JP3859285B2 - 電池用アルミニウムケースの製造方法及び電池用アルミニウムケース - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、複数個のアルミニウム部材を接合してLiイオン電池等のケースを製造するための、電池用アルミニウムケースの製造方法及び電池用アルミニウムケースに関する。
【0002】
なお、この明細書において、アルミニウムの語はアルミニウム合金を含む意味で用いる。また、ろう材の語ははんだ材を含む意味で用いる。
【0003】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ノートパソコン、携帯電話等の電子機器の小型電源から、自動車用を中心とした大型電源に至るまで、Liイオン電池等の二次電池が広く使用されている。
【0004】
このような二次電池は、電池ケース内に電池作用を有する物質が収容されてなるが、電池ケースの重量が重いと全体重量も大きくなることから、電池ケースは可及的軽量であることが望まれる。また、同一容積で大きな電気出力を取り出すために、電池ケースは薄肉であることが望ましい。このような軽量薄肉化の要請に答えるため、最近では電池ケースとして薄肉のアルミニウム材が用いられるようになってきている。
【0005】
一方、電池ケースは一般に、例えば本体と蓋体のように2種以上の部材を接合することによって形成されるが、接合が不十分であると液漏れや外部からの水分等の侵入を生じる。特に、Liイオン電池の場合、Liが強酸化性の金属であることから、液漏れは勿論のこと外部から水分や酸素の侵入があっても、激しい反応を生じて爆発の恐れがある。
【0006】
このため、漏れや外部水分等の侵入を防止するため、電池ケースを構成する各アルミニウム部材を強固に接合する必要がある。
【0007】
従来、このような電池ケースの強固な接合を可能とする方法として、レーザ溶接法が採用されていた。このレーザ溶接法は、接合すべきアルミニウム部材の接合部位にろう材を介在させるとともに、このろう材にレーザを照射してろう材を溶融し、アルミニウム部材をろう付する方法である。この方法によれば、レーザ光を微細なスポットとして集光できるので、細部のろう付が可能であるとともに、レーザ光の出力を電気的または光学的に制御できるためろう付温度の管理制御も容易であるというような利点を有する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のレーザ溶接法では、ろう材によるレーザ光の反射率が高く、従ってレーザ光の吸収率が低いため、十分なレーザ光を吸収させるためには大出力にてレーザ光を出射させる必要があり、レーザ光発生電源設備等の大型化を招くという欠点があった。
【0009】
また、アルミニウム部材の加熱は、主としてろう材からの熱伝導によって行われるため、その昇温速度が遅く、ろう付速度の低下原因となるという欠点もあった。
【0010】
しかも、レーザ光は、空気中に出射されると急激にそのエネルギが低下し、照射点に至るまでの間のエネルギ損失が大きいという欠点もあった。
【0011】
また、レーザ光は収束性が高いもののある程度の拡散性があるため、加熱を避けたいアルミニウム部材表面へも照射されてしまい、その部分の熱的損傷を生じることがあるというような欠点もあった。
【0012】
しかもまた、溶接可能な材質に制限があり、例えば純アルミニウム部材や3003、5052アルミニウム部材では良好な結果をもたらすが、溶質濃度が高くなると溶接が厄介となるものであった。また、溶接施工上の問題もあり、接合部が曲線形状になるほど良好な溶接が困難となるものであった。このため、Liイオン電池ケースに使用されるような角形のものや、あるいは底浅で比較的大型の弁当箱形状のものでは溶け落ち等の溶接欠陥が生じやすく、特にいずれの形状であってもケースコーナー部の接合には問題があった。
【0013】
この発明は、このような技術的背景に鑑みてなされたものであって、上述のような欠点を解消しうる新たな接合方法を用いた電池用アルミニウムケースの製造方法及び電池用アルミニウムケースの提供を目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明は、複数個のアルミニウム部材を接合して電池ケースを製造するに際し、前記アルミニウム部材の接合界面に、該アルミニウム部材よりも融点の低いろう材を介在させたのち、前記接合界面を接合方向に圧縮し塑性流動させることにより、ろう材を該アルミニウム部材に拡散させ、さらに該アルミニウム部材同士を固相拡散させてアルミニウム部材同士を接合することを特徴とするものである。
【0015】
アルミニウム部材の種類は、特に限定されることはなく、ケース形状に成形した各種の圧延材、押出材、鍛造材、鋳物材等を適宜用いれば良い。レーザ溶接の場合ような材質の制限はなく、いずれのアルミニウム部材であっても良好な接合が可能である。また、複数個のアルミニウム部材が材質の異なるものであっても良い。また、電池ケースの形状も限定されることはない。最も一般には、電池ケースは図1に示すように、有底筒状のケース本体用アルミニウム部材(1)と、該本体の開口部を閉塞する蓋用アルミニウム部材(2)の2個のアルミニウム部材によって構成される場合が多いが、これに限定されることはなく、3個以上のアルミニウム部材の接合体からなるものであっても良い。
【0016】
図2のように、接合されるべきアルミニウム部材(1)(2)の接合界面に、該アルミニウム部材よりも融点の低いろう材(3)を介在させるのは、該ろう材(3)をアルミニウム部材へ拡散させることによって、一般に実施されている個々の方法に比べ、少ない圧縮力、低い接合温度にて強固な接合を得るためである。
【0017】
ろう材はアルミニウム部材の融点よりも低く、かつ接合時の接合界面の温度よりも高い融点のものであれば、その組成は問わない。ろう材の具体例としては、Zn−Al系合金、Sn−Al系合金、Zn−Sn−Al系合金、あるいはこれら各合金にCu、Mg、Si等のうちの1種または2種以上を添加したものを挙示できる。
【0018】
ろう材は、ブレージングシートのような形で接合界面に予め被覆しておいても良いし、粉末状あるいは板状等のろう材を接合界面にサンドイッチ状に配置しても良い。また、ろう材をアルミニウム部材の接合界面に押し付けて塗っても良い。また、接着剤を用いて、粉末状あるいは板状のろう材を接合界面に接着しておいても良く、ろう材の介在態様は任意に設定し得る。
【0019】
アルミニウム部材の接合界面を接合方向に圧縮するのは、アルミニウム部材の接合界面に金属の原子空孔を多量に発生させるためである。即ち、2個のアルミニウム部材が接合するとき拡散現象が生じるが、この拡散現象の担い手として金属の点欠陥、原子空孔が大きく関与している。このため、接合界面を接合方向に塑性流動するに至るまで圧縮して永久歪みを生じさせることにより、金属の原子空孔を多量に発生させるものである。そして、接合界面を塑性流動させることで、アルミニウム原子の前記原子空孔への移動を容易に行わしめ、接合界面を挟んでの原子の置き換えを促進する結果、短時間で良好な接合状態が確実に得られるものである。
【0020】
ここに、アルミニウム部材の接合界面の圧縮は、接合界面の永久圧縮歪みが6%以上となるように行うのが好ましい。永久圧縮歪みを6%以上とすることにより、接合界面に原子空孔を多量に有効に発生させることができる。ただし、永久圧縮歪みが大きすぎると、アルミニウム部材が座屈してケース形状が変化してしまい、所期する内容積を確保できない恐れがあることから、永久圧縮歪みは30%以下、好適には10%以下に設定するのが良い。
【0021】
アルミニウム部材の接合界面を圧縮して塑性流動させる方法は任意である。例えば単純に圧縮しても良いし、接合界面に溝を形成してこの溝に沿って塑性変形するように圧縮しても良いし、鍛造、曲げ、引抜き、圧延の各加工を実施しても良い。また、接合界面に沿ってローラーを押し付けながら回転させても良い。この場合、ローラーの周面形状は、凹凸のない平滑面でもねじ状等の凹凸があっても良い。また、接合界面を棒状のものでこすったり滑らせたりしても良いし、鋭利先端部を有する工具で接合界面をひっかいたりブラッシングしたりしても良いし、母材に振動を与えることによって歪みを付与しても良い。要は、電池ケースを構成するアルミニウム部材の形状や突き合わせ態様に応じて、適宜採択すれば良い。
【0022】
上記のような接合界面の塑性流動により、ろう材が拡散しさらに両アルミニウム部材の拡散が促進され、両アルミニウム部材は強固に固相拡散接合される。
【0023】
なお、接合に際してフラックスの使用の有無は問わないが、接合後の接合界面の腐食を考慮すると、使用しない方が望ましい。また、アルミニウム基合金をろう接する場合には、表面の酸化膜に影響を受けろう材は濡れないが、本方法によればフラックスなしでも良好な濡れ性及びその後の拡散性を示す。
【0024】
而して、接合作業に際しては、ろう材及びアルミニウム部材の拡散を促進するため、接合界面を加熱するのが良い。この発明によれば、通常のアルミニウム部材のろう付温度よりも低い加熱温度でアルミニウム部材を固相拡散接合できる。具体的な加熱温度は、ろう材の融点よりも低くかつ使用するろう材に合わせ適宜選択するが、一般的には、200〜500℃の範囲に設定するのが良い。加熱温度が500℃を超えると、ケース内容物特にLi等に悪影響を及ぼすおそれがあるとともに、母材であるアルミニウム部材が軟化して強度低下を派生し使用時に悪影響を及ぼすおそれがある。一方、200℃未満の温度では、拡散が促進されず、作業時間が長くなる恐れがある。なお、接合界面に6%以上の永久圧縮歪みを付与して接合を行う場合には、前述のとおり、接合界面に多量の原子空孔が発生しているから、永久圧縮歪みが6%未満の場合に比べて加熱温度を低くできる。
【0025】
接合界面の加熱方法は、特に限定されることはない。接合界面を直接加熱しても良いし、所定温度に設定した雰囲気中で作業を行うことにより、接合界面を加熱状態としても良い。最も好ましくは、接合界面の圧縮加工と同時的に接合界面を加工発熱させるのが、効率の面から推奨される。例えば、スピンドル工具をアルミニウム部材に接触させ相対回転させて発熱させるとともに、前記スピンドル工具を押し付けて接合界面を圧縮する方法を挙げ得る。この場合、スピンドル工具とアルミニウム材との相対回転数や押付け力等の調整により発熱温度や永久圧縮歪みを調整できる。
【0026】
また、アルミニウム部材を予め加熱しておかなくても良いが、100〜300℃の範囲で予備加熱しておき、この状態で接合に際してさらに接合界面を加熱した場合には、接合界面における拡散現象がさらに促進されて、加熱温度をさらに低下できる。しかし、100℃未満の予備加熱では、接合に際しての加熱温度をさほど低くできない。一方、300℃を超える予備加熱を施しても、その効果が飽和するため、エネルギの無駄となる。
【0027】
また、アルミニウム部材は製造上がりのままで用いても良いが、望ましくはT5またはT6熱処理したものを用いるのが良い。T5、T6熱処理を施すことによって、アルミニウム部材の時効・析出が進み、あたかも永久歪みを与えたのと同様の効果が得られる。このため、接合界面の加熱温度をより低くでき、作業性が良好になるとともに、接合強度が向上しかつそのばらつきも少なくなって信頼性が向上する。
【0028】
【実施例】
(実施例1)
電池用アルミニウムケース材の素材として、A3003及び本発明の有効性を確認する目的でA6061からなる長さ100mm×幅20mm×厚さ0.5mmの板状アルミニウム部材を複数枚用意した。一方、これらアルミニウム部材の接合界面にすべりを与える装置として、マシニングセンターを用意した。そして、マシニングセンターの先端に特殊製造したスピンドル工具を取り付けた。一方、アルミニウム部材を約280℃に、ろう材を約140℃にそれぞれ加熱し、摩擦力を加えながらろう材を両アルミニウム部材の接合界面に塗った。なお、ろう材は35wt%Zn−1.5wt%Cu−0.8wt%Mg−0.2wt%Ti−1.0wt%Sn−Alの組成のもの(融点約350℃)を用いた。
【0029】
そして、上記2枚の板状アルミニウム部材を重ね合わせて所定位置にセットし、スピンドル工具を一方のアルミニウム部材の表面に加圧状態に接触させた。
【0030】
この状態で雰囲気を150℃に設定することにより、両アルミニウム部材を予備加熱した。そして、スピンドル工具に対する試験片の送りと回転数を表1及び表2のように各種に設定して、接合界面を加工発熱させながら圧縮し塑性流動させることにより、両アルミニウム部材を固相拡散接合した。そのときのアルミニウム部材の永久圧縮歪みは表1及び表2のとおりであった。
【0031】
また、同一のアルミニウム部材及びろう材を用いて、従来一般のろう付法およびレーザ溶接法により、アルミニウム部材を接合した。
【0032】
こうして得られた各試料の引張強度を調べたところ、表1(A3003を用いたもの)及び表2(A6061を用いたもの)のとおりであった。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
上記表1、表2からわかるように、本発明によれば、一般的なろう付やレーザ溶接に比べて極めて良好な接合状態が得られることを確認し得た。
【0036】
また、接合時の接合界面の温度を測定するため熱電対を用い、直径0.1mmのコンスタンタン線が接合界面に位置するように一方のアルミニウム部材に埋め込んだ。また、接合時におけるすべり変形抵抗を測定するため、工具動力計を改造して用い、押し込み方向分力Fnとすべり方向分力Ftを測定した。この実施例で用いた変形方式では、変形の進行とともに接触面量が増大し、接触面の温度も上昇する。接触面の摩擦状態を評価する場合に用いる各分力の比Ft/Fnは変形過程を通じてほぼ一定値を示す。また接触面温度はFtの変化に追従する。予備加熱温度150℃での接合時間と接合界面温度との関係を図3に、押し込み方向分力Fn及びすべり方向分力Ftの経時変化を図4に示す。
【0037】
このすべり変形と温度上昇によって、アルミニウム部材双方の原子は互いに移動し結合に寄与する。そして、接合界面に拡散速度の大きなろう材が存在することで、原子の移動は大きくなる。この時の結合力は高強度の接合面を実現する。
【0038】
(実施例2)
アルミニウム部材とスピンドル工具を常温雰囲気にセットした以外は上記実施例1と同一方法で試験を行った。その結果は表3(A3003を用いたもの)、表4(A6061を用いたもの)のとおりであった。
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
表1、表2及び表3、表4の結果から、アルミニウム部材を予め100℃以上の温度で予備加熱しておくことにより、さらに良好な接合状態が得られることがわかる。
【0042】
(実施例3)
アルミニウム部材として、A6061をT5又はT6処理したものを用いた以外は上記実施例1と同一方法で試験を行った。その結果は表5(T5の場合)及び表6(T6の場合)のとおりであった。
【0043】
【表5】
【0044】
【表6】
【0045】
表2と表5、表6の結果比較から、アルミニウム部材をT5又はT6処理しておくことにより、さらに良好な接合状態が得られることがわかる。
【0046】
(実施例4)
リチウムイオン用電池ケースの製造に当たり、A3003アルミニウムを用いて、図1に示すような有底角形のケース本体用アルミニウム部材(1)と蓋用アルミニウム部材(2)とを製作した。ケース本体用アルミニウム部材(1)はインパクト成形によって、蓋用アルミニウム部材(2)は板金加工によってそれぞれ製作した。ケース本体用アルミニウム部材(1)の大きさは、高さ48mm×幅40mm×厚さ8mmで肉厚は0.6mmとした。また、蓋用アルミニウム部材(2)の大きさは、長さ40mm×幅8mmで肉厚は0.5mmとした。
【0047】
そして、前記ケース本体用アルミニウム部材(1)の上端開口部に蓋用アルミニウム部材(2)を被せて、蓋用アルミニウム部材(2)の周端部をケース本体用アルミニウム部材(1)の開口部周縁に接合することにより、電池ケースを製造した。両アルミニウム部材(1)(2)の接合は、本発明に従い、次のような方法で行った。
【0048】
即ち、蓋用アルミニウム部材(2)の4周縁部全てに、Zn−Cu−Mg−Al系からなるろう材を加熱温度355℃で予めコーティングした。一方、ケース本体用アルミニウム部材(1)の開口部全周縁に、上記ろう材を粉末にしたものを水溶性ポリウレタン樹脂と混合しコーティングした。この蓋用アルミニウム部材(2)とケース本体用アルミニウム部材(1)をそれぞれろう材コーティング面が接するように重ね合わせた。
【0049】
このようにセットしたケース本体用アルミニウム部材(1)と蓋用アルミニウム部材(2)を、特別に製作した装置で永久圧縮歪みが6.5〜7.0%になるように、先端が平面のスピンドル工具(直径4mm)にて押圧力を設定し、回転数と送り速度を変化して接合を行った。このとき、スピンドル工具は150℃に加熱されている。
【0050】
このような方法で実施することで、ケース本体用アルミニウム部材(1)と蓋用アルミニウム部材(2)は押圧力による圧縮永久歪と、スピンドル工具の回転による加工発熱によって速やかに固相拡散し、強固な接合を完了する。
【0051】
一方、同一のケース本体用アルミニウム部材、蓋用アルミニウム部材及びろう材を用いて、従来一般のろう付法およびレーザ溶接法により、両者を接合した。
【0052】
こうして得られた各電池ケースにつき、耐圧強度を比較した。耐圧強度は各電池ケースの底部より空気圧を加えて、ケースが破壊するときの破壊強度をもって評価した。また、前記空気圧の付与をアルコール中で実施し、発生する泡によって漏れが発生したことを判定し、そのときの加圧力を調べた。それらの結果を表7に示す。
【0053】
【表7】
【0054】
上記表7の結果から、本発明によれば耐圧強度と漏れ発生圧力が同じであり、従って電池ケースが破壊されるまでは漏れがないのに対し、ろう付やレーザ溶接の場合には、電池ケースが破壊される前に漏れが生じることがわかる。従って、本発明によれば、漏れや破壊を生じにくい電池用アルミニウムケースを製造できることを確認し得た。
【0055】
【発明の効果】
この発明は、上述の次第で、複数個のアルミニウム部材を接合して電池ケースを製造するに際し、前記アルミニウム部材の接合界面に、該アルミニウム部材よりも融点の低いろう材を介在させたのち、前記接合界面を接合方向に圧縮し塑性流動させることにより、アルミニウム部材を固相拡散接合することを特徴とするものであるから、レーザ溶接法による場合のような設備の大型化やエネルギ損失を生じることなく、簡単な設備でアルミニウム部材の強固な接合が可能となる。
【0056】
しかも、従来のろう付のようにろう材を溶融させる必要がなく、ろう材の融点以下の低温度で接合を行うことができるから、アルミニウム部材の接合界面や他の部位に熱的損傷を生じさせる危険が極めて少なく、信頼性の高い電池ケースを製造できる。
【0057】
しかもまた、接合界面を接合方向に圧縮し塑性流動させれば良いから、使用アルミニウム部材の種類に制限がなく各種のアルミニウム部材を適用できると共に、レーザ溶接の場合のような形状の制約もなく、接合部が曲線形状であっても容易に作業を行うことができ、良好な接合状態を確保できる。
【0058】
また、接合界面の永久圧縮歪みが6%以上となるように圧縮する場合には、さらに良好な接合状態を実現できる。
【0059】
また、接合に際して、接合界面をろう材の融点よりも低い温度に加熱する場合には、接合の進行が促進されて、より作業性良く電池ケースを製造できる効果がある。この場合、接合界面の加熱を接合界面の加工発熱によって行うことによって、接合界面を圧縮加工と同時的に加熱することができ、極めて効率よく接合作業を遂行し得る。さらに、接合界面の加熱前に、アルミニウム部材を予め100℃以上の温度で予備加熱しておくことにより、接合の進行が益々促進されて一層短時間で作業を行うことができる。
【0060】
また、アルミニウム部材として、T5またはT6熱処理したものを用いる場合には、アルミニウム部材の時効・析出が進み、あたかも永久歪みを与えたのと同様の効果が得られる。その結果、接合界面の加熱温度をより低くでき、作業性が良好になるとともに、接合強度が向上しかつそのばらつきも少なくなって信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】電池ケースの一例を、構成部材を分離した状態で示す斜視図である。
【図2】アルミニウム部材の接合時の状態を示す拡大断面図である。
【図3】実施例で行った接合時間と温度の関係を示すグラフである。
【図4】実施例で行った押し込み方向分力Fn及びすべり方向分力Ftの経時変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1…ケース本体用アルミニウム部材
2…蓋用アルミニウム部材
3…ろう材
Claims (11)
- 複数個のアルミニウム部材を接合して電池ケースを製造するに際し、前記アルミニウム部材の接合界面に、該アルミニウム部材よりも融点の低いろう材を介在させたのち、前記接合界面を接合方向に圧縮し塑性流動させることにより、ろう材を該アルミニウム部材に拡散させ、さらに該アルミニウム部材同士を固相拡散させてアルミニウム部材同士を接合することを特徴とする電池用アルミニウムケースの製造方法。
- 接合界面の永久圧縮歪みが6%以上となるように圧縮する請求項1に記載の電池用アルミニウムケースの製造方法。
- 接合に際して、接合界面をろう材の融点よりも低い温度に加熱する請求項1または2に記載の電池用アルミニウムケースの製造方法。
- 接合界面の加熱を接合界面の加工発熱によって行う請求項3に記載の電池用アルミニウムケースの製造方法。
- 接合界面の加熱前に、アルミニウム部材を予め100℃以上の温度で予備加熱しておく請求項3または4に記載の電池用アルミニウムケースの製造方法。
- アルミニウム部材として、T5またはT6熱処理したものを用いる請求項1ないし4のいずれかに記載の電池用アルミニウムケースの製造方法。
- 前記ろう材はZn−Al系合金、Sn−Al系合金、Zn−Sn系合金のいずれかである請求項1から6のいずれかに記載の電池用アルミニウムケースの製造方法。
- 前記ろう材に更にCu、Mg、Siのうち1種または2種以上が添加されている請求項7記載の電池用アルミニウムケースの製造方法。
- 前記接合界面を200〜500℃に加熱する請求項1から5のいずれかに記載の電池用アルミニウムケースの製造方法。
- 請求項1から9のいずれかの方法で製造された電池用アルミニウムケース。
- アルミニウム部材の接合部における耐圧強度と洩れ発生圧力とが実質的に同等であり、いずれの数値も130N/cm2以上である請求項10に記載の電池用アルミニウムケース。
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