JP3849384B2 - 空間変調デバイス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空間変調デバイスに関し、例えば液晶レンズに好適な空間変調デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、プラスチック成形フレネル板、写真乾板式回折格子、ガラス版けがき式回折格子、写真乾板式ホログラム、フォトレジスト式ホログラムなどがあったが、製造時に透過又は反射光路は固定されている。
【0003】
透過又は反射光路を偏向する技術としては、例えば、以下のものがある。
【0004】
特開平10−62609号公報は、焦点距離を調整できるマイクロレンズを提案している。これは、レンズ一つの焦点位置を変更するものであり、小径瞳のレンズでしか成り立たない。また、単純に寸法が大きくなるだけであれば、必要な球面(非球面)が得られないため、実用化が困難であると考えられる。
【0005】
特開平9−184965号公報には、入射光路を偏向する偏向手段にパワーを持たせる技術が開示されているが、レンズパワーは変化せず、撮影レンズの瞳を有効に使用することができない。
【0006】
レーザー研究、第25巻第10号、第687頁、(1997年)「液晶マイクロレンズ」には、マイクロレンズアレーを作成し、焦点位置を変更できる技術が開示されている。しかし、直径数10〜数100μmのレンズしか形成できない。
【0007】
特許第2628630号(特開昭62-170933号)公報には、同心円状に電極を配置し、リング状電極に順次異なる電圧を印加する方式が開示されている。しかし、この方式は、液晶をはさんだ電極間の配向、屈折力を制御する方法であり、各リング電極間にもつ配向変位、屈折力変位については述べられていない。リング電極間も電極の影響により配向がチルトし、屈折力も変化し、この部分が必要としない屈折力を発生し、フレアを生じさせる要因となる。
【0008】
特開平9−304748号公報には、多重輪状構造をもち、中央から周辺にかけて径方向の電極幅が中心から周辺に向かって減少させることによってレンズ効果を持たせる技術が開示されている。しかし、電極と電極との間のみ屈折力変化をもつものとして設計されているが、多重輪状電極同士の間の部分も電極の影響により配向がチルトし、屈折力も変化し、この部分が必要としない屈折力を発生し、フレアを生じさせる。また、上下の電極を非対称にして、電極電圧を1種類だけとしているが、フレア問題について解決する方向ではない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従来から、小型な装置で焦点位置を可変にする(2重焦点レンズシステム)として、液晶を利用することが述べられてきた。これは、2枚の基板に電極を形成し、これを多重リング形状として、液晶をはさんだ電極間の液晶の屈折率を変化させることでレンズ効果を持たせるようにしてきた。電界を印加しない場合は、液晶は基板に平行に配向しレンズ効果がなく、電界をかけたときには液晶の配向角が変化し、屈折力が変わることを利用してきた。
【0010】
しかし、液晶をはさんだ電極間の配向、屈折力を制御する方法が述べられてきたが、各リング電極間に発生する配向変位、屈折力変位についての振る舞いが述べられていない。実際は、リング電極間も電極の影響により配向がチルトし、屈折率も変化し、この部分が必要としない屈折力を発生し、フレアを生じさせる要因となる。
【0011】
フレアの発生は、ピント検出などのセンシングの誤検出になり、撮影系で利用する場合、フレアは画質の低下となり、レンズとしての性能が良いとはいえない。
【0012】
また、液晶をはさんだ電極間は一定の屈折率であり、デバイス全体としての屈折力は、各リングごとの量子化された屈折となる。これら2つの要因により結像性能の良いレンズにはならない。
【0013】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、結像性能の良い空間変調デバイスを提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段および作用・効果】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成の空間変調デバイスを提供する。
【0015】
空間変調デバイスは、光束内に配置され入射光を偏向させることができる屈折率可変材料と、該屈折率可変材料を挟んで両側に互いに略対向して同心円状、同心楕円状、又は偏倍同心楕円状に間隔を設けて配置された複数の電極対と、該電極対間に電圧を印加する電圧印加手段とを備え、上記電極対間に印加される電圧により上記屈折率可変材料の屈折率分布が変わり焦点位置が変化するタイプのものである。上記各電極対の互いに対向する電極間の電極対向領域の幅に比べ、該電極対向領域間の非電極対向領域の幅の方が広い。そして、上記非電極対向領域の上記屈折率可変材料の屈折率分布が、隣接する上記電極対に印加される電圧により変わり焦点位置が変化する。
【0016】
なお、「偏倍」とは、直交方向の倍率が同一でない場合のことであり、例えばX方向とY方向で倍率が異なる場合や、倍率が距離により変化する場合などを含む。
【0017】
上記構成において、電圧印加手段により電極対間に電圧が印加されると、電極対向領域のみならず、非電極対向領域においても電界が生じる。屈折率可変材料は、この電界に応じた屈折率分布となる。非電極対向領域の屈折率は、後述するように種々の方法により、所望の分布とすることが容易である。大部分の入射光束は、電極対向領域より広い非電極対向領域に入射して結像するので、非電極対向領域の屈折率分布を制御することにより、結像性能を向上することができる。
【0018】
例えば、上記構成を液晶レンズに適用すれば、電極対向領域の屈折率変化のみを利用する従来型の液晶レンズよりも、フレアを減らすことができる。またレンズとして必要な屈折率分布特性を得ることが容易となり、結像性能の良いレンズを構成することが可能である。
【0019】
好ましくは、上記屈折率可変材料は液晶である。
【0020】
液晶は、電界に応じた屈折率分布を得ることができ、製造も容易でる。したがって、液晶レンズ等を構成することが容易である。
【0021】
好ましくは、上記屈折率可変材料は、ポッケルス効果材料又はカー効果材料である。
【0022】
すなわち、屈折率が電界の強さに比例する材料であるポッケルス効果材料や、屈折率が電界の強さに2乗に比例する材料であるカー効果材料は、所望の屈折率分布を得るように構成する上で、好適である。
【0023】
好ましくは、上記各電極対は、それぞれ、一方の電極と他方の電極が同一形状である。
【0024】
上記構成によれば、屈折率可変材を挟む同一形状の電極間で電界を形成し、この広がりを利用して電極のない非電極対向領域について屈折率分布を形成し、レンズ効果をもたせることができ、屈折率分布の制御や空間変調デバイスの製造が容易になる。
【0025】
具体的には、本願発明は、例えば、液晶をはさんだ電極間の略一定の屈折率を利用するのではなく、リング電極間の徐々に変化する屈折率分布を利用し、フレアの影響を少なくし、屈折力量子化による結像むらをなくして、結像性能の良い液晶レンズを提供する。
【0026】
すなわち、従来は、例えばフレネルレンズの各プリズム要素が平面で構成されたプリズムの集まりであるのが、本発明ではフレネルレンズの各プリズム要素がレンズ球面で構成されたレンズの集まりであるといえる。
【0027】
本発明により、屈折率分布レンズ(グリンレンズ)を液晶で実現し、その屈折率分布構造がフレネルレンズのようになっているというレンズが実現するともいえる。
【0028】
本発明の利用分野は、例えば、以下のような領域である。
【0029】
被写体からの光を入射する対物レンズの瞳内を通過した光束を利用して、センシングを行う場合に関係する。例えば、機器がカメラでセンシングが焦点検出とする。
【0030】
具体的には、デジタルカメラの撮像エリアセンサを利用してピント位置を求める場合に、例えばコントラスト方式であれば最大コントラスト位置を求めて、撮影レンズのフォーカスレンズを動かしてコントラスト検出の出力カーブのピーク位置を求めてピントを合わせる。
【0031】
一方、フォーカスレンズを動かさないでピント位置を求める方法もある。2枚の撮像センサを撮影レンズ光軸方向にずらせて配置し、コントラスト出力を比較してピント位置を想定する。この場合、2つの出力値の差を補間(外挿又は、内挿演算)してピント位置をおおよそ予測する。この場合、レンズの初期位置のピントぼけ量によって、演算可否が分かれる。この時ぼけ量が大きい場合は上記2つのセンサの光軸方向配置位置(ピントずらし量)が大きい場合、ピント位置を見つけやすく、ぼけ量が小さい場合は、ピント位置検出精度を上げるために2つのセンサの光軸方向配置位置(ピントずらし量)を小さく設定したい。大ぼけ時は2つのセンサは光軸方向に大きく離したいし、ピントが合ってきたら光軸方向に小さくし、最後のピント位置決定(AF完)の精度を上げたい。また、大ぼけでも高速AF可能といえる。
【0032】
よって、従来コントラスト方式のAFは時間がかかっていたのが、本発明を使えば素早くAFできるようになる。
【0033】
その他、瞳径の異なる対物レンズでセンシングする場合の対応できる種類が増える。すなわち、射出瞳によってけられることが問題であったセンシングに対し、瞳位置に応じて光束を変更できるためにセンシング範囲が増加する。
【0034】
よって、例えばF値の明るいレンズしかピント検出できなかったものが、本発明を使えば、暗いレンズでもAFできるようになる。
【0035】
又は、ピントのセンシングがF値の暗いところの光束で検出するようにしか設計できなかったために、精度を落としていたのが、本発明によって高精度なAFが可能となる。
【0036】
さらに、撮影レンズでフォーカスレンズに利用すれば焦点調節可能となる。従来フォーカシングにガラスレンズを光軸方向に相当量動かす必要があるために、撮影レンズを大きくする必要があったのが、本発明により小型の撮影レンズができる。
【0037】
なお、一般的な光学系設計において、従来必要な焦点位置を得るために、レンズそのものを交換するか、又はレンズ1枚又は、複数レンズを移動する必要があったのが、本発明により簡単に小型に光学系を構成できる。
【0038】
また、従来の液晶レンズの提案では、収斂レンズ特性しか述べられていないが、発散レンズヘの応用が可能である。液晶の屈折率の変化率を電極の幅で制御することで任意の屈折率分布が得られ、発散レンズ(凹レンズ)特性を構成することも可能となる。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各実施形態に係る液晶レンズについて、図面を参照しながら説明する。
【0040】
まず、図1を用いて、従来の液晶レンズについて説明する。
【0041】
図1(a)の模式断面図に示すように、液晶レンズ500は、平行に配置した基板510,520とシール材538,539で、液晶530を密封したものであり、基板510,520の互いに対向する面には、電極511,512,521,522と、配向膜518,528が形成されている。電極511,512;521,522は、光軸Oと同心リング状に、かつ互いに対向するように、それぞれ形成されている。そして、対向する電極間の電極対向領域Pにおいては、電圧印加による電界で液晶530の配向を変化させ、特定の屈折率に制御することができる。しかし、その隣の電極が対向しない非電極対向領域Nでは、液晶530の配光が変化せず、屈折力を持たないとされていた。
【0042】
そのため、領域Nと領域Pとでは屈折率が異なり、図1(b)に端的に示したように、液晶レンズ500の屈折率は、断続的な略方形の分布になる。換言すると、図1(c)に示したように、液晶レンズ500は、複数の直線状のレンズ面要素540を持ったフレネルレンズに相当する。そして、図1(d)に示したように、電極対向領域Pを通過した光束552は焦点550に結像するが、非電極対向領域Nを通過した光束554は焦点550に結像せず、結像性が低かった。
【0043】
実際には、液晶530の配向が変化しなくても(たとえ水平としても)、屈折率は空気と異なるため屈折する。また、電極間で発生する電界により、電極対向領域Pだけで配向が変化するのではなく、広がりを持つ。特に、後者によって、非電極対向領域N内では、電極対向領域Pから離れるに従い屈折率が徐々に大きくなり、結果としてパワーを持つ。
【0044】
そこで、従来は電極対向領域Pの屈折率を制御して結像させていたのに対し、本発明では、図2に示すように、非電極対向領域Nにおける屈折率を制御して、結像性を向上している。図中、10,20は基板、18,28は配向膜、30は液晶、38,39はシール材、Oは光軸、Lは光束の入射方向である。
【0045】
すなわち、図2(a)の模式断面図に示すように、基板10,20に形成する同心リング状の電極12,13;22,23の幅を、非電極対向領域Nの幅よりも小さくし、また、電界遮断部32,34を設け、リング状のセルに区切っている。これにより、図2(b)に示すように、非電極対向領域Nにおいて所望の傾きで屈折率を変化させている。この屈折率分布は、図2(c)に示すように、複数の曲線状のレンズ面要素40を持ったフレネルレンズに相当する。そして、図2(d)に示したように、大部分の光束54が非電極対向領域Nを通過し、焦点50に結像するようにして、結像性を高くすることが可能である。さらには、電極対向領域Pを通過する光束52も焦点50に結像させ、結像性を一層向上することも可能である。
【0046】
本発明の液晶レンズは、具体的には、以下のように種々の態様で構成することができる。
【0047】
図3(a)の断面図に示すようにセルで区切らない場合には、隣接する電極間の電界変化の影響で、屈折率は、図3(b)のように、山が繰り返すような分布となる。所望の結像性を得るには、一つの山状の屈折率分布において、その上昇部分又は下降部分の何れか一方のみを含む分布であることが必要である。そのためには、以下の各構成が可能である。
【0048】
図4(a)の要部断面図は、不要な光束をカットする遮光部62〜65を設ける構成を示している。この構成では、遮光部62〜65は、屈折率分布曲線のうち結像性能に寄与しない範囲QT(図3(b)参照)に対応する部分を通過する光束を遮断し、寄与する範囲QSに対応する部分についてのみ、光束が通過するようにする。遮光部62〜65は、例えば不透明膜を形成することにより、容易に形成することができる。しかし、この方法では、図4(b)に示したように、山状の屈折率分布曲線の片側をカットすることになるので、全体光量が略半分に減少する。
【0049】
なお、図4は収斂系のレンズ(凸レンズ)の場合であるが、発散系のレンズ(凹レンズ)の場合には、屈折率分布曲線のうち使用しなかった部分QTを使用することになるので、図4(a)とは逆の部分(光が透過する部分)をマスクすることになる。
【0050】
別の構成としては、セルに区切り、有効領域を広げる。
【0051】
図5は、電界シールド31,33,35,37によりセルに区切った場合の構成図である。電界シールド31,33,35,37は、例えば、銅や、透明電極で使用する材料(酸化インジウム、酸化錫、ITOすなわちインジウム錫酸化物など)を利用する。
【0052】
図7(a)に示すように、電極の間隔を変えることにより、所望の屈折率分布を得ることができる。
【0053】
すなわち、光軸Oの中心付近の電極間隔を広くし、光軸Oの周辺部分では電極の間隔を狭くすることで、図7(b)に示すように、セルごとの屈折分布に差をつける。
【0054】
いわゆるフレネルゾーンプレートの形とよく似た屈折分布とするには、図7中の記号を用いると、
各セルの幅については、
a>b>c>d>e (1)
各セルの最大屈折率については、
QA>QB>QC>QD>QE (2)
である。
【0055】
この場合には、各電極12〜16,22〜26に同一電圧を印加することができる。
【0056】
1つ1つのセルを区切ることで、所望の方向とは逆方向に偏向する光束をなくし、透過率を向上させることができる。また、非電極対向領域の屈折率分布特性を向上させ、レンズ効果(結像性能)を向上させることができる。また、非球面レンズ効果を設定することも可能である。
【0057】
また、図8に示すように、電極に印加する電圧を変えることにより、所望の屈折率分布を得ることもできる。
【0058】
図8では、各セルA〜Fについて、それぞれの電極X1〜X6に印加する電圧を抵抗R1〜R5により段階的に変え、各セルA〜Fにおける最大電圧VA〜VFが、
VF>VE>VD>VC>VB>VA (3)
となるようにして、全体のパワーを制御するものである。電源Vは、例えば1kHz、5Vの電圧を交流駆動させる。この場合は、受光手段を同期させる必要がある。なお、直流電源で、一定の屈折率を維持できる材料の場合は同期の必要はない。
【0059】
この場合、光軸Oの中央部を低電圧、光軸Oの周辺部を高電圧にすることで、図9に示すように、中央部付近のセルの液晶30については水平配向に近い状態、すなわち高屈折率とし、周辺部付近のセルの液晶30については配向の強い状態、すなわち低屈折率にでき、フレネルレンズのような屈折率分布効果が発揮できる。
【0060】
すなわち、各セルA〜Dについての屈折率の分布が、図9(a)に示す記号を用いて、
QA>QB>QC>QD (4)
QA ’>QB ’>QC ’>QD ’ (5)
となるようにすることができる。
【0061】
また、非球面効果も付加でき、レンズ性能が向上する。
【0062】
各セルは、図10〜図14のように、種々の態様の構成とすることができる。
【0063】
図10は、各液晶セルを同心筒状の壁W1〜W6で各円環状のセルごとに明確に分離したものである。電磁シールド材からなる壁W1〜W6で仕切り、隣接するセルの電極の影響を受けないようにして、屈折力を高く設定することができる。ただし、液晶セルヘの入射角が垂直に近い場合に有効であり、角度がつくと分離用の壁W1〜W6が光路を遮り、悪影響を与える。
【0064】
図11は、各セルの屈折力を高く設定するために、各電極X2〜X6,Y2〜Y6の近傍にそれぞれグランド電極S2〜S6,T2〜T6を設定したものである。隣のセルの影響をなくす効果を持つ。グランドから制御するため、電位差の制御範囲が広く、また確実に設定できる。
【0065】
図12は、セルを明確に分離する壁W1〜W5を設定するとともに、各壁Wiの両側に、それぞれ電極SiとTiの対、XiとYiの対を配置する構成を示す。印加電圧は、VとV2で円環状のセルの外部と内部をおさえ、電界分布の制御をきめ細かくし、光路偏向の有効領域を広げることを可能とする。
【0066】
図13は、各セル自体の構成は図11と同じであるが、図11と異なり、電極Y1〜Y6もグランドに接地している。また、電圧Vは、マイコンによって変える。
【0067】
図14は、各セル自体の構成は図10と同じであるが、図11と異なり、各電極には同一電圧を印加し、その大きさは可変抵抗Rによって変えることができる。
【0068】
図15は、凹レンズの場合の例である。
【0069】
凹レンズ構成とするためには、電界シールドの壁W2〜W6と電極X1〜X6,Y1〜Y6を、凸レンズ系とは逆の位置関係に配置し、電圧の大小の並びも逆にする。
【0070】
すなわち、光軸Oの中央部付近では高電圧、光軸Oの周辺部付近では低電圧にすることで、図15(b)に示すように、屈折率分布曲線が凹状で、中央部付近を低屈折率、周辺部付近で高屈折率として、凹レンズとしての屈折率分布効果が発揮できるようにしている。
【0071】
すなわち、各セルA〜Fについての屈折率の分布は、図中の記号を用いると、
QF>QE>QD>QC>QB>QA (6)
QF ’>QE ’>QD ’>QC ’>QB ’>QA ’ (7)
となる。
【0072】
屈折率曲線が凹系か凸系かは、対向する電極同士Xi,Yi(i=1,2,・・・)の幅の寸法比で決めることができる。図15では、電極Yi(i=1,2,・・・)の幅を広くとり、屈折率の立ち上がりをゆるくすることで、凹レンズ(拡散レンズ)系の性格を持たせている。電極同士Xi,Yi(i=1,2,・・・)が同じ幅であれば、前述したように、凸レンズ系(収斂レンズ)の特性を持たせることになる。この特性は、設計時に決定する。
【0073】
以上の説明では、液晶材料として、誘電異方性が正のネマチック液晶を用いた場合について述べたが、他に、透明な固体や液体であって電場を加えたときに屈折率が変化する材料を用いてもよい。
【0074】
屈折率変化が電場の強さに比例するポッケルス効果のある材料(例えば、BaTiO3、KH2PO4(KHP)、KD2PO4(KDP)、LiNbO3、ZnO)、又は電場の2乗に比例するカー効果利用の材料(例えば、CS2)でもよい。
【0075】
なお、材料に応じて、光軸中央部付近と周辺部付近に印加する電圧分布の関係が逆配置になってもよい。
【0076】
すなわち、使用材料の特性は、電界エネルギーが大きいほど屈折率が小さく、電界エネルギーが小さくなると屈折率が大きくなる場合の実施例を示したが、逆の場合もある。その場合には、例えば図6に示すように、電極11〜14、21〜24と電界シールド32〜34の関係は、図5とは逆になる。
【0077】
また、光軸中心部を高電圧、周辺部を低電圧にすることで、レンズ特性の向上も図ることができる。この場合は、例えば図16に示すようになる。
【0078】
材料の特性と、使用目的に応じて整理すると、図18のようになる。この図において、イ)は印加する電圧が一定で、電極間隔のみで制御する場合であり、ロ)は、電圧の変化をつけ、レンズ特性向上を図る場合である。
【0079】
凸レンズ特性向上のためには、周辺部の屈折率を低い状態にすることを目的としている。凹レンズの場合は、周辺部の屈折率を高い状態にする。
【0080】
以上説明した各実施例の液晶レンズは、液晶の屈折率を制御することにより、結像性能の良い液晶レンズとすることができる。
【0081】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。
【0082】
例えば、これまで説明してきた実施例では、電極は同心リング状であるため、各電極の配線は多層構成とすることが必要であるが、コストを下がるためには、図17に示したように、渦巻き状の電極とすれば、配線層を減らすことが可能である。この場合、性能上は、同心電極の場合よりも落ちるが、配線は容易となる。
【0083】
本発明のデバイスは、例えば図19に示すように、光学レンズの光束内に設置して利用する。図19(a)に示したように、光束が透過するデバイスとして用いても、図19(b)に示すように、入射面とは反対側に反射面を設け、光束を反射するデバイスとして用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来の液晶レンズの説明図である。
【図2】 本発明の液晶レンズの説明図である。
【図3】 従来例の液晶レンズの説明図である。
【図4】 本発明の液晶レンズの説明図である。
【図5】 本発明の液晶レンズの説明図である。
【図6】 本発明の液晶レンズの説明図である。
【図7】 本発明の液晶レンズの説明図である。
【図8】 本発明の液晶レンズの説明図である。
【図9】 本発明の液晶レンズの説明図である。
【図10】 本発明の液晶レンズの説明図である。
【図11】 本発明の液晶レンズの説明図である。
【図12】 本発明の液晶レンズの説明図である。
【図13】 本発明の液晶レンズの説明図である。
【図14】 本発明の液晶レンズの説明図である。
【図15】 本発明の液晶レンズの説明図である。
【図16】 本発明の液晶レンズの説明図である。
【図17】 本発明の液晶レンズの説明図である。
【図18】 本発明の液晶レンズの構成態様を整理した表である。
【図19】 本発明のデバイスの利用法の説明図である。
【符号の説明】
10 基板
11〜16 電極(電極対)
18 配向膜
20 基板
21〜26 電極(電極対)
28 配向膜
30 液晶(屈折率可変材料)
31、33,35,37 電界シールド
32,34 区切り
38,39 シール材
40 レンズ面要素
50 焦点
52,54 光束
62〜65 遮光部
L 入射方向
N 非電極対向領域
O 光軸
P 電極対向領域
S1〜S6 電極
T1〜T6 電極
V,V2 電源(電圧印加手段)
W1〜W6 壁
X1〜X6 電極(電極対)
Y1〜Y6 電極(電極対)
Claims (4)
- 光束内に配置され入射光を偏向させることができる屈折率可変材料と、該屈折率可変材料を挟んで両側に互いに略対向して同心円状、同心楕円状、又は偏倍同心楕円状に間隔を設けて配置された複数の電極対と、該電極対間に電圧を印加する電圧印加手段とを備え、上記電極対間に印加される電圧により上記屈折率可変材料の屈折率分布が変化する、空間変調デバイスにおいて、
上記各電極対の互いに対向する電極間の電極対向領域の幅に比べ、該電極対向領域間の非電極対向領域の幅の方を広くし、
上記非電極対向領域の上記屈折率可変材料の屈折率分布を、隣接する上記電極対に印加する電圧により制御することを特徴とする、空間変調デバイス。 - 上記屈折率可変材料は液晶であることを特徴とする、請求項1記載の空間変調デバイス。
- 上記屈折率可変材料は、ポッケルス効果材料又はカー効果材料であることを特徴とする、請求項1記載の空間変調デバイス。
- 上記各電極対は、それぞれ、一方の電極と他方の電極が同一形状であることを特徴とする、請求項1記載の空間変調デバイス。
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---|---|---|---|
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