JP3857612B2 - 車線境界検出装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に搭載されて走路を撮像するカメラからの入力画像に基づき画像情報を取得し、該画像情報に基づき路面上に描かれた車線境界位置の候補線を検出し、該車線境界位置の候補線に基づき車線境界位置を検出する車線境界検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、車線境界検出装置としては、例えば特開平7−93689号公報に記載されたものが知られている。同公報に記載の装置は、注目する中心画素から車線境界位置の幅相当を超える所定画素数ずつ離れた複数の画素を左右均等に抽出する。そして、これら画素の画像情報の信号レベルの平均値を算出し、これに定数を乗じたものを、当該注目画素をその信号レベルに応じて2値化する閾値とする浮動閾値法を採用している。
【0003】
このように動的に求めた閾値を使用することで、車線境界位置が存在する場合は当該位置を、車線境界位置が存在せず日陰・日向が混在する場合はその境界位置(日向→日陰、日陰→日向)を車線境界位置の候補点として抽出することができる。このとき、2値化の結果から車線境界位置の幅以上となる車線予備候補を決定し、車線予備候補の外側の所定位置の左端部分又は右端部分の平均信号レベルと車線予備候補の平均信号レベルとの比が一定値以上のときに当該車線予備候補を車線境界位置として認識する。
【0004】
また、上記以外で左端部分及び右端部分の平均信号レベルの偏差の絶対値が所定値を超えているとき、平均信号レベルが高い左端部分及び右端部分のいずれか一側を日向部分と認識し、同低い他側を日陰部分と認識する。
【0005】
以上により、撮像する走路に日陰・日向が混在した場合にでも、車線境界位置のみを検出することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記公報に示唆されるように、車両に搭載されたカメラから走路を撮像してその入力画像から車線境界位置を検出する場合、影(日陰)の存在によってその検出精度が著しく影響を受けることになる。特に、当該車両自体の影(自車影)は、走路走行中に走路内に必ず発生するため、車線境界位置の検出に影響を及ぼすことが多い。
【0007】
上記公報の車線境界検出装置では、こうした自車影が存在する場合であっても、同様に車線境界位置のみを検出できることが示唆されている。
しかしながら、この装置は、各画素の画像情報の信号レベルに対し浮動閾値法にて2値化し、その結果を一旦メモリヘ格納する。そして、更に2値化の結果から車線境界位置の幅以上となる車線予備候補を決定してこれに基づき車線境界位置なのか日陰・日向の境界位置なのかを判断する必要がある。このため、多くのリソース(メモリ)を使用することとなっている。
【0008】
本発明の目的は、路面上に自車影が投影される状態にあっても、メモリの消費を増大することなく車線境界位置の検出精度を向上することができる車線境界検出装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両に搭載されて走路を撮像するカメラの映像信号に基づいて画素位置に関連づけた輝度データまたは色相データを取得し、該輝度データ、その微分値及び該色相データのいずれか一つの大きさと所定の候補点検出しきい値との大小比較に基づき路面上に描かれた車線境界位置の候補点を抽出し、該候補点の点群を直線または曲線に当てはめて前記車線境界位置の候補線を検出し、前記車両の両側に対応する画素位置において該車線境界位置の候補線を通る前記候補点の数が最大値となる左右のペアの該候補線を前記車線境界位置として検出する車線境界検出装置において、前記検出された車線境界位置の候補線のうち、画素位置に対応させて予め記憶領域に記憶された前記車両の自車影の存在しうる所定範囲内に属するものを自車影の境界位置の候補線として検出する自車影境界検出手段を備えたことを要旨とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車線境界検出装置において、前記車両からの離隔距離が所定距離内の領域内の画素位置の全輝度データの平均値と所定の判定閾値との大小比較に基づき自車影の存在の有無を判断する自車影存在判断手段を備えたことを要旨とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の車線境界検出装置において、前記車両からの離隔距離が所定距離内の領域内の画素位置の全輝度データの平均値と、該車両からの離隔距離が所定距離外の領域内の画素位置の全輝度データの平均値との大小比較に基づき自車影の存在の有無を判断する自車影存在判断手段を備えたことを要旨とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の車線境界検出装置において、前記車線境界位置の候補線として、前記検出された自車影の境界位置の候補線を使用しないことを要旨とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の車線境界検出装置において、前記抽出された車線境界位置の候補点のうち、画素位置に対応させて予め記憶領域に記憶された自車影の存在しうる所定範囲内に属するものを自車影の境界位置の候補点として検出し、前記車線境界位置の候補点として、検出された自車影の境界位置の候補点を使用しないことを要旨とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の車線境界検出装置において、前検出された自車影の境界位置の候補線の検出頻度が所定閾値を超えたときに、前記車線境界位置の候補線として、該自車影の境界位置の候補線を使用しないことを要旨とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項2又は3に記載の車線境界検出装置において、前記自車影存在判断手段により自車影の存在があると判断されたとき、前記検出された自車影の境界位置の候補線の検出頻度が所定閾値を超えたときに、前記車線境界位置の候補線として、該自車影の境界位置の候補線を使用しないことを要旨とする。
【0016】
(作用)
請求項1又は4に記載の発明によれば、検出された車線境界位置の候補線から自車影の境界位置の候補線が検出される。従って、例えば上記検出された自車影の境界位置の候補線を使用しない車線境界位置の候補線に基づき車線境界位置を検出することで、その検出精度が向上する。また、上記検出に係る自車影の存在しうる所定範囲は予め記憶領域に記憶されていることから、例えば演算の都度に画像処理にて日陰・日向の境界位置などを検出する場合に比べて当該検出のためのメモリの消費も抑制される。
【0017】
請求項2又は3に記載の発明によれば、例えば自車影の存在があると判断されたときにのみ自車影の境界位置の候補線を検出することで、その判別精度が向上する。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、車線境界位置の候補点として、上記検出された自車影の境界位置の候補点を使用しない。従って、この自車影の境界位置の候補点を使用しない車線境界位置の候補点により車線境界位置の候補線を構成し、これに基づき車線境界位置を検出することで、その検出精度が向上する。
【0019】
請求項6又は7に記載の発明によれば、検出された自車影の境界位置の候補線の検出頻度が所定閾値を超えたときに、前記車線境界位置の候補線として、該自車影の境界位置の候補線を使用しない。従って、ノイズ等によって一時的に検出された自車影の境界位置の候補が使用されなくなったりすることが回避される。
特に、検出された自車影の境界位置の候補線の検出頻度を、複数の演算回数に亘って継続的に計ることで、上記自車影の境界位置の候補線を使用しない正当性が増大し、ひいては車線境界位置の検出精度が向上する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図11に従って説明する。
図2は、本実施形態が適用される車両1を示す斜視図である。同図に示されるように、この車両1の後部ドア1aの略中央部にはナンバープレート2の取付枠3が配置されており、その上部には撮像用のCCDカメラ11が設置されている。このCCDカメラ11は、図3に示す態様で車両1後方の路面の画像(映像)を取得するもので、その撮像範囲内に走行する車線4の境界線(車線標示で規定される車線の境界位置)である左白線5L及び右白線5Rの画像を含むように搭載されている。なお、図3では、車線4の路面上に投影された当該車両1の影(自車影6)の画像を併せ含んでいる。
【0021】
図1は、本実施形態が適用される車線逸脱判定装置10を示す概略構成図である。同図に示されるように、この車線逸脱判定装置10は、前記CCDカメラ11と、メインスイッチ12と、インジケータ14と、ブザー15と、自車影境界判別手段、自車影存在判断手段及び自車影隠蔽手段を構成するコントローラ16とを備えている。
【0022】
上記CCDカメラ11は、取得した画像をアナログの映像信号として前記コントローラ16に出力する。
上記メインスイッチ12は利用者(運転者など)により操作されるシステム作動・停止用の操作スイッチであり、その操作状態に応じた信号を上記コントローラ16に出力する。
【0023】
上記インジケータ14は、例えば車室内のインストルメントパネルに設けられており、コントローラ16により点灯駆動されることで利用者によるシステムの作動確認に供される。例えば、車両1の両側に白線が検出されているとき、コントローラ16はインジケータ14を点灯駆動する。
【0024】
上記ブザー15は、車線逸脱の可能性有りと判定されることでコントローラ16により発声駆動される。
上記コントローラ16は、制御マイコン(マイクロコンピュータ)21と、輝度信号抽出回路22と、入力回路23と、インジケータ信号出力回路25と、ブザー信号出力回路26と、RAM(ランダムアクセスメモリ)27とを備えている。
【0025】
上記輝度信号抽出回路22は、CCDカメラ11からの映像信号を入力して輝度信号を抽出し、この輝度信号を制御マイコン21に出力する。
上記入力回路23は、メインスイッチ12からの各操作状態に応じた信号を入力してこれを制御マイコン21に出力する。
【0026】
制御マイコン21は、これら輝度信号抽出回路22及び入力回路23を介して入力した各信号に基づき後述の車線境界検出等の処理を行うとともに当該処理に係る各種データをRAM27に一時記憶する。また、制御マイコン21は、車線逸脱の判定結果に応じて駆動信号を前記ブザー信号出力回路26に出力し、これを介してブザー15を発声駆動する。
【0027】
図4〜図8は、本実施形態での車線境界検出等の処理態様を示すフローチャートである。この処理は、前記メインスイッチ12がオン操作されていることを前提に所定時間ごとの定時割り込みにて繰り返し実行される。
【0028】
処理がこのルーチンに移行すると、制御マイコン21は、ステップ101において各種データの入力処理を実行する。
次いで、制御マイコン21は、ステップ102に移行してカメラ映像の入力処理を実行する。具体的には、制御マイコン21は、CCDカメラ11の映像信号から抽出された輝度信号を入力してこれを各画素ごとにA/D(アナログ/デジタル)変換し、画素位置に関連づけた画像情報としての輝度データとしてRAM27に一時記憶する。この画素位置は、CCDカメラ11の撮像範囲(図3参照)に準じて定義される。なお、上記輝度データは、対応する輝度が明るい(白い)ほど大きく、暗い(黒い)ほど小さい値になる。例えば、この輝度データは8ビット(0〜255)で表されており、輝度が明るいほど値「255」に近づき、暗いほど値「0」に近づく。
【0029】
なお、制御マイコン21は、このカメラ映像の入力処理において、車両1からその後方への離隔距離が大きい(遠い)領域41内の全画素位置及び同離隔距離が小さい(近い)領域42内の全画素位置をそれぞれ設定する(図3参照)。特に、車線境界検出において左白線5L及び右白線5Rがともに検出されている状態では、制御マイコン21は、両領域41,42がこれら左白線5L及び右白線5R間(すなわち、同種の対象物である走路)に配置されるようにする。そして、制御マイコン21は、領域41内の全画素位置の輝度データの平均値Vav1及び領域42内の全画素位置の輝度データの平均値Vav2を併せて演算し、RAM27に一時記憶する。これら平均値Vav1,Vav2は、後述の自車影6の有無の判定処理に供されるものである。
【0030】
次に、制御マイコン21は、ステップ103に移行して白線候補点検出処理を実行する。具体的には、制御マイコン21は、RAM27に一時記憶した各画素の輝度データを順次、水平方向に1ライン分ずつ読み込む(走査する)。すなわち、制御マイコン21は、RAM27より画素位置が水平方向に並ぶ各画素の輝度データをまとめて読み込む。図9は、水平方向の所定ラインに並ぶ各画素の位置と対応する輝度データの一例を示すグラフである。同図に示されるように、水平方向に並ぶ各画素の輝度データは、例えば車線4の左白線5L、右白線5Rに対応して明るくなることでピークを示す。制御マイコン21は、この水平方向の各画素について当該位置に隣接する画素との輝度データの偏差を輝度微分値として演算する。図10は、図9における各画素の位置と対応する輝度微分値の一例を示すグラフである。同図から明らかなように、この輝度微分値は、各輝度データのピークに対応して立ち上がり及び立ち下がりを示す。従って、制御マイコン21は、この立ち上がり又は立ち下がりの微分値の大きさ(絶対値)と所定の白線候補点検出しきい値とを大小比較することで、各走査ラインごと白線や自車影を含めた輪郭線に対応する画素位置の候補(白線候補点)を抽出する。制御マイコン21は、所要数(あるいは全て)の水平方向のラインについて上記白線候補点を抽出する。そして、制御マイコン21は、抽出された全ての白線候補点(画素位置)をRAM27に一時記憶する。
【0031】
次に、制御マイコン21は、ステップ200のサブルーチンに移行して図5の自車影候補点隠蔽処理を実行する。すなわち、ステップ200のサブルーチンに移行した制御マイコン21は、ステップ201において自車影境界検出カウンタを「0」にリセットする。この自車影境界検出カウンタは、ステップ103において抽出された白線候補点が所定範囲(51,52)内に左右のペアで属することが確認される都度にインクリメントされるカウンタである。図11は、自車両1に対応して設定された上記白線候補点に係る所定範囲51,52等を説明するための模式図である。同図では便宜的に平面図として描画しているが、制御マイコン21はこれを画素位置に対応させて認識している。なお、制御マイコン21は、当該車両1の平面形状を略長方形(全長×全幅)Sとみなしてその後方左側端PL、後方右側端PRに相当するデータ(画素位置)を予めそのROM(リードオンリーメモリ)領域に記憶している。また、制御マイコン21は、車両1の後部から後方への離隔距離が所定距離Lの範囲内において、これら後方左側端PL及び後方右側端PRの近傍からそれぞれ末広がりで後方に帯状に伸びる領域を、上記所定範囲51,52として予めそのROM領域に記憶している。所定距離Lは、自車影6が略存在し得ない範囲に基づき設定されている。
【0032】
上記自車影境界検出カウンタをリセットした制御マイコン21は、ステップ202に移行して自車影検出カウンタが所定のしきい値以上か否かを判断する。この自車影検出カウンタは、上記所定範囲51,52内に白線候補点が所定数を超えてペアで属することが確認され、若しくは同白線候補点に基づき後述の態様で検出される車線境界位置の候補線としての白線候補直線が所定範囲(53,54)内に左右のペアで属することが確認される都度にインクリメントされるカウンタである。なお、上記白線候補点のペアは、左右の所定範囲51,52内において最も輝度差の小さいものにより構成される。また、内側から順番に組み合わされてもよい。さらに、上記白線候補直線のペアは、左右の所定範囲53,54内において最も輝度差の小さいものにより構成される。また、内側から順番に組み合わされてもよい。図11に併せ示されるように、制御マイコン21は、車両1の後部から後方への離隔距離が所定距離Lの範囲内において、前記後方左側端PL及び後方右側端PRの近傍からそれぞれ末広がりで後方に帯状に伸びる領域を、上記所定範囲53,54として予めそのROM領域に記憶している。これら所定範囲53,54は、自車影6の影響(日陰・日向の境界の影響)によって白線候補直線として検出されやすい位置に基づき設定されている。
【0033】
ステップ202において自車影検出カウンタが所定のしきい値未満と判断されると、検出された白線候補直線が自車影6の影響を受けていないものと判定して、制御マイコン21はそのまま図4のルーチンに戻ってステップ104に移行する。
【0034】
ステップ202において自車影検出カウンタが所定のしきい値以上と判断されると、検出された白線候補直線が自車影6の影響を受けているものと判定して制御マイコン21は、ステップ203に移行する。そして、制御マイコン21は、1ライン目の走査線から順番に抽出された白線候補点が上記所定範囲51,52内にペアで属する数をカウントする。
【0035】
すなわち、ステップ204に移行して制御マイコン21は、当該ラインにおいて抽出された白線候補点が上記所定範囲51,52内にペアでそれぞれ属するか否かを判断する。そして、上記白線候補点が上記所定範囲51,52内にペアでそれぞれ属すると判断されると、制御マイコン21はステップ205に移行して当該白線候補点を自車影6の候補点(自車影候補点)のペアとして隠蔽する。すなわち、各走査ライン上の輝度微分値のうち、所定範囲51,52内の隠蔽された部分に関しては、輝度微分値が「0」であるとみなされ候補点としては使用されない。
【0036】
次いで、制御マイコン21は、ステップ206に移行して上記自車影境界検出カウンタを「1」インクリメントしてステップ207に移行する。
一方、ステップ204において上記白線候補点が上記所定範囲51,52内にペアで属していないと判断されると、制御マイコン21はそのままステップ207に移行する。
【0037】
ステップ207において制御マイコン21は、全ての走査線でステップ204〜206の処理が完了しているか否かを判断する。そして、全ての走査線で上記処理が完了していないと判断されると、制御マイコン21は次のラインの処理をすべくライン番号を「1」インクリメントしてステップ204の処理に戻る。また、ステップ207において全ての走査線で上記処理が完了していると判断されると、制御マイコン21は図4のルーチンに戻ってステップ104に移行する。
【0038】
ステップ200のサブルーチンを終了してステップ104に移行した制御マイコン21は、白線候補直線検出処理を実行する。具体的には、制御マイコン21は、RAM27に一時記憶した白線候補点を読み込んでこの点群を直線にあてはめる。このときに読み込まれる白線候補点は、ステップ200のサブルーチンにおいて自車影候補点のペアが隠蔽された候補点である。この直線にあてはめる手法として、例えばHough(ハフ)変換が文献等(「松山隆司他:コンピュータビジョン、149/165、新技術コミュニケーションズ:1999」、「P.V.C.Hough:Methods and means for recognizing complex patterns,U.S.PatentNo.3069654(1962)」)で知られている。Hough(ハフ)変換では、白線としての特徴が顕著なもの、すなわち当該直線を通る白線候補点の数が所定値以上のものを白線候補直線とする。特に、抽出する直線に角度による制限を設けたものを白線候補直線とする。あるいは、特徴量抽出等のその他各種の手法を採用してもよい。
【0039】
次に、制御マイコン21はステップ300のサブルーチンに移行し、図6の自車影有無判定処理を実行する。すなわち、ステップ300のサブルーチンに移行した制御マイコン21は、ステップ301において車両1からその後方への離隔距離が小さい(近い)領域42内の輝度データの平均値Vav2が同離隔距離が大きい(遠い)領域41内の輝度データの平均値Vav1以下か否かを判断する。なお、図11に併せ示されるように、これら領域41,42は、それぞれ車両1の後部から後方への離隔距離が所定距離Lよりも大きい位置及び同小さい位置においてそれぞれ設定されている。
【0040】
ここで、平均値Vav2が平均値Vav1以下と判断されると、制御マイコン21は車両1の近くが遠くよりも暗いと判定し、ステップ302に移行して自車影有りと判定・設定する。また、平均値Vav2が平均値Vav1を超えると判断されると、制御マイコン21は車両1の近くが遠くよりも明るいと判定し、ステップ303に移行して自車影無しと判定・設定する。制御マイコン21は、ステップ302若しくは303のいずれかの判定・設定をフラグとしてRAM27に一時記憶する。そして、制御マイコン21は、図4のルーチンに戻ってステップ400のサブルーチンに移行し、図7の自車影検出処理を実行する。すなわち、ステップ400のサブルーチンに移行した制御マイコン21は、ステップ401において自車影が有るか否かを判断する。この判断は、ステップ300のサブルーチンにおいて登録されたフラグに基づき行われる。
【0041】
ここで、自車影が有ると判断されると制御マイコン21はステップ402に移行し、ステップ104で検出された白線候補直線から自車影の境界位置の候補直線(自車影の境界位置の候補線としての自車影候補直線)をペアで検出する。具体的には、上記白線候補直線が前記所定範囲53,54内にペアで属するものを確認する。この自車影候補直線は、自車影6の境界が白線候補直線として誤認された可能性のあるものである。この領域判定にあたっては、白線候補直線が所定範囲53,54内を通る位置、角度等が考慮される。すなわち、所定距離L内において、当該白線候補直線の線分が所定範囲53,54内に属するか否かに基づき上記確認が行われる。そして、制御マイコン21はステップ403に移行して、自車影境界検出カウンタが所定のしきい値以上か否かを判断する。なお、上記所定範囲53,54の各広がりに比べて、前記所定範囲51,52の広がりが大きいのは、抽出する白線候補点がノイズの影響を受けやすく、その抽出位置のばらつきが大きいことに対応するものである。
【0042】
ステップ403において自車影境界検出カウンタが上記しきい値以上と判断されると、制御マイコン21は自車影の候補点(所定範囲51,52にペアで存在する白線候補点)の数が多いと判定してステップ405に移行する。また、ステップ403において自車影境界検出カウンタが上記しきい値未満と判断されると、制御マイコン21はステップ404に移行して自車影候補直線がペアで検出されているか否かを判断する。そして、自車影候補直線がペアで検出されていると判断されると、制御マイコン21はステップ405に移行する。
【0043】
ステップ405において制御マイコン21は、前記自車影検出カウンタが所定の最大値か否かを判断する。この最大値は、自車影の候補点や自車影候補直線が存在する継続性を判断するのに十分な値に基づき設定されている。ここで、自車影検出カウンタが上記最大値と判断されると、制御マイコン21はそのまま図4のルーチンに戻る。また、自車影検出カウンタが上記最大値ではないと判断されると、制御マイコン21はステップ406に移行して自車影検出カウンタを「1」インクリメントし、図4のルーチンに戻る。
【0044】
一方、ステップ401において自車影がないと判断され、若しくはステップ404において自車影候補直線がペアで検出されていないと判断されると、制御マイコン21はステップ407に移行する。
【0045】
ステップ407において制御マイコン21は、前記自車影検出カウンタが値「0」か否かを判断する。ここで、自車影検出カウンタが値「0」と判断されると、制御マイコン21はそのまま図4のルーチンに戻る。また、自車影検出カウンタが値「0」ではないと判断されると、制御マイコン21はステップ408に移行して自車影検出カウンタを「1」デクリメントし、図4のルーチンに戻る。
【0046】
以上の態様で自車影検出カウンタの更新等を行った制御マイコン21は、図4のルーチンに戻ってステップ500のサブルーチンに移行し、図8の自車影候補直線隠蔽処理を実行する。すなわち、ステップ500のサブルーチンに移行した制御マイコン21は、ステップ501において上記自車影検出カウンタが所定のしきい値以上か否かを判断する。ここで、自車影検出カウンタが上記しきい値以上と判断されると、制御マイコン21はステップ402に検出された自車影候補直線のペアを隠蔽し、白線候補直線としては使用しないようにし、図4のルーチンに戻る。ステップ402で隠蔽されなかった候補直線が白線候補直線とみなされる。また、自車影検出カウンタが上記しきい値未満と判断されると、制御マイコン21はそのまま図4のルーチンに戻る。なお、上記白線候補直線のペアは、左右の所定範囲53,54内において最も輝度差の小さいものにより構成される。
【0047】
以上の態様で自車影候補直線の隠蔽等を行った制御マイコン21は、図4のルーチンに戻ってステップ105に移行する。
ステップ105において制御マイコン21は、複数ある白線候補直線から最も確からしい2本の直線を白線として抽出する。このときの白線候補直線は、ステップ500のサブルーチンにおいて自車影検出カウンタの値に応じて自車影候補直線が隠蔽等され、使用できないようにされることなく残った候補直線である。最も確からしい2本の直線は、車両1の両側に対応する画素位置において各1本ずつ抽出される。基本的に、抽出される直線は、白線候補直線のうちこれを通る白線候補点の数が最大値となる左右のペアとする。この直線の抽出に当たっては、例えば前回の検出結果からの車両1のピッチ、ロール、ヨーの各角度、横方向の移動距離つまり、車両1が所定時間内で移動しうる範囲と車線幅の範囲とが考慮される。制御マイコン21は、抽出された一対の白線を画素位置に対応させてRAM27に一時記憶する。
【0048】
次いで、制御マイコン21は、ステップ106に移行して車線逸脱判定処理を実行する。具体的には、制御マイコン21は、ステップ105で認識された白線と自車両1との相対位置に基づき車線4からの逸脱判定を行う。そして、制御マイコン21は、その後の処理を一旦終了する。なお、この処理において車線4から逸脱する可能性があると判定されると、制御マイコン21はブザー信号出力回路26に駆動信号を出力し、ブザー15から報知音を発声する。
【0049】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、検出された自車影候補直線が隠蔽された残りの白線候補直線に基づき白線5L,5Rを検出することで、その検出精度を向上できる。また、上記検出に係る自車影6の存在しうる所定範囲(53,54)は予めROM領域に登録されていることから、例えば演算の都度に画像処理にて日陰・日向の境界位置などを検出する場合に比べて当該検出のためのメモリの消費も抑制できる。あるいは、制御マイコン21による演算負荷も軽減できる。
【0050】
(2)本実施形態では、自車影6の存在があると判断されたときにのみ自車影候補直線を検出することで、その検出精度を向上できる。
(3)本実施形態では、検出された自車影候補直線の検出頻度等(自車影検出カウンタ)を、複数の演算回数に亘って継続的に計り、これが所定のしきい値を超えたときに、上記自車影候補直線が隠蔽される。従って、ノイズ等によって一時的に検出された自車影候補直線が白線候補直線から隠蔽されたりすることを回避できる。そして、白線候補直線から自車影候補直線を隠蔽する正当性を増大し、ひいては白線の検出精度を向上できる。
【0051】
(4)本実施形態では、検出された自車影候補点が隠蔽された残りの白線候補点により白線候補直線を構成し、これに基づき白線5L,5Rを検出することで、その検出精度を向上できる。
【0052】
(5)本実施形態では、自車影6の有無に応じた車線境界検出を行うことで、特にCCDカメラ11からの画像が自車影6の影響を受けている状態において、破線等のように非連続的な白線又はかすれた白線等を検出する際に有効である。
【0053】
なお、本発明の実施の形態は上記実施形態に限定されるものではなく、次のように変更してもよい。
・前記実施形態においては、白線候補点の検出にあたって水平方向の各画素の輝度データの微分値の大きさ(絶対値)と白線候補点検出しきい値とを比較した(ステップ103及び図10参照)。これに対して、図9に示される水平方向の各画素について輝度データ自体と同様の白線候補点検出しきい値とを比較することで、白線候補点を検出してもよい。
【0054】
・前記実施形態において、水平方向の各画素の輝度データの微分値の大きさと白線候補点検出しきい値とを比較して、左右の対向する内側の位置、左右の相反する外側の位置、若しくは左右の各内側及び外側の中間位置(又は重心位置)を白線候補点としてもよい。
【0055】
・前記実施形態においては、自車影境界位置の候補とする対象は、所定範囲51,52内における白線候補点における最も輝度差の小さいペア、及び所定範囲53,54内における白線候補直線における最も輝度差の小さいペアであった。これに対して、自車影境界位置の候補とする対象は、最も内側に存在する白線候補点のペア若しくは白線候補直線のペアであってもよい。若しくは、内側でなく外側であってもよい。
【0056】
・前記実施形態においては、CCDカメラ11からの映像信号から輝度信号を抽出して、これに基づく輝度データにて白線検出を行った。これに対して、例えばカラータイプのカメラでは、その映像信号から色相(色合い)のデータを抽出し、これに基づき白線検出を行ってもよい。
【0057】
・前記実施形態においては、各領域41,42内の画素位置の全輝度データに基づき平均値Vav1,Vav2をそれぞれ演算し、これに基づき自車影6の有無を判定した。これに対して、例えば各領域41,42内の画素位置の全輝度データに基づき合計値、若しくは分散値をそれぞれ演算し、これに基づき自車影6の有無を判定してもよい。あるいは、各領域41,42内の水平方向の各画素の輝度データの微分値に基づき全輝度微分値の平均値、合計値若しくは分散値を演算して自車影6の有無を判定してもよい。
【0058】
・前記実施形態においては、平均値Vav1,Vav2の大小関係に基づき自車影6の有無を判定した。これに対して、車両1の近傍である領域42の平均値Vav2と所定の判定閾値との大小関係のみに基づき自車影6の有無を判定してもよい。
【0059】
・前記実施形態においては、所定範囲51,52内に白線候補点が所定数を超えて左右のペアで属することが確認されず、且つ、白線候補直線が所定範囲53,54内に左右のペアで属することが確認されなかったときに自車影検出カウンタを値「0」を限度として「1」デクリメントした。これに対して、所定範囲51,52内に白線候補点が所定数を超えて左右のペアで属することが確認されず、若しくは、白線候補直線が所定範囲53,54内に左右のペアで属することが確認されなかったときに自車影検出カウンタを値「0」を限度として「1」デクリメントしてもよい。
【0060】
また、所定範囲51,52内に白線候補点が所定数を超えて左右のペアで属することが確認されず、且つ、白線候補直線が所定範囲53,54内に左右のペアで属することが確認されなかったときに自車影検出カウンタを値「0」にリセットしてもよい。同様に、所定範囲51,52内に白線候補点が所定数を超えて左右のペアで属することが確認されず、若しくは、白線候補直線が所定範囲53,54内に左右のペアで属することが確認されなかったときに自車影検出カウンタを値「0」にリセットしてもよい。
【0061】
・前記実施形態において、自車影検出カウンタのインクリメント若しくはデクリメントは、1ずつでなくてもよい。
・前記実施形態において、自車影検出カウンタが所定の閾値を連続的に上回ったことで判断してもよい。
【0062】
・前記実施形態においては、自車影候補点の数が多い状態、若しくは自車影候補直線が検出されている状態が連続的に検出されている演算回数に基づき白線候補直線から自車影候補直線を隠蔽した。これに対して、例えばタイマにより自車影候補点の数が多い状態、若しくは自車影候補直線が検出されている状態が連続的に検出されている時間に基づき白線候補直線から自車影候補直線を隠蔽してもよい。
【0063】
・前記実施形態においては、自車影候補点の数が多い状態、若しくは自車影候補直線が検出されている状態が連続的に検出されている演算回数に基づき白線候補直線から自車影候補直線を隠蔽した。これに対して、例えば自車影候補点の数が多い状態のみが連続的に検出されている演算回数に基づき白線候補直線から自車影候補直線を隠蔽してもよい。あるいは、自車影候補直線が検出されている状態のみが連続的に検出されている演算回数に基づき白線候補直線から自車影候補直線を隠蔽してもよい。また、演算回数に代えてタイマによる時間を採用してもよい。
【0064】
・前記実施形態において、輪郭線の候補線として曲線を採用してもよい。
・前記実施形態において、影響を受けている自車影6の特性に応じて自車影候補点を抽出する所定範囲51,52若しくは自車影候補直線を抽出する所定範囲53,54を変えてもよい。
【0065】
・前記実施形態においては、CCDカメラ11により車両1の後方画像を取得し、これに基づく画像認識にて白線5L,5Rを検出した。これに対して、例えばCCDカメラ11を車両1の側部若しくは前部に設置する。そして、CCDカメラ11により車両1の側方画像若しくは前方画像を取得し、これに基づく画像認識にて白線5L,5Rを検出しても、前記実施形態と同様の効果が得られる。
【0066】
・前記実施形態においては、車両1が車線4から逸脱する可能性があると判定されると、ブザー15から報知音を発声するようにした。これに代えて、若しくはこれに加えて、例えば運転席やステアリングを振動させたり、運転者に風や匂いを送ったりしてもよい。あるいは、例えばナビゲーションシステムやバックモニタシステムのディスプレイに報知画像を描画してもよい。
【0067】
・前記実施形態においては、撮像用にCCDカメラ11を採用したが、例えば赤外線カメラやCMOSカメラなどでもよい。
・例えば、無人搬送車やロボット、路線バスや自動倉庫などに適用しうる自動走行可能な車両システムに本発明を適用してもよい。
【0068】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1、4〜7のいずれかに記載の発明によれば、路面上に自車影が投影される状態にあっても、メモリの消費を増大することなく車線境界位置の検出精度を向上することができる。
【0069】
請求項2又は3に記載の発明によれば、自車影の境界位置の候補線を検出する精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す概略構成図。
【図2】同実施形態が適用される車両を示す斜視図。
【図3】CCDカメラの画像を示す模式図。
【図4】同実施形態の車線境界検出の処理態様を示すフローチャート。
【図5】同実施形態の車線境界検出の処理態様を示すフローチャート。
【図6】同実施形態の車線境界検出の処理態様を示すフローチャート。
【図7】同実施形態の車線境界検出の処理態様を示すフローチャート。
【図8】同実施形態の車線境界検出の処理態様を示すフローチャート。
【図9】水平方向の所定ラインに並ぶ各画素の位置と対応する輝度データの一例を示すグラフ。
【図10】水平方向の所定ラインに並ぶ各画素の位置と対応する輝度微分値の一例を示すグラフ。
【図11】自車影を考慮した車線境界検出を説明する模式図。
【符号の説明】
1 車両
4 車線
5L 車線境界位置としての左白線
5R 車線境界位置としての右白線
11 CCDカメラ
16 自車影境界判別手段、自車影存在判断手段及び自車影隠蔽手段を構成するコントローラ
41,42 領域
51,52 所定範囲
53,54 所定範囲

Claims (7)

  1. 車両に搭載されて走路を撮像するカメラの映像信号に基づいて画素位置に関連づけた輝度データまたは色相データを取得し、該輝度データ、その微分値及び該色相データのいずれか一つの大きさと所定の候補点検出しきい値との大小比較に基づき路面上に描かれた車線境界位置の候補点を抽出し、該候補点の点群を直線または曲線に当てはめて前記車線境界位置の候補線を検出し、前記車両の両側に対応する画素位置において該車線境界位置の候補線を通る前記候補点の数が最大値となる左右のペアの該候補線を前記車線境界位置として検出する車線境界検出装置において、
    前記検出された車線境界位置の候補線のうち、画素位置に対応させて予め記憶領域に記憶された前記車両の自車影の存在しうる所定範囲内に属するものを自車影の境界位置の候補線として検出する自車影境界検出手段を備えたことを特徴とする車線境界検出装置。
  2. 請求項1に記載の車線境界検出装置において、
    前記車両からの離隔距離が所定距離内の領域内の画素位置の全輝度データの平均値と所定の判定閾値との大小比較に基づき自車影の存在の有無を判断する自車影存在判断手段を備えたことを特徴とする車線境界検出装置。
  3. 請求項1に記載の車線境界検出装置において、
    前記車両からの離隔距離が所定距離内の領域内の画素位置の全輝度データの平均値と、該車両からの離隔距離が所定距離外の領域内の画素位置の全輝度データの平均値との大小比較に基づき自車影の存在の有無を判断する自車影存在判断手段を備えたことを特徴とする車線境界検出装置。
  4. 請求項1に記載の車線境界検出装置において、
    前記車線境界位置の候補線として、前記検出された自車影の境界位置の候補線を使用しないことを特徴とする車線境界検出装置。
  5. 請求項1に記載の車線境界検出装置において、
    前記抽出された車線境界位置の候補点のうち、画素位置に対応させて予め記憶領域に記憶された自車影の存在しうる所定範囲内に属するものを自車影の境界位置の候補点として検出し、前記車線境界位置の候補点として、検出された自車影の境界位置の候補点を使用しないことを特徴とする車線境界検出装置。
  6. 請求項4に記載の車線境界検出装置において、
    検出された自車影の境界位置の候補線の検出頻度が所定閾値を超えたときに、前記車線境界位置の候補線として、該自車影の境界位置の候補線を使用しないことを特徴とする車線境界検出装置。
  7. 請求項2又は3に記載の車線境界検出装置において、
    前記自車影存在判断手段により自車影の存在があると判断されたとき、前記検出された自車影の境界位置の候補線の検出頻度が所定閾値を超えたときに、前記車線境界位置の候補線として、該自車影の境界位置の候補線を使用しないことを特徴とする車線境界検出装置。
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