JP3850694B2 - 磁気ヘッド位置検出機能付きディスク特性評価装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハードディスク装置の基幹部品である磁気ディスク、磁気ヘッドの電磁変換特性を測定するディスク特性評価装置に関し、より詳しくは磁気ディスク上の所定のトラック位置に磁気ヘッドを位置決めし、記録再生特性を測定する試験装置としてのディスク特性評価装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のハードディスク装置の特性向上につれて、その基幹部品である磁気ディスク、磁気ヘッドの電磁変換特性を測定する評価装置の性能向上を図る必要がある。
【0003】
特に、磁気ディスクのトラック密度の増大につれて、評価装置の磁気ヘッドのコア幅は狭くなる傾向にあり、正確な測定を行なうためには評価装置自体のトラック位置決め精度の向上が不可欠である。
【0004】
そこで、従来はパルスモータ等で駆動される粗動ステージ上にピエゾ素子を用いた微動ステージを組合わせることにより、磁気ヘッドの位置決め精度の向上が図られている。
【0005】
さらには、熱ドリフトによるオフトラックを補正するため、ハードディスク装置で公知となっているサーボバースト信号による閉ループフィードバックシステムを付加した試験装置も提案されている。
【0006】
例えば、この種のディスク特性評価装置の従来例として、図10に示されるヘッド・ディスクテスターが提案されている(特開2000−322850)。図10において、43は基盤(ベース)であり、水平な(X軸)レール36および38に沿って矢印Aの方向にガイドされる往復台30(粗動ステージ)を支える。
【0007】
この往復台30は、内部リング33を支え、往復台30の水平面の座標系のXおよびY軸の交点の周りに中心を持つ外部リング35を支える。
【0008】
内部リング33は、テストされる磁気ヘッド34を持った磁気ヘッド支持32を保持する(または、移動させる)。
【0009】
また、往復台30は、ステップモータ39により(水平面のレール41B及び41C上をX方向にスライド可能な)中間ブロック41Aに結合した親ネジ41を介して矢印で示される方向に直線上に駆動される。
【0010】
往復台30は、次にピエゾアクチュエータ37によって、ブロック41Aに対してX方向に駆動される。もう一つのステップモータ(図示せず)は、外部リング35および往復台30に対して(Z軸のまわりに)、内部リング33、磁気ヘッド支持32、および磁気ヘッド34を回転させるために使用される。
【0011】
直線エンコーダー40および42は往復台30の両側に配置される。各エンコーダーは、静止部分すなわち基盤43に付けられた部分40aおよび42aと、可動部分すなわち外部リング35に付けられた部分40bおよび42bとの2つの部分から成る。
【0012】
磁気ヘッド34の現在の位置は、エンコーダ40および42の読み取り値の相加平均により得られる。
【0013】
その他に、基盤43に取り付けられているものは、磁気ディスク31を垂直軸の周りで回転させられるスピンドル44である。スピンドル44の光学エンコーダー(図示せず)は、磁気ディスク31の角度の配置に対応した一連のセクターパルスを発生する。
【0014】
図11は従来例における位置制御器49の構成を示したものである。図11の詳しい説明は省略するが、熱ドリフトを補正するために前もって磁気ディスクに記録されるサーボバースト情報の検知出力(サーボ分析器45からの出力)と、往復台30の位置を示す直線エンコーダー40,42からの信号が演算され、その結果とをピエゾアクチュエータ37に入力し、該ピエゾアクチュエータ37により往復台30を駆動する構成となっている。
【0015】
すなわち、本従来例においては、磁気ディスクに記録されるサーボバースト情報(第2の情報源)と、往復台30の位置を示す直線エンコーダー40,42からの信号である磁気ディスクに対する磁気ヘッドの位置(第1の情報源)の2つの情報源信号がフィードバックループとして使用される。
【0016】
第1の情報源である直線エンコーダーからの信号は、熱ドリフトがない状態での磁気ディスクに対する磁気ヘッドの位置を反映している。
【0017】
また、第1情報源の動作範囲は比較的広く、磁気ディスク全体をカバーしている。この第1の情報源は、磁気ヘッドを一つの記憶場所から他の場所へ移動させるために使用される。
【0018】
さらに、第2の情報源であるテストしているディスクのサーボ信号(サーボバースト情報)は全ての温度状態において、磁気ディスクに対する磁気ヘッドの位置を反映する。
【0019】
第2情報源の動作範囲は比較的狭く、磁気ディスクのトラック近辺をカバーし、この情報源は磁気ヘッドを指示(または、命令)された位置に保持するために使用されていた。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、磁気ディスクのトラック密度が増大するにつれて、従来例が目的としている熱ドリフトによるオフトラックを補正するだけでは不十分である。
【0021】
例えば、気流、振動等あらゆる外乱要因の影響を除去するため、個々のセクターごとに磁気ヘッドを記録トラックに追随させ、ディスクとヘッドの相対的位置決め誤差をさらに低減することが望まれている。
【0022】
ところが、上記記載の従来例においては、磁気ヘッド34の搭載される往復台30は、内部リング33および外部リング35を支えており、これがピエゾアクチュエータ37により駆動されるわけであるから、ピエゾアクチュエータ37の負荷質量は非常に大きくなり、その結果としてピエゾアクチュエータ37(磁気ヘッド)を高速度に、かつ精度良く駆動することは難しいので、その結果磁気ヘッドの位置を精度よく制御することが難しいという課題があった。
【0023】
また、この例におけるピエゾアクチュエータ37自身の質量も比較的大きいため、これも応答性を損なう一因となっていた。
【0024】
さらに、磁気ヘッド34の位置決めに関しても、往復台30の位置を検出する直線エンコーダー40,42は磁気ヘッド34の位置とは距離的に離れており、機構系の発生する振動や外乱振動の影響によって直線エンコーダー40,42による往復台30の位置決め精度が、必ずしも磁気ヘッド34の位置決め精度とはならないという課題があった。
【0025】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、その目的は磁気ヘッドのコア部に極力近い位置を直接センスし、その位置情報をフィードバック制御することで、位置決め精度を向上する磁気ディスク特性評価装置を得ることを目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数の同心円状のトラックを備えた磁気ディスクを載置して回転させるスピンドル機構をベースに設置し、前記磁気ディスクの周囲に、磁気ヘッドを有する磁気ヘッドアセンブリーを先端に備えて、前記磁気ディスクの所定のトラック位置に前記磁気ヘッドアセンブリーを位置決めするヘッドクランプを着脱自在にヘッドロード機構に設けた粗動ステージと、
目標位置と前記粗動ステージの現在位置との誤差が小さくなるよう第1の制御信号を前記粗動ステージに送出する第1の制御系部と、
前記磁気ヘッドアセンブリーの検出信号の内で前記トラックに記録されているサーボバースト信号を入力し、このサーボバースト信号を演算処理してトラックセンタからの位置誤差信号を出力するポジションエラー検出器を有してトラッキングを行わせるための第2の制御系部とを有するディスク特性評価装置において、
ピエゾ素子を保持するピエゾステージを備え、前記ヘッドクランプに取り付けられて前記磁気ヘッドを動かすマイクロアクチェータと、
前記磁気ヘッドアセンブリーが取り付けられた前記ピエゾステージの取り付け面の裏面側に設けられ、一定間隔の遮光縞を被膜に蒸着して形成した反射型スケールと、
前記反射型スケールの遮光縞に送受面が対向し、前記反射型スケールからの反射光を受光可能なように前記粗動ステージに固着されたレーザヘッドと、
前記レーザヘッドが受光した前記反射型スケールからの反射光信号から前記磁気ヘッドアセンブリーの前記磁気ディスクと磁気ヘッドアセンブリとの相対位置を検出する位置検出器と、
目標オフセット指令値と前記相対位置又は前記位置誤差信号との加算値をPID制御を行って前記ヘッドアセンブリーを制御する制御部と、
切り換えられることにより、前記第2の制御系部の前記ポジションエラー検出器の出力端又は前記位置検出器の出力端を選択して前記位置誤差信号又は前記相対位置の信号を出力するマイクロスイッチと、
オフセット指令値と前記マイクロスイッチからの出力値との加算値を前記制御部に出力する加算器と
を備え、
前記位置検出器が求めた前記相対位置を計数し、該計数値が所定のトラックに到達したと判断したときに、前記マイクロスイッチに前記ポジションエラー検出器の出力端を選択させる切り換えを行い前記第2の制御系部によるトラック追従モードを実施することを要旨とする。
【0027】
また、前記位置検出器が求めた前記相対位置を計数し、該計数値が所定のトラックに到達したと判断したときに、前記第2の制御系部によるトラック追従モードを実施させる手段とを備えたことを要旨とする。
【0030】
【発明の実施の形態】
本実施の形態は、同心円状の複数のトラックを備えた磁気ディスクを回転させながら磁気ディスクあるいは磁気ヘッドの電磁変換特性の評価を行なうべく、所定のトラック位置に磁気ヘッドを位置決めするヘッドクランプをヘッドロード機構に着脱自在に設けると共に、前記ヘッドロード機構をベース上に設けられた粗動ステージ上に搭載して成るディスク特性評価装置において、
ピエゾ素子を駆動源とするアクチュエータおよび該アクチュエータを保持すると同時に該アクチュエータの変位を拡大する平行板ばね構造をなすピエゾステージが該ヘッドクランプに着脱可能なようにとりつけられる。
【0031】
そして、ピエゾステージのディスク面と対向する面に磁気ヘッドアセンブリー(HGA;Head Gimbal Assembly)を搭載し該ピエゾステージのディスクと対向しない反対面側に薄膜から成る反射型スケールが貼付される構成のマイクロアクチュエータを装備し、該反射型スケールと対向する位置にレーザ光を照射し、該反射型スケールによる反射光を検知するレーザヘッドが前記粗動ステージ上に固定配置される構成とした磁気ヘッド検出機能付き磁気ディスク評価装置である。また、該磁気ヘッド位置検出機能付きディスク特性評価装置はヘッドの位置決め方式として、精密位置決めモードならびにトラック追随モードの二つのモードを有し、前記ピエゾ素子への駆動電圧は前記精密位置決めモードにおいては、前記反射型スケールからの反射光による情報によって決定され、前記トラック追随モードにおいてはデータ情報に先立って磁気ディスクに記録されるサーボバースト信号を再生ヘッドで読取り、その検出振幅をもとに演算されるポジションエラー信号からの位置情報によって、それぞれ決定されるようにする。
【0032】
<実施の形態1>
以下、この発明の磁気ヘッド位置検出機能付きディスク特性評価装置の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0033】
図1は本実施の形態1の磁気ヘッド検出機能付きディスク特性評価装置の概略構成図である。図2は評価装置本体の斜視図である。
【0034】
本実施の形態1のディスク特性評価装置は評価装置本体と電気回路とコンピュータと測定器とからなる。
【0035】
評価装置本体は、ステージ13にX−Y方向に移動可能にされた粗動ステージ14(14aはX軸、14bはY軸)を設けている。粗動ステージ14は磁気ディスク12を中心にして左右対称に設けられている。この磁気ディスク12はスピンドル9によって回転させられる。
【0036】
また、粗動ステージ14上にはヘッド機構部15が連結され、ヘッド機構部15(ヘッドロード機構ともいう)にはレーザヘッド部17とヘッドクランプ部18が取り付けられている。また、評価装置本体には、粗動ステージ14の移動位置を検出する粗動ステージガラススケールと、粗動ステージ14を移動させる粗動モータ19を備えている。
【0037】
さらに、ヘッドクランプ部18の近傍には磁気ディスク12に対して情報の記録・再生を行なう磁気ヘッド1に近接して配置されて磁気ヘッド1からの信号を増幅し、あるいは該磁気ヘッド1へ記録電流を供給するためのR/W用AMP(図示せず)を備えている。
【0038】
このヘッドクランプ部18は、ヘッド取付部20の支持部材であるピエゾステージ21に位置検出用反射型スケール22を取り付けている(図4参照)。
【0039】
この位置検出用反射型スケール22を付けたヘッドクランプ部18については詳細に後述する。
【0040】
また、電気回路部は、図1に示すように、評価装置本体の電気系とのインターフェース部23と、リードライトコントローラ24と、サーボコントローラ26等からなる。
【0041】
前述のサーボコントローラ26は少なくともヘッド部用PID制御部26aと、スイッチ26dとを備えている。
【0042】
すなわち、ヘッドクランプ部18のヘッド取付部20のヘッド位置検出用の反射型スケール22からの反射光に基づくヘッド位置検出信号又はポジションエラー検出信号のいずれか一方をスイッチ26dによって選択し、選択したいずれかの位置検出信号と目標オフセット信号との誤差でヘッドクランプ部18を制御する。
【0043】
また、ヘッド部PID制御部26aは、コンピュータ28からの目標位置と粗動ステージ14側で検出した現在位置とによって粗動ステージ制御信号を生成して粗動ステージ14のモータに送出する。
【0044】
一方、ピエゾステージ21の制御系は、精密位置決めモードならびにトラック追随モードの二つのモードを有し、精密位置決めモードにおいては、反射型スケール22からの反射光によって磁気ヘッドアセンブリの位置が決定する。
【0045】
また、トラック追随モードにおいてはデータ情報に先立って磁気ディスク12に記録されるサーボバースト信号を再生ヘッドで読取り、その検出振幅をもとに演算されるポジションエラー信号からの位置情報によって決定され、このいずれかのモードをスイッチ26dによって選択できるようにしている。
【0046】
次に、本装置の模式的なハード構成を図3を用いて説明する。図3に示すように、ヘッド機構部15には、磁気ディスク12に対して情報の記録・再生を行なう磁気ヘッド1と、この磁気ヘッド1からの信号を増幅し、あるいは該磁気ヘッド1へ記録電流を供給するためのR/W用AMP3と、 ヘッドクランプ部18に固着されて磁気ヘッド1を動かすマイクロアクチェータ5と、マイクロアクチェータ5の先端に固着されたピエゾステージ21に取り付けられたヘッド位置検出用の反射型スケール22とを備えている。
【0047】
また、ヘッド位置検出用の反射型スケール22の上方にはレーザ光16を照射して反射光を反射型スケール22に検出させるためのレーザヘッド部17と、レーザヘッド部17からの出力と反射型スケール22からのグレーティング信号とを入力して、補間、分割することで高分割能の位置パルスDET(ヘッド位置検出信号)を出力するディテクタ27とを備えている。
【0048】
サーボコントローラ部26は、マイクロアクチュエータ5の位置決めサーボを担う部分であり、スピンドルモータ9から出力されるINDEX、SECTOR信号をもとに、サーボ信号の記録時あるいは再生時に必要なゲート信号を発生するタイミング生成部26aと、サーボ信号を記録するためのパターン生成部26bと、再生されたサーボ情報の振幅レベルを検出・演算し、ポジションエラー信号を出力するPID制御部26cと、コンピュータ28との通信を制御するコントロール部26dとから構成される。
【0049】
測定器部29は、記録データパターンを発生するデータジェネレータ、再生信号の各種パラメトリック測定を行なうディジタル・オシロスコープおよびオーバライト、S/N比等のスペクトラム解析をおこなうスペクトラムアナライザから成る。
【0050】
図4は、本実施の形態のヘッドクランプ部の斜視図である。図4(a)は、ピエゾ素子71および該ピエゾ素子71を保持し、同時にピエゾ素子71単体の変位を拡大する平行板ばね構造をなすピエゾステージ73から構成されるマイクロアクチュエータ5を示す。
【0051】
図4(b),(c)は、磁気ヘッド1をヘッドロード機構に取り付けるためのヘッドクランプ機構の一例を示したものである。図4(b)において、ヘッドクランプ部18の前方端にはピエゾステージ73の基部79がボルト81により取り付けられおり、該ピエゾステージ73の前方端側にヘッド取り付け部20が設けられている。
【0052】
このヘッド取り付け部20には、サスペンション85とサスペンション85の先端部に設けられた磁気ヘッドコア89とからなる磁気ヘッド1が着脱可能に取り付けられている。具体的には、同図(b)に示すように磁気ヘッド1のサスペンション85がヘッド取り付け部20にネジ87によって板ばね(図示省略)を介して取り付けられている。これにより、磁気ヘッド1による情報の記録・再生の機能が低下した場合、反射型スケール22が装着されたマイクロアクチュエータ5を交換することなく磁気ヘッド1のみを取り替えるだけですむので、安価となる。
【0053】
図4(c)は、図4(b)を上下逆さにして見た斜視図であり、ステージ21のHGA取り付け面とは反対側の面に反射型スケール22が配置される構成となっている。
【0054】
すなわち、磁気ヘッド1が磁気ディスク12に対して平行移動するとヘッドクランプ部18の上方に、反射型スケール22の遮光縞に対して送受面が対向するように粗動ステージ14に固着されたレーザヘッド部17からのレーザ光が、反射型スケール22に照射され、この反射型スケール22からの反射光がレーザヘッド部17に受光される。
【0055】
また、反射型スケール22は、1μm程度のピッチで縞状の金属薄膜が基体(ポリカーボネイト)上に形成されたものである。
【0056】
上記のように構成された磁気ヘッド位置検出機能付きディスク特性評価装置について図5のサーボ制御のブロック図を用いて以下に動作を説明する。
【0057】
レーザヘッド部17から発射された半導体レーザ光は反射型スケール22に照射されて、このスケールからの反射光がレーザヘッド部17に受光される。
【0058】
この反射型スケール22からの反射光に応じた信号が位置検出器(ディテクタ)27により、検出されて高分解能の位置情報(ヘッド取付部20と磁気ディスクとの相対位置)として出力される。
【0059】
コンピュータ28は、ヘッドを所定のトラック位置に位置させるための位置指令Xを送出する。
【0060】
本発明における磁気ヘッド1の位置決めは、粗動ステージ14とマイクロアクチュエータ5とによって行なわれる。粗動ステージ14は、磁気ディスクの最内周トラック位置から最外周トラック位置までの比較的広い範囲をカバーするのに対し、マイクロアクチュエータ5は記録トラック位置を中心として、±数トラック分のオフトラック位置までの比較的狭い領域をカバーする。
【0061】
本位置決め制御系は全体で3つのフィードバックループ系から構成され、2つのモードすなわち精密位置決めモードおよびトラック追随モードを有する。
【0062】
図5において、第1のループは、粗動ステージ14の位置決めを行なうフィードバックループである。第2および第3のループはマイクロアクチュエータ5の位置決めに関わるフィードバックループである。該第2および第3のループはスイッチ26dによって切換えられる。
【0063】
精密位置決めモードにおいては、磁気ヘッド1の位置決めは第1および第2のフィードバックループを用い、粗動ステージ14とマイクロアクチュエータ5によって行なわれる。
【0064】
一方、トラック追随モードにおいては、第1および第3のフィードバックループが用いられるが、主に再生ヘッド1からのサーボバースト情報の検出振幅をもとに第3のフィードバックループによって行なわれる。
【0065】
以下、それぞれのモードについて詳しく説明を加える。
【0066】
精密位置決めモードにおいては、コンピュータ28の位置決め処理部28aが粗動ステージ14に対する位置指令Xを出力する。粗動ステージ14には、その現在位置Xpを検出するためのガラススケール53が設けられている。
【0067】
このガラススケール53は、粗動ステージ14に配置される可動部と、基盤(ベース)上に配置される固定部とからなり、粗動ステージ14の現在の位置Xpを出力する。
【0068】
次に、第1の加算器55は前記位置指令Xと粗動ステージの現在位置Xpを比較し、その差が小さくなるようにするための誤差信号をPID制御部26bに送出してPID制御された制御信号を粗動ステージ駆動モータ57に送出する。これによって粗動ステージ14は移動する。
【0069】
この第1の加算器55は位置指令Xと現在位置Xpの差が、所定の値(例えば、20nm)以内にはいると、粗動ステージ14の位置決めは完了と判断する。
【0070】
上述した粗動ステージ14の前述の位置決め動作中においては、スイッチ26dは接点1の方に接続されており、同時にコンピュータ28はマイクロアクチュエータ5に対するオフセット指令としてΔX=0を第2の加算器67に送出する。
【0071】
したがって、マイクロアクチュエータ5はその可動ストローク範囲の中央位置を保持するようにPID制御されている。
【0072】
そして、粗動ステージ14の位置決めが完了した時点で、磁気ヘッド1の位置決めが完了することになる。
【0073】
すなわち、実際の磁気ヘッド(ヘッド取付台20、ピェゾステージ21)の位置を反射型スケールからの情報によって検出して、その検出位置が位置指令に一致するように精密な位置制御がおこなれる。
【0074】
磁気ヘッドの位置決めが完了した後、例えばトラックプロファイルを高速に測定する目的に対しては、マイクロアクチュエータ5(ピエゾステージ)に対するオフセット指令ΔXの可変範囲を指定し、各々のΔXに対して再生出力のTAA(Track Average Amplitude)を測定する操作が行なわれる。
【0075】
一方、トラック追随モードにおいてはスイッチ26dは接点2に切換えられ、マイクロアクチュエータ5の駆動電圧は第3のフィードバックループによって再生ヘッド1からのサーボバースト信号振幅の検出結果をもとに決定される。
【0076】
図6に最も代表的なサーボバーストパターン信号の例を示す。各セクターには、記録再生特性を評価すべきデータ列に先立ってトラック方向にオフセットしたサーボバースト信号A,Bが記録される。図6(a)は磁気ディスクに記録されるバースト信号とデータ列の相対的な位置関係を示したものであり、横軸がディスク円周方向(時間軸と一致)、それと直交する方向がディスク半径方向(トラック方向)を示す。図6(b)は、オフトラック量ΔXに対して、各バーストの検出振幅Sa,Sbの変化を示したものである。
【0077】
また、図6(c)は、ポジションエラー信号として例えばSa−Sbを用いたときのオフトラック量ΔXに対する変化を示す。
【0078】
図6(a)の例では、記録トラック幅をTwとしたとき、それぞれ+Tw/2,−Tw/2だけオフトラックした位置にバースト情報が記録されている。
【0079】
磁気ヘッド1がオントラック位置にある場合には、バーストAとバーストBの再生振幅は同じ(sa=sb)となるが、オフトラックした場合にはその量に応じてバーストA,Bの検出振幅(sa≠sb)が増減する。
【0080】
図5におけるポジションエラー検出器59は、両バーストの検出振幅の差に比例した信号を出力し、例えば(sa−sb)/(sa+sb)に比例した位置誤差信号に変換し、第2の加算器67に出力する。
【0081】
オントラック位置でのトラック追随モードの場合には、オフセット指令ΔX=0であるから、ポジションエラー信号が零となるようにマイクロアクチュエータ5はPID制御されることになる。
【0082】
トラック追随モードにおいては、オントラック状態のみではなく、基準トラックからオフセットした状態でトラッキングさせることも可能であり、その場合には零でないオフセット指令ΔXが指定される。
【0083】
この場合には、ΔXに相当するポジションエラーとなるオフトラック位置で磁気ヘッドはPID制御されることになる。
【0084】
以上の説明から分かるように、位置決めモードにおける所望の磁気ヘッド1の絶対座標は、粗動ステージ14への位置指令Xとマイクロアクチュエータへのオフセット命令ΔXとの和で与えられ、トラック追随モードにおいては、磁気ヘッド1はサーボバースト信号の記録されるトラック位置を基準としたオフセット位置ΔXに常に追随制御されることになる。
【0085】
なお、サーボコントローラ26にアップダウンカウンタを設け、このアップダウンカウンタが反射型スケール22からのヘッド端位置検出信号を計数し、この計数値をもとにマイクロアクチュエータ5を制御してトラック間シークを可能ならしめ、かつ反射型スケール22に基づくヘッド端位置検出信号が所定のトラックに到達したと判断した時点で、精密位置決めモードからトラック追随モードに移行するシーケンスが望ましい。
【0086】
そして、サーボバースト信号検出振幅をもとに演算される位置情報によって、所定のトラック中心に対してオントラック制御もしくはオフトラック制御を行なうことができる。
【0087】
<実施の形態2>
ところで、図6(a)に示すバーストパターンの例では、理想的な場合においても、ポジションエラー信号の線形制御範囲は高々±Tw/2である。磁気ヘッド1のR/Wオフセット量(磁気ヘッドがあるスキュー角を持っている場合、記録ヘッドと再生ヘッドのコア中心のトラック位置が若干異なり、そのオフセット量のこと)を考慮すると±Tw/2の線形制御範囲では不足な場合がある。
【0088】
線形制御範囲を±(3/4)Twに拡大し、かつ±3トラックまでのオフトラックを検出できるサーボバーストパターンの例を図7に示す。図7において、A〜Eのバーストパターンが配置される。
【0089】
バーストBの位置はデータと同じオントラック位置ΔX=0に配置される。残りのバーストA,C,DおよびEはそれぞれ同一タイミングで異なるトラック位置に2個のパターンが配置される。各バーストの配置されるトラック位置は図8のようになる。
【0090】
いま、Vthをバーストの有無を判断するためのしきい値、Vtを1トラックの移動距離に相当する制御電圧レベル、Va,Vb,Vc,VdおよびVeをバーストパターンA〜Eのそれぞれの検出レベルとし、現在および1サンプル前の制御電圧をVpos(n),Vpos(n−1)とすると、トラッキング制御およびオフトラック検出のためのアルゴリズムは以下のように示される。
【0091】
if{ (Va>Ve)&&(Va>Vb)&&(Vb>Vth)&&(Ve>Vth)} Vpos(n)=Ve-Vb + 0.5*Vt ▲1▼
else if{(Vb>Va)&&(Vb>Vc)&&(Va>Vth)&&(Vc>Vth)} Vpos(n)=Va-Vc ▲2▼
else if{(Vc>Vb)&&(Vc>Vd)&&(Vb>Vth)&&(Vd>Vth)} Vpos(n)=Vb-Vd - 0.5*Vt ▲3▼
else if{(Va>Vth)||(Ve>Vth) } Vpos(n)=Vpos(n-1)- Vt ▲4▼
else if{(Vc>Vth)||(Vd>Vth) } Vpos(n)=Vpos(n-1)+ Vt ▲5▼
ここに、条件▲1▼、▲2▼および▲3▼は、再生ヘッドのトラック位置が線形制御範囲に存在する場合の制御式であり、▲4▼および▲5▼はその範囲をはずれている場合の制御を示す。
【0092】
以下、各条件について説明を行なう。簡単のため、記録トラック幅に等しいコア幅の再生ヘッドで情報の再生を行なう場合を例に説明するが、再生ヘッドのコア幅が記録トラック幅より小さい場合も、基本原理は同じである。再生ヘッドのトラック中心位置をXとし、ここではVthとして記録トラック幅の1/4を再生しているときの電圧を採用するものとする。
【0093】
式▲1▼において、Va>Veである領域はX<(3/4)Twであり、Va>Vbである領域はX>Tw/4である。
【0094】
したがって、Tw/4<X<(3/4)Twの領域では、Vb>VthおよびVe>Vthが満足され、領域の中心X=Tw/2に関してバーストE1およびBの検出振幅の差をとれば、これはX=Tw/2を中心に線形に変化し、これをオントラック位置に制御するためには、Tw/2に相当する電圧レベルを加算して
Vpos(n)=Ve-Vb + 0.5*Vt
とすればよい。
【0095】
式▲2▼においては、Vb>Vaである領域はX<Tw/4,Vb>Vcである領域はX>−Tw/4である。したがって、−Tw/4<X<Tw/4の領域では、バーストA1およびC2はVth以上の再生出力が期待でき、かつこの2つのバーストの振幅差が領域の中心X=0に関して線形に変化することから
Vpos(n)=Va - Vc
に設定すればよいことが分かる。
【0096】
同様に、式▲3▼においてはVc>Vbである領域はX<−Tw/4であり、Vc>Vdである領域はX>−(3/4)Twである。したがって、−(3/4)Tw<X<−Tw/4の領域において、バーストBおよびバーストD2はVth以上の再生出力を有し、かつこの2つのバーストの検出差は領域の中心X=−Tw/2に関して線形に変化することから、これをオントラック制御するには
Vpos(n)=Vb-Vd - 0.5*Vt
とすればよい。
【0097】
以上の、式▲1▼、▲2▼および▲3▼に関して、再生ヘッドのオフトラック量と制御電圧Vposの関係を示すと、図9のようになる。これより、±3/4トラック以内のオフトラック位置であれば、式▲1▼、▲2▼、▲3▼よりオフトラック量に比例した制御電圧が得られ、オントラック制御のみならずオフトラック位置においても磁気ヘッドを保持することが可能となる。
【0098】
一方、▲4▼、▲5▼式は線形制御範囲を越えたオフトラックに対しても、そのオフトラック方向を検出して線形制御範囲に移行させるステップである。▲4▼式は、正方向にオフトラックしている場合に対応する制御を示しており、X<3.75Twの範囲のオフトラックに対して、強制的に1トラック分だけ現在位置から減算する。同様に、▲5▼式は負方向のオフトラックを検出し、X>−3.75Twの範囲のオフトラックに対して1トラック分だけ現在位置を増大させる。
【0099】
以上述べたように、本実施例によれば、±3/4トラック以内であれば線形制御が可能であり、±3.75トラック内のオフトラック量を検出して線形制御領域に移行させることができる。
【0100】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、磁気ヘッドのコア部(磁気ヘッドアセンブリー)に極力近い位置に配置されるピエゾステージに縞模様の反射型スケールを取り付け、粗動ステージ部に配置されたレーザヘッドからの光を反射型スケールに入射し、この反射光をレーザヘッドで受光し、この反射光に基づいて磁気ヘッドアセンブリーのトラックに対する相対的な位置を検出することで、磁気ヘッド位置を精密に制御することができる。
【0101】
従来装置では不可能であった磁気ヘッド位置(ピエゾステージ位置)を直接センスすることを可能としたことで、従来より、格段に磁気ヘッドアセンブリーの位置決め精度を向上できるという効果が得られている。
【0102】
さらに、ピエゾステージの可動部質量はHGAを含めても高々2〜3gram程度と非常に軽いため、位置決めサーボ系の帯域を広くとることが可能であり、個々のセクターごとに磁気ヘッドを記録トラックに高速に追随させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態1の磁気ディスク評価装置の概略構成図である。
【図2】評価装置本体の斜視図である。
【図3】磁気ディスク評価装置のハード構成図である。
【図4】本実施の形態1に用いるヘッドクランプの斜視図である。
【図5】本実施の形態1のサーボ制御系のブロック図である。
【図6】本実施の形態1の位置決めに係わるパターンを説明する説明図である。
【図7】実施の形態2のバーストパターンの説明図である。
【図8】実施の形態2のバーストパターンの配置を説明する説明図である。
【図9】実施の形態2のオフトラック量と制御電圧の関係を説明する説明図である。
【図10】従来の磁気ディスク評価装置の概略構成図である。
【図11】従来の磁気ディスク評価装置のサーボブロック図である。
【符号の説明】
12 磁気ディスク
13 ステージ
14 粗動ステージ
15 ヘッド機構部
18 ヘッドクランプ
19 粗動ステージ駆動モータ
21 ピエゾステージ
22 反射型スケール
26 サーボコントローラ
26a PID制御部
Claims (1)
- 複数の同心円状のトラックを備えた磁気ディスクを載置して回転させるスピンドル機構をベースに設置し、前記磁気ディスクの周囲に、磁気ヘッドを有する磁気ヘッドアセンブリーを先端に備えて、前記磁気ディスクの所定のトラック位置に前記磁気ヘッドアセンブリーを位置決めするヘッドクランプを着脱自在にヘッドロード機構に設けた粗動ステージと、
目標位置と前記粗動ステージの現在位置との誤差が小さくなるよう第1の制御信号を前記粗動ステージに送出する第1の制御系部と、
前記磁気ヘッドアセンブリーの検出信号の内で前記トラックに記録されているサーボバースト信号を入力し、このサーボバースト信号を演算処理してトラックセンタからの位置誤差信号を出力するポジションエラー検出器を有してトラッキングを行わせるための第2の制御系部とを有するディスク特性評価装置において、
ピエゾ素子を保持するピエゾステージを備え、前記ヘッドクランプに取り付けられて前記磁気ヘッドを動かすマイクロアクチェータと、
前記磁気ヘッドアセンブリーが取り付けられた前記ピエゾステージの取り付け面の裏面側に設けられ、一定間隔の遮光縞を被膜に蒸着して形成した反射型スケールと、
前記反射型スケールの遮光縞に送受面が対向し、前記反射型スケールからの反射光を受光可能なように前記粗動ステージに固着されたレーザヘッドと、
前記レーザヘッドが受光した前記反射型スケールからの反射光信号から前記磁気ヘッドアセンブリーの前記磁気ディスクと磁気ヘッドアセンブリとの相対位置を検出する位置検出器と、
目標オフセット指令値と前記相対位置又は前記位置誤差信号との加算値をPID制御を行って前記ヘッドアセンブリーを制御する制御部と、
切り換えられることにより、前記第2の制御系部の前記ポジションエラー検出器の出力端又は前記位置検出器の出力端を選択して前記位置誤差信号又は前記相対位置の信号を出力するマイクロスイッチと、
オフセット指令値と前記マイクロスイッチからの出力値との加算値を前記制御部に出力する加算器と
を備え、
前記位置検出器が求めた前記相対位置を計数し、該計数値が所定のトラックに到達したと判断したときに、前記マイクロスイッチに前記ポジションエラー検出器の出力端を選択させる切り換えを行い前記第2の制御系部によるトラック追従モードを実施する
ことを特徴とする磁気ヘッド位置検出機能付きディスク特性評価装置。
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