境下における分光反射率 Rt (λ,S)を測定し、
    前記第4のステップで、外部から同一条件で照明した場合に、単位面積あたりの「インキ付着部に供給される励起エネルギーの総量」の「インキ非付着部に供給される励起エネルギーの総量」に対する割合を示す励起係数CEと、用紙内部で同一条件で蛍光放出が行われている場合に、単位面積あたりの「インキ付着部から放出されて観察される発光エネルギーの総量」の「インキ非付着部から放出されて観察される発光エネルギーの総量」に対する割合を示す発光係数CLとを定義し、前記測色対象領域についての励起係数CEと発光係数CLとを測定し、
    RRtu (λ,S)= Rt (λ,S)
    + Fp (λ)・(1−S(1−CE))・(1−S(1−CL))
    なる演算を行うことにより、前記測色対象領域についての前記第2の照明環境下における推定分光反射率 RRtu (λ,S)を求めることを特徴とする印刷物の測色方法。
  3. 蛍光増白剤を含む用紙に印刷された印刷物について、所定の照明環境下での分光反射率を求めるための測色方法であって、
    第1の照明環境下における前記用紙の分光反射率 Pt (λ)と、第2の照明環境下における前記用紙の分光反射率 Pu (λ)と、を測定する第1のステップと、
    前記分光反射率 Pu (λ)から前記分光反射率 Pt (λ)を減じた差を、前記用紙に関しての蛍光増白剤に起因する差成分 Fp (λ)として演算する第2のステップと、
    前記印刷物における測色対象領域について、前記第1の照明環境下における分光反射率 Rt (λ)を測定する第3のステップと、
    前記分光反射率 Rt (λ)に対して、前記差成分 Fp (λ)に基づく補正を行うことにより、前記測色対象領域についての前記第2の照明環境下における推定分光反射率を演算する第4のステップと、
    を有し、
    前記第3のステップで、全面積に対して、第1のインキのみが付着した第1の領域、第2のインキのみが付着した第2の領域、第1のインキと第2のインキとの両方が付着した第3の領域、いずれのインキも付着していない第4の領域、の各面積比が、それぞれS 1 、S 2 、S 12 、S p であるような測色対象領域について、前記第1の照明環境下における分光反射率 Rt (λ,S 1 ,S 2 ,S 12 )を測定し、
    前記第4のステップで、外部から同一条件で照明した場合に、単位面積あたりの「インキ付着部に供給される励起エネルギーの総量」の「インキ非付着部に供給される励起エネルギーの総量」に対する割合を示す励起係数CEと、用紙内部で同一条件で蛍光放出が行われている場合に、単位面積あたりの「インキ付着部から放出されて観察される発光エネルギーの総量」の「インキ非付着部から放出されて観察される発光エネルギーの総量」に対する割合を示す発光係数CLとを定義し、前記第1の領域、前記第2の領域、前記第3の領域のそれぞれについての励起係数CE 1 、CE 2 、CE 12 と、発光係数CL 1 、CL 2 、CL 12 とを測定し、
    RRtu (λ,S 1 ,S 2 ,S 12 )= Rt (λ,S 1 ,S 2 ,S 12
    + Fp (λ)・(S p +S 1 ・CE 1 +S 2 ・CE 2 +S 12 ・CE 12
    ・(S p +S 1 ・CL 1 +S 2 ・CL 2 +S 12 ・CL 12
    なる演算を行うことにより、前記測色対象領域についての前記第2の照明環境下における推定分光反射率 RRtu (λ,S 1 ,S 2 ,S 12 )を求めることを特徴とする印刷物の測色方法。
  4. 請求項2または3に記載の印刷物の測色方法において、
    インキ付着部の分光透過率R(λ)、インキ非付着部の分光透過率P(λ)、用紙の励起スペクトルPE(λ)、用紙の発光スペクトルPL(λ)をそれぞれ測定し、
    CE= R(λ)・PE(λ)dλ
    / P(λ)・PE(λ)dλ
    CL= R(λ)・PL(λ)dλ
    / P(λ)・PL(λ)dλ
    なる式を用いて、当該インキ付着部の励起係数CEと発光係数CLとを求めることを特徴とする印刷物の測色方法。
  5. 蛍光増白剤を含む用紙に印刷された印刷物について、所定の照明環境下での分光反射率を求めるための測色方法であって、
    第1の照明環境下における前記用紙の分光反射率 Pt (λ)と、第2の照明環境下における前記用紙の分光反射率 Pu (λ)と、を測定する第1のステップと、
    前記分光反射率 Pu (λ)から前記分光反射率 Pt (λ)を減じた差を、前記用紙に関しての蛍光増白剤に起因する差成分 Fp (λ)として演算する第2のステップと、
    前記印刷物における測色対象領域について、前記第1の照明環境下における分光反射率 Rt (λ)を測定する第3のステップと、
    前記分光反射率 Rt (λ)に対して、前記差成分 Fp (λ)に基づく補正を行うことにより、前記測色対象領域についての前記第2の照明環境下における推定分光反射率を演算する第4のステップと、
    を有し、
    前記第3のステップで、複数のインキを用いた印刷が行われており、単色のインキのみが付着した領域および複数のインキが重複して付着した領域が混合することにより、全部でnとおりのインキ付着領域が形成されており、第i番目の領域の全面積に対する面積比がS i であるような測色対象領域について、前記第1の照明環境下における分光反射率を 測定し、
    第4のステップで、外部から同一条件で照明した場合に、単位面積あたりの「インキ付着部に供給される励起エネルギーの総量」の「インキ非付着部に供給される励起エネルギーの総量」に対する割合を示す励起係数CEと、用紙内部で同一条件で蛍光放出が行われている場合に、単位面積あたりの「インキ付着部から放出されて観察される発光エネルギーの総量」の「インキ非付着部から放出されて観察される発光エネルギーの総量」に対する割合を示す発光係数CLとを定義し、前記nとおりの各領域のそれぞれについての励起係数CEと発光係数CLとを求め、
    第4のステップでの演算の際に、測色対象領域内の前記nとおりのインキ付着領域に関しては、それぞれについて求めた励起係数CEと発光係数CLとに応じて差成分 Fp (λ)に基づく補正を行うようにし、
    励起係数CEと発光係数CLとを求める際に、インキ付着部の分光透過率R(λ)、インキ非付着部の分光透過率P(λ)、用紙の励起スペクトルPE(λ)、用紙の発光スペクトルPL(λ)をそれぞれ測定し、
    CE= R(λ)・PE(λ)dλ
    / P(λ)・PE(λ)dλ
    CL= R(λ)・PL(λ)dλ
    / P(λ)・PL(λ)dλ
    なる式を用いて、当該インキ付着部の励起係数CEと発光係数CLとを求めることを特徴とする印刷物の測色方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の印刷物の測色方法において、
    第1のステップおよび第3のステップでの測定の際に、完全白色板を用いた分光反射率の測定結果を利用して、用いた照明光の分光強度分布の影響を除外する補正を行うことを特徴とする印刷物の測色方法。
  7. 蛍光増白剤を含む用紙に印刷された印刷物について、所定の照明環境下での XYZ 三刺激値を求めるための測色方法であって、
    第1の照明環境下における用紙の XYZ 三刺激値 Pt (X), Pt (Y), Pt (Z)と、第2の照明環境下における前記用紙の XYZ 三刺激値 Pu (X), Pu (Y), Pu (Z)と、を測定する第1のステップと、
    前記 XYZ 三刺激値 Pu (X), Pu (Y), Pu (Z)から、それぞれ前記 XYZ 三刺激値 Pt (X), Pt (Y), Pt (Z)を減じた差を、前記用紙に関しての蛍光増白剤に起因する差成分 Fp (X), Fp (Y), Fp (Z)として演算する第2のステップと、
    前記印刷物における測色対象領域について、前記第1の照明環境下における XYZ 三刺激値 Rt (X), Rt (Y), Rt (Z)を測定する第3のステップと、
    前記 XYZ 三刺激値 Rt (X), Rt (Y), Rt (Z)に対して、それぞれ前記差成分 Fp (X), Fp (Y), Fp (Z)に基づく補正を行うことにより、前記測色対象領域についての前記第2の照明環境下における推定 XYZ 三刺激値を演算する第4のステップと、
    を有し、
    前記第3のステップで、全面積に対するインキ付着領域の面積比がSであるような測色対象領域について、前記第1の照明環境下における XYZ 三刺激値 Rt (X,S), Rt (Y,S), Rt (Z,S)を測定し、
    前記第4のステップで、
    Rtu (X,S)= Rt (X,S)+ Fp (X)・(1−S) 2
    Rtu (Y,S)= Rt (Y,S)+ Fp (Y)・(1−S) 2
    Rtu (Z,S)= Rt (Z,S)+ Fp (Z)・(1−S) 2
    なる演算を行うことにより、前記測色対象領域についての前記第2の照明環境下における推定 XYZ 三刺激値 Rtu (X,S), Rtu (Y,S), Rtu (Z,S)を求めることを特徴とする印刷物の測色方法。
  8. 蛍光増白剤を含む用紙に印刷された印刷物について、所定の照明環境下での XYZ 三刺激値を求めるための測色方法であって、
    第1の照明環境下における用紙の XYZ 三刺激値 Pt (X), Pt (Y), Pt (Z)と、第2の照明環境下における前記用紙の XYZ 三刺激値 Pu (X), Pu (Y), Pu (Z)と、を測定する第1のステップと、
    前記 XYZ 三刺激値 Pu (X), Pu (Y), Pu (Z)から、それぞれ前記 XYZ 三刺激値 Pt (X), Pt (Y), Pt (Z)を減じた差を、前記用紙に関しての蛍光増白剤に起因する差成分 Fp (X), Fp (Y), Fp (Z)として演算する第2のステップと、
    前記印刷物における測色対象領域について、前記第1の照明環境下における XYZ 三刺激値 Rt (X), Rt (Y), Rt (Z)を測定する第3のステップと、
    前記 XYZ 三刺激値 Rt (X), Rt (Y), Rt (Z)に対して、それぞれ前記差成分 Fp (X), Fp (Y), Fp (Z)に基づく補正を行うことにより、前記測色対象領域についての前記第2の照明環境下における推定 XYZ 三刺激値を演算する第4のステップと、
    を有し、
    前記第3のステップで、全面積に対するインキ付着領域の面積比がSであるような測色対象領域について、前記第1の照明環境下における XYZ 三刺激値 Rt (X,S), Rt (Y,S), Rt (Z,S)を測定し、
    前記第4のステップで、外部から同一条件で照明した場合に、単位面積あたりの「インキ付着部に供給される励起エネルギーの総量」の「インキ非付着部に供給される励起エネルギーの総量」に対する割合を示す励起係数CEと、用紙内部で同一条件で蛍光放出が行われている場合に、単位面積あたりの「インキ付着部から放出されて観察される発光エネルギーの総量」の「インキ非付着部から放出されて観察される発光エネルギーの総量」に対する割合を示す発光係数CLとを定義し、前記測色対象領域についての励起係数CEと発光係数CLとを測定し、
    RRtu (X,S)= Rt (X,S)+ Fp (X)・
    (1−S(1−CE))・(1−S(1−CL))
    RRtu (Y,S)= Rt (Y,S)+ Fp (Y)・
    (1−S(1−CE))・(1−S(1−CL))
    RRtu (Z,S)= Rt (Z,S)+ Fp (Z)・
    (1−S(1−CE))・(1−S(1−CL))
    なる演算を行うことにより、前記測色対象領域についての前記第2の照明環境下における推定 XYZ 三刺激値 RRtu (X,S), RRtu (Y,S), RRtu (Z,S)を求めることを特徴とする印刷物の測色方法。
  9. 請求項8に記載の印刷物の測色方法において、
    インキ付着部の分光透過率R(λ)、インキ非付着部の分光透過率P(λ)、用紙の励起スペクトルPE(λ)、用紙の発光スペクトルPL(λ)をそれぞれ測定し、
    CE= R(λ)・PE(λ)dλ
    / P(λ)・PE(λ)dλ
    CL= R(λ)・PL(λ)dλ
    / P(λ)・PL(λ)dλ
    なる式を用いて、当該インキ付着部の励起係数CEと発光係数CLとを求めることを特徴とする印刷物の測色方法。
  10. 蛍光増白剤を含む用紙に印刷された印刷物について、所定の照明環境下での XYZ 三刺激値を求めるための測色方法であって、
    第1の照明環境下における用紙の XYZ 三刺激値 Pt (X), Pt (Y), Pt (Z)と、第2の照明環境下における前記用紙の XYZ 三刺激値 Pu (X), Pu (Y), Pu (Z)と、を測定する第1のステップと、
    前記 XYZ 三刺激値 Pu (X), Pu (Y), Pu (Z)から、それぞれ前記 XYZ 三刺激値 Pt (X), Pt (Y), Pt (Z)を減じた差を、前記用紙に関しての蛍光増白剤に起因する差成分 Fp (X), Fp (Y), Fp (Z)として演算する第2のステップと、
    前記印刷物における測色対象領域について、前記第1の照明環境下における XYZ 三刺激値 Rt (X), Rt (Y), Rt (Z)を測定する第3のステップと、
    前記 XYZ 三刺激値 Rt (X), Rt (Y), Rt (Z)に対して、それぞれ前記差成分 Fp (X), Fp (Y), Fp (Z)に基づく補正を行うことにより、前記測色対象領域についての前記第2の照明環境下における推定 XYZ 三刺激値を演算する第4のステップと、
    を有し、
    前記第3のステップで、複数のインキを用いた印刷が行われており、単色のインキのみが付着した領域および複数のインキが重複して付着した領域が混合することにより、全部でnとおりのインキ付着領域が形成されており、第i番目の領域の全面積に対する面積比がS i であるような測色対象領域について、前記第1の照明環境下における XYZ 三刺激値を測定し、
    前記第4のステップで、外部から同一条件で照明した場合に、単位面積あたりの「インキ付着部に供給される励起エネルギーの総量」の「インキ非付着部に供給される励起エネルギーの総量」に対する割合を示す励起係数CEと、用紙内部で同一条件で蛍光放出が行われている場合に、単位面積あたりの「インキ付着部から放出されて観察される発光エネルギーの総量」の「インキ非付着部から放出されて観察される発光エネルギーの総量」に対する割合を示す発光係数CLとを定義し、前記nとおりの各領域のそれぞれについての励起係数CEと発光係数CLとを求め、
    前記第4のステップでの演算の際に、測色対象領域内の前記nとおりのインキ付着領域に関しては、それぞれについて求めた励起係数CEと発光係数CLとに応じて差成分 Fp (X), Fp (Y), Fp (Z)に基づく補正を行うようにし、
    励起係数CEと発光係数CLとを求める際に、インキ付着部の分光透過率R(λ)、インキ非付着部の分光透過率P(λ)、用紙の励起スペクトルPE(λ)、用紙の発光スペクトルPL(λ)をそれぞれ測定し、
    CE= R(λ)・PE(λ)dλ
    / P(λ)・PE(λ)dλ
    CL= R(λ)・PL(λ)dλ
    / P(λ)・PL(λ)dλ
    なる式を用いて、当該インキ付着部の励起係数CEと発光係数CLとを求めることを特徴とする印刷物の測色方法。
  11. 請求項7〜10のいずれかに記載の印刷物の測色方法において、
    第1のステップおよび第3のステップにおいて、測定により得られた分光反射率を用いた演算により XYZ 三刺激値を求めることを特徴とする印刷物の測色方法。
  12. 蛍光増白剤を含む用紙に印刷された印刷物について、所定の照明環境下での分光反射率を求めるための測色装置であって、
    第1の照明環境下で測定対象物の分光反射率を測定する分光反射率測定装置と、
    第1の照明環境下における特定の用紙の分光反射率 Pt (λ)を、第2の照明環境下における前記特定の用紙の分光反射率 Pu (λ)から減じて得られる差成分 Fp (λ)を記憶する記憶装置と、
    前記分光反射率測定装置によって測定された、前記特定の用紙を用いた印刷物上における測色対象領域についての分光反射率 Rt (λ)に対して、前記差成分 Fp (λ)に基づく補正を行うことにより、前記測色対象領域についての前記第2の照明環境下における推定分光反射率を演算する演算処理装置と、
    を備え、
    前記演算処理装置が、測定対象領域内の全面積に対するインキ付着領域の面積比Sを入力する機能を有し、前記分光反射率測定装置によって測定された前記測色対象領域についての分光反射率 Rt (λ,S)に対して、
    Rtu (λ,S)= Rt (λ,S) + Fp (λ)・(1−S) 2
    なる演算を行うことにより、前記測色対象領域についての前記第2の照明環境下における推定分光反射率 Rtu (λ,S)を求めることを特徴とする印刷物の測色装置。
  13. 請求項12に記載の印刷物の測色装置において、
    測定対象領域内の全面積に対するインキ付着領域の面積比Sを測定するための面積率測 定装置を更に備えることを特徴とする印刷物の測色装置。
  14. 蛍光増白剤を含む用紙に印刷された印刷物について、所定の照明環境下での分光反射率を求めるための測色装置であって、
    第1の照明環境下で測定対象物の分光反射率を測定する分光反射率測定装置と、
    第1の照明環境下における特定の用紙の分光反射率Pt(λ)を、第2の照明環境下における前記特定の用紙の分光反射率Pu(λ)から減じて得られる差成分Fp(λ)を記憶する記憶装置と、
    前記分光反射率測定装置によって測定された、前記特定の用紙を用いた印刷物上における測色対象領域についての分光反射率Rt(λ)に対して、前記差成分Fp(λ)に基づく補正を行うことにより、前記測色対象領域についての前記第2の照明環境下における推定分光反射率を演算する演算処理装置と、
    を備え、
    前記演算処理装置が、測定対象領域に関して、全面積に対するインキ付着領域の面積比Sと、外部から同一条件で照明した場合に、単位面積あたりの「インキ付着部に供給される励起エネルギーの総量」の「インキ非付着部に供給される励起エネルギーの総量」に対する割合を示す励起係数CEと、用紙内部で同一条件で蛍光放出が行われている場合に、単位面積あたりの「インキ付着部から放出されて観察される発光エネルギーの総量」の「インキ非付着部から放出されて観察される発光エネルギーの総量」に対する割合を示す発光係数CLと、を入力する機能を有し、前記分光反射率測定装置によって測定された前記測色対象領域についての分光反射率Rt(λ,S)に対して、
    RRtu(λ,S)=Rt(λ,S)
    + Fp(λ)・(1−S(1−CE))・(1−S(1−CL))
    なる演算を行うことにより、前記測色対象領域についての前記第2の照明環境下における推定分光反射率RRtu(λ,S)を求めることを特徴とする印刷物の測色装置
  15. 請求項14に記載の印刷物の測色装置において、
    測定対象領域内の全面積に対するインキ付着領域の面積比Sを測定するための面積率測定装置と、
    測定対象領域内のインキ付着部の分光透過率R(λ)およびインキ非付着部の分光透過率P(λ)を測定する透過率測定装置と、
    前記透過率測定装置によって測定された前記分光透過率R(λ)および前記分光透過率P(λ)と、用紙の励起スペクトルPE(λ)および用紙の発光スペクトルPL(λ)とを用いて、
    CE= R(λ)・PE(λ)dλ
    / P(λ)・PE(λ)dλ
    CL= R(λ)・PL(λ)dλ
    / P(λ)・PL(λ)dλ
    なる演算により当該インキ付着部の励起係数CEと発光係数CLとを求める係数演算装置と、
    を更に備え、演算処理装置が前記係数演算装置により求められた励起係数CEと発光係数CLとを利用して演算を実行することを特徴とする印刷物の測色装置。
  16. 請求項15に記載の印刷物の測色装置において、
    用紙の励起スペクトルPE(λ)および用紙の発光スペクトルPL(λ)を測定するための分光蛍光光度計を更に備え、係数演算装置が、前記分光蛍光光度計によって測定された用紙の励起スペクトルPE(λ)および用紙の発光スペクトルPL(λ)を用いて励起係数CEおよび発光係数CLを求める演算を行うことを特徴とする印刷物の測色装置。
  17. 請求項12〜16のいずれかに記載の印刷物の測色装置において、
    演算処理装置が、所定の分光反射率に基づいて、 XYZ 三刺激値を演算する機能を有し、測色対象領域についての第2の照明環境下における推定 XYZ 三刺激値を演算することを特徴とする印刷物の測色装置。
  18. 請求項17に記載の印刷物の測色装置において、
    記憶装置が、差成分 Fp (λ)を XYZ 三刺激値の形式で記憶しており、
    演算処理装置が、前記 XYZ 三刺激値の形式で記憶された差成分を用いた演算を行うことを特徴とする印刷物の測色装置。
  19. 請求項12〜18のいずれかに記載の印刷物の測色装置における演算処理装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
  20. 請求項12〜18のいずれかに記載の印刷物の測色装置における演算処理装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
JP2001338092A 2000-11-06 2001-11-02 印刷物の測色方法および測色装置 Expired - Fee Related JP3862997B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001338092A JP3862997B2 (ja) 2000-11-06 2001-11-02 印刷物の測色方法および測色装置

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000-338134 2000-11-06
JP2000338134 2000-11-06
JP2001338092A JP3862997B2 (ja) 2000-11-06 2001-11-02 印刷物の測色方法および測色装置

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2002202191A JP2002202191A (ja) 2002-07-19
JP2002202191A5 JP2002202191A5 (ja) 2005-07-14
JP3862997B2 true JP3862997B2 (ja) 2006-12-27

Family

ID=26603483

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001338092A Expired - Fee Related JP3862997B2 (ja) 2000-11-06 2001-11-02 印刷物の測色方法および測色装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3862997B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7259853B2 (en) * 2004-12-22 2007-08-21 Xerox Corporation Systems and methods for augmenting spectral range of an LED spectrophotometer
JP4725190B2 (ja) * 2005-05-25 2011-07-13 凸版印刷株式会社 色情報処理方法および色情報処理装置ならびにそのプログラム
JP5239442B2 (ja) * 2008-03-25 2013-07-17 コニカミノルタオプティクス株式会社 蛍光試料の光学特性測定方法および装置
JP5677123B2 (ja) * 2011-02-15 2015-02-25 キヤノン株式会社 色処理装置および色処理方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2002202191A (ja) 2002-07-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4660691B2 (ja) 蛍光試料の光学特性測定方法及びこれを用いた光学特性測定装置
US6671050B2 (en) Color measuring method and device for printed matter
JP5239442B2 (ja) 蛍光試料の光学特性測定方法および装置
JP2008541179A (ja) 多色画像、特に顕微鏡多色透過画像におけるスペクトル重畳またはカラー重畳画像寄与の分離
US20110205568A1 (en) Imaging Device Calibration System And Method
EP1489831B1 (en) Color management system using distributed profiles for color printing systems
US7738148B2 (en) Techniques for predicting colorimetric measurements of mixed subtractive colors
JP5727282B2 (ja) オーバープリントの予測方法
US7830514B2 (en) Color measurement systems and methods addressing effects of ultra-violet light
JP3862997B2 (ja) 印刷物の測色方法および測色装置
JP4483496B2 (ja) 分光反射率予測装置及び分光反射率予測方法
JPH10176953A (ja) 測色値の測定方法
EP1305471A1 (en) Modeling a coloring process
US20210109016A1 (en) Spectrophotometric measurement estimation
JP2001174334A (ja) 測色装置、測色方法、係数算出方法、係数算出装置、および係数算出プログラム記憶媒体
Chaikovsky et al. Effects of Optical Brightening Agents on Color Reproduction in Digital Printing
JPWO2018173680A1 (ja) 蛍光増白試料の分光放射特性の測定方法、および、蛍光増白試料の分光放射特性の測定装置
JP5456053B2 (ja) 色処理装置および色処理方法
Imura Impacts of spectral variations in multiwavelength excitation method on measurements of fluorescently whitened papers
Gill Estimating illuminant UV without a UV capable instrument
Imura Practical method for measuring printed colors on FWA‐treated paper
Collado-Montero et al. A colorimetric characterization and assessment of the chromatic deterioration of the medieval manuscript Registro Notarial de Torres in the Archives of the Royal Chancellery in Granada, Spain
Cheydleur et al. Successful Color Management of Paper with Optical Brighteners
Millward Color managing for papers containing optical brightening agents
Howison et al. Fluorescent transfer of light in dyed materials

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20041022

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20041111

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20060516

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060530

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060726

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060822

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060823

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20060926

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20060927

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091006

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101006

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111006

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121006

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131006

Year of fee payment: 7

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees