JP3845620B2 - 自動焦点調整装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等に搭載され、特に、高輝度被写体に対しても合焦することができる自動焦点調整装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどに搭載される自動焦点調整装置には、ピントが合うときに、映像信号の高周波成分が増加する現象を利用して、高周波成分を画面の所定の領域で積分し、その積分値、すなわち焦点量が最大となる位置へレンズを駆動制御する方式が多く採用されている。図11は従来の自動焦点調整装置の回路構成を示すブロック図である。
【0003】
図11に示すように、従来の自動焦点調整装置100は、撮影レンズ101と、撮像素子102と、を備え、撮影レンズ101から取り込まれた被写体からの光を、撮像素子102の撮像面上に光学像を結像させる。この光学像は、撮像素子102によって電気信号に変換され、カメラ回路103へ供給される。カメラ回路103では、明暗の信号からなる輝度信号(Y信号)が生成され、BPF(バンドパスフィルタ)104へ出力される。BPF104では、入力されたY信号から高周波成分が抽出されて、積分器105へ出力される。積分器105では、高周波成分を整流して、所定の画面内で積分し、その積分値を焦点量としてマイクロコンピュータ106に出力する。
【0004】
マイクロコンピュータ106では、焦点量が増加する方向の信号が生成され、モータドライバ107へ出力する。モータドライバ107は、撮影レンズ101に搭載されたモータ108を駆動する。このようにして、撮影レンズ101は、自動的にピントが合う方向に駆動され、オートフォーカス制御がおこなわれる。
【0005】
しかし、図11に示した従来の自動焦点調整装置100では、高輝度の被写体が存在する場合、高周波成分の積分値である焦点量は、フォーカスした場合の増加量よりも面積が小さくなったことによる減少量のほうが大きくなり、フォーカスしたにもかかわらず、焦点量が減少するという逆転現象が生じることとなる。フォーカス制御は焦点量が増加する方向におこなわれるものであるから、撮影レンズ101が逆方向に駆動してしまうと合焦できないこととなる。この逆転現象を改善するため、以下のような提案がなされている。
【0006】
たとえば、通常の被写体では焦点量が大きくなるような制御をおこない、高輝度の被写体が存在する場合には、高輝度被写体の画面上の面積を計測し、面積が小さくなる方向に制御する自動合焦点装置が開示されている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0007】
また、高輝度被写体が存在する場合には、高周波成分の積分値ではなく、高周波成分のピーク値が最大となるように制御する焦点調節装置が開示されている(たとえば、特許文献2参照。)。
【0008】
さらに、高周波成分を抽出するBPFを複数備え、高輝度の被写体と判定した場合には、より高い高周波成分を抽出するBPFを選択し、それから得られる焦点量によりフォーカス制御をする自動焦点調節装置が開示されている(たとえば、特許文献3参照。)。
【0009】
また、傾斜検出回路によって高輝度領域を検出して、その部分の高周波成分を排除して焦点量を求め、その求めた焦点量によって制御するオートフォーカス装置が開示されている(たとえば、特許文献4参照。)。
【0010】
さらに、画面を小エリアに分割し、各小エリアで高輝度成分の有無を検出し、存在する領域からの信号とその隣接する領域からの信号の供給を阻止して焦点量を求め、その焦点量によって制御する自動焦点整合装置が開示されている(たとえば、特許文献5参照。)。
【0011】
また、画面を複数の小エリアに分割し、各小エリアで高輝度被写体の面積を求めてその面積に応じて重み付けをし、小エリアの高周波成分の積分値を補正して、各積分値を加えて焦点量を求め、その焦点量によって制御するオートフォーカスビデオカメラが開示されている(たとえば、特許文献6参照。)。
【0012】
【特許文献1】
特開平5−260361号公報
【特許文献2】
特開2001−141989号公報
【特許文献3】
特開平6−205268号公報
【特許文献4】
特開平11−234549号公報
【特許文献5】
特開平1−157173号公報
【特許文献6】
特開平8−321985号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した特許文献1では、複数の高輝度被写体がそれぞれ異なった距離に存在する場合には、それぞれの距離の中間距離に合焦するようにレンズを駆動制御してしまい、いずれの被写体もピンボケしてしまうという問題があった。
【0014】
また、上述した特許文献2では、高周波成分のピーク値を積分して生成される焦点量で合焦させているが、合焦点付近の焦点量のカーブは緩やかであるためピントが甘くなり、高輝度被写体だけでなく通常の被写体も存在する場合、ピンボケが目立ってしまうという問題があった。
【0015】
さらに、上述した特許文献3では、高輝度の被写体を検出して高い周波数帯域を持つBPFに変えた場合でも、高倍率のズームレンズを用いると、焦点深度の深いテレ側ではピンボケしたときに像が大きくなって焦点量が増加する領域も大きくなるという問題があった。
【0016】
また、上述した特許文献4では、高輝度領域を検出することとしているが、その部分の信号を除去してしまうため、高輝度被写体のみからなるシーンでは合焦することができないという問題があった。
【0017】
さらに、上述した特許文献5では、高輝度被写体が存在する小エリアを除去してしまうため、上述した特許文献4と同様、高輝度被写体のみからなるシーンでは合焦することができないという問題があった。
【0018】
上述した特許文献6では、ピンボケが大きくなるにしたがって、高輝度被写体に起因する高周波成分も大きくなるが、この高周波成分の大きさは高輝度被写体の面積に比例していないため、被写体によって過大に評価されたり過小に評価されたりして、補正後の焦点量の精度に問題があった。また、高周波成分には必ず遅延成分が含まれているが、補正計算には遅延成分を考慮して計算をおこなうことは、この特許文献6では困難であった。
【0019】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、高輝度被写体が複数存在する場合、高輝度被写体と通常の輝度の被写体とが共存する場合、および高輝度被写体のみからなる場合であっても、適切に合焦することができる自動焦点調整装置を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明にかかる自動焦点調整装置は、撮影レンズを駆動制御して被写体に合焦する自動焦点調整装置であって、前記被写体から前記撮影レンズを介して入射された光によって光学像を結像させ、前記光学像を走査線ごとに走査して電気信号に変換する撮像素子と、前記光学像を走査した走査線ごとに変換された電気信号に基づいて、前記光学像の輝度を表す輝度信号を生成する輝度信号生成手段と、前記輝度信号生成手段によって生成された輝度信号が、予め設定された輝度レベル以上か否かを判定する判定手段と、前記輝度レベル以上であると判定された輝度信号に対応する走査線が前記光学像を通過する通過回数を、前記走査線ごとに計数する計数手段と、前記輝度信号生成手段によって生成された輝度信号から抽出される高周波成分を積分して第1の積分値を算出する第1の積分値算出手段と、前記第1の積分値算出手段によって算出された第1の積分値の合計値を、前記計数手段によって計数された通過回数の合計値で割って、第2の積分値を算出する第2の積分値算出手段と、前記第2の積分値が大きくなる方向に前記撮影レンズを駆動制御する駆動制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0021】
この請求項1の発明によれば、ピントがずれている高輝度被写体に対し、その輝度信号の波形の傾斜(立ち上がりおよび立ち下がり)にのみ依存した焦点量を算出することができる。
【0022】
また、請求項2の発明にかかる自動焦点調整装置は、撮影レンズを駆動制御して被写体に合焦する自動焦点調整装置であって、前記被写体から前記撮影レンズを介して入射された光によって光学像を結像させ、前記光学像を走査線ごとに走査して電気信号に変換する撮像素子と、前記撮像素子の撮像面を複数の領域に分割する分割手段と、前記光学像を走査した走査線ごとに変換された電気信号に基づいて、前記分割された領域内に結像された光学像の輝度を表す輝度信号を生成する輝度信号生成手段と、前記輝度信号生成手段によって生成された輝度信号が、予め設定された輝度レベル以上か否かを前記走査線ごとに判定する判定手段と、前記輝度レベル以上であると判定された輝度信号に対応する走査線が前記分割された領域内に結像された光学像を通過する通過回数を前記走査線ごとに計数するとともに、前記輝度レベル以上でないと判定された輝度信号に対応する走査線が前記分割された領域内に結像された光学像を通過する通過回数を1回として計数する計数手段と、前記輝度信号生成手段によって生成された輝度信号から抽出される高周波成分を積分して、前記分割された領域ごとに前記高周波成分の積分値を算出する第1の積分値算出手段と、前記第1の積分値算出手段によって算出された第1の積分値の合計値を、前記計数手段によって計数された通過回数の合計値で割って、第2の積分値を、前記分割された領域ごとに算出する第2の積分値算出手段と、前記第2の積分値算出手段によって算出されたすべての第2の積分値から、総積分値を算出する総積分値算出手段と、前記総積分値が大きくなる方向に前記撮影レンズを駆動制御する駆動制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0023】
この請求項2の発明によれば、分割された領域ごとに、ピントがずれた高輝度被写体に対し、その輝度信号の波形の傾斜(立ち上がりおよび立ち下がり)にのみ依存した焦点量を算出することができる。
【0024】
また、請求項3の発明にかかる自動焦点調整装置は、請求項1または2に記載の発明において、前記高輝度レベルは、前記輝度信号が飽和する所定の飽和レベル近傍のレベルであることを特徴とする。
【0025】
この請求項3の発明によれば、合焦すべき高輝度被写体を検出することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる自動焦点調整装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。図1は、第1実施の形態の自動焦点調整装置の回路構成を示す説明図である。
【0027】
図1に示すように、この自動焦点調整装置1は、撮影レンズ2と、撮像素子3と、カメラ回路4と、BPF(バンドパスフィルタ)5と、積分器6と、高輝度レベル設定器7と、コンパレータ8と、計数器10と、除算器11と、マイクロコンピュータ12と、モータドライバ13と、モータ14と、から構成されている。
【0028】
撮影レンズ2は、被写体からの入射光を受光して撮像素子3の撮像面上に光学像を結像させる。撮像素子3は、たとえばCCDなどが用いられ、撮像面上に結像された光学像を走査することにより電気信号に変換して、カメラ回路4へ出力する。
【0029】
カメラ回路4は、図2に示すように、輝度信号生成部15と、飽和レベル処理部16と、から構成されている。輝度信号生成部15は、走査された光学像の電気信号を、一走査線ずつ輝度信号(たとえばY信号)に変換する。飽和レベル処理部16は、あらかじめ所定の飽和レベル輝度値、たとえば図3(b)に示す相対輝度値が100パーセントとなる輝度値が設定されている。また、生成された一走査線ごとの輝度信号のうち、飽和レベル以上の信号をカットする。
【0030】
BPF5は、飽和レベル処理部16から出力されてくる輝度信号の高周波成分を抽出し、積分器6に出力する。積分器6は、BPF5から出力されてくる輝度信号の高周波成分を整流し、整流後の輝度信号を積分処理して積分値を出力する。
【0031】
高輝度レベル設定器7は、輝度信号が高輝度であるか否かを判定するための高輝度レベルを設定する。この高輝度レベルは、図3(b)に示す飽和レベル近傍、たとえば、相対輝度値70パーセントから相対輝度値130パーセント程度に設定される。コンパレータ8は、飽和レベル処理部16から出力されてくる輝度信号と、高輝度レベル設定器7によって設定された高輝度レベルと、を比較する。そして、一走査線ごとの輝度信号が高輝度レベル以上であると判定された場合、計数器10に対し一パルス分の矩形波信号を出力する。
【0032】
計数器10は、コンパレータ8から出力されてきた矩形波信号の立ち上がりおよび立ち下がりの回数を計数する。すなわち、一矩形波信号につき、計数値NはN=2となる。この矩形波信号の立ち上がりと立ち下がりは、輝度信号の立ち上がりと立ち下がりに対応する。これにより、走査線が、光学像を通過する回数(通過回数)Nを検出することができる。
【0033】
除算器11は、積分器6から出力されてくる積分値Sを、計数器10から出力されてくる通過回数Nにより除算する。この除算した出力(積分値)を焦点量Fという。マイクロコンピュータ12は、算出された焦点量Fが最大となるように、たとえば、山登りサーボ方式による自動焦点調整処理により、モータドライバ13およびモータ14を駆動制御する。
【0034】
モータドライバ13は、マイクロコンピュータ12からの出力により、被写体が合焦するようにモータ14を駆動させる。モータ14は、モータドライバ13からの駆動指令により撮影レンズ2を光軸方向に移動させる。
【0035】
つぎに、図3〜図5を用いて本実施の形態の自動焦点調整装置1の焦点調整処理について説明する。図3は、高輝度被写体に合焦しているときの説明図である。図3(a)は、高輝度被写体の光学像Pを走査線L1〜L3により走査した説明図、図3(b)は、走査線L2上の輝度信号P1を示す波形図、図3(c)は、輝度信号P1の高周波成分を抽出した波形P2の波形図、図3(d)は、図3(c)の波形P2を整流した波形P3の波形図である。なお、図3(b)では、飽和レベルSAは相対輝度値100パーセント、高輝度レベルHは相対輝度値90パーセントに設定されている。
【0036】
まず、図3(a)に示すように、撮像素子3に高輝度被写体が撮像されると、撮像面上にその光学像Pが結像される。この被写体の光学像Pはピンボケしていないため、この光学像Pを走査線L1〜L3によって走査すると、走査線L2のみが通過する。高輝度被写体の光学像Pを通過しない走査線L1、L3については、輝度信号は生成されないこととなる。
【0037】
そして、図3(b)に示すように、高輝度被写体の光学像Pを通過した走査線L2上の輝度信号P1の相対輝度値は、およそ300パーセント程度にまで飽和している。この走査線L2を通過する光学像Pの輝度信号P1は、飽和レベル処理部16にて設定された飽和レベルSA以上となるため、図中一点鎖線で示す輝度値が、飽和レベル処理部16によってカットされる。
【0038】
このカットされた輝度信号P1のピーク値は、設定された高輝度レベルH以上、すなわち飽和レベルSAと一致するため、コンパレータ8から矩形波信号が1回出力され、その立ち上がりと立ち下がりを計数し、計数器10の計数値がN=2となる。これにより、走査線L2が光学像Pを通過したことを検出することができる。
【0039】
一方、この輝度信号P1は、図3(c)に示すように、BPF5によって高周波成分が抽出された波形P2となる。この波形P2は、輝度信号P1の立ち上がりおよび立ち下がりが急峻であるため、高周波レベルの高いピーク波形となる。そして、この波形P2を整流すると図3(d)に示す波形P3となる。そして、この波形P3を積分して積分値S(S=S1×2)を得る。この値を計数値N=2で除算することにより、焦点量F(F=S1)を算出する。
【0040】
つぎに、図3に示す被写体と同一被写体について、ピンボケした状態で撮像した場合について、図4および図5を用いて説明する。図4(a)は、ピンボケした被写体の光学像Qを走査線L0〜L4により走査した説明図、図4(b)は、走査線L1、L3上の輝度信号Q1、Q2を示す波形図、図4(c)は、輝度信号Q1、Q2の高周波成分を抽出した波形Q3、Q4の波形図、図4(d)は、図4(c)の波形Q3、Q4を整流した波形Q5、Q6の波形図である。
【0041】
また、図5(a)は、ピンボケした被写体の光学像Qを走査線L0〜L4により走査した説明図、図5(b)は、走査線L2上の輝度信号Q7を示す波形図、図5(c)は、輝度信号Q7の高周波成分を抽出した波形Q8の波形図、図5(d)は、図5(c)の波形Q8を整流した波形Q9の波形図である。
【0042】
なお、図4(b)および図5(b)では、図3(b)と同様、飽和レベルSAは相対輝度値100パーセント、高輝度レベルHは相対輝度値90パーセントに設定されている。
【0043】
図4(a)および図5(a)に示すように、被写体はピンボケしているためその光学像Qも、図3(a)に示す光学像Pに比べて、撮像面上に大きく結像される。したがって、この光学像Qを走査線L0〜L4によって走査すると、走査線L1〜L3が光学像Qを通過する。高輝度被写体の光学像Qを通過しない走査線L0、L4については、輝度信号は生成されないこととなる。
【0044】
そして、図4(a)および図5(a)に示すように、高輝度被写体の光学像Qを通過した走査線L1〜L3上の輝度信号Q1、Q2、Q7の相対輝度値は、ピンボケしているため、図4(b)および図5(b)に示すように、およそ150パーセント程度に飽和している。この走査線L1〜L3を通過する光学像Qの輝度信号Q1、Q2、Q7も、飽和レベル処理部16にて設定された飽和レベルSA以上となるため、図中一点鎖線で示す輝度値が、飽和レベル処理部16によってカットされる。
【0045】
このカットされた輝度信号Q1、Q2、Q7のピーク値はともに、設定された高輝度レベルH以上、すなわち飽和レベルSAと一致するため、コンパレータ8から矩形波信号が3回出力され、その立ち上がりと立ち下がりを計数し、計数器10の計数値がN=6となる。これにより、走査線L1〜L3が光学像Pを通過したことを検出することができる。
【0046】
一方、この輝度信号Q1、Q2、Q7は、図4(c)および図5(c)に示すように、BPF5によって高周波成分が抽出された波形Q3、Q4、Q8となる。この波形Q3、Q4、Q8は、図3(c)に比べると、輝度信号Q1、Q2、Q7の立ち上がりおよび立ち下がりがなだらかであるため、図3(c)の波形P2に比べて高周波レベルの低いピーク波形となる。
【0047】
そして、この波形Q3、Q4、Q8を整流すると図4(d)および図5(d)に示す波形Q5、Q6、Q9となる。そして、この各波形Q5、Q6、Q9をそれぞれ積分して積分値S(S=S2×2)を得る。
【0048】
したがって、このピンボケした高輝度被写体の光学像Qでは、3本の走査線L1〜L3が通過しているため、合計した積分値S’は、S’=3×(S2×2)=S2×6となる。また、計数器10が計数した通過回数Nの合計N’はN’=6回となる。これにより、除算器11により焦点量Fは、F=(6×S2)/6=S2となる。
【0049】
ここで、図11に示す従来の自動焦点調整装置100では、ピントがあった被写体の光学像Pの焦点量Fは、走査線の通過回数によって除算されないため、F=2×S1となり、ピンボケした被写体の光学像Qの焦点量Fも、走査線の通過回数によって除算されないため、F=6×S2となるため、逆転現象が生じることとなる。
【0050】
一方、本実施の形態では、計数器10の通過回数Nによって積分値S1,S2を除算しているため、図3によって算出された焦点量F=S1が、図4および図5によって算出された焦点量F=S2よりも大きくなる。このことから、本実施の形態では、算出される焦点量Fは、高輝度被写体の光学像P、Qの大きさには関係なく、光学像P、Qから得られる輝度信号の波形の立ち上がりおよび立ち下がりの傾斜にのみ依存した信号となる。
【0051】
この信号は、図3〜図5に示したように、焦点量は合焦により大きくなるため、ピントずれによって光学像の大きさが変化しても、焦点量が減少するという逆転現象が生じることはない。これにより、正確な焦点量によってフォーカス制御をおこなうことができる。
【0052】
つぎに、第2実施の形態について説明する。本実施の形態は、撮像素子3の撮像面を複数に分割する例である。なお、第1実施の形態と同一構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
図6に示すように、この自動焦点調整装置30は、撮影レンズ2と、撮像素子3と、カメラ回路4と、BPF(バンドパスフィルタ)5と、積分器6と、高輝度レベル設定器7と、コンパレータ8と、計数器10と、除算器11と、マイクロコンピュータ12と、モータドライバ13と、モータ14と、エリア信号発生器31と、加算器32と、から構成されている。
【0054】
カメラ回路4は、エリア信号発生器31に対し、輝度信号に関するタイミング信号を出力する。エリア信号発生器31は、図7に示すように、撮像面3Aを複数の小エリア、たとえば8×8=64分割にするエリア信号を積分器6に出力する。また、計数器10にはタイミング信号を出力する。積分器6はエリア信号により制御され、BPF5からの高周波成分を小エリアごとに積分して、除算器11に出力する。同様に、計数器10は、エリア信号発生器31からのタイミング信号により、小エリアごとに計数する。これにより、計数器10からは小エリアごとの計数値が除算器11に出力される。
【0055】
また、除算器11も小エリアごとに演算処理を実行し、小エリアごとに算出した小エリア焦点量を加算器32に出力する。加算器32は、小エリアごとの小エリア焦点量を加算して、全エリアの焦点量(総焦点量)を算出する。
【0056】
つぎに、図8および図9を用いて本実施の形態の自動焦点調整装置30の焦点調整処理について説明する。図8および図9は、図7に示すように、隣接する2つの小エリアD1、D2内の各被写体についての焦点調整処理を示す説明図である。なお、図8(a)〜図8(d)の左側は、図4と同一処理内容であり、図9(a)〜図9(d)の左側は、図5と同一処理内容であるため、その説明を省略する。
【0057】
図7、図8(a)および図9(a)に示すように、隣接する2つの小エリアD1、D2に、ピンボケした高輝度被写体の光学像Qと、通常輝度(たとえば相対輝度値が50パーセント程度)の被写体の光学像Rと、が結像された場合、走査線L1および走査線L3上の輝度信号Q1、Q2、R1、R2は、図8(b)に示すように出現し、図9(b)に示すように、走査線L2上の輝度信号Q7、R7は、図9(b)に示すように出現する。
【0058】
すなわち、通常輝度の輝度信号R1、R2、R7の相対輝度値は、本例では50パーセントであり、飽和レベルSAとなる相対輝度値100パーセントに達しておらず、また、高輝度レベルHとなる相対輝度値90パーセントにも達していない。したがって、コンパレータ8では、矩形波信号が出力されず、計数器10では計数されない。したがって、図8(c)および図9(c)に示すように、BPF5によって高周波成分の波形R3、R4、R8を抽出し、図8(d)および図9(d)に示すように、その高周波成分の波形R3、R4、R8を整流して、波形R5、R6、R9を生成する。
【0059】
この場合、図8および図9に示す小エリアD1内の光学像Qの焦点量F1は、走査線L1〜L3の通過回数Nが計数されているため、F1={(S2×2)×3}/6=S2となる。一方、小エリアD2内の通常輝度の被写体の光学像Rについては、計数器10の計数値は0となる。この場合は、計数値を1として除算器11に出力する。除算器11では、この小エリアD2の積分値S(S=(S3×2)×3)と計数値N(N=1)によって、小エリア焦点量F2={(S3×2)×3}/1=S3×6を算出する。このあと、加算器32により各小エリア焦点量が加算され、総焦点量FT(FT=F1+F2=S2+S3×6)を算出する。
【0060】
なお、小エリアに分割しない場合は、小エリアD1と小エリアD2の全積分値S(S=(S2×2+S3×2)×3)を、小エリアD1の光学像Qを通過する走査線L1〜L3の通過回数N(N=6)によって除算するため、焦点量Fは、F=S2+S3となり、上記の総焦点量FTよりも小さくなる。
【0061】
このように、撮像面3Aを小エリアに分割することによって、小エリアD1、D2ごとに小エリア焦点量F1、F2を算出することができ、各小エリア焦点量F1、F2を合計した総焦点量FTは、高輝度被写体の光学像Qと通常輝度の被写体の光学像Rとが混在する場合でも、ピンボケした光学像が広がることによる焦点量の逆転現象の発生を抑制することができる。
【0062】
なお、上述したいずれの実施の形態においても、飽和レベルSAを相対輝度値100パーセントとした場合、高輝度レベルの下限は相対輝度値90パーセントに設定することとしたが、この高輝度レベルの下限の相対輝度値は、80パーセント以上であれば充分高輝度被写体の輝度値を充足する。また、この場合の高輝度レベルの上限は、100パーセント未満に設定するのが望ましい。特に、装置の温度変化により飽和レベルSAの設定にずれが生じるため、高輝度レベルの上限を95パーセント程度に設定することにより、装置の温度変化によって飽和レベルSAに変動が生じても、高輝度被写体を検出することができる。
【0063】
また、上述したいずれの実施の形態においても、カメラ回路4からコンパレータ8に出力される輝度信号は、飽和レベル処理部16によって処理された輝度信号であったが、図10に示すように、輝度信号生成部15から出力された輝度信号を、飽和レベル処理部16によって処理する前に、コンパレータ8に出力する構成としてもよい。
【0064】
この場合、図3〜図5、図8および図9に示されている輝度信号の一点鎖線部分はカットされずに残されており、この輝度信号に対し、高輝度レベルを、相対輝度値100パーセントまたはその近傍、たとえば100パーセント〜120パーセント以内、好ましくは100パーセント〜110パーセント、より好ましくは100パーセント〜105パーセント以内に設定することとしてもよい。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明の自動焦点調整装置によれば、高輝度被写体が複数存在する場合、高輝度被写体と通常の輝度の被写体とが共存する場合、および高輝度被写体のみからなる場合であっても、ピンボケした光学像の大きさの変動に起因する焦点量の逆転現象を防止することができ、適切に合焦することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の第1実施の形態にかかる自動焦点調整装置の構成を示すブロック図である。
【図2】 この発明の第1実施の形態にかかるカメラ回路の内部構成を示すブロック図である。
【図3】 この発明の第1実施の形態にかかる自動焦点調整装置において、ピントが合っている高輝度被写体の焦点調整処理を示す説明図である。
【図4】この発明の第1実施の形態にかかる自動焦点調整装置において、ピンボケしている高輝度被写体の焦点調整処理を示す説明図である。
【図5】この発明の第1実施の形態にかかる自動焦点調整装置において、ピンボケしている高輝度被写体の焦点調整処理を示す説明図である。
【図6】 この発明の第2実施の形態にかかる自動焦点調整装置の構成を示すブロック図である。
【図7】この発明の第2実施の形態にかかる自動焦点調整装置において、撮像素子の撮像面を分割した状態を示す説明図である。
【図8】この発明の第2実施の形態にかかる自動焦点調整装置において、隣接する小エリアに結像された2つの光学像の焦点調整処理を示す説明図である。
【図9】この発明の第2実施の形態にかかる自動焦点調整装置において、隣接する小エリアに結像された2つの光学像の焦点調整処理を示す説明図である。
【図10】 カメラ回路の内部構成の変形例を示すブロック図である。
【図11】 従来の自動焦点調整装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1,30 自動焦点調整装置
2 撮影レンズ
3 撮像素子
3A 撮像面
6 積分器(第1の積分値算出手段)
8 コンパレータ(判定手段)
10 計数器(計数手段)
11 除算器(第2の積分値算出手段)
12 マイクロコンピュータ(駆動制御手段)
15 輝度信号生成部(輝度信号生成手段)
31 エリア信号発生器(分割手段)
32 加算器(総積分値算出手段)
H 高輝度レベル
L0〜L4 走査線
P、Q、R 光学像
P1、Q1、Q2、Q7、R1、R2、R7 輝度信号
Claims (3)
- 撮影レンズを駆動制御して被写体に合焦する自動焦点調整装置であって、
前記被写体から前記撮影レンズを介して入射された光によって光学像を結像させ、前記光学像を走査線ごとに走査して電気信号に変換する撮像素子と、
前記光学像を走査した走査線ごとに変換された電気信号に基づいて、前記光学像の輝度を表す輝度信号を生成する輝度信号生成手段と、
前記輝度信号生成手段によって生成された輝度信号が、予め設定された輝度レベル以上か否かを判定する判定手段と、
前記輝度レベル以上であると判定された輝度信号に対応する走査線が前記光学像を通過する通過回数を、前記走査線ごとに計数する計数手段と、
前記輝度信号生成手段によって生成された輝度信号から抽出される高周波成分を積分して第1の積分値を算出する第1の積分値算出手段と、
前記第1の積分値算出手段によって算出された第1の積分値の合計値を、前記計数手段によって計数された通過回数の合計値で割って、第2の積分値を算出する第2の積分値算出手段と、
前記第2の積分値が大きくなる方向に前記撮影レンズを駆動制御する駆動制御手段と、
を備えることを特徴とする自動焦点調整装置。 - 撮影レンズを駆動制御して被写体に合焦する自動焦点調整装置であって、
前記被写体から前記撮影レンズを介して入射された光によって光学像を結像させ、前記光学像を走査線ごとに走査して電気信号に変換する撮像素子と、
前記撮像素子の撮像面を複数の領域に分割する分割手段と、
前記光学像を走査した走査線ごとに変換された電気信号に基づいて、前記分割された領域内に結像された光学像の輝度を表す輝度信号を生成する輝度信号生成手段と、
前記輝度信号生成手段によって生成された輝度信号が、予め設定された輝度レベル以上か否かを前記走査線ごとに判定する判定手段と、
前記輝度レベル以上であると判定された輝度信号に対応する走査線が前記分割された領域内に結像された光学像を通過する通過回数を前記走査線ごとに計数するとともに、前記輝度レベル以上でないと判定された輝度信号に対応する走査線が前記分割された領域内に結像された光学像を通過する通過回数を1回として計数する計数手段と、
前記輝度信号生成手段によって生成された輝度信号から抽出される高周波成分を積分して、前記分割された領域ごとに前記高周波成分の積分値を算出する第1の積分値算出手段と、
前記第1の積分値算出手段によって算出された第1の積分値の合計値を、前記計数手段によって計数された通過回数の合計値で割って、第2の積分値を、前記分割された領域ごとに算出する第2の積分値算出手段と、
前記第2の積分値算出手段によって算出されたすべての第2の積分値から、総積分値を算出する総積分値算出手段と、
前記総積分値が大きくなる方向に前記撮影レンズを駆動制御する駆動制御手段と、
を備えることを特徴とする自動焦点調整装置。 - 前記輝度レベルは、前記輝度信号が飽和する所定の飽和レベル近傍のレベルであることを特徴とする請求項1または2に記載の自動焦点調整装置。
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