JP3846110B2 - ディーゼル機関の触媒式排気浄化装置 - Google Patents

ディーゼル機関の触媒式排気浄化装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディーゼル機関の排気ガス中に含まれるNOxを還元分解するディーゼル機関の触媒式排気浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
本出願人は以前、軽油を還元剤とする銅ゼオライト系のNOx触媒を用い、ディーゼル機関の排気ガス中に含まれるNOxを浄化する装置を提案した(特開平4-330314号公報)。
【0003】
しかし、軽油を還元剤とした場合は、せいぜい20%程度のNOx低減率しか得られなかった。
【0004】
これに対し、還元剤に尿素を用いると、特定温度域では60%以上もの高いNOx低減率が得られることが分かった。よってこれの実用化に向けて現在開発が推進されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、還元剤に尿素を用いると、添加量過多の場合にアンモニアが外部に排出されたり、触媒が活性温度域から外れてしまった場合に尿素が外部に排出されたりして、刺激臭が発生するという問題がある。従って、尿素の添加量を厳密に管理することが実用化の上で極めて重要となっている。
【0006】
これに対し、実公平7-12660 号公報では、触媒の下流側に尿素濃度センサを設け、その検出濃度に応じて尿素供給量をフィードバック制御している。しかし、実際のエンジン運転状態が絶えず変化しているため、フィードバック制御だと制御遅れが大きく、過渡運転時等に供給量と実際のエンジン運転状態とがマッチせず、かえって逆効果となる場合がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るディーゼル機関の触媒式排気浄化装置は、ディーゼル機関の排気経路に設けられたNOx触媒と、このNOx触媒の上流側の排気経路中に還元剤を供給する供給手段と、その還元剤供給量を予め記憶しておいた所定のマップに基づきフィードフォワード制御する供給量制御手段とを備え、上記マップが、SV値毎に作成され、排気温度に応じたNOx低減率が予め記憶された複数の第1のマップと、NOx濃度毎に作成され、NOx低減率に応じた還元剤供給量が予め記憶された複数の第2のマップとを含み、上記供給量制御手段は、現在のSV値に対応する上記第1のマップに、現在の排気温度を入力してNOx低減率を求め、現在のNOx触媒上流側のNOx濃度に対応する上記第2のマップに、上記第1のマップを用いて求めたNOx低減率を入力して還元剤供給量を求めるものである。
【0008】
これにおいては、還元剤供給量を所定のマップ(第1及び第2のマップ)に基づきフィードフォワード制御するため、制御遅れを改善し、エンジン過渡時等においても高応答の供給量制御を実現できる。また、排気温度及びSV値に応じたNOx低減率を踏まえた還元剤供給量となるため、還元剤の過剰供給を確実に防止し、尿素やアンモニア等の還元剤排出を確実に防止することができる。
【0009】
ここで、上記還元剤が尿素又はアンモニアを含むものであるのが好ましい。
【0011】
また、上記供給手段による還元剤供給の際に還元剤を霧化するための超音波振動手段と、この超音波振動手段の振動数を予め記憶しておいた第3のマップに基づき制御する振動数制御手段とをさらに備え、上記第3のマップが、現在の排気温度に基づき上記振動数を求めるものであるのが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0013】
図7は車両等に搭載されるディーゼルエンジン1の排気系2を示す。図示するように、排気管路3の一部が拡径されて触媒室4が形成されており、そこにNOx触媒5が設けられている。NOx触媒5はいわゆる選択還元触媒(SCR触媒)で、還元雰囲中でNOxを還元処理できるようになっている。このNOx触媒5の活性成分はTiO2 /SiO2 /V2 5 である。NOx触媒5の上流側の排気経路に供給手段7、NOxセンサ6及び排気温センサ22が上流側から順に設けられている。NOxセンサ6は排気ガス中のNOx濃度を検出するためのもの、排気温センサ22は排気温度を検出するためのものである。
【0014】
図8に示すように、供給手段7はインジェクタ9からなり、インジェクタ9は排気経路内に向けて還元剤としての尿素を噴射供給する。ただしここでは超音波振動手段としての超音波振動噴射弁8が併用され、インジェクタ9から噴射された直後の尿素を超音波振動により霧化して排気経路内にスプレーするようになっている。なお、ここでいう尿素とは一定濃度に希釈された尿素水溶液を意味する。ここでの尿素と水の比率は35:65である。
【0015】
インジェクタ9には、ポンプ10によって尿素タンク11から汲み出された尿素が、流量計12および尿素分配管13を経由して供給されるようになっている。図中14は、インジェクタ9への燃圧を所定値に保つ調圧弁であり、余った尿素は返却管15を介して尿素タンク11へ戻されるようになっている。インジェクタ9は、インジェクタドライブユニット16から電力供給を受けて開閉されるようになっている。他方、超音波振動噴射弁8は、スリーブ17とそのスリーブ17内を超音波振動する振動子18とからなっている。この振動子18は、その上端が超音波トランスデューザ19に接続されており、トランスデューザ19の振動に伴って超音波振動するようになっている。超音波トランスデューザ19は超音波ジェネレータ20から電力供給を受け、電流値の変動に合わせて振動する。
【0016】
図7に示すように、エンジン1の吸気マニホールドの入口部に空気量センサ23が設けられる。空気量センサ23はエンジン1に吸い込まれる吸気流量を検出するためのもので、エアフローメータで構成されている。
【0017】
NOxセンサ6、排気温センサ22、空気量センサ23、インジェクタドライブユニット16及び超音波トランスデューザ19がコントロールユニット21に接続される。コントロールユニット21は後述の手順に従ってインジェクタ9の尿素噴射量と超音波振動噴射弁8の振動数とを制御する。
【0018】
図1はコントロールユニット21が実行する尿素噴射量制御及び振動数制御のフローチャートである。この制御は一定時間間隔毎に行われる。コントロールユニット21は図2〜図4に示すマップ1〜3(第1乃至第3のマップ)を予め記憶している。これらマップ1〜3は実機試験等により作成される。
【0019】
まず、コントロールユニット21は、ステップ101で、空気量センサ23の出力に基づきエンジン1の吸気流量QAIR を、排気温センサ22の出力に基づきNOx触媒5入口側の排気温度Texを、NOxセンサ6の出力に基づきNOx触媒5入口側のNOx濃度NOxinを、それぞれ計算して読み込む。次に、ステップ102で、QAIR の値からSV値を計算した後、図2に示す三次元マップ1から、SV値とTexとの値に基づき目標とするNOx低減率RNOx を読み取る。
【0020】
次に、ステップ103で、このNOx低減率RNOx とNOxinとの値に基づき、図3に示す三次元マップ2から、目標とする尿素供給量Qureaを読み取る。この後ステップ104で、図4に示す二次元マップ3から、Texの値に基づき超音波振動噴射弁8の目標振動数Zinj を読み取る。
【0021】
こうして目標尿素供給量Qureaと目標振動数Zinj とを求めたならば、次のステップ105でQureaとZinj とに見合う信号をそれぞれインジェクタドライブユニット16と超音波トランスデューザ19とに送出する。こうすればインジェクタ9がその尿素供給量Qureaの尿素を噴射し、超音波振動噴射弁8がその振動数Zinj で振動し、現在のエンジン運転状態における最適な尿素供給及び振動を行えるのである。
【0022】
このように、本装置ではコントロールユニット21が本発明にいう供給量制御手段及び振動数制御手段を構成している。
【0023】
上記において、SVとはスペースヴェロシティ(Space Velocity)の略語で、SV値とはエンジン1の排気流量をNOx触媒5の容積(一定値)で除した値ないし比である。ここでは排気流量を吸気流量QAIR に等しいとみなしてSV値の計算を行っている。例えばSV=30000 はエンジンの通常運転時、SV=60000 はエンジンの高速運転時の値である。マップ1は例えばSV=10000 毎に作成される。特に、吸気流量QAIR を空気量センサ23で直接測定して排気流量としているので、排気流量をエンジン回転速度から計算で間接的に求める実公平7-12660 号公報より高精度の値が得られる。
【0024】
NOx低減率とは、NOx触媒5の入口側のNOx濃度を出口側のNOx濃度で除した値ないし比である。図5及び図6に示すように、NOx低減率、排気温度及びSV値には一定の相関関係があり、NOx低減率は排気温度及びSV値に依存する。従って、マップ1は、現在のSV値及び排気ガス温度Texに基づきRNOx を求めるものとなっている。
【0025】
こうして目標とするRNOx が分かり、NOx触媒入口側のNOx濃度NOxinが分かると、マップ2により目標尿素供給量Qureaが一義的に決まる。即ち、一定量のNOxに対し、これを消失させるのに必要な尿素量はこれらの当量比によって定まる。RNOx が一定でも、NOxinの値に応じて消失させるべきNOx量が変化するので、これに応じて必要な尿素量も変わる。マップ2は、この必要な尿素量を予め実験等で求めたものである。マップ2を用いることにより、RNOx とNOxinとの値から最適なQureaを一義的に求めることができる。これにより実際のエンジン運転状態に即した正確な尿素供給量を容易に得ることが可能となる。なお、マップ2は所定のNOxin毎に作成されている。
【0026】
一方、排気温度の高低に応じて尿素の蒸発速度が変わるため、ここでは排気温度に応じて超音波振動噴射弁8の振動数を変え、尿素の霧化状態を変化させるようにしている。具体的には、マップ3の如く、排気ガス温度Texが低いほど振動数Zinj を高くし、霧化を促進して蒸発を容易にしている。これにより低温時でも確実に触媒での反応を行える。なお霧化する排気ガス温度域は 100〜800 ℃で、ほぼ全域である。振動数は20〜2000kHz の範囲で変化させるようにしている。
【0027】
このように、本装置では、還元剤としての尿素の供給量を、実機試験等で作成されたマップ1,2に基づき、フィードフォワード制御ないしオープン制御するため、制御遅れを改善し、エンジン過渡時等においても高応答の供給量制御を実現できる。また過剰量の供給が確実に防止され、尿素やアンモニア排出による刺激臭発生の問題も確実に解消できる。特にパラメータとして排気温度Texを用い、触媒が活性温度域外となるような排気温度のときは尿素の供給を中止し、尿素の排出を防止している。
【0028】
本装置では温度パラメータとして触媒入口側の排気温度Texを用いている。これに対し、実公平7-12660 号公報では触媒温度を直接測定し、これを温度パラメータに用いている。後者だと、触媒の反応温度が加味されてしまい、パラメータとしての正確性、再現性が期待し難い。前者ではそのようなことがないため、本装置は従来装置より有利といえる。
【0029】
一方、本装置では超音波振動噴射弁8で尿素を霧化して噴射している。またその噴射方向も排気経路長手方向と直交する方向としている。これにより尿素を排気ガス中に均一に混合させられ、NOx触媒5に対する尿素の分布も均一となり、触媒中での局部的反応を防止できる。なお、実公平7-12660 号公報ではNOx触媒の中心部に向けてノズルから還元剤を噴射するため、中心部の濃度が濃くなり、局部的反応となってしまう。本装置はこれを防止し、触媒全体で効率よく還元反応を行える。
【0030】
なお、本装置ではNOxセンサ6を供給手段7の下流側に位置付け、できるだけ下流側として排気ガスの熱からセンサを保護すると共に、尿素による冷却をも行い、さらなる熱的保護を図っている。
【0031】
以上、本発明の実施の形態は上述のものに限られない。例えば還元剤は実公平7-12660 号公報と同様にアンモニアを含むものとすることもできる。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、尿素やアンモニア排出による刺激臭発生の問題を確実に解消できると共に、制御遅れを改善し、エンジン過渡時等においても高応答の還元剤供給量制御を実現できるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る触媒式排気浄化装置の制御内容を示すフローチャートである。
【図2】マップ1を示す図である。
【図3】マップ2を示す図である。
【図4】マップ3を示す図である。
【図5】排気温度とNOx低減率との関係を示すグラフで、SV値が低いときのものである。
【図6】排気温度とNOx低減率との関係を示すグラフで、SV値が高いときのものである。
【図7】本発明に係る触媒式排気浄化装置の全体構成図である。
【図8】供給手段の構成図である。
【符号の説明】
1 ディーゼルエンジン
3 排気管路
5 NOx触媒
6 NOxセンサ
7 供給手段
8 超音波振動噴射弁
9 インジェクタ
21 コントロールユニット
22 排気温センサ
NOxin NOX 濃度
Qurea 尿素供給量
RNOx NOX 低減率
Tex 排気温度
Zinj 振動数

Claims (3)

  1. ディーゼル機関の排気経路に設けられたNOx触媒と、該NOx触媒の上流側の排気経路中に還元剤を供給する供給手段と、その還元剤供給量を予め記憶しておいた所定のマップに基づきフィードフォワード制御する供給量制御手段とを備え
    上記マップが、SV値毎に作成され、排気温度に応じたNOx低減率が予め記憶された複数の第1のマップと、NOx濃度毎に作成され、NOx低減率に応じた還元剤供給量が予め記憶された複数の第2のマップとを含み、
    上記供給量制御手段は、現在のSV値に対応する上記第1のマップに、現在の排気温度を入力してNOx低減率を求め、現在のNOx触媒上流側のNOx濃度に対応する上記第2のマップに、上記第1のマップを用いて求めたNOx低減率を入力して還元剤供給量を求めることを特徴とするディーゼル機関の触媒式排気浄化装置。
  2. 上記還元剤が尿素又はアンモニアを含むものである請求項1記載のディーゼル機関の触媒式排気浄化装置。
  3. 上記供給手段による還元剤供給の際に還元剤を霧化するための超音波振動手段と、該超音波振動手段の振動数を予め記憶しておいた第3のマップに基づき制御する振動数制御手段とをさらに備え、上記第3のマップが、現在の排気温度に基づき上記振動数を求めるものである請求項1又は2記載のディーゼル機関の触媒式排気浄化装置。
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