JP3854111B2 - 気象予測システム、気象予測方法及び気象予測プログラム - Google Patents

気象予測システム、気象予測方法及び気象予測プログラム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、気象予測モデルの計算を行い、気象予測に資する情報を提供する気象予測システム、気象予測方法及び気象予測プログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
気象予測システムは、コンピュータで大気の流れを計算することで、各種諸元の時系列的な変化をモデル化した気象予測モデルを作成し、将来の気象状況を予測するための情報を提供するものである。
【0003】
気象予測を行うには、計算を開始する前に各種気象データに初期値を代入し、所定の計算式を演算しつつ、データ更新を行いながら将来の気象を予測していく。ここで、気象予測モデルの初期値には、例えば気象庁から配信される気象観測データを用いている。ところが、その配信回数は1日2回(9時、21時)程度であり、しかも、配信が完了するまでに数時間経過している。このような理由から、従来の気象予測システムでは、局地気象モデルの計算は1日2回程度しかできず、さらに、数時間も前からのデータから計算を始めなければならなかった。
【0004】
一方、気象予測システムにあっては、気象レーダ等の観測値を同化することによって、気象予測モデルの精度が向上することが知られている。これは、観測値のデータ同化などと言われ、観測値を気象モデルに同化させて予測値と整合をとることによって、予測計算の精度を向上させる機能である。具体的には、気象予測モデルの計算開始時刻から数時間さかのぼって得られた観測値と整合をとって予測における計算値を修正していく。この機能をモデルに付加することによって、近未来の予測精度が向上することが知られているが、この同化効果は数時間先というような短時間予測においてより効果が高いため、1日2回程度の計算では十分な効果を得ることが難しい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、従来の気象予測システムでは、気象モデル計算の初期値取得間隔がデータ同化による数時間先の予測計算を継続して行うには不十分であり、時間経過と共に予測値の精度が低下してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は上記の問題を解決し、気象モデル計算の初期値取得間隔がデータ同化による数時間先の予測計算を継続して行うには不十分であっても、予測値の精度を継続的に維持することのできる気象予測システム、気象予測方法及び気象予測プログラムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明に係る気象予測システムは、第1の時間間隔で配信される第1の気象観測データを取得する第1の気象観測データ取得手段と、前記第1の時間間隔より短い第2の時間間隔で前記第1の気象観測データより狭い地域の第2の気象観測データを取得する第2の気象観測データ取得手段と、前記第1の気象観測データ取得手段で取得された第1の気象観測データによる観測値を1回目の演算の初期値として気象予測モデルを演算し、前記第2の気象観測データ取得手段で得られた第2の気象観測データによる観測値を前記気象モデルに同化させ、予測値を計算し、2回目以降の演算では、前回の同化直後の予測値を初期値として気象予測モデルを演算し、前記第2の気象観測データ取得手段で得られた第2の気象観測データによる観測値を前記気象モデルに同化させ、予測値を計算する気象予測モデル演算手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る気象予測方法は、第1の時間間隔で配信される第1の気象観測データと、前記第1の時間間隔より短い第2の時間間隔で前記第1の気象観測データより狭い地域の第2の気象観測データとを用いて気象予測モデルを演算し、予測値を求める場合に、前記第1の気象観測データによる観測値を1回目の演算の初期値として気象予測モデルを演算し、前記第2の気象観測データによる観測値を前記気象モデルに同化させ、予測値を計算する初回演算ステップと、2回目以降の演算では、前回の同化直後の予測値を初期値として気象予測モデルを演算し、前記第2の気象観測データによる観測値を前記気象モデルに同化させ、予測値を計算する2回目以降演算ステップとを具備することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る気象予測プログラムは、前記第1の時間間隔より短い第2の時間間隔で前記第1の気象観測データより狭い地域の第2の気象観測データとを用いて気象予測モデルを演算し、予測値を求める場合に、前記第1の気象観測データによる観測値を1回目の演算の初期値として気象予測モデルを演算し、前記第2の気象観測データによる観測値を前記気象モデルに同化させ、予測値を計算する初回演算プログラムコードと、2回目以降の演算では、前回の同化直後の予測値を初期値として気象予測モデルを演算し、前記第2の気象観測データによる観測値を前記気象モデルに同化させ、予測値を計算する2回目以降演算プログラムコードとを具備することを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、前回の予測計算で算出された予測値を、次の予測計算の初期値に用いているので、繰り返し短時間予測の予測計算を行うことができ、データ同化直後の精度のよい予測値をほとんど全ての時間帯で得ることが可能となる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明に係る気象予測システムの一実施形態を示すもので、通信処理部11は、通信インターフェース12を通じてネットワークNTに接続され、当該ネットワーク上の例えば気象庁等の気象データサーバDS0から配信される全国規模の気象観測データ(以下GPV(Grid Point Value)データと記す)と、予測対象地域及びその周辺のレーダサイト等のデータサーバDS1,DS2,…から提供される局所的な気象観測データを入手する。この通信処理部11で入手された気象観測データは観測データ格納部13に格納され、気象予測モデル演算部14からの要求に応じて選択的に演算部14に送られる。また、この演算部14で求められた気象予測データは予測データ格納部15に蓄積される。
【0013】
上記気象予測モデル演算部14は、まず観測データ格納部13からGPVデータを取り込んで初期値とし、気象予測モデルを演算した後、レーダサイト等の局所的な気象観測値を観測値格納部13から取り込んで気象予測モデルの空間格子点に内挿し、データ同化処理を行って予測値の補正を行う。補正後の予測値(予測データ)は予測データ格納部15に格納される。次に、予測データ格納部15から前回の計算された予測データを取り込み、これを初期値として気象予測モデルを演算する。以後、新たなGPVデータが得られるまで、補正後の予測値を初期値として用い、気象予測モデルを更新する。
【0014】
上記気象予測モデル演算部14のデータ同化処理の流れを図2に示す。図2において、まず観測値と予測値を取り込み、品質管理処理を行う(S11)。ここでは、観測値と予測値を比較することにより、品質の悪いデータを同化から除外する。
【0015】
次に、観測値と予測値の持つ統計的な誤差特性をもとに別途計算された内挿重み算出値を用いて、品質管理後の観測値を空間的に気象予測モデルの格子点に内挿する(S12)。このとき、最初のモデル計算では、初期値にGPVデータを用い、次のモデル計算からは補正後の予測データを用いる。
【0016】
内挿重み算出処理後、データ同化処理を行う(S13)。このデータ同化処理は、内挿した結果を数値モデルに時間的に連続して取り込む。予測値とこの内挿した観測値を比較し、予測値を補正する。
【0017】
以下、図3を参照して、気象予測モデル演算の具体的な処理手順を説明する。
【0018】
まず、GPVデータ受信後(S21)、気象予測モデルの1回目の計算を開始し(S22)、前述の観測値の同化(S23)、予測計算を行う(S24)。1回目の予測計算終了後、次の計算時刻(3時間後)まで待機する(S25)。その時刻で2回目の計算を開始する(S26)。このとき、1回目の計算で得られたデータ同化直後(3時間前)の予測値を2回目の計算の初期値に利用する。続いて、2回目の観測値の同化(S27)、予測計算を行う(S28)。この計算では、3時間後までの短時間予測で、データ同化後の精度のよい予測値のみを算出する。2回目の予測計算終了後、次の計算時刻(1時間後)まで待機する(S29)。その時刻で3回目の計算を開始する(S30)。この計算では前回(2回目)の計算で求まった1時間前の予測値を初期値として計算を行う。この計算でも、3時間後まで計算し、精度のよい予測値のみを求める。以後、3回目と同様の処理を繰り返し、一連の処理を終了する。
【0019】
上記処理の結果を図4に示す。図4(a)は、GPVデータ受信完了時点で6時間前にさかのぼり、1回目の計算においてデータ同化を行ってGPVデータによる初期値から51時間後まで予測計算する。この場合、時間経過と共に誤差が大幅に増大していく。そこで、2回目の計算では、図4(b)に示すように、1回目の計算で求まった3時間前の予測値を初期値として3時間先まで予測し、3回目の計算では、図4(c)に示すように、2回目の計算で求まった1時間前の予測値を初期値として3時間先まで予測し、4回目以降の計算では、図4(d),…に示すように、前回の計算で求まった1時間前の予測値を初期値として3時間先まで予測する。
【0020】
以上のように、前回の計算で求まった予測値を次回の計算の初期値として用い、データ同化を行った予測計算を繰り返し行うことで、精度のよい予測値のみを求めることができる。
【0021】
本発明の特徴は、前回の予測計算で算出された予測値を、次の予測計算の初期値に用いている点である。その結果、繰り返し短時間予測の予測計算を行うことができ、データ同化直後の精度のよい予測値をほとんど全ての時間帯で得ることができる。気象予測値は、計算時間を長くすることで任意の時間帯で得ることができるが、計算開始後、数時間を過ぎると、データ同化の効果を薄れ、精度のよい予測値を得ることかできない。本発明により、精度のよい、データ同化直後の予測値がほとんどの時間帯で得られることは、予測計算においてその効果は絶大である。
【0022】
本発明を用いると、近未来の精度のよい予測値を細かく求めることができる。一般に、気象庁の予測では、このようなごく狭い範囲の気象予測は行われていない。特に、人的被害をもたらすような気象災害は、一般に狭い範囲で起こることが多く、そのような気象現象の予測にも本発明は有用であるといえる。
【0023】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、気象モデル計算の初期値取得間隔がデータ同化による数時間先の予測計算を継続して行うには不十分であっても、予測値の精度を継続的に維持することのできる気象予測システム、気象予測方法及び気象予測プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る気象予測システムの一実施形態の構成を示すブロック図。
【図2】 同実施形態における気象予測モデル演算部のデータ同期処理の流れを示すフローチャート。
【図3】 上記気象予測モデル演算の具体的な処理手順を示すフローチャート。
【図4】 上記気象予測モデル演算による処理結果を時系列的に示す図。
【符号の説明】
11…通信処理部
12…通信インターフェース
13…観測データ格納部
14…気象予測モデル演算部
15…予測データ格納部
NT…ネットワーク
DS0…気象データサーバ
DS1,DS2…レーダサイトデータサーバ

Claims (15)

  1. 第1の時間間隔で配信される第1の気象観測データを取得する第1の気象観測データ取得手段と、
    前記第1の時間間隔より短い第2の時間間隔で前記第1の気象観測データより狭い地域の第2の気象観測データを取得する第2の気象観測データ取得手段と、
    前記第1の気象観測データ取得手段で取得された第1の気象観測データによる観測値を1回目の演算の初期値として気象予測モデルを演算し、前記第2の気象観測データ取得手段で得られた第2の気象観測データによる観測値を前記気象予測モデルに同化させて予測値を補正し、2回目以降の演算では、前回の同化直後の予測値を初期値として気象予測モデルを演算し、前記第2の気象観測データ取得手段で得られた第2の気象観測データによる観測値を前記気象予測モデルに同化させて予測値を補正する気象予測モデル演算手段とを具備することを特徴とする気象予測システム。
  2. 前記第1の気象観測データは、GPVデータであることを特徴とする請求項1記載の気象予測システム。
  3. 前記第2の気象観測データは、少なくとも予測対象地域をカバーするレーダサイトで得られる気象観測データであることを特徴とする請求項1記載の気象予測システム。
  4. 前記気象予測モデル演算手段は、前記第2の気象観測データによる観測値を前記気象予測モデルに同化させる前に、許容値を超えるデータを排除する品質管理手段を備えることを特徴とする請求項1記載の気象予測システム。
  5. 前記気象予測モデル演算手段は、1回目の予測計算から第1の期間経過後に、前記第1の期間前の予測値を初期値として2回目の予測計算を用い、3回目以降は、前回の予測計算から前記第1の期間より短い第2の期間経過後に、前記第2の期間前の予測値を初期値として次回の予測計算を行うことを特徴とする請求項1記載の気象予測システム。
  6. 第1の時間間隔で配信される第1の気象観測データと、前記第1の時間間隔より短い第2の時間間隔で前記第1の気象観測データより狭い地域の第2の気象観測データとを用いて気象予測モデルを演算し、予測値を求める気象予測方法において、
    前記第1の気象観測データによる観測値を1回目の演算の初期値として気象予測モデルを演算し、前記第2の気象観測データによる観測値を前記気象予測モデルに同化させて予測値を補正する初回演算ステップと、
    2回目以降の演算では、前回の同化直後の予測値を初期値として気象予測モデルを演算し、前記第2の気象観測データによる観測値を前記気象予測モデルに同化させて予測値を補正する2回目以降演算ステップとを具備することを特徴とする気象予測方法。
  7. 前記第1の気象観測データは、GPVデータであることを特徴とする請求項記載の気象予測方法。
  8. 前記第2の気象観測データは、少なくとも予測対象地域をカバーするレーダサイトで得られる気象観測データであることを特徴とする請求項記載の気象予測方法。
  9. さらに、前記第2の気象観測データによる観測値を前記気象モデルに同化させる前に、許容値を超えるデータを排除する品質管理ステップを備えることを特徴とする請求項記載の気象予測方法。
  10. 前記2回目以降演算ステップは、1回目の予測計算から第1の期間経過後に、前記第1の期間前の予測値を初期値として2回目の予測計算を用い、3回目以降は、前回の予測計算から前記第1の期間より短い第2の期間経過後に、前記第2の期間前の予測値を初期値として次回の予測計算を行うことを特徴とする請求項1記載の気象予測方法。
  11. 第1の時間間隔で配信される第1の気象観測データと、前記第1の時間間隔より短い第2の時間間隔で前記第1の気象観測データより狭い地域の第2の気象観測データとを用いて気象予測モデルを演算し、予測値を求める気象予測プログラムにおいて、
    前記第1の気象観測データによる観測値を1回目の演算の初期値として気象予測モデルを演算し、前記第2の気象観測データによる観測値を前記気象予測モデルに同化させて予測値を補正する初回演算プログラムコードと、
    2回目以降の演算では、前回の同化直後の予測値を初期値として気象予測モデルを演算し、前記第2の気象観測データによる観測値を前記気象予測モデルに同化させて予測値を補正する2回目以降演算プログラムコードとを具備することを特徴とする気象予測プログラム。
  12. 前記第1の気象観測データは、GPVデータであることを特徴とする請求項11記載の気象予測プログラム。
  13. 前記第2の気象観測データは、少なくとも予測対象地域をカバーするレーダサイトで得られる気象観測データであることを特徴とする請求項11記載の気象予測プログラム。
  14. さらに、前記第2の気象観測データによる観測値を前記気象モデルに同化させる前に、許容値を超えるデータを排除する品質管理プログラムコードを備えることを特徴とする請求項11記載の気象予測プログラム。
  15. 前記2回目以降演算プログラムコードは、1回目の予測計算から第1の期間経過後に、前記第1の期間前の予測値を初期値として2回目の予測計算を用い、3回目以降は、前回の予測計算から前記第1の期間より短い第2の期間経過後に、前記第2の期間前の予測値を初期値として次回の予測計算を行うことを特徴とする請求項11記載の気象予測プログラム。
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