以下、この発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、東京、大阪、福岡、新潟の4地点に無線設備101〜104が配置され、この無線設備101〜104が全二重の4系列の固定帯域伝送路100(100W、100X、100Y、100Z)からなる無線伝送路がリング状(ループ状)に形成された無線伝送システム110を示している。
実際上、東京と大阪間、大阪と福岡間、福岡と新潟間、新潟と東京間には、それぞれ中継局としての1又は複数の無線設備が配置されているが、この発明の理解上繁雑となるので省略している。
ここで、各無線設備101〜104は、それぞれ、伝送制御装置120を有している。この伝送制御装置120は、複数の端末6と、右回り用無線装置34aと、左回り用無線装置34bとに接続されている。
図2は、図1例の無線伝送システム110において、伝送制御装置120の構成を詳しく、かつ東京の無線設備101を中央に描いたブロック図を示している。伝送制御装置120は、それぞれ、無線装置34a、34に一端が接続される伝送帯域自動切替制御装置(単に、帯域自動切替制御装置ともいう。)30a、30bと、この帯域自動切替制御装置30a、30bの他端に一端が接続されるスイッチ(レイヤ2スイッチ)18と、このスイッチ18の他端に一端が接続されるLANインタフェース17とを備える。
図3は、図2中、代表例として、東京の無線設備101の右回り用無線装置34aをA局とし、大阪の無線設備102の左回り用無線装置34bをB局とした場合の、帯域自動切替制御装置30a、30bが組み込まれたマイクロ波多重無線システム32の構成を抜き出して描いている。大阪の無線設備102と福岡の無線設備103、福岡の無線設備103と新潟の無線設備104、新潟の無線設備104と東京の無線設備101も同じ構成のマイクロ波多重無線システム32とされている。
図3に示すように、マイクロ波多重無線システム32は、A局の無線装置34aとB局の無線装置34b間で、例えば6.312[Mbps]×4≒25[Mbps]の情報をマイクロ波多重の無線で双方向通信可能な固定帯域伝送路(空間伝送路)100の構成とされている。すなわち、このマイクロ波多重無線システム32は、伝送帯域が上り下りともに6.312[Mbps]の4系列(CH1〜CH4)からなる全二重の固定帯域伝送路100を利用する通信システムである。後述するように、伝送路100中、A局からB局への各伝送路を伝送路AB(CH♯:♯=1〜4)で表し、B局からA局への各伝送路を伝送路BA(CH♯:♯=1〜4)で表す。
なお、6.312[Mbps]は、例であり、これに代えて、1.544[Mbps]、32.064[Mbps]、97.728[Mbps]、2.048[Mbps]、8.448[Mbps]、34.368[Mbps]、51.840[Mbps]、155.520[Mbps]等とすることができる。
ここで、双方向通信可能な固定帯域伝送路(空間伝送路)100は、図4に示すように、無線装置34a、34bを、多重化装置34c、34dに代替することで、有線伝送路であるメタリックケーブル(又は光ファイバケーブル)100Mを用いる有線多重伝送システム32Mに代替することが可能である。
再び、図2、図3において、A局側及びB局側には、それぞれ、固有のIPアドレスとMAC(Media Access Control)アドレスを有するパーソナルコンピュータ、IP電話、サーバ、MPEG2エンコーダ内蔵のカメラ、MPEG2デコーダ内蔵のモニタ等の6台の端末6a、6bが配置される。なお、図2、図3において、端末6a、6bの数は、それぞれ6台の端末としているが、数は任意である。
端末6a、6bは、LANインタフェース17a、17b、スイッチ18a、18b及び帯域自動切替制御装置30a、30bを介して無線装置34a、34bに接続される。ここで、スイッチ18a、18bは、データリンク層(レイヤ2)で動作し、内部にアドレステーブルを備え、パケットの送信先アドレスを内部のアドレステーブルと照らし合わせ、送信先の端末6a、6bがつながっているポートにのみパケットを送出する機能を有する。また、帯域自動切替制御装置30a、30bからスイッチ18a、18bに対して、迂回制御信号(迂回指示信号)Sdtが供給される。
スイッチ18a、18bは、端末6a、6bからのLANデータがLANインタフェース17a、17bを介して入力されたシリアルデータを帯域自動切替制御装置30a、30bに供給するとともに、帯域自動切替制御装置30a、30bから供給される対局(対向局)からのシリアルデータをLANインタフェース17a、17bを介してLANデータとして端末6a、6bに供給する。なお、スイッチ18a、18bと帯域自動切替制御装置30a、30bとの間では上下ともに6.312[Mbps]×4=25.248[Mbps]のシリアルデータが転送される。
ここで、LANデータは、100BASE−TXのLANデータ以外に、10BASE−Tあるいは1000BASE−T等のLANデータに対しても適用できることはいうまでもない。
無線装置34a、34bは、周知のように、基本的には、変調部、周波数変換部、電力増幅部、送信アンテナを含む送信部と、低雑音増幅部、周波数変換部、復調部、受信アンテナ(送信アンテナと共用される場合もある。)を含む受信部とから構成される。
図5は、図3中のA局における帯域自動切替制御装置30aの詳細な構成を示している。
図6は、図3中のB局における帯域自動切替制御装置30bの詳細な構成を示している。
それぞれの帯域自動切替制御装置30aと30bとは同一の構成を有している。そこで、繁雑さを回避するために、図3に示す帯域自動切替制御装置30aの構成を中心に説明する。
帯域自動切替制御装置30aは、一端がスイッチ18a、LANインタフェース17aを経由して端末6aに接続され、他端が伝送帯域6.312[Mbps]の4系列からなる全二重の固定帯域伝送路100に接続される無線装置34a(34b)の送信ポート(送信入力ポート)51as〜54as及び受信ポート(受信出力ポート)51ar〜54arに接続される。なお、図5、図6においては、理解の容易化・繁雑さの回避のために、無線装置34a、34bを省略して描いている。
図5及び図6から分かるように、A局からB局へ向かう固定帯域伝送路100には、第1〜第4系列の伝送路AB(CH1)〜AB(CH4)が存在し、B局からA局へ向かう固定帯域伝送路100には、第1〜第4系列の伝送路BA(CH1)〜BA(CH4)が存在する。
これら第1〜第4系列の各系列のリンク状態が正常であるかどうかを検出するために、換言すれば、A局の無線装置34aとB局の無線装置34bの各系列が正常な交信状態となっているかどうかの接続状態を検出するために、リンク検出部として機能する受信処理部71a〜74a、71b〜74bが設けられている。
そして、後述するように、例えば受信処理部71a〜74aにより、上記の第1〜第4系列の中、ある系列のリンク状態を断と検出する。このときに、その断と検出された系列の伝送路100での伝送を停止し、系列の数を自動的に1だけ減じて伝送を行わせるための帯域自動切替制御部としての、送信側のメモリリード制御回路93aとポートセレクタ91aと伝送帯域の制御情報発生部81aと送信処理部61a〜64aが設けられ、かつ受信側のメモリライト制御回路94aとポートセレクタ92aと受信処理部71a〜74aが設けられている。
なお、伝送帯域の制御情報発生部81aには、さらに、送信バッファ42bに現在蓄積されているデータ容量を示すデータ容量信号Sdcが供給される。伝送帯域の制御情報発生部81aは、第1〜第4系列の全ての系列のリンク状態が断とされた場合、あるいは系列数が減ったことにより送信バッファ42bのメモリオーバーフローが発生する可能性があると判断した場合には、データ伝送の迂回制御信号Sdtを「通常伝送(非迂回):0」から「迂回伝送:1」として、スイッチ18aに供給する。
ここで、この実施形態の無線伝送システム110においては、基本的に、データ伝送は、ある無線設備から送信されるデータの宛先が隣接する無線設備の端末である場合には、直接、隣接する無線設備に無線伝送するための無線伝送路100を利用するルートが通常伝送(非迂回)路とされるが、東京と大阪の無線設備101、102間のトラフィックが大きいことを考慮して、東京と福岡の無線設備101、103との間では、新潟の無線設備104を経由するルートが通常伝送路とされ、大阪と新潟の無線設備102、104との間では、福岡の無線設備103を経由するルートが通常伝送路とされている。この通常伝送路、迂回伝送路の区別は、各無線設備101〜104中のスイッチ18により制御される。
従って、例えば、東京の無線設備101で上述した迂回制御信号Sdtが「迂回伝送:1」となった場合には、この迂回制御信号Sdtを受け取ったスイッチ18は、大阪の無線設備102の端末を宛先とするデータを右回りではなく左回りに新潟の無線設備104及び福岡の無線設備103を経由して、大阪の無線設備102にデータを伝送するための制御を行う。
図7は、各系列の伝送路AB(CH♯)、BA(CH♯)で伝送される多重化データである伝送フレーム(無線伝送フレーム)200の構成例を示している。
この伝送フレーム200は、4個のフレームF1〜F4からなるマルチフレームMFの構成とされ、このマルチフレームMF単位で繰り返し送受信される。1フレームは、それぞれがD0〜D7の8ビットの98個のタイムスロットTSと、D0〜D4の5ビットのフレーム情報EFとからなる789ビットのデータにより構成される。1フレームの時間が125[μs]であるので、伝送帯域は、789[bit]/125[μs]=6.312[Mbps]になる。1マルチフレームMFの時間は、1フレームの時間の4倍の時間0.5(=0.125×4)[ms]である。
図示していないフレームタイミング発生器により、1フレーム毎のフレームタイミングFTMと、マルチフレームMF毎のフレームタイミングMFTMが発生され、フレームタイミングFTMとして送信処理部61a〜64a及びメモリリード制御回路93a等必要な箇所に供給される。
図7において、タイムスロットTS中、タイムスロットTS1〜TS96には、端末6a、6bからのIP(Internet Protocol)データ等が挿入され、タイムスロットTS97、TS98には伝送帯域の制御情報発生部81aからの伝送帯域制御情報が挿入される。さらに、各1フレームの末尾部分には、対局警報信号(S)、CRCチェック情報、フレーム同期情報を含むフレーム情報EFが挿入される。
図8に例として示すタイムスロットTS97、TS98の各ビットは、ビットD0が第1系列の伝送路AB(CH1)、BA(CH1)の伝送ポート(51as、51br)、(51bs、51ar)の割当に対応し、ビットD1が第2系列の伝送路AB(CH2)、BA(CH2)の伝送ポート(52as、52br)、(52bs、52ar)割当に対応し、ビットD2が第3系列の伝送路AB(CH3)、BA(CH3)の伝送ポート(53as、53br)、(53bs、53ar)の割当に対応し、ビットD3が第4系列の伝送路AB(CH4)、BA(CH4)の伝送ポート(54as、54br)、(54bs、54ar)の割り当てに対応している。なお、この実施形態では、上下各4系列であるので、残りのビットD4〜D7は未使用状態となっている。
具体的に、タイムスロットTS97、TS98に挿入される伝送帯域制御情報は、まず、帯域割当の設定を手動で変更することの可能な設定入力部46aからの帯域割当初期設定に応じて、帯域割当制御部48aから帯域割当初期値設定信号ALがメモリリード制御回路93a及び伝送帯域の制御情報発生部81aに供給される。
伝送帯域の制御情報発生部81aは、供給されている帯域割当初期値設定信号ALの値が、「1:割当」か「0:割当なし」かを判断し、該当するタイムスロットTS97中の対応するビットに、この値をセット(挿入)する。なお、この実施形態では、初期値として、各4系列の伝送ポート、換言すれば各4系列の伝送路AB(CH1)〜AB(CH4)、BA(CH1)〜BA(CH4)が全て使用される形態とされている。すなわち、帯域割当初期値設定信号ALによりタイムスロットTS97のビットD0〜D3が全て値1となるようされている(TS97=[00001111])。
その一方、タイムスロットTS98には、伝送帯域割当の現在の使用状態が挿入される。すなわち、後述する対向局障害情報であるリンク信号LK♯(♯=1〜4)の状態に連動して変化するように構成されている。なお、初期値は、タイムスロットTS97の値と同一の値とされるのでタイムスロットTS98の初期値は、TS98=[00001111]と設定される。また、リンク信号LK♯は、障害が発生して、ある系列のリンク状態が「断」と判断されたとき、そのある系列のリンク信号LK♯の値がLK♯=1とされ、障害が復旧してリンク状態が「接」と判断されたとき、その系列のリンク信号LK♯の値がLK♯=0とされる。
リンク信号LK♯の値の決定について、図9を参照して概略を説明すれば、1つのマルチフレームMF中のタイムスロットTS98には全て同じ情報が挿入され、次のマルチフレームMFの伝送帯域の割当制御情報が入力されている。従って、受信処理部71a〜74a、71b〜74b等は、ある1マルチフレームMF中のタイムスロットTS98の伝送帯域制御情報を多数決判定により決定し、次のマルチフレームMFの伝送帯域割当制御を行う。なお、多数決判定による決定とは、1マルチフレームMFを構成するタイムスロットTS98の内容が3つのタイムスロットTS98で同一となった場合に、リンク信号LK♯の値を決定する。リンク状態の詳細な判定については後述する。
図10は、マルチフレームMFを構成する各フレームF1、F2、F3、F4のフレーム情報EFの構成を示している。
フレーム情報EF中、フレームF1、F3のデータD0に挿入される「D」はデータリンクビット、フレームF3のデータD1に挿入される「S」は対局警報信号としての対局警報ビット{S=1(警報時)、S=0(正常時)}、フレームF4に挿入される「C」はCRCチェックビット、フレームF1、F2に挿入される「1」と「0」は同期ビットで[110010100]、フレームF3に挿入される「“1”」は空きビットで1に固定している。
次に、図5例の帯域自動切替制御装置30a及び図6例の帯域自動切替制御装置30bを含む図3例のマイクロ波多重無線システム32の基本動作(通常動作)を説明する。
例えばA局の端末6aからの100BASE−TXの非同期のシリアルデータが、LANインタフェース17a、スイッチ18aを介して所定のシリアルデータとされ、一旦、帯域自動切替制御装置30a内の送信バッファ42aに図示していないシリパラ(シリアル→パラレル)変換器を介しパラレルデータとして格納される。
送信バッファ42aに格納されたパラレルデータは、メモリリード制御回路93aからのリードタイミングRD1により読み出され、読み出されたパラレルデータがポートセレクタ91aを介して多重化部(MUX)である送信処理部61a〜64aに供給される。ポートセレクタ91aの出力側ポートはメモリリード制御回路93aからのポートセレクト信号PSS1により順次切り替えられる。
送信処理部61a〜64aは、図示しないクロックを用いてパラレルデータをパラシリ(パラレル→シリアル)変換機能によりシリアルデータとし、さらに伝送帯域の制御情報発生部81aからの伝送帯域制御情報によりタイムスロットTS97、TS98に伝送帯域制御情報を挿入したマルチフレームMFのデータ(送信信号フレーム)を出力する。このマルチフレームMFのデータ(送信信号フレーム)は、送信ポート51as〜54asを介して無線装置34a(図5には不図示)に送られ、A局の無線装置34aにより変調されて電波とされ、伝送路100{AB(CH1)〜AB(CH4)}を介して対向局であるB局の無線装置34bにより受信される。
B局の無線装置34bで受信されたデータが、無線装置34b(図5には不図示)から、それぞれ、受信ポート51br〜54brを通じてB局の受信処理部71b〜74bに供給される。
受信処理部71b〜74bは、フレーム同期回路と制御情報分離回路を含んで構成され、フレーム同期回路は、受信したデータから図7に示したフレームタイミングFTMとマルチフレームタイミングMFTMとクロックを検出する。この場合、フレーム同期回路は、クロック再生回路としても機能し再生クロックを発生するとともに、フレームタイミングFTM中、所定のタイミングをマルチフレームタイミングMFTMとして抽出する。制御情報分離回路は、再生されたクロック及びフレームタイミングFTMとマルチフレームタイミングMFTMとに基づき、供給されたマルチフレームMFのデータ(シリアルデータ)をパラレルデータとしてポートセレクタ92bに転送する。ポートセレクタ92bは、パラレルデータをメモリライト制御回路94bからのポートセレクト信号PSR2に応じて、順次受信バッファ44bに供給する。受信バッファ44bは、メモリライト制御回路94bからのライトタイミングに応じてパラレルデータを順次格納する。
受信バッファ44bに格納されたパラレルデータはスイッチ18bにより読み出され、パラレルデータが図示しないパラシリ変換器を通じてシリアルデータに変換され、次いで、LANインタフェース17bを介して100BASE−TXのシリアルデータとして指定されたIPアドレスの端末6bに供給される。
B局からA局への通常のデータ伝送動作も同様である。
ここで、障害発生時の帯域自動切替処理動作について簡単に説明する。通常動作中に、伝送路100(伝送路AB♯〜伝送路BA♯)のいずれかに障害が発生しているかどうかが受信処理部71a〜74a、71b〜74bにより常時監視される。受信処理部71a〜74a、71b〜74bのいずれかにより障害の発生が検出されたとき、該当する障害警報信号RALM♯(A)、RALM♯(B)の値が正常受信状態の値「0」から受信障害発生状態の値「1」に変化させられる。
この受信障害発生状態を知らせる障害警報信号RALM♯(A)、RALM♯(B)は、受信障害の発生を検出した自局の対応する送信処理部61a〜64a、61b〜64bに送られる。障害警報信号RALMを受けた自局の対応する送信処理部61a〜64a、61b〜64bは、マルチフレームMFのデータ(送信信号フレーム)の中、フレームF3の対局警報ビットSを立て(Sを0から1にする。)、伝送路AB♯、BA♯を利用して対向局(自局がA局であればB局、自局がB局であればA局)に送信し通知を送る。
対向局(通知を受け取った局)の受信処理部71a〜74a、71b〜74bは、受信したマルチフレームMFのデータ(受信信号フレーム)中の対局警報ビットSから対向局(通知を送った局)の受信状態を判定し、障害発生を確認したときにリンク状態を断と検出し、対応するリンク信号LK♯(A)、LK♯(B)を立てる(リンク信号LKの値を0から1にする。)。
このリンク信号LK♯(A)、LK♯(B)は、通知を受け取った局の伝送帯域の制御情報発生部81a、81bとメモリリード制御回路93a、93bに送られる。
通知を受け取った局の伝送帯域の制御情報発生部81a、81bは、自局の送信処理部61a〜64a、61b〜64bを介して伝送帯域の割当制御を変更したタイムスロットTS98の情報をマルチフレームMFのデータ(送信信号フレーム)として対向局(通知を送った局)に送る。
通知を送った局の受信処理部71a〜74a、71b〜74bは、このタイムスロットTS98の新たな帯域割当情報を自局のメモリライト制御回路94a、94bに送る。
以降、基準のタイミングで、障害の発生した伝送路100を使用しない伝送帯域での送受信を行う。
次に、基本的には、以上のように構成され、かつ動作するマイクロ波多重無線システム32の伝送帯域自動切替制御装置(単に帯域自動切替制御装置ともいう。)30aと30bのより詳しい動作をフローチャートを参照しながら説明する。
ここでは、A局とB局間の通信で、伝送帯域として伝送路AB(CH1〜CH4)、BA(CH1〜CH4)を使用して通常通信を行っている状況での動作説明を行う。そして伝送路100の一系列に障害が発生した場合に、非対称伝送帯域制御とする処理を例として説明する。
図11に示すフローチャートは、各受信処理部71a〜74a、71b〜74b(ここでは、B局の受信処理部71b〜74bとする。)がそれぞれ独立に行う受信信号の状態転送処理に供される。
ステップS1において、各受信処理部71b〜74bは、受信されたマルチフレームMFのデータ(受信信号フレーム)のクロックを検出し、受信障害状態が発生していないかどうかを判定する。
受信障害は、各受信処理部71b〜74bで判定され、第1にフレームタイミングFTMを検出できない受信障害(SYNC障害という。)、第2にクロックを検出できない受信障害(INPUT障害という。)、第3にクロックは検出できたがデータが全て「1」(オールHI)である状態が一定時間以上継続したときの受信障害、例えばA局の帯域自動切替制御装置30aの送信ポート51as〜54asと無線装置34aとを接続するケーブルが外された状態等{AIS(Automatic Indicate Signal)障害という。}の3つに分類され、これらの受信障害が検出されたとき、障害警報信号RALM♯(B)が、正常受信状態のRALM♯(B)=0から、受信障害発生状態を指示するRALM♯(B)=1とされる。なお、障害警報信号RALM♯は、正常状態を含めて、4つの状態を指示する2ビットの信号にしている。
ステップS1において、受信障害状態が発生していないと判定した場合には、障害警報信号RALMをRALM=0として、自局(B局)の対応する各送信処理部61b〜64bに送る。
そして、ステップS2において、対応する各送信処理部61b〜64bは、次に送信予定のマルチフレームMFのデータ(送信信号フレーム)のなかのフレーム情報EF中、対局警報ビットSをS=0(障害未発生)と設定して対向局であるA局に送信する。
一方、ステップS1において受信障害状態が発生していると判定した場合には、ステップS3において、対応する各送信処理部61b〜64bは、次に送信予定のマルチフレームMFのデータ(送信信号フレーム)のなかのフレーム情報EF中、対局警報ビットSをS=1(障害発生)と設定して対向局であるA局に伝送路BA(CH1)〜BA(CH4)を通じて送信する。この場合、受信処理部71bで受信障害を検出した場合には、送信処理部61bから送信予定の対局警報ビットSがS=1とされ、同様にして、受信処理部72b〜74bのいずれかで受信障害を検出した場合には、対応する送信処理部62b〜64bのいずれかから送信予定の対局警報ビットSがS=1とされる。
次に、対局警報ビットSを含むマルチフレームMFのデータ(受信信号フレーム)を受信するA局における対向局(この場合、B局)の受信状態の判定処理について、図12のフローチャートを参照して説明する。
対向局(この場合、B局)の受信状態の判定処理は、リンク状態を検出するリンク検出部として機能するA局の受信処理部71a〜74aがそれぞれ対向局(B局)より送られてくる対局警報ビットSの状態により判定してリンク信号LKの値を決定する処理である。この処理の際に、伝送路での符号誤り(ビットエラー)による誤動作を避けるために、リンク信号LKの判定カウンタ(プリセットカウンタ)を利用して判定している。判定カウンタは受信処理部71a〜74aにそれぞれ備えられる。
ステップS11において、受信処理部71a〜74aは、判定カウンタをクリアする。
次に、ステップS12において、マルチフレームMFのデータ(受信信号フレーム)中の対局警報ビットSがS=1であるかどうかを判定する。対局警報ビットSがS=0である場合には、受信障害が発生していない正常状態であるので、ステップS11にもどる。
その一方、ステップS12において、マルチフレームMFのデータ(受信信号フレーム)中の対局警報ビットSがS=1である場合には、受信障害が発生している可能性があるとして、ステップS13において、リンク信号LKの判定カウンタのカウント値(計数値)を1だけカウントアップする。
次に、ステップS14では、判定カウンタのカウント値が、ある閾値に等しいかどうかを判定する。例えば、閾値は1000回等に設定される。
ステップS14の判定において、判定カウンタのカウント値が閾値以下である場合には、ステップS12にもどり、次に受信したマルチフレームMFのデータ(受信信号フレーム)中の対局警報ビットSがS=1であるかどうかを判定する。
このときにも、対局警報ビットSがS=1であるときには、ステップS13において、判定カウンタをカウントアップする。
このようにして、リンク信号LKの判定カウンタがフルカウントの閾値となったときに、ステップS14の判定処理が成立し、ステップS15の処理に進む。この実施形態では判定処理の成立まで、1000[回]×0.5[ms](マルチフレームMFの周期)≒0.5[秒]の時間をかけているが、伝送帯域の違い、伝送路の信頼性等により最適の閾値を決定することができる。また、符号ビットの誤りを考慮すれば、判定の成立を、確率が成立したとき(例えば1000回中997回、対局警報ビットSがS=1である場合に判定が成立するよう)に決定することもできる。このように、ステップS12〜S14の処理では、対局警報ビットSの変化の確実性を判定している。
ステップS14の判定が成立した場合に、ステップS15では、マルチフレームMFのデータ(受信信号フレーム)中の対局警報ビットS=1が真であると判定し、換言すれば、該当するある系列の伝送路のリンク状態(接続状態)を断と検出し、このとき、該当するある系列の伝送路のリンク信号LK♯(A)(♯=1〜4)の値をLK♯=1とする。
このようにして、ステップS11〜S15の対局障害発生検出処理が終了する。
この対局障害発生検出処理が終了したとき、受信処理部71a〜74aは、対局障害の復旧の検出処理を行う。
この場合にも、まずステップS16において、リンク信号LK=1となっている状態において、受信処理部71a〜74aは、リンク信号LKの判定カウンタをクリアする。
次に、ステップS17において、B局から送信されてくるマルチフレームMFのデータ(受信信号フレーム)中の対局警報ビットSがS=0であるかどうかを判定する。対局警報ビットSがS=1である場合には、受信障害発生の継続中であるので、ステップS16にもどる。
その一方、ステップS17において、マルチフレームMFのデータ(受信信号フレーム)中の対局警報ビットSがS=0である場合には、受信障害が復旧している可能性があるとして、ステップS18において、判定カウンタのカウント値(計数値)を1だけカウントアップする。
次に、ステップS19では、判定カウンタのカウント値が、ある閾値に等しいかどうかを判定する。この場合にも、閾値は、例えば1000回程度に設定される。
ステップS19の判定において、判定カウンタのカウント値が閾値以下である場合には、ステップS17において、次に受信したマルチフレームMFのデータ(受信信号フレーム)中の対局警報ビットSがS=0であるかどうかを判定する。
このときにも、対局警報ビットSがS=0であるときには、ステップS18において、判定カウンタをカウントアップする。
判定カウンタがフルカウントの閾値となったときに、ステップS19の判定処理が成立し、ステップS20の処理に進む。
ステップS20では、ステップS19の判定が成立した場合に、マルチフレームMFのデータ(受信信号フレーム)中の対局警報ビットS=0が真であると判定し、該当する伝送路のリンク信号LK♯(A)(♯=1〜4)の値をリンク信号LK♯=0とする。すなわちリンク状態が「断」から「接」となったことを検出する。
このようにして、ステップS16〜S20の対局障害復旧検出処理が終了する。なお、この実施形態においては、対局障害発生と復旧の判定の確実性を対局警報ビットSのカウントにより判定しているが、障害警報信号RALM♯の変化に基づき同様に確実性の判定を行うことで代替することもできる。
ステップS11〜S20の判定処理により生成されたリンク信号LK1〜LK4は、伝送帯域の制御情報発生部81aとメモリリード制御回路93aに供給される。
図13は、リンク信号LK1〜LK4を受け取った制御情報発生部81aとメモリリード制御回路93aにより実行される送信信号処理のフローチャートである。
ステップS31において、制御情報発生部81aとメモリリード制御回路93aは、リンク信号LK♯の値がLK♯=1かどうかを検出する。リンク信号LK♯の値がLK♯=0である場合には、ステップS31を繰り返す。
リンク信号LK♯の値LK♯=1を検出した場合、ステップS32において、伝送帯域の制御情報発生部81aは、帯域割当を自動で切り替えるために、該当する伝送路を使用しないようにする伝送路の組合せ情報を、ある基準タイミングでマルチフレームMFのデータ(送信信号フレーム)中のタイムスロットTS98の[D3,D2,D1,D0]に挿入する。これにより、ある基準タイミングのマルチフレームタイミングMFTM(実際上、フレームタイミングFTM中、受信できているいずれかのタイミング)で障害の発生していない残りの全ての伝送路ABを通じてA局からB局への帯域割当制御情報(使用しない伝送路の組合せ情報)が伝送される。
また、ステップS31において、リンク信号LK♯のLK♯=1を検出した場合、ステップS32の処理と同時に処理されるステップS33において、メモリリード制御回路93aは、前記ある基準タイミング位置から、マルチフレームMF(送信信号フレーム)のリードタイミングRD1とポートセレクト信号PSS1を変更し、それぞれ送信バッファ42aとポートセレクタ91aに供給する。
この変更処理に合わせて、図14のフローチャートに示すB局の受信処理部71b〜74bとメモリライト制御回路94bによる受信信号処理がB局において行われる。
すなわち、ステップS41において、あるマルチフレームMFのデータ(受信信号フレーム)中、タイムスロットTS98の帯域割当制御情報(使用しない伝送路の組合せ情報)を受信処理部71b〜74bを経由して受信したメモリライト制御回路94bは、受信信号フレームから障害が発生していて使用できない伝送路の情報を検出する。
図8、図9を参照して説明したように、マルチフレームMFのデータのなかで、タイムスロットTS98の[D3,D2,D1,D0]中、D♯がD♯=0となっているビットの多数決判定を行い、該当ビットがD♯=0と3回なっていた場合には、その伝送路AB(CH♯)に障害が発生していると判定する。
このとき、ステップS42において、メモリライト制御回路94bは、前記ある基準タイミング位置、図9例では、次のマルチフレームMFのデータ(受信信号フレーム)の位置から受信バッファ44bのライトタイミングWR2を変更するとともに、ポートセレクト信号PSR2を変更し、帯域の割当を自動変更し、障害の発生していない伝送路AB(CH♯)での受信を開始する。
このように、ステップS31〜S33の処理とステップS41、S42処理とが並列的に実行されて、ある基準タイミングのマルチフレームMFのデータの送受信から障害の発生した伝送路AB(CH♯)を使用しない残りの伝送路AB(CH♯)による伝送が行われる。すなわち、固定帯域伝送路100(AB)の系列の数を自動的に1だけ減じた(この場合、系列が4から3とされる。)伝送が行われる。
次に、ステップS34〜S36及びステップS43、S44では、伝送路の復旧処理を行う。
ステップS34において、制御情報発生部81aとメモリリード制御回路93aは、リンク信号LK♯がLK♯=0となるかどうかを検出する。
受信処理部71a〜74aにおいて、リンク信号LK♯のLK♯=0、すなわち復旧を検出した場合、ステップS35において、伝送帯域の制御情報発生部81aは、該当する伝送路AB(CH♯)を使用するようにする伝送路の組合せ情報(帯域割当制御情報)を、ある基準タイミングでマルチフレームMFのデータ(送信信号フレーム)中のタイムスロットTS98の[D3,D2,D1,D0]に挿入する。これにより、ある基準タイミングのマルチフレームタイミングMFTM(実際上、フレームタイミングFTM中の受信できているいずれかのタイミング)で復旧した伝送路ABを含めてA局からB局への帯域割当制御情報(使用するようにする伝送路の組合せ情報)が伝送される。
ステップS34において、リンク信号LK♯のLK♯=0を検出した場合、ステップS36においてメモリリード制御回路93aは、前記ある基準タイミング位置でマルチフレームMF(送信信号フレーム)のリードタイミングRD1とポートセレクト信号PSS1を変更し(元にもどし)、それぞれ送信バッファ42aとポートセレクタ91aに供給する。
この場合にも、図14のフローチャートに示すB局の受信処理部71b〜74bとメモリライト制御回路94bによる受信信号処理がB局において行われる。
すなわち、ステップS43において、あるマルチフレームMFのデータ中、タイムスロットTS98の帯域割当制御情報を受信処理部71b〜74bを経由して受信したメモリライト制御回路94bは、受信信号フレームから障害の復旧した伝送路AB(CH♯)の情報を検出する。すなわち、図9を参照して説明したように、マルチフレームMFのデータのなかで、タイムスロットTS98の[D3,D2,D1,D0]中、D♯がD♯=1となっているビットの多数決判定を行い、3回該当ビットがD♯=1となっていた場合には、その伝送路は復旧したと判定する。
このとき、ステップS42において、メモリライト制御回路94bは、前記ある基準タイミング位置でのマルチフレームMFのデータから受信バッファ44bのライトタイミングWR2を変更するとともに、ポートセレクト信号PSR2を変更し、復旧した伝送路AB(CH♯)を含めての受信を開始する。この場合、固定帯域伝送路100(AB)の系列の数を自動的に1だけ多くした(この場合、系列が3から4とされる。)伝送が行われる。
このように、ステップS34〜S36の処理とステップS43、S44の処理とが並列的に実行されて、ある基準タイミングのマルチフレームMFのデータの送受信から復旧した伝送路AB(CH♯)をも使用する伝送が行われる。
以上の説明では、伝送路AB(CH♯)中、いずれかの伝送路AB(CH♯)に障害が発生した場合、障害の発生していない正常な伝送路AB(CH♯)の系列で伝送を行い、その一方伝送路BA(CH♯)は障害が発生していないので全ての伝送路BA(CH♯)を利用して伝送を行う、非対称伝送帯域形態となっている。
以上の説明が、障害が発生した場合に、非対称伝送帯域形態に制御するマイクロ波多重無線システム32の帯域自動切替制御装置30aと30bの詳しい動作の説明である。
次に、より具体的な例で、非対称伝送帯域形態に制御する動作を説明する。
図15に示すように、通常動作中には、A局からB局へ向かう4つの伝送路AB(CH1)〜AB(CH4)を使用してA局からB局へのデータ伝送が行われ、同時に、B局からA局へ向かう4つの伝送路BA(CH1)〜BA(CH4)を使用してB局からA局へのデータ伝送が行われる。
この場合、帯域割当制御部48a、48bによる初期的な帯域割当は、図15中の伝送路AB(CH♯)の中に記載したタイムスロットTS97の値で示すようにTS97=[00001111]となっている。同時に、現在、正常に運用されているので、正常運用中の帯域割当は、タイムスロットTS98の値で示すようにTS98=[00001111]になっている。
この場合、マルチフレームMFのデータの第3フレームF3のフレーム情報EF中、対局警報ビットSの値は、全ての伝送路(チャンネル)で、障害のないことを示す値S=0になっている(図15中の伝送路BA(CH♯)の中に記載参照)。
図16は、A局からB局にデータを伝送している伝送路AB(CH♯)中、伝送路AB(CH3)に障害が発生したときの動作説明図である。
この場合、B局の帯域自動切替制御装置30bを構成する受信処理部73bが障害を検出すると、障害警報信号RALM3(B)をRALM3(B)=1に設定して、B局の送信処理部63bに送る。
このとき、B局の送信処理部63bは、B局からA局にデータを伝送している伝送路BA(CH3)のマルチフレームMFのデータの第3フレームF3のフレーム情報EF中、対局警報ビットSの値を、障害が発生したことを示す値S=1に設定して送信する。
A局の受信処理部73aは、受信信号フレーム中、対局警報ビットSの値S=1を検出した場合、図12のフローチャートを参照して説明したように、対局警報ビットSの確実性を判定し、確実に対局警報ビットSの値がS=1になっている(Sの値が真である)と決定したとき、伝送路AB(CH3)に障害が発生していることを示す判定結果のリンク信号LK3(A)をLK3(A)=1としてA局のメモリリード制御回路93aと伝送帯域の制御情報発生部81aに送る(図5参照)。
このリンク信号LK3(A)=1により、伝送帯域の制御情報発生部81aは、A局からB局に送信する伝送路ABの全チャネルのタイムスロットTS98の帯域割当情報をTS98=[00001111](CH1〜CH4の全てを割り当てている。)を、TS98=[00001011]に変更し、帯域を変更した伝送路AB(CH1)、AB(CH2)、AB(CH4)で通信を行うことをA局の送信処理部61a〜64aを通じてB局の受信処理部71b〜74bに通知する(実際上、送信処理部63aと受信処理部73b間では通知されない。)。なお、タイムスロットTS97は、TS97=[00001111]と変更されないままである。
次に、A局のメモリリード制御回路93aは、リンク信号LK3(A)の値に基づき、送信帯域の変更を制御し、送信バッファ42aからの読み出しとポートセレクタ91aの切替を制御する。これにより、ポートセレクタ91aは、CH1→CH2→CH3→CH4→CH1と切り替えられていたのを、ある基準タイミングの位置からCH1→CH2→CH4→CH1とCH3への配分を除いて切り替えるようにする。
その一方、B局の受信処理部71b〜74bは、タイムスロットTS97、TS98の情報を受信信号のフレームから分離し、B局内のメモリライト制御回路94bに転送する。メモリライト制御回路94bは、タイムスロットTS97、TS98の情報に基づき、受信バッファ44bへの書き込みと、ポートセレクタ92bの切替を制御する。これにより、ポートセレクタ91aは、CH1→CH2→CH3→CH4→CH1と切り替えられていたのを、前記ある基準タイミングと同じ位置からCH1→CH2→CH4→CH1とCH3への配分を除いて切り替えるようにする。
以上の制御により、伝送路AB(CH3)での障害が継続している間、A局からB局への伝送路100は、図17Bに示すように、3つの伝送路AB(CH1)、AB(CH2)、AB(CH4)の3系列でのデータ伝送に帯域が自動的に切り替えられ(6.312[Mbps]×4→6.312[Mbps]×3)、その一方、B局からA局への伝送路100は、4つの伝送路BA(CH1)〜BA(CH4)の4系列での帯域でのデータ伝送が継続される。もちろん、障害が復旧した場合に、A局からB局への伝送帯域も、図17Aに示すように自動的に4つの伝送路AB(CH1)、AB(CH2)、AB(CH3)、AB(CH4)の4系列での最大帯域に復旧する。
以上説明したように、上述した実施形態によれば、固定帯域伝送路100(AB、BA)の各系列のリンク状態(接続状態)を検出し、ある系列のリンク状態を断と検出したとき、固定帯域伝送路100(AB、BA)の系列の数を自動的に1だけ減じて伝送を行わせるように制御しているので、固定帯域伝送路100(AB、BA)の現在時点で伝送可能な最大系列数で伝送することができる。この場合、リンク状態の断を自動的に検出し、固定帯域伝送路100(AB、BA)の帯域割当を自動的に変更するようにしているので、固定帯域伝送路100(AB、BA)の使用不能な時間をリンク状態の検出時間の最小限の時間に抑制することができる。
なお、上述した実施形態においては、ある伝送路AB(CH♯)、BA(CH♯)に障害が発生した場合に、非対称伝送帯域となる例を示しているが、これに限らず、上り下りのいずれか一方のある系列の伝送路AB(CH♯)、BA(CH♯)に障害が発生したことを検出したとき、上り下りともに対応する系列の伝送帯域を自動的に1だけ減じるようにし、上り下りとも同数の系列で伝送を行わせる、対称伝送帯域制御を行うこともできる。
すなわち、リンク信号LK♯=1を検出したとき、帯域自動切替制御装置30a、30bを構成するAB両局のメモリリード制御回路93a、93bと、メモリライト制御回路94a、94bと、ポートセレクタ92a、92bとを、ある基準タイミングで同時に切替制御することで、図18に、例として示すように、伝送路AB(CH3)に障害が発生したとき、対応する伝送路BA(CH3)を強制的に使用しないようにすることができる。
また、伝送路AB(CH3)と伝送路BA(CH3)とに同時に障害が発生した場合には、少なくとも、両受信処理部73a、73bが障害を発生したことを検出し続けるので、A局の受信処理部73aを、残りの受信処理部71a、72a、74aと連係させ、B局の受信処理部73bを、残りの受信処理部71a、72a、74aと連係させる。各受信処理部73a、73bは、障害警報信号RALM3(A)、RALM3(B)を最初に立てた(上述のステップS1)後、一定時間経過してもタイムスロットTS98の帯域割当情報が変化しなかったことを他の受信処理部71a、72a、74a、71b、72b、74bからのタイムスロットTS98の帯域割当情報により知ったとき、リンク信号LK3(A)、LK3(B)を立てる(上述のステップS15)ように制御することで、ある基準タイミングで伝送帯域を自動的に再割当することができる。
図19は、さらに他の実施形態の説明図である。例えば無線装置34a、34bの4系列の送信ポート51as〜54as中、4系列目の1系列分の送信ポート54asを既存の6.312[Mbps]のインタフェースで使用する場合に、帯域自動切替制御装置30aと無線装置34a間の送信ポート54as間のケーブルが取り外される。また、帯域自動切替制御装置30bと無線装置34b間の受信ポート54br間のケーブルも取り外される。この場合、帯域自動切替制御装置30a、30bにより伝送路AB(CH4)のリンク状態が断と検出され、LANインタフェースである100BASE−TXに、3系列の伝送路AB(CH1)〜AB(CH3)が自動的に割り当てられ、残りの1系列の伝送路AB(CH4)が、既存の6.312[Mbps]のインタフェースで使用できることになる。
この場合において、さらに3系列目の1系列分の伝送路AB(CH3)の送信ポート53as、受信ポート53brも既存の6.312[Mbps]のインタフェースで使用するためにケーブルを取り外せば、残りの2系列の伝送路AB(CH1)、AB(CH2)が100BASE−TXに自動的に割り当てられることになる。
上述した実施形態における伝送制御装置120の帯域自動切替制御の全体動作について、図20、図21の例を参照し、かつ図22のフローチャートを参照して説明する。
まず、ステップS51において、左側あるいは右側の無線伝送路100に障害が発生したかどうかが確認される。障害が発生したことを確認した場合、ステップS52に示すように、障害が発生した該当の無線伝送路100の系列数を1だけ減じる。そして、ステップS53において、該当の無線伝送路100の全ての系列に障害が発生しているかどうかを確認し、全ての系列に障害が発生していない場合には、ステップS54に示すように、該当の無線伝送路100に関し、障害の発生していない系列数での伝送動作を行う。
例えば、図20に示すように、東京の無線設備101と大阪の無線設備102との間の4系列の伝送路100Wの中、1系列の伝送路に障害が発生した場合、伝送路100Wでは、4−1=3系列の伝送路で通信を継続できる。その他の伝送路100X〜100zでは、4系列全ての伝送路での通信を行うことができる。
また、例えば、図21を参照して、無線伝送路100W〜100Zがそれぞれ4系列(各系列ともに全二重)あるものとして、福岡と新潟間の無線設備103、104と無線伝送路100Yにおいて、すなわち、福岡と新潟の無線設備103、104から見ればそれぞれ片側の無線伝送路100Y中の1系列に障害が発生すると、そのそれぞれ片側の障害が発生した1系列だけ系列数を自動的に1だけ減じて伝送を継続させる。このようにすれば、平常時に比べて、伝送帯域(通信速度)が(N−1/N)倍、この図21の例では、3/4倍に制限される。しかし、無線伝送路100Yは断にはならないので、いわゆる迂回動作が発生しない。
すなわち、福岡と新潟間の無線設備103、104と無線伝送路100Yにおいて、1系列に障害が発生すると、その福岡と新潟間では伝送帯域が(N−1/N)となるが、東京と大阪の無線設備101、102と無線伝送路100Wをデータが迂回することがないので、リング状の無線伝送システム110において、障害時の輻輳に対するリスクが小さいといえる。
その一方、上述したステップS53の判断において、該当の無線伝送路100の全ての系列に障害が発生していた場合、すなわち、図21例において、無線伝送路100Yの全ての系列に障害が発生した場合には、ステップS55に示すように、迂回動作が発生する。ここでは、新潟の無線設備104と福岡の無線設備103との間で東京と大阪の無線設備101、102及び無線伝送路100Z、100W、100Xを利用する迂回動作が発生する(この迂回動作は、新潟の伝送制御装置120の帯域自動切替制御装置30bからの「迂回伝送:1」の迂回制御信号Sdtがスイッチ18に供給され、福岡の伝送制御装置120の帯域自動切替制御装置30aからの「迂回伝送:1」の迂回制御信号Sdtがスイッチ18に供給されることで発動される。)が、4系列同時に障害が発生することはほとんどあり得ない。
なお、ステップS51の判断において、無線伝送路100に新たな障害が発生していない場合には、ステップS56において、無線伝送路100の障害が新たに復旧したかどうかが判断され、復旧していない場合、ステップS57において、現在の状態での動作(動作可能な系列数での動作あるいは迂回動作)が継続される。
ステップS56において、無線伝送路100の障害が新たに復旧した場合、ステップS58において、該当の無線伝送路100の系列数を1だけ増やし、ステップS54では、該当の無線伝送路100において、障害の発生していない系列数での動作を行う。
このように上述した実施形態によれば、無線伝送路100のリスクをN系列に分散して伝送できることから、防災業務等の災害時におけるリスクが小さいことが必要な用途できわめて大きな効果が得られる。
なお、東京と大阪間の無線伝送路100Wの系列数N(伝送帯域)は、その他の無線伝送路100X、100Y、100Zの系列数に比較して、予め大きな系列数にしておけることはいうまでもない。
この発明を適用しなかった場合には、ある無線伝送路100中における任意の1系列が断となった場合でも迂回動作が発動するので、システム(ネットワーク)全体としてのスループット(動作速度)の低下が発生する。
また、上述した実施形態においては、迂回動作発動条件を全系列が断となったときとしているが、これに限らず、例えば、所望のデータをリアルタイムに伝送するのに少なくとも2系列分の伝送帯域が必要とされるとき、固定帯域伝送路中、1系列分の伝送帯域のみが残っていたとしても、実際上、所望のデータを伝送することが不可能となるので、このような場合には、オーバーフローが発生したとして迂回伝送を発動させるように構成を変更することができる。すなわち、オーバーフローが発生する場合には、残っている系列数の伝送帯域では所望のデータのリアルタイム伝送ができない場合も含まれる。従って、オーバーフローを考慮した場合には、全ての系列のリンク断の検出が迂回伝送の発動要件ではなく、所望のデータをリアルタイム伝送できなくなる系列数(例えば、少なくともM本未満等)になったときが迂回伝送の発動要件になる。
これを実現するためには、図23に示すように、迂回制御信号Sdtの他、各系列の上り下りの正常が断かを通知するための障害警報信号RALMとリンク信号LKをスイッチ18に送るようにすればよい。これにより、スイッチ18の作用下に、少なくともM本未満での迂回制御または全断での迂回制御を容易かつ高速に行うことができる。
また、上述した実施形態によれば、リンク断検出により、自動的に最大系列となることから、例えば、無線装置からの信号が2系列しかない場合、3、4系列目は自動的に切り離されることとなる。このため、通常時の系列数の設定も不要となる。このことは、ユーザが接続したケーブルの本数、すなわち系列数で自動的に運用が可能となることを意味する。このため、ユーザには高度な専門的知識を要求しないで無線装置を設置することが可能となり、設置の容易化が達成される。
さらに、このことから左右の無線装置が同系列数でもないアンバランスなネットワークであっても、自動的に最大系列に設定できることとなり、左右アンバランスなRPR(Resilient Packet Ring)を容易に構築することができる。