JP3843136B2 - トロポニンiの生物学的適用における標準尺度として有用な合成ビエピトープ化合物 - Google Patents

トロポニンiの生物学的適用における標準尺度として有用な合成ビエピトープ化合物 Download PDF

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Description

本発明は、トロポニンIのアッセイ用のイムノアッセイにおける標準として用いることができる合成ビエピトープ化合物、それらの製造方法、かかる化合物を含有する組成物およびキット、ならびに、かかる化合物を用いるイムノアッセイ方法に関する。
トロポニンは、3種類の蛋白質、すなわち、トロポニンI、TおよびCからなる筋原線維蛋白質複合体であることが知られている。この蛋白質複合体は、ミオシンおよびアクチンと相互作用することによりCa2+イオンによる筋肉収縮の調節に寄与することができる。より正確には、神経インパルスが筋肉の運動終板のレベルに達すると、筋小胞体に伝達される活動電位が発生することが知られている。次いで、Ca2+がサイトゾル中に放出され、トロポニンCに結合し、これは、トロポニンIおよびトロポニンC間の相互作用を補強し、したがって、トロポニンI、T、C複合体のコンフォメーションを変化させる。次いで、アクチン−ミオシン相互作用部位が遊離し、筋肉収縮運動を可能にする。
筋肉が損傷を受けると、それが心筋梗塞後の心筋壊死の間に心筋であろうと、持続性の肉体的作業の間の骨格筋であろうと、トロポニンが血流中に多かれ少なかれ迅速に放出される。
かくして、トロポニンのアッセイは、Circulation (1991), 83 pp. 902-912におけるトロポニンTのアッセイであろうと、Am. Heart J. (1987), 110, pp. 1333-1344およびMolecular Immunology (1992), 29(2), pp. 271-278におけるトロポニンIのアッセイであろうと、最近、心筋梗塞の初期診断ために推奨されている。同様に、心筋梗塞後の血栓崩壊治療の成功を測定するための心臓トロポニンTのアッセイは、Br. Heart J., (1994), 71,pp. 242-248に提案されており、骨格筋に対する損傷の測定用の骨格トロポニンIのアッセイも提案されている(abstract No.35 of the American Association for Clinical Chemistry, 46th National Meeting, New Orleans, July 17-21, 1994)。現在、種々の心臓トロポニンおよび骨格トロポニンのアッセイがヒトおよび動物病理学の診断用の非常に有用な手段であることに注目すべきである。
生物学的分析研究所において行われるイムノアッセイが、該アッセイに必要な試薬(すなわち、標識または非標識抗体、顕示薬(revealing agent)および希釈液)に加えて、研究すべき試料の条件と同様の条件下で用いる場合、結果を算出するための参照としておよび/または正の対照としての役割を果たす測定すべき化合物用の標準の製造業者による供給を必要とすることは、よく知られている。
測定すべき化合物用の標準および/または対照を得るために、凍結乾燥形態(使用前に使用者が該化合物を溶解する溶媒を添えた)またはすぐに使用できる精製した化合物を用いることが可能である。
生物学的試薬は不安定であるために、凍結乾燥生成物から調製した標準または対照溶液は、単位用量で冷凍し、−80℃で保存する。さらにまた、これらの溶液は、プロテアーゼ阻害剤または抗菌剤をそれらに添加した場合でさえ、+4℃で2、3時間以上安定ではないことが観察された。したがって、これは、使用者が使用直前にそれらの標準溶液を調製することを必要とする。
フランス特許公開番号第2,701,954号の下に公開された特許出願には、トロポニンIまたはTの当量あたり1〜10モル当量のトロポニンCの割合でトロポニンCと混合したトロポニンIまたはトロポニンTおよび塩化カルシウムを含有する水溶液からなることを特徴とするイムノアッセイ用のトロポニンIまたはTの安定化溶液が記載されている。この技術では、多少希釈したトロポニンIまたはTの標準溶液を+4℃で数日間保存できる。
フランス特許公開番号第2,734,267号の下に公開された特許出願には、トロポニンI、トロポニンTおよびトロポニンCにより形成された三成分複合体からなるトロポニンの標準溶液が記載されている。
これらの標準を得るために用いられる原料は、ヒトまたは動物起源のものであり、かくして得られた標準または対照は、+4℃で約1ヶ月間安定である。
PCT出願公開WO 94/15217には、トロポニンIのN末端ペプチドを認識する抗体の調製用の免疫原として有用ないくつかの合成ペプチドが記載されている。これらのペプチドのいくつかは、PCT出願公開WO 94/15217により包含される発明の主題である抗体を用いるトロポニンIのイムノアッセイにおいて標準として用いることができる。
同様に、PCT出願公開WO 94/27156は、心臓トロポニンIに対して特異的な抗体を用いる心臓トロポニンIのアッセイ方法に関する。これらの抗体は、骨格筋トロポニンIにはなく、したがって、心臓トロポニンIに対して特異的な配列を有するペプチドフラグメントから調製することができる。しかしながら、この出願には、トロポニンIのイムノアッセイにおいて標準としてある種のペプチドフラグメントを用いる可能性について記載も示唆もしていない。
PCT出願公開WO 96/27661には、蛋白質およびペプチドを安定化するための水溶液が記載されていることも知られている。これらの溶液は、特に、蛋白質またはペプチドについての診断試験における適用が見出される。
PCT出願公開WO 96/27661によると、これらの水溶液は、トロポニンI全体ほど安定ではないことが知られているトロポニンIのフラグメントの安定性を増加させることができる。
1997年1月8日に公開されたヨーロッパ特許出願公開第752426号には、また、高分子量蛋白質(>100KD)またはポリマーなどの担体分子に結合した1種類以上のペプチドを含有するトロポニンI標準が記載されている。
ヨーロッパ特許出願公開第650053号には、樹脂状構造をもってお互いに結合し合っている1種類以上の受容体に対する活性部位を含有する合成標準が記載されている。この出願には、さらに詳しくは、3週間だけ溶液中で安定なトロポニンTについての合成標準が記載されている。
今、数ヶ月間安定な、トロポニンIの評価のために用いることができる合成標準を得ることができることが見出された。
確かに、本発明化合物の特異的構造は、それらに優れた安定性を与える。
したがって、本発明化合物は、数ヶ月間溶液中で安定な非常に標準化された標準を得ることができ、動物の臓器からトロポニンI標準を調製するのに必要な精製工程および複雑な抽出工程を回避することができる。
本発明化合物は、リンカーによりお互いに結合されたトロポニンIの2種類のエピトープを含有し、一般式I:
Ξ−E1−Z−E2−Ψ (I)
[式中、
1およびE2は、同一または異なって、トロポニンIの最小エピトープまたは伸長エピトープのいずれかを含有するペプチド配列を表し、
Zは、
・アミノ酸(aa)1〜40個のペプチド配列(ただし、−E1−Z−E2−は、一緒になってトロポニンI配列の一部を形成しない)、
・線状または分枝アミノ(C1−C10アルキル)カルボニル鎖、または、
・アミノ酸1〜10個の少なくとも1種類のペプチド配列および少なくとも1種類の線状または分枝アミノ(C1−C10アルキル)カルボニル鎖からなる混合構築物
を表し、
Ξは、
・水素原子、アセチル基、アミノ酸1〜10個のペプチド配列、アミノ酸1〜10個のN−α−アセチル化ペプチド配列、システイニル、ビオチニルもしくはビオシチニル基、または、システイニル、ビオチニルもしくはビオシチニル残基を有するアミノ酸1〜10個のペプチド配列、
・線状または分枝アミノ(C1−C10アルキル)カルボニル鎖、
・N−α−アセチル化線状または分枝アミノ(C1−C10アルキル)カルボニル鎖、
・アミノ酸1〜10個の少なくとも1種類のペプチド配列および少なくとも1種類の線状または分枝アミノ(C1−C10アルキル)カルボニル鎖からなる混合構築物、
・アミノ酸1〜10個の少なくとも1種類のペプチド配列およびビオチニル、ビオシチニルもしくはシステイニル残基を有する少なくとも1種類の線状または分枝アミノ(C1−C10アルキル)カルボニル鎖からなる混合構築物
を表し、
Ψは、
・ヒドロキシル基、アミノ基、アミノ酸1〜10個のペプチド配列、アミノ末端基を有するアミノ酸1〜10個のペプチド配列、
・線状または分枝アミノ(C1−C10アルキル)カルボニル鎖、
・ヒドロキシル基またはアミノ基を有する線状または分枝アミノ(C1−C10アルキル)カルボニル鎖、
・アミノ酸1〜10個の少なくとも1種類のペプチド配列および少なくとも1種類の線状または分枝アミノ(C1−C10アルキル)カルボニル鎖からなる混合構築物、
・アミノ酸1〜10個の少なくとも1種類のペプチド配列およびヒドロキシル基またはアミノ基を有する少なくとも1種類の線状または分枝アミノ(C1−C10アルキル)カルボニル鎖からなる混合構築物
を表す]
で示される。
−E1−Z−E2−が、少なくとも1個のアミノ酸、好ましくは、2個のアミノ酸、特に、5個のアミノ酸の非保存性置換、欠失または挿入によりトロポニンI配列の所定のフラグメントとは異なる場合、−E1−Z−E2−は、トロポニンI配列の一部ではないと考えられる。
Zは、特に、
・式II:
−NH−(CH2)m−CO− (II)
[式中、mは、1〜10の整数を表す]
で示される鎖、または、
・式III〜V:
−[pep1−NH−(CH2)m−CO]p− (III)
−[pep1−NH−(CH2)m−CO−pep2]p− (IV)
−[NH−(CH2)m−CO−pep2]p− (V)
[式中、
mは、1〜10の整数を表し、
pは、1〜5の整数を表し、
pep1およびpep2は、同一または異なっており、アミノ酸2〜10個を含有するペプチド鎖を表す]
で示される混合構築物を表し;
Ξは、特に、
・式IIa:
−NH−(CH2)q−CO− (IIa)
[式中、qは、1〜10の整数を表す]
で示される鎖、または、
・式IIIa〜Va:
−[pep3−NH−(CH2)q−CO]r− (IIIa)
−[pep3−NH−(CH2)q−CO−pep4]r− (IVa)
−[NH−(CH2)q−CO−pep4]r− (Va)
[式中、
qは1〜10の整数を表し、
rは、1〜5の整数を表し、
pep3およびpep4は、同一または異なっており、アミノ酸2〜10個を含有するペプチド鎖を表す]
で示される混合構築物;
・N−α−アセチル化された式IIa〜Vaで示される鎖、または、ビオチニル、ビオシチニルまたはシステイニル残基を有する式IIa〜Vaで示される鎖を表し;
Ψは、特に、
・式IIb:
−NH−(CH2)s−CO− (IIb)
[式中、sは、1〜10の整数を表す]
で示される鎖、または、
・式IIIbからVb:
−[pep5−NH−(CH2)s−CO]t− (IIIb)
−[pep5−NH−(CH2)s−CO−pep6]t− (IVb)
−[NH−(CH2)s−CO−pep6]t− (Vb)
[式中、
sは、1〜10の整数を表し、
tは、1〜5の整数を表し、
pep5およびpep6は、同一または異なっており、アミノ酸2〜10個を含有するペプチド鎖を表す]
で示される混合構築物;
・ヒドロキシル基またはアミノ酸を有する式IIb〜Vbで示される鎖
を表す。
本発明の化合物のうち、好ましいものは、Ξが式IIaで示される鎖、または、式IIIa〜Vaで示される混合構築物、または、N−α−アセチル化された式IIa〜Vaで示される鎖、または、ビオチニル、ビオシチニルもしくはシステイニル残基を有する式IIa〜Vaで示される鎖を表す化合物である。
本発明の化合物のうち、好ましいものは、また、Ψが式IIbで示される鎖、または、式IIIb〜Vbで示される混合構築物、または、ヒドロキシル基もしくはアミノ基を有する式IIb〜Vbで示される鎖を表す化合物である。
Zが式IIで示される鎖または式III〜Vで示される混合構築物のいずれかを表す本発明化合物が、特に好ましい。
トロポニンIの最小エピトープを含有するペプチド配列は、抗トロポニンIモノクローナル抗体によって決定した。かかる抗体は、Larue et al. (Molec. Immunology, (1992), vol.20 No.29, pp.271-278)、Bodor et al. (Clin. Chem. (1992), vol.38 No.11, pp.2203-2214)、Granier et al. (Protein Science, (1997), vol.6 suppl.1, p.61)により、および、PCT出願公開WO 94/15217に記載されている。これらの抗体の大部分は、市販されている(フィンランド国トゥルクのハイテスト・リミテッド(Hytest LTD))。
トロポニンIの最小エピトープを含有するペプチド配列を決定するために、アミノ酸7個の上記ペプチド配列と重複するアミノ酸10個のペプチドの同時合成は、以下のスキームにより行った:
−ペプチド1=アミノ酸1−10
−ペプチド2=アミノ酸4−13
−ペプチド3=アミノ酸7−16
−その他。
一般に、合成され試験されたペプチドは、蛋白質の完全配列を記載している(Vallins et al., FEBS Letters (1990), vol.270 No.1-2, pp.57-61)。
次いで、用いたモノクローナル抗体の各々と反応するペプチドを各ペプチドの各抗体との結合についての免疫酵素試験により同定した。
例えば、抗トロポニンIモノクローナル抗体について、FEBS Letters (1990), vol.270 No.1-2, pp.57-61に記載されているように、各抗体に対して免疫学的に反応性を有する最小エピトープを含有するペプチド配列およびトロポニンI配列におけるこのペプチド配列の位置を以下に示す。
Figure 0003843136
アミノ酸の置換、欠失または挿入によりペプチド配列から誘導されたペプチド配列は、また、それらが抗体への結合に対して等価な結合性を示すので、本発明の範囲内に属する。
以下の線状配列E1および/またはE2 No. 1〜5が好ましい。
Figure 0003843136
上記配列は、非限定的な例として挙げられる。
リンカーZがペプチド配列を含有する場合、後者は、配列E1および/またはE2と一緒にトロポニンIの伸長エピトープを形成する。この伸長エピトープは、特に、配列−TEPHAKK−または−GALLGAR−または−PTLRRVRISA−または−GKFKRPTLRRVR−または−LGFAELQD−または−NYRAYATEPH−または−AYATEPH−または−LGFAELQ−などを有する。
抗体に対する免疫学的応答を増幅するこれらの伸長エピトープは、上記のとおり決定された最小エピトープを含有するペプチド配列にアミノ酸を付加することにより決定された。
上記のとおり、リンカーZのペプチド配列は、1〜40アミノ酸からなる。Zのペプチド配列を形成するアミノ酸の数は、30未満、特に、20未満であるのが好ましい。
Zの特に好ましいペプチド配列としては、以下のアミノ酸配列:
Figure 0003843136
から選択される配列が挙げられる。
Zのこの特に好ましいペプチド配列は、アミノ酸ストレッチの繰り返しを含有してもよく、30個未満のアミノ酸を有する。
例として、以下の式(式中、nは、1〜5の整数を表す)で示されるZペプチド配列が挙げられる:
Figure 0003843136
Figure 0003843136
Figure 0003843136
Zは、式III〜V(式中、mは、1〜10の整数である)で示される混合構築物を表してもよい。
非限定的な例としては、Zは、以下の配列を表してもよい:
Figure 0003843136
本発明の好ましい化合物は、式I(式中、Zとして、上記で定義した配列No.6〜26から選択される配列が挙げられる)で示されるビエピトープ化合物である。
Ξおよび/またはΨがペプチド配列を含有する場合、この配列は、結合されるE1および/またはE2と一緒に伸長エピトープを形成してもよい。
有利には、Ξの化学構造は、本発明のビエピトープ化合物を、天然担体蛋白質、ペプチド構築物または固相に結合させるような構造である。
式IaおよびIb:
Figure 0003843136
で示される合成ビエピトープペプチドは、式Iで示されるペプチドの一部を形成し、好ましいペプチドである。
式IaおよびIaにおいて、
Zは、以下の配列:
Figure 0003843136
(ここで、nは1〜5の整数を表し、mは、1〜10の整数を表す)
から選択される配列を含むかまたは表し;
Ξは、所望により、以下の配列:
Figure 0003843136
から選択される配列を含有するペプチド配列の残基と結合していてもよいアセチル基、システイニル基、ビオチニルまたはビオシチニル基を表し;
Ψは、アミノ残基または以下の配列:
Figure 0003843136
の1つを含有するペプチド配列を表す。
以下に記載する配列27〜33の1つを含むペプチドが好ましい:
Figure 0003843136
Figure 0003843136
以下の式IaおよびIbで示される合成ビエピトープペプチドは、特に好ましいペプチドである。以下の2つの表において、ペプチド配列は、一文字表記を用いて示される。
Figure 0003843136
式IaおよびIbにおいて、E1およびE2に相当する下線を付したアミノ酸配列は、トロポニンIの最小エピトープを表す。Zの下線を付したアミノ酸は、それらが結合するE1またはE2と一緒になってトロポニンIの伸長エピトープを形成する。
上記化合物のうち、化合物5、6、10、11、12、13、14および15は、特に好ましい化合物である。
これらのペプチドは、以下の配列を有する:
Figure 0003843136
Figure 0003843136
Figure 0003843136
本発明の主題である式Iで示される合成エピトープ化合物は、慣用的な方法に従って固相合成法により得られる:R. B. Merrifield, J. Amer. Chem. Soc. (1963), 85, pp.2149-2154;R. C. Sheppard, in “Peptides 1971”, Nesvadba H(ed.)North Holland, Amsterdam, pp.111;E. Atherton and R. L. Sheppard, in“Solid phase peptide synthesis, a practical approach”, IRL PRESS, (1989), Oxford University Press, pp.25-34。自動合成器として、ミリポア9050プラス・ペプ・シンセサイザー(Millipore 9050 Plus Pep Synthesizer)または同等のシンセサイザーを用いることができる。
合成用の固体支持体は、用いられる技術および化学に適合すべきである。例えば、9050プラス・ペプ・シンセサイザーでの合成のためには、いわゆる「コンティニアス・フロー(continuous flow)」法に適した樹脂を用いることが推奨される;PEG PS樹脂は、これらの基準を満たしている。これらの支持体は、ビーズのポリスチレンの官能基と最初のアミノ酸の結合部位との間にあるポリエチレングリコール(PEG)をベースとするスペーサーからなる。固定部のこの部位の性質は、選択されたC末端官能基により変化してもよい。例えば、アミドの形態のペプチドについては、PAL PEG PS型樹脂が用いられる。
原料として用いられる出発樹脂およびアミノ酸は、市販品である(パーセプティデ−バイオシステム(PerSeptive-Biosystem))。
以下の側鎖保護基を用いた:
Figure 0003843136
9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基により第一アミン官能基をアミノ酸のα位で一時的に保護した。脱保護は、ジメチルホルムアミド中20%ピペリジン溶液を用いて行われる。
カップリングについては、好ましくは、過剰のジイソプロピルカルボジイミド(DIPCDI)および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)が用いられる。
合成後、該樹脂を有機溶媒(ジメチルホルムアミド、次いで、ジクロロメタン)で洗浄し、真空乾燥させ、次いで、0℃に冷却した適当なスキャベンジャーを含有するトリフルオロ酢酸をベースとした溶液で処理した。例えば、トリフルオロ酢酸82%、フェノール5%、水5%、チオアニソール5%およびエタンジチオール3%を含有するK試薬を用いることができる。
次いで、かくして単離した合成ビエピトープペプチドを沈殿させ、エーテルで洗浄する。
次いで、該合成ビエピトープ化合物を逆相液体クロマトグラフィーに付すことにより精製し、それらの純度を質量分析法により測定する。例えば、相として、ボンダパック(Bondapak)C18相を用いることができる。2つの緩衝液間で線形勾配液を形成することにより(最初は、実質的に水性(例えば、水−TFA0.1%)であり、次は、有機性(例えば、アセトニトリル60%、水40%およびTFA0.08%を含有する混合物)である)、該ペプチドを溶離する。回収した純粋なフラクションを合わせ、真空濃縮し、凍結乾燥させた。
トロポニンIアッセイキットを用いて、式Iで示される化合物のビエピトープ特徴を測定した。例えば、サンドイッチ型イムノアッセイを用い、ペプチド配列E1およびE2と反応するモノクローナル抗体を含有するキットを用いることができる。
ビエピトープ特徴を測定するために、式Iで示される化合物を、例えば、正常ヒト血清または緩衝液であってもよいキットの希釈剤中で希釈し、それらを患者の試料と同様にアッセイする。
トロポニンIの免疫学的アッセイ用の標準としての式Iで示される化合物の使用もまた、本発明の一部である。
本発明は、また、式Iで示される化合物を含有する組成物に関する。それらは、好ましくは、緩衝液中の式Iで示される化合物からなる水溶液または組成物である。緩衝液としては、例えば、カソン(Kathon)およびBSAまたはカソン、レジレイト
Figure 0003843136
およびEDTA、またはカソン、プラスミオン(Plasmion)および所望によりEDTA、またはカソン、カゼインおよびEDTAを含有するリン酸緩衝液(KH2PO4/K2HPO4pH=6.5−7.5)を用いることができる。
また、カソンおよびBSAまたはカソン、レジレイトおよびEDTAまたはカソン、プラスミオンおよび所望によりEDTA、またはカソン、カゼインおよびEDTAを含有するコハク酸緩衝液(pH=5−6)またはトリス−HCl緩衝液(pH=7.5−8.5)を用いることができる。
グリシン、カソン、レジレイトおよびEDTAを含有する緩衝液を用いることもできる。
カソン、レジレイトおよびEDTAを含有するコハク酸またはリン酸緩衝液が好ましい。
ローム・アンド・ハース(Rhom and Haas)社により市販されている抗菌剤であるカソン(登録商標)(Kathon▲R▼)は、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(1.5%)からなる。
レジレイト(登録商標)
Figure 0003843136
は、レジレイト
Figure 0003843136
社により市販されている。
プラスミオン(登録商標)(Plasmion▲R▼)は、ベロン・ラボラトリーズ(Bellon Laboratories)により市販されており、水中の加工液体ゼラチン(30g/l)、NaCl(5.382g/l)、MgCl(143mg/l)、KCl(373mg/l)、乳酸ナトリウム(3.360g/l)からなる。
以下の緩衝液が特に好ましい:
−カソン(0.2%)、レジレイト(0.05−2%)および2mM EDTAを含有する0.1Mコハク酸緩衝液(pH=6)、
−カソン(0.2%)、カゼイン(0.01−0.5%)および2mM EDTAを含有する0.1Mコハク酸緩衝液(pH=6)、
−カソン(0.2%)、レジレイト(0.05−0.5%)および2mM EDTAを含有する0.1Mリン酸緩衝液(KH2PO4/K2HPO4)(pH=7.5)、
−カソン(0.2%)、カゼイン(0.01−0.1%)および2mM EDTAを含有する0.1Mリン酸緩衝液(KH2PO4/K2PO4)(pH=7.5)。
血漿および式Iで示される化合物を含有する組成物は、また、本発明の一部である。
標準または対照として式Iで示される化合物を用いるイムノアッセイ法はまた、本発明の一部である。
本発明は、また、式Iで示される化合物または式Iで示されるビエピトープペプチドを含有する組成物を含有するイムノアッセイ用キットに関する。
以下の実施例により本発明を説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
実施例1:
本発明化合物(ペプチド10)の製造
Figure 0003843136
固相上でこのペプチドを合成した。Merrifieldにより1963年に開発されたこの技術(J. Am. Chem. Soc. (1963)85, pp. 2149-2154)は、酸官能基により高分子固体支持体(樹脂)上に最初のアミノ酸を結合させ、この最初のアミノ酸からペプチド配列を伸長させることからなり、該ペプチドは、該樹脂上に固定されたまま合成される。
化合物10の合成のために、合成器として9050プラス・ペプ・シンセサイザーを用い、樹脂として上記PEG PS樹脂を用いた。
合成の種々の工程を表1に示す:
Figure 0003843136
合成の最後に、樹脂を、ジメチルホルムアミド、次いで、ジクロロメタンで洗浄し、真空乾燥させた。
次いで、樹脂をK試薬(トリフルオロ酢酸82%;フェノール5%;水5%;チオアニソール5%;エタンジオール3%)で処理した。次いで、沈殿により単離された化合物10をジエチルエーテルで洗浄し、化合物10 0.529gを得た。
同様の方法で、適当なアミノ酸を用いて、本発明の他の化合物を合成した。
質量分析により測定された式IaおよびIbで示されるいくつかの化合物の分子量を以下に示す。
Figure 0003843136
実施例2:
本発明のペプチドの免疫反応性の評価
トロポニンIアッセイキットを用いて、上記化合物のビエピトープ特徴を測定した。それは、キットERIAトロポニンIパスツール・コード79691(ERIA Troponin I Pasteur Code 79691)である。
その原理は、ヒト血清において心臓トロポニンIを定量的にアッセイするサンドイッチ型免疫酵素法に基づいている。
固相は、抗心臓トロポニンIモノクローナル抗体(8E1)で被覆されたポリスチレンチューブからなる。
ペルオキシダーゼに結合した第2の抗心臓トロポニンIモノクローナル抗体(11E12)により視覚化される。
該試験は、以下の工程からなる:
固相に固定された抗心臓トロポニンIモノクローナル抗体の存在下、試料および標準(動物起源のトロポニンI標準)ならびにペルオキシダーゼ結合モノクローナル抗体をインキュベートする。
一連の洗浄後、テトラメチルベンジジン色素原を添加することにより、酵素的視覚化を行う。
視覚化を停止した後、λ=450nmで化学濃度を測定する。得られた吸光度は、チューブ中に存在する心臓トロポニンIの濃度と直接関連がある。
化合物1、2、5、6、10、11および12を水に溶解した(場合に応じて、C=1mg/または2mg/ml)。これらの溶液を、レジレイト0.05%およびカソン0.2%および2mM EDTAを含有する0.1Mコハク酸緩衝液pH=6を用いて再希釈した。次いで、核「最終溶液」を、上記プロトコールの「試料」としてアッセイした。
さらにまた、化合物1、2、10および11をヒト血清中で希釈した後に試験した。この場合、濃度2mg/mlの化合物1、2、10および11を含有する水性「保存」溶液を正常ヒト血清中で希釈することにより「最終溶液」を得た。
全ての化合物は、トロポニンIのアッセイにおいて反応性を示す。
実施例3:
安定性の試験
本発明化合物(化合物10)を水に希釈した(C=2mg/ml)。この「保存」溶液から、4つの「実験」溶液S1、S2、S3およびS4を得る。
種々の希釈を行うために、溶液S1(C=0.5ng/ml)およびS2(C=1ng/ml)については、カソン(0.2%)、レジレイト(0.05%)および2mM EDTAを含有する0.1Mコハク酸ナトリウム緩衝液(pH=6)を用いた。
「保存」溶液を、カソン(0.2%)、レジレイト(0.05%)および2mM EDTAを含有するリン酸緩衝液(KH2PO4/K2HPO4pH=7.5)で希釈することにより、溶液S3(C=0.5ng/ml)およびS4(C=1ng/ml)を得た。
D0(溶液調製日)に、実施例2に記載したプロトコールに従って、溶液S1、S2、S3およびS4をアッセイした。得られた値は、安定性のモニターリング用の参照として供された。
次いで、溶液S1、S2、S3およびS4を+4℃で保存し、定期的にアッセイした。アッセイの各シリーズの間、3つの「対照溶液」を用いた。それらは、アッセイ測定範囲に分布された乾燥トロポニンI対照血清である。これらの血清について、凍結乾燥対照血清の貯蔵寿命は、18ヶ月を超えることが予め示された。各安定性試験の間、試験された対照の各々がその目標濃度で得られたことをチェックした。したがって、これにより、種々の試験の間にペプチドに対して得られた濃度を比較することができた。特に、D0(溶液調製日)の本発明化合物の溶液の濃度を、安定性試験の間の本発明化合物の濃度と比較することができた。対照について、安定性試験の間、一定の値が常に見出されるということは、行われた試験を実証することができる。
安定性試験の間に得られた結果を表2および3に示す。
Figure 0003843136
Figure 0003843136
表1および2に示された結果は、本発明の化合物10の溶液の優れた安定性を示す。
式Iで示される他の化合物を用いて行われた試験は、それらの安定性が化合物10のものに匹敵することを示した。例えば、化合物6を用いて行った試験は、カソン(0.2%)、レジレイト(0.2%)および2mM EDTAを含有する0.1Mコハク酸緩衝液(pH=6)中溶液中で+4℃で保存した場合、この化合物が少なくとも9ヶ月間優れた安定性を有することを確認した。化合物6は、0.25、4.8および18ng/mlの濃度を得るために、上記緩衝液に溶解させた。
この安定性試験は、−20℃で保存され参照として用いられる化合物6により実証された。
−20℃で少なくとも18ヶ月間保存した場合、化合物6が安定であることは、予めチェックされた。この試験の結果を表4に示す。
Figure 0003843136

Claims (10)

  1. 式I:
    Ξ−E1−Z−E2−Ψ (I)
    [式中、
    1およびE2は、同一または異なって、トロポニンIの最小エピトープからなるペプチド配列を表し、ここで、最小エピトープは以下の配列:
    Figure 0003843136
    らなる群から選択され、
    Zは、
    式IV:
    −[pep1−NH−(CH2)m−CO−pep2]p− (IV)
    [式中、
    mは、5であり、
    pは、1であり、
    pep1およびpep2は、同一または異なっており、各々、E1エピトープのC端末およびE2エピトープのN末端に隣接するトロポニンI配列からのアミノ酸2〜10個からなるペプチド鎖を表す]
    で示される混合構築物
    を表し、
    Ξは、
    ・水素原子、アセチル基、アミノ酸1〜10個のペプチド配列、アミノ酸1〜10個のN−α−アセチル化ペプチド配列、システイニル、ビオチニルもしくはビオシチニル基、または、システイニル、ビオチニルもしくはビオシチニル残基を有するアミノ酸1〜10個のペプチド配列、
    ・線状または分枝アミノ(C1−C10アルキル)カルボニル鎖、または
    ・N−α−アセチル化線状または分枝アミノ(C1−C10アルキル)カルボニル
    表し、
    Ψは、
    ・ヒドロキシル基、アミノ基、アミノ酸1〜10個のペプチド配列、C末端にアミノ末端基を有するアミノ酸1〜10個のペプチド配列、ここで、該アミノ末端基は、C末端アミノ酸残基のカルボン酸基とアミド基を形成するアミノ基である、または
    ヒドロキシル基またはアミノ基を有する線状または分枝アミノ(C1−C10アルキル)カルボニル
    表す]
    で示されるビエピトープ化合物。
  2. 式IaまたはIb:
    Figure 0003843136
    [式中、
    Zは、配列No.26:−Ala Lys Lys−NH−(CH2)m−CO−Ala Met Met Gln Ala−(ここで、mは、5である)を表し;
    Ξは、以下の配列;
    Figure 0003843136
    から選択される配列を含有するペプチド配列の残基と結合していてもよいアセチル基、システイニル基、ビオチニルまたはビオシチニル基を表し;
    Ψは、アミノ基または以下の配列:
    Figure 0003843136
    から選択される配列を含有するペプチド配列を表す]
    で示される請求項1記載のビエピトープ化合物。
  3. 以下の化合物:
    化合物6
    Figure 0003843136
    および
    化合物14
    Figure 0003843136
    から選択される請求項1記載のビエピトープ化合物。
  4. トロポニンIのイムノアッセイにおける標準としての請求項1記載のビエピトープ化合物の使用。
  5. 水、血漿または緩衝液中溶液中の請求項1記載の式Iで示される化合物を含有する、トロポニンIのイムノアッセイ用組成物。
  6. 緩衝液がリン酸緩衝液、コハク酸緩衝液またはトリス−HCl緩衝液から選択される請求項5記載の組成物。
  7. 緩衝液が以下の溶液:
    −カソン(登録商標)、レジレイト(登録商標)およびEDTAを含有するコハク酸緩衝液(0.1M pH=5−6)、
    −カソン、カゼインおよびEDTAを含有するコハク酸緩衝液(0.1M pH=5−6)、
    −カソン、レジレイトおよびEDTAを含有するリン酸緩衝液(KH2PO4/K2HPO4 0.1M pH=6.5−7.5)、
    −カソン、カゼインおよびEDTAを含有するリン酸緩衝液(KH2PO4/K2HPO4 0.1M pH=6.5−7.5)
    のいずれか1種類である請求項5記載の組成物。
  8. 標準または対照として請求項1記載の式Iで示されるビエピトープ化合物を用いるトロポニンIのイムノアッセイ方法。
  9. イムノアッセイがサンドイッチ型のものである請求項8記載の方法。
  10. 請求項1記載の式Iで示されるビエピトープペプチドまたは請求項5記載の式Iで示されるビエピトープ化合物を含有する組成物を含有するトロポニンIのイムノアッセイ用キット。
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