JP3847854B2 - 自動車用ドアのガードビーム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用ドアのガードビームに関し、特に、アウターパネルとインナーパネルとで構成される自動車用ドアの内部空間に衝突時の乗員保護のための手段として設けられる補強用のガードビームに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車に対する安全性の要求により、衝突時に乗員を保護するための手段として自動車用ドアの内部空間にガードビームと呼ばれる補強材を装着するようにしている。この様なガードビームとしては、軽量化が要求されると共に、側面方向からの衝突に対して乗員を保護するための剛性が必要であり、特に、衝撃に対しては、衝撃エネルギーを吸収する衝撃荷重吸収特性が優れていることが要求される。
【0003】
このような従来の自動車用ガードビームとしては、十分な引張強度を有するよう引張強度が60〜100kgf/mm2 の高張力鋼板を用いて、図8に示すようにスポット溶接により組合せて断面を箱状に形成されたもの(特開平4−208633号公報の図4参照)や、図9に示すように、管状体の両端にパーム部を溶接して形成したもの等が知られている。
【0004】
図8に示すガードビーム10は心材11として3山の凹凸形状にプレス加工したものの両面に、当板12およびパッチ4板13をスポット溶接で溶着接合して箱状に構成したものである。そこで、このように構成されたガードビーム10を心材11の山谷がほぼ水平方向に保たれるようにして自動車用ドアの内部空間に架設することで、衝突時の衝撃力をできるだけ吸収させるようにしている。
【0005】
また、図9に示すガードビーム20はその基体21を引張り強さが100〜180Kgf/mm2 といった高張力鋼あるいは焼入れ鋼からなる管材としたもので、22は基体21の両端部に溶接などで取付けられているパーム部(以下で取付板という)である。なお、図8あるいは図9に示すようなガードビーム10,20は、例えば、図10に示すように自動車用ドア30のインナーパネル31両袖部間に掛け渡す形態でビーム端部がパネル31に溶接されている。32はドア30を構成しているアウターパネルである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図8に示すように箱状に構成されたガードビーム10では、そのスパンの中央部に集中荷重をかけて圧壊試験を行うと、最高荷重に到達した時点で心材11が座屈し、このあと急激に加重が低下するので衝撃吸収特性の点からすると十分でない。
【0007】
また、図9に示す基体21を管材とするものにおいては、基体21の断面が中心対称形状であるために、どの方向からの荷重に対しても同じ破壊条件となるが、基体21と取付板22との間の溶接部を境として断面2次モーメントIおよび断面係数Zが急激に変化し、取付板22の方が変形し易い上、基体21の両端部近傍は衝撃荷重の吸収に比較的関係の無い材料が使われていることになる。また、焼入れを行ったのではガードビーム20自体に反りが発生し易い。
【0008】
本発明の目的は、上述した従来の問題点を解決するために、溶接部がなく、かつ成形が容易で、しかも優れた衝撃荷重吸収特性が得られる廉価な自動車用ドアのガードビームを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明は、底板部と、前記底板部の両縁部のそれぞれから折り曲げられた2つの側板部と、前記2つの側板部のそれぞれの縁部から折り曲げられた2つの支柱板部と、によって、断面がほぼ三角形の山形の部分が2つ並ぶ形状をなすビーム部と、該ビーム部の両端部のそれぞれに位置して、ドア側に固定されるパーム部とを有し、記ビーム部および前記パーム部高張力鋼による1枚のブランク材を折り曲げ加工することにより一体成形され、前記2つの支柱板部は、非溶接状態で対峙することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、外方からの衝撃力がビーム部の頂点部を介して伝達されるが、このビーム部の断面においては、頂点部を中心として支柱板部および側板部が主として衝撃力を分担して、特に頂点部周りと支柱板部とが外部からの衝撃力に対して強い抵抗力を有するように形成されていて、座屈に対しても抗力があり、優れた衝撃荷重吸収特性を保持させることができる。
【0011】
また、ビーム部およびパーム部を高張力鋼板のブランク材を用いて一体成形が可能な構成としたことにより、厚さや寸法等を適切に選択することで、軽量かつ廉価にガードビームを作成することが可能である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細かつ具体的に説明する。
【0013】
図1の(A)は本発明の特徴を最も良く表わす基本的な構成図であり、(B)および(C)は衝撃荷重が本発明ガードビームに伝達される経路を示す。図1の(A)に示すように、本発明によるガードビーム1は薄鋼板から打抜きなどによって切り出されたブランク材を後述するようにして成形加工するだけで得られるものである。成形加工により仕上げられたガードビーム1はその両端部に末広がりの形状をなすパーム部2を有し、パーム部2間のビーム部3はその断面が(B)および(C)に示すように折曲げ加工されている。
【0014】
すなわち、断面の大体の形状はほぼ正三角形型に形成されると共に、ビーム部3の車体外部に向けられる頂点部側から底板部の中心に向けて2枚の板同士が左右から重ね合わされた状態で支柱板部4を形成している。なお、支柱板部4と底板部5との間に連続的に形成される頂点部両側の傾斜部分を以下では側板部6と呼称する。
【0015】
このように構成したガードビーム1では、ドアの外部から(B)に示すように底板部5に対して鉛直方向の衝撃荷重Pが加わった場合、荷重Pはビーム部3で矢印で示すように支柱板部4と側板部6,6とに分散して伝達されることにより応力が集中せず、図4に曲線C1として示すように急激な座屈を生じることなく効果的に衝撃荷重を吸収する効果が得られる。また、図1の(C)に示すように衝撃荷重Pが外部から斜め方向に加わった場合でも、この図に示すようにビーム部2の左半分が主として荷重Pを担持するが、その分力の大半が支柱板部4によって担持されることになり断面全体として衝撃荷重吸収に十分な断面2次モーメントを保たせることができる。
【0016】
ついで、図2に従い、図1に示したようなガードビーム1の成形手順の一例について説明する。
【0017】
まず、図2の(A)に示すように第1雄型7A,第1雌型7Bの間にガードビーム1全体を展開した形状のブランク材を位置決めして、これを中心線100対称のコの字型1Aにプレス加工する。次にこの加工材1Aを(B)に示すように第2雄型7Cおよび第2雌型7DによりほぼW次型1Bにプレス加工する。(C),(D)および(E)は続いて行う曲げ工程であり、(C)の曲げ工程で、まず、押し型7Eにより(A)の工程で得られた湾曲部1AAの折曲角を更に鋭角とすべく押し曲げ加工した上、(D)の曲げ工程で押し型7Fを用いて支柱板部4となる両端部を内側に押込むようにする。(E)の曲げ工程は平板型7Gと押し型7Hとにより更に支柱板部4となる両端部をほぼ対峙すると形状する最終曲げ工程である。
【0018】
かくして(A)〜(E)の工程を経て得られた加工材1Cを(F)のプレス工程で仕上げ状態のビーム部3断面に仕上げるもので、(F)において7Kおよび7Lは仕上げ用の合せ型である。すなわち、合せ型7Kおよび7Lの間に加工材1Cを保持させ加工することにより、図1の(B),(C)に示したような断面のビーム部3を形成仕上げることができる。
【0019】
図3は本発明の他の実施の形態を示す。このうち、(A),(B)に示す実施の形態は両側の側板部6を頂点部で互いに内側に折曲げて形成される支柱板部4Aの端部を底板部5に当接させることなく三角形状をなすビーム内空間に留めるようにしたものである。なお、支柱板部4Aの長さは自在に設定可能であるが、長さが短いほど図4に曲線C2(破線),C3(2点鎖線)として示すように耐えられる最大荷重が低くなるかわりに、その変位点が変位量の高くなる方向に移行する。このことは、ビーム部3が荷重の割りに撓み易いが撓み量の多い時点までビームとして耐えられることを意味する。
【0020】
図5は本発明による自動車用ドアのガードビーム仕上品の一例を示す。すなわち、仕上品としては、例えばこの図に示すようにビーム部3の断面を(B)のように成形すると共に、両側のパーム部2にはプレス加工時に(C)および(D)に示すように凸型の補強ビード9を形成する。更にまた、側板部6の一部を延在させる形で残存させることが望ましい。このように形成することで、パーム部2自体の補強と共に、ビーム部3とパーム部2との間に急激な強度の変化が生じないようにすることができる。
【0021】
なお、両側のパーム部2をドアのインナーパネル31等に取付けるにあったては、従来のようにパーム部端部2Aとインナーパネル31とを複数のスポットウエルドで溶着するか、あるいは、パーム部2に設けたボルト孔2Bを利用してインナーパネル31にボルト締めするか更には双方を併用することも可能である。
【0022】
また、パーム部2の形状やパーム部2に設けられる補強ビード9の形状および形成範囲については図5に示した例に限られるものではない。更にまた、ブランク材自体の強度や厚さ,寸法等については、想定される衝撃荷重に対応すべく適切に設定されればよいことはいうまでもない。
【0023】
更にまた、ビーム部3の成形についても、図2に(A)〜(F)として示した工程に限られるものではなく、どのような絞り込みあるいはプレス工法であってもよく、要は図1ないし図3に示したような均一の断面が長さ方向に対して得られればよい。
【0024】
更にまた、図3の(C)または(D)に示すように、支柱板部4または4Aにおいて、その形成する部分の各下端部を互いに90°外方に向けて折曲げるように形成することで最大荷重を一層高めるようにすることも可能である。
【0025】
図6の(A)は本発明の自動車用ドアのガードビームの第一の発明の実施の形態を示す斜視図で、(B)はその断面図である。図示される様に、本発明の自動車用ドアのガードビーム1は、高張力鋼板から打ち抜き等によって切り出されたブランク材を図示の様に折曲加工して成るもので、両端部に末広がりの形状のパーム部2を有し、これらパーム部2の間に図示の断面形状のビーム部3を有するように折曲加工して形成されている。すなわち、図6の(B)に示される様に、ガードビーム1は2つの三角形状の山形部分が並んだ形の断面と成るように適宜な型を用いて折り曲げて造られる。
【0026】
先ず、図7(A)に示す様に、第1雄型9A、第1雌型9Bの間にガードビーム1全体を展開した形状のブランク材を位置決めして、中心線Aを対称としてコの字型1Aにプレス加工する。次に、この加工材1Aを(B)に示す様に第2雄型9Cおよび第2雌型9DによりほぼW字型1Bにプレス加工する。(C),(D),(E)は続いて行う曲げ工程で、押し型9Eにより(A)の工程で得られた湾曲部1aの折曲角を更に鋭角に押し曲げ加工し、(D)の曲げ工程で押し型9Fを用いて内側板部7と成る両端部を内側に押込むようにする。(E)の曲げ工程は平板型9Gと押し型9Hとにより更に内側板部7となる両端部をほぼ対峙する形状とする最終曲げ工程である。
【0027】
この様にして、(A)〜(E)の工程で得られた加工材1Cを(F)のプレス工程で仕上げ状態のビーム部3の断面に仕上げるもので、(F)において9K,9Lの仕上げ用の合わせ型の間に加工材1Cを保持させて加工することによって、図6の(B)に示した様な断面のビーム部3を形成仕上げることが出来る。
【0028】
この様な本発明の自動車用ドアのガードビーム1は、上述の加工工程によって、高張力鋼板のブランク材を図6(B)の如く断面形状が、2つの三角形状の山形部分が並んだ、所謂双耳峰の形に折曲加工して造られており、底板部4の両側から外側板部5が上方に向かい合う方向に傾斜して延び、中程で内側に折り曲げられて、間隔を置いて位置する2つの頂点部6を形成して、更に、これら頂点部6においてそれぞれ内側に向かって傾めに折り曲げて内側板部7を下方に向かって傾斜するよう延ばして、両方の端部が底板部4付近にて一緒に成り、2つの三角形状の山形部分の間にV字形の窪み8が形成されるよう構成されている。
【0029】
この様に構成されたガードビーム1は、例えば自動車のドアのアウターパネルの内側に、ガードビーム1の底板部4を溶接して取り付けられて頂点部6が内側を向いて、これら頂点部6の間に窪み8が形成されるので、自動車のドアの内部を電着塗装する際に、このガードビーム1 の窪み8をも十分に塗装することが出来、ガードビーム1 の内側部分に未塗装が残る等の不都合が生じることが無く、従って、ガードビーム1が全体的に良好に塗装される。
【0030】
図6の(C)および(D)は本発明の別の実施の形態を示すもので、図6(C)では頂点部6から内側に傾斜して延びる内側板部7の端部が互いに幾分離れていると共に、また底板部4からも幾らか離れており、図6(D)では頂点部6から等しく間隔を置いて互いに平行に延びている。この様に、図6(B)、(C)、(D)に示される如く2つの三角形状の山形部分の間に窪み8が形成されるのが好適であり、従って、電着塗装の際にこの様な窪み8に十分に塗料が塗着されて、未塗装部分を生じることが無く、良好な電着塗装を行うことが出来る。
【0031】
【発明の効果】
以上説明してきたように、断面がほぼ三角形の形状をなし、外方に向けられた前記三角形の頂点部から底板部に向けて延びる支柱板部と、該支柱板部の前記頂点部側を前記底板部の両縁部に連続させる側板部とから成るビーム部と、該ビーム部の両端部にそれぞれドア側に固定支持するためのパーム部とを有し、前記ビーム部は断面が、2つのほぼ三角形状の山形の部分が並んで位置して成り、前記ビーム部および前記パーム部を高張力鋼による1枚のブランク材により加工したので、比較的軽量でしかも十分な耐衝撃荷重吸収力と安定した強度を有し、廉価で得られるガードビームの提供が可能となった。
【0032】
また、ブランク材から溶接工程によらず、プレス加工を主体とする成形が可能なことから溶接熱による反りなどの変形や材料強度の低下をもたらす虞がなく、更にまた、材料の選定やその厚さおよび寸法等を想定衝撃荷重に対応して自在に設定することができる。
【0033】
また、ビーム部が、断面が2つのほぼ三角形状の山形の部分が並んで位置してこれら三角形状の山形の部分の間に窪みが形成されるように折曲して成るので、静電塗装等の電着塗装の際に塗料が山形部分の間の窪みに良好に塗着して未塗装部分を生じる様なことが無く、好適に塗装を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるガードビームの基本的構成例を全体の斜視図(A)、ビーム部の断面(B),(C)によって示す説明図である。
【図2】本発明によるガードビームの成形手順を(A)〜(F)の工程別に従ってビーム断面で示す説明図である。
【図3】本発明の他の実施の形態によるビーム部の構成を(A),(B),(C),(D)の4形態で示す断面図である。
【図4】本発明による荷重一変位の関係を示す特性曲線図である。
【図5】本発明にかかる仕上製品の詳細を全体の斜視図(A)、(A)のX−X線断面図(B)、(A)のY−Y線断面図(C)および(A)のZ−Z線断面図(D)によって示す説明図である。
【図6】本発明の自動車用ドアのガードビームを示す図で、(A)は斜視図で、(B)は(A)のX−X線に沿った断面図で、(C),(D)は別の実施の形態の断面図である。
【図7】本発明の自動車用ドアの成形手順を(A)〜(F)の工程別に従ってビーム断面で示す断面図である。
【図8】従来例による主要部分の構成を示す斜視図である。
【図9】他の従来例に依る構成を示す斜視図である。
【図10】従来例によるガードビームのドア内への取付状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ガードビーム
1A,1B (プレス)加工材
1AA 湾曲部
2 パーム部
2A パーム部端部
3 ビーム部
4,4A 支柱板部
5 底板部
6 側板部
7A 第1雄型
7B 第1雌型
7C 第2雄型
7D 第2雌型
7E 押し型
7F 押し型
7G 平板型
7H 押し型
7K 合せ型
7L 合せ型
9 補強ビード

Claims (5)

  1. 底板部と、前記底板部の両縁部のそれぞれから折り曲げられた2つの側板部と、前記2つの側板部のそれぞれの縁部から折り曲げられた2つの支柱板部と、によって、断面がほぼ三角形の山形の部分が2つ並ぶ形状をなすビーム部と、
    該ビーム部の両端部のそれぞれに位置して、ドア側に固定されるパーム部と
    を有し、
    記ビーム部および前記パーム部高張力鋼による1枚のブランク材を折り曲げ加工することにより一体成形され、
    前記2つの支柱板部は、非溶接状態で対峙することを特徴とする自動車用ドアのガードビーム。
  2. 前記2つの支柱板部の前記底板部側の端部は前記底板部に当接することを特徴とする請求項1に記載の自動車用ドアのガードビーム。
  3. 前記2つの三角形の山形の部分の間に窪みが形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車用ドアのガードビーム。
  4. 前記2つの支柱板部の端部は、前記底板部に向かって互いに収斂する方向に延びたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の自動車用ドアのガードビーム。
  5. 前記2つの支柱板部は、それぞれの間に等しい間隔を置いた状態で、前記底板部に向けて平行に延びたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の自動車用ドアのガードビーム。
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