JP3844385B2 - オレフィン重合用触媒およびオレフィンの重合方法 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は新規なオレフィン重合用触媒および該オレフィン重合用触媒を用いたオレフィンの重合方法に関するものである。
【0002】
【発明の技術的背景】
オレフィン重合用触媒としては、いわゆるカミンスキー触媒がよく知られている。この触媒は非常に重合活性が高く、分子量分布が狭い重合体が得られるという特徴がある。
【0003】
このようなカミンスキー触媒に用いられる遷移金属化合物としては、たとえばビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(特開昭58ー19309号公報参照)や、エチレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド(特開昭61−130314号公報参照)などが知られている。また重合に用いる遷移金属化合物が異なると、オレフィン重合活性や得られたポリオレフィンの性状が大きく異なることも知られている。
【0004】
また最近新しいオレフィン重合用触媒としてジイミン構造の配位子を持った遷移金属化合物(国際公開特許第9623010号参照)が提案されている。
ところで一般にポリオレフィンは、機械的特性などに優れているため、各種成形体用など種々の分野に用いられているが、近年ポリオレフィンに対する物性の要求が多様化しており、様々な性状のポリオレフィンが望まれている。また生産性の向上も望まれている。
【0005】
このような状況のもとオレフィン重合活性に優れ、しかも優れた性状を有するポリオレフィンを製造しうるようなオレフィン重合用触媒の出現が望まれている。
【0006】
【発明の目的】
本発明は優れたオレフィン重合活性を有するオレフィン重合用触媒および該触媒を用いたオレフィンの重合方法を提供することを目的としている。
【0007】
【発明の概要】
本発明に係るオレフィン重合用触媒は
(A)下記一般式(I)で表される遷移金属化合物と、
【0008】
【化2】
【0009】
(式中、Mはニッケル原子を示し、
R1 、R2およびR4 は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が6〜20のアリール基であり、
R3 およびR5は、水素原子であり、
R6 〜R10は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭化水素基、有機シリル基、アルコキシ基またはアリーロキシ基を示し、これらのうち2個以上が互いに連結して環を形成してもよく、
nは、Mの価数を満たす数を示し、
Xは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、−OR11、−SR12、−N(R13)2 または−P(R14)2 (ただし、R11〜R14はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基または有機シリル基を示し、R13同士またはR14同士は互いに連結して環を形成してもよい。)を示し、またnが2以上の場合はXは互いに連結して環を形成してもよい。)
(B)(B-1a) 下記一般式で表される有機アルミニウム化合物、
Ra m Al(ORb )n Hp Xq
(式中、Ra およびRb は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)、および
(B-2) 有機アルミニウムオキシ化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物とからなることを特徴としている。
【0010】
本発明では、前記一般式(I)において、R1 およびR2 のうち少なくとも1つが、アリール基、アルキルアリール基、アルコキシアリール基、アリーロキシアリール基およびシリルアリール基から選ばれる芳香環を有する基であることが好ましい。
本発明に係るオレフィンの重合方法は、前記のような触媒の存在下に、オレフィンを重合または共重合させることを特徴としている。
【0011】
【発明の具体的な説明】
以下、本発明に係るオレフィン重合用触媒およびこの触媒を用いたオレフィンの重合方法について具体的に説明する。
【0012】
なお、本明細書において「重合」という語は、単独重合だけでなく、共重合をも包含した意味で用いられることがあり、「重合体」という語は、単独重合体だけでなく、共重合体をも包含した意味で用いられることがある。
【0013】
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、
(A)下記一般式(I)で表される遷移金属化合物と、
(B)(B-1) 有機金属化合物、
(B-2) 有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B-3) 遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物とから形成されている。
【0014】
まず、本発明のオレフィン重合用触媒を形成する各成分について説明する。
(A)遷移金属化合物
本発明で用いられる(A)遷移金属化合物は、下記一般式(I)で表される遷移金属化合物である。
【0015】
【化3】
【0016】
式中、Mは周期表第8〜11族の遷移金属原子を示し、好ましくはニッケル、パラジウム、コバルト、ロジウムである。
R1 〜R10は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭化水素基、有機シリル基、アルコキシ基またはアリーロキシ基を示す。
【0017】
炭化水素基として具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの炭素原子数が1〜20の直鎖または分岐状のアルキル基;フェニル基、ナフチル基などの炭素原子数が6〜20のアリール基;これらのアリール基に前記炭素原子数が1〜20のアルキル基などの置換基が1〜5個置換した置換アリール基などが挙げられる。
【0018】
有機シリル基として具体的には、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる。
【0019】
アルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基などが挙げられる。
【0020】
アリーロキシ基として具体的には、フェノキシ基、2,6-ジメチルフェノキシ基、2,4,6-トリメチルフェノキシ基などが挙げられる。
また、R1 〜R10は、これらのうち2個以上、好ましくは隣接する基が互いに連結してそれぞれが結合する炭素原子とともに芳香環などの環を形成していてもよい。
【0021】
R1 およびR2 は、そのうち少なくとも1つは芳香環または脂環を有する基である。芳香環を有する基としては、アリール基、およびアルキルアリール基、アルコキシアリール基、アリーロキシアリール基、シリルアリール基などの置換アリール基や、ベンジル基、ネオフィル基、ナフチルメチル基などのアリールアルキル基、さらに置換アリールアルキル基が挙げられる。また脂環を有する基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、シクロヘキシルメチルなどのシクロアルキルアルキル基、さらにこれらのシクロアルキル基部分が置換された置換シクロアルキル基、置換シクロアルキルアルキル基が挙げられる。
【0022】
アリール基として具体的には、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基などが挙げられる。
置換アリール基としては、上記アリール基に炭素原子数1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基が1〜5個置換したアルキルアリール基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基などのアルコキシ基が1〜5個置換したアルコキシアリール基;フェノキシ基、2,6-ジメチルフェノキシ基、2,4,6-トリメチルフェノキシ基などのアリーロキシ基が1〜5個置換したアリーロキシアリール基;メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基などの有機シリル基が1〜5個置換したシリルアリール基などが挙げられる。
【0023】
また、置換アリールアルキル基としては、上記と同様の置換アリール基を有する置換アリールアルキル基が挙げられる。
置換シクロアルキル基および置換シクロアルキルアルキル基としては、置換基として上記置換アリール基と同様の置換基を有する置換シクロアルキル基および置換シクロアルキルアルキル基が挙げられる。
本発明においては、R1 およびR2 の少なくとも1つ、好ましくは両方が芳香環または脂環を有する基であり、中でもアリール基、アルキルアリール基、アルコキシアリール基、アリーロキシアリール基またはシリルアリール基が好適である。
nは、遷移金属原子Mの価数を満たす数を示し、具体的には1〜4の整数である。
Xは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基を示す。
【0024】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
炭化水素基として具体的には、前記R1 〜R10と同様の炭素原子数が1〜20のアルキル基および炭素原子数が6〜20のアリール基、ベンジル基などの炭素原子数が7〜20のアラルキル基などが挙げられる。これらのアリール基、アラルキル基には前記炭素原子数が1〜20のアルキル基などの置換基が1個以上置換していてもよい。
【0025】
また、Xとして、−OR11、−SR12、−N(R13)2 または−P(R14)2 で表される基も示される。
R11〜R14は前記R1 〜R10と同様の炭素原子数が1〜20のアルキル基および炭素原子数が6〜20のアリール基;シクロヘキシル基などの炭素原子数が6〜20のシクロアルキル基;ベンジル基などの炭素原子数が7〜20のアラルキル基;メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基などの有機シリル基を示す。なお、上記アリール基、アラルキル基には、前記炭素原子数が1〜20のアルキル基などの置換基が1個以上置換していてもよい。そしてR13同士またはR14同士は互いに連結して環を形成していてもよい。
【0026】
nが2以上の場合、前記Xは、互いに連結して環を形成してもよい。
以下に、上記一般式(I)で表される遷移金属化合物の具体的な例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0027】
【化4】
【0028】
【化5】
【0029】
【化6】
【0030】
なお、上記例示中、Meはメチル基、Etはエチル基、Phはフェニル基、Naphtylはナフチル基を示す。
本発明では、上記のような化合物において、ニッケル原子を鉄、コバルト、銅、ロジウム、パラジウムなどのニッケル以外の周期表第8〜11族の金属原子に置き換えた遷移金属化合物を用いることもできる。
【0031】
これらの遷移金属化合物のうち、その遷移金属化合物の原料である下記一般式(II)
【0032】
【化7】
【0033】
(式中、R1 〜R10は、一般式(I)のR1 〜R10と同じである。)
で示される化合物のMOPAC VERSION 6.00、ハミルトニアン PM3法にて算出した最高被占軌道(highest occupied molecular orbital、HOMO)と最低空軌道(lowest unoccupied molecular orbital、LUMO)とのエネルギー差が9.00以下のものが好ましく、8.50以下のものがより好ましい。HOMOとLUMOとのエネルギー差が上記の範囲にあると、このようなから得られる遷移金属化合物を用いたオレフィン重合用触媒は、重合活性に優れる。
【0034】
(B-1) 有機金属化合物
本発明で用いられる(B-1) 有機金属化合物として、具体的には下記のような周期表第1、2族および第12、13族の有機金属化合物が挙げられる。
【0035】
(B-1a) 一般式 Ra m Al(ORb )n Hp Xq
(式中、Ra およびRb は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)
で表される有機アルミニウム化合物。
【0036】
(B-1b) 一般式 M2 AlRa 4
(式中、M2 はLi、Na、Kを示し、Ra は炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す。)
で表される1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。
【0037】
(B-1c) 一般式 Ra Rb M3
(式中、Ra およびRb は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、M3 はMg、ZnまたはCdである。)
で表される2族または12族金属のジアルキル化合物。
【0038】
前記(B-1a)に属する有機アルミニウム化合物としては、次のような化合物などを例示できる。
一般式 Ra m Al(ORb )3-m
(式中、Ra およびRb は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、mは好ましくは1.5≦m≦3の数である。)
で表される有機アルミニウム化合物、
一般式 Ra m AlX3-m
(式中、Ra は炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは好ましくは0<m<3である。)
で表される有機アルミニウム化合物、
一般式 Ra m AlH3-m
(式中、Ra は炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、mは好ましくは2≦m<3である。)
で表される有機アルミニウム化合物、
一般式 Ra m Al(ORb )nXq
(式中、Ra およびRb は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+q=3である。)
で表される有機アルミニウム化合物。
【0039】
(B-1a)に属するアルミニウム化合物としてより具体的には
トリエチルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウムなどのトリn-アルキルアルミニウム;
トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリ tert-ブチルアルミニウム、トリ2-メチルブチルアルミニウム、トリ3-メチルブチルアルミニウム、トリ2-メチルペンチルアルミニウム、トリ3-メチルペンチルアルミニウム、トリ4-メチルペンチルアルミニウム、トリ2-メチルヘキシルアルミニウム、トリ3-メチルヘキシルアルミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;
トリシクロヘキシルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;
トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;
ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;
トリイソプレニルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウム;
イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシド、イソブチルアルミニウムイソプロポキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド;
ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
Ra 2.5 Al(ORb )0.5 などで表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、エチルアルミニウムビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、ジイソブチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、イソブチルアルミニウムビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)などのアルキルアルミニウムアリーロキシド;
ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド;
エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;
エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0040】
また(B-1a)に類似する化合物も使用することができ、たとえば窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物として具体的には、
(C2 H5 )2 AlN(C2 H5 )Al(C2 H5 )2
などを挙げることができる。
【0041】
前記(B-1b)に属する化合物としては、
LiAl(C2 H5 )4
LiAl(C7 H15)4 などを挙げることができる。
【0042】
その他にも、(B-1) 有機金属化合物としては、一般式
(i-C4 H9 )x Aly (C5 H10)z
(式中、x、yおよびzは正の数であり、z≧2xである。)
で表されるイソプレニルアルミニウムを使用することもできる。
【0043】
さらにその他にも、(B-1) 有機金属化合物としては、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、プロピルマグネシウムブロミド、プロピルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリド、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウムなどを使用することもできる。
【0044】
また重合系内で上記有機アルミニウム化合物が形成されるような化合物、たとえばハロゲン化アルミニウムとアルキルリチウムとの組合せ、またはハロゲン化アルミニウムとアルキルマグネシウムとの組合せなどを使用することもできる。
【0045】
上記のような(B-1) 有機金属化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
(B-2) 有機アルミニウムオキシ化合物
本発明で用いられる(B-2) 有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0046】
従来公知のアルミノキサンは、たとえば下記のような方法によって製造することができ、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。
(1)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類、たとえば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0047】
なお該アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収された上記のアルミノキサンの溶液から溶媒または未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、溶媒に再溶解またはアルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。
【0048】
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として具体的には、
トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリtert- ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、
トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム、
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド、
ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド、
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド、
ジエチルアルミニウムフェノキシドなどのジアルキルアルミニウムアリーロキシドなどが挙げられる。
【0049】
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。
またアルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として、下記一般式で表されるイソプレニルアルミニウムを用いることもできる。
【0050】
(i-C4 H9 )x Aly (C5 H10)z
(式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。)
上記のような有機アルミニウム化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0051】
アルミノキサンの調製に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分または上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物とりわけ、塩素化物、臭素化物などの炭化水素溶媒が挙げられる。さらにエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を用いることもできる。これらの溶媒のうち特に芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素が好ましい。
【0052】
また本発明で用いられるベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であり、ベンゼンに対して不溶性または難溶性である。
【0053】
本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物としては、下記一般式(III)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることもできる。
【0054】
【化8】
【0055】
式中、R11は炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示す。
R12は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、シロキシ基、低級アルキル基置換シロキシ基または炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示す。
【0056】
前記一般式(III)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物は、下記一般式(IV)で表されるアルキルボロン酸と
R11−B−(OH)2 … (IV)
(式中、R11は前記と同じ基を示す。)
有機アルミニウム化合物とを、不活性ガス雰囲気下に不活性溶媒中で、−80℃〜室温の温度で1分〜24時間反応させることにより製造できる。
【0057】
前記一般式(IV)で表されるアルキルボロン酸の具体的なものとしては、メチルボロン酸、エチルボロン酸、イソプロピルボロン酸、n-プロピルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、n-ヘキシルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸、フェニルボロン酸、3,5-ジフルオロボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸などが挙げられる。これらの中では、メチルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、3,5-ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸が好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0058】
このようなアルキルボロン酸と反応させる有機アルミニウム化合物として具体的には、アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として先に例示した化合物と同じものが挙げられる。
【0059】
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、特にトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0060】
上記のような(B-2) 有機アルミニウムオキシ化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
(B-3) 遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物
本発明で用いられる遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物(B-3) (以下、「イオン化イオン性化合物」という。)は、前記遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物であり、このような化合物としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、USP−5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。
【0061】
具体的には、ルイス酸としては、BR3 (Rは、フッ素、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素である。)で示される化合物が挙げられ、たとえば
トリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4-フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p-トリル)ボロン、トリス(o-トリル)ボロン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ボロンなどが挙げられる。
【0062】
イオン性化合物としては、たとえば下記一般式(V)で表される化合物が挙げられる。
【0063】
【化9】
【0064】
式中、R13としては、H+ 、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどが挙げられる。
【0065】
R14〜R17は、互いに同一でも異なっていてもよく、有機基、好ましくはアリール基または置換アリール基である。
前記カルボニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンなどが挙げられる。
【0066】
前記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン;ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0067】
前記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
【0068】
R13としては、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどが好ましく、特にトリフェニルカルボニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
【0069】
またイオン性化合物として、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などを挙げることもできる。
【0070】
トリアルキル置換アンモニウム塩として具体的には、たとえばトリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o-トリル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(m,m-ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(o-トリル)ホウ素などが挙げられる。
【0071】
N,N-ジアルキルアニリニウム塩として具体的には、たとえばN,N-ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N-ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0072】
ジアルキルアンモニウム塩として具体的には、たとえばジ(1-プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0073】
さらにイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、N,N-ジエチルアニリニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、下記式(VI)(VII)で表されるホウ素化合物などを挙げることもできる。
【0074】
【化10】
【0075】
(式中、Etはエチル基を示す。)
【0076】
【化11】
【0077】
ボラン化合物として具体的には、たとえばデカボラン(14);
ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ウンデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカクロロデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカクロロドデカボレートなどのアニオンの塩;
トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ドデカハイドライドドデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0078】
カルボラン化合物として具体的には、たとえば4-カルバノナボラン(14)、1,3-ジカルバノナボラン(13)、6,9-ジカルバデカボラン(14)、ドデカハイドライド-1-フェニル-1,3-ジカルバノナボラン、ドデカハイドライド-1-メチル-1,3-ジカルバノナボラン、ウンデカハイドライド-1,3-ジメチル-1,3-ジカルバノナボラン、7,8-ジカルバウンデカボラン(13)、2,7-ジカルバウンデカボラン(13)、ウンデカハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボラン、ドデカハイドライド-11-メチル-2,7-ジカルバウンデカボラン、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-トリメチルシリル-1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムブロモ-1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム6-カルバデカボレート(14)、トリ(n-ブチル)アンモニウム6-カルバデカボレート(12)、トリ(n-ブチル)アンモニウム7-カルバウンデカボレート(13)、トリ(n-ブチル)アンモニウム7,8-ジカルバウンデカボレート(12)、トリ(n-ブチル)アンモニウム2,9-ジカルバウンデカボレート(12)、トリ(n-ブチル)アンモニウムドデカハイドライド-8-メチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-エチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-ブチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-アリル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-9-トリメチルシリル-7,8-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-4,6-ジブロモ-7-カルバウンデカボレートなどのアニオンの塩;
トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-1,3-ジカルバノナボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)銅酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)金酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(トリブロモオクタハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)マンガン酸塩(IV)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0079】
上記のような(B-3) イオン化イオン性化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
また、本発明に係るオレフィン重合用触媒は、上記遷移金属化合物(A)、(B-1) 有機金属化合物、(B-2) 有機アルミニウムオキシ化合物および(B-3) イオン化イオン性化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)とともに、必要に応じて後述するような微粒子状担体(C)を含んでいてもよい。
【0080】
(C)微粒子状担体
本発明で必要に応じて用いられる(C)微粒子状担体は、無機または有機の化合物であって、粒径が10〜300μm、好ましくは20〜200μmの顆粒状ないしは微粒子状の固体が使用される。このうち無機化合物としては多孔質酸化物が好ましく、具体的にはSiO2 、Al2 O3 、MgO、ZrO、TiO2 、B2 O3 、CaO、ZnO、BaO、ThO2 など、またはこれらを含む混合物、たとえばSiO2-MgO、SiO2-Al2 O3 、SiO2-TiO2 、SiO2-V2 O5 、SiO2-Cr2 O3 、SiO2-TiO2-MgOなどを例示することができる。これらの中でSiO2 およびAl2 O3 からなる群から選ばれた少なくとも1種の成分を主成分とするものが好ましい。
【0081】
なお、上記無機酸化物は少量のNa2 CO3 、K2 CO3 、CaCO3 、MgCO3 、Na2 SO4 、Al2 (SO4)3 、BaSO4 、KNO3 、Mg( NO3)2 、Al(NO3)3 、Na2 O、K2 O、Li2 Oなどの炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物成分を含有していても差しつかえない。
【0082】
このような(C)微粒子状担体は種類および製法によりその性状は異なるが、本発明に好ましく用いられる担体は、比表面積が50〜1000m2 /g、好ましくは100〜700m2 /gの範囲にあり、細孔容積が0.3〜2.5cm3 /gの範囲にあることが望ましい。該担体は、必要に応じて100〜1000℃、好ましくは150〜700℃で焼成して用いられる。
【0083】
さらに、本発明に用いることのできる微粒子状担体(C)としては、粒径が10〜300μmの範囲にある有機化合物の顆粒状ないしは微粒子状固体を挙げることができる。これら有機化合物としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンなどの炭素原子数が2〜14のα−オレフィンを主成分として生成される(共)重合体またはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される重合体もしくは共重合体を例示することができる。
【0084】
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、上記のような遷移金属化合物(A)と、(B-1) 有機金属化合物、(B-2) 有機アルミニウムオキシ化合物および(B-3) イオン化イオン性化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)と、必要に応じて微粒子状担体(C)とからなる。図1に本発明に係るオレフィン重合用触媒の調製工程を示す。
【0085】
重合の際には、各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれるが、以下のような方法が例示される。
(1) 成分(A)と、(B-1) 有機金属化合物、(B-2) 有機アルミニウムオキシ化合物および(B-3) イオン化イオン性化合物から選ばれる少なくとも1種の成分(B)(以下単に「成分(B)」という。)とを任意の順序で重合器に添加する方法。
(2) 成分(A)と成分(B)を予め接触させた触媒を重合器に添加する方法。
(3) 成分(A)と成分(B)を予め接触させた触媒成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
(4) 成分(A)を微粒子状担体(C)に担持した触媒成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(5) 成分(A)と成分(B)とを微粒子状担体(C)に担持した触媒を重合器に添加する方法。
(6) 成分(A)と成分(B)とを微粒子状担体(C)に担持した触媒成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
(7) 成分(B)を微粒子状担体(C)に担持した触媒成分、および成分(A)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(8) 成分(B)を微粒子状担体(C)に担持した触媒成分、成分(A)、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
【0086】
上記の微粒子状担体(C)に成分(A)および成分(B)が担持された固体触媒成分はオレフィンが予備重合されていてもよい。
本発明に係るオレフィンの重合方法では、上記のようなオレフィン重合用触媒の存在下に、オレフィンを重合または共重合することによりオレフィン重合体を得る。
【0087】
本発明では、重合は溶解重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法いずれにおいても実施できる。
液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などを挙げることができ、オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0088】
上記のようなオレフィン重合用触媒を用いて、オレフィンの重合を行うに際して、成分(A)は、反応容積1リットル当り、通常10-8〜10-2モル、好ましくは10-7〜10-3モルとなるような量で用いられる。
【0089】
成分(B-1) は、成分(B-1) と成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-1) /M〕が、通常0.01〜5000、好ましくは0.05〜2000となるような量で用いられる。成分(B-2) は、成分(B-2) 中のアルミニウム原子と成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-2) /M〕が、通常10〜5000、好ましくは20〜2000となるような量で用いられる。成分(B-3) は、成分(B-3) と成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比〔(B-3) /M〕が、通常1〜10、好ましくは1〜5となるような量で用いられる。
【0090】
また、このようなオレフィン重合用触媒を用いたオレフィンの重合温度は、通常−50〜200℃、好ましくは0〜170℃の範囲である。重合圧力は、通常常圧〜100kg/cm2 、好ましくは常圧〜50kg/cm2 の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である
。
【0091】
得られるオレフィン重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。
また、得られるオレフィン重合体の分子量は、使用する遷移金属化合物(A)の違いにより調節することもでき、たとえば、下記式(VIII)で示される遷移金属化合物を用いるとオレフィンの高重合体が得られる。
【0092】
【化12】
【0093】
このようなオレフィン重合用触媒により重合することができるオレフィンとしては、炭素原子数が2〜20の直鎖状または分岐状のα−オレフィン、たとえば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン;炭素原子数が3〜20の環状オレフィン、たとえば、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-メチル1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレンが挙げられる。
【0094】
また本発明では、前記オレフィンとともに極性モノマーを用いることができ、極性モノマーとしては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ビシクロ(2,2,1)-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸などのα,β−不飽和カルボン酸、およびこれらのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのα,β−不飽和カルボン酸金属塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸 tert-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチルなどのα,β−不飽和カルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニルなどのビニルエステル類;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸モノグリシジルエステルなどの不飽和グリシジルなどを挙げることができる。さらにスチレン、ビニルシクロヘキサン、ジエンなどを用いることもできる。
【0095】
【発明の効果】
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、高い重合活性を有し、分子量分布が狭いオレフィン(共)重合体が得られ、かつ2種以上のオレフィンを共重合したときに組成分布が狭いオレフィン共重合体が得られる。
本発明に係るオレフィンの重合方法は、高い重合活性で、分子量分布が狭いオレフィン(共)重合体が得られ、かつ2種以上のオレフィンを共重合したときに組成分布が狭いオレフィン共重合体が得られる。
【0096】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、本実施例において分子量分布(Mw/Mn)は、o-ジクロルベンゼンを溶媒として、140℃においてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定して求めた。
【0097】
【実施例1】
化合物 (A-1) の合成
200ml三つ口フラスコに窒素雰囲気中、エタノール50ml、トルエン25ml、2,4,6-トリフェニルアニリン3.23g(10.1mmol)、およびピリジン-2-アルデヒド0.95ml(10mmol)を挿入し60℃で10時間、80℃で10時間反応後、反応液を濃縮し黄褐色固体を得た。この固体をトルエンとヘキサンの混合溶液で再結晶することで、下記式(a)で示される黄色結晶2.63gを得た(収率64%)。この化合物のMOPAC VERSION 6.00、ハミルトニアン PM3法にて算出したHOMOとLUMOのエネルギー差は8.13evであった。
MASS(FD) 410(M+ )
【0098】
【化13】
【0099】
300mlの3つ口フラスコに窒素雰囲気下、(DME)NiBr20.55g(1.78mmol)と無水アセトン70mlを装入し室温で撹拌した。ここに、上記で得られた化合物(a)0.75g(1.83mmol)を無水アセトン40mlで溶解させた溶液を、室温のまま10分かけて滴下し、4時間半撹拌した。反応液をグラスフィルターで濾過し、得られた濾液を減圧下で濃縮することで橙色固体を得た。この固体を塩化メチレンとヘキサンの混合溶液でリスラリーし、グラスフィルターで濾過後、濾過物をヘキサン30mlで2回洗浄し、真空乾燥させ下記式で示される化合物(A-1) を黄色固体として0.90gを得た(収率89%)。
MASS(FD) 569(M+ )
【0100】
【化14】
【0101】
重合
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製オートクレーブにトルエン250mlを装入し、これにエチレンを100リットル/時間で流通させ、25℃で10分間放置した。その後、メチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で1.25ミリモル加え、引き続き上記で得られたニッケル化合物(A-1)を0.005ミリモル加え重合を開始した。エチレンガスを100リットル/時間の量で連続的に供給し、常圧下、25℃で1時間重合を行った後、少量のメタノールを添加し重合を停止した。ポリマー溶液を大過剰のメタノールに加え、ポリマーを析出させ、130℃で12時間減圧下に乾燥させた。その結果、Mwが740であり、Mw/Mnが1.20であるポリエチレン1.04gが得られた。
【0102】
【実施例2】
十分に窒素置換した内容積2リットルのステンレス製オートクレーブに、トルエン500mlを装入し、エチレンガスを流通させて液相と気相をエチレンで飽和させた。続いて、メチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で1.25ミリモル、上記で得られたニッケル化合物(A-1) を0.0025ミリモル加え、エチレン圧を8kg/cm2-G 、温度を30℃に保ち30分間重合した。重合終了後、反応液を3リットルのメタノールに加えて撹拌し、濾過によってポリマーを分取し、50℃で12時間乾燥した。その結果Mwが1400であり、Mw/Mnが1.56のポリエチレン27.15gが得られた。重合活性は21700g/mmol・Ni・hであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るオレフィン重合用触媒の調製工程を示す説明図である。
Claims (2)
- (A)下記一般式(I)で表される遷移金属化合物と、
R1 、R2およびR4 は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が6〜20のアリール基であり、
R3 およびR5は、水素原子であり、
R6 〜R10は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭化水素基、有機シリル基、アルコキシ基またはアリーロキシ基を示し、これらのうち2個以上が互いに連結して環を形成してもよく、
nは、Mの価数を満たす数を示し、
Xは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、−OR11、−SR12、−N(R13)2 または−P(R14)2 (ただし、R11〜R14はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基または有機シリル基を示し、R13同士またはR14同士は互いに連結して環を形成してもよい。)を示し、またnが2以上の場合はXは互いに連結して環を形成してもよい。)
(B)(B-1a) 下記一般式で表される有機アルミニウム化合物、
Ra m Al(ORb )n Hp Xq
(式中、Ra およびRb は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)、および
(B-2) 有機アルミニウムオキシ化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物とからなることを特徴とするオレフィン重合用触媒。 - 請求項1に記載のオレフィン重合用触媒の存在下にオレフィンを重合または共重合することを特徴とするオレフィンの重合方法。
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