JP3860400B2 - 押し通し曲げ加工システム - Google Patents
押し通し曲げ加工システム Download PDFInfo
- Publication number
- JP3860400B2 JP3860400B2 JP2000259498A JP2000259498A JP3860400B2 JP 3860400 B2 JP3860400 B2 JP 3860400B2 JP 2000259498 A JP2000259498 A JP 2000259498A JP 2000259498 A JP2000259498 A JP 2000259498A JP 3860400 B2 JP3860400 B2 JP 3860400B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- specified
- axis
- long material
- bending
- cross
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Bending Of Plates, Rods, And Pipes (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固定型および可動型を相次いで通過する長尺材に、固定型に対する可動型の相対変位を通じて曲げ加工を施すことができる押し通し曲げ加工機に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、押し通し曲げ加工機は、固定型と、この固定型の前方に配置されて、固定型に対して相対的に変位する可動型とを備える。例えばアルミニウム製形材が固定型および可動型を相次いで通過する間に、形材の進行方向に直交する平面内で可動型が移動すると、形材に曲げ変形(塑性変形)が引き起こされる。こうした押し通し曲げ加工機では、1平面に沿った可動型の移動を通じて、2次元や3次元を問わず様々な曲がり具合の曲げ加工が形材に対して比較的に簡単に実現されることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一般の工作機と同様に、押し通し曲げ加工機の動作はNC(数値制御)コントローラによって制御されることができる。NCコントローラは、形材の送りや可動型の動きを制御するにあたって、形材の送り位置ごとに特定される可動型の位置を表現する制御データを取得する。こうした制御データでは、一般に、熟練した作業者の勘や経験則に基づき可動型の位置は決定される。こうして決定された可動型の位置に基づき製品の試作が繰り返され、試作が実施されるたびに可動型の位置は修正される。こうした試作が数十回と繰り返される結果、最終的に、所望どおりに曲げ変形を実現することができる可動型の位置は確立される。
【0004】
例えば特開平9−327727号公報や特開平10−166064号公報には、熟練した作業者の勘や経験則に頼らずに可動型の位置を特定する試みが開示される。これらの試みによれば、最初の試作の段階で大まかに最終形状に似通った試作品が形成されることができる。したがって、最初から作業者の勘や経験則に頼る必要はなく、試作や制御データの書き換えに対する労力や手間は軽減される。
【0005】
その一方で、これら公報に開示される方法では、可動型の位置を算出するにあたって三次元座標系のx座標軸が用いられる。このx座標軸によって形材の進行方向すなわち軸心は特定される。可動型の移動平面はこのx座標軸に直交する。しかしながら、実際には、曲げ変形が施された形材の軸心は1本の直線によって画一的に表現されることはできない。したがって、x座標軸に可動型の移動平面を直交させても、可動型の移動平面は必ずしも正確に押し通し曲げ加工機の機械座標系を反映することはできない。その結果、こうした移動平面上で可動型の位置が特定されても、一般的な実用に耐えられる程度まで加工後の形状精度は高められることはできない。
【0006】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、高い精度で押し通し曲げ加工を実現することが可能な押し通し曲げ加工システムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明によれば、固定型および可動型を相次いで通過する長尺材に曲げ加工を施し長尺製品を作り出す押し通し曲げ加工機と、全体座標系に従って長尺製品の形状を表現する形状データを取得する入力装置と、形状データで規定される長尺製品の三次元像上で長尺製品の断面ごとに設定される局部座標系に基づき可動型の位置を特定する演算処理装置と、特定された可動型の位置に基づき可動型の動きを制御するコントローラとを備えることを特徴とする押し通し曲げ加工システムが提供される。
【0008】
かかる押し通し曲げ加工システムによれば、長尺製品の断面に設定される局部座標系では、固定型から前方に延びる長尺製品が再現されることができる。この局部座標系上で長尺製品に対して可動型が仮想的に重ね合わせられると、可動型の位置は局部座標系上で特定されることができる。この可動型の位置は、固定型と可動型との間で形成される長尺製品の曲げ変形を反映したものとなる。こうして特定される可動型の位置に基づき可動型の動きが制御されると、長尺製品の形状を正確に反映した理想的な可動型の移動を実現することが可能となる。
【0009】
前記演算処理装置は、前記長尺材の送り位置の変化に応じて前記可動型の移動を表現する変動曲線を算出してもよい。こうした変動曲線が描き出されると、実際の曲げ加工に先立って押し通し曲げ加工機の動作の実現可能性は判定されることができる。
【0010】
また、前記演算処理装置は、前記長尺材の送り位置の変化に応じて前記可動型の姿勢変化を表現する変動曲線を算出してもよい。こうした変動曲線が描き出されると、同様に、実際の曲げ加工に先立って押し通し曲げ加工機の動作の実現可能性は判定されることができる。
【0011】
さらに、前記演算処理装置は、前記長尺材の送り位置の変化に応じて加工後の長尺材の曲率変化を表現する変動曲線を算出してもよい。こうした変動曲線が描き出されると、作業者は、曲げ変形が加えられる長尺製品の仕上がり形状を予め確認することが可能となる。
【0012】
そうした一方で、前記演算処理装置は、隣接する局部座標系同士の間で特定される前記長尺製品の軸心回り捻れ角に基づき固定型および可動型の間で確立される軸心回り相対回転角を同時に算出してもよい。
【0013】
押し通し曲げ加工機を用いて長尺材に捻れ変形を加えるにあたっては、固定型および可動型のいずれか一方が長尺材の軸心回りで回転すればよい。こうした回転によれば、固定型および可動型の間で長尺材に捻れ変形が引き起こされる。このとき、固定型および可動型の間で確立される軸心回り相対回転角は、例えば固定型および可動型の間で特定される距離と、同様に固定型および可動型の間で軸心方向に分布する軸心回り比捻れ角とに基づき算出されることができる。軸心回り比捻れ角は、隣接する局部座標系同士の間で特定される長尺製品の軸心回り捻れ角に基づき算出されることができる。導き出された軸心回り相対回転角に基づき軸心回りで固定型や可動型の回転が制御されれば、比較的に高い精度で長尺材に捻れ変形を加えることが可能となる。
【0014】
この場合には、前記演算処理装置は、前記長尺材の送り位置の変化に応じて前記軸心回り回転角の変化を表現する変動曲線を算出してもよい。こうした変動曲線が描き出されると、実際の捻り加工に先立って押し通し曲げ加工機の動作の実現可能性は判定されることができる。
【0015】
前記形状データは、例えばFD(フロッピーディスク)やCD(コンパクトディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)といった可搬性の記録媒体を通じて入力装置に取り込まれてもよく、LAN(構内通信網)やWAN(広域通信網)、インターネットといったネットワークを通じて入力装置に取り込まれてもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0017】
図1は押し通し曲げ加工機の全体構成を概略的に示す。この押し通し曲げ加工機10は、長尺材11の前進移動を案内する前後1対の第1および第2型すなわち固定型12および可動型13と、固定型12および可動型13に向かって長尺材11を送り込む送り機構14とを備える。こうした押し通し曲げ加工機10では、後述されるように、長尺材11の進行方向に直交する平面内で可動型13が移動すると、長尺材11に曲げ変形(塑性変形)が引き起こされる。
【0018】
送り機構14は、例えば長尺材11の後端に接触する押し金すなわちスライダ15と、送りモータ16の回転力をスライダ15の推進力に変換するねじ軸17とを備える。送りモータ16の働きを通じてねじ軸17が順方向に回転すると、その回転に応じてスライダ15は前進し、ねじ軸17が逆方向に回転すると、スライダ15は後退することができる。スライダ15の前進は長尺材11の前進を引き起こす。スライダ15の前進量すなわち長尺材11の送り量はねじ軸17の回転量すなわち送りモータ16の回転量に応じて決定されることができる。送りモータ16にはいわゆるサーボモータが用いられればよい。
【0019】
こうした押し通し曲げ加工機10では、中実の長尺材や中空の長尺材11が加工されることができる。中空の長尺材11は、例えばアルミニウム製の押し出し材すなわち形材や鉄製のパイプ材に代表されることができる。一般に、長尺材11ではその全長にわたって共通の断面形状が規定される。ただし、断面形状は長尺材11の全長にわたって常に一定である必要は必ずしもない。
【0020】
前述の送り機構14や固定型12はいわゆる振り子部材19に支持される。振り子部材19の円柱形外周面は、図2から明らかなように、半円筒面に沿って配置される軸受け20を通じて支持台21に支持される。こうした振り子部材19の働きによれば、長尺材11は、固定型12とともに固定型12の中心軸22回りで回転することができる。こうした回転は、後述されるように、例えば長尺材11の軸心回りで固定型12と可動型13との間に相対回転を生み出す。この相対回転は長尺材11の軸心回りで長尺材11に捻れ変形を引き起こす。振り子部材19の回転は、例えばサーボモータで構成される駆動モータ23の働きを通じて実現されればよい。
【0021】
図2に示されるように、固定型12には、長尺材11の外形を象った貫通孔24が形成される。この貫通孔24によって長尺材11の前進移動は案内される。長尺材11の断面形状は、図2に示される貫通孔24から明らかなように、円形や楕円形、三角形その他の多角形といった単純な形状であってもよいばかりでなく、その他の複雑な形状であっても差し支えない。貫通孔24の形状は長尺材11の断面形状に合わせ込まれればよい。
【0022】
図2から明らかなように、中空の長尺材11が加工される場合には、固定型12に囲まれる長尺材11の中空空間には芯金すなわち中子25が差し込まれることが望ましい。周知のように、こうした押し通し曲げ加工機10では、固定型12側貫通孔24の出口付近で最も大きな曲げ応力が長尺材11に作用する。このとき、長尺材11が中空であると、貫通孔24の縁で長尺材11の断面形状が押し潰されることがある。その結果、長尺材11に対する曲げ変形の変形量に大きな誤差が生じたり長尺材11の外周面に不要な窪みが形成されたりしてしまう。長尺材11の内側から中子25が接触すれば、こうした長尺材11の押し潰しはできる限り回避されることができる。
【0023】
図1から明らかなように、中子25には、中子25を前後移動させる制御モータ26が連結される。この制御モータ26の働きによって中子25は長尺材11に対して出し入れされる。しかも、本実施形態では、固定型12の中心軸22回りで中子25を回転させる制御モータ27が中子25に連結される。この制御モータ27は、前述のように振り子部材19の回転に伴って固定型12が中心軸22回りに回転すると、この回転に応じて中子25を中心軸22回りに回転させることができる。制御モータ26、27には例えばサーボモータが用いられればよい。
【0024】
図1および図3を参照し、可動型13には、固定型12と同様に、長尺材11の外形を象った貫通孔28が形成される。この貫通孔28によって長尺材11の前進移動は案内される。この貫通孔28の形状は例えば固定型12側貫通孔24の形状に一致することが望ましい。
【0025】
可動型13は、固定型12の中心軸22の延長線に直交する移動平面内で移動することができる。可動型13の移動は、例えば上下動部材29の上下動と水平動部材30の水平動との組み合わせによって実現される。上下動部材29は、上下方向すなわち垂直方向に変位自在に水平動部材30に案内される。同時に、水平動部材30は、水平方向に変位自在に案内部材31に支持される。上下動部材29の変位は例えば上下動モータ32の働きによって実現されればよく、水平動部材30の変位は例えば水平動モータ33の働きによって実現されればよい。例えば、上下動モータ32や水平動モータ33は、微小な回転角で回転軸の回転量を制御することができるサーボモータその他の駆動源から構成されればよい。
【0026】
しかも、この可動型13は、前述の移動平面でその位置を変えながらその姿勢を変化させることができる。こうした可動型13の姿勢変化は、垂直方向に延びる回転軸34が形成された回転部材35や、水平方向に延びる1対の揺動軸36が形成された揺動部材37の働きを通じて実現される。上下動部材29に形成された支持孔38に回転軸34が受け止められると、回転部材35は垂直軸回りで回転することができる。その一方で、回転部材35に形成される支持孔39に2つの揺動軸36が受け止められると、揺動部材37は水平軸回りで揺動することができる。回転部材35の回転や揺動部材37の揺動は、個々に、例えばサーボモータで構成される駆動モータ(図示せず)の働きによって実現されればよい。ここでは、揺動軸36の揺動中心は中心軸22の延長線上で回転軸34の回転中心に直交することが望ましい。
【0027】
図4は、以上のような押し通し曲げ加工機10が組み込まれた押し通し曲げ加工システム41の全体構成を概略的に示す。この押し通し曲げ加工システム41では、押し通し曲げ加工機10の動作はNC(数値制御)コントローラ42によって制御される。この制御を実現するにあたって、NCコントローラ42は、例えば図5に示されるように押し通し曲げ加工機10に対して三次元機械座標系xyzを設定する。この機械座標系xyzは、例えば固定型12の中心軸22に重なり合うz座標軸と、貫通孔24の出口が臨む1平面上で固定型12の水平方向および垂直方向をそれぞれ規定するx座標軸およびy座標軸とを備える。中心軸22回りで特定される固定型12の姿勢すなわち軸心回り回転角は機械座標系xyzに従って指定されるz軸回り回転角Cによって特定されることができる。
【0028】
可動型13の移動平面HVは、機械座標系xyzのxy平面に平行な姿勢に保持されることが望ましい。こうした移動平面HVの設定によれば、可動型13の位置は、機械座標系xyzに従って指定されるx座標値やy座標値によって簡単に特定されることができる。このとき、可動型13のz座標値は、いわゆるアプローチ距離すなわち固定型12および可動型13間の距離に基づき特定されればよい。このアプローチ距離は可動型13の移動に拘わらず一定に保持される。
【0029】
例えば可動型13の移動平面HVと中心軸22の延長線(機械座標系xyzのz座標軸)との交点は可動型13の基準位置に設定されることができる。この基準位置に可動型13が位置決めされると、2つの貫通孔24、28を相次いで通過する長尺材11には移動平面HVに沿った可動型13の拘束力は加えられない。すなわち、真っ直ぐな長尺材11は直進し、このとき長尺材11にはいかなる曲げ変形も引き起こされない。こうして可動型13の基準位置が特定されると、可動型13の姿勢は、例えば機械座標系xyzに従って指定されるy軸(V軸)回り回転角Bやx軸(H軸)回り回転角Aによって特定されることができる。しかも、可動型13の基準位置が確立されると固定型12の中心軸22によって長尺材11の軸心は特定される。
【0030】
再び図4を参照し、NCコントローラ42には、エンジニアリングワークステーション(EWS)やパーソナルコンピュータ(パソコン)といったコンピュータ装置43で作成されたNC加工プログラムが供給される。このNC加工プログラムには、例えば長尺材11の送り位置すなわち送り量ごとに関連付けられた可動型13の位置や姿勢、軸心回りの固定型12の姿勢といった制御データが規定される。前述の機械座標系xyzに従って可動型13のx座標値やy座標値が指定されると、NCコントローラ42は、そういったx座標値やy座標値を確立する水平動モータ33や上下動モータ32の回転量を規定する駆動指令値を押し通し曲げ加工機10に向けて出力する。機械座標系xyzに従って可動型13のy軸回り回転角Bやx軸回り回転角Aが指定されると、NCコントローラ42は、これら回転角を確立する回転部材35や揺動部材37の回転を引き起こす駆動モータの駆動指令値を押し通し曲げ加工機10に向けて出力する。さらに、機械座標系xyzに従って固定型12のz軸回り回転角Cが指定されると、NCコントローラは、このz軸回り回転角Cを確立する振り子部材19の回転を引き起こす駆動モータ23の駆動指令値を押し通し曲げ加工機10に向けて出力する。
【0031】
コンピュータ装置43には、単一の全体座標系XYZに従って長尺製品の形状を表現する形状データが供給される。こうした形状データは、例えばFD(フロッピーディスク)44やCD(コンパクトディスク)45、DVD(デジタルビデオディスク)、その他の可搬性記録媒体からコンピュータ装置43に取り込まれてもよく、LAN(構内通信網)やWAN(広域通信網)、インターネットといったネットワーク46を通じてコンピュータ装置43に取り込まれてもよい。
【0032】
例えばネットワーク46を通じて形状データがコンピュータ装置43に取り込まれる場合には、形状データは、サーバコンピュータ47に構築される製品データベースに蓄積されればよい。製品データベースには、例えばCAD(コンピュータ支援設計)用端末48上で設計された製品のCADデータが格納されることができる。こうしたCADデータは、前述と同様に、例えばFD(フロッピーディスク)やCD(コンパクトディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)、その他の可搬性記録媒体から製品データベースに取り込まれてもよく、無線や有線を問わずネットワーク49を通じて製品データベースに取り込まれてもよい。
【0033】
コンピュータ装置43は、図6に示されるように、例えばCADシステムを実現する中央演算処理装置(CPU)51を備える。このCPU51には、形状データをCPU51に受け渡す入出力装置52が接続される。入出力装置52は、例えばネットワーク46を通じてサーバコンピュータ47から形状データを取得する。その他、入出力装置52は、フロッピーディスク駆動装置(FDD)53でFD44から読み出される形状データを取得してもよく、CD−ROM駆動装置54でCD45から読み出される形状データを取得してもよい。
【0034】
ディスプレイ装置55は、形状データで表現される長尺製品の二次元像や三次元像のほか、CADシステムを実現するにあたって必要とされるテキストデータといった文字情報を画面上に映し出すことができる。そういった二次元像や三次元像、その他の画像の表示は駆動回路56の働きによって実現される。駆動回路56は、CPU51から受け取る指令に従ってディスプレイ装置55の画面上に画像を映し出す。
【0035】
CPU51は、入出力装置52から受け取った形状データを管理する形状データ管理モジュール58を備える。この形状データ管理モジュール58の働きによれば、形状データで特定される長尺製品の二次元像や三次元像といった画像情報が駆動回路56に受け渡されることができる。
【0036】
材料特性データ管理モジュール59は、長尺材11の応力歪み曲線といった材料特性を表現する材料特性データを取得する。断面形状特性データ管理モジュール60は、形状データで特定される長尺製品の断面形状に基づき、断面の重心位置や断面二次モーメント、断面相乗モーメント、断面二次極モーメントといった断面形状特性を算出する。さらに、加工条件データ管理モジュール61は、固定型12および可動型13の間に規定されるアプローチ距離や長尺材11の送り速度といった加工条件を表現する加工条件データを取得する。材料特性データを含むデータファイルや、算出された断面形状特性を表現する断面形状特性データを含むデータファイル、加工条件データを含むデータファイルは、入出力装置52を通じてハードディスク駆動装置(HDD)62に格納される。材料特性や加工条件の取得、断面形状特性の算出にあたっては、後述されるように、入出力装置52に接続されるキーボード63やマウス(図示せず)の操作が用いられればよい。
【0037】
NCプログラム生成モジュール64は、HDD62に格納される各種のデータファイルに基づきNC加工プログラムを作成する。作成されたNC加工プログラムはデータファイルの形で例えばHDD62に格納される。HDD62に格納されたNC加工プログラムは、最終的に、入出力装置52を通じてNCコントローラ42に供給される。作成されたNC加工プログラムはディスプレイ装置55の画面上に表示されることができる。
【0038】
NCプログラム検証モジュール65は、NCプログラム生成モジュール64で作成されたNC加工プログラムを検証する。この検証にあたって、NCプログラム検証モジュール65は、機械座標系xyzに従って可動型13の位置を特定するx座標値およびy座標値の変動曲線や、機械座標系xyzに従って可動型13の姿勢を特定するy軸回り回転角Bおよびx軸回り回転角Aの変動曲線、同様に機械座標系xyzに従って中心軸22回りで固定型12の姿勢を特定するz軸回り回転角Cの変動曲線を算出する。各変動曲線では、長尺材11の送り位置の変化に応じて、可動型13の移動や姿勢変化、固定型12の姿勢変化すなわち軸心回り回転角の変化が表現される。その他、NCプログラム検証モジュール65は、長尺材11の送り位置の変化に応じて加工後の長尺材11の曲率変化を表現する変動曲線を算出してもよい。こうして算出される変動曲線は、駆動回路56の働きを借りてディスプレイ装置55の画面上に描き出されることができる。
【0039】
NCプログラム生成モジュール64は、例えば図7に示されるように、断面形状特性データで特定される断面の重心位置と、形状データで特定される長尺製品の三次元像とに基づき長尺製品の重心線を生成する重心線抽出モジュール71を備える。重心線は、長尺製品の全長にわたって各断面で特定される重心の位置を特定する。ノット位置特定モジュール72は、例えばベジエ曲線やBスプライン曲線、NURBS(非一様有理Bスプライン)曲線といったパラメトリック曲線で表現される重心線上でノットを特定する。ノットの概念の詳細は後述される。
【0040】
局部座標系設定モジュール73は、重心線上で特定されるノットごとに、長尺製品の三次元像に対して局部座標系すなわち機械座標系xyzを設定する。この設定にあたって、局部座標系設定モジュール73は、長尺製品の各断面に各機械座標系xyzのxy座標平面を重ね合わせる。
【0041】
第1制御データ算出モジュール74は、長尺製品の各断面に設定された機械座標系xyzと重心線とに基づき可動型13の位置や姿勢を特定する制御データを算出する。可動型13の位置は各機械座標系xyzに従ってx座標値およびy座標値で特定される。可動型13の姿勢は各機械座標系xyzに従ってy軸回り回転角Bおよびx軸回り回転角Aで特定される。
【0042】
曲げモーメント算出モジュール75は、各機械座標系xyzごとに特定される可動型13の位置に基づき各機械座標系xyzごとに長尺製品の曲げモーメントを算出する。この算出にあたって、曲げモーメント算出モジュール75は、材料特性データで特定される長尺材11の応力歪み曲線を参照する。第1制御データ算出モジュール74は、曲げモーメント算出モジュール75で算出された曲げモーメントに基づきx座標値やy座標値、y軸回り回転角B、x軸回り回転角Aを補正することができる。
【0043】
第2制御データ算出モジュール76は、隣接する機械座標系xyz同士の間で特定される長尺製品の軸心回り捻れ角に基づき中心軸22回りで固定型12の姿勢を特定する制御データを算出する。固定型12の姿勢は、固定型12および可動型13の間で確立される軸心回り相対回転角すなわちz軸回り回転角Cで特定される。
【0044】
捻りモーメント算出モジュール77は、各機械座標系xyzごとに特定される軸心回り相対回転角に基づき各機械座標系xyzごとに長尺製品の捻りモーメント(捻りトルク)を算出する。この算出にあたって、捻りモーメント算出モジュール77は、応力歪み曲線に基づき断面の全体にわたって剪断応力分布を導き出す。第2制御データ算出モジュール76は、捻りモーメント算出モジュール77で算出された捻りモーメントに基づきz軸回り回転角Cを補正することができる。
【0045】
送り量算出モジュール78は、ノット位置特定モジュール72で特定されたノットの位置に基づきノットの間隔を算出する。ノットの間隔は、隣接するノット同士の間で重心線に沿って測定されればよい。こうして測定されたノットの間隔に基づき長尺材11の送り量すなわち送り位置は決定される。この決定にあたって、送り量算出モジュール78は、曲げモーメント算出モジュール75で算出される曲げモーメントに基づき送り量を補正する。
【0046】
いま、例えば図8に示されるように、均一断面の形材に曲げ変形および捻れ変形が施されて形成される長尺製品81が設計された場面を想定する。CADシステム上で設計された長尺製品81はCADデータとして製品データベースに格納される。こうしたCADデータには、単一の全体座標系XYZに従って長尺製品81の形状を表現する形状データが少なくとも含まれる。形状データには、例えば長尺製品81の断面形状を特定する二次元データと、長尺製品81の全長にわたって長尺製品81の曲がり具合や捻れ具合を特定する三次元データとが含まれる。長尺製品81の曲がり具合や捻れ具合は、各断面で同一の位置を通過する複数本の曲線(例えば稜線)で表現されることができる。こうした二次元データや三次元データは、例えばワイヤフレームモデルやサーフェスモデル、ソリッドモデルといった表現方法に基づき抽出されてもよい。
【0047】
キーボード63やマウスの操作に応じて、CPU51の形状データ管理モジュール58は、製品データベースから長尺製品81の形状データを取り込む。取り込まれた形状データに基づき、ディスプレイ装置55の画面上には長尺製品81の三次元像や断面形状が再現されることができる。取り込まれた形状データはデータファイルの形でHDD62に格納されればよい。
【0048】
材料特性データ管理モジュール59は、ディスプレイ装置55の画面に表示される誘導に従って、素材となる長尺材11の応力歪み曲線を入力させる。応力歪み曲線は、例えば、
【0049】
【数1】
【0050】
に従って特定されればよい。このとき、係数C3、C2、C1、C0は、例えば図9に示されるように、引っ張り試験で描き出される応力歪み曲線82に基づき決定される。すなわち、式[数1]の多項式によれば、応力歪み曲線82に対する近似曲線83は導き出される。式[数1]に示される多項式は、例えば、引っ張り試験で得られた応力歪み曲線82の最大強度点84や降伏点85、両者の中間点86といった3点によって簡単に導き出されることができる。操作者は、例えばキーボード63の操作を通じて、長尺材11の縦弾性係数(ヤング率)Eの数値や、最大強度点84および降伏点85並びに中間点86の応力値および歪み値を入力すればよい。縦弾性係数Eや多項式の各係数C3、C2、C1、C0といった材料特性を表現する材料特性データはHDD62に格納される。
【0051】
断面形状特性データ管理モジュール60は、例えば図10に示されるように、ディスプレイ装置55の働きを借りて長尺製品81の断面に沿って機械座標系xyzのxy座標平面を設定させる。こうした設定には例えばマウス(図示せず)の操作が用いられればよい。このとき、機械座標系xyzのx座標軸やy座標軸の向きは、固定型12に形成される貫通孔24の形状すなわち中心軸22回りの向きに応じて設定される。xy座標平面の原点(z座標軸)は断面の重心Gに重ね合わせられることが望ましい。断面形状特性データ管理モジュール60は、設定されたxy座標平面に基づき、x軸回りの断面二次モーメントIxやy軸回りの断面二次モーメントIy、断面相乗モーメントJxy、断面二次極モーメントIpを算出する。
【0052】
【数2】
【0053】
算出された断面二次モーメントIx、Iy、断面相乗モーメントJxyおよび断面二次極モーメントIpといった断面形状特性を表現する断面形状特性データはHDD62に格納される。
【0054】
加工条件データ管理モジュール61は、例えばディスプレイ装置55の働きを借りてアプローチ距離や送り速度といった加工条件を表現する加工条件データを取得する。こうした加工条件は例えばキーボード63の操作を通じて入力されればよい。加工条件を表現する加工条件データはHDD62に格納される。
【0055】
こうして形状データや材料特性データ、断面形状特性データ、加工条件データが整えられると、NCプログラム生成モジュール64はNC加工プログラムの作成を開始することができる。このNC加工プログラムの作成にあたって、NCプログラム生成モジュール64は、長尺製品81の断面形状を特定する二次元データと、長尺製品81の曲がり具合や捻れ具合を特定する三次元データとを相互に関連付ける。この関連付けにあたっては例えばGUI(グラフィックユーザインターフェース)が用いられればよい。すなわち、操作者は、図11に示されるように、ディスプレイ装置55の画面上に描き出された稜線すなわち第1および第2ガイド線87a、87bを指定するとともに、図12に示されるように、同様に画面上に描き出された断面形状88に基づき例えば第1および第2ガイド点89a、89bを指定する。ただし、各稜線は、断面形状88の作図過程で利用される角取り以前の頂点によって描き出される。すなわち、各頂点に形成される角取りは無視される。ここでは、指定の順番に従って、第1ガイド線87aと第1ガイド点89aとが相互に関連付けられ、第2ガイド線87bと第2ガイド点89bとが相互に関連付けられる。こうした指定には例えばマウス操作が用いられればよい。
【0056】
こうして1対のガイド線87a、87bと1対のガイド点89a、89bとが相互に関連付けられると、例えば図13に示されるように、NCプログラム生成モジュール64はNC加工プログラムを生成する。こうしたNC加工プログラムの生成工程の詳細は後述される。生成されたNC加工プログラムはHDD62に格納される。
【0057】
こうして生成されたNC加工プログラムに従えば、長尺材11は一定の送り速度F=6000mm/分で固定型12および可動型13を通り抜ける。例えば送り位置W=−1424.000mmが確立されると、可動型13は、前述の基準位置すなわち移動平面HVの原点位置からx座標値X=0.000mmおよびy座標値Y=0.446mmで特定される座標位置に移動する。このとき、可動型13の姿勢は、y軸回り回転角B=0.000度およびx軸回り回転角A=0.159度で特定される。ただし、送り位置Wは、例えば押し通し曲げ加工機10に長尺材11がセットされる際に確立されるスライダ15の最後退位置すなわち加工前の待機位置を基準に規定される。こうした基準で送り位置Wが設定されると、スライダ15が前進して長尺材11を送り出すにつれて送り位置Wのz座標値はマイナス側に減少していく。
【0058】
続いて長尺材11が送り位置W=−1504.072mmに到達すると、可動型13は、x座標値X=0.000mmおよびy座標値Y=4.409mmで特定される座標位置に移動する。このとき、可動型13の姿勢は、y軸回り回転角B=0.000度およびx軸回り回転角A=3.157度で規定される姿勢に変化する。例えば長尺材11が送り位置W=−1601.907mmに到達すると、可動型13は、x座標値X=0.090mmおよびy座標値Y=8.515mmで特定される座標位置に移動する。このとき、可動型13の姿勢は、y軸回り回転角B=−0.065度およびx軸回り回転角A=6.092度で規定される姿勢に変化する。同時に、固定型12は、中心軸22回りで回転してz軸回り回転角C=0.7091度で規定される姿勢に変化する。こうして各送り位置Wを通過するたびに、可動型13は、x座標値Xやy座標値Yで規定される位置に移動しながら、y軸回り回転角Bやx軸回り回転角Aで規定される姿勢に変化する。同時に、固定型12と可動型13との間にはz軸回り回転角Cで規定される相対回転が確立される。隣接する送り位置W同士の間では、x座標値Xおよびy座標値Yやy軸回り回転角Bやx軸回り回転角A、z軸回り回転角Cは例えば等速で変化すればよい。
【0059】
NC加工プログラムは、NCコントローラ42への供給に先立ってNCプログラム検証モジュール65で検証されることができる。NCプログラム検証モジュール65は、例えば図14に示されるように、長尺材11の各送り位置Wごとにx座標値Xやy座標値Y、y軸回り回転角Bやx軸回り回転角A、z軸回り回転角Cをプロットする。その結果、x座標値の変動曲線91やy座標値の変動曲線92、x軸回り回転角Aの変動曲線93、y軸回り回転角Bの変動曲線94、z軸回り回転角Cの変動曲線95は描き出される。描き出された変動曲線91〜95は例えばディスプレイ装置55の画面上に表示されることができる。
【0060】
これら変動曲線91〜95によれば、曲げ加工や捻り加工の実現可能性は判定されることができる。例えば各変動曲線91〜95が滑らかに連続していれば、押し通し曲げ加工機10はNC加工プログラムに従って確実に動作することができる。その一方で、変動曲線91、92の変化の度合い(傾き)が上下動部材29や水平動部材30の移動速度を超えていれば、押し通し曲げ加工機10はそういった曲げ加工を実現することはできない。同様に、変動曲線95の変化の度合い(傾き)が振り子部材19の回転速度を超えていれば、押し通し曲げ加工機10はそういった捻り加工を実現することはできない。
【0061】
さらに、NCプログラム検証モジュール65は、長尺材11の送り位置Wごとに加工後の長尺材11の曲がり具合すなわち曲率を算出してもよい。算出された曲率は、例えば図15に示されるように、各送り位置Wごとにプロットされる。その結果、曲率変化を表現する変動曲線96は描き出される。描き出された変動曲線96は例えばディスプレイ装置55の画面上に表示されることができる。こうした変動曲線96によれば、加工後の長尺材11の形状を予め大まかに予測することが可能となる。
【0062】
ここで、NCプログラム生成モジュール64の動作を詳述する。前述したように、長尺製品81の断面形状を特定する二次元データと、長尺製品81の曲がり具合や捻れ具合を特定する三次元データとが相互に関連付けられると、NCプログラム生成モジュール64では重心線抽出モジュール71によって長尺製品81の重心線が特定される。この特定にあたって重心線抽出モジュール71は、例えば図12に示されるように、断面に沿って2つのガイド点89a、89bと重心90との位置関係を取得する。
【0063】
続いて重心線抽出モジュール71は、図16に示されるように、三次元データで規定される2つの稜線すなわち第1および第2ガイド線87a、87bに対して複数の切断平面97a〜97gを規定する。こうした切断平面97a〜97gの設定にあたっては、第1および第2ガイド線87a、87bは各々同数の部分線に等分割されればよい。各切断平面97a〜97gは、部分線の分割点98a〜98gで第1および第2ガイド線87a、87bの接線に直交する。各切断平面97a〜97gでは、第1ガイド線87aと切断平面97a〜97gとが交差する位置で第1ガイド点89aは特定されることができ、第2ガイド線87bと切断平面97a〜97gとが交差する位置で第2ガイド点89bは特定されることができる。
【0064】
こうして各切断平面97a〜97g上で第1および第2ガイド点89a、89bの位置が特定されると、重心線抽出モジュール71は、前述のように2つのガイド点89a、89bと重心90との位置関係に基づき、切断平面97a〜97g上で重心90の位置を特定する。こうして算出された重心90が順番に連結されていくと、例えば図17に示されるように、重心線99は描き出されることができる。重心90同士を結ぶにあたって曲率の連続性が考慮されれば、滑らかで精度の高い重心線99が得られることができる。その他、こうして得られる重心線99の精度を高めるには、重心90同士の間隔すなわち切断平面97a〜97g同士の間隔は狭められることが望ましい。重心線99は長尺製品81の曲がり具合を表現する。
【0065】
こうした重心線99は例えばベジエ曲線やBスプライン曲線、NURBS(非一様有理Bスプライン)曲線といったパラメトリック曲線で表現されることができる。こうした表現方法では、例えば図18に示されるように、曲線101の曲がり具合は複数の制御点102、103によって規定されることができる。こういった制御点102、103には、表現される曲線101上で座標値を与えるノット102が必ず含まれる。ノット102の配置は、隣接するノット102間を結ぶ直線104と、表現される曲線101との乖離すなわちトレランスTOLに基づき決定される。トレランスTOLが一定に保持される結果、曲率の大きな曲線101部分ではノット102の間隔は狭められ、反対に曲率の小さな曲線101部分ではノット102の間隔は広げられる。しかも、トレランスTOLが大きくなればノット102の間隔は広げられ、トレランスTOLが小さくなればノット102の間隔は狭められる。
【0066】
こうして重心線99上でノット102の位置が特定されると、局部座標系設定モジュール73は、例えば図19に示されるように、長尺製品81の三次元形状を特定する全体座標系XYZに、固定型12を基準に特定される局部座標系すなわち機械座標系xyzを規定する。こうした機械座標系xyzは、前述のように重心線99上で特定されたノット102ごとに規定される断面105a〜105gを基準に設定されればよい。
【0067】
各断面105a〜105gを特定するにあたって、局部座標系設定モジュール73は、例えば図20に示されるように、各ノット102ごとに重心線99に対して接線ベクトル106を算出する。各ノット102では、この接線ベクトル106が直交する切断平面107が特定されることができる。この切断平面107に描き出される長尺製品81の断面形状によって各断面105a〜105gは特定されることができる。このとき、固定型12の貫通孔24と機械座標系xyzとの位置関係は、例えば図10に示されるように、断面形状特性データ管理モジュール60の働きに応じて取得されることができる。
【0068】
こうしてパラメトリック曲線で表現される重心線99に従って各断面105a〜105gが特定されると、長尺製品81の曲率が大きくなればなるほど断面105a〜105gの枚数は増加し、きめ細かく可動型13の移動を制御することが可能となる。しかも、トレランスTOLの大きさを意図的に変更すれば、長尺製品81に要求される寸法精度に応じて断面105a〜105gの枚数は意図的に変更されることが可能となる。
【0069】
各断面105a〜105gごとに機械座標系xyzが設定されると、第1制御データ算出モジュール74は、例えば図21に示されるように、重心線99に基づき可動型13の位置や姿勢を特定する。この特定にあたって、第1制御データ算出モジュール74は、まず、機械座標系xyz上で固定型12および可動型13の間のアプローチ距離Lを特定する。このアプローチ距離Lは、固定型12側貫通孔24の出口と、基準位置に位置決めされた可動型13との間で固定型12の中心軸22方向に沿って測定される。こうしたアプローチ距離Lは加工条件データファイルから取り込まれる。
【0070】
特定されたアプローチ距離Lに基づき機械座標系xyz上には可動型13の移動平面HVが規定される。この移動平面HVを規定するにあたって、第1制御データ算出モジュール74は、アプローチ距離Lに基づき機械座標系xyz上のz座標値を規定すればよい。その結果、機械座標系xyzのxy平面はz座標軸に沿ってアプローチ距離Lで平行移動させられる。こうして移動平面HVが規定されると、第1制御データ算出モジュール74は、移動平面HVと重心線99との交差点108でx座標値やy座標値を算出する。算出されたx座標値やy座標値によって可動型13の位置は特定されることができる。こうして特定された可動型13の位置には、単純に、形状データで特定される長尺製品81の三次元形状が反映される。
【0071】
このように機械座標系xyzに従って可動型13のx座標値やy座標値を取得するにあたっては、長尺製品81の三次元像が機械座標系xyzのyz平面やxz平面に投影されればよい。例えば図22に示されるように、長尺製品81の三次元像が機械座標系xyzのyz平面に投影されると、投影された三次元像と移動平面HVとの交差に基づき可動型13のy座標値は特定されることができる。このとき、移動平面HV上で長尺製品81の接線方向109が特定されれば、可動型13のx軸回り回転角Aが導き出されることができる。図23に示されるように、長尺製品81の三次元像が機械座標系xyzのxz平面に投影されると、同様に、投影された三次元像と移動平面HVとの交差に基づき可動型13のx座標値は特定されることができる。同時に、移動平面HV上で長尺製品81の接線方向110が特定されれば、可動型13のy軸回り回転角Bが導き出されることができる。
【0072】
このとき、曲げモーメント算出モジュール75は各機械座標系xyzごとに長尺材11に加えられる曲げモーメントMを算出する。この算出にあたって、曲げモーメント算出モジュール75は、形状データで特定される長尺製品81の曲率1/Rを取得する。こうした曲率1/Rは例えば各機械座標系xyzの固定型12側貫通孔24の出口で特定されればよい。こうした曲率半径Rを特定する座標系は、機械座標系xyzの座標原点と可動型13の幾何的位置とを含む1平面に沿って規定される。
【0073】
こうして曲率1/Rが特定されると、曲げモーメント算出モジュール75は、長尺製品81すなわち加工中の長尺材11の断面に沿って特定される公称応力分布σ(h)および公称歪み分布e(h)を特定する。図24から明らかなように、公称歪み分布e(h)は、長尺製品81すなわち長尺材11の断面上で曲率半径方向に沿って直線的に変化する。したがって、公称歪み分布e(h)は、断面上で特定される重心90および中立軸111の位置に基づき幾何学的に導き出されることができる。すなわち、曲率半径Rで重心線99が描かれ、断面上で曲率半径方向に沿って重心90から中立軸111までに乖離量ηが特定されると、公称歪み分布e(h)は、
【0074】
【数3】
【0075】
によって表現されることができる。ここで、変数hは、曲率半径方向に測定される中立軸111からの距離を示す。その一方で、前述の式[数1]に従えば、公称応力分布σ(h)は、
【0076】
【数4】
【0077】
によって表現されることができる。曲げモーメントMは、
【0078】
【数5】
【0079】
に従って算出されることができる。ここで、係数Aは長尺製品81すなわち長尺材11の断面積を示す。
【0080】
こうした曲げモーメントMを特定するにあたって、曲げモーメント算出モジュール75は乖離量ηを算出する。いま、例えば図25に示されるように、可動型13で長尺材11に対して曲げ変形が施されると、可動型13には曲げ変形の反力で曲率半径方向に荷重Fが作用する。このとき、固定型12側貫通孔24の出口では長尺材11内で軸方向に軸方向圧縮力Pcが特定されると、
【0081】
【数6】
【0082】
が得られる。ここで、軸方向圧縮力Pcは、固定型12側貫通孔24の出口で特定される長尺材11の公称応力分布σ(h)の総和に等しい。したがって、例えば固定型12側貫通孔24の出口で曲率1/Rが特定されると、
【0083】
【数7】
【0084】
は得られる。その一方で、曲げモーメントMは前述のように式[数5]で特定されることができることから、式[数6]に式[数5]および式[数7]が代入されると、
【0085】
【数8】
【0086】
は得られる。この式[数8]が整理されると、
【0087】
【数9】
【0088】
は導き出される。
【0089】
曲げモーメント算出モジュール75はこの式[数9]に従って数値積分を実施する。この数値積分にあたって、曲げモーメント算出モジュール75は、式[数9]に、[数3]および式[数4]で表現される曲率1/Rと乖離量ηとの関係を代入する。こうして式[数3]および式[数4]が式[数9]に代入された上で数値積分および収束計算が実施されると、特定された断面上で重心90から中立軸111までの乖離量ηは算出されることができる。
【0090】
その他、中立軸111を特定するにあたって、曲げモーメント算出モジュール75は、例えば図26に示されるように、実測データに基づき乖離量ηを導き出してもよい。この実測データによれば、
【0091】
【数10】
【0092】
に従って乖離量ηは算出されることができる。ここで、係数αは、各断面で曲率半径方向に測定される長尺材11の高さH(=h2−h1)に対する乖離量ηの比率すなわち移動率を表す。長尺材11の高さHに移動率αが掛け合わせられると、中立軸111の乖離量ηは算出される。移動率αを特定するにあたっては、実測データに基づき算出される比例係数K1が用いられればよい。
【0093】
比例係数K1を取得するにあたっては、様々な断面形状や材質、大きさで特定される長尺材11が実際に押し通し曲げ加工機10で加工されればよい。このとき、加工中の可動型13の傾斜角φや変形後の長尺材11の長さは実測される。こうして実測された可動型13の傾斜角φに対して中立軸111の移動率αがプロットされると、例えば図26に示される実測データは得られることができる。ここでは、2種類のアルミニウム材(JIS6063−T1およびJIS6063−T5)に対して傾斜角φは実測された。実測にあたって、各アルミニウム材ごとに断面形状や大きさは変更された。しかも、固定型12および可動型13の間で4通りのアプローチ距離L=50mm、60mm、70mm、90mmが設定された。この実測データによれば、長尺材11の断面形状や材料特性の違いに拘わらず、乖離量ηを算出するにあたって同一の係数K1が用いられることができることが明らかとされる。
【0094】
第1制御データ算出モジュール74は、曲げモーメント算出モジュール75で算出される曲げモーメントMを利用して前述の幾何的位置に修正を加え、設計どおりに精度の高い長尺製品81を生み出す可動型13の実加工位置を導き出すことができる。こうした実加工位置を導き出すにあたって、第1制御データ算出モジュール74は、例えば図27に示されるように、長尺材11の弾性曲げ復元力すなわちスプリングバックに起因する弾塑性曲げ変形量を特定する。
【0095】
こうした弾塑性曲げ変形量を特定するにあたって、第1制御データ算出モジュール74は、固定型12側貫通孔24の出口と可動型13との間で特定される曲げモーメント分布を利用する。ここでは、こういった曲げモーメント分布には、固定型12側貫通孔24の出口から可動型13までの平均曲げモーメントが用いられる。こうした平均曲げモーメントは、例えば図27から明らかなように、曲げモーメント算出モジュール75で算出された曲げモーメントMの2分の1の値によって特定されることができる。弾塑性曲げ変形量は、例えば次式に従って算出されることができる。
【0096】
【数11】
【0097】
この式[数11]によれば、弾塑性曲げ変形量は、形状データで特定される加工後の長尺製品81の曲率1/Rを実現する際に必要とされる加工中の実曲率1/Rcすなわち実曲率半径Rcによって表現される。
【0098】
長尺材11の縦弾性係数Eは前述の材料特性データに基づき取得されればよい。その一方で、断面二次モーメントIは、前述のように各断面105a〜105gに設定される機械座標系xyzごとに算出されればよい。例えば、前述のように算出されたx軸回りの断面二次モーメントIxやy軸回り断面二次モーメントIy、断面相乗モーメントJxyが取得されると、図10から明らかなように、次式に従って、曲げ方向を規定する従法線ベクトルb回りで断面二次モーメントIb は算出されることができる。
【0099】
【数12】
【0100】
ただし、θb-x は、各断面105a〜105gごとに特定される従法線ベクトルbと、断面形状特性データ管理モジュール60で設定された機械座標系xyzのx座標軸との間で反時計回りに特定される角度を示す。こうして算出される断面二次モーメントIb によれば、長尺材11の各断面105a〜105gごとに曲げ方向に応じて適切な断面二次モーメントIは特定されることができる。
【0101】
実曲率1/Rcが特定されると、第1制御データ算出モジュール74は、実曲率1/Rcで描き直される重心線112に基づき可動型13の実加工位置113を特定する。この実加工位置113は、機械座標系xyzに従ってx座標値やy座標値で表現されてもよく、重心線99に基づく幾何的位置114との差分値によって表現されてもよい。
【0102】
一般に、アルミニウム材を始めとする長尺材11は弾性変形を経て塑性変形に至る。こういった長尺材11が用いられる場合には、可動型13から曲げ変形が加えられても、長尺材11が可動型13から解放されると同時に弾性復元力いわゆるスプリングバックに応じて加工後の長尺製品81に形状誤差が生じてしまう。前述のように導き出された弾塑性曲げ変形量に応じて可動型13の実加工位置が特定されれば、そういった弾性復元力いわゆるスプリングバックに起因する長尺製品81の形状誤差は十分に解消されることができる。特に、そういった弾塑性曲げ変形量は曲げモーメントMに基づき幾何学的に算出されることから、実測データの収集といった手間をできる限り省くことが可能となる。
【0103】
その他、第1制御データ算出モジュール74は、例えば図28に示されるように、固定型12側貫通孔24の出口で長尺材11の出口回り折れ角量βを特定してもよい。こういった出口回り折れ角量βは、貫通孔24の出口で生じる弾性折れ変形や塑性折れ変形といった剪断変形や断面変形すなわち窪み115によって引き起こされる。出口回り折れ角量βが特定されると、第1制御データ算出モジュール74は、機械座標系xyzに従って貫通孔24の出口回りで重心線99を回転させる。重心線99は、機械座標系xyzの座標原点と可動型13の幾何的位置とを含む1平面に沿って出口回り折れ角量βで回転すればよい。第1制御データ算出モジュール74は、回転した重心線99と移動平面HVとの交点に基づき可動型13の実加工位置116を特定する。この実加工位置116は、機械座標系xyzに従ってx座標値やy座標値で表現されてもよく、重心線99に基づく幾何的位置との差分値によって表現されてもよい。
【0104】
特に、中空の長尺材11では、固定型12および可動型13の間で曲げ変形が引き起こされる際に、固定型12側貫通孔24の出口で長尺材11に大きな剪断力が作用する。こういった剪断力は固定型12側貫通孔24の出口で弾性折れ変形や塑性折れ変形といった剪断変形を引き起こす。しかも、固定型12側貫通孔24の出口では長尺材11に断面変形すなわち窪み115が生じてしまう。こうした窪み115によれば、固定型12側貫通孔24の出口で折れ変形は引き起こされる。これら剪断変形や断面変形に起因する折れ変形が引き起こされる結果、固定型12および可動型13の間では形状データに基づく幾何的な位置関係どおりに十分な曲げ変形は引き起こされることはできない。長尺材11が可動型13から解放されると同時に折れ変形に応じて加工後の長尺製品81に形状誤差が生じてしまう。前述のように導き出された出口回り折れ角量βに応じて可動型13の実加工位置116が特定されれば、そういった出口回りの折れ角に起因する長尺製品81の形状誤差は十分に解消されることができる。
【0105】
ここで、出口回り折れ角量βは、例えば図29に示されるように、実測データに基づき特定されればよい。この実測データによれば、
【0106】
【数13】
【0107】
に従って出口回り折れ角量β[゜]は算出されることができる。ここで、係数K2は、実測データに基づき算出される比例係数を示す。
【0108】
こうした実測データを取得するにあたっては、様々な断面形状や材質、大きさで特定される長尺材11が実際に押し通し曲げ加工機10で加工されればよい。このとき、固定型12および可動型13の間で長尺材11の形状は実測される。こうした実測によって曲げ変形の曲率は明らかとされる。例えば図28から明らかなように、曲げ変形の曲率半径Rdを導き出すにあたって、少なくとも3点の計測点117が選択されればよい。
【0109】
こうして固定型12および可動型13の間で長尺材11の曲げ変形を表現する曲線118が特定されると、固定型12側貫通孔24の出口で曲線118に対する接線119が描き出される。この接線119と機械座標系xyzのz座標軸との角度によって出口回り折れ角量βは特定されることができる。こうして実測された出口回り折れ角量βが係数M/EIに対してプロットされると、図29に示される実測データは得られることができる。ここでは、3種類のアルミニウム材(JIS6063−O、JIS6063−T1およびJIS6063−T5)に対して出口回り折れ角量βは実測された。実測にあたって、固定型12および可動型13の間で3通りのアプローチ距離L=60mm、90mm、133mmが設定された。この実測データによれば、長尺材11の断面形状や材料特性の違いに拘わらず、出口回り折れ角量βを算出するにあたって同一の係数K2が用いられることができることが明らかとされる。
【0110】
同様に、第1制御データ算出モジュール74は、例えば図30に示されるように、固定型12側貫通孔24の出口で長尺材11の断面変形すなわち窪み115に起因する断面変形量d1を同時に特定してもよい。特定された断面変形量d1は、曲率半径方向すなわち曲げ方向に沿って前述の幾何的位置に加えられればよい。こうして幾何的位置に断面変形量d1が加えられると、可動型13の実加工位置は特定されることができる。この実加工位置は、前述と同様に、機械座標系xyzに従ってx座標値やy座標値で表現されてもよく、重心線99に基づく幾何的位置との差分値によって表現されてもよい。
【0111】
特に、中空の長尺材11では、固定型12および可動型13の間で曲げ変形が引き起こされる際に、固定型12側貫通孔24の出口で断面変形が生じてしまう。こうした断面変形には、前述の窪み115のほか、曲率半径方向に沿った断面の潰れなどが含まれる。こうした断面変形が引き起こされている間に可動型13が移動しても、長尺材11には十分な塑性曲げ変形は生じることはない。したがって、固定型12および可動型13の間では形状データに基づく幾何的な位置関係どおりに十分な曲げ変形は引き起こされることはできず、加工後の長尺製品81に形状誤差が生じてしまう。前述のように導き出された断面変形量d1に応じて可動型13の実加工位置が特定されれば、そういった断面変形に起因する長尺製品81の形状誤差は十分に解消されることができる。
【0112】
ここで、断面変形量d1は、例えば図31に示されるように、実測データに基づき特定されればよい。この実測データによれば、
【0113】
【数14】
【0114】
に従って断面変形量d1[mm]は算出されることができる。ここで、係数K3は、実測データに基づき算出される比例係数を示す。
【0115】
こうした実測データを取得するにあたっては、様々な断面形状や材質、大きさで特定される長尺材11が実際に押し通し曲げ加工機10で加工されればよい。このとき、固定型12側貫通孔24の出口で長尺材11の断面形状は実測される。こうして実測された断面変形量d1が荷重Fに対してプロットされると、図31に示される実測データは得られることができる。ここでは、2種類のアルミニウム材(JIS6063−T1およびJIS6063−T5)に対して断面変形量d1は実測された。実測にあたって、固定型12および可動型13の間で3通りのアプローチ距離L=60mm、90mm、133mmが設定された。この実測データによれば、長尺材11の断面形状や材料特性の違いに拘わらず、断面変形量d1を算出するにあたって同一の係数K3が用いられることができることが明らかとされる。
【0116】
さらに、第1制御データ算出モジュール74は、例えば図32に示されるように、固定型12および可動型13に対する長尺材11のクリアランス量d2すなわちガタに起因するクリアランス量を特定してもよい。特定されたクリアランス量d2は、曲率半径方向すなわち曲げ方向に沿って前述の幾何的位置に加えられればよい。こうして幾何的位置にクリアランス量d2が加えられると、可動型13の実加工位置は特定されることができる。この実加工位置は、前述と同様に、機械座標系xyzに従ってx座標値やy座標値で表現されてもよく、重心線99に基づく幾何的位置との差分値によって表現されてもよい。
【0117】
クリアランス量d2[mm]は実測値に基づき特定されればよい。実測値を取得するにあたっては、様々な断面形状や材質、大きさで特定される長尺材11が実際に押し通し曲げ加工機10で加工されればよい。このとき、可動型13が移動し始めてから、長尺材11が固定型12側貫通孔24に接触するまでに可動型13の移動距離は測定される。こうして測定された移動距離によってクリアランス量d2は特定されることができる。例えばクリアランス量d2は長尺材11の寸法公差の大きさに応じて分類されることが望ましい。すなわち、クリアランス量d2の実測に先立って長尺材11の外形寸法は実測される。実測された外形寸法ごとに長尺材11のクリアランス量d2は実測される。
【0118】
一般に、長尺材11の寸法精度には所定範囲の公差すなわちばらつきが許容される。こういった公差に拘わらず固定型12や可動型13の貫通孔24、28に対して長尺材11を確実に通過させるには、長尺材11の設計寸法と貫通孔24、28の寸法との間にクリアランスすなわちガタを持たせる必要がある。たとえ公差が存在しなくても、固定型12や可動型13の貫通孔24、28に対して長尺材11をスムーズに通過させるには、長尺材11の外形と貫通孔24、28の内面との間にクリアランスすなわちガタを持たせる必要がある。こうしたクリアランスが解消されて固定型12や可動型13が完全に長尺材11に接触するまで、可動型13が移動しても長尺材11には実質的に曲げ変形は生じることはない。したがって、固定型12および可動型13の間では形状データに基づく幾何的な位置関係どおりに十分な曲げ変形は引き起こされることはできず、加工後の長尺製品81に形状誤差が生じてしまう。前述のように導き出されたクリアランス量d2に応じて可動型13の実加工位置が特定されれば、そういったクリアランスすなわちガタに起因する長尺製品81の形状誤差は十分に解消されることができる。ただし、実加工位置を特定するにあたって使用されるクリアランス量d2は、固定型12および可動型13で生じる2つのクリアランス量の総和を表現する必要がある。
【0119】
こうした一方で、第2制御データ算出モジュール76は、各断面105a〜105gに設定される機械座標系xyzに基づき固定型12の中心軸22回りの姿勢、すなわち、軸心回りで相対回転する固定型12および可動型13の相対回転角を特定する。この特定にあたって、第2制御データ算出モジュール76は、まず、隣接する機械座標系xyzに基づき、長尺製品81の軸心方向すなわち重心線99に沿って特定される単位送り量当たりの軸心回り比捻れ角を算出する。
【0120】
この軸心回り比捻れ角の算出にあたって、第2制御データ算出モジュール76は、例えば図33に示されるように、隣接する機械座標系xyz同士の間でxy座標平面同士を互いに重ね合わせる。この重ね合わせにあたっては、例えば行列演算などを用いて1対の機械座標系xyzの間でz座標軸の向きが揃えられればよい。こうした座標平面同士の重ね合わせにあたって、xy座標平面およびx1 y1 座標平面では、全体座標系XYZに従ってz座標軸回りの回転角は保持される。したがって、重ね合わせられたxy座標平面およびx1 y1 座標平面に基づけば、1対の断面105a、105b同士の間で軸心回り捻れ角θは導き出されることができる。
【0121】
こうして隣接する断面105a〜105g同士の間で軸心回り捻れ角θが算出されると、第2制御データ算出モジュール76は、断面105a〜105g同士の間で測定される重心線99の長さ、すなわち、ノット102間で測定される曲線101の長さを用いて軸心回り比捻れ角ψを算出する。すなわち、軸心回り捻れ角θは重心線99の長さによって除算される。こうして算出された軸心回り比捻れ角ψは、例えば図34に示されるように、累積される重心線99の長さに対して次々とプロットされる。その結果、長尺製品81の軸心方向に沿って軸心回り比捻れ角ψの変動を示す分布曲線121は導き出される。ただし、この分布曲線121では、重心線99の長さで特定される軸心方向位置に固定型12が位置決めされた際に可動型13の位置で特定される軸心回り比捻れ角ψがプロットされる。
【0122】
続いて第2制御データ算出モジュール76は分布曲線121上で軸心回り比捻れ角ψの最大値122を検出する。この最大値122は、軸心回り比捻れ角ψ=0で始まり軸心回り比捻れ角ψ=0で終わる1捻り区間123内で検出される。最大値122が検出されると、第2制御データ算出モジュール76は、最大値122に至る分布曲線121aを単純増加曲線に描き直すと同時に、最大値122を通過した分布曲線121bを単純減少曲線に描き直す。単純増加曲線によれば軸心回り比捻れ角ψ=0から最大値122までに軸心回り比捻れ角ψは減少することはなく、単純減少曲線によれば最大値122から軸心回り比捻れ角ψ=0までに軸心回り比捻れ角ψは増大することはない。最大値122に至る分布曲線121aや、最大値122を通過した分布曲線121bでは、例えば図35に示されるように、極大値125とこの極大値125に隣接する極小値126とが平均化される。図35から明らかなように、平均化で描き出される直線127は、極小値126を含む分布曲線121との間に、極大値125を含む分布曲線121と直線127との間に区画される領域128と同一面積の領域129を区画する。
【0123】
こうして分布曲線121が単純増加曲線および単純減少曲線で表現されると、第2制御データ算出モジュール76は、例えば図36に示されるように、アプローチ距離Lに基づき加工域131を描き出す。この加工域131は、軸心方向すなわち重心線99の長さ方向にアプローチ距離Lを特定する上辺132と、この上辺132の両端に接続されて、傾斜度で軸心回り比捻れ角ψの許容変化率を特定する可動型側斜辺133および固定型側斜辺134とによって囲まれる。許容変化率は例えば固定型12の中心軸22回り最大回転速度に基づき決定される。
【0124】
第2制御データ算出モジュール76は、最大値122に至る分布曲線121aでは、可動型13の位置を特定する上辺132の一端を基準に加工域131を分布曲線121に沿って移動させる。移動の間に上辺132の一端以外で加工域131が分布曲線121に交差すると、第2制御データ算出モジュール76は、交差した領域で加工域131の外枠に沿って分布曲線121を描き直す。反対に、最大値122を通過した分布曲線121bでは、固定型12の位置を特定する上辺132の他端を基準に加工域131は分布曲線121に沿って移動させられる。移動の間に上辺132の他端以外で加工域131が分布曲線121に交差すると、同様に、交差した領域で分布曲線121は加工域131の外枠に沿って描き直される。同時に、前述の最大値122を挟む分布曲線121は、例えば図36から明らかなように、加工域131に基づき、少なくともアプローチ距離Lにわたって均一な軸心回り比捻れ角ψを示す直線135に描き直される。こうした直線135によれば最大値122を挟む分布曲線121は平均化される。
【0125】
こうして加工域131に基づき完全に分布曲線121が描き直されると、第2制御データ算出モジュール76は、重心線99の長さに沿って各断面105a〜105gごとに固定型12の中心軸22回り回転角を算出する。すなわち、第2制御データ算出モジュール76は、例えば図37から明らかなように、直線135の入り口136に至る分布曲線121上で断面105a〜105gごとに特定される軸心回り比捻れ角ψに、可動型13および固定型12の間で測定されるアプローチ距離Lを掛け合わせる。この乗算によって固定型12の軸心回り相対回転角は導き出される。その一方で、第2制御データ算出モジュール76は、直線135の入り口136を通過した分布曲線121に基づき、断面105a〜105gごとにアプローチ距離Lにわたって軸心回り比捻れ角ψの積分値を算出する。この積分値によって固定型12の軸心回り相対回転角は特定されることができる。
【0126】
ここで、以上のような捻れ加工の原理を簡単に説明する。いま、固定型12が中心軸22回りに回転角θ1で回転すると、例えば図38に示されるように、固定型12および可動型13の間では長尺材11に捻れ変形が引き起こされる。断面形状が均一であれば、固定型12および可動型13の間で長尺材11は均等に捻れる。したがって、図39に示されるように、アプローチ距離Lにわたって均一に比捻れ角ψ1は分布する。比捻れ角ψは、長尺材11の軸心方向に沿った単位長さ当たりの捻れ角を意味する。
【0127】
長尺材11が微小距離D1で軸心方向に送られると、可動型13を通過した長尺材11では前述の比捻れ角ψ1は保持される。このとき、固定型12が前述の回転角θ1よりも大きな回転角θ2で特定される姿勢を確立すると、固定型12および可動型13の間で長尺材11は均等に捻れる結果、例えば図40に示されるように、固定型12および可動型13の間には均一に比捻れ角ψ2が分布する。この比捻れ角ψ2が保持されたまま長尺材11が再び微小距離D2で可動型13を通過すると、図41に示されるように、微小距離D1にわたって実現された比捻れ角ψ1に続き、微小距離D2にわたって比捻れ角ψ2は実現されることができる。
【0128】
こうして微小距離の送りと固定型12の回転とが連続的に繰り返されると、段階的に増加する比捻れ角ψで長尺材11には捻れ変形が実現される。例えば軸心方向に長尺材11を連続的に送りながら滑らかに固定型12の回転角を変化させれば、前述のように、徐々に増加する捻れ角で捻られた長尺製品81は得られることができる。このとき、固定型12の回転角は、可動型13の位置で特定される比捻れ角ψとアプローチ距離Lとの乗算によって導き出されることができる。
【0129】
続いて、前述のように均一な比捻れ角ψ1で長尺材11が捻られた後に固定型12に加えられる拘束力を解放し、中心軸22回りで固定型12の回転を許容しつつ長尺材11が微小距離D1で送られる場面を想定する。すると、図42に示されるように、微小距離D1で送られる間に固定型12を通過する長尺材11で捻れは生じない。捻れた長尺材11が可動型13を通過する結果、長尺材11には、固定型12の回転角θ1とは反対向きに軸心回りの回転角θ3が生じる。固定型12の回転角は(θ1−θ3)に減少する。図43に示されるように、微小距離D1で送られる間に固定型12を通過する長尺材11は比捻れ角ψ=0を維持する。
【0130】
その後、固定型12に加えられる拘束力を復帰させ中心軸22回りで固定型12を強制的に回転させると、例えば図44に示されるように、予め捻れ変形が施された領域では、加工硬化に起因して、比捻れ角ψ1に達するまで捻れ変形は引き起こされない。このとき、長尺材11では、前述と同様に、微小距離D1にわたって均一に捻れが生じる。その結果、微小距離D1では均一な比捻れ角ψ4が分布する。固定型12の回転角は、図44から明らかなように、固定型12および可動型13の間でアプローチ距離Lにわたって算出される比捻れ角ψの積分値によって特定されることができる。
【0131】
続いて微小距離D2で再び軸心方向に長尺材11を送り出し、前述と同様に、固定型12を通過した長尺材11で比捻れ角ψ=0を維持させる。その後、中心軸22回りで固定型12を強制的に回転させると、例えば図45に示されるように、微小距離D1にわたって実現された比捻れ角ψ4に続き、微小距離D2にわたって比捻れ角ψ5は実現されることができる。ただし、比捻れ角ψ5は、先行する比捻れ角ψ4よりも小さくなければならない。
【0132】
こうして微小距離の送りと固定型12の回転とが連続的に繰り返されると、段階的に減少する比捻れ角ψで長尺材11には捻れ変形が実現される。例えば軸心方向に長尺材11を連続的に送りながら滑らかに固定型12の回転角を変化させれば、前述のように、徐々に減少する捻れ角で捻られた長尺製品81は得られることができる。
【0133】
こうして第2制御データ算出モジュール76で軸心回り比捻れ角ψが特定されると、捻りモーメント算出モジュール77は各機械座標系xyzごとに長尺材11に加えられる捻りモーメント(捻りトルク)Tを算出する。この算出にあたって、捻りモーメント算出モジュール77は、形状データで特定される加工後の長尺製品81の軸心回り捻れ角△θを取得する。この軸心回り捻れ角△θには、前述のように各機械座標系xyzごとに特定された固定型12の軸心回り相対回転角が用いられればよい。
【0134】
こうして軸心回り捻れ角△θが取得されると、捻りモーメント算出モジュール77は、例えば長尺製品81すなわち加工中の長尺材11の断面に沿って剪断歪み分布γ(ρ)を特定する。ここで、剪断歪み分布γ(ρ)は、図46から明らかなように、長尺製品81すなわち長尺材11の断面上で捻れ中心すなわち固定型12の中心軸22からの距離に応じて直線的に変化することから、断面上で特定される重心90からの距離ρに基づき次式に従って幾何学的に導き出されることができる。
【0135】
【数15】
【0136】
こうして剪断歪み分布γ(ρ)が算出されると、捻りモーメント算出モジュール77は、
【0137】
【数16】
【0138】
に従って剪断応力分布τ(ρ)を算出する。ここで、係数B3、B2、B1、B0は前述の応力歪み曲線(式[数4])に基づき決定されればよい。すなわち、周知の通り、モール円に基づけば、歪みeは、
【0139】
【数17】
【0140】
によって表現されることができる。ここで、
【0141】
【数18】
【0142】
といった置き換えを実施し、前述の式[数4]に式[数17]が代入されると、式[数16]の係数B3、B2、B1、B0は得られることができる。
【0143】
こうして算出された剪断応力分布τ(ρ)によれば、任意の断面の捻りモーメントTは、
【0144】
【数19】
【0145】
によって表現されることができる。離散化された式[数19]に基づき数値計算が繰り返されると、捻りモーメントTは導き出されることができる。
【0146】
第2制御データ算出モジュール76は、捻りモーメント算出モジュール77で算出される捻りモーメントTを利用して前述の軸心回り相対回転角に修正を加え、設計どおりに精度よく捻られた長尺製品81を生み出す固定型12の軸心回り実回転角を導き出すことができる。こうした軸心回り実回転角を導き出すにあたって、第2制御データ算出モジュール76は、長尺材11の弾性捻れ復元力すなわちスプリングバックに起因する弾塑性捻れ変形量を特定する。
【0147】
第2制御データ算出モジュール76は、捻りモーメント算出モジュール77で算出された捻りモーメントTに基づき、長尺材11に引き起こされる弾塑性捻れ変形量△ψを算出する。弾塑性捻れ変形量△ψは、例えば次式に従って算出されることができる。
【0148】
【数20】
【0149】
ここで、係数Gは長尺材11の剪断弾性係数を示し、係数Ipは断面二次極モーメントを示す。こうして弾塑性捻れ変形量△ψが特定されると、第2制御データ算出モジュール76は、前述の軸心回り相対回転角に弾塑性捻れ変形量△ψを足し合わせる。その結果、固定型12および可動型13の間で確立される軸心回り実回転角すなわちz軸回り回転角Cは導き出される。
【0150】
前述したように、アルミニウム材を始めとする長尺材11は弾性変形を経て塑性変形に至る。こういった長尺材11が用いられる場合には、固定型12から捻り変形が加えられても、長尺材11が固定型12の拘束から解放されると同時に弾性復元力いわゆるスプリングバックに応じて加工後の長尺製品81に形状誤差が生じてしまう。前述のように導き出された弾塑性捻れ変形量△ψに応じて固定型12および可動型13の間で軸心回り実回転角が特定されれば、そういった弾性復元力いわゆるスプリングバックに起因する長尺製品81の形状誤差は十分に解消されることができる。特に、そういった弾塑性捻れ変形量△ψは捻りモーメントTに基づき幾何学的に算出されることから、実測データの収集といった手間をできる限り省くことが可能となる。
【0151】
その他、第2制御データ算出モジュール76は、例えば図47に示されるように、固定型12側貫通孔24の出口や可動型13側貫通孔28の入り口で長尺材11に引き起こされる断面変形に起因する凹み141の断面変形量d3を同時に特定してもよい。特定された断面変形量d3に基づき、第2制御データ算出モジュール76は、そういった断面変形に起因して引き起こされる長尺材11の捻れ変化量△ωを特定する。この捻れ変化量△ωが特定されると、第2制御データ算出モジュール76は、前述の軸心回り相対回転角に捻れ変化量△ωを足し合わせる。その結果、固定型12および可動型13の間で確立される軸心回り実回転角すなわちz軸回り回転角Cは導き出される。
【0152】
特に、中空の長尺材11では、固定型12および可動型13の間で捻れ変形が引き起こされる際に、固定型12側貫通孔24の出口や可動型13側貫通孔28の入り口では長尺材11の稜線で断面変形すなわち凹み141が生じてしまう。こうした凹み141が引き起こされている間に固定型12が中心軸22回りで回転しても、長尺材11には十分な塑性捻れ変形は生じることはない。したがって、固定型12および可動型13の間では形状データに基づく幾何的な位置関係どおりに十分な捻れ変形は引き起こされることはできず、加工後の長尺製品81に形状誤差が生じてしまう。前述のように導き出された捻れ変化量△ωに基づき固定型12および可動型13の間で軸心回り実回転角が特定されれば、そういった断面変形に起因する長尺製品81の形状誤差は十分に解消されることができる。
【0153】
ここで、捻れ変化量△ωは、例えば図48に示されるように、実測データに基づき特定されればよい。この実測データによれば、
【0154】
【数21】
【0155】
に従って捻れ変化量△ω[゜]は算出されることができる。ここで、係数Pは、断面に沿って長尺材11の稜線に加わる荷重を示し、係数K4は、実測データに基づき算出される比例係数を示す。このとき、荷重Pは、例えば、
【0156】
【数22】
【0157】
に従って近似されればよい。ここで、係数Nは、断面上で特定される稜線の本数を示す。
【0158】
こうした実測データを取得するにあたっては、様々な断面形状や材質、大きさで特定される長尺材11に実際に押し通し曲げ加工機10で捻れ変形が加えられればよい。このとき、固定型12側貫通孔24の出口で長尺材11の凹み141は実測される。こうして実測された凹み141の大きさすなわち断面変形量d3が(荷重P/0.2%耐力σ0.2 )に対してプロットされると、図48に示される実測データは得られることができる。ここでは、3種類のアルミニウム材(JIS6063−O、JIS6063−T1およびJIS6063−T5)に対して断面変形量d3は実測された。この実測データによれば、断面変形量d3と(荷重P/0.2%耐力σ0.2 )との間に概ね比例関係が認められる。凹み141といった断面変形に起因する微小な回転では、こうした比例関係は捻れ変化量△ωと(荷重P/0.2%耐力σ0.2 )との間に適用されても差し支えない。その結果、前述のように係数K4を用いて捻れ変化量△ωは算出されることができることとなる。しかも、長尺材11の材質や材料特性の違いに拘わらず、捻れ変化量△ωを算出するにあたって同一の係数K4が用いられることができることが明らかとされる。ただし、係数K4は長尺材11の断面形状に応じて変化する。
【0159】
さらに、第2制御データ算出モジュール76は、例えば図49に示されるように、固定型12および可動型13に対する長尺材11のクリアランス量d4すなわちガタに起因するクリアランス量を同時に特定してもよい。特定されたクリアランス量d4は前述の軸心回り相対回転角に足し合わせられればよい。その結果、固定型12および可動型13の間で確立される軸心回り実回転角すなわちz軸回り回転角Cは導き出される。
【0160】
前述のように、長尺材11の寸法精度には所定範囲の公差すなわちばらつきが許容される。こういった公差に拘わらず固定型12や可動型13の貫通孔24、28に対して長尺材11を確実に通過させるには、長尺材11の設計寸法と貫通孔24、28の寸法との間にクリアランスすなわちガタを持たせる必要がある。たとえ公差が存在しなくても、固定型12や可動型13の貫通孔24、28に対して長尺材11をスムーズに通過させるには、長尺材11の外形と貫通孔24、28の内面との間にクリアランスすなわちガタを持たせる必要がある。こうしたクリアランスが解消されて固定型12や可動型13が完全に長尺材11に接触するまで、固定型12が中心軸22回りで回転しても長尺材11には実質的に捻れ変形は生じることはない。したがって、固定型12および可動型13の間では形状データに基づく幾何的な位置関係どおりに十分な捻れ変形は引き起こされることはできず、加工後の長尺製品81に形状誤差が生じてしまう。前述のように導き出されたクリアランス量d4に基づき固定型12および可動型13の間で軸心回り実回転角が特定されれば、そういったクリアランスすなわちガタに起因する長尺製品81の形状誤差は十分に解消されることができる。
【0161】
ここで、クリアランス量d4は、例えば図50に示されるように、実測データに基づき特定されればよい。この実測データを取得するにあたっては、長尺材11に実際に押し通し曲げ加工機10で捻れ変形が加えられればよい。このとき、z軸回り回転角Cは実測される。実測されたz軸回り回転角Cに対して捻りモーメントTがプロットされると、図50に示される実測データは得られることができる。得られた実測データに基づき捻りモーメントTの立ち上がりは描き出される。その結果、捻りモーメントT=0で特定されるz軸回り回転角Cによってガタすなわちクリアランス量d4は特定されることができる。
【0162】
こうした一方で、送り量算出モジュール78は、ノット位置特定モジュール72で特定された各ノット102の位置に基づき、固定型12の貫通孔24を通過する長尺材11の送り位置Wを決定する。こうした送り位置Wを特定するにあたって、送り量算出モジュール78は、例えば図51に示されるように、隣接するノット102に設定される断面105a、105bの間で中立軸142を描き出す。こうした中立軸142を描き出すにあたって、送り量算出モジュール78は、前述と同様に、各断面105a、105bに沿って重心線99すなわち重心90から中立軸142までの乖離量ηを算出する。送り量算出モジュール78は、算出された乖離量ηと重心線99とに基づき中立軸142を描き出す。
【0163】
重心線99を基準に中立軸142を描き出すにあたって、送り量算出モジュール78は、各断面105a、105b上で重心線99の方向ベクトルを特定する。こうした方向ベクトルは断面105a、105bに沿って乖離量ηで平行移動させられる。その結果、隣接する2枚の断面105a、105b同士の間では始点ベクトルおよび終点ベクトルが特定される。こうして特定された始点ベクトルおよび終点ベクトルの間に重心線99と同一次数のパラメトリック曲線が描き出される。パラメトリック曲線は始点ベクトルから終点ベクトルに向かって等変化率で曲率を変化させることができる。こうしたパラメトリック曲線によって中立軸142は表現される。こうした処理が全ての断面105a〜105gの間で実現されると、長尺材11の全長にわたって中立軸142は描き出されることができる。
【0164】
隣接する断面105a、105b同士の間では長尺材11の送り量Wは中立軸142の長さS1によって表現されることができる。こうした中立軸142の長さS1を基準に長尺材11の送り量Wは決定される。言い換えれば、重心線99の長さを基準に特定された各断面105a〜105gの位置、すなわち、重心線99に沿って特定される各ノット102の位置は中立軸142の長さS1に基づき補正される。ここでは、重心線99の長さS2に中立軸142の長さS1が代入された後、各断面105a〜105gの位置が特定されればよい。
【0165】
一般に、押し通し曲げ加工機10では、例えば図25に示されるように、固定型12から送り出される長尺材11に可動型13で曲げ加工が施されると、送りの反力によって長尺材11には軸方向圧縮力Pcが加えられてしまう。こうした軸方向圧縮力Pcは長尺材11の長さに変動を引き起こす。こうした長さの変動は曲げの曲率1/Rすなわち曲率半径Rの大きさに応じて変化する。その一方で、長尺材11の曲がり具合すなわち曲率1/Rの大きさに拘わらず中立軸142では軸方向に歪みは生じない。したがって、加工前と加工後とで中立軸142の長さS1は一定に維持される。こうした中立軸142を基準に特定される各送り量Wに可動型13のx座標値やy座標値、y軸回り回転角B、x軸回り回転角A、固定型12のz軸回り回転角Cが関連付けられると、精度の高い長尺製品81が得られることができる。
【0166】
以上のように、NCプログラム生成モジュール64は制御データを算出する。こうした制御データにNCプログラムヘッダやNCプログラムフッタの記述が追加されると、前述のNC加工プログラムは完成する。こうした制御データによれば、スライダ15の前進速度すなわち長尺材11の送り速度が決定されると、可動型13のx軸方向移動速度やy軸方向移動速度、y軸回り回転速度、x軸回り回転速度、固定型12のz軸回り回転速度は決定されることができる。決定された速度に従って可動型13の位置や姿勢並びに固定型12の姿勢が変化する限り、各送り位置Wごとに制御データで指定される可動型13の位置や姿勢並びに固定型12および可動型13の間の相対回転は確実に確立されることができる。
【0167】
なお、第1制御データ算出モジュール74は、弾塑性曲げ変形量、断面変形に起因する出口回り折れ角量、断面変形量およびクリアランス量に基づき可動型13の幾何的位置を補正する必要は必ずしもない。ただし、補正にあたって、弾塑性曲げ変形量、断面変形に起因する出口回り折れ角量、断面変形量およびクリアランス量は、それぞれ単独で参照されてもよく、それらのいかなる組み合わせで参照されてもよい。また、第2制御データ算出モジュール76は、弾塑性捻れ変形量、捻れ変化量およびクリアランス量に基づき固定型12の軸心回り回転角を補正する必要は必ずしもない。ただし、補正にあたって、弾塑性捻れ変形量、捻れ変化量およびクリアランス量は、それぞれ単独で参照されてもよく、それらのいかなる組み合わせで参照されてもよい。
【0168】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、高い精度で押し通し曲げ加工を実現することが可能な押し通し曲げ加工システムは提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 押し通し曲げ加工機の全体構成を概略的に示す側面図である。
【図2】 固定型の拡大正面図である。
【図3】 可動型の拡大正面図である。
【図4】 押し通し曲げ加工システムの全体構成を概略的に示す模式図である。
【図5】 機械座標系の概念を示す固定型の斜視図である。
【図6】 パーソナルコンピュータ(パソコン)の構成を概略的に示すブロック図である。
【図7】 NCプログラム生成モジュールの構成を概略的に示すブロック図である。
【図8】 長尺製品の構造を概略的に示す斜視図である。
【図9】 応力歪み曲線の近似曲線を示す多項式の概念図である。
【図10】 断面に対して設定される機械座標系の概念図である。
【図11】 三次元データで表現される長尺製品の稜線を示す概念図である。
【図12】 二次元データで表現される長尺製品の断面形状を示す平面図である。
【図13】 NC加工プログラムの一具体例を示す図である。
【図14】 x座標値、y座標値、x軸回り回転角、y軸回り回転角およびz軸回り回転角の変動曲線を示すグラフである。
【図15】 曲率の変動曲線を示すグラフである。
【図16】 2本のガイド線に基づき特定される重心線すなわち軸心を示す概念図である。
【図17】 長尺製品の曲がり具合を表現する重心線すなわち軸心を示す概念図である。
【図18】 重心線上で特定される制御点を示す概念図である。
【図19】 長尺製品の各断面ごとに関連付けられる機械座標系を示す透視図である。
【図20】 重心線に基づき特定される長尺製品の断面を示す概念図である。
【図21】 重心線に基づき特定される可動型の位置を示す概念図である。
【図22】 yz平面に投影された長尺製品からy座標値を算出する工程を示す概念図である。
【図23】 xz平面に投影された長尺製品からx座標値を算出する工程を示す概念図である。
【図24】 長尺材の公称応力分布および公称歪み分布を示す図である。
【図25】 可動型に加えられる荷重と可動型の傾斜角との関係を示す概念図である。
【図26】 可動型の傾斜角と中立軸の移動率との関係を示すグラフである。
【図27】 弾塑性曲げ変形量を算出する工程を示す概念図である。
【図28】 剪断変形および断面変形に起因する出口回り折れ角量の概念図である。
【図29】 出口回り折れ角量の実測データを示すグラフである。
【図30】 断面変形量の概念図である。
【図31】 断面変形量の実測データを示すグラフである。
【図32】 クリアランスすなわちガタの概念図である。
【図33】 隣接する断面同士の間で長尺製品の捻れを算出する原理を示す図である。
【図34】 長尺製品の軸心方向に沿って軸心回り比捻れ角の変動を特定する分布曲線を示すグラフである。
【図35】 単純増加曲線および単純減少曲線で描き直された分布曲線を示すグラフである。
【図36】 押し通し曲げ加工機の加工特性に応じて分布曲線を描き直す原理を示すグラフである。
【図37】 描き出された分布曲線に基づき固定型のz軸回り回転角を算出する原理を示すグラフである。
【図38】 固定型および可動型の間で捻られる長尺材の捻れ角を示すグラフである。
【図39】 固定型および可動型の間で捻られる長尺材の比捻れ角の分布を示すグラフである。
【図40】 軸心方向に微小距離D1で送られた後に長尺材の比捻れ角の分布を示すグラフである。
【図41】 軸心方向に微小距離D2で再び送られた後に長尺材の比捻れ角の分布を示すグラフである。
【図42】 固定型および可動型の間で捻られた後に軸心方向に微小距離D1で送られた長尺材の捻れ角を示すグラフである。
【図43】 固定型および可動型の間で捻られた後に軸心方向に微小距離D1で送られた長尺材の比捻れ角の分布を示すグラフである。
【図44】 微小距離D1で送られた後に固定型および可動型の間で捻られた長尺材の比捻れ角の分布を示すグラフである。
【図45】 再び微小距離D2で送られた後に固定型および可動型の間で捻られた長尺材の比捻れ角の分布を示すグラフである。
【図46】 長尺材の剪断応力分布および剪断歪み分布を示す図である。
【図47】 断面変形に起因する捻れ変化量の概念図である。
【図48】 断面変形量の実測データを示すグラフである。
【図49】 クリアランスすなわちガタの概念図である。
【図50】 クリアランス量の実測データを示すグラフである。
【図51】 隣接する断面の間で特定される重心軸および中立軸を示す長尺製品の一部拡大側面図である。
【符号の説明】
10 押し通し曲げ加工機、11 長尺材(形材)、12 第1型としての固定型、13 第2型としての可動型、42 コントローラ、51 中央演算処理装置、52 入力装置、91,92 可動型の移動を示す変動曲線、93,94可動型の姿勢変化を示す変動曲線、95 軸心回り回転角の変化を示す変動曲線、96 曲率変化を示す変動曲線。
Claims (1)
- 固定型および可動型を相次いで通過する長尺材に曲げ加工を施し長尺製品を作り出す押し通し曲げ加工機と、全体座標系に従って長尺製品の形状を表現する形状データを取得する入力装置と、形状データで規定される長尺製品の三次元像上で長尺製品の断面ごとに設定される局部座標系に基づき可動型の位置を特定する演算処理装置と、特定された可動型の位置に基づき可動型の動きを制御するコントローラとを備え、前記演算処理装置は、前記局部座標系の設定にあたって、前記形状データに基づき、前記長尺製品の曲がり具合を表現する少なくとも1本のパラメトリック曲線を特定し、当該パラメトリック曲線の曲率に応じて特定される各制御点ごとにパラメトリック曲線に対する接線ベクトルを算出し、算出された接線ベクトルに基づきパラメトリック曲線の各制御点ごとに前記長尺製品の断面を特定することを特徴とする押し通し曲げ加工システム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000259498A JP3860400B2 (ja) | 1999-11-01 | 2000-08-29 | 押し通し曲げ加工システム |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP11-311237 | 1999-11-01 | ||
JP31123799 | 1999-11-01 | ||
JP2000259498A JP3860400B2 (ja) | 1999-11-01 | 2000-08-29 | 押し通し曲げ加工システム |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2001191119A JP2001191119A (ja) | 2001-07-17 |
JP3860400B2 true JP3860400B2 (ja) | 2006-12-20 |
Family
ID=26566638
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2000259498A Expired - Fee Related JP3860400B2 (ja) | 1999-11-01 | 2000-08-29 | 押し通し曲げ加工システム |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3860400B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR102253050B1 (ko) * | 2019-07-01 | 2021-05-17 | (주)케이씨이앤씨 | 자동으로 파이프를 성형하기 위한 장치, 방법 및 시스템 |
-
2000
- 2000-08-29 JP JP2000259498A patent/JP3860400B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2001191119A (ja) | 2001-07-17 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US6954679B1 (en) | Method of generating control data for bending and torsion apparatuses | |
US5396160A (en) | Method of real-time machine path planning from a math model | |
JP5309288B2 (ja) | 加工誤差予測のためのコンピュータプログラム、加工誤差予測装置およびその予測結果に基づいて工具経路を修正する装置 | |
Xie et al. | Global G3 continuity toolpath smoothing for a 5-DoF machining robot with parallel kinematics | |
JP4721764B2 (ja) | コンピュータ利用設計モデル(cad)の変形 | |
JP2010003018A (ja) | 工具経路算出装置、工具経路算出プログラムおよび工具経路算出方法 | |
EP1817707B1 (en) | Virtual programming of formed component trajectories | |
Sun et al. | A cutter orientation modification method for five-axis ball-end machining with kinematic constraints | |
JP3860400B2 (ja) | 押し通し曲げ加工システム | |
Zhang et al. | Adaptive NC path generation from massive point data with bounded error | |
JP2000235407A (ja) | 表示方法及び表示プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び表示装置 | |
US6014148A (en) | Method for generating two dimensional and three dimensional smooth curves and for driving curve forming devices | |
JP3030762B2 (ja) | Nc工作機械による曲面加工方法 | |
JP2001191122A (ja) | 押し通し曲げ加工機用制御データ作成方法 | |
JP3148108B2 (ja) | 5軸ncデータのチェック方法 | |
JP2001162329A (ja) | 押し通し曲げ加工機用制御データ作成方法 | |
Yang et al. | Inspection path generation in haptic virtual CMM | |
JP2001191120A (ja) | 捻り加工用制御データ作成方法 | |
JP3676139B2 (ja) | 押し通し曲げ加工機用制御データ作成方法 | |
JP2001162328A (ja) | 押し通し曲げ加工機用制御データ作成方法 | |
JP2001191121A (ja) | 捻り加工用制御データ作成方法 | |
JP4949953B2 (ja) | 曲面形状と基準面との距離算出方法 | |
Gupta et al. | A Numerical Investigation to Compare Point Cloud and STL-Based Toolpath Strategies for 5-Axis Incremental Sheet Forming | |
Ishii et al. | Fast Cutter Location Surface Computation Using Ray Tracing Cores | |
JP2822194B2 (ja) | 計算機を用いて3次元形状モデルの2次元投影線図を作成する方法及び装置 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20051121 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20060117 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20060320 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20060919 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20060921 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100929 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100929 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110929 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110929 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120929 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120929 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130929 Year of fee payment: 7 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |