JP3847351B2 - 間葉系細胞の増殖拮抗阻害剤 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、間葉系細胞の増殖拮抗阻害剤とこれを用いた膠原病の治療方法に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、特に、細胞増殖の引き金となるC−fosタンパクの遺伝子への結合を抑制し、リウマチの発症を防ぐのに有用な新しい治療剤とこれを用いた治療方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
従来より、身体の結合組織の炎症を主病変とする疾患群を意味する膠原病は、全世界的にその病因の解明と治療が難しい難病として知られている。
この膠原病には、慢性関節リウマチ、リウマチ熱、多発生筋炎、強皮症等が含まれるものと考えられてもいる。
【0003】
全世界的に多くの研究が進められているものの、いまだに治療のための有効な手段が見出されていない現状にある。
たとえば慢性関節リウマチ(RA)は人口の0.3%という多い罹患率であるにもかかわらず、その病因は未だ不明な、難病のひとつである。また、その治療も経験的な域を脱していないと言わねばならない程、これといった著効を示す治療薬が開発されていないのが現状である。このような現状は、現在の治療薬の開発が、必ずしも最先端の病因研究の成果を正しく踏まえてなされていないことにその原因の一端があるように思われる。
【0004】
慢性関節リウマチは、各種の炎症性物質により関節の滑膜細胞の増殖が異常に亢進して関節を破壊するものであるが、従来の治療薬はこれら炎症物質(インターロイキン−1,血管接着因子)等の阻害という観点より研究・開発が行なわれてきたが、有効なものは得られていない。
ただ、これまでの研究により、慢性関節リウマチは、関節の炎症から関節の破壊、そして関節変形を示すものであり、病因は不明であるが、次のことが病態として明らかになっている。
【0005】
(1)何らかの抗原(細菌やウイルス)が関節に到達して、関節の炎症を惹起する。
(2)関節炎が慢性化する。
(3)関節破壊に至る。
そして、(2)の慢性化の原因は、関節の滑膜細胞の異常な増殖亢進にある。
【0006】
また、滑膜増殖の原因は滑膜細胞を刺激する物質(サイトカインなど)が増えていることと密接に関連していると考えられている。
現代のリウマチの病因研究と他の治療薬開発研究の中で位置付けてみると、慢性関節リウマチは、まず血中より関節滑膜に到達した未知の病原因子によって局所での免疫反応が開始され、ついで血中よりマクロファージ、T細胞、B細胞、好中球等が流入して複雑な慢性炎症が展開し、最後に関節破壊に至ると想定される。この過程に関与する重要な因子としては、まず抗原に対する特異応答の免疫記憶を担うT細胞とその支配下にあるB細胞といった特異的な認識系のほか、慢性炎症に広く関わるサイトカイン・接着分子、自己抗体(リウマチ因子)、蛋白分解酵素などの非特異的な系があり、従来の研究はこれらを抑制すべく展開されてきた。特に、最近ではサイトカインと接着分子の作用を抑制すべく世界の研究者が競合している。現在の研究から、確かにT細胞を中心とした免疫応答系は慢性間接リウマチの病因の重要な部分であろうが、少なくとも関節破壊に『直接』関わるのは、いわば非特異的な滑膜間葉系細胞であることが確実になってきている。
【0007】
この間葉系細胞への着目は、慢性関節リウマチだけでなく、膠原病そのものへの視点として注目されることである。
しかしながら、研究としては進展してはいるものの、残念ながら、いまだに慢性関節リウマチをはじめとする膠原病については、その有効な治療剤と治療方法が実現されていないのが実情である。
【0008】
そこで、この発明は、以上の通りの従来技術の限界を克服し、慢性関節リウマチをはじめとする膠原病の治療に有効な新しい治療剤とこれを用いた治療方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の課題を解決するものとして、遺伝子発現プロモーターを構成するTGAGTCAまたはTGACTCAからなるAP−1ヌクレオチドを含有することを特徴とする間葉系細胞の増殖阻害剤を提供する。
また、この発明は、前記の増殖阻害剤からなる膠原病治療薬、さらに具体的には膠原病が慢性関節リウマチである膠原病治療薬を提供する。
【0010】
【作用】
上記のこの発明は、基本的には、滑膜間葉系細胞を抑制することによって関節破壊等の病因の発現を防ごうとするものである。すなわち、たとえば慢性関節リウマチについては、T細胞応答の正確であっても、複雑な薮の中に入り込まず、直接関節破壊に責任のある滑膜間葉系細胞を抑制することによって治療を達成しようとするものである。このような考え方は、この発明の発明者による病因研究の結果を踏まえた独自のものであり、現在のところ世界に例のないものである。
【0011】
さらに詳しく説明すると、慢性関節リウマチの関節病変には、免疫記憶を担う応答系の中心であるT細胞と、関節破壊に『直接』関与する滑膜間葉系細胞(Shiozawa et al. Ann. Rheum. Dis.51:869,1992)の二つが基本的に重要である。後者はパンヌスの主要構成要素であり、慢性関節リウマチの滑膜病変で重要なIL1、IL6、TNFαなどのサイトカインを産生する(Shiozawaet al. Sem. Arthritis Rheum.21:267,1992)。パンヌスは一見腫瘍を思わせる増殖能を有するが、実際に、protooncogene のc−fos遺伝子をH−2 promoter の下流域に組み換えて作成したH2−c−fos transgenic mice に実験関節炎(antigen-induced arthritis) を惹起すると、リンパ球の局所への浸潤なしに、滑膜間葉系細胞のみによる関節破壊が誘導される(Shiozawa et al. J.Immunol.148:3100,1992)。c−fos遺伝子は滑膜細胞に特有の形態変化(dendritic cellから fibroblastic cellへの変換)と増殖能を付与する(Kuroki, Shiozawa et al. J.Rheumatol.20:422,1993)。また、このc−fos遺伝子は慢性関節リウマチ滑膜に多量表出されており、骨芽細胞にtransfection法によりヒトc−fos遺伝子を持続発現せしめると、I型collagenの合成およびmRNA発現が抑制される(Kuroki, Shiozawa et al. BBRC182:1389,1992)。
【0012】
このようなことは、c−fos遺伝子の過剰発現が、滑膜間葉系細胞の増殖を刺激して『直接』関節破壊に関わるのみならず、慢性関節リウマチの骨粗鬆症の原因としても関与し得る可能性を示唆している。
この発明は、このように、c−fos遺伝子が間葉系細胞を特に活性化するとの知見を踏まえ、その作用機序についての検討を踏まえてなされたものである。
【0013】
すなわち、c−fos蛋白は、慢性関節リウマチ発症遺伝子のプロモーターのAP−1部位に作用して遺伝子発現を調整することを前提としている。このプロモーターは、次式
【0014】
【化1】
【0015】
の構造を有し、AP−1部位は、このうちの下線部で示したTGAGTCAを意味している。DNAは2本鎖であるが、蛋白質の合成に際しては片方だけが読まれ、この両方にc−fos蛋白質複合体が結合する。
そこで、この発明では、上記の通りの遺伝子発現プロモーターを構成するTGAGTCAまたはTGACTCAからなるAP−1ヌクレオチドを間葉系細胞増殖の拮抗阻害剤とする。
【0016】
このことにより、慢性関節リウマチ等の発現は極めて有効に抑えられることになる。もちろん上記AP−1ヌクレオチドは、各種の他の付加要件と組合せて使用してもよい。
以下、実施例を示し、さらに詳しくこの発明について説明する。
【0017】
【実施例】
DBA1/J male mice皮下にFCAと共に200μgのII型コラーゲンを3週間間隔で2回免疫し、初回免疫後2週間後から週2回の割りで、一回5μgの2本鎖AP1ヌクレオチドを腹腔内に投与した。対照には非特異2本鎖ヌクレオチドを用い、第2回免疫終了後3週間目に足関節の病理組織学的検索を行った。
【0018】
その結果、Foot padの肥厚(>3.7mm)は実験群で6/14例(43%)、対照群で12/16例(75%)。組織学的に著明な炎症細胞浸潤を認めた例が実験群で7/14例(50%)、対照群で8/16例(50%)。傷害のない関節面を有した例が実験群で12/14例(86%)、対照群で2/16例(13%)であった。また、マウスの体重の変動は実験の前後で、実験群151%、対照群144%と両者間に差を認めなかった。また、in vitroの滑膜培養系において、投与されたAP−1は、AP−1サイトを介して作動する interleukin−1などの発現系を抑制したが、AP−1を介さない遺伝子発現系へは作用せず、その特異性が確認された。
【0019】
以上の結果から明らかなように、投与されたAP−1ヌクレオチドは、マウスのコラーゲンの関節炎における関節破壊を有意に抑制した。関節破壊の有意の抑制に対して、関節局所への炎症細胞浸潤の程度は両者で差がなかった。この結果は、関節炎においては浸潤してくる炎症細胞が必ずしも関節破壊に直接関与するものではないことを示しており、先のH2−c−fos transgenic miceでの関節破壊における滑膜間葉系細胞の役割りの結果と符合していて興味深い。
【0020】
【発明の効果】
以上詳しく説明した通り、この発明によって、膠原病、特に、慢性関節リウマチの治療が可能となり、臨床応用への期待は大きなものとなる。慢性関節リウマチの病因機序の解明や他の慢性炎症性疾患、あるいは間葉系細胞の増殖が病態に重要であるところの難治性疾患の病因解明と治療への応用が期待される。
Claims (3)
- 遺伝子発現プロモーターを構成するTGAGTCAまたはTGACTCAからなるAP−1ヌクレオチドを含有することを特徴とする間葉系細胞の増殖阻害剤。
- 請求項1に記載の増殖阻害剤からなる膠原病治療薬。
- 膠原病が慢性関節リウマチである請求項2に記載の膠原病治療薬。
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