JP3852419B2

JP3852419B2 - Non-oriented electrical steel sheet

Info

Publication number: JP3852419B2
Application number: JP2003063571A
Authority: JP
Inventors: 浩志藤村; 光裕沼田; 裕義屋鋪
Original assignee: Sumitomo Metal Industries Ltd
Current assignee: Nippon Steel Corp
Priority date: 2003-02-06
Filing date: 2003-03-10
Publication date: 2006-11-29
Anticipated expiration: 2023-03-10
Also published as: JP2004292829A

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は無方向性電磁鋼板に関する。とくに本発明は、モータや小形トランスなどの電気機器の鉄心材料に適用される、打ち抜き等の成形加工後歪取り焼鈍をおこなって使用するのに好適な無方向性電磁鋼板に関する。
【０００２】
【従来の技術】
地球温暖化防止や省エネルギーなどの観点から、各種電気機器の高効率化が進められており、小形のモータや小形トランスなどに鉄心材として使用される電磁鋼板にも、低コストであることとともに、すぐれた磁気特性を有することが要求されている。さらに資源の有効活用や環境汚染対策としての廃棄物量低減の観点から、電気機器材料のリサイクルにも対応が必要となってきている。
【０００３】
小形のモータや小形トランス用の鉄心材には、無方向性電磁鋼板が多く用いられる。この無方向性電磁鋼板の磁気特性の向上には、主として鉄損の低減と磁束密度の増加または透磁率向上が対象となり、数多くの対策が検討され、提案されてきた。
【０００４】
鋼の鉄損を低減する主要な手段は、比抵抗を増大させて渦電流の発生、すなわち渦電流損を抑制するため、Ｓｉ、ＡｌまたはＭｎなどの含有量を増加させることである。比抵抗増加に対し、Ｓｉは最も有効であるが、鋼の硬さを大幅に上昇させるためその含有には限度があり、Ｍｎの効果はＳｉやＡｌに比して小さく、多量の含有が必要になる。Ａｌは、Ｓｉに近い比抵抗増加効果があり、Ｓｉほどには硬さ上昇がないので、硬さを増すことなく鉄損を低減させることができる。
【０００５】
磁束密度（通常Ｂ₅₀）の増加または透磁率向上の手段には、無方向性電磁鋼板の場合、結晶粒を大きくすることや炭化物、硫化物、酸化物、窒化物など非金属介在物または微細析出物の低減、あるいは板面に平行な磁化に好ましい方位を多くすること、さらには加工歪みの低減などがある。これらは磁化の際の磁壁の移動に影響をおよぼしており、相互に影響し合うばかりでなく、ヒシテリシス損により鉄損にも関係すると考えられる。
【０００６】
たとえば、結晶粒界は磁壁の移動を阻害するので、結晶粒を大きくすれば同じ体積内の粒界の存在面積が減少し、磁化が容易になって磁束密度の増加という形で磁気特性が向上する。微細析出物は粒界と同じく磁壁の移動を阻害するばかりでなく、焼鈍時の粒成長を阻害し、結晶粒を小さくさせる。また、磁壁の移動が阻害されると、ヒシテリシス損が増し、これもまた鉄損を増加させる。したがって、無方向性電磁鋼板の磁気特性の向上には、比抵抗を大きくすると共に、不純物を低減し結晶粒を大きくする方策が採られる。
【０００７】
また、カスタマーにおいても、より一層磁束密度の向上や鉄損低下をはかるため、モータコアなどに打ち抜き加工後、歪み除去やさらなる結晶粒成長を目的に、750℃にて1〜2時間の歪み取り焼鈍を施すことも広くおこなわれている。
【０００８】
しかしながら、鉄心に使用される無方向性電磁鋼板も、リサイクルを考えるとき、カスタマーにおいて電気炉を用いた溶解がおこなわれ、再利用される可能性がある。その際、Ａｌを多く含む材料では電極を傷めやすく、その上、0.1質量％以上のＡｌが含まれた溶鋼は、鋳込みのときにノズル詰まりなどを生じ、鋳込み作業を阻害するといった問題が起きてくる。このため、Ａｌを使用せずに、より磁気特性のすぐれた無方向性電磁鋼板が望ましいと考えられる。
【０００９】
Ａｌは、前述のように鋼の比抵抗を高めるが、Ｏ（酸素）との親和力が極めて大きく、通常は溶鋼の脱酸剤として用いられ、鋼中の酸化物系介在物の状態に大きく影響する。さらに酸化物になっていない、いわゆるsol.Ａｌは、鋼中のＮと結合しＡｌＮを形成するが、sol.Ａｌ量が0.005〜0.1％程度の場合、ＡｌＮが微細な析出物となって分散し、結晶粒の成長を妨げ、磁気特性を劣化させるので、無方向性電磁鋼板では、Ａｌを含有させる場合は0.1％以上とし、含有させない場合は0.005％以下に限定することが多い。
【００１０】
このＡｌの含有をできるだけ少なくした無方向性電磁鋼板に関しては、いくつかの提案がある。たとえば、特許文献１にはＳｉ：0.1〜1.0％、Ｍｎ：1.5％以下、sol.Ａｌ：0.001〜0.005％とし、鋼中のＳｉＯ₂、ＭｎＯ、Ａｌ₂Ｏ₃の３種の介在物の総質量に対するＭｎＯの質量の割合を15％以下とすることにより、歪み取り焼鈍後の結晶粒を大きくした、鉄損の少ない無方向性電磁鋼板の発明が開示されている。さらに、特許文献２に開示された発明は、上記と同じ組成にて、鋼中のＳｉＯ₂、ＭｎＯ、Ａｌ₂Ｏ₃の３種の介在物の総質量に対するＭｎＯの質量の割合が15％以下であるとともに、ＳｉＯ₂の割合が75％以上であるとしている。
【００１１】
また、特許文献３には、Ｓｉ：0.05〜0.55％、Ｍｎ：0.1％以上でかつＭｎ−Ｓｉ≦0.5％の範囲、Ａｌ：0.004％以下の組成の無方向性電磁鋼板において、鋼中に存在するＳｉＯ₂とＭｎＯとの質量％比ＭｎＯ／ＳｉＯ₂を0.3以下とすることにより、へげや穴などの表面欠陥を少なくできるという発明が提示されている。
【００１２】
このように、Ａｌの含有量をできるだけ少なくした無方向性電磁鋼板の磁気特性向上に対しては、その酸化物系介在物の量の制御が重要と考えられる。しかし、より一層その磁気特性を向上させるためには、ＳｉやＭｎの含有量を変えなければならず、その場合、このような酸化物量制御が実施可能かどうかあきらかでない。
【００１３】
【特許文献１】
特開昭63-195217号公報
【特許文献２】
特公平7-42555号公報
【特許文献３】
特開平10-147849号公報
【００１４】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、Ａｌの含有量をできるだけ低くしたリサイクルに有利な鋼による、磁気特性にすぐれた無方向性電磁鋼板の提供にある。
【００１５】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、リサイクル使用を配慮して、Ａｌ量をできるだけ低減した無方向性電磁鋼板の磁気特性を向上させるべく、種々検討をおこなった。鉄損低減のためには、比抵抗を大きくすることが望ましいが、Ａｌを用いないのでＳｉやＭｎ量を増すか、その他の元素添加を利用する必要がある。
【００１６】
そこで、極低炭素鋼をベースとし組成を種々変え実験室的に真空溶解してインゴットを作り、鍛造してスラブとし、これから熱間圧延および冷間圧延して0.5mm厚にし、焼鈍して無方向性電磁鋼板試料を作製した。これらの電磁鋼板から試験片を打ち抜いて採取後、750℃、2時間の歪み取り焼鈍をおこなって磁気特性を測定し、各種成分の磁気特性におよぼす影響を調査した。
【００１７】
まず、鉄損改善を目的にＳｉおよびＭｎ量の増加による効果を調べたところ、比抵抗の増加から期待されるほどには鉄損は改善されず、磁束密度もよくないものであった。その理由として考えられるのは、sol.Ａｌをほとんど含まないことによる、Ｓｉ−Ｍｎ窒化物の形成である。一般に、脱酸剤としてＡｌが使用されるとsol.Ａｌが鋼中に残り、これがＮと結合しＡｌＮとなるため、Ｓｉ−Ｍｎ窒化物は現れない。ところがsol.ＡｌがなくＳｉとＭｎの濃度が高い場合、Ｓｉ−Ｍｎ窒化物が生じ、これが微細に分散して鉄損を悪くし磁束密度を低下させたと思われる。
【００１８】
このように、sol.Ａｌがほとんど存在しない鋼をベースとすることとし、さらに他元素添加による磁気特性改善の可能性について検討した。その結果、ＰとともにＳｎおよびＳｂの、いずれか一方または両方を少量含有させることにより、鉄損が低下し、磁束密度は向上するという効果の得られることが見出された。
【００１９】
Ｐ、ＳｎおよびＳｂは、いずれも結晶粒界に偏析する元素である。これらの元素の少量含有は、比抵抗を多少増加させるが、それから予想されるよりはるかに大きく鉄損を低下させ、磁束密度を上昇させる効果がある。この効果をもたらす理由についてはあきらかではないが、上述のようにsol.Ａｌを極力少なくした状態にてＳｉとＭｎを多く含有させるため、Ｓｉ−Ｍｎ窒化物が形成されやすい状態となっているのに対し、Ｐ、ＳｎおよびＳｂを複合して含有させることによって、Ｓｉ−Ｍｎ窒化物の形成が抑止されるようである。
【００２０】
この微細析出物生成の抑止効果により焼鈍時の粒成長が促進され、磁気特性が向上したと推定される。とくにカスタマーにおける歪み取り焼鈍は、仕上げ焼鈍に比して低温長時間の焼鈍であり、Ｓｉ−Ｍｎ窒化物形成の抑止はセミプロセス材の磁気特性向上に、より有効であると推定される。さらに、これらの元素の少量含有は、磁気特性に好ましい優先方位を増すのではないかとも考えられる。
【００２１】
また、これらの電磁鋼板は、カスタマーにおける実際の使用条件に合わせ、試験片に打ち抜き後、750℃、2時間の焼鈍をおこなわれる場合がある。この焼鈍は、酸化防止のため通常は窒素雰囲気中で加熱されるが、雰囲気の窒素が鋼板に吸収され窒化物を形成し、磁気特性を悪くすることがある。ＳｎやＳｂの存在はこの窒素の吸収を抑止する効果もある。
【００２２】
次に、これら試作電磁鋼板試料について、鋼中に分散する非金属介在物の状態を調べてみると、酸化物系介在物中のＭｎＯ／ＦｅＯ比（質量％比）が小さくなっている場合の方が、磁気特性が良好である傾向が見出された。ＭｎＯ／ＦｅＯ比が小さければ磁気特性が良好となる理由はよくわからないが、上述のようにsol.Ａｌを極力少なくした成分系においては、低融点酸化物系介在物が粗大となる傾向があり、このような粗大な酸化物系介在物は、後続する圧延工程で破砕されて細かく分散して仕上げ焼鈍時あるいは歪取り焼鈍時の粒成長を阻害することから、酸化物系介在物中のＭｎＯ／ＦｅＯ比を小さくして低融点酸化物系介在物の生成を抑制することにより磁気特性が改善されるためと考えられる。
【００２３】
介在物のＭｎＯ／ＦｅＯ比は、鋼の製錬や脱酸さらには鋳造など溶製の段階でほぼ決定されると推測される。そこで、この鋼の溶製条件について種々調査した結果、溶鋼の真空処理による脱炭後の脱酸方法が大きく影響していることがわかった。
【００２４】
電磁鋼板のような極低炭素鋼の場合、炭素をできるだけ低下させるため、脱炭が終了した溶鋼中にはかなり多量の酸素が含まれている。そのまま凝固させると気泡だらけの鋼塊となるので、脱酸剤を添加して酸化物を形成させ、酸素の固定や排除がおこなわれる。この脱酸剤としてＳｉおよびＡｌを添加するとき、Ａｌ／Ｓｉの添加量比をある値以下にすることにより、介在物のＭｎＯ／ＦｅＯ比を特定な値以下にすることができたのである。
【００２５】
以上の知見に基づき、よりすぐれた磁気特性を有する無方向性電磁鋼板を得るための、鋼中の各元素の含有範囲、非金属介在物の状態、あるいはこれらを実現するための製造条件等の限界をさらに明確にし、本発明を完成させた。本発明の要旨は次のとおりである。
【００２６】
(1) 質量％にて、Ｃ：0.004％以下、Ｓｉ：0.7〜1.5％、Ｍｎ：0.15〜0.8％、Ｐ：0.06〜0.2％、Ｓ：0.005％以下、sol.Ａｌ：0.0005％未満、Ｎ：0.003％以下、Ｏ：0.012％以下を含有し、さらにＳｎ：0.03 ％以下およびＳｂ：0.03 ％以下の１種または２種を合計で0.002〜0.03％含有し、残部がＦｅおよび不純物からなることを特徴とする無方向性電磁鋼板。
【００２７】
(2) 鋼中に存在する介在物中のＭｎＯとＦｅＯの含有量（質量％）の比「ＭｎＯ／ＦｅＯ」が2以下であることを特徴とする上記(1)の無方向性電磁鋼板。
【００２８】
【発明の実施の形態】
本発明において、化学成分あるいは介在物組成を限定する理由を以下に説明する。含有量比はいずれも質量％である。
【００２９】
Ｃ：0.004％以下
Ｃは鋼の磁気特性を低下させるので、その含有量は少なければ少ないほどよい。0.004％以下であればその影響はほとんど無視できるが、0.004％を超えると磁気時効を生じはじめ、さらに増してくると磁気特性劣化が顕著になる。できればその含有量は0.003％以下とするのが望ましい。
【００３０】
Ｓｉ：0.7〜1.5％
Ｓｉは鋼の比抵抗を増し鉄損を小さくさせるので、目的とする鉄損を得るため0.7％以上含有させる。しかし、Ｓｉの含有量増加は硬さを上昇させ、打ち抜き金型の摩耗を促進させるので、多くても1.5％までとする。
【００３１】
Ｍｎ：0.15〜0.8％
Ｍｎは、比抵抗を増す効果があり、不純物として混入してくるＳと結合し無害化する作用がある。少ない場合、生じたＭｎＳが微細に分散し結晶粒成長を阻害したり磁気特性を悪くするので、0.15％以上含有させる。しかし、sol.Ａｌが極めて少なく、かつ上記のようにＳｉ量が多い場合、Ｍｎを多く含有させると磁気特性が大きく低下してくる。したがって、多くても0.8％までとする。これはＳｉ−Ｍｎ窒化物が増加したために焼鈍時の粒成長阻害が増大してくることによると推定される。好ましくは0.15〜0.5％である。
【００３２】
Ｐ：0.06〜0.2％
Ｐは、本発明の鋼板においては、後で述べるＳｎまたは／およびＳｂとの複合添加にて鉄損を低下させるという重要な作用があり、積極的に活用する。この鉄損低減のためには、0.06％以上含有させる必要があるが、多く含有させすぎると硬く脆くなり、打ち抜き金型の摩耗が早くなるので、0.2％までとする。
【００３３】
Ｓ：0.005％以下
Ｓは微細析出物を形成し、結晶粒成長を阻害するばかりでなく、磁気特性を悪くするので少なければ少ないほどよい。このＳによる微細析出物は主としてＭｎＳであるが、ＭｎＳの存在は、Ｓｉ−Ｍｎ窒化物形成の核にもなり、この窒化物の形成を促進すると推測される。このような悪影響が顕著に現れない範囲として0.005％以下に限定するが、0.004％以下とする方がよく、さらに望ましくは0.003％以下とする。
【００３４】
sol.Ａｌ：0.0005％未満
Ａｌは、欠陥のない鋼塊を得るための脱酸を目的に用いられる。通常はその結果として、sol.Ａｌ（酸可溶Ａｌ）が鋼中に残存するが、本発明ではこのsol.Ａｌの量をできるだけ少なくし、0.0005％未満とする。これはsol.Ａｌ量が増すと、微細なＡｌＮ析出物が形成され、これが焼鈍時の結晶粒の成長を阻害し、結晶粒が十分大きくならず磁気特性が向上しなくなるからである。
【００３５】
Ｎ：0.003％以下
Ｎの含有は少なければ少ないほどよい。ＮはＡｌまたはＳｉ−Ｍｎと微細な窒化物を形成し、それによって焼鈍時の結晶粒成長を妨げて磁気特性向上を阻害し、さらに微細析出物そのものも磁気特性を悪くする。このため0.003％以下に限定するが、より好ましいのは0.002％以下である。
【００３６】
Ｏ：0.012％以下
Ｏ（酸素）は酸化物系の介在物を形成し、結晶粒の成長を阻害して磁気特性を悪くするので、少なければ少ないほどよい。しかし、溶鋼の真空処理により脱炭素をおこなうためには酸素の存在が必要なので、極低炭素化するためのある程度の酸素の残存は避けがたい。顕著な悪影響をおよぼさない範囲として0.012％以下とするが、望ましくは0.008％以下である。
【００３７】
Ｓｎ：0.03 ％以下、Ｓｂ：0.03 ％以下、ただしＳｎ＋Ｓｂ：0.002〜0.03％
Ｓｎ：0.03％以下およびＳｂ：0.03％以下の１種または２種を、ＳｎとＳｂの合計量が0.002〜0.03％の範囲で含有させる。これは、0.06〜0.2％のＰとともに含有させることによって、磁気特性が向上するからである。この磁気特性向上の理由は、Ｓｉ−Ｍｎ窒化物の形成をこれらの元素が抑制しているためではないかと思われる。
【００３８】
Ｐ、ＳｎおよびＳｂの添加の効果について調査した結果を次に示す。真空溶解炉を用い、Ｃ：0.002％、Ｓｉ：0.85％、Ｍｎ：0.25％、Ｓ：0.0025％、sol.Ａｌ：0.0004％以下、Ｎ：0.002％、Ｏ：0.012％以下の鋼をベースにして、Ｐ量0.01〜0.18％、Ｓｎ＋Ｓｂ量0.001〜0.1％の範囲で変えた鋼塊を溶製し、鍛造して15mm厚のスラブとした後、1100℃にて加熱し熱間圧延をおこなって、3mm厚に仕上げ、表面を研削して2.3mmにした後、冷間圧延して0.5mmにした。この鋼板を750℃、30秒加熱の連続焼鈍相当の仕上げ焼鈍をおこなって、無方向性電磁鋼板試料とした。
【００３９】
これらの鋼板から幅30mm長さ100mmの試験片を、長さ方向が圧延方向に平行および直角に打ち抜いて、磁気特性測定用試片とし、750℃、2時間の窒素雰囲気中焼鈍をおこなった後、小形単板磁気測定装置により圧延方向とその直角方向との磁気特性を測定し、平均値を求めた。
【００４０】
図１にＳｎまたはＳｂを添加しない場合（Ｓｎ＋Ｓｂ：0.002％未満）、およびＳｎ＋Ｓｂを0.015％とした場合のＰ含有量による鉄損Ｗ_15/50の変化を示す。これから、Ｐの含有量増加により鉄損は減少するが、ＳｎおよびＳｂを添加したとき、とくにＰが0.06％以上で鉄損の低減が大きく、4W/kgを下回るものが得られていることがわかる。
【００４１】
図２にＰが0.03％の場合と、0.10％の場合とにおけるＳｎおよびＳｂの添加による磁束密度Ｂ₅₀の変化を調べた結果を示すが、Ｐが多く含まれているとき、ＳｎおよびＳｂの添加は顕著な磁束密度の向上を示し、Ｓｎ＋Ｓｂの量が0.002％以上の含有から効果が現れる。しかしＳｎ＋Ｓｂの量は0.03％を超えて含有させてもその効果は飽和し、それ以上の改善は得られない。
【００４２】
また、ＳｎやＳｂはスクラップなどを再溶解したときに、これら元素の混入が溶接割れや表面疵の原因になるおそれがあるので、Ｓｎ＋Ｓｂの量は0.03％を超えないようにする。
【００４３】
介在物中のＭｎＯ／ＦｅＯの含有量比は2以下とするのが望ましい。これは、この比を2以下とすることにより、鉄損が大きく低下するからである。鋼中のＭｎＯとＦｅＯは、臭素−メタノール法で抽出し分析することができる。このＭｎＯ／ＦｅＯ比を2以下とするには、溶鋼の脱酸処理において、ＳｉとＡｌを添加し、そのときのＡｌ量／Ｓｉ量比を0.4以下とするのがよい。
【００４４】
鋼の炭素量の低減は、たとえばＲＨ式脱ガス法のような溶鋼の真空処理法にておこなうが、目的とする極低炭素鋼では脱炭終了時の溶鋼中の酸素がかなり高いので、十分な脱酸剤の添加が必要になる。健全な鋳片を製造するためには、Ｓｉだけでは不完全で、脱酸剤としてＡｌを使用せざるをえない。しかし、Ａｌを固溶状態にして残存させると、鋼板の磁気特性を劣化させる。
【００４５】
そこで、Ａｌ濃度に応じた酸素を溶鋼に供給し、Ａｌを酸化させて低減させることによりsol.Ａｌ量を0.0005％未満に制御する。溶鋼中のＡｌ濃度は、溶鋼を分析する直接的な方法や、酸素センサーにより酸素濃度を測定してＡｌ−Ｏ平衡から算出する間接的な方法などにより求めることができる。溶鋼に供給する酸素量は、Ａｌとの反応に要する当量分でよいが、より確実にsol.Ａｌを低減させるには当量分に対してさらに10〜20％多くするのが好ましい。酸素の供給方法は、酸化鉄や酸化Ｍｎといった固体酸化物の塊体あるいは粉体を溶鋼に添加する方法や、酸素ガスを溶鋼に吹き込むまたは吹き付ける方法など、いかなる方法でもよい。
【００４６】
脱酸剤としてのＳｉおよびＡｌは、上記の比率で添加する。その際、両成分を同時に添加してもよいが、Ｓｉを添加してからＡｌを添加する方が望ましい。Ｓｉに比しＡｌは脱酸力が極めて大きいので、先にＡｌを添加するとアルミナ介在物やＦｅＯ−ＭｎＯ−Ａｌ₂Ｏ₃系介在物が生成し、ＭｎＯ／ＦｅＯ比を2以下に制御することが困難になる。
【００４７】
これに対し、Ｓｉを添加してからＡｌを添加すると、Ａｌの方が脱酸力が大きく、しかも反応速度が速いので、短時間で処理できる。ただし、いずれの方法でも添加するＡｌ量／Ｓｉ量比を0.4以下とする。
【００４８】
溶鋼の脱酸処理を、このようにＳｉとＡｌとの添加によりおこなった後、Ｍｎの目的組成に対する不足分を添加し、さらにＰ、ＳｎおよびＳｂの合金元素を添加し成分調整をおこなう。なお、これら各成分元素は、脱酸の前に添加してもよい。
【００４９】
成分調整された溶鋼は、連続鋳造法あるいは鋼塊−分塊圧延法にて圧延用スラブとする。スラブは通常の無方向性電磁鋼板の製造方法に準じ、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍、表面コーティング等をおこなって製品にする。
【００５０】
上記の製造工程において、熱間圧延のスラブ加熱温度は1000〜1150℃が望ましい。これは、1150℃以下とすることにより、得られた製品の磁気特性が向上し特性のばらつきが低減するからであるが、1000℃を下回る加熱温度ではスラブのスキッドに当たった部分の温度が低すぎて変形抵抗が増し、板厚変動が大きくなるおそれがある。熱間圧延の仕上げ温度は830〜930℃とするのがよい。これは、830℃未満でも930℃を超えても、鉄損の低下や磁束密度の低下が生じ、十分な磁気特性が得られないからである。
【００５１】
とくに磁気特性を向上させようとする場合、熱間圧延後の冷間圧延の前に、熱延板焼鈍をおこなうことが好ましいが、おこなわなくてもよい。冷間圧延の圧下率は70〜85％が望ましい。これは無方向性電磁鋼板の板厚は0.5mmが主であり、70％を下回る圧下率では熱間圧延板の厚さが薄く、熱延設備への負担が増し、酸洗能率も低下するからであり、85％を超える圧下率では磁気特性が悪くなるからである。
【００５２】
【実施例】
転炉にて精錬した溶鋼をＲＨ式真空脱ガス装置を用いて脱炭をおこない、Ｍｎ、Ｐ、ＳｎおよびＳｂを添加した後、ＡｌとＳｉとを、比率を変えて同時に添加して脱酸し、連続鋳造してスラブとした。試作した鋼の組成および脱酸時に用いたＡｌとＳｉの添加量比を表１に示す。
【００５３】
これらのスラブを用い、加熱温度を1100℃として熱間圧延し、860〜880℃にて仕上げ、厚さ2.3mmの鋼板にした。酸洗後冷間圧延して0.5mm厚とし、連続処理ラインにて810℃の焼鈍後、表面に厚さ0.2μmの絶縁皮膜を塗布した。
【００５４】
これらの鋼板から、幅30mm、長さ280mmの試験片を打ち抜き、窒素雰囲気中750℃、2時間の焼鈍をおこなった後、JIS-C-2550に基づき磁気特性を測定した。また、これら鋼板の試料からは臭素−メタノール法により介在物を抽出し、介在物中のＭｎＯとＦｅＯの量を分析しＭｎＯ／ＦｅＯ比を求めた。磁気特性およびＭｎＯ／ＦｅＯ比の測定結果も合わせて表１に示す。
【００５５】
【表１】

【００５６】
この表の結果のうち、鋼成分が本発明で定める範囲内である試番1〜12と、sol.Ａｌ量以外の鋼成分の量が本発明で定める範囲内である試番21および試番22について、sol.Ａｌ量と鉄損の関係を示すと図３のようになる。また、脱酸時の［Ａｌ添加量／Ｓｉ添加量］比と介在物中のＭｎＯ／ＦｅＯ比との関係を図４に示す。
【００５７】
これらからあきらかなように、本発明にて規定する化学組成を有する試番1から12の鋼板の、歪み取り焼鈍後の鉄損Ｗ_15/50は、いずれも4.3W／kg未満で良好な値を示している。これらの中でも試番1〜10は、Ｗ_15/50が4.0W／kgを下回るすぐれた鉄損値が得られているが、その鋼板の介在物中のＭｎＯ／ＦｅＯ比はいずれも2以下である。そして、このような介在物組成を安定して実現させるためには、脱酸時に用いたＡｌとＳｉの添加量比が、0.4を以下とするのがよいことがわかる。
【００５８】
【発明の効果】
本発明は、Ａｌの含有量をできるだけ低くした鋼による、磁気特性にすぐれた無方向性電磁鋼板である。磁気特性のすぐれた電磁鋼板は、電気エネルギーを回転など他の形のエネルギーに変換するときの変換効率を高めるため、省エネルギーの観点から望ましいが、Ａｌの含有量を低くしたことは、さらにこの鋼板の加工屑などを溶解して再利用する際に、使用が容易でありリサイクル性にすぐれている。
【図面の簡単な説明】
【図１】Ｓｎ＋Ｓｂの添加の有無およびＰ量と、無方向性電磁鋼板の鉄損Ｗ_15/50の低下との関係を調べた例を示す図である。
【図２】Ｓｎ＋Ｓｂの添加量と無方向性電磁鋼板の磁束密度Ｂ₅₀の変化との関係を調べた例を示す図である。
【図３】鋼中のsol.Ａｌ量と、無方向性電磁鋼板の鉄損との関係を示す図である。
【図４】溶鋼の脱酸時に添加するＡｌおよびＳｉの添加量比と、鋼板の酸化物系介在物中のＭｎＯ／ＦｅＯの含有量比との関係を示す図である。[0001]
BACKGROUND OF THE INVENTION
The present invention relates to a non-oriented electrical steel sheet. In particular, the present invention relates to a non-oriented electrical steel sheet suitable for use after performing post-molding distortion removal annealing such as punching, which is applied to iron core materials for electric devices such as motors and small transformers.
[0002]
[Prior art]
From the viewpoints of global warming prevention and energy saving, various types of electrical equipment are being made more efficient.Electric steel sheets used as iron core materials for small motors and small transformers are also low in cost, It is required to have excellent magnetic properties. Furthermore, from the viewpoint of reducing the amount of waste as an effective use of resources and environmental pollution measures, it is necessary to cope with recycling of electrical equipment materials.
[0003]
Non-oriented electrical steel sheets are often used for iron core materials for small motors and small transformers. Improvements in the magnetic properties of this non-oriented electrical steel sheet have been studied and proposed, with a number of measures being studied and proposed mainly for reducing iron loss and increasing magnetic flux density or improving magnetic permeability.
[0004]
The main means of reducing the iron loss of steel is to increase the content of Si, Al, Mn or the like in order to increase the specific resistance and suppress the generation of eddy currents, that is, eddy current loss. Si is the most effective for increasing the specific resistance, but its content is limited because it significantly increases the hardness of the steel. The effect of Mn is small compared to Si and Al, and a large amount is required. become. Al has an effect of increasing the specific resistance close to that of Si and does not increase in hardness as much as Si. Therefore, iron loss can be reduced without increasing the hardness.
[0005]
In the case of a non-oriented electrical steel sheet, the means for increasing the magnetic flux density (usually B ₅₀ ) or improving the magnetic permeability is to increase the crystal grains, non-metallic inclusions such as carbides, sulfides, oxides and nitrides, or fine For example, there is a reduction in precipitates, an increase in the preferred orientation for magnetization parallel to the plate surface, and a reduction in processing strain. These influence the movement of the domain wall during magnetization, and not only affect each other, but also are related to iron loss due to hysteresis loss.
[0006]
For example, since the grain boundary inhibits the domain wall movement, the larger the crystal grain, the smaller the existing area of the grain boundary within the same volume, the easier the magnetization, and the improvement of magnetic properties in the form of increased magnetic flux density To do. Like the grain boundaries, the fine precipitates not only inhibit the domain wall movement, but also inhibit the grain growth during annealing and make the crystal grains smaller. Moreover, if the domain wall movement is inhibited, the hysteresis loss increases, which also increases the iron loss. Therefore, in order to improve the magnetic characteristics of the non-oriented electrical steel sheet, measures are taken to increase the specific resistance, reduce impurities, and increase the crystal grains.
[0007]
In addition, for customers to further improve magnetic flux density and reduce iron loss, after punching into a motor core, etc., strain removal annealing at 750 ° C for 1-2 hours is performed for the purpose of strain removal and further grain growth. It is also widely done.
[0008]
However, non-oriented electrical steel sheets used for iron cores may be reused after being melted using an electric furnace by customers when considering recycling. At that time, the material containing a large amount of Al tends to damage the electrode, and the molten steel containing 0.1% by mass or more of Al causes problems such as nozzle clogging during casting and hinders the casting operation. come. For this reason, it is considered that a non-oriented electrical steel sheet having better magnetic properties without using Al is desirable.
[0009]
As described above, Al increases the specific resistance of steel, but has an extremely high affinity with O (oxygen), and is usually used as a deoxidizer for molten steel, greatly affecting the state of oxide inclusions in the steel. To do. Furthermore, so-called sol.Al, which is not an oxide, combines with N in the steel to form AlN. However, when the amount of sol.Al is about 0.005 to 0.1%, AlN is dispersed as fine precipitates. In addition, since the growth of crystal grains is hindered and the magnetic properties are deteriorated, the non-oriented electrical steel sheet is often limited to 0.1% or more when Al is contained and is limited to 0.005% or less when not containing Al.
[0010]
There are several proposals regarding the non-oriented electrical steel sheet that contains as little Al as possible. For example, in Patent Document 1, Si: 0.1 to 1.0%, Mn: 1.5% or less, sol. Al: 0.001 to 0.005%, and a total of three inclusions of SiO ₂ , MnO, and Al ₂ O ₃ in steel An invention of a non-oriented electrical steel sheet with less iron loss is disclosed in which the crystal grain after strain relief annealing is increased by setting the ratio of the mass of MnO to the mass to 15% or less. Furthermore, in the invention disclosed in Patent Document 2, the ratio of the mass of MnO to the total mass of the three kinds of inclusions of SiO ₂ , MnO, and Al ₂ O _{3 in} the steel having the same composition as above is 15% or less. And the proportion of SiO ₂ is 75% or more.
[0011]
Patent Document 3 discloses a non-oriented electrical steel sheet having a composition of Si: 0.05 to 0.55%, Mn: 0.1% or more, Mn-Si ≦ 0.5%, and Al: 0.004% or less. by the mass% ratio MnO / SiO ₂ of SiO ₂ and MnO to 0.3 or less, the invention is presented that can be reduced surface defects such as Hege and holes.
[0012]
Thus, control of the amount of oxide inclusions is considered important for improving the magnetic properties of the non-oriented electrical steel sheet with the Al content reduced as much as possible. However, in order to further improve the magnetic characteristics, it is necessary to change the content of Si and Mn. In this case, it is not clear whether such oxide amount control can be performed.
[0013]
[Patent Document 1]
Japanese Patent Laid-Open No. 63-195217 [Patent Document 2]
Japanese Patent Publication No. 7-42555 [Patent Document 3]
Japanese Patent Laid-Open No. 10-147849 [0014]
[Problems to be solved by the invention]
An object of the present invention is to provide a non-oriented electrical steel sheet having excellent magnetic properties by using a steel that is advantageous for recycling with the Al content as low as possible.
[0015]
[Means for Solving the Problems]
In consideration of recycling, the present inventors have made various studies in order to improve the magnetic properties of the non-oriented electrical steel sheet with the Al content reduced as much as possible. In order to reduce the iron loss, it is desirable to increase the specific resistance. However, since Al is not used, it is necessary to increase the amount of Si or Mn or to use other element additions.
[0016]
Therefore, based on ultra-low carbon steel, various compositions were varied and vacuum-melted in the laboratory to make an ingot, forged into a slab, and then hot-rolled and cold-rolled to a thickness of 0.5 mm, annealed and not A grain-oriented electrical steel sheet sample was prepared. After punching out specimens from these electrical steel sheets, the magnetic properties were measured by performing strain relief annealing at 750 ° C. for 2 hours, and the effects of various components on the magnetic properties were investigated.
[0017]
First, the effect of increasing the amounts of Si and Mn was investigated for the purpose of improving iron loss. As a result, the iron loss was not improved and the magnetic flux density was not as good as expected from the increase in specific resistance. A possible reason for this is the formation of Si-Mn nitride due to the fact that it hardly contains sol.Al. In general, when Al is used as a deoxidizing agent, sol.Al remains in the steel, which binds to N to become AlN, so that no Si—Mn nitride appears. However, when there is no sol.Al and the concentrations of Si and Mn are high, Si—Mn nitrides are formed, which are finely dispersed to deteriorate the iron loss and decrease the magnetic flux density.
[0018]
In this way, we decided to use steel with almost no sol.Al as a base, and further examined the possibility of improving magnetic properties by adding other elements. As a result, it has been found that the inclusion of a small amount of either one or both of Sn and Sb together with P provides the effect of reducing the iron loss and improving the magnetic flux density.
[0019]
P, Sn, and Sb are all elements that segregate at the grain boundaries. A small amount of these elements slightly increases the specific resistance, but has the effect of lowering the iron loss and increasing the magnetic flux density much more than expected. The reason for this effect is not clear, but since Si and Mn are contained in a state in which sol.Al is reduced as much as described above, Si-Mn nitride is easily formed. On the other hand, it seems that the formation of Si—Mn nitride is suppressed by containing P, Sn and Sb in combination.
[0020]
It is presumed that the grain growth during annealing was promoted by the effect of suppressing the formation of fine precipitates, and the magnetic properties were improved. In particular, the strain relief annealing at the customer is annealing at a low temperature for a long time as compared with the finish annealing, and the suppression of the Si—Mn nitride formation is estimated to be more effective in improving the magnetic properties of the semi-process material. Furthermore, it is considered that the inclusion of a small amount of these elements may increase the preferred orientation preferred for magnetic properties.
[0021]
In addition, these electrical steel sheets may be annealed at 750 ° C. for 2 hours after being punched into test pieces in accordance with actual usage conditions at the customer. This annealing is usually heated in a nitrogen atmosphere to prevent oxidation, but the nitrogen in the atmosphere is absorbed by the steel sheet to form a nitride, which may deteriorate the magnetic properties. The presence of Sn and Sb also has the effect of suppressing this nitrogen absorption.
[0022]
Next, when examining the state of nonmetallic inclusions dispersed in the steel for these prototype electromagnetic steel sheet samples, the MnO / FeO ratio (mass% ratio) in the oxide inclusions is small. It was found that the magnetic properties tend to be better. The reason why the magnetic properties are good if the MnO / FeO ratio is small is not well understood, but in the component system in which sol.Al is reduced as much as described above, the low-melting-point oxide inclusions tend to be coarse, Such coarse oxide inclusions are crushed and finely dispersed in the subsequent rolling process to inhibit grain growth during finish annealing or strain relief annealing, so that MnO / This is probably because the magnetic properties are improved by reducing the FeO ratio and suppressing the formation of low melting point oxide inclusions.
[0023]
It is estimated that the MnO / FeO ratio of inclusions is almost determined at the smelting stage such as steel smelting, deoxidation and casting. Therefore, as a result of various investigations on the melting conditions of this steel, it was found that the deoxidation method after decarburization by vacuum treatment of the molten steel has a great influence.
[0024]
In the case of an extremely low carbon steel such as an electromagnetic steel sheet, a considerably large amount of oxygen is contained in the molten steel after decarburization in order to reduce carbon as much as possible. When solidified as it is, it becomes a steel ingot full of air bubbles, so a deoxidizer is added to form an oxide, and oxygen is fixed and eliminated. When Si and Al were added as the deoxidizer, the MnO / FeO ratio of the inclusions could be reduced to a specific value or less by making the Al / Si addition amount ratio or less a certain value.
[0025]
Based on the above knowledge, in order to obtain a non-oriented electrical steel sheet with better magnetic properties, the content range of each element in the steel, the state of non-metallic inclusions, the manufacturing conditions for realizing these, etc. The limits were further clarified and the present invention was completed. The gist of the present invention is as follows.
[0026]
(1) In mass%, C: 0.004% or less, Si: 0.7 to 1.5%, Mn: 0.15 to 0.8%, P: 0.06 to 0.2%, S: 0.005% or less, sol.Al: less than 0.0005%, N : 0.003% or less, O: 0.012% or less , Sn: 0.03 % or less and Sb: 0.03 % or less, or a total of 0.002 to 0.03 %, with the balance being Fe and impurities Non-oriented electrical steel sheet characterized by
[0027]
(2) The non-oriented electrical steel sheet according to the above (1), wherein the ratio “MnO / FeO” of the content (mass%) of MnO and FeO in the inclusions present in the steel is 2 or less.
[0028]
DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
The reason why the chemical composition or the inclusion composition is limited in the present invention will be described below. All content ratios are mass%.
[0029]
C: 0.004% or less C lowers the magnetic properties of steel, so the smaller the content, the better. If it is 0.004% or less, the influence can be almost ignored, but if it exceeds 0.004%, magnetic aging starts to occur, and if it further increases, the magnetic property deterioration becomes remarkable. If possible, the content is preferably 0.003% or less.
[0030]
Si: 0.7-1.5%
Si increases the specific resistance of the steel and decreases the iron loss. Therefore, Si is contained in an amount of 0.7% or more in order to obtain the target iron loss. However, an increase in the Si content increases the hardness and promotes the wear of the punching die, so it is at most 1.5%.
[0031]
Mn: 0.15-0.8%
Mn has an effect of increasing specific resistance, and has an effect of detoxifying by combining with S mixed as an impurity. If the amount is small, the produced MnS is finely dispersed to inhibit crystal grain growth or deteriorate the magnetic properties, so 0.15% or more is contained. However, when the amount of sol.Al is extremely small and the amount of Si is large as described above, if a large amount of Mn is contained, the magnetic properties are greatly deteriorated. Therefore, at most 0.8%. This is presumably due to an increase in grain growth inhibition during annealing due to an increase in Si-Mn nitride. Preferably it is 0.15-0.5%.
[0032]
P: 0.06-0.2%
In the steel sheet of the present invention, P has an important effect of reducing iron loss by composite addition with Sn or / and Sb described later, and is actively utilized. In order to reduce this iron loss, it is necessary to contain 0.06% or more, but if it is contained too much, it becomes hard and brittle and wear of the punching die is accelerated.
[0033]
S: 0.005% or less S is preferable to be as small as possible because it forms fine precipitates and not only inhibits crystal grain growth but also deteriorates magnetic properties. The fine precipitates due to S are mainly MnS, but the presence of MnS is also assumed to be the nucleus of Si—Mn nitride formation and promote the formation of this nitride. The range in which such adverse effects do not appear remarkably is limited to 0.005% or less, but is preferably 0.004% or less, and more preferably 0.003% or less.
[0034]
sol.Al: Less than 0.0005% Al is used for the purpose of deoxidation to obtain a steel ingot without defects. Normally, as a result, sol.Al (acid-soluble Al) remains in the steel, but in the present invention, the amount of sol.Al is made as small as possible to less than 0.0005%. This is because when the amount of sol.Al increases, fine AlN precipitates are formed, which inhibits the growth of crystal grains during annealing, and the crystal grains are not sufficiently large to improve the magnetic properties.
[0035]
N: 0.003% or less The smaller the N content, the better. N forms fine nitrides with Al or Si-Mn, thereby preventing the growth of crystal grains during annealing and inhibiting the improvement of magnetic properties, and the fine precipitates themselves also deteriorate the magnetic properties. For this reason, it is limited to 0.003% or less, more preferably 0.002% or less.
[0036]
O: 0.012% or less O (oxygen) forms oxide inclusions, inhibits the growth of crystal grains and deteriorates magnetic properties, so the smaller the better. However, the presence of oxygen is necessary to decarbonize the molten steel by vacuum treatment, so it is unavoidable that a certain amount of oxygen remains for extremely low carbonization. The range that does not have a significant adverse effect is 0.012% or less, preferably 0.008% or less.
[0037]
Sn: 0.03 % or less, Sb: 0.03 % or less, but Sn + Sb: 0.002 to 0.03 %
One or two of Sn: 0.03% or less and Sb: 0.03% or less are contained in a total amount of Sn and Sb in the range of 0.002 to 0.03%. This is because inclusion with 0.06 to 0.2% P improves the magnetic properties. The reason for this improvement in magnetic properties is thought to be because these elements suppress the formation of Si—Mn nitride.
[0038]
The result of investigating the effect of adding P, Sn and Sb is shown below. Using a vacuum melting furnace, C: 0.002%, Si: 0.85%, Mn: 0.25%, S: 0.0025%, sol.Al: 0.0004% or less, N: 0.002%, O: 0.012% or less After melting the steel ingot changed in the range of P amount 0.01-0.18%, Sn + Sb amount 0.001-0.1%, forging into a 15mm thick slab, heating at 1100 ° C, hot rolling, After finishing to 3mm thickness and grinding the surface to 2.3mm, it was cold rolled to 0.5mm. This steel sheet was subjected to finish annealing equivalent to continuous annealing at 750 ° C. for 30 seconds to obtain a non-oriented electrical steel sheet sample.
[0039]
After punching a specimen 30 mm wide and 100 mm long from these steel sheets, the length direction is parallel and perpendicular to the rolling direction, and used as a specimen for measuring magnetic properties, after annealing in a nitrogen atmosphere at 750 ° C. for 2 hours The magnetic properties in the rolling direction and the direction perpendicular to the rolling direction were measured with a small single plate magnetometer, and the average value was obtained.
[0040]
FIG. 1 shows changes in iron loss W _15/50 depending on the P content when Sn or Sb is not added (Sn + Sb: less than 0.002%) and when Sn + Sb is 0.015%. From this, the iron loss decreases with the increase of P content, but when Sn and Sb are added, the iron loss is greatly reduced especially when P is 0.06% or more, and it is obtained that less than 4 W / kg. Recognize.
[0041]
FIG. 2 shows the results of examining the change in magnetic flux density B ₅₀ due to the addition of Sn and Sb when P is 0.03% and when it is 0.10%. When P is contained in a large amount, Sn and Sb Addition shows a remarkable improvement in magnetic flux density, and the effect appears when the content of Sn + Sb is 0.002% or more. However, even if the amount of Sn + Sb exceeds 0.03%, the effect is saturated and no further improvement is obtained.
[0042]
Further, when Sn or Sb is remelted, scraps and the like may cause weld cracking and surface flaws, so the amount of Sn + Sb should not exceed 0.03%.
[0043]
The content ratio of MnO / FeO in the inclusion is desirably 2 or less. This is because iron loss is greatly reduced by setting this ratio to 2 or less. MnO and FeO in steel can be extracted and analyzed by the bromine-methanol method. In order to make this MnO / FeO ratio 2 or less, it is preferable to add Si and Al in the deoxidation treatment of the molten steel, and to make the Al amount / Si amount ratio at that time 0.4 or less.
[0044]
The amount of carbon in the steel is reduced by, for example, a vacuum treatment method for molten steel, such as the RH degassing method, but the target ultra-low carbon steel has a sufficiently high oxygen in the molten steel at the end of decarburization. It is necessary to add a deoxidizing agent. In order to produce a sound slab, Si alone is incomplete, and Al must be used as a deoxidizer. However, if Al is left in a solid solution state, the magnetic properties of the steel sheet are deteriorated.
[0045]
Therefore, the amount of sol.Al is controlled to be less than 0.0005% by supplying oxygen corresponding to the Al concentration to the molten steel and oxidizing and reducing the Al. The Al concentration in the molten steel can be determined by a direct method of analyzing the molten steel, an indirect method of measuring the oxygen concentration with an oxygen sensor and calculating from the Al-O equilibrium. The amount of oxygen supplied to the molten steel may be the equivalent amount required for the reaction with Al, but it is preferable to further increase the amount of sol. The oxygen supply method may be any method such as a method of adding a solid oxide mass or powder such as iron oxide or Mn oxide to the molten steel, or a method of blowing or blowing oxygen gas into the molten steel.
[0046]
Si and Al as deoxidizers are added in the above ratio. At this time, both components may be added simultaneously, but it is preferable to add Al after adding Si. Since Al has a very large deoxidizing power compared to Si, if Al is added first, alumina inclusions and FeO-MnO-Al ₂ O ₃ inclusions are generated, and the MnO / FeO ratio should be controlled to 2 or less. Becomes difficult.
[0047]
On the other hand, when Al is added after Si is added, Al has a higher deoxidizing power and a higher reaction rate, so that it can be processed in a short time. However, the Al amount / Si amount ratio added by any method is set to 0.4 or less.
[0048]
After the deoxidation treatment of the molten steel is performed by adding Si and Al as described above, a deficiency with respect to the target composition of Mn is added, and further, alloy elements of P, Sn, and Sb are added to adjust the components. These component elements may be added before deoxidation.
[0049]
The component-adjusted molten steel is made into a slab for rolling by a continuous casting method or a steel ingot-slab rolling method. The slab is made into a product by performing hot rolling, cold rolling, annealing, surface coating, etc. according to the production method of a normal non-oriented electrical steel sheet.
[0050]
In said manufacturing process, 1000-1150 degreeC is desirable for the slab heating temperature of hot rolling. This is because by setting the temperature to 1150 ° C or less, the magnetic properties of the obtained product are improved and the variation in properties is reduced. However, at a heating temperature lower than 1000 ° C, the temperature of the portion that hits the slab skid is low. If it is too large, the deformation resistance may increase, and the plate thickness variation may increase. The finishing temperature of hot rolling is preferably 830 to 930 ° C. This is because even if the temperature is lower than 830 ° C. or higher than 930 ° C., iron loss and magnetic flux density are reduced, and sufficient magnetic properties cannot be obtained.
[0051]
In particular, when trying to improve the magnetic properties, it is preferable to perform hot-rolled sheet annealing before cold rolling after hot rolling, but this need not be performed. The rolling reduction of cold rolling is desirably 70 to 85%. This is mainly because the thickness of non-oriented electrical steel sheet is 0.5mm. When the rolling reduction is less than 70%, the thickness of the hot-rolled sheet is thin, the burden on the hot rolling equipment increases, and the pickling efficiency decreases. This is because the magnetic properties deteriorate when the rolling reduction exceeds 85%.
[0052]
【Example】
After decarburization of molten steel refined in a converter using an RH-type vacuum degassing apparatus, Mn, P, Sn and Sb are added, and Al and Si are simultaneously added at different ratios to deoxidize The slab was then continuously cast. Table 1 shows the composition of the prototype steel and the ratio of Al and Si added during deoxidation.
[0053]
Using these slabs, the steel was hot rolled at a heating temperature of 1100 ° C., finished at 860 to 880 ° C., and formed into a steel plate having a thickness of 2.3 mm. After pickling and cold rolling to a thickness of 0.5 mm, after annealing at 810 ° C. in a continuous processing line, an insulating film having a thickness of 0.2 μm was applied to the surface.
[0054]
A test piece having a width of 30 mm and a length of 280 mm was punched from these steel plates, and after annealing in a nitrogen atmosphere at 750 ° C. for 2 hours, the magnetic properties were measured based on JIS-C-2550. Further, inclusions were extracted from these steel plate samples by bromine-methanol method, and the amounts of MnO and FeO in the inclusions were analyzed to obtain the MnO / FeO ratio. The measurement results of the magnetic properties and the MnO / FeO ratio are also shown in Table 1.
[0055]
[Table 1]

[0056]
Among the results in this table, trial numbers 1 to 12 in which the steel components are within the range defined by the present invention, and trial numbers 21 and trial numbers in which the amount of the steel components other than the amount of sol.Al is within the range defined by the present invention. FIG. 3 shows the relationship between the amount of sol.Al and the iron loss with respect to 22. FIG. 4 shows the relationship between the [Al addition amount / Si addition amount] ratio during deoxidation and the MnO / FeO ratio in inclusions.
[0057]
As is clear from these, the iron loss W _15/50 after the strain relief annealing of the steel sheets Nos. 1 to 12 having the chemical composition specified in the present invention is less than 4.3 W / kg and is a good value. Is shown. Among these, trial numbers 1 to 10 have excellent iron loss values where W _15/50 is less than 4.0 W / kg, but the MnO / FeO ratio in the inclusions of the steel sheet is 2 or less. is there. And in order to implement | achieve such an inclusion composition stably, it turns out that the addition amount ratio of Al and Si used at the time of deoxidation should make 0.4 or less.
[0058]
【The invention's effect】
The present invention is a non-oriented electrical steel sheet having excellent magnetic properties, which is made of steel having a Al content as low as possible. An electrical steel sheet with excellent magnetic properties is desirable from the viewpoint of energy saving in order to increase the conversion efficiency when converting electrical energy into other forms of energy such as rotation. It is easy to use and excellent in recyclability when melting and reusing the processing waste.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a diagram showing an example in which the relationship between the presence / absence of Sn + Sb and the amount of P and the decrease in iron loss W _15/50 of a non-oriented electrical steel sheet is examined.
FIG. 2 is a diagram showing an example in which the relationship between the amount of Sn + Sb added and the change in magnetic flux density B ₅₀ of a non-oriented electrical steel sheet is examined.
FIG. 3 is a diagram showing the relationship between the amount of sol.Al in steel and the iron loss of a non-oriented electrical steel sheet.
FIG. 4 is a diagram showing the relationship between the addition ratio of Al and Si added during deoxidation of molten steel and the content ratio of MnO / FeO in the oxide inclusions of the steel sheet.

Claims

In mass%, C: 0.004% or less, Si: 0.7 to 1.5%, Mn: 0.15 to 0.8%, P: 0.06 to 0.2%, S: 0.005% or less, sol. Al: less than 0.0005%, N: 0.003% In the following, O: 0.012% or less , and further, Sn: 0.03 % or less and Sb: 0.03 % or less of one or two of 0.002 to 0.03 % in total, with the balance being Fe and impurities. Non-oriented electrical steel sheet.

2. The non-oriented electrical steel sheet according to claim 1, wherein a ratio “MnO / FeO” of the content (mass%) of MnO and FeO in inclusions present in the steel is 2 or less.