JP3848860B2 - 空胴共振器を有する平面回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘電体基板表面にマイクロストリップ線路などにより回路を形成するマイクロ波帯やミリ波帯の平面回路に関する。さらに詳しくは、平面回路の発振器やフィルタに用いられる共振器に空胴共振器を用いる平面回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
マイクロ波やミリ波の回路としては、導波管や空胴共振器などを用いた立体回路を用いるものと、誘電体基板表面にストリップラインなどにより伝送線路やそのインダクタンス、線路間のキャパシタなどによりフィルタなどを形成する平面回路が知られている。立体回路では、当然のことながら共振回路などを形成するのに空胴共振器が用いられ、たとえば波長計やクライストロンの共振器などには半同軸空胴共振器が用いられている。しかし、平面回路では、ストリップ線路などのインダクタンスや線路間の容量などを利用して共振回路を形成している。また、たとえばトランジスタ発振器の発振周波数を安定させたり、フィルタなどを形成するのにさらに精密な共振回路を必要とする場合には、誘電体共振器やセラミックスなどからなる同軸共振型ブロックなどを誘電体基板上に搭載して組み立てられる場合もある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、従来の高周波用平面回路では、共振器が必要な場合、誘電体を用いた共振器が用いられるが、誘電体共振器では、必ず誘電体での損失が生じ、損失の少ない誘電体であっても、空胴を用いた共振器と比較した場合、その損失が大きくなり、共振のQ値が低くなるという問題がある。また、ミリ波では、共振器の寸法が小さくなるため、誘電体の加工が困難になるという問題もある。
【0004】
本発明は、このような問題を解決し、マイクロ波やミリ波などの高周波用の平面回路に、平面回路に適した空胴共振器を結合させ、損失が小さく、高性能な平面回路を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の他の目的は、平面回路に空胴共振器を結合させるのに適した具体的な空胴共振器部の構造を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明による空胴共振器を有する平面回路は、誘電体基板と、該誘電体基板の一面側に形成される回路パターンと、該誘電体基板の他面側に設けられた接地導体と、前記回路パターンと電磁気的に結合するように前記誘電体基板の前記一面側に突出する金属棒と、該金属棒の周囲を覆う導電性カバーとを具備し、前記金属棒と前記導電性カバーとの間に半同軸空胴が形成された構造となっている。
【0007】
この構造にすることにより、金属棒の周囲を導電性カバーにより被覆する構造の半同軸型空胴共振器として、平面回路に結合しているため、誘電体基板上の回路にも簡単に結合させることができる。しかも、金属棒と導電性カバーとの間の空間を共振器としているため、損失が殆ど生じない。
【0008】
たとえば、前記空胴共振器がフィルタを構成するものであったり、前記回路パターンに発振器が接続され、前記空胴共振器が発振周波数固定用に用いられる。
【0009】
前記金属棒が前記誘電体基板表面に沿うように折り曲げられてもよいし、前記金属棒が複数本からなり、該複数本の金属棒が1個の前記導電性カバーによりカバーされてもよい。金属棒が折り曲げられることにより、誘電体基板上に出っ張ることがないし、複数本の金属棒にすることにより広帯域化することができる。
【0010】
前記誘電体基板が筐体内に収納され、該誘電体基板表面側に蓋体が設けられ、前記金属棒および導電性カバーが前記蓋体を貫通し、または前記蓋体と前記筐体内に収納されるように設けられることにより、筐体および蓋体を導電性部材で形成すれば、完全にノイズを遮断しながら、空胴共振器を簡潔に収納することができる。前記蓋体が導電性材料からなり、厚さを調整することにより、前記導電性カバーを兼ねる構造にすることもできる。
【0011】
【発明の実施の形態】
つぎに、図面を参照しながら本発明による空胴共振器を有する平面回路について説明をする。本発明による平面回路は、たとえば図1にその一実施形態の一部を切り欠いた平面および断面の説明図が示されるように、誘電体基板3の一面側に回路パターン5が形成され、その誘電体基板3の他面側に接地導体4が設けられている。そして、回路パターン5と電磁気的に結合するように、誘電体基板3の前記一面側に金属棒6およびその金属棒6の周囲を覆うように設けられる導電性カバー7からなる空胴共振器8とを具備している。
【0012】
誘電体基板3は、たとえばセラミックスやガラスエポキシなどからなる電気絶縁性の基板が用いられ、その表面(一面)の全面に被膜された銅被膜を所定のパターンにエッチングし、または所定のパターンに印刷することなどにより誘電体基板表面に回路パターン5が形成されている。回路パターン5は、マイクロ波などの伝送線路を構成すると共に、その幅および長さに応じてインダクタンスまたは容量が形成され、これらを利用して所望の回路が形成されている。
【0013】
空胴共振器8は、図1に示される例では、帯域阻止フィルタを構成する例で、金属棒6は誘電体基板3に貫通孔を設け、接地導体4と接続するようにその孔に固定されている。この際、貫通孔内の側面に導電性膜を設けておくことにより、いわゆるスルーホールとすることにより、金属棒6と接地導体4との電気的接触を良好にすることができるため好ましい。金属棒6の長さHは、帯域阻止フィルタの動作周波数によって決定され、その周波数の概略1/4波長の長さに形成されている。そして、この金属棒6と同軸構造をなすように、周囲に導電性カバー7が設けられることにより、金属棒6と導電性カバー7との間に半同軸空胴が形成され、半同軸空胴共振器が形成されている。この半同軸空胴共振器と回路パターン5との結合の大きさは、回路パターン5と金属棒6との間隔Lで決まり、Lが小さければ結合が大きくなり、Lが大きければ結合は小さくなる。結合が大きければ阻止帯域が広くなり、結合が小さければ阻止帯域は狭くなる。
【0014】
この構造の空胴共振器の共振周波数は、金属棒6の先端と導電性カバー7の頂部との間隔Gを調整することにより微調整される。すなわち、共振周波数調整部(導電性カバー7の頂部)7aを押して、間隔Gを小さくすると、共振周波数は低くなり、共振周波数調整部7aを引っ張って間隔Gを大きくすると、共振周波数は高くなる。
【0015】
図1に示される例では、回路パターン5が設けられると共に、空胴共振器8が取り付けられた誘電体基板3が筐体1内に収納されて、その表面側に蓋体2が金属棒6および導電性カバー7を貫通するように設けられ、ビス18により筐体1に固定されて閉塞されている。前述の導電性カバー7は蓋体2に固定されている。筐体1および蓋体2は、それぞれAl、Niメッキを施したFeなどの導電性部材を用いることにより、誘電体基板上に形成されるマイクロストリップ線路などからなる回路を完全に外部からシールドすることができるため、ノイズなどの影響を受けることがなくなり、非常に好都合であるが、必ずしも導電性部材を用いることに限定されることはなく、プラスチック樹脂などの非導電性部材を用いることもできる。
【0016】
本発明によれば、回路パターンを形成した誘電体基板に金属棒を立て、その周囲を導電性カバーで被覆するだけで共振器を構成しているため、平面回路にも空胴共振器を非常に簡単に組み込むことができる。しかも、金属棒の長さは、前述のように、おおよそ1/4波長程度であり、マイクロ波からミリ波では、数cm以下となり、それほど出っ張りも問題にならない。その結果、平面回路にたとえば帯域阻止フィルタを形成する場合でも、半同軸空胴共振器を用いているため、従来の誘電体共振器のように、誘電体に必ず存在する誘電損失の影響を受けることがなく、導電体の抵抗損失のみであるので、殆ど損失を無視することができ、非常に低損失なフィルタを構成することができる。
【0017】
図2は、本発明の他の実施形態を示す、図1と同様の一部を切り欠いた平面および断面の説明図である。すなわち、この例では、金属棒6を誘電体基板3に沿うように折り曲げたもので、筐体1と蓋体2との中に収納できる構造になっている。このようにしても、同軸共振器としての機能は変らず、蓋体2を貫通して上部に空胴共振器が出っ張らないため、好ましい。それ以外のところは図1に示される例と同じで、同じ部分には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0018】
図3も、本発明の他の実施形態を示す、図1と同様の一部を切り欠いた平面および断面の説明図である。本例も、図1および図2に示される例と同様に帯域阻止フィルタを構成している。本例では、金属棒6の一端部が誘電体基板1に設けられた貫通孔内に接地導体4と接続するように設けられるのではなく、回路パターン5に直接ハンダ付けなどにより接続されている点で異なる。このように、金属棒6を直接回路パターン5に接続しても、回路パターンと空胴共振器とを結合させることができる。図3においても、図1と同じ部分には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0019】
図4は、本発明のさらに他の実施形態を示す、図1と同様の一部を切り欠いた平面および断面の説明図である。この例は帯域通過フィルタを構成する例で、2つのストリップ線路5a、5bに結合するように、金属棒6が、その一端を接地導体4と接続させて誘電体基板1の貫通孔内に固定したものである。空胴共振器8を構成する導電性カバー7や、他の構造は全て図1に示される例と同じで、同じ部分には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0020】
図5(a)および(b)は、本発明のさらに他の実施形態を示す、横断面((b)のA−A断面)および縦断面の説明図である。すなわち、図5に示される例は、回路パターン5aと5bの間に、3本の金属棒6a、6b、6cを並べて配列し、その3本を纏めて1個の導電性カバー7により被覆することにより、広帯域化、阻止域のアイソレーションの急峻化が可能となる構成である。また、この例では、導電性カバー7の頂部である共振周波数調整部7aに、金属棒6a〜6cに対応するように共振周波数調整用ビス9a〜9cが設けられており、その突っ込み長を調整することにより、共振周波数を微調整することができる。この構造は、前述の各例でも同様に採用することができる。なお、図5に示される例では、金属棒が3本の例であったが、2本でもよく、また、4本以上にすれば、さらに広帯域化を図ることができる。
【0021】
図6は、本発明のさらに他の実施形態を示す、図1と同様の一部を切り欠いた平面および断面の説明図である。すなわち、図6に示される例は、空胴共振器をガン発振器の発振周波数安定化に用いた例である。ガン発振器は、ガンダイオードが負性抵抗をもち、かつ、ガンダイオードを含めたリアクタンス成分が0になる周波数で発振する。図6に示されるように、回路パターン5に接続されるガンダイオード10の近傍で、回路パターン5に接続して金属棒6および導電性カバー(図6に示される例では、蓋体2が導電性カバーと兼用されている)からなる空胴共振器8が設けられることにより、ガンダイオード10から金属棒6の方をみたリアクタンスは、共振周波数付近で急激に変化し、リアクタンス成分が0の点が存在し、その周波数で発振する。
【0022】
このガンダイオード近傍に共振器を設け、共振器の共振周波数で発振させるという方法は従来の平面回路と同様であるが、本発明では、この共振器に、従来の誘電体共振器に代えて、空胴共振器を用いていることに特徴がある。空胴共振器を用いることにより、共振器のQ値を大きくすることができ、低ノイズの発振器を構成することが可能となる。なお、図6で、図1と同じ部分には同じ符号を付してその説明を省略するが、11aおよび11bはガンダイオード10の電極パッドを示し、外部電源との接続用電極端子などは示されていない。さらに、図6に示される例では、筐体の上面側を閉塞する蓋体2を導電性材料により厚くし蓋体2が空胴共振器8を構成する導電性カバーの機能も兼用するように、金属棒6と同心になるように空胴部2aが形成されている。この蓋体2と空胴共振器8の導電性カバーとを兼用する構成も、この例に限らず、前述の各例に適用することもできる。
【0023】
図7は、本発明のさらに他の実施形態を示す図で、要部のみを示す斜視説明図である。すなわち、図7に示される例は、FET12を用いた発振器に空胴共振器8を応用する例で、FET12のソース端子に、チップ抵抗16を含むバイアス回路が接続されると共に、DCカット用チップコンデンサ13を介して出力端子15が設けられ、FET12のゲート端子に回路パターン5を介して負荷用チップ抵抗14が接続されると共に、回路パターン5と結合するように空胴共振器を構成する金属棒6が設けられている。さらに、FET12のドレイン端子に電源供給端子17が接続されている。空胴共振器を構成する金属棒6は、図1に示される例と同様に、誘電体基板1に設けられる貫通孔内に固定され、図示しない接地導体と接続されると共に、図示しない導電性カバーにより同軸構造とされて帯域阻止フィルタを構成している。
【0024】
FET発振器の発振条件は、図6に示されるガン発振器と同様に、FETが負性抵抗を有し、リアクタンス成分が0の周波数で発振が得られる。FET12から金属棒6側を見た場合、共振周波数付近で反射があり、その周波数から外れた周波数成分は負荷用チップ抵抗14で吸収され、共振周波数近傍でリアクタンス成分は急激に変化し、その部分で発振が得られる。また、共振周波数近傍以外の成分は負荷用チップ抵抗14に吸収され、所望の周波数、すなわち共振周波数以外の周波数成分は負性抵抗を打ち消し、発振しない構成になっている。FETによるこの動作も従来のFETによる発振器と同様であるが、本発明では、誘電体共振器ではなく、平面回路にも拘わらず空胴共振器が用いられていることにより、ガン発振器の場合と同様に、Q値を大きくすることができ、低ノイズの発振器を構成することができる。なお、図7において、筐体、蓋体、導電性カバーなどは省略して図示されていない。
【0025】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、誘電体基板を用いた平面回路でありながら、その誘電体基板上に金属棒を立てて、その周囲に同軸構造を形成するように導電性カバーを設けることにより、半同軸空胴共振器を構成しているため、Q値の大きな空胴共振器を平面回路に具備することができる。その結果、フィルタに応用すれば、急峻な減衰特性を比較的低損失で実現することができ、また、発振器に応用することにより、ノイズ特性の良好な発振器が得られるという格別な効果を奏する。特に、ミリ波などの高周波帯域で用いる場合、誘電体の微細な加工を必要としないので、加工性が向上するという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による平面回路の一実施形態を示す主要部の一部を切り欠いた平面および断面の説明図である。
【図2】本発明による平面回路の他の実施形態を示す図1と同様の説明図である。
【図3】本発明による平面回路の他の実施形態を示す図1と同様の説明図である。
【図4】本発明による平面回路の他の実施形態を示す図1と同様の説明図である。
【図5】本発明による平面回路の他の実施形態を示す横断面および縦断面の説明図である。
【図6】本発明による平面回路の他の実施形態を示す図1と同様の説明図である。
【図7】本発明による平面回路の他の実施形態を示す主要部の斜視説明図である。
【符号の説明】
3 誘電体基板
4 接地導体
5 回路パターン
6 金属棒
7 導電性カバー
8 空胴共振器
Claims (7)
- 誘電体基板と、該誘電体基板の一面側に形成される回路パターンと、該誘電体基板の他面側に設けられる接地導体と、前記回路パターンと電磁気的に結合するように前記誘電体基板の前記一面側に突出する金属棒と、該金属棒の周囲を覆う導電性カバーとを具備し、前記金属棒と前記導電性カバーとの間に半同軸空胴が形成された空胴共振器を有する平面回路。
- 前記空胴共振器が、フィルタを構成する請求項1記載の空胴共振器を有する平面回路。
- 前記回路パターンに発振器が接続され、前記空胴共振器が発振周波数固定用に用いられてなる請求項1記載の空胴共振器を有する平面回路。
- 前記金属棒が前記誘電体基板表面に沿うように折り曲げられてなる請求項1、2または3記載の空胴共振器を有する平面回路。
- 前記金属棒が複数本からなり、該複数本の金属棒が1個の前記導電性カバーにより覆われてなる請求項1、2、3または4記載の空胴共振器を有する平面回路。
- 前記誘電体基板が筐体内に収納され、該誘電体基板の前記一面側に蓋体が設けられ、前記金属棒および導電性カバーが前記蓋体を貫通し、または前記蓋体と前記筐体内に収納されるように設けられてなる請求項1、2、3、4または5記載の空胴共振器を有する平面回路。
- 前記蓋体が導電性材料からなり、前記導電性カバーを兼ねる構造である請求項6記載の空胴共振器を有する平面回路。
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