JP3851527B2 - 外国語学習装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、学習者に順次学習内容を提示しつつ、学習者が外国語を自習することが可能な外国語学習装置の構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、音声データベースおよび音声出力機能を用いて、外国語の学習をパーソナルコンピュータ等により行なうことが可能な外国語の学習システムが開発されている。
【0003】
このような外国語学習システムにおいては、学習者は、コンピュータ等に予め格納されている所定のデータベースに基づいて、予めプログラムされている学習シーケンスに従ってパーソナルコンピュータ等から出力される音声情報に対して、聞き取りの結果を確認するための質問に答えていくことにより、外国語の学習を自習することが可能である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、外国語を聞き取ったり発音したりする際には、聞き手・話し手の母語(第1言語)が何であるかが重要な要因となる。この母語に依存して、学習者にとって当該外国語の学習の困難度や困難なパターンが左右されることが知られている。したがって、外国語の学習において、学習者の母語を考慮した学習方法を用いることは、効果的な訓練方法につながると考えられる。
【0005】
しかしながら、このような母語の相違に依存して、どのような学習手順(学習シーケンス)を作成して、学習者が学習することが効果的であるか否かについては明確でない。
【0006】
一方、このような外国語学習における困難なパターンの出現は訓練に用いられる刺激音の属性によっても変動する。つまり、学習者の母語が何であるかというような学習者の属性によって学習の困難度が相違することを考慮に入れるだけでなく、個々の外国語学習者に対してどのようなシーケンスで各刺激音の訓練を行なうのかを考慮することも学習効果を上げるためには重要な要因となる。
【0007】
ところが、このような刺激音の属性と、学習者の属性との双方に基づいて、どのような学習シーケンスが効果的であるかについても必ずしも現状において明確であるとはいえない。
【0008】
図8は、学習者の属性と刺激音の関係を示す概念図であり、図9は、刺激音の属性と学習者との関係を示す概念図である。
【0009】
これらの図を用いて、以上の説明をまとめると、図8に示すとおり、同じ音声が学習システムから学習者に対して与えられた場合でも、学習者Aにこの音が与えられる場合と、学習者Bにこの音が与えられる場合とでは、学習者の属性(年齢、性別、母語など)によってその難易度が異なるため、予め定められた単一の学習シーケンスでは、学習者の属性に応じた効果的な学習を行なうことが困難である。
【0010】
一方、図9に示すとおり、同一の学習者に対して、異なった刺激音を与えて、その聞き取りの訓練をする場合においても、刺激音ごとにその難易度が異なるだけでなく、同一の刺激音がどの話者によって発話されているか、あるいはどのような単語内で発話されるのか、さらには、どのような単語のグループ内で発話されるのかによっても困難度が変化する。
【0011】
したがって、外国語学習システムは、上述のような学習者の属性および学習者に与えられる刺激音の属性の各々を考慮して、当該学習者のレベルに対して最適なシーケンスで刺激音が提示され学習者が訓練する構成となっていることが望ましい。しかしながら、従来は、このような学習者の属性および刺激音の属性の双方を考慮したシーケンスにしたがって、学習者に学習プログラムを提示することは行われていなかった。
【0012】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、学習者の属性および刺激音の属性の双方を考慮して、当該学習者にとってより効果的な外国語の学習を可能とする外国語学習装置を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の外国語学習装置は、外国語学習装置であって、情報通信網を介して複数の学習者端末との間で情報の授受を行うことが可能なインタフェース部と、外国語学習装置が使用するデータを格納するための記憶装置とを備え、記憶装置は、インタフェース部を介して、複数の学習者ごとに返信される学習者の属性データを格納するための第1のデータ格納手段と、複数の学習対象刺激音のそれぞれに対応して予め定められる複数の単語グループを格納するための第2のデータ格納手段とを含み各単語グループは、学習対象刺激音を各々が有する複数の単語を含み第2のデータ格納手段は、各単語グループについての発話データおよび学習者の属性を示す属性データに依存する単語グループの学習難易度と各単語グループを関連づけて格納するとともに、単語グループを発話した話者ごとに学習難易度と関連づけて格納し、複数の単語グループを学習難易度に応じて予め定められた所定数の難易度レベルに分類するとともに、学習者に対して情報通信網を介して、単語グループのうちのいずれかの単語グループの発話データと単語グループを特定するためのデータとを送信し、学習者からの選択結果を示す返信データを受け取って、返信データの正答率に基づいて学習難易度を更新するための演算装置を有する学習シーケンス制御部とを備え、第2のデータ格納手段は、単語グループの累積提示回数と累積正答回数とを格納し、演算装置は、学習者の属性および話者について、学習難易度を、累積提示回数に対する累積正答回数の比に応じて更新し、新たにエントリーした学習者に対するテストにより特定される新たな学習者のレベルに応じて、更新された学習難易度に基づいて複数の単語グループから学習対象となる単語グループを選択して、新たな学習者端末に対して選択された単語グループの発話データと単語グループを特定するためのデータとを送信する。
【0014】
請求項2記載の外国語学習装置は、請求項1記載の外国語学習装置の構成に加えて、学習対象刺激音は、子音であって、複数の単語グループの少なくとも一部は、子音の発音のみが相互に異なる単語対を含む。
【0016】
請求項記載の外国語学習装置は、請求項記載の外国語学習装置の構成に加えて、第2のデータ格納手段は、学習者の属性ごとに、単語グループの累積提示回数と累積正答回数と、さらに、難易度レベルの平均値とを格納し、
演算装置は、学習難易度を(累積正答数)×(難易度レベルの平均値)/(累積提示回数)により算出して更新する。
【0017】
請求項記載の外国語学習装置は、請求項1〜のいずれかに記載の外国語学習装置の構成に加えて、学習者の属性は、学習者の性別、学習者の年齢および学習者の母語のすくなくとも1つを含む。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係る外国語学習装置100の構成を説明するための概略ブロック図である。
【0019】
図1を参照して、外国語学習装置100は、学習データやテストデータを刺激音の属性と関連づけて格納しておくための刺激属性データベース10と、学習者個人の情報を格納するための個人情報データベース20とを備える。
【0020】
刺激属性データベース10には、当該学習テストデータを構成する各単語の音声データを格納する単語データベース12と、単語データベース12内の各単語の発話に対応する音声データを格納するための発話データベース14と、各単語を発話した話者についての属性を格納するための話者データベース16と、各単語をどのような単語グループ、たとえば、後に説明する「対立ペア」として学習者に提示するべきかについての情報を格納した単語グループデータベース18とを含む。
【0021】
個人情報データベース20は、学習者個人の母語が何であるかを格納する母語データベース22と、学習者の年齢を格納するための年齢データベース24と、学習者の性別を格納するための性別データベース26と、学習者の習熟度を格納するための習熟度データベース28とを含む。
【0022】
外国語学習装置100は、さらに、学習者の選択したコースに従って、どのような順序でテストデータの提示および聞き取りテストの内容を提示するかについてのデータを格納した学習シーケンスデータベース30を備える。
【0023】
外国語学習装置100は、また、刺激属性データベース10中のデータにおいて、後に説明するように多数の学習者の学習に従って、その難易度の情報が変更されることに応じて、シーケンス生成データベース30中の情報に対応するデータを、刺激属性データベース10から抽出して、学習シーケンスを生成するためのシーケンス生成制御部40と、シーケンス生成制御部40から出力される音声データや学習者に選択するべき選択肢のデータ等の文字データや図形データ等をインターネット200等の情報伝達網に対して出力し、かつ学習者からインターネット200等を介して与えられる学習者自身の個人情報等や解答情報を、シーケンス生成制御部40に対して与えられるためのインターフェイス部50とを備える。
【0024】
一方、このインターネット200等の情報通信網を介しては、各学習者の端末300.1〜300.N(N:自然数)が接続されている。このようなインターネット200などの情報通信網を介して、多数の学習者が、外国語学習装置100に対してアクセスすることを可能とすることにより、後に説明するような学習シーケンス生成のための難易度データを多数収集することができ、学習シーケンス生成の信頼度を向上させることが可能となる。
【0025】
すなわち、本発明に係る外国語学習装置100は、以下に詳しく説明するように、学習者に提示される刺激音に存在する困難度のパターンを、学習者の母語や、個人の習熟度(学習者がその外国語をどれぐらい習熟しているか)や、年齢や性別等の学習者の属性に応じて、訓練のシーケンスを変更することを可能とするものである。さらに、本発明に係る外国語学習装置100は、このような学習者の属性だけではなく、学習者に与えられる刺激音の属性、たとえば発話者やどの単語の中で発音されるのかや、どのような単語グループとして学習者に提示するかなどの属性に基づいても、学習者への訓練シーケンスを柔軟に変更する。ここで、「単語グループ」としては、たとえば、対象となる刺激音の/r/と/l/だけが異なる単語対(「対立ペア」と呼ぶ)である、”red”と”led”などを用いることができる。
【0026】
このために、本発明に係る外国語学習装置100においては、インターネット200などの情報通信網を利用して、多数の学習者の学習データをサンプリングし、その結果を当初の学習データに対して動的に反映させることで、訓練音声の各刺激属性に対応する難易度を変更するとともに、学習者の属性をもとに最適な学習教材の構成を作成して、刺激属性と学習者の属性の双方を反映した外国語学習を実現する。
【0027】
以下、さらに、本発明に係る外国語学習装置100について詳しく説明する。
図1において、刺激属性データベース10中の各データベース12〜18に格納されるデータや、個人情報データベース20中の各データベース22〜28に格納されるデータとは、相互に関連付けがなされており、リレーショナルなデータベースとなっている。
【0028】
図2は、このような刺激属性データベース10および個人情報データベース20に格納されるリレーショナルなデータの関係の一例を示す概念図である。
【0029】
上述したとおり、学習者に対して与えられる学習対象刺激音、たとえば日本人が英語を学習する場合については、発音や聞き取りにおいて間違いの生じやすい“R”と“L”、“B”と“V”、“S”と“TH”等の刺激音が対となって学習者に提示される。この場合、単に子音として学習者に提示されるのではなく、たとえば“R”と“L”の場合であれば、“right”と“light”というような「対立ペア」として学習者へのデータの提示が行なわれる。このほか、“B”と“V”という刺激音の対については、同様にして、たとえば“boat”と“vote”等のような対立ペアとして学習者に対する提示が行なわれる。このとき、対象となる刺激音だけが異なり他の母音や子音の発音が共通するという狭義の「対立ペア」だけでなく、対象となる刺激音が異なり他の母音や子音の発音が類似するという広義の「対立ペア」を使用することも可能である。さらに、このような対立ペアは必ずしも二者択一ではなく、たとえば、母音が学習対象となっている場合は、複数の刺激音で対立ペアを組む場合もあり得る。
【0030】
学習者の学習対象となる刺激音のデータベースには、学習対象となる外国語のすべての刺激音が格納されており、このような刺激音は、上述したようなたとえば対立ペアとの関連付けがなされている。このような各刺激音に対しては、学習者に提示されるための単語の対である対立ペアが、複数組対応している。
【0031】
さらに、各対立ペアについても、1人の話者だけではなく、複数人の話者、たとえばn人の話者が発音した場合の各対立ペアのデータが格納されている。たとえば話者1について見ると、発話した話者の属性(年齢や性別など)が話者属性として関連付けられており、かつ、話者1が発音した音声情報が対応するデータとして格納される。さらに、各話者ごとに応じて、後に説明するように、学習者の学習経過に従って、難易度が計算され、その難易度についても話者と関連付けてデータが格納されている。
【0032】
難易度については話者だけではなく、各対立ペアごとに、たとえば、話者についてその属性に関わりなく平均をとることで難易度が関連付けられている。このような各対立ペアごとの難易度に基づいて、さらに、たとえば、その平均値をとることで、学習対象となる刺激音についての難易度も算出され、刺激音ごとの難易度がデータとして関連付けられている。
【0033】
図3は、各対立ペアに対して関連付けられる難易度をさらに詳しく説明するための概念図である。
【0034】
各対立ペアに対して、学習者が感じる難易度は、その学習者の属性、すなわち性別、年齢、母語等によって異なるため、それぞれの属性に対応して難易度のパラメータが格納される。
【0035】
たとえば、母語1に対応しては、男女の性別ごとに、かつ各性別の年代ごと、たとえば10代、20代、30代…ごとに、当該対立ペアが学習者に対して提示された累積提示回数、および学習者が対立ペアのうちいずれが発音されたかについて正しく解答できた数の累積数である累積正答回数が格納される。
【0036】
さらに、各年代別に提示平均レベルのデータも格納されている。ここで、「提示平均レベル」とは、当該刺激音が学習者に対して、過去において、後に説明するようなどの難易度のレベルで提示されてきたかを示す平均値である。
【0037】
ここで、「難易度のレベル」とは、特に限定されないが、たとえば、予め複数の単語グループ(たとえば、対立ペア)を難易度の順に従って、所定数の群に分割した際に、対象となる単語グループが何番目の群に属するかを意味するものとする。図3においては、R,Lに対応する複数の対立ペアが、たとえば、難易度に従って、10個の群に分割されるのであれば、10段階のレベルで難易度を表現することになる。
【0038】
また、学習者の属性としては、性別や年齢のほかに、学習対象となる外国語の学習期間や他の機関による試験のレベル等の学習者の習熟度を示すデータを用いることも可能である。
【0039】
このような3つのパラメータを用いて、難易度は、たとえば以下のような式により計算することができる。
【0040】
(難易度)=(累積正答数)×(提示平均レベル)/(累積提示回数)
このようなパラメータは、刺激音の数×属性分だけ格納されていることになる。すなわち、学習者の母語の数と学習者の性別および学習者の年代別の各属性の総数×刺激音の数だけのパラメータがデータベース中には累積されている。
【0041】
実際に学習者が学習を行なうと、リアルタイムで上記「累積正答数」、「累積提示回数」が更新される。一方、「提示平均レベル」はある学習者に対して学習シーケンスを生成する際に更新される。
【0042】
また、学習者に対する対立ペアの提示(以下、「トライアル」と呼ぶ)がどのレベルで何回提示されたかを格納するための領域が、データベース10内に各対立ペアごとに設けられており、学習時にリアルタイムで更新される。このようなデータを格納していることで、学習者に対する難易度のレベルが、学習者の成績によって上下動する。このため、どのレベルのトライアルがよく学習者に提示されているかも確認することが可能となる。
【0043】
なお、特に限定されないが、図2に示した各話者に関連する難易度も、同様にして、各発話データごとに、「累積正答数」、「累積提示回数」および「提示平均レベル」をリアルタイムに累積し、更新することが可能である。
【0044】
この「提示平均レベル」に基づいて、学習者に提示する対立ペアや、話者の発話の選択が行われる。
【0045】
図4は、外国語学習装置100によって行なわれる学習の流れを説明するためのフローチャートである。
【0046】
学習者がインターネット200等の情報通信網を介して外国語学習装置100にエントリーし、学習がスタートすると(ステップS100)、学習者は、年齢、性別、母語等の学習者の属性データを端末300.i(i:自然数、1≦i≦N)から情報通信網200を介して、外国語学習装置100に対して送信する(ステップS102)。
【0047】
続いて、外国語学習装置100は、学習者に対して選択可能な学習コースを提示し、学習者は、いずれのコースの選択を行なうかを外国語学習装置100に対して送信する(ステップS104)。
【0048】
ここで、以下のようにして行なわれる学習のコンテンツの内容は、コース、ステップ、レベル、話者、トライアルという階層的な構造を有している。
【0049】
ここで、ステップS104において学習者が選択する「コース」とは、学習者が、たとえば子音の訓練のうち、「RとLの訓練」、「BとVの訓練」、「SとTHの訓練」等のいずれのリスニング学習を行なうかといった聞き取り対象となる子音で分類される。さらに、子音だけではなく、聞き取り対象となる母音ごとにもコースを設けることができる。あるいは、発話の訓練の対象となる子音や母音ごとにコースを設けてもよい。
【0050】
続いて、学習者は、予め外国語学習装置100の側で準備されていた実力テストを受ける(ステップS106)。これにより、学習者のレベル判定がなされ、この判定レベルに応じて、後に説明するように、学習者の選択したコース中において、いずれのレベルの「対立ペア」等が学習対象として提示されるかが選択される。
【0051】
続いて、学習者は自分の選択したコース内のいずれのステップから学習を始めるかの選択を行なう(ステップS108)。
【0052】
複数のステップは、段階的にその平均的な難易度が上昇するように構成されているものとする。さらに、各ステップも難易度によってさらにレベルで分割されている。コースの学習開始時に行なった実力テストに従って、その成績で学習者に適正なレベルに移行して、学習が開始される。したがって、外国語学習装置100においては、学習者が選択したステップと実力テストの結果に応じて、学習シーケンスの作成が行なわれる(ステップS110)。
【0053】
このようなシーケンス作成に従って、各ステップごとに学習者のたとえば、聞き取り学習が行なわれ(ステップS112)、シーケンス生成制御部40は、各ステップが終了すると次のステップへの以降を行うかを判断する(ステップS114)。このステップS114において、最上位のステップの学習が終了した段階で、当該コースの学習が終了する。
【0054】
続いて、学習者は、他のコースにトライするか否かの判断を外国語学習装置100に対して送信し(ステップS116)、コース選択を行なった場合は、改めてステップS104に処理が復帰し、一方、学習を終了するする場合には、以上の処理で学習シーケンスが終了する(ステップS120)。
【0055】
図5は、図4に示したステップ学習の内容を説明するためのフローチャートである。
【0056】
あるステップの学習が開始されると(ステップS200)、実力テストの結果に基づいて、図4の学習シーケンス生成ステップ(ステップS110)により生成されたシーケンスに基づいて、学習者のレベルに従って話者が選択され(ステップS202)、さらに、学習者に学習対象となる刺激音の提示(トライアル)が順次行われる。より具体的には、学習者の端末300.iのスピーカ(図示せず)からの発声と、発声の対象となる対立ペアの文字データのディスプレイ(図示せず)への表示が順次行なわれる。
【0057】
各ステップの学習は、数個のブロック、たとえば、図5では3個のブロックで構成されている。
【0058】
まず、選択コース内で学習者のレベルに対応して選択された複数の対立ペアの各々のうち、ステップS202で選択された話者1によるいずれか単語の発音が、学習者に対して提示される(ステップ204)。学習者の側では、聞き取り結果に応じて、ディスプレイ上に表示された文字データのうち、選択した結果を外国語学習装置100に対して返信する。
【0059】
このような各話者ごとの対立ペアの提示が、以後、複数ブロックにわたって行なわれる(ステップS206、S208)。
【0060】
ここで、各ブロック内では、1人の話者の発音する刺激音が使用される。さらに、各ブロックは、上述した「トライアル」という学習の最小単位が複数個集まって構成されている。各トライアルでは、上述したとおり、学習者により選択されたコースの刺激音に対応してシーケンス制御部40により選択された対立ペアについて、ある話者の発話を1つ再生し、それに対して画面上に表示されている選択肢を示すボタンを学習者がマウスでクリックして選択するものとする。
【0061】
なお、各ブロックにおいて、提示していく対立ペアの順序は、ランダムに変更するものとしてもよい。
【0062】
複数の話者に対応したブロックの学習が修了すると、当該レベルについて終了したか否かの判定が行なわる(ステップS210)。ステップS210において当該レベルが修了していないと判断された場合は、現在のレベルよりもレベルダウンした学習に移行して(ステップS212)、処理は再びステップS202に復帰する。
【0063】
一方、当該レベルが修了していると判断された場合は、続いて、修了したレベルが当該ステップ内の最高レベルであるか否かの判定が行なわれる(ステップS212)。修了したレベルが最高レベルではないと判定された場合は、現状のレベルよりもレベルアップした上で(ステップS216)、処理は再びステップS202に復帰する。
【0064】
修了したレベルが最高レベルである場合は、当該ステップの処理が終了する(ステップS220)。
【0065】
このようにして、各ステップの各レベルの学習時にも、その成績に応じて学習対象のレベルのアップダウンが行われる。レベルの数は、ステップによって異ならせることが可能であり、たとえば、10〜20レベル等に分割することができる。
【0066】
図6は、図4に示したシーケンス作成のステップ(ステップS112)において、シーケンス生成制御部40が学習シーケンスを生成するための前提となる処理をリアルタイムに行う流れを説明するためのフローチャートである。
【0067】
すなわち、シーケンス生成制御部40は、以下に説明する手順にしたがって、全刺激音に対して難易度の計算を順次リアルタイムに更新している。
【0068】
シーケンス生成制御部40は、学習者に対してトライアルの提示とそれに対する学習者からの解答が返信されたかをモニターしている(ステップS300)。
【0069】
学習者への提示と解答の返信があった場合、各話者の発話データや対立ペアに対応する、「累積正答数」、「累積提示回数」が更新される(ステップS302)。
【0070】
続いて、図4のステップS108において説明した学習者によるステップ選択が行われているか否かの判定が行われる(ステップS304)。ステップ選択が行われていなければ、処理はステップS300に復帰する。
【0071】
一方、ステップ選択が行われていれば、「提示平均レベル」の更新を行う(ステップS306)、すなわち、「提示平均レベル」はある学習者に対して学習シーケンスを生成する際に更新される。
【0072】
続いて、難易度の更新が行われる(ステップS308)。この難易度の計算は、上述したとおり、各話者の発話データや対立ペアごとに、(累積正答回数)×(提示平均レベル)/(累積提示回数)で計算することが可能である。
【0073】
さらに、更新された対立ペアの難易度に基づいて、全刺激音に対して難易度(対立ペアの難易度の平均)を計算する。
【0074】
以上の処理が終了すると、処理は再び、ステップS300に復帰する。
図7は、図4に示したシーケンス作成のステップ(ステップS112)において、シーケンス生成制御部40が行う処理を説明するためのフローチャートである。
【0075】
シーケンス生成制御部40は、学習シーケンスの作成処理が開始されると(ステップS400)、まず、学習者のレベルが選択されたステップのレベルの難易度に対応しているかの判定が行われ(ステップS402)、レベル差が大きい場合は、学習者に対して他のステップの選択が指示される(ステップS404)。
【0076】
ステップの選択が妥当と判断されると(ステップS402)、シーケンス生成制御部40は、学習者の実力テストの結果に基づいて、刺激属性データベース10内の探索を行う(ステップS406)。
【0077】
シーケンス生成制御部40は、対立ペアごとに計算されている難易度と、学習者の属性と、当該学習者に対して現在において指定されているレベルに応じて、学習者に提示されるべき対立ペアを選択する(ステップS408)。このとき、シーケンス生成制御部40は、選択されたコース内の複数のステップが、段階的にその平均的な難易度が上昇するように、各ステップに対して提示される対立ペアを選択する。なお、各ステップで、平均的な難易度は、段階的に向上させるものの、あるステップの高い側の難易度とその上のステップの低い側の難易とで、難易度に重なりが生じても良いものとする。
【0078】
以上で、学習シーケンス作成が終了する(ステップS410)。
なお、図7のステップS408において、いずれの対立ペアを選択するかの処理を行なう際に、以下のような内容に基づいて、選択処理を行うことも可能である。
【0079】
まず、第1の手続きとして、各対立ペアごとの累積提示回数をチェックし、学習シーケンス内の全トライアル数に対して一定の割合(たとえば、10%)のトライアル数については、提示回数の少ない対立ペアを優先的にシーケンスに挿入する。
【0080】
すなわち、前回までで提示回数が少ない対立ペアから今回の学習者に対してはより高い確率で提示されるようにする。
【0081】
ただし、このような挿入を行なう際には、累積提示回数の少ない方から一定数の挿入しようとする対立ペアを難易度に従って予めソートしておき、各難易度に応じて挿入が行なわれるようにする。
【0082】
次に、第2の手続きとして、今回作成するべき学習シーケンスに上述の第1の手続きで未挿入の対立ペアについて、難易度にしたがって対立ペアを並べ替える。そして、レベル数で分割(たとえば、前部で対立ペアが100ペアあり、レベル数が10個であった場合、10ペアずつに分割)した後に、各分割単位内においても累積回数の少ないペアから順番に学習シーケンス作成のための各レベルに割当てる。
【0083】
すなわち、たとえば、第1の手続きで累積提示回数の少ない対立ペアを優先的に割当てた後のシーケンスの空きが50ペア分であった場合、レベル分割した各グループごとに累積回数の少ないペアからさらに5ペアずつ割当てていくこととする。
【0084】
さらに、図5に示したステップS202において、選択されている対立ペアに対して、いずれの話者の発話を選択するかの処理を行なう際にも、上述の対立ペアの選択と同様に、累積提示回数の少ない話者の発話から優先的に選択処理を行うことも可能である。
【0085】
以上のような構成とすることで、情報伝達網を介して多数の学習者が学習した学習結果のデータに応じて、学習者のレベルに対して提示されるべき学習データが、最適な学習効果を有するように選択されることになる。
【0086】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0087】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明に係る外国語学習装置では、情報伝達網を介して多数の学習者が学習した学習結果のデータに応じて、学習データの難易度が学習者の属性と刺激音の属性と関連付けて更新される。したがって、学習者の属性および刺激音の属性の双方を考慮して、学習者のレベルに対して提示されるべき学習データが、最適な学習効果を有するように選択され、当該学習者にとってより効果的な外国語の学習を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る外国語学習装置100の構成を説明するための概略ブロック図である。
【図2】 刺激属性データベース10および個人情報データベース20に格納されるリレーショナルなデータの関係の一例を示す概念図である。
【図3】 各対立ペアに対して関連付けられる難易度をさらに詳しく説明するための概念図である。
【図4】 外国語学習装置100によって行なわれる学習の流れを説明するためのフローチャートである。
【図5】 図4に示したステップ学習の内容を説明するためのフローチャートである。
【図6】 シーケンス生成制御部40が学習シーケンスを生成するための前提となる処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】 シーケンス作成のステップにおいて、シーケンス生成制御部40が行う処理を説明するためのフローチャートである。
【図8】 学習者の属性と刺激音の関係を示す概念図である。
【図9】 刺激音の属性と学習者との関係を示す概念図である。
【符号の説明】
10 刺激属性データベース、12 単語データベース、14 発話データベース、16 話者データベース、18 単語グループデータベース、20 個人情報データベース、22 母語データベース、24 年齢データベース、26 性別データベース、28 習熟度データベース、30 学習シーケンスデータベース、40 シーケンス生成制御部、50 インターフェイス部、100 外国語学習装置、200 インターネット、300.1〜300.N 端末。

Claims (4)

  1. 外国語学習装置であって、
    情報通信網を介して複数の学習者端末との間で情報の授受を行うことが可能なインタフェース部と、
    前記外国語学習装置が使用するデータを格納するための記憶装置とを備え、
    前記記憶装置は、
    前記インタフェース部を介して、前記複数の学習者ごとに返信される学習者の属性データを格納するための第1のデータ格納手段と、
    複数の学習対象刺激音のそれぞれに対応して予め定められる複数の単語グループを格納するための第2のデータ格納手段とを含み各前記単語グループは、前記学習対象刺激音を各々が有する複数の単語を含み前記第2のデータ格納手段は、各前記単語グループについての発話データおよび前記学習者の属性を示す属性データに依存する前記単語グループの学習難易度と各前記単語グループを関連づけて格納するとともに、前記単語グループを発話した話者ごとに前記学習難易度と関連づけて格納し、
    前記複数の単語グループを前記学習難易度に応じて予め定められた所定数の難易度レベルに分類するとともに、前記学習者に対して前記情報通信網を介して、前記単語グループのうちのいずれかの単語グループの前記発話データと前記単語グループを特定するためのデータとを送信し、前記学習者からの選択結果を示す返信データを受け取って、前記返信データの正答率に基づいて、前記学習難易度を更新するための演算装置を有する学習シーケンス制御部とを備え、
    前記第2のデータ格納手段は、前記単語グループの累積提示回数と累積正答回数とを格納し、
    前記演算装置は、
    前記学習者の属性および前記話者について、前記学習難易度を、前記累積提示回数に対する前記累積正答回数の比に応じて更新し、
    新たにエントリーした学習者に対するテストにより特定される前記新たな学習者のレベルに応じて、前記更新された学習難易度に基づいて前記複数の単語グループから学習対象となる単語グループを選択して、前記新たな学習者端末に対して前記選択された単語グループの発話データと前単語グループを特定するためのデータとを送信する、外国語学習装置。
  2. 前記学習対象刺激音は、子音であって、
    前記複数の単語グループの少なくとも一部は、
    前記子音の発音のみが相互に異なる単語対を含む、請求項1記載の外国語学習装置。
  3. 記前記第2のデータ格納手段は、前記学習者の属性ごとに、前記単語グループの前記累積提示回数と前記累積正答回数と、さらに、前記難易度レベルの平均値とを格納し、
    前記演算装置は、前記学習難易度を
    (累積正答数)×(難易度レベルの平均値)/(累積提示回数)
    により算出して更新する、請求項記載の外国語学習装置。
  4. 前記学習者の属性は、前記学習者の性別、前記学習者の年齢および前記学習者の母語のすくなくとも1つを含む、請求項1〜のいずれかに記載の外国語学習装置。
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