JP3850544B2 - 車両用電動式駆動装置におけるモータ電流制御装置 - Google Patents

車両用電動式駆動装置におけるモータ電流制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、前輪と後輪との一方をエンジンで駆動する駆動輪、他方を従動輪とする車両に搭載する、従動輪を直流モータで駆動する車両用電動式駆動装置における直流モータの電流制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、直流モータは、モータ回転速度が目標回転速度に接近維持されるように、目標回転速度と実回転速度との偏差に基づくフィードバックによる速度制御を行うを一般としている。
【0003】
然し、車両用電動式駆動装置では、従動輪に所要の駆動力を付与することが必要である。そのため、所要の出力トルクが得られるように、直流モータに流すモータ電流値を制御することが必要になる。
【0004】
直流モータのモータ電流値は通電パルス幅を管理するPWM(Pulse Width Modulation)方式で制御できるが、車両用電動式駆動装置では、従動輪のスリップ等によりモータ回転速度が変動し易く、直流モータの回転時に発生する逆起電力が回転変動によって変動するため、モータ電流値を所要の出力トルクが得られるような値に維持することは困難である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上の点に鑑み、モータ回転速度が変動してもモータ電流値を所要の出力トルクが得られる値に応答性良く制御できるようにしたモータ電流制御装置を提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく、本発明は、前輪と後輪との一方をエンジンで駆動する駆動輪、他方を従動輪とする車両に搭載する、従動輪を直流モータで駆動する車両用電動式駆動装置における直流モータの電流制御装置であって、直流モータに流す電流値をPWM方式で制御するものにおいて、直流モータの要求出力トルクに応じた目標電流値の電流を直流モータに該モータを停止した状態で流すのに必要な目標PWM値を算出する手段と、モータ回転時に発生する逆起電力を補償するのに必要な回転補償PWM値を算出する手段と、目標PWM値と回転補償PWM値とを加算して指令PWM値を算出する手段と、指令PWM値に応じたパルス幅で直流モータに通電する手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
モータ回転速度の変動で逆起電力が変動しても、この逆起電力は回転補償PWM値分の通電パルス幅の変化で相殺され、モータ電流値は目標電流値に応答性良く制御される。かくて、従動輪を直流モータにより所要の駆動力で安定して駆動できる。
【0008】
尚、後記する実施形態において、目標PWM値算出手段に相当するのは図4のS1のステップであり、回転補償PWM値算出手段に相当するのは図4のS2のステップであり、指令PWM値算出手段に相当するのは図4のS3のステップであり、モータ通電手段に相当するのはモータドライバ11L,11R,11である。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は、エンジン1により変速機2を介して左右の前輪3L,3Rを駆動する前輪駆動車両を示しており、従動輪たる左右の後輪4L,4Rを電動式駆動装置5により駆動し得るようにしている。
【0010】
該電動式駆動装置5は、図2に示す如く、左右1対の直流モータ6L,6Rと、左右1対の差動装置7L,7Rとを備えている。各差動装置7L,7Rは、サンギア7aと、リングギア7bと、該両ギア7a,7bに噛合するプラネタリピニオン7cを担持するキャリア7dとを有する遊星歯車式差動装置で構成されている。そして、各差動装置7L,7Rのサンギア7aに各直流モータ6L,6Rを各減速ギア列8L,8Rを介して連結すると共に、各差動装置7L,7Rのキャリア7dを各後輪4L,4Rに連結している。また、両差動装置7L,7Rのリングギア7b,7b同士を連結して、リングギア7bの回転をブレーキ手段9で拘束し得るようにしている。
【0011】
ブレーキ手段9は、リングギア7bにスプライン係合させた可動ドグ9aと、電動式駆動装置5のケーシング5aに固定した固定ドグ9bとを有するドグクラッチで構成されており、可動ドグ9aをソレノイド9cにより進退させて固定ドグ9bに係脱させ、リングギア7bの拘束とその解除とを行わせる。
【0012】
各直流モータ6L,6Rは、コントローラ10により制御される各モータドライバ11L,11Rを介してバッテリ12からの電力を供給され、また、ソレノイド9cへの通電もコントローラ10により制御される。コントローラ10は、滑り易い路面での発進時に前輪3L,3Rがスリップしたとき発進アシスト制御を行い、車両の旋回時に旋回アシスト制御を行う。
【0013】
発進アシスト制御では、ソレノイド9cに通電してブレーキ手段9によりリングギア7bの回転を拘束すると共に、両直流モータ6L,6Rを駆動する。これによれば、各差動装置7L,7Rのサンギア7aが各減速ギア列8L,8Rを介して回転され、リングギア7bを反力受けとして各差動装置7L,7Rのプラネタリピニオン7cが自転しつつ公転して、各差動装置7L,7Rのキャリア7dが回転し、各直流モータ6L,6Rの出力トルクが各後輪4L,4Rに伝達されて、従動輪たる後輪4L,4Rの駆動により発進がアシストされる。
【0014】
発進後車速が所定速度に上昇すると、ソレノイド9cへの通電を停止してブレーキ手段9によるリングギア7bの拘束を解除すると共に、直流モータ6L,6Rの駆動を停止する。これによれば、各後輪4L,4Rの回転による各差動装置7L,7Rのキャリア7dの回転でリングギア7dが空転して、後輪4L,4R側からの逆駆動力がサンギア7aに伝達されなくなり、減速ギア列8L,8L及び直流モータ6L,6Rの回転が停止される。
【0015】
旋回アシスト制御では、車両の旋回時に、ドグクラッチ9をオフしたまま左右の直流モータ6L,6Rのうち外輪側の直流モータを正転させると共に内輪側の直流モータを逆転させる。例えば、右旋回時には、左側の直流モータ6Lを正転させると共に右側の直流モータ6Rを逆転させる。これによれば、左側の差動装置7Lのサンギア7aが正転されてそのキャリア7dがリングギア7bに対し正転されると共に、右側の差動装置7Rのサンギア7aが逆転されてそのキャリア7dがリングギア7bに対し逆転される。この場合、左側の差動装置7Lのリングギア7bには逆転方向の反力が作用し、右側の差動装置7Rのリングギア7bには正転方向の反力が作用するが、両リングギア7b,7bは互に連結されているため、両反力は打消される。従って、リングギア7bの回転速度を基準にして、左側の差動装置7Lのキャリア7d、即ち、左後輪4Lが増速され、右側の差動装置7Rのキャリア7d、即ち、右後輪4Rが減速される。その結果、外輪たる左後輪4Lに駆動力、内輪たる右後輪4Rに制動力が付与されて右旋回方向へのヨーモーメントが発生し、旋回がアシストされる。
【0016】
各モータドライバ11L,11Rは、図3に示す如く、各直流モータ6L,6Rを正転させる、ハイレベルの信号の入力でオンする正転用の1対のスイッチング素子11a,11bと、各直流モータ6L,6Rを逆転させる、ハイレベルの信号の入力でオンする逆転用の1対のスイッチング素子11c,11dとから成るHブリッジのスイッチング素子を備えており、コントローラ10から出力される、正転時にハイレベルとなる回転方向信号を正転用+側スイッチング素子11aと、第1ANDゲート11eを介して正転用−側スイッチング素子11bと、NOTゲート11fを介して逆転用+側スイッチング素子11cと、NOTゲート11fと第2ANDゲート11gとを介して逆転用−側スイッチング素子11dとに入力している。そして、コントローラ10から出力される、モータ駆動時にハイレベルとなるモータ駆動信号と、矩形パルス信号たるPWM信号とを第3ANDゲート11hを介して第1と第2のANDゲート11e,11gに入力し、モータ駆動時にPWM信号のパルス幅で周期的に各直流モータ6L,6Rに通電し、各直流モータ6L,6Rに流すモータ電流値をPWM方式で制御できるようにしている。
【0017】
コントローラ10はPWM信号の周期に対するパルス幅の比率を表わすPWM値を演算して、PWM値に応じたパルス幅のPWM信号を出力する。PWM値の演算に際しては、図4に示すように、先ず、各直流モータ6L,6Rの要求出力トルクに応じた目標電流値の電流を各直流モータ6L,6Rに該各モータを停止した状態で流すのに必要な目標PWM値を算出する(S1)。尚、目標PWM値は、定数をKとして、次式、
目標PWM値=K・目標電流値/電源電圧
で求められる。
【0018】
ところで、直流モータ6L,6Rが回転するとモータ自体が発電機となって逆起電力が発生するため、PWM値が同じであってもモータ電流値は図5に示す如く変化する。そこで、モータ回転時に発生する逆起電力を補償するのに必要な回転補償PWM値を算出する(S2)。回転補償PWM値は、電流センサ11iで直流モータ6L,6Rに流れる実電流値を検出し、次式、
回転補償PWM値=前回の回転補償PWM値
+K・(前回の目標電流値−前回の実電流値)/電源電圧
で求められる。
【0019】
そして、指令PWM値を、次式、
指令PWM値=目標PWM値+回転補償PWM値
で算出し(S3)、指令PWM値に応じたパルス幅のPWM信号を出力する(S4)。
【0020】
以上の制御によれば、目標電流値が図6(A)のa線の如く設定され、モータ回転速度が図6(B)に示す如く変化した場合、指令PWM値は図6(C)のa線で示す目標PWM値に回転補償PWM値を加算した値となって図6(C)のb線の如く変化し、モータの回転変動があってもモータ電流値を図5(A)のb線の如く目標電流値に応答性良く制御できる。尚、モータがその駆動方向と逆方向に回転した場合、指令PWM値は目標PWM値より小さな値になる。
【0021】
尚、上記実施形態では、発進アシスト制御と旋回アシスト制御とを行い得られるようにしているが、発進アシスト制御のみを行う場合には、電動式駆動装置5を、図7に示す如く、1個の直流モータ6からの出力トルクをソレノイド13aによりオンオフされるクラッチ13と減速ギア列8と傘歯式の差動装置7とを介して左右の後輪4L,4Rに伝達するように構成しても良い。そして、コントローラ10によりソレノイド13aへの通電を制御して、発進アシスト時にクラッチ13をオンすると共に、バッテリ12からの電力を直流モータ6に供給するモータドライバ11を上記と同様に構成し、発進アシスト時にコントローラ10により上記と同様に指令PWM値を算出して、PWM方式でモータ電流値を制御する。
【0022】
以上、前輪駆動車両における後輪の電動式駆動装置について説明したが、後輪駆動車両における従動輪たる前輪の電動式駆動装置の直流モータの電流制御にも同様に本発明を適用できる。また、図3は永久磁石界磁直流モータの制御回路を示しているが、直流分巻モータにおける電機子電流の制御にも同様に本発明を適用できる。
【0023】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、モータ回転速度が変動してもモータ電流値を所要の出力トルクが得られる値に応答性良く制御でき、従動輪を所要の駆動力で安定して駆動して、ドライバビリティを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明装置の使用例を示す図
【図2】 本発明装置の第1実施形態を示すスケルトン図
【図3】 第1実施形態のモータドライバの回路図
【図4】 モータ電流の制御プログラムを示すフロー図
【図5】 モータ回転速度とモータ電流値との関係を示すグラフ
【図6】 (A)目標電流値と実電流値とを示すグラフ、(B)モータ回転速度を示すグラフ、(C)目標PWM値と指令PWM値とを示すグラフ
【図7】 本発明装置の第2実施形態を示すスケルトン図
【符号の説明】
1 エンジン 3L,3R 前輪(駆動輪)
4L,4R 後輪(従動輪) 5 電動式駆動装置
6L,6R,6 直流モータ
10 コントローラ(各PWM値の算出手段)
11L,11R,11 モータドライバ(直流モータに通電する手段)

Claims (1)

  1. 前輪と後輪との一方をエンジンで駆動する駆動輪、他方を従動輪とする車両に搭載する、従動輪を直流モータで駆動する車両用電動式駆動装置における直流モータの電流制御装置であって、
    直流モータに流す電流値をPWM方式で制御するものにおいて、
    直流モータの要求出力トルクに応じた目標電流値の電流を直流モータに該モータを停止した状態で流すのに必要な目標PWM値を算出する手段と、
    モータ回転時に発生する逆起電力を補償するのに必要な回転補償PWM値を算出する手段と、
    目標PWM値と回転補償PWM値とを加算して指令PWM値を算出する手段と、
    指令PWM値に応じたパルス幅で直流モータに通電する手段と、
    を備えることを特徴とする車両用電動式駆動装置におけるモータ電流制御装置。
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