JP3858536B2 - ポリテトラメチレンエーテルグリコールの連続製造法 - Google Patents

ポリテトラメチレンエーテルグリコールの連続製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと略記することがある)の連続製造法に関する。詳しくは、ポリテトラメチレンエーテルグリコールジ酢酸エステル(以下、PTMEと略記することがある)を低級アルコールによりエステル交換してPTMGを製造する方法の改良に関する。
PTMGは、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等のソフトセグメントとして用いられ、ロール等の工業製品、また、靴底、衣料用弾性繊維(スパンデックス等)等に加工されて広く生活に役立っている。
【0002】
【従来の技術】
PTMGの製造方法については、これ迄にいろいろな方法が開示されているが、固体酸触媒及び無水酢酸の存在下にテトラヒドロフラン(以下、THFと略記することがある)を開環重合させて、PTMEとし、次いで得られたPTMEを塩基性触媒の存在下にメタノールのような低級アルコールによりエステル交換してPTMGを製造する方法が廃棄物が少なく、優れた方法である。
【0003】
この場合、エステル交換反応液については、中和又は吸着等の常法により触媒を除去した後、未反応メタノールを蒸留等により分離、回収するが、メタノールを分離、回収後のPTMG中には、残存メタノール及び水からなる軽沸分が約数百ppmの他、THFの開環により生成する1,4−ブタンジオールに代表される低分子量鎖状オリゴマー及び活性中間体の再結合により生成する擬クラウンエーテル型の低分子量環状オリゴマーが合計約数重量%、揮発分として含まれる。
【0004】
これらの不純物の中、メタノールについては、残存するとPTMGの使用用途に大きな影響を及ぼすので、工業原料としてはできるだけ少ないものが要求される。PTMGは、ポリエステルエラストマーやポリウレタンエラストマーのソフトセグメントとして用いられており、これらのエラストマーを製造する際、PTMGをテレフタル酸若しくはジメチルテレフタレート又はジイソシアネートと反応させ、縮合重合又は付加重合により高重合物が生成するが、メタノールが存在すると、メタノールとの反応により重合がそこで停止し、高分子量のポリマーが得られ難くなるので、PTMG中のメタノール含量は極力少なくせねばならない。また、水はジイソシアネートと反応してロスとなる他、その生成物は樹脂の物性を低下させるので、メタノールと同様極力除去する必要がある。
【0005】
低分子量鎖状オリゴマーについては、二官能性グリコールで水酸基価が大きいため、その含有量はPTMG全体の水酸基価への寄与が大きく、引いてはポリエステル化又はポリウレタン化の二液混合比、樹脂の相分離性に大きな影響を与える。従って、PTMG全体への寄与が一定になるように鎖状オリゴマー含有量を制御することが重要である。
一方、環状オリゴマーについては、末端官能基は無いものの、PTMG中では水酸基の希釈剤として、樹脂化の際には可塑剤として働くので、鎖状オリゴマーと同様、含有量を一定に制御することが重要となる。
【0006】
上記軽沸分を極力除去し、オリゴマー含量を一定に制御するには、薄膜蒸発器を用いた蒸発分離が効果的である。PTMGからオリゴマーを蒸発分離する方法としては、特開平1−92221号公報或いは、米国特許第5,282,929号明細書、WO9318083号公報にPTMGの分子量分布を縮小する方法が開示されている。いずれの方法も広い分子量分布を有するPTMGから狭い分子量分布を有する二種のPTMG分画を得る方法を開示したものであるが、蒸発分離前原料組成の変動に対する制御法については何ら開示されていない。
【0007】
THFの開環重合によりPTMGを製造する場合、重合条件の変動により鎖状オリゴマー及び環状オリゴマーの生成量は変動するが、製出するPTMGの水酸基価を一定に制御するには、その水酸基価に大きく影響する鎖状オリゴマーの含有量を制御することが重要である。そして鎖状オリゴマー含有量の制御については、PTMGからオリゴマーを蒸発分離する際に行うことが有効であり、好ましいが、それには蒸発分離前後のPTMGの組成ないし性状、特にその水酸基価をリアルタイムで追跡し、得られたデータを蒸発分離の操作条件に即時反映させることが必要である。
【0008】
しかしながら、水酸基、水分、メタノール等の含有量を追跡分析する方法としては、エステル化法、ガスクロマトグラフ法、加熱残分法を組み合わせる必要があり、即時対応は、到底できなかった。何故なら、該分析法の一つを例に取ると、連続運転用にオンライン化されたガスクロマト分析機器は開発されているが、このオンライン分析機器は通常のガスクロマトグラフィー分析のサンプリングを自動で行う所に特徴があり、機器が分析をする時間はなんら短縮はされておらず、分析値のフィードバックが遅くなることを避けることはできないのである。
【0009】
一方、オンラインのリアルタイム分析を行う新しい手法として、近年、近赤外線による分析が知られている。この分析手法は元来穀類等の蛋白質の測定に用いられてきたが、昨今石油化学プラントの運転を最適化若しくは自動化する方法に用いられ注目され始めている。
例えば、特開平2−28293号公報には赤外線分析光度計を使用してクラッキングファーネスに供給する炭化水素を分析することにより、エチレン、プロピレン等の(ジ)オレフィン等の収率を該分析の関数として制御する方法が開示されている。特開平8−75641号公報には、近赤外線による化学組成やそれに由来する性質の検出方法が、特開平8−178842号公報には、洗浄剤製造工程での二価アルコール成分濃度の分析方法がそれぞれ開示されている。また、蒸留塔制御に近赤外線分析を用いた特許出願として、蒸留塔の留出液又は缶出液、即ち、出口組成のみを測定し、塔の操作量を制御する特開平8−266802号公報が知られている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの公報に記載の近赤外スペクトルを利用する方法は、蒸発分離装置の仕込入口組成又は出口組成の片方だけの分析結果を利用するものであり、仕込原料の変動、及びそれに伴う缶出製品の変動を追尾できず、製品組成を目標値に制御するのは困難である。
本発明は、蒸発分離装置の仕込入口組成と出口組成の両分析を時間遅れなく行うことにより、目的とする一定水酸基価のPTMGを連続製造できるように蒸発分離操作条件の制御を行うところのPTMGの連続製造法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる事情に鑑み鋭意検討した結果、蒸発分離蒸留装置の仕込ラインと缶出ラインの両方に各々直接、近赤外線を透過させてそのスペクトルを測定し、組成分析が可能であることを見い出し、更に蒸発分離装置の操作条件を時間遅れなく且つ高い精度で調整できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明の要旨は、ポリテトラメチレンエーテルグリコールジ酢酸エステルをエステル交換触媒の存在下、低級アルコールによりエステル交換してポリテトラメチレンエーテルグリコールを製造する方法において、エステル交換反応液から未反応低級アルコールを分離、回収した後、揮発分を含むポリテトラメチレンエーテルグリコールを蒸発分離装置に通して処理し、揮発分を分離、除去する際に、処理前後におけるポリテトラメチレンエーテルグリコールの水酸基価を近赤外スペクトルにより分析し、処理後の水酸基価が目標値となるように蒸発分離装置の操作条件を制御することを特徴とするポリテトラメチレンエーテルグリコールの連続製造法、にある。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
(PTMGの製造)
本発明に用いられるPTMEは、通常、固体酸触媒及び無水酢酸の存在下、THFを開環重合させて得られる。触媒としては、イオン交換樹脂、漂白土、ゼオライト、シリカアルミナ等が用いられる。固体酸触媒は分離が容易であり、固定床流通反応に好適である。
【0014】
反応条件については、目的とするPTMGの分子量や用いる酸触媒の種類により異なるが、無水酢酸/THFのモル比については、通常、0.001〜0.3、反応液中における無水酢酸及び触媒の濃度がそれぞれ、0.5〜30重量%及び0.1〜30重量%となるように、原料が仕込まれて、反応温度が、通常、20〜80℃の範囲で、反応圧力が、常圧ないしやや加圧下で、反応時間が、通常0.5〜10時間の範囲で重合が行われ、THFと無水酢酸とのモル比を調整することにより、生成ポリマーの分子量を調整することができる。
かくして得られた重合反応液には、目的とするPTMEの他に、未反応のTHF及び無水酢酸が含まれているので、通常、これらの未反応原料を常圧又は減圧下で留去させる。留去されたTHFと無水酢酸は、必要に応じて精製して反応に再利用することができる。
【0015】
次いで、得られた重合物にエステル交換触媒とアルコールを加えてエステル交換反応を行う。エステル交換の触媒としてはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物又はアルコキシド等が好適に用いられる。特に、アルカリ金属、中でもナトリウムのアルコキシドは、反応速度が大きく、アルコールに対する溶解度も大きいので取り扱いが容易で好適に用いられる。低級アルコールとしては、通常、炭素数1〜4の低級アルコールが用いられるが、特にメタノールが分子量が小さく、同じ重量でもPTMEとのモル比が大きく取れることから好適に用いられる。エステル交換は、PTMGの酢酸エステルに対して触媒を0.001〜1重量%、低級アルコールを5〜50モル倍用いて実施される。また、少量の水の存在下で反応を行っても差し支えない。
エステル交換反応は、平衡反応であるので、末端が全て水酸基のPTMGを得るには、何らかの形で生成する低級アルコールの酢酸エステルを除去しながら実施する必要がある。その方法としては、蒸留設備を設けた回分反応器によって実施する方法もあるが、大量の製品を得るためには設備が大きくなり、実用的ではない。連続式にエステル交換する方法が望ましく、蒸留設備を備えた反応器を使用する方法も考えられるが、設備が高価である。
【0016】
これに対して、蒸留塔内で、反応と分離を同時に行う反応蒸留は設備が小さくて済むので有利である。PTMEよりPTMGを製造する為の反応蒸留は、例えばWO97/23559号公報に記載されている。この方法では、PTME、触媒及び低級アルコールの混合物を、蒸留塔の中部より供給し、エステル交換と同時に生成する酢酸メチルを除去する。更に、蒸留塔下部より、加熱メタノール蒸気を供給し反応を完結させることにしている。この方法では、蒸留塔に供給されるPTMEの量が多いので、反応を完結させるためには、蒸留塔が大きくなってしまう。一方、蒸留塔に仕込む原料混合物を予めエステル交換反応させ、平衡組成に近いものにすることによって、蒸留塔内で反応するPTMEの量を低くし、蒸留塔を小さく出来る方法は、経済的に有利であり好適に用いられる。
塔底液は、PTMGと低級アルコールの混合物になるが、PTMGの濃度を高くすると粘度が上がり、リボイラーのサーモサイホンが働かなくなるので、30〜70%、好ましくは40〜50%の濃度が好適である。また、粘度の上昇に伴って、リボイラー中の液の流動が悪くなるので必要に応じてポンプによって、リボイラー内の液を流動させることも好ましい。
【0017】
(未反応低級アルコール及び揮発分の分離、回収)
本発明においては、触媒を除去したところのエステル交換反応液から常圧蒸留及び減圧蒸留により未反応の低級アルコール(以下、メタノールを例として説明する)を分離、回収し、次いで鎖状及び環状オリゴマー等の揮発分を含む粗PTMGを蒸発分離装置を通して処理し、その際、処理前後におけるPTMGの水酸基価(以下、OHVと略記することがある)を近赤外スペクトルにより分析して、処理後のPTMGの水酸基価が目標値となるように前記装置の操作条件を制御することを特徴とする。
【0018】
エステル交換反応液から未反応メタノールを分離、回収するための方法については、特に限定はされないが、通常、蒸留による方法を用い、常圧蒸留及び減圧蒸留の二段階にて回収するのが好ましい。
その運転条件については、その処理量にもよるが、常圧回分蒸留の場合、温度は通常60〜200℃、処理時間は通常10〜100分であり、好ましくは150℃以下で、未反応メタノールの90〜99%を回収するように運転される。
【0019】
また、減圧回分蒸留の場合、圧力は通常1〜600Torr、温度は通常60〜200℃、処理時間は通常10〜100分であり、好ましくは圧力100Torr以下、温度150℃以下で、粗PTMG中の残存メタノールが100ppm以下、水分が100ppm以下となるように運転される。
次いで、揮発分を通常5重量%以下含む粗PTMGを蒸発分離装置を通して処理する。
【0020】
蒸発分離装置としては特に限定はされないが、好ましい装置として、例えば自然循環型蒸発器、強制循環型蒸発器、機械的撹拌型蒸発器等が挙げられる。
自然循環型蒸発器としては、短管竪型、水平管型、長管竪型上昇液膜型、長管竪型流下液膜型等があり、強制循環型蒸発器としては、多管式、プレート式等があり、機械的撹拌型蒸発器としては、遠心薄膜型、撹拌薄膜型等が挙げられる。これらの中では機械的撹拌型蒸発器が好ましく、特に機械的撹拌薄膜型蒸発器が好ましい。
これらの蒸発分離器を用いて粗PTMGから揮発分を蒸発分離する。しかし、既に未反応メタノールを除去した後の粗PTMGであるので、粘度が高く、真空分離、即ち、減圧下蒸発分離する方が好ましい。
その運転条件については、その処理量にもよるが、圧力は通常10〜1000Pa、好ましくは50〜500Pa、温度は通常100〜300℃、好ましくは150〜250℃、処理時間は通常0.1〜10分、好ましくは0.5〜5分である。なお、蒸発分離器から抜き出されたPTMGは、最終粘度(40℃)200〜1400mPa・秒の製品として得られる。
【0021】
(PTMGの水酸基価の近赤外スペクトルによる分析)
本発明においては、蒸発分離器による処理の際に、その処理前後におけるPTMGの水酸基価を近赤外スペクトルにより分析し、処理後のPTMGの水酸基価が目標値となるように、その操作条件を制御する。ここで制御とは、蒸発分離器における粗PTMGの仕込速度、圧力、温度、処理時間を調節することを意味する。
【0022】
なお、水酸基価の目標値とは、得られたPTMGの分子量及びTHFの開環重合条件により決まるPTMG中の鎖状オリゴマー及び環状オリゴマーの含有量から計算されるPTMGの水酸基価の適正な値を指す。例えば、得られたPTMGの平均分子量が2000で分子量範囲が2000±50であるとき、蒸発分離器による処理後のPTMGの水酸基価の目標値は54.7〜57.5であり、この場合、その蒸発分離器による処理前の値は57.6〜77.5である。
【0023】
近赤外スペクトルによるPTMGの水酸基価の測定は、近赤外スペクトルの1563、1573、2066nmに現れるPTMG中の水酸基の特異吸収を測定し、このデータからPTMGの水酸基価について、予め求めたところの近赤外スペクトルによるデータとJIS K 1557によるデータとの相関式を利用して求めたものである。
なお、この測定の際、試料のPTMGの温度、圧力については、特に制限を受けないが、温度については、通常、100〜300℃、好ましくは150〜250℃、圧力については、通常、0.01〜500kPa、好ましくは0.05〜150kPaであるのが望ましい。
【0024】
近赤外スペクトル分析により、PTMGの水酸基価を約1分で測定することができ、そしてこの分析値を蒸発器の操作条件にマニュアルにて反映させることもできるが、分析器を直接調節器と連結して、分析結果を蒸発器の制御に自動的に反映させることもできる。
通常、工業的には、上記の方法で数平均分子量500〜3000のPTMGが得られ、ポリウレタン弾性繊維やポリウレタンエラストマー、或いはポリエステルエラストマーの材料として用いられる。
【0025】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
(原料の調製)
THF100部、無水酢酸5.6部、酢酸0.2部をジルコニアシリカ触媒3.5部と共に40℃で5時間反応させた。反応物は濾過により触媒を除去した後、常圧の回分蒸留で未反応物の大部分を留去し、次いで10Torrの減圧で回分蒸留し無水酢酸、酢酸の残留分を留去し、更に減圧下で窒素を少量導入して揮発分を除去し、GPCで測定した分子量2000のPTMEを37部得た。残留する無水酢酸、及び酢酸は、それぞれ0.01重量%、0.005重量%であった。PTME35重量%、水酸化カルシウム0.2%を含むメタノール溶液50kg/hを、上部にポールリングを充填した理論段8段の精留部を持ち、仕込み段下部に10段の泡鐘トレイを持った上部直径0.20m、下部直径0.5mの常圧蒸留塔に仕込み、還流比15で運転した。塔底の酢酸メチル濃度が30ppmになるように運転した。塔頂より酢酸メチル20重量%、メタノール80重量%からなる留出液を8.7kg/hで抜き出し、塔底よりPTMG60重量%、メタノール40重量%からなる缶出液を抜き出した。缶出液は冷却後、水酸化カルシウムを濾過し、1重量%の水を加えた後にスルホン酸型強酸性イオン交換樹脂(三菱化学(株)SK1BH)を充填した塔に導入し溶存するCaイオンを除去した。常圧の回分蒸留でメタノールの大部分を留去し、次いで10Torrの減圧で回分蒸留しメタノール、水の残留分を除去した。同様の操作を2回繰り返し、計3回の処理原料A,B,Cを得た。GPCで測定した各PTMGの数平均分子量(Mn)は、Mn(A)=1800,Mn(B)=1740,Mn(C)=1850で、水酸基価(OHV)は、OHV(A)=62.3,OHV(B)=64.5,OHV(C)=60.6であった。
【0026】
分析方法及び条件については以下の方法に従った。
[数平均分子量の測定]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析:キャリブレーションには、英国POLYMER LABORATORIES社のPOLYTETRAHYDROFURANキャリブレーションキットを使用した。
[水酸基価と水分の測定]
JIS K 1557に記載の方法
【0027】
[近赤外スペクトルによる水酸基価の測定]
NIR装置 :横河電機製Infra Spec NR500
フローセル :横河電機製サファイアガラス窓板、光路長5mm
測定温度 :230℃
測定領域 :800〜2500nm、積算32回
光ファイバー:横河電機製NR520−L100
【0028】
[メタノール含量の測定]
ガスクロマトグラフィー(GC)分析:サンプルを秤取後、溶媒イソプロピルベンゼンで希釈し、内部標準にトルエンを用いる内部標準法により定量した。
GC装置:島津GC−14A
カラム:DB−1 0.53mmφ×30m 液膜厚df=1.5μm
カラム温度:100℃スタート 昇温 3℃/分 →121℃
昇温 10℃/分 →150℃
気化室温度:160℃
検出器温度:160℃
【0029】
実施例1
ジャケットを230℃に温調した伝熱面積990cm2 の薄膜蒸発器に、133Paの減圧下、原料Aを30kg/hで仕込み、揮発分を除き、缶出より29.7kg/hでGPC分子量2000のPTMGを得た。缶出液の水酸基価は、56.1、メタノールはGC検出下限(20重量ppm)以下、水分も検出下限(20重量ppm)以下の分析結果を示した。この運転の際に薄膜蒸発器の仕込ラインと缶出ラインに設置した近赤外分光分析器(NIR)から得られるスペクトルを元に事前検量から水酸基価を求め、滴定分析値から求められた水酸基価と合致することを確認した。
【0030】
次いで、仕込原料を原料Bに切替て同一条件にて揮発分カットを実施したところ、NIRによる缶出液分析値、水酸基価が58.3で、目標値54.7〜57.5から外れることを示したので、滴定分析確認用にサンプリングを行った後、薄膜蒸発器の操作条件変更として原料Bの仕込速度を30kg/h→20kg/hに絞り、滞留時間の増加を図った。缶出液の水酸基価が56.1に変わったのをNIRで観察後、サンプリングし滴定分析値で確認した。NIR分析は、オンラインでしかも解析時間も短いために約1分程で分析でき、分析結果を見て、迅速に蒸発器の操作条件(仕込速度:時間,温度,圧力,真空度)に反映させることができた。従って、蒸発器の缶出液の水酸基価管理基準からのズレを常時監視することができるので、仕込液の水酸基価が規格からズレたとき時間的に無駄なく適正な水酸基価に回復することが可能であった。
【0031】
実施例2
実施例1において、仕込原料をAからCに切り替えて、30kg/hの仕込速度で運転を実施したところ、NIRによる缶出液分析値、水酸基価が54.4で目標値54.7〜57.5から外れることを示したので、滴定分析確認用にサンプリングを行った後、薄膜蒸発器の操作条件変更として圧力を133Pa→200Paにした。缶出液の水酸基価が56.1に変わったのをNIRで観察後、サンプリングし滴定分析値で確認した。
【0032】
実施例3
実施例1において、仕込原料をAからBに切り替えて、30kg/hの仕込速度で運転を実施した際に、薄膜蒸発器の操作条件変更としてジャケット温度を230℃→240℃に上げた。缶出液の水酸基価が56.1に変わったのをNIRで観察後、サンプリングし滴定分析値で確認した。
【0033】
比較例1
近赤外線分光分析器によるライン分析を行わない以外は、実施例1と同様に原料をAからBに切り替えた。原料切替により蒸発条件が適正か否かを確認する必要がある度に原料液と缶出液の両方をサンプリングして、水酸基価の滴定分析を実施した。サンプリング時間や分析時間により運転条件変更を実際に行うまでに平均3〜4時間の時間遅れがあり、迅速な制御ができなかった。
分析は、自動ではないために、常時、原料及び蒸発器缶出液の水酸基価を監視することができるわけではなく、運転管理は非常におおざっぱなものであり、分析と分析の合間には管理水酸基価とのずれが発生したまま運転を行っていた。
【0034】
比較例2
近赤外線分光分析器を用いて、蒸発器の出口缶出液の分析だけで蒸発器の制御を試みたが、仕込原料の変動内容によっては、うまく制御できない場合もあり、蒸発器の入口と出口の両方の分析が有効であった。
例えば、実施例1の原料Bにおいて仕込速度30kg/hの処理で得られた水酸基価58.3の缶出液を再度、薄膜蒸発器に導いて、2回薄膜蒸発により目標の56.1にする蒸発条件は設定できたが、一方で未処理の水酸基価58.3の原料を蒸発する条件とは大きく異なっており、蒸発量を含めて缶出分析だけでは、条件規定が難しいことが判明した。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、蒸発分離装置による処理前後におけるPTMGの水酸基価を近赤外スペクトルにより分析することにより、製出するPTMGの水酸基価を時間遅れなく、目標値となるように装置の運転条件を制御することができる。

Claims (5)

  1. ポリテトラメチレンエーテルグリコールジ酢酸エステルをエステル交換触媒の存在下、低級アルコールによりエステル交換してポリテトラメチレンエーテルグリコールを製造する方法において、エステル交換反応液から未反応低級アルコールを分離、回収した後、揮発分を含むポリテトラメチレンエーテルグリコールを蒸発分離装置に通して処理し、揮発分を分離、除去する際に、処理前後におけるポリテトラメチレンエーテルグリコールの水酸基価を近赤外スペクトルにより分析し、処理後の水酸基価が目標値となるように蒸発分離装置におけるポリテトラメチレンエーテルグリコールの仕込速度、圧力、温度、処理時間を調節することを特徴とするポリテトラメチレンエーテルグリコールの連続製造法。
  2. 低級アルコールがメタノールである請求項1に記載のポリテトラメチレンエーテルグリコールの連続製造法。
  3. 蒸発分離装置が薄膜蒸発器である請求項1又は2に記載のポリテトラメチレンエーテルグリコールの連続製造法。
  4. 蒸発分離装置に導入するポリテトラメチレンエーテルグリコール中の揮発分含有量が5重量%以下である請求項1ないし3のいずれかに記載のポリテトラメチレンエーテルグリコールの連続製造法。
  5. 蒸発分離装置が10〜1000Pa且つ150〜250℃で操作される請求項1ないし4のいずれかに記載のポリテトラメチレンエーテルグリコールの連続製造法。
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