JP3852160B2 - 冷凍システムのレトロフィット法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ハイドロクロロフルオロカーボン(以下、HCFCと略称する)を冷媒として使用する冷凍システムを、ハイドロフルオロカーボン(以下、HFCと略称する)冷媒使用に変更するレトロフィット法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、HCFC系冷媒を使用する冷凍システムに対して、エステル等を循環させて洗浄するフラッシングを行った後、HFC系冷媒と新しいエステル等の冷凍機油の混合流体を充填してレトロフィットすることが行われている。
【0003】
このようなレトロフィットの方法として、クロロフルオロカーボンあるいはHCFCを冷媒として使用し、鉱油あるいはアルキルベンゼン油を冷凍機油として使用している冷凍システムを、R134a冷媒と分子量250以上のエステルを用いてレトロフィットすることが提案されている。
このレトロフィット法においては、R134a冷媒との相溶性を良くするために、エステルの極性を大きくしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のレトロフィット法においては、以下のような問題がある。
すなわち、上記フラッシングに用いるエステルの極性を大きくしているためにR134a冷媒との相溶性は良いのであるが、無極性の鉱油やアルキルベンゼン油との相溶性は悪い。そのために、レトロフィット前の冷凍システムに残っている鉱油あるいはアルキルベンゼン油の濃度をある一定濃度まで下げるためには、上記フラッシングを数回繰り返す必要があり、フラッシングの効率が悪いという問題がある。
【0005】
また、上記エステルは加水分解を起こす。そのために、上記フラッシング後に冷凍システム中に残ったエステルは、当該冷凍システム中に水分がある場合には加水分解を起こして不純物を生成する。こうして、冷凍機油の劣化や上記不純物による圧縮機等の摺動部の摩耗やキャピラリ管の詰まり等が生ずるという問題もある。
【0006】
そこで、この発明の目的は、フラッシング効率が良く、信頼性の高い冷凍システムにレトロフィットできる冷凍システムのレトロフィット法を提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、HCFCを主成分とする冷媒と鉱油又はアルキルベンゼン油を主成分とする冷凍機油を使用する冷凍システムを、HFCを主成分とする冷媒とポリビニルエーテル(以下、PVEと言う)を主成分とする冷凍機油を使用するように変更する冷凍システムのレトロフィット法であって、上記PVEを主成分とする冷凍機油の粘度より低い粘度のPVEと上記HFCを主成分とする冷媒とを混合した混合流体で、上記冷凍システムをフラッシングすることを特徴とし、上記混合流体のPVEは、下記の一般式で表されるPVEであることを特徴とする冷凍システムのレトロフィット法において、上記混合流体に、フェノール系の酸化防止剤とエポキシ系の酸捕捉剤との夫々を、0.01%wt〜5%wt混合したことを特徴としている。
R1−(−CH−CH2−)n−R3
|
OR2
ここで、R1,R2,R3:水素原子、または、炭素数が1〜5のアルキル基
n:1以上の整数
【0008】
上記構成によれば、主鎖が炭化水素であるために無極性の鉱油またはアルキルベンゼン油に対する相溶性がエステルよりも良く、且つ、レトロフィット後の冷凍システムに充填するPVE油の粘度よりも低粘度のPVEがフラッシングに使用される。したがって、少ない回数で効率良くフラッシングが行われる。また、上記混合流体のPVEは、フラッシング終了後に冷凍システム中に残っても劣化することが無く、不純物による圧縮機等の摺動部の摩耗やキャピラリ管の詰まり等の悪影響を及ぼすことはない。
【0009】
さらに、上記混合流体におけるPVEのアルキル基の炭素数は1〜5であるため、上記HFCとの十分な相溶性を呈する。そのために、上記フラッシング中においてHFCと分離してフラッシング効果が低下することはない。また、レトロフィット終了後に上記冷凍システム中に残っても、新たに充填されるHFC系冷媒との相溶性が良く、十分に潤滑性能が発揮される。
【0010】
さらに、上記フラッシング用の混合流体にはフェノール系の酸化防止剤が混合されているので、上記冷凍システム内に空気が混入した場合に上記混合流体が酸化することが防止される。さらに、エポキシ系の酸捕捉剤が混合されているので、上記フラッシング時に、上記冷凍システムに残っている酸性物質が捕捉される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
図1は、本実施の形態の冷凍システムのレトロフィット法が適用される冷凍システムにおける冷凍回路図である。
図1において、圧縮機1から吐出された高温降圧の冷媒ガスは、室外熱交換器2で凝縮し、膨張機構3で膨張し、室内熱交換器4で蒸発し、四路切換弁5を介して圧縮機1に戻る。その場合における蒸発熱を室内空気から奪って室内を冷却する。また、四路切換弁5を切り換えることによって、室内熱交換器4を凝縮器として使用して凝縮熱で室内空気を加熱する。
尚、図1に示す構成から四路切換弁5を削除して、冷房あるいは暖房の何れか一方のみの機能を有するように構成しても構わない。
【0012】
上記冷凍システムにおいては、HCFC系冷媒を冷媒として用い、鉱油あるいはアルキルベンゼン油を冷凍油として使用しているものとする。
【0013】
本実施の形態においては、上記構成の冷凍システムを、HFCを冷媒とし、PVE油を冷凍機油として使用する冷凍システムにレトロフィットする。このように、主鎖が炭化水素であり、無極性の鉱油またはアルキルベンゼン油に対する相溶性がエステルよりも良いPVEをレトロフィット用に使用することによって、フラッシングの効率を良くするのである。
【0014】
その場合に、上記フラッシングに用いるHFCとPVEとの混合流体におけるPVEの粘度を、レトロフィット後の冷凍システムに最終的に充填するPVE油の粘度(例えば、VG=68)より低粘度にするのである。
上記フラッシングに使用するPVEは、粘度が低い方が上記鉱油やアルキルベンゼン油に対する溶解力が強い。したがって、上述の混合流体を用いることによってレトロフィット前の冷凍システム中に残っている上記鉱油やアルキルベンゼン油の残油が容易に溶解され、フラッシングの回数を少なくしてフラッシング効率を良くすることができるのである。
【0015】
また、上記混合流体中のPVEはフラッシング後に冷凍回路中に残っても劣化することが無く、不純物による圧縮機1等の摺動部の摩耗やキャピラリ管の詰まり等の悪影響を及ぼすことはない。こうして、信頼性の高い冷凍システムにレトロフィットできるのである。
【0016】
本レトロフィット法に使用するPVEは、一般式
R1−(−CH−CH2−)n−R3
|
OR2
ここで、R1,R2,R3:水素、または、炭素数が1〜5のアルキル基
n:1以上の整数
のPVEを主成分とする。
【0017】
上述のように、本実施の形態においては、アルキル基の炭素数を1〜5としている。上記アルキル基の炭素数を「6」以上とすると上記PVEとHFCとの相溶性が低くなり、HFCと分離してフラッシング効果が低下する。また、レトロフィット終了後に冷凍回路中に残った場合に、新たに充填されるHFC系冷媒との相溶性が悪いために、潤滑性能が発揮できなくなる。
そこで、本実施の形態においては、アルキル基の炭素数が1〜5であるPVEをフラッシング用に使用するのである。
【0018】
また、上記フラッシング時に、冷凍回路内に空気が混入する場合が多々ある。そこで、本実施の形態においては、上述したフラッシング用のHFCとPVEとの混合流体に、フェノール系の酸化防止剤を混合する。その場合に、混合割合が0.01%wt以下においては酸化防止効果が得られない。一方、5%wt以上においてはPVE油に溶けなくなる。そこで、本実施の形態において混合するフェノール系酸化防止剤の量は、0.01%wt〜5%wtが望ましい。
【0019】
さらに、上記フラッシング時に、冷凍回路中に残っている酸性物質を捕捉するために、フラッシング用のHFCとPVEとの混合流体にエポキシ系の酸捕捉剤を混合する。その場合に、混合割合が0.01%wt以下では酸性物質の捕捉効果が得られない。一方、5%wt以上では重合してスラッジとなる。そこで、本実施の形態において混合するエポキシ系の酸捕捉剤の量は、0.01%wt〜5%wtが望ましい。
【0020】
また、上記フラッシング用の混合流体に使用するPVEは、最適なフラッシング効果を発揮するために、40℃における粘度が、20cst〜70cstであることが望ましい。ここで、粘度が20cst以下の場合には潤滑性が無くなり、レトロフィット終了後に冷凍回路内に残った場合に新たに充填された冷凍機油(PVE油)の潤滑性が悪くなってしまう。一方、粘度が70cst以上の場合には、上記鉱油あるいはアルキルベンゼン油に対する洗浄効果が得られない。
【0021】
このように、上記実施の形態においては、HCFCを冷媒として使用し、鉱油またはアルキルベンゼン油を冷凍機油として使用している冷凍システムを、HFCを冷媒として使用する冷凍システムにレトロフィットする場合に、無極性の鉱油あるいはアルキルベンゼン油に対する相溶性がエステルよりも良いPVE油を冷凍機油として使用するようにしている。そして、上記フラッシングの際に使用されるPVEの粘度を、上記PVE油の粘度よりも低くしている。
したがって、上記フラッシングの際に使用されるHFCとPVEとの混合流体は、残油としての鉱油あるいはアルキルベンゼン油との相溶性が良く、フラッシング効率を高めることができる。また、冷凍回路中に残っても劣化することが無く、不純物による圧縮機1等の摺動部の摩耗やキャピラリ管の詰まり等の悪影響を無くして、信頼性の高い冷凍システムにレトロフィットできるのである。
【0022】
尚、上記実施の形態においては空気調和機の場合を例に説明しているが、冷凍冷蔵機器等であっても何ら差し支えない。
【0023】
【発明の効果】
以上より明らかなように、請求項1に係る発明の冷凍システムのレトロフィット法は、HCFCを主成分とする冷媒と鉱油またはアルキルベンゼン油を主成分とする冷凍機油を使用する冷凍システムを、HFCを主成分とする冷媒とPVEを主成分とする冷凍機油を使用するように変更する場合に、上記PVEを主成分とする冷凍機油の粘度より低い粘度のPVEと上記HFCを主成分とする冷媒とを混合した混合流体で上記冷凍システムをフラッシングするので、上記混合流体の残油(つまり、上記鉱油あるいはアルキルベンゼン油)に対する相溶性が、従来のエステルを用いた混合流体よりも非常に良い。
したがって、上記フラッシングの効率を、上記エステルを用いた場合よりも大幅に改善できる。
【0024】
さらに、上記混合流体のPVEは、フラッシング終了後に冷凍システム中に残っても劣化することは無い。したがって、不純物による圧縮機等の摺動部の摩耗やキャピラリ管の詰まり等の悪影響を回避でき、高信頼性の冷凍システムにレトロフィットできる。
【0025】
さらに、上記混合流体のPVEは、下記の一般式で表されるPVEであるので、HFCとの十分な相溶性を有する。
したがって、上記フラッシング中において、PVEがHFCと分離してフラッシング効果が低下することを防止できる。また、レトロフィット終了後に上記冷凍システム中に残っても、新たに充填されるHFC系冷媒との相溶性が良いために、十分な潤滑性能を発揮できる。
R1−(−CH−CH2−)n−R3
|
OR2
ここで、R1,R2,R3:水素原子、または、炭素数が1〜5のアルキル基
n:1以上の整数
【0026】
また、上記混合流体に、フェノール系の酸化防止剤を0.01%wt〜5%wt混合したので、上記混合流体の酸化を防止できる。さらに、エポキシ系の酸捕捉剤を0.01%wt〜5%wt混合したので、上記フラッシング時に上記冷凍システムに残っている酸性物質を捕捉できる。その場合に、上記エポキシ系の酸捕捉剤の混合量を5%wtより低く押さえているので、上記酸捕捉剤が重合してスラッジとなることはない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の冷凍システムのレトロフィット法が適用される冷凍システムにおける冷凍回路図である。
【符号の説明】
1…圧縮機、 2…室外熱交換器、
3…膨張機構、 4…室内熱交換器、
5…四路切換弁。
Claims (1)
- ハイドロクロロフルオロカーボンを主成分とする冷媒と、鉱油又はアルキルベンゼン油を主成分とする冷凍機油を使用する冷凍システムを、ハイドロフルオロカーボンを主成分とする冷媒とポリビニルエーテルを主成分とする冷凍機油を使用するように変更する冷凍システムのレトロフィット法であって、
上記ポリビニルエーテルを主成分とする冷凍機油の粘度より低い粘度のポリビニルエーテルと上記ハイドロフルオロカーボンを主成分とする冷媒とを混合した混合流体で、上記冷凍システムをフラッシングすることを特徴とし、
上記混合流体におけるポリビニルエーテルは、下記の一般式で表されるポリビニルエーテルである
ことを特徴とする冷凍システムのレトロフィット法において、
上記混合流体に、
フェノール系の酸化防止剤とエポキシ系の酸捕捉剤との夫々を、0.01%wt〜5%wt混合した
ことを特徴とする冷凍システムのレトロフィット法。
R1−(−CH−CH2−)n−R3
|
OR2
ここで、R1,R2,R3:水素原子、または、炭素数が1〜5のアルキル基
n:1以上の整数
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---|---|---|---|
JP15196097A JP3852160B2 (ja) | 1997-06-10 | 1997-06-10 | 冷凍システムのレトロフィット法 |
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-
1997
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