JP3858750B2 - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼルエンジンの排気ガス中には煤を主成分とするパティキュレートが含まれており、このパティキュレートを大気中へ放出しないことが望まれている。そのために、機関排気系にパティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタを配置することが提案されている。
【0003】
しかしながら、パティキュレートフィルタによってパティキュレートを捕集すると、捕集パティキュレートによってパティキュレートフィルタの排気抵抗が徐々に増加することとなるために、大幅に排気抵抗が増加する以前に捕集パティキュレートを除去することが必要となる。そのための手段として、特開2001−271633号公報には、周囲に過剰酸素が存在するとNOXを酸素と結合させて保持しかつ周囲の酸素濃度が低下すると結合させたNOX及び酸素をNOXと活性酸素とに分解して放出する活性酸素放出剤をパティキュレートフィルタに担持させることが提案されている。活性酸素放出剤から放出される活性酸素は、捕集パティキュレートをパティキュレートフィルタ上で比較的良好に酸化することができ、こうして、自動的に捕集パティキュレートの除去が可能となる。
【0004】
また、同公報は、パティキュレートフィルタの排気上流側と排気下流側とを逆転して、パティキュレートフィルタ捕集壁の第一捕集面と第二捕集面とを交互に使用してパティキュレートを捕集することも提案している。それにより、一つの捕集面でパティキュレートを捕集する場合に比較して、各捕集壁に捕集されるパティキュレート量を減少させることができ、これは、活性酸素によるパティキュレートの酸化除去を容易する。
【0005】
ところで、前述の活性酸素放出剤は、排気ガス中のSOXもNOXと同様なメカニズムで保持してしまう。こうして保持されたSOXは、NOXのように周囲の酸素濃度を低下させただけでは放出されないために、パティキュレートフィルタの活性酸素放出剤におけるSOXの保持量は増加する一方となる。SOXの保持量が増加すると(以下、S被毒と称する)、その分NOXを保持することができなくなる。前述のパティキュレートフィルタは、パティキュレートの酸化除去と共にNOXを浄化することを意図しており、こうしてSOX被毒によってNOXを保持することができなくなると、NOX浄化が不十分となる。
【0006】
パティキュレートフィルタのS被毒を回復するためには、周囲の酸素濃度を低下させると共にパティキュレートフィルタを高温すれば良いが、パティキュレートフィルタの容量は比較的大きく、これを全体的に高温に加熱するためには多量のエネルギが必要となる。また、パティキュレートフィルタを高温度とすると、担持した活性酸素放出剤及び貴金属触媒が熱劣化してしまう。
【0007】
それにより、パティキュレートフィルタをS被毒させないことが好ましく、パティキュレートフィルタの上流側にSOX捕集手段を配置してパティキュレートフィルタへ流入する以前に排気ガス中のSOXを捕集することが考えられる。この場合において、いずれのSOX捕集手段を使用しても無限にSOXを捕集し続けることはできず、所定量のSOXを捕集した時点でSOX捕集手段からSOXを放出することとなる。
【0008】
こうして放出させた比較的多量のSOXをパティキュレートフィルタへ流入させたのでは、パティキュレートフィルタがS被毒することとなり、SOX捕集手段を設けた意味がなくなる。それにより、SOX捕集手段からSOXを放出させる際には、排気ガスがパティキュレートフィルタをバイパスするようにすることが必要となる。
【0009】
ところで、前述の従来技術において、パティキュレートフィルタの排気上流側と排気下流側とを逆転するための前述の逆転手段は、切換部内に位置して切換部内を上流側と下流側とに遮断する二つの遮断位置を有する弁体を具備しており、弁体の一方の遮断位置においては、切換部内の上流側とパティキュレートフィルタの一方側とが連通されると共に切換部内の下流側とパティキュレートフィルタの他方側とが連通され、こうして、排気ガスはパティキュレートフィルタを一方側から他方側へ流れることとなる。弁体を一方の遮断位置から他方の遮断位置へ切り換えれば、切換部内の上流側がパティキュレートフィルタの他方側へ連通されると共に切換部内の下流側がパティキュレートフィルタの一方側へ連通されるようになり、排気ガスはパティキュレートフィルタを他方側から一方側へ流れる。こうして、パティキュレートフィルタの排気上流側と排気下流側とが逆転されることとなる。
【0010】
このような構成においては、弁体を二つの遮断位置の間の開放位置として切換部内を開放すれば、排気ガスは、切換部内を上流側から下流側へそのまま通過して、パティキュレートフィルタへ流入することはなく、すなわち、パティキュレートフィルタをバイパスする。こうして、前述の切換手段を有する場合には、SOX捕集手段からSOXを放出させる際には、弁体を開放位置として、排気ガスがパティキュレートフィルタをバイパスするようにする。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、こうしてSOX捕集手段からSOXを放出させている時にだけ排気ガスがパティキュレートフィルタをバイパスするようにしても、パティキュレートフィルタのS被毒を完全に防止することはできず、パティキュレートフィルタのS被毒回復のためにパティキュレートフィルタ全体を加熱することが必要になって多量のエネルギが消費されることとなる。
【0012】
従って、本発明の目的は、S被毒可能な活性酸素放出剤を担持するパティキュレートフィルタと、切換部内を上流側と下流側とに遮断可能な弁体を二つの遮断位置の一方から他方へ切り換えることによりパティキュレートフィルタの排気上流側と排気下流側とを逆転する逆転手段と、逆転手段の上流側に配置されたSOX捕集手段とを具備し、SOX捕集手段からSOXを放出させる際には、逆転手段の弁体が切換部内を開放する開放位置とされ排気ガスがパティキュレートフィルタをバイパスするようにする内燃機関の排気浄化装置において、パティキュレートフィルタのS被毒回復に際してのエネルギ消費を最小限とすることである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明による請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置は、S被毒可能な活性酸素放出剤を担持するパティキュレートフィルタと、切換部内を上流側と下流側とに遮断可能な弁体を第一遮断位置及び第二遮断位置の一方から他方へ切り換えることにより前記パティキュレートフィルタの排気上流側と排気下流側とを逆転する逆転手段と、前記逆転手段の上流側に配置されたSOX捕集手段とを具備し、前記弁体が前記第一遮断位置とされる時には排気ガスが前記パティキュレートフィルタを一方側から他方側へ通過し、前記弁体が前記第二遮断位置とされる時には排気ガスが前記パティキュレートフィルタを前記他方側から前記一方側へ通過するようになっており、前記SOX捕集手段からSOXを放出させる際には、前記弁体が前記切換部内を開放する開放位置とされ排気ガスが前記パティキュレートフィルタをバイパスするようにする内燃機関の排気浄化装置において、前記パティキュレートフィルタの少なくとも前記一方側のS被毒を抑制して前記パティキュレートフィルタが全体的にS被毒しないようにすることを特徴とする。
【0014】
また、本発明による請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置は、請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記パティキュレートフィルタのS被毒回復時には、前記弁体は前記第一遮断位置とされ、排気ガスが前記パティキュレートフィルタを前記一方側から前記他方側へ通過するようにすることを特徴とする。
【0015】
また、本発明による請求項3に記載の内燃機関の排気浄化装置は、請求項1又は2に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記SOX捕集手段からSOXを放出させた後に、前記逆転手段の前記弁体を前記開放位置から前記第二遮断位置へ切り換えて、前記パティキュレートフィルタの前記一方側のS被毒を抑制することを特徴とする。
【0016】
また、本発明による請求項4に記載の内燃機関の排気浄化装置は、請求項1から3のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記SOX捕集手段からSOXを放出させた後に、設定期間は前記弁体を前記開放位置に維持して、前記パティキュレートフィルタの少なくとも前記一方側のS被毒を抑制することを特徴とする。
【0017】
また、本発明による請求項5に記載の内燃機関の排気浄化装置は、請求項1から4のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記逆転手段の前記切換部は、第一接続部によって前記パティキュレートフィルタの前記一方側に接続され、第二接続部によって前記パティキュレートフィルタの前記他方側に接続されており、前記第一接続部は前記第二接続部より長くされて、前記パティキュレートフィルタの前記一方側のS被毒を抑制することを特徴とする。
【0018】
また、本発明による請求項6に記載の内燃機関の排気浄化装置は、請求項1から5のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記逆転手段の前記切換部と前記パティキュレートフィルタの前記他方側との間には前記パティキュレートフィルタへ燃料を供給するための燃料供給手段が設けられていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明による請求項7に記載の内燃機関の排気浄化装置は、請求項1から6のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記活性酸素放出剤は、周囲に過剰酸素が存在するとNOXを酸素と結合させて保持しかつ周囲の酸素濃度が低下すると結合させたNOX及び酸素をNOXと活性酸素とに分解して放出するものであることを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明による排気浄化装置を備える4ストロークディーゼルエンジンの概略縦断面図を示しており、図2は図1のディーゼルエンジンにおける燃焼室の拡大縦断面図であり、図3は図1のディーゼルエンジンにおけるシリンダヘッドの底面図である。図1から図3を参照すると、1は機関本体、2はシリンダブロック、3はシリンダヘッド、4はピストン、5aはピストン4の頂面上に形成されたキャビティ、5はキャビティ5a内に形成された燃焼室、6は電気制御式燃料噴射弁、7は一対の吸気弁、8は吸気ポート、9は一対の排気弁、10は排気ポートを夫々示す。吸気ポート8は対応する吸気枝管11を介してサージタンク12に連結され、サージタンク12は吸気ダクト13を介してエアクリーナ14に連結される。吸気ダクト13内には電気モータ15により駆動されるスロットル弁16が配置される。一方、排気ポート10は排気マニホルド17を介して排気管18へ接続される。
【0021】
図1に示されるように排気マニホルド17内には空燃比センサ21が配置される。排気マニホルド17とサージタンク12とはEGR通路22を介して互いに連結され、EGR通路22内には電気制御式EGR制御弁23が配置される。また、EGR通路22回りにはEGR通路22内を流れるEGRガスを冷却するための冷却装置24が配置される。図1に示される実施例では機関冷却水が冷却装置24内に導かれ、機関冷却水によってEGRガスが冷却される。
【0022】
一方、各燃料噴射弁6は燃料供給管25を介して燃料リザーバ、いわゆるコモンレール26に連結される。このコモンレール26内へは電気制御式の吐出量可変な燃料ポンプ27から燃料が供給され、コモンレール26内に供給された燃料は各燃料供給管25を介して燃料噴射弁6に供給される。コモンレール26にはコモンレール26内の燃料圧を検出するための燃料圧センサ28が取付けられ、燃料圧センサ28の出力信号に基づいてコモンレール26内の燃料圧が目標燃料圧となるように燃料ポンプ27の吐出量が制御される。
【0023】
30は電子制御ユニットであり、空燃比センサ21の出力信号と、燃料圧センサ28の出力信号とが入力される。また、アクセルペダル40にはアクセルペダル40の踏込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ41が接続され、電子制御ユニット30には、負荷センサ41の出力信号も入力され、さらに、クランクシャフトが例えば30°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ42の出力信号も入力される。こうして、電子制御ユニット30は、各種信号に基づき、燃料噴射弁6、電気モータ15、EGR制御弁23、燃料ポンプ27、及び、排気管18に配置された切換弁71aを作動する。切換弁71aに関しては後述する。
【0024】
図2は本実施例の排気浄化装置を示す平面図であり、図3はその側面図である。本排気浄化装置は、排気マニホルド17の下流側に排気管18を介して接続された切換部71と、パティキュレートフィルタ70と、パティキュレートフィルタ70の一方側と切換部71とを接続する第一接続部72aと、パティキュレートフィルタ70の他方側と切換部71とを接続する第二接続部72bと、切換部71の下流側の排気通路73とを具備している。切換部71は、切換部71内で排気流れを遮断することを可能とする弁体71aを具備している。弁体71aは、負圧アクチュエータ又はステップモータ等によって駆動される。弁体71aの第一遮断位置において、切換部71内の上流側が第一接続部72aと連通されると共に切換部71内の下流側が第二接続部72bと連通され、排気ガスは、図2に矢印で示すように、パティキュレートフィルタ70の一方側から他方側へ流れる。
【0025】
また、図4は、弁体71aの第二遮断位置を示している。この遮断位置において、切換部71内の上流側が第二接続部72bと連通されると共に切換部71内の下流側が第一接続部72aと連通され、排気ガスは、図4に矢印で示すように、パティキュレートフィルタ70の他方側から一方側へ流れる。こうして、弁体71aを第一遮断位置及び第二遮断位置の一方から他方へ切り換えることによって、パティキュレートフィルタ70へ流入する排気ガスの方向を逆転することができ、すなわち、パティキュレートフィルタ70の排気上流側と排気下流側とを逆転することが可能となる。また、図5は、第一遮断位置と第二遮断位置との間の弁体71aの開放位置を示している。この開放位置において、切換部71内は遮断されることなく、排気ガスは、図5に矢印で示すように、パティキュレートフィルタ70をバイパスして流れる。また、排気管18にはSOX捕集装置74が配置され、第二接続部72bには必要に応じて燃料を噴射可能な燃料供給装置75が配置されており、これらに関して詳しくは後述する。
【0026】
このように、本排気浄化装置は、非常に簡単な構成によって、弁体71aを二つの遮断位置の一方から他方へ切り換えることによりパティキュレートフィルタの排気上流側と排気下流側とを逆転することが可能となると共に、弁体71aを開放位置とすれば、排気ガスがパティキュレートフィルタ70をバイパスすることが可能となる。
【0027】
また、パティキュレートフィルタにおいては、排気ガスの流入を容易にするために大きな開口面積が必要とされるが、本排気浄化装置では、車両搭載性を悪化させることなく、図2及び図3に示すように大きな開口面積を有するパティキュレートフィルタを使用可能である。
【0028】
図6にパティキュレートフィルタ70の構造を示す。なお、図6において、(A)はパティキュレートフィルタ70の正面図であり、(B)は側面断面図である。これらの図に示すように、本パティキュレートフィルタ70は、長円正面形状を有し、例えば、コージライトのような多孔質材料から形成されたハニカム構造をなすウォールフロー型であり、多数の軸線方向に延在する隔壁54によって細分された多数の軸線方向空間を有している。隣接する二つの軸線方向空間において、栓53によって、一方は排気下流側で閉鎖され、他方は排気上流側で閉鎖される。こうして、隣接する二つの軸線方向空間の一方は排気ガスの流入通路50となり、他方は流出通路51となり、排気ガスは、図6(B)に矢印で示すように、必ず隔壁54を通過する。排気ガス中のパティキュレートは、隔壁54の細孔の大きさに比較して非常に小さいものであるが、隔壁54の排気上流側表面及び隔壁54内の細孔表面上に衝突して捕集される。こうして、各隔壁54は、パティキュレートを捕集する捕集壁として機能する。本パティキュレートフィルタ70において、捕集されたパティキュレートを酸化除去するために、隔壁54の両側表面上、及び、好ましくは隔壁54内の細孔表面上にもアルミナ等を使用して以下に説明する活性酸素放出剤と貴金属触媒とが担持されている。
【0029】
活性酸素放出剤とは、活性酸素を放出することによってパティキュレートの酸化を促進するものであり、好ましくは、周囲に過剰酸素が存在すると酸素を取込んで酸素を保持しかつ周囲の酸素濃度が低下すると保持した酸素を活性酸素の形で放出するものである。
【0030】
貴金属触媒としては、通常、白金Ptが用いられており、活性酸素放出剤としてカリウムK、ナトリウムNa、リチウムLi、セシウムCs、ルビジウムRbのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCa、ストロンチウムSrのようなアルカリ土類金属、ランタンLa、イットリウムYのような希土類、および遷移金属から選ばれた少なくとも一つが用いられている。
【0031】
なお、この場合、活性酸素放出剤としては、カルシウムCaよりもイオン化傾向の高いアルカリ金属又はアルカリ土類金属、即ちカリウムK、リチウムLi、セシウムCs、ルビジウムRb、バリウムBa、ストロンチウムSrを用いることが好ましい。
【0032】
次に、このような活性酸素放出剤を担持するパティキュレートフィルタによって、捕集されたパティキュレートがどのように酸化除去されるかについて、白金PtおよびカリウムKの場合を例にとって説明する。他の貴金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、遷移金属を用いても同様なパティキュレート除去作用が行われる。
【0033】
ディーゼルエンジンでは通常空気過剰のもとで燃焼が行われ、従って排気ガスは多量の過剰空気を含んでいる。即ち、吸気通路および燃焼室内に供給された空気と燃料との比を排気ガスの空燃比と称すると、この空燃比はリーンとなっている。また、燃焼室内ではNOが発生するので排気ガス中にはNOが含まれている。また、燃料中にはイオウSが含まれており、このイオウSは燃焼室内で酸素と反応してSO2となる。従って排気ガス中にはSO2が含まれている。従って過剰酸素、NOおよびSO2を含んだ排気ガスがパティキュレートフィルタ70の排気上流側へ流入することになる。
【0034】
図7(A)および(B)はパティキュレートフィルタ70における排気ガス接触面の拡大図を模式的に表わしている。なお、図7(A)および(B)において60は白金Ptの粒子を示しており、61はカリウムKを含んでいる活性酸素放出剤を示している。
【0035】
上述したように排気ガス中には多量の過剰酸素が含まれているので排気ガスがパティキュレートフィルタの排ガス接触面内に接触すると、図7(A)に示されるようにこれら酸素O2がO2 -又はO2-の形で白金Ptの表面に付着する。一方、排気ガス中のNOは白金Ptの表面上でO2 -又はO2-と反応し、NO2となる(2NO+O2→2NO2)。次いで生成されたNO2の一部は白金Pt上で酸化されつつ活性酸素放出剤61内に吸収され、カリウムKと結合しながら図7(A)に示されるように硝酸イオンNO3 -の形で活性酸素放出剤61内に拡散し、硝酸カリウムKNO3を生成する。このようにして、本実施例では、排気ガスに含まれるNOxをパティキュレートフィルタ70に吸収し、大気中への放出量を大幅に減少させることができる。
【0036】
一方、上述したように排気ガス中にはSO2も含まれており、このSO2もNOと同様なメカニズムによって活性酸素放出剤61内に吸収される。即ち、上述したように酸素O2がO2 -又はO2-の形で白金Ptの表面に付着しており、排気ガス中のSO2は白金Ptの表面でO2 -又はO2-と反応してSO3となる。次いで生成されたSO3の一部は白金Pt上で更に酸化されつつ活性酸素放出剤61内に吸収され、カリウムKと結合しながら硫酸イオンSO4 2-の形で活性酸素放出剤61内に拡散し、硫酸カリウムK2SO4を生成する。このようにして活性酸素放出触媒61内には硝酸カリウムKNO3および硫酸カリウムK2SO4が生成される。
【0037】
排気ガス中のパティキュレートは、図7(B)において62で示されるように、パティキュレートフィルタに担持された活性酸素放出剤61の表面上に付着する。この時、パティキュレート62と活性酸素放出剤61との接触面では酸素濃度が低下する。酸素濃度が低下すると酸素濃度の高い活性酸素放出剤61内との間で濃度差が生じ、斯くして活性酸素放出剤61内の酸素がパティキュレート62と活性酸素放出剤61との接触面に向けて移動しようとする。その結果、活性酸素放出剤61内に形成されている硝酸カリウムKNO3がカリウムKと酸素OとNOとに分解され、酸素Oがパティキュレート62と活性酸素放出剤61との接触面に向かい、NOが活性酸素放出剤61から外部に放出される。外部に放出されたNOは下流側の白金Pt上において酸化され、再び活性酸素放出剤61内に吸収される。もちろん、パティキュレートフィルタ70の近傍雰囲気における空燃比が理論空燃比又はリッチとされても、活性酸素放出剤から活性酸素及びNOが放出される。
【0038】
一方、パティキュレート62と活性酸素放出剤61との接触面に向かう酸素Oは硝酸カリウムKNO3のような化合物から分解された酸素である。化合物から分解された酸素Oは高いエネルギを有しており、極めて高い活性を有する。従ってパティキュレート62と活性酸素放出剤61との接触面に向かう酸素は活性酸素Oとなっている。これら活性酸素Oがパティキュレート62に接触するとパティキュレート62は数分から数十分の短時間で輝炎を発することなく酸化せしめられる。また、パティキュレート62を酸化する活性酸素Oは、活性酸素放出剤61へNOが吸収される時にも放出される。また、NOXは酸素原子の結合及び分離を繰り返しつつ活性酸素放出剤61内において硝酸イオンNO3 -の形で拡散するものと考えられ、この間にも活性酸素が発生する。パティキュレート62はこの活性酸素によっても酸化せしめられる。また、このようにパティキュレートフィルタ70上に付着したパティキュレート62は活性酸素Oによって酸化せしめられるがこれらパティキュレート62は排気ガス中の酸素によっても酸化せしめられる。
【0039】
ところで白金Pt及び活性酸素放出剤61はパティキュレートフィルタの温度が高くなるほど活性化するので単位時間当りに活性酸素放出剤61から放出される活性酸素Oの量はパティキュレートフィルタの温度が高くなるほど増大する。また、当然のことながら、パティキュレート自身の温度が高いほど酸化除去され易くなる。従ってパティキュレートフィルタ上において単位時間当りに輝炎を発することなくパティキュレートを酸化除去可能な酸化除去可能微粒子量はパティキュレートフィルタの温度が高くなるほど増大する。
【0040】
図8の実線は単位時間当りに輝炎を発することなく酸化除去可能な酸化除去可能微粒子量Gを示しており、図8において横軸はパティキュレートフィルタの温度TFを示している。なお、図8は単位時間を1秒とした場合の、すなわち、1秒当たりの酸化除去可能微粒子量Gを示しているがこの単位時間としては、1分、10分等任意の時間を採用することができる。例えば、単位時間として10分を用いた場合には単位時間当たりの酸化除去可能微粒子量Gは10分間当たりの酸化除去可能微粒子量Gを表わすことになり、この場合でもパティキュレートフィルタ70上において単位時間当たりに輝炎を発することなく酸化除去可能な酸化除去可能微粒子量Gは図8に示されるようにパティキュレートフィルタ70の温度が高くなるほど増大する。
【0041】
さて、単位時間当りに燃焼室から排出されるパティキュレートの量を排出微粒子量Mと称するとこの排出微粒子量Mが酸化除去可能微粒子量Gよりも少ないとき、例えば、1秒当たりの排出微粒子量Mが1秒当たりの酸化除去可能微粒子量Gよりも少ないとき、或いは10分当たりの排出微粒子量Mが10分当たりの酸化除去可能微粒子量Gよりも少ないとき、即ち図8の領域Iでは燃焼室から排出された全てのパティキュレートがパティキュレートフィルタ70上において輝炎を発することなく順次短時間のうちに酸化除去せしめられる。これに対し、排出微粒子量Mが酸化除去可能微粒子量Gよりも多いとき、即ち図8の領域IIでは全てのパティキュレートを順次酸化するには活性酸素量が不足している。図9(A)〜(C)はこのような場合におけるパティキュレートの酸化の様子を示している。
【0042】
即ち、全てのパティキュレートを酸化するには活性酸素量が不足している場合には図9(A)に示すようにパティキュレート62が活性酸素放出剤61上に付着するとパティキュレート62の一部のみが酸化され、十分に酸化されなかったパティキュレート部分がパティキュレートフィルタの排気上流側面上に残留する。次いで活性酸素量が不足している状態が継続すると次から次へと酸化されなかったパティキュレート部分が排気上流面上に残留し、その結果図9(B)に示されるようにパティキュレートフィルタの排気上流面が残留パティキュレート部分63によって覆われるようになる。
【0043】
このような残留パティキュレート部分63は、次第に酸化され難いカーボン質に変質し、また、排気上流面が残留パティキュレート部分63によって覆われると白金PtによるNO,SO2の酸化作用及び活性酸素放出剤61による活性酸素の放出作用が抑制される。それにより、時間を掛ければ徐々に残留パティキュレート部分63を酸化させることができるが、図9(C)に示されるように残留パティキュレート部分63の上に別のパティキュレート64が次から次へと堆積する。即ち、パティキュレートが積層状に堆積すると、これらパティキュレートは、白金Ptや活性酸素放出剤から距離を隔てているために、例え酸化され易いパティキュレートであっても活性酸素によって酸化されることはない。従ってこのパティキュレート64上に更に別のパティキュレートが次から次へと堆積する。即ち、排出微粒子量Mが酸化除去可能微粒子量Gよりも多い状態が継続するとパティキュレートフィルタ上にはパティキュレートが積層状に堆積してしまう。
【0044】
このように図8の領域Iではパティキュレートはパティキュレートフィルタ上において輝炎を発することなく短時間のうちに酸化せしめられ、図8の領域IIではパティキュレートがパティキュレートフィルタ上に積層状に堆積する。従って、排出微粒子量Mと酸化除去可能微粒子量Gとの関係を領域Iにすれば、パティキュレートフィルタ上へのパティキュレートの堆積を防止することができる。その結果、パティキュレートフィルタ70における排気ガス流の圧損は全くと言っていいほど変化することなくほぼ一定の最小圧損値に維持される。斯くして機関の出力低下を最小限に維持することができる。しかしながら、これが常に実現されるとは限らず、何もしなければパティキュレートフィルタにはパティキュレートが堆積することがある。
【0045】
本実施例では、前述の電子制御ユニット30により図10に示すフローチャートに従って弁体71aを作動制御することにより、パティキュレートフィルタへのパティキュレートの堆積を防止している。本フローチャートは所定時間毎に繰り返される。先ず、ステップ101において、弁体71aの切り換え時期であるか否かが判断される。切り換え時期は、設定時間又は設定走行距離毎とされている。この判断が否定される時にはそのまま終了するが、肯定される時には、ステップ102へ進み、弁体71aを現在の遮断位置から他方の遮断位置へ回動させる。
【0046】
図11は、パティキュレートフィルタの隔壁54の拡大断面図である。前述したように、排気ガスが主に衝突する隔壁54の排気上流側表面及び細孔内の排気ガス流対向面は、一方の捕集面としてパティキュレートを衝突捕集し、活性酸素放出剤により放出された活性酸素によって捕集パティキュレートを酸化除去するが、設定時間又は設定走行距離を走行する間には、図8の領域IIでの運転が実施されることもあり、図11(A)に格子で示すように、酸化除去が不十分となってパティキュレートが残留することがある。この程度のパティキュレートの堆積に伴うパティキュレートフィルタの排気抵抗は車両走行に悪影響を与えるほどではないが、さらにパティキュレートが堆積すれば、何らかの要因によって堆積パティキュレートが一度に着火燃焼した場合に多量の燃焼熱が発生してパティキュレートフィルタが溶損したり、また、機関出力の大幅な低下等の問題を発生する。しかしながら、この時点でパティキュレートフィルタの排気上流側と排気下流側とが逆転されれば、隔壁54の一方の捕集面に残留するパティキュレート上には、さらにパティキュレートが堆積することはなく、一方の捕集面から放出される活性酸素によって残留パティキュレートは徐々に酸化除去される。また、隔壁の細孔内に残留するパティキュレートは、逆方向の排気ガス流によって、図11(B)に示すように、容易に破壊されて細分化され、下流側へ移動する。
【0047】
それにより、細分化された多くのパティキュレートは、隔壁の細孔内に分散し、すなわち、パティキュレートは流動することにより、隔壁の細孔内表面に担持させた活性酸素放出剤と直接的に接触して酸化除去される機会が多くなる。こうして、隔壁の細孔内にも活性酸素放出剤を担持させることで、残留パティキュレートを格段に酸化除去させ易くなる。さらに、この酸化除去に加えて、排気ガスの逆流によって上流側となった隔壁54の他方の捕集面、すなわち、現在において排気ガスが主に衝突する隔壁54の排気上流側表面及び細孔内の排気ガス流対向面(一方の捕集面とは反対側の関係となる)では、排気ガス中の新たなパティキュレートが付着して活性酸素放出剤から放出された活性酸素によって酸化除去される。これらの酸化除去の際に活性酸素放出剤から放出された活性酸素の一部は、排気ガスと共に下流側へ移動し、排気ガスの逆流によっても依然として残留するパティキュレートを酸化除去する。
【0048】
すなわち、隔壁における一方の捕集面の残留パティキュレートには、この捕集面から放出される活性酸素に加えて、排気ガスの逆流によって隔壁の他方の捕集面でのパティキュレートの酸化除去に使用された残りの活性酸素が排気ガスによって到来する。それにより、弁体の切り換え時点において、隔壁の一方の捕集面にある程度パティキュレートが積層状に堆積していたとしても、排気ガスを逆流させれば、残留パティキュレート上に堆積するパティキュレートへも活性酸素が到来することに加えて、さらにパティキュレートが堆積することはないために、堆積パティキュレートは徐々に酸化除去され、次回の逆流までに、ある程度の時間があれば、この間で十分に酸化除去可能である。こうして、パティキュレートの捕集に一方の捕集面と他方の捕集面とを交互に使用することにより、各捕集面によって捕集されるパティキュレート量は、常に一つの捕集面を使用する場合に比較してかなり少なくなるために、捕集パティキュレートの酸化除去に有利である。
【0049】
弁体の切り換えは、設定時間又は設定走行距離毎のように定期的に実施しなくても不定期に実施するようにしても良い。また、機関減速時毎に弁体を切り換えるようにしても良い。機関減速時の判断には、運転者が車両の減速を意図する動作、例えば、アクセルペダルの開放、ブレーキペダルの踏み込み、及びフューエルカット等のいずれかを検出することが利用可能である。本実施例において、弁体71aを第一遮断位置及び第二遮断位置の一方から他方へ切り換える際には、弁体71aが開放位置を通過して、この時に一部の排気ガスがパティキュレートフィルタ70をバイパスすることとなる。しかしながら、機関減速時であれば、燃料噴射量が少なく又はフューエルカットされているために、この時にはパティキュレートが殆ど発生せず、多量のパティキュレートが大気中へ放出されることはない。
【0050】
また、パティキュレートフィルタへのパティキュレート堆積量が設定量となった時に弁体を切り換えるようにしても良い。パティキュレート堆積量の推定には、例えば、パティキュレート堆積量の増加に伴って増大するパティキュレートフィルタ70の直上流側と直下流側との間の差圧を利用することができ、また、パティキュレート堆積量の増加に伴って低下するパティキュレートフィルタ所定隔壁上の電気抵抗値を利用しても良く、また、パティキュレート堆積量の増加に伴って低下するパティキュレートフィルタ所定隔壁上の光の透過率又は反射率を利用しても良い。また、図8のグラフに基づき、現在の機関運転状態から推定される排出微粒子量Mが現在の機関運転状態から推定されるパティキュレートフィルタの温度を考慮した酸化除去可能微粒子量Gを上回る時の差(M−G)をパティキュレート堆積量として積算するようにしても良い。
【0051】
また、排気ガスの空燃比をリッチにすると、すなわち、排気ガス中の酸素濃度を低下させると、活性酸素放出剤61から外部に活性酸素Oが一気に放出される。この一気に放出された活性酸素Oによって、堆積パティキュレートは酸化され易いものとなって容易に酸化除去される。一方、空燃比がリーンに維持されていると白金Ptの表面が酸素で覆われ、いわゆる白金Ptの酸素被毒が生じる。このような酸素被毒が生じるとNOXに対する酸化作用が低下するためにNOXの吸収効率が低下し、斯くして活性酸素放出剤61からの活性酸素放出量が低下する。しかしながら空燃比がリッチにされると白金Pt表面上の酸素が消費されるために酸素被毒が解消され、従って空燃比が再びリッチからリーンに切り換えられるとNOXに対する酸化作用が強まるためにNOXの吸収効率が高くなり、斯くして活性酸素放出剤61からの活性酸素放出量が増大する。従って、空燃比がリーンに維持されている時に空燃比を時折リーンからリッチに一時的に切り換えるとその都度白金Ptの酸素被毒が解消されるために空燃比がリーンである時の活性酸素放出量が増大し、斯くしてパティキュレートフィルタ70上におけるパティキュレートの酸化作用を促進することができる。さらに、この酸素被毒の解消は、言わば、還元物質の燃焼であるために、発熱を伴ってパティキュレートフィルタを昇温させる。それにより、パティキュレートフィルタにおける酸化除去可能微粒子量が向上し、さらに、残留及び堆積パティキュレートの酸化除去が容易となる。弁体71aによってパティキュレートフィルタの排気上流側と排気下流側とを切り換えた直後に排気ガスの空燃比をリッチにすれば、パティキュレートが残留していないパティキュレートフィルタ隔壁における他方の捕集面では、一方の捕集面に比較して活性酸素を放出し易いために、さらに多量に放出される活性酸素によって、一方の捕集面の残留パティキュレートをさらに確実に酸化除去することができる。もちろん、弁体71aの切り換えとは無関係に時折排気ガスの空燃比をリッチにしても良く、それにより、パティキュレートフィルタへパティキュレートが残留及び堆積し難くなる。
【0052】
排気ガスの空燃比をリッチにする方法としては、例えば、低温燃焼、すなわち、燃焼室内の不活性ガス量を増大していくと煤の発生量が次第に増大してピークに達する内燃機関において、煤の発生量がピークとなる不活性ガス量よりも燃焼室内の不活性ガス量を多くすることによって燃焼室内における燃焼時の燃料及びその周囲のガス温度を煤が生成される温度よりも低い温度に抑制し、それにより燃焼室内において煤が生成されるのを抑制する燃焼(特許第3116876号参照)を実施すれば良い。また、単に燃焼空燃比をリッチにしても良い。また、圧縮行程での通常の主燃料噴射に加えて、機関燃料噴射弁によって排気行程又は膨張行程において気筒内に燃料を噴射(ポスト噴射)しても良く、又は、吸気行程において気筒内に燃料を噴射(ビゴム噴射)しても良い。もちろん、ポスト噴射又はビゴム噴射は、主燃料噴射との間に必ずしもインターバルを設ける必要はない。また、機関排気系に燃料を供給することも可能である。
【0053】
こうして、パティキュレートフィルタ70に前述の活性酸素放出剤を担持させることにより、パティキュレートフィルタに70において、捕集パティキュレートを酸化除去させることができると共に、大気中へ放出させることが好ましくない排気ガス中のNOXも吸蔵することができる。ところで、活性酸素放出剤のNOX吸収能力には限度がある。もし、パティキュレートフィルタ70において、NOXを浄化することが意図されていなければ、活性酸素放出剤のNOX吸収能力が飽和してもパティキュレートの酸化除去にはそれほど影響することはなく、特に問題とはならない。しかしながら、活性酸素放出剤のNOX吸収能力が飽和すれば、排気ガス中の新たなNOXを吸蔵することができなくなり、パティキュレートフィルタにおいてNOX浄化が意図されている場合には、活性酸素放出剤のNOX吸収能力が飽和する以前に活性酸素放出剤からNOXを放出させる必要がある。すなわち、パティキュレートフィルタ70に吸収されているNOX量がNOX貯蔵可能量に達する以前に、NOXを放出させ還元浄化する再生の必要がある。こうして、NOXを一気に放出させれば同時に多量の活性酸素も放出されるために、これは捕集パティキュレートの酸化除去にも有利である。
【0054】
この再生を実施するためには、パティキュレートフィルタ70に吸収されているNOX量を推定する必要がある。前述の内燃機関は、低負荷側において低温燃焼を実施し、高負荷側で通常燃焼を実施するものであり、そこで本実施例では、低温燃焼が行われているときの単位時間当りのNOX吸収量Aを要求負荷L及び機関回転数Nの関数としてマップの形で予め求めておき、通常燃焼が行われているときの単位時間当りのNOX吸収量Bを要求負荷L及び機関回転数Nの関数としてマップの形で予め求めておき、これら単位時間当りのNOX吸収量A,Bを積算することによってパティキュレートフィルタに吸収されているNOX量を推定するようにしている。ここで、低温燃焼が行われているときの単位時間当たりのNOX吸収量Aは、もちろん、低温燃焼がリッチ空燃比で行われる時にはNOXは放出されることとなるために、マイナス値となる。本実施例ではこのNOX吸収量が予め定められた許容値を越えたときにパティキュレートフィルタを再生するために、理論空燃比又はリッチ空燃比での低温燃焼を実施するか、又は、膨張行程や排気行程で気筒内へ燃料を噴射するなどして、パティキュレートフィルタ70の近傍雰囲気を理論空燃比又リッチ空燃比とし、少なくとも再生が完了するまでの時間(近傍雰囲気の空燃比が小さいほど短くなる)だけこの状態を維持するようになっている。
【0055】
本実施例において、前述したように、第二接続部72bには燃料供給装置75が配置されているために、パティキュレートフィルタ70を再生するために、この燃料供給装置75から燃料を噴射するようにしても良い。この場合において、図12に示すように、弁体71aは、開放位置から僅かに第二遮断位置側へ回動された位置とされる。それにより、切換部71内は弁体71aによって遮断されることはなく、大部分の排気ガスはパティキュレートフィルタ70をバイパスすることとなるが、一部の排気ガスが第二接続部72bへ流入する。この僅かな量の排気ガスに向けて燃料供給装置75から燃料が噴射され、噴射燃料は、この排気ガスと共にパティキュレートフィルタ70へ流入し、それほど多量の燃料を供給しなくても活性酸素放出剤の近傍雰囲気を十分にリッチ空燃比にすることができる。それにより、パティキュレートフィルタ70からNOXが放出され、放出されたNOXは燃料によって還元浄化される。燃料供給装置75は、噴射燃料全てがパティキュレートフィルタ70内において活性酸素放出剤の近傍雰囲気をリッチ空燃比とするのに使用されるように、第二接続部72bの内壁へ付着しないように燃料を噴射することが好ましい。また、パティキュレートフィルタ70の再生時において、弁体71aを開放位置としてパティキュレートフィルタ70へ排気ガスが流入しないようにして、燃料供給装置75から噴射される燃料が自身慣性力によってパティキュレートフィルタへ供給されるようにしても良い。
【0056】
もし、弁体71aを第二遮断位置としてパティキュレートフィルタ70へ燃料を供給すると、パティキュレートフィルタ70を多量の排気ガスが通過することとなり、燃料はこの多量の排気ガスと共に単にパティキュレートフィルタを通過し易い。こうして、多量の燃料を供給しない限りパティキュレートフィルタ70の近傍雰囲気をリッチ空燃比してパティキュレートフィルタ70を再生することはできず、燃料消費が増大するだけでなく、パティキュレートフィルタ70を単に通過した燃料が大気中へ放出され、排気エミッションを悪化させることとなってしまう。
【0057】
ところで、活性酸素放出剤には、前述したように、排気ガス中のNOXだけでSOXも吸蔵される。SOXは、硫酸塩の形で吸収されており、この硫酸塩も硝酸塩と同様なメカニズムによって活性酸素を放出可能であるが、硫酸塩は、安定な物質であるために、近傍雰囲気をリッチ空燃比としてもパティキュレートフィルタから放出され難く、実際には、パティキュレートフィルタに残留して、吸蔵量が徐々に増加する。パティキュレートフィルタへの硝酸塩又は硫酸塩の吸蔵可能量は有限であり、パティキュレートフィルタにおける硫酸塩の吸蔵量が増加すれば(以下、SOX被毒と称する)、その分、硝酸塩の吸蔵可能量が減少し、遂には、全くNOXを吸収することができなくなる。こうして、パティキュレートフィルタ70がNOXを吸収することができなくなれば、NOX浄化にとって問題となる。
【0058】
それにより、本実施例では、逆転手段、すなわち、切換部71の上流側に位置する排気管18にSOX捕集装置74が配置され、パティキュレートフィルタ70の常に上流側となる位置で排気ガス中のSOXを捕集してパティキュレートフィルタ70のSOX被毒を防止しようとしている。
【0059】
SOX捕集装置74は、例えば、ハニカム構造の担体にSOX吸収剤と好ましくは貴金属触媒等の酸化触媒とを担持したものであり、SOX吸収剤としては、前述の活性酸素放出剤と同様な物質が利用可能であり、特に、バリウムBa及びリチウムLiを使用することが好ましい。これらSOX吸収剤は前述同様なメカニズムでSOXを吸収する。もちろん、SOX捕集装置74においても、SOXの吸蔵可能量は有限であり、これが飽和する以前にSOXを放出させなければならない。
【0060】
SOX捕集装置74におけるSOX吸収量が増加して所定値に達すれば、SOXを放出させるSOX被毒回復を実施しなければならない。この回復時期の判断には、これまでに消費した燃料を積算して、この積算燃料量が設定量に達した時にSOX被毒の回復時期と判断することができる。
【0061】
SOX被毒の回復時期である時には、燃焼空燃比をリーンとして、排気ガス中には比較的多くの酸素が含まれているようにすると共に、前述の低温燃焼によって排気ガス中にHC及びCO等の還元物質が多く含まれるようにするか又は膨張行程や排気行程での気筒内燃料噴射をするか又はSOX捕集装置74の上流側において機関排気系へ燃料を噴射する等して、SOX捕集装置74へ十分な酸素と未燃燃料等の還元物質とを供給し、SOX捕集装置の有する酸化能力によって還元物質を十分に燃焼させる。
【0062】
こうして、SOX捕集装置を600°C程度に昇温させると、安定な硫酸塩は、近傍雰囲気を理論空燃比又はリッチ空燃比として酸素濃度を低下させることにより、SOXとして放出させることができる。また、SOX吸収剤として、リチウムLiを使用すれば、600°Cよりかなり低い温度でもSOXを放出させることができる。SOX捕集装置を700°C以上に昇温すると、担持させた白金Pt等の酸化触媒がシンタリングを起こして機能低下するために、SOX捕集装置74の直下流側の排気温度等を監視して、これが起こらないようにすることが好ましい。このSOX捕集装置74のSOX被毒回復処理中には、切換部71において弁体71aは開放位置とされており、SOX捕集装置から放出されたSOXは、パティキュレートフィルタ70をバイパスしてパティキュレートフィルタ70の活性酸素放出剤に吸収されることはない。SOX捕集装置を高温にして近傍雰囲気を一定時間リッチ空燃比とすると、SOX被毒回復処理は完了したと判断することができ、燃焼空燃比は通常運転に適した空燃比に戻される。
【0063】
ところで、排気ガス中には可溶有機成分SOFが含まれ、このSOFは、粘着性を有し、パティキュレートフィルタ上でパティキュレート同士を付着させ大きな塊に成長させる。これは、パティキュレートフィルタにおいて、パティキュレートを酸化除去させ難くしてパティキュレートフィルタの目詰まりを促進する。それにより、SOX捕集装置が酸化機能を有する触媒を担持していれば、パティキュレートフィルタの上流側で排気ガス中のSOFを焼失させ、SOFによるパティキュレートフィルタの目詰まりの促進を防止することができる。
【0064】
こうしてSOX捕集装置74からSOXを放出させる際に、弁体72aを開放位置としてSOXを含む排気ガスがパティキュレートフィルタ70をバイパスするようにしても、パティキュレートフィルタ70のS被毒を完全に防止することはできない。なぜなら、SOXを含む排気ガスが切換部71内を通過する際に、切換部内に開口する第一接続部72a及び第二接続部72b内へSOXが拡散し、SOX捕集装置のS被毒回復処理の終了時点で弁体72aが開放位置から第一遮断位置及び第二遮断位置のいずれかに切り換えられると、SOXを含む第一接続部72a又は第二接続部72b内の排気ガスがパティキュレートフィルタ70へ流入するためである。
【0065】
一般的には、パティキュレートフィルタ70におけるパティキュレートの良好な酸化除去を意図する等して、弁体71aは開放位置とする以前の遮断位置とは異なる遮断位置に切り換えられ、SOX捕集装置74のS被毒回復処理を介してパティキュレートフィルタ70の排気上流側と排気下流側とが逆転される。こうして、又は、任意に弁体72aを開放位置からいずれの遮断位置へも切り換えるようになっていると、SOX捕集装置74のS被毒回復処理が繰り返されれば、第一接続部72a及び第二接続部72b内のSOXがいずれもパティキュレートフィルタへ流入し、パティキュレートフィルタ70は全体的にS被毒することとなる。それにより、パティキュレートフィルタ70のS被毒回復処理に際して、パティキュレートフィルタの近傍雰囲気の酸素濃度を低下させると共にパティキュレートフィルタ70全体を所望温度へ昇温させなければならなくなる。
【0066】
パティキュレートフィルタ70を昇温するためには、SOX捕集装置74と同様に、リーン空燃比燃焼によって排気ガス中に含まれる多量の酸素と、前述の低温燃焼、膨張行程又は排気行程での気筒内燃料噴射、又は、排気系への燃料噴射等によって排気ガス中に含まれる未燃燃料等の還元物質とをパティキュレートフィルタ70へ供給し、パティキュレートフィルタ70に担持された酸化触媒により酸素を使用して未燃燃料を燃焼させることとなる。但し、SOX捕集装置74が酸化機能を有する場合には、SOX捕集装置74において一部の還元物質が燃焼して消費されることを考慮し、パティキュレートフィルタ70へ確実に酸素及び還元物質が供給されるように排気ガス中に比較的多量の酸素及び還元物質が含まれるようにしなければならない。パティキュレートフィルタ70へ供給された未燃燃料等の還元物質は、主に、パティキュレートフィルタ70の一方側又は他方側の現在の排気入口部において燃焼することとなるが、この燃焼熱は、直ぐに排気ガス流と共にパティキュレートフィルタの現在の排気出口部へ移動し、主に排気出口部を良好に昇温させる。
【0067】
こうして、パティキュレートフィルタの排気出口部は容易に所望温度へ昇温されるが、排気入口部を所望温度へ昇温するには、排気ガス流によって移動する燃焼熱を考慮して排気入口部において多量の燃料を燃焼させなければならず、こうして多量のエネルギ消費が必要となる。もちろん、電気ヒータ等によってパティキュレートフィルタを昇温する場合にも、パティキュレートフィルタ全体を昇温するには、多量のエネルギを消費することとなる。
【0068】
本実施例では、パティキュレートフィルタ70の少なくとも一方側のS被毒を抑制することにより、パティキュレートフィルタ70のS被毒回復処理に際してパティキュレートフィルタの他方側だけを所望温度に昇温すれば良くなり、多量のエネルギ消費を防止するようにしている。電気ヒータ等によってパティキュレートフィルタを昇温する場合には、電気ヒータ等をパティキュレートフィルタの他方側だけに配置すれば良い。
【0069】
パティキュレートフィルタ70のS被毒回復処理においては、弁体71aは第一遮断位置とされ、排気ガスがパティキュレートフィルタの一方側から他方側へ通過するようにする。それにより、少量の未燃燃料をパティキュレートフィルタの排気入口部である一方側において燃焼させれば、S被毒したパティキュレートフィルタの他方側は容易に昇温され、SOXを良好に放出させることができる。また、こうしてパティキュレートフィルタの排気出口部である他方側から放出されたSOXは、排気ガス流に逆らってパティキュレートフィルタへ流入するようなことはなく、パティキュレートフィルタを再びS被毒させることはない。
【0070】
本実施例において、SOX捕集装置74からSOXを放出させた後には、弁体71aを開放位置から第二遮断位置へ切り換えるようになっている。それにより、SOX捕集装置74から放出されたSOXは前述したように切換部71内において第一接続部72a及び第二接続部72b内へ拡散するが、SOX捕集装置74のS被毒回復処理の終了後に第二遮断位置へ切り換えられた弁体71aによって排気ガスはパティキュレートフィルタ70の他方側から一方側へ流れることとなり、第二接続部72b内へ拡散したSOXがパティキュレートフィルタ70の他方側へ流入してパティキュレートフィルタ70の他方側をS被毒することはあっても、第一接続部72a内に拡散したSOXはパティキュレートフィルタ70へ流入することはなく、パティキュレートフィルタ70の一方側がS被毒することはない。こうして、パティキュレートフィルタ70の一方側のS被毒が抑制される。
【0071】
また、本実施例において、SOX捕集装置74からSOXを放出させた後に、設定期間は弁体71aを開放位置に維持するようにしている。これは、SOX捕集装置74のS被毒回復処理の終了直後に弁体71aを第二遮断位置へ切り換えると、SOX捕集装置74から放出されたSOXが全て切換部71を通過していない時に弁体71aが第二遮断位置とされて、第二接続部72bへ拡散しないはずのSOXまでパティキュレートフィルタへ流入させることを防止することができる。また、設定期間を比較的長く設定することにより、SOXを含まない排気ガスが切換部71内を通過するようになり、第一接続部72a及び第二接続部72bに拡散したSOXが、切換部71内へ逆に拡散する。こうして、弁体71aを第二遮断位置へ切り換える際に、第二接続部72b内に含まれるSOX量を僅かにして、パティキュレートフィルタ70の他方側におけるS被毒も抑制される。この場合においては、弁体71aを開放位置から第一遮断位置へ切り換えても、第一接続部72a内に含まれるSOX量も僅かであるために、パティキュレートフィルタ70の一方側のS被毒を抑制することができる。
【0072】
図13は、図2の排気浄化装置の変形例を示している。図2に示す排気浄化装置との違いは、第一接続部72a’が第二接続部72bより長くされていることである。SOX捕集装置74においてSOXを放出している時には、前述したように、切換部71から第一接続部72a’及び第二接続部72b内へSOXが拡散することとなる。このSOXは、弁体が開放位置とされている時にも、すなわち、第一接続部72a’及び第二接続部72b内に排気ガス流が発生しなくても、拡散によって自身でパティキュレートフィルタへ到達してパティキュレートフィルタに吸収されることがある。
【0073】
本変形例においては、第一接続部72a’が第二接続部72bより長くされているために、第一接続部72a’においては、SOXが拡散によってパティキュレートフィルタ70の一方側へ到達し難くなっており、それにより、このような構成によってパティキュレートフィルタ70の一方側のS被毒を抑制することができる。また、切換部71からの拡散によって第一接続部72a’及び第二接続部72bの切換部71近傍のSOX濃度はほぼ等しくなる。すなわち、第一接続部72a’及び第二接続部72bへ流入するSOX量はほぼ等しく、拡散により接続部へ流入するSOX量は接続部の長さに余り関係はない。
【0074】
第一接続部72a’は、長さを長くされているために第二接続部72bより大きな容積を有し、こうして、第一接続部72a’内の全体的なSOX濃度は、第二接続部72b内の全体的なSOX濃度に比較してかなり低くなっている。パティキュレートフィルタへ流入するSOXが全てパティキュレートフィルタへ吸収されることはなく、流入する排気ガスのSOX濃度が低ければ、それだけSOXは吸収され難くなる。こうして、本変形例においては、SOX捕集装置74のS被毒回復処理の完了後に、弁体71aを開放位置から第一遮断位置へ切り換えたとしても、パティキュレートフィルタ70の一方側はそれほどS被毒することはなく、一方側のS被毒を抑制することができる。
【0075】
図2及び図13に示す排気浄化装置において、燃料供給装置75が第二接続部72b、すなわち、切換部71とパティキュレートフィルタ70の他方側との間に設けられている。この燃料供給装置75を使用して、前述したように弁体71aを開放位置から僅かに第二遮断位置側へ回動させてパティキュレートフィルタ70からNOXを放出させる再生処理を実施すれば、僅かな消費燃料で再生処理を完了することができる。
【0076】
しかしながら、燃料供給装置75から噴射される燃料にも硫黄が含まれているために、この燃料が主に供給されるパティキュレートフィルタ70の他方側は、この燃料によってS被毒する。それにより、このような燃料供給装置75を設ける際には、S被毒を抑制したパティキュレートフィルタの一方側が、燃料供給装置75から噴射される燃料によってS被毒しないように、燃料供給装置75は第二接続部72b、すなわち、切換部71とパティキュレートフィルタ70の他方側との間に設けることが好ましい。
【0077】
パティキュレートフィルタ70の他方側におけるS被毒回復処理は、SOX捕集装置74のS被毒回復処理と関係なく実施しても良いが、SOX捕集装置74のS被毒回復処理に続けて実施するようにすれば、S被毒回復処理のために昇温されたSOX捕集装置74の熱をパティキュレートフィルタ70の他方側の昇温に利用することができるために、そのためのエネルギ消費をさらに低減することができる。
【0078】
具体的には、SOX捕集装置74のS被毒回復処理中において弁体71aは開放位置とされ、次いで、SOX捕集装置74のS被毒回復処理が完了すれば、弁体71aを、好ましくは設定期間だけ開放位置に維持した後に、第二遮断位置へ切り換え、第二接続部72b内の拡散SOXによってパティキュレートフィルタの他方側はS被毒させても、パティキュレートフィルタの一方側のS被毒は抑制する。次いで、弁体71aを第一遮断位置へ切り換え、排気ガス中の過剰酸素と未燃燃料とをパティキュレートフィルタの排気入口部である一方側へ流入させ酸化触媒によって燃焼させる。この燃焼熱によってパティキュレートフィルタの排気出口部である他方側を良好に昇温して、パティキュレートフィルタの他方側におけるS被毒を回復するようにする。
【0079】
このパティキュレートフィルタの被毒回復において、弁体71aを第二遮断位置としてパティキュレートフィルタの他方側へ流入する排気ガス及び弁体を第一遮断位置としてパティキュレートフィルタの一方側へ流入する排気ガスは、S被毒回復処理のために高温度とされたSOX捕集装置74を通過する際に加熱されて比較的高い温度を有し、パティキュレートフィルタを加熱する。それにより、パティキュレートフィルタの他方側をS被毒回復に必要な温度に昇温するための燃料量をさらに少なくすることができる。もちろん、電気ヒータ等によってパティキュレートフィルタを昇温する際にも消費電力をさらに低減することができる。
【0080】
前述したように、SOX捕集装置74を設けてもパティキュレートフィルタ70のSOX被毒を完全に防止することはできず、パティキュレートフィルタのSOX被毒回復処理が必要となるが、SOX捕集装置74を上流側に配置したことによってパティキュレートフィルタ70のSOX被毒回復処理の実施頻度をかなり低減させることができる。それにより、前述したように、SOX捕集装置74のS被毒回復処理に続けてパティキュレートフィルタ70のS被毒回復処理を実施することが好ましいが、もちろん、SOX捕集装置74のS被毒回復処理毎にパティキュレートフィルタ70のS被毒再生処理を実施する必要はない。
【0081】
ところで、排気ガス中のカルシウムCaはSO3が存在すると、硫酸カルシウムCaSO4を生成する。この硫酸カルシウムCaSO4は、酸化除去され難く、パティキュレートフィルタ上にアッシュとして残留することとなる。従って、硫酸カルシウムの残留によるパティキュレートフィルタの目詰まりを防止するためには、活性酸素放出剤61としてカルシウムCaよりもイオン化傾向の高いアルカリ金属又はアルカリ土類金属、例えばカリウムKを用いることが好ましく、それにより、活性酸素放出剤61内に拡散するSO3はカリウムKと結合して硫酸カリウムK2SO4を形成し、カルシウムCaはSO3と結合することなくパティキュレートフィルタの隔壁を通過する。従ってパティキュレートフィルタがアッシュによって目詰まりすることがなくなる。こうして、前述したように活性酸素放出剤61としてはカルシウムCaよりもイオン化傾向の高いアルカリ金属又はアルカリ土類金属、即ちカリウムK、リチウムLi、セシウムCs、ルビジウムRb、バリウムBa、ストロンチウムSrを用いることが好ましいことになる。
【0082】
図14はもう一つの排気浄化装置を示す断面図であり、図15はその側面図である。また、図16は図14と異なる弁体の遮断位置を示す断面図であり、図17は、弁体の開放位置を示す断面図である。本排気浄化装置は、中央管部材710と、中央管部材710を取り囲むカバー部材720とを有している。中央管部材710の上流側端部は排気マニホルド17の下流側に排気管18を介して接続され、下流側端部はマフラ等を介して排気ガスを大気中へ放出するための下流排気管740に接続されている。排気管18には、図2及び3に示す排気浄化装置と同様なSOX捕集装置74が配置されている。中央管部材710は、弁体710aが配置された上流部分710bと、上流部分710bの直下流側に位置する中流部分710cと、中流部分710cの直下流側に位置する下流部分710dとから構成されている。
【0083】
上流部分710bの側面には、対向して第一開口710eと第二開口710fとが形成されている。弁体710aは、負圧アクチュエータ又はステップモータ等によって回動されて上流部分710b内を上流側と下流側との間で遮断する二つの遮断位置とすることができる。図14に示す第一遮断位置においては、上流側と第一開口710eとが連通されると共に下流側と第二開口710fとが連通される。また、図16に示す第二遮断位置においては、上流側と第二開口710fとが連通されると共に下流側と第一開口710eとが連通される。
【0084】
中流部分710d内には触媒装置730が配置されている。また、前述同様な長円形断面を有するパティキュレートフィルタ700が外側ケース700aと共に下流部分710dの側面を貫通して配置されている。
【0085】
このような構成によって、弁体710aが第一遮断位置とされると、排気ガスは、図14及び図15に矢印で示すように、上流部分710bの上流側から第一開口710eを通り、中央管部材710とカバー部材720との間の空間へ流出し、パティキュレートフィルタ700を通過した後に、第二開口710fを通り再び上流部分710bへ流入する。その後、排気ガスは、中流部分710c内に配置された触媒装置730を通過し、下流部分710d内をパティキュレートフィルタ700の外側ケース700aの回りを通り下流排気管740へ向けて流れる。
【0086】
一方、弁体710aが第二遮断位置とされると、排気ガスは、図16に示すように、上流部分710bの上流側から第二開口710fを通り、中央管部材710とカバー部材720との間の空間へ流出し、パティキュレートフィルタ700を第一遮断位置とは逆方向に通過した後に、第一開口710eを通り再び上流部分710bへ流入する。その後は、第一遮断位置と同様に、排気ガスは、中流部分710c内に配置された触媒装置730を通過し、下流部分710d内をパティキュレートフィルタ700の外側ケース700aの回りを通り下流排気管740へ向けて流れる。
【0087】
また、図17に示すように、弁体710aは、第一遮断位置と第二遮断位置との間の開放位置とすることも可能である。この開放位置においては、中央管部材710の上流部分710bは解放されるために、排気ガスは、図17に矢印で示すように、カバー部材720と中央管部材710との間の空間へ流出することなく、すなわち、パティキュレートフィルタ700を通過することなく、直接的に中流部分710c内の触媒装置730へ流入する。
【0088】
このような構成により、図2及び3に示した排気浄化装置と同様に、上流側部分710は切換部となり、弁体710aを第一遮断位置及び第二遮断位置の一方から他方へ切り換えることによりパティキュレートフィルタ700の排気上流側と排気下流側とを逆転することが可能となると共に、弁体710aを開放位置とすれば、排気ガスがパティキュレートフィルタ700をバイパスすることができ、また、弁体710aを開放位置から僅かに第二遮断位置側へ回動させることにより、僅かな排気ガスだけをパティキュレートフィルタ700へ流入させることができる。
【0089】
本排気浄化装置においても、パティキュレートフィルタ700には、前述同様な活性酸素放出剤が担持されている。また、図2及び図3に示す排気浄化装置の第二接続部に相当するカバー部材720の第二開口710f近傍には前述同様な燃料供給装置75が配置されている。本排気浄化装置においても、前述の弁体700a及び燃料供給装置75等の前述同様な制御によって前述同様な効果を得ることができる。
【0090】
さらに、本排気浄化装置では、排気ガスが、パティキュレートフィルタ700をバイパスしても、パティキュレートフィルタ700をいずれの方向に通過した後にも、必ず触媒装置730を通過する。この触媒装置730が酸化触媒を担持していれば、触媒装置730を通過する排気ガス中のHC及びCO等の還元物質を浄化することができ、特に、燃料供給装置75から供給された燃料の一部が、パティキュレートフィルタを単に通過したとしても、この燃料を良好に浄化することができる。また、触媒装置730における還元物質の浄化は、還元物質の燃焼であり、この燃焼熱によって触媒装置730を通過する排気ガスが加熱される。こうして比較的高温度の排気ガスが、図15に示すように、パティキュレートフィルタ700の周囲を通過するために、パティキュレートフィルタ700は加熱され、パティキュレートフィルタの酸化除去可能微粒子量が高められる。
【0091】
パティキュレートフィルタに、S被毒する活性酸素放出剤に加えて、活性酸素放出剤としてセリアを担持することも可能である。セリアは、排気ガス中の酸素濃度が高いと酸素を吸収し、排気ガス中の酸素濃度が低下すると活性酸素を放出するものであるために、パティキュレートの酸化除去のために、排気ガス中の空燃比を定期的又は不定期にリッチにする必要がある。セリアに代えて、鉄又は錫を使用しても良い。
【0092】
本実施例のディーゼルエンジンは、低温燃焼と通常燃焼とを切り換えて実施するものとしたが、これは本発明を限定するものではなく、もちろん、通常燃焼のみを実施するディーゼルエンジン、又はパティキュレート及びNOXを排出するガソリンエンジンにも本発明は適用可能である。
【0093】
【発明の効果】
このように、本発明による内燃機関の排気浄化装置によれば、パティキュレートフィルタの一方側を排気入口部又は排気出口部としてパティキュレートフィルタの排気上流側と排気下流側とを逆転する逆転手段と、逆転手段の上流側に配置されたSOX捕集手段とを具備し、SOX捕集手段からSOXを放出させる際には、弁体が切換部内を開放する開放位置とされ排気ガスがパティキュレートフィルタをバイパスするようにする内燃機関の排気浄化装置において、パティキュレートフィルタの少なくとも一方側のS被毒を抑制してパティキュレートフィルタが全体的にS被毒しないようにしている。それにより、パティキュレートフィルタのS被毒回復に際して、パティキュレートフィルタの他方側だけを昇温させれば良く、パティキュレートフィルタ全体を昇温する必要はなくなるために、S被毒回復のエネルギ消費を最小限とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による排気浄化装置を備えるディーゼルエンジンの概略縦断面図である。
【図2】機関排気系における切換部及びパティキュレートフィルタ近傍の平面図である。
【図3】図2の側面図である。
【図4】切換部内の弁体の図2とは異なるもう一つの遮断位置を示す図である。
【図5】切換部内の弁体の開放位置を示す図である。
【図6】パティキュレートフィルタの構造を示す図である。
【図7】パティキュレートの酸化作用を説明するための図である。
【図8】酸化除去可能微粒子量とパティキュレートフィルタの温度との関係を示す図である。
【図9】パティキュレートの堆積作用を説明するための図である。
【図10】パティキュレートフィルタへの多量のパティキュレートの堆積を防止するためのフローチャートである。
【図11】パティキュレートフィルタの隔壁の拡大断面図である。
【図12】パティキュレートフィルタからNOXを放出させる際の切換部内の弁体位置を示す図である。
【図13】機関排気系における図2とは異なる切換部及びパティキュレートフィルタ近傍の平面図である。
【図14】機関排気系における図2とは異なる切換部及びパティキュレートフィルタ近傍の断面平面図である。
【図15】図14の側面図である。
【図16】切換部内の弁体の図14とは異なるもう一つの遮断位置を示す図である。
【図17】切換部内の弁体の開放位置を示す図である。
【符号の説明】
71a,710a…弁体
70,700…パティキュレートフィルタ
74…SOX捕集装置
75…燃料供給装置

Claims (7)

  1. S被毒可能な活性酸素放出剤を担持するパティキュレートフィルタと、切換部内を上流側と下流側とに遮断可能な弁体を第一遮断位置及び第二遮断位置の一方から他方へ切り換えることにより前記パティキュレートフィルタの排気上流側と排気下流側とを逆転する逆転手段と、前記逆転手段の上流側に配置されたSOX捕集手段とを具備し、前記弁体が前記第一遮断位置とされる時には排気ガスが前記パティキュレートフィルタを一方側から他方側へ通過し、前記弁体が前記第二遮断位置とされる時には排気ガスが前記パティキュレートフィルタを前記他方側から前記一方側へ通過するようになっており、前記SOX捕集手段からSOXを放出させる際には、前記弁体が前記切換部内を開放する開放位置とされ排気ガスが前記パティキュレートフィルタをバイパスするようにする内燃機関の排気浄化装置において、前記パティキュレートフィルタの少なくとも前記一方側のS被毒を抑制して前記パティキュレートフィルタが全体的にS被毒しないようにすることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
  2. 前記パティキュレートフィルタのS被毒回復時には、前記弁体は前記第一遮断位置とされ、排気ガスが前記パティキュレートフィルタを前記一方側から前記他方側へ通過するようにすることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
  3. 前記SOX捕集手段からSOXを放出させた後に、前記逆転手段の前記弁体を前記開放位置から前記第二遮断位置へ切り換えて、前記パティキュレートフィルタの前記一方側のS被毒を抑制することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
  4. 前記SOX捕集手段からSOXを放出させた後に、設定期間は前記弁体を前記開放位置に維持して、前記パティキュレートフィルタの少なくとも前記一方側のS被毒を抑制することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
  5. 前記逆転手段の前記切換部は、第一接続部によって前記パティキュレートフィルタの前記一方側に接続され、第二接続部によって前記パティキュレートフィルタの前記他方側に接続されており、前記第一接続部は前記第二接続部より長くされて、前記パティキュレートフィルタの前記一方側のS被毒を抑制することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
  6. 前記逆転手段の前記切換部と前記パティキュレートフィルタの前記他方側との間には前記パティキュレートフィルタへ燃料を供給するための燃料供給手段が設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
  7. 前記活性酸素放出剤は、周囲に過剰酸素が存在するとNOXを酸素と結合させて保持しかつ周囲の酸素濃度が低下すると結合させたNOX及び酸素をNOXと活性酸素とに分解して放出するものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
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