JP3842739B2 - 散乱光式煙感知器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、外部から流入した検煙空間内の煙粒子による光の散乱光を受光して火災を検出する散乱光式煙感知器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の散乱光式煙感知器としては例えば図12のものがある(特許文献1)。図12(A)において、感知器本体100の下部にカバー102が装着され、その内部に煙が流入する検煙空間103を形成している。検煙空間103内の感知器本体100側にはホルダー104が装着され、ホルダー104には開口110,112を介して発光部106と受光部108が収納される。
【0003】
この構造にあっては、図12(B)に示すように、発光部106は光軸114の方向に光を出し、流入した煙に光が当たることによる散乱光を光軸116の方向から受光部108で受光している。
【0004】
ここで発光部106と受光部108は、感知器における仮想的な水平面上で光軸110,116が斜めに交差するように配置し、光軸交点118の散乱角θを所定の角度に設定している。ここで、散乱角θに対する補角となる光軸の交差角δを構成角と呼び、θ=180°−δの関係にある。
【0005】
更に間に二枚の遮光板120,122を配置し、遮光板120で受光部108に向かう直接光を遮り、次の遮光板122で手前の遮光板120の先端に当たった光の反射光を遮るための光トラップを形成している。
尚、この従来構造にあっては、図12(A)のように、発光部106と受光部108の光軸を3°〜5°程度下向きにして光軸交点が検煙空間103の上部面に近づきすぎないように調整している。
【0006】
しかしながら、このような従来の散乱光式煙感知器の構造にあっては、感知器内部の煙が流入する検煙空間103に発光部106、受光部108、遮光板120,122等が突出しており、外部からの煙の流入に方向性を持つ可能性が高いという不具合がある。
【0007】
そこで検煙空間103への煙流入に方向性を持たないようにするため、例えば図13のような散乱光式煙感知器が知られている(特許文献2)。
【0008】
図13において、感知器本体200の下部にカバー202が装着され、その内部に煙が流入する検煙空間203を形成している。検煙空間203内の感知器本体200側にはホルダー204が装着され、ホルダー204には開口210,212を介して発光部206と受光部208が埋め込まれ、検煙空間203に飛び出すことのない構造となっており、煙の流入特性に方向性が無い構造をとっている。
【0009】
発光部206は光軸214の方向に光を出し、流入した煙に光が当たることによる散乱光を光軸216の方向に設置された受光部208で受光する。このため感知器内の仮想的な鉛直面に、発光部206と受光部208を対向しないように光軸214,216を斜め下向きに配置し、光軸交点218の散乱角θを所定の角度に設定している。なお、構成角δは、θ=180°−δの関係にある。
【0010】
一方で、火災による煙の種類は燃焼する材料等により、煙の粒子径は比較的大きなものから小さなものまで様々である。このため、様々な粒子径の煙に対し、極力感度に差のないようにすることがひとつの課題とされている。
【0011】
煙粒子径に対し、感度差の少ない散乱角θは60〜90°程度(構成角δでは90〜120°)であることが知られている(特許文献3)。
【0012】
しかし、図13の従来構造にあっては、煙粒子径に対する感度差を少なくするために散乱角θを例えば60°というように大きくすると、ホルダー204の設置面に対し光軸交点218'のように下にさがり、その分、感知器の高さを大きくしなければならず、さらに天井面からの反射光の影響を避けるため感知器(検煙部)を薄型化できないために、鉛直面上で散乱角θを60〜90°といった適切な角度範囲とすることができない。
【0013】
この場合、散乱角を60〜90°とするために発光部206と受光部208の間隔を狭くすれば、薄型化が可能であるが、この場合、受光部に対する電気的な誘導や直接の漏れ光の影響の問題が発生する。すなわち発光部と受光部は極力遠ざけて配置する必要があるため、検煙空間の高さを変えずに散乱角を60°〜90°にしようとすると、検煙部を薄型にすることができない。
【0014】
そこで本願出願人にあっては、検煙部を更に薄型に構成し、かつ散乱角を自在に設定可能とし、検煙空間への煙流入に方向性が無く、更に発光部と受光部を極力遠ざけて配置できる光電式煙感知器を提案している(特願2002−4221)。
【0015】
この散乱光式煙感知器は、図14のように、検煙部の一方の検煙部本体300に発光部302および受光部303を、検煙空間内に突出することなく発光側開口部301と受光側開口部304を開けて埋設し、検煙空間に向かう発光部302からの光軸と検煙空間内の煙粒子によって散乱されて受光部303に向かう散乱光の光軸が、水平方向に所定の角度で交差し且つ鉛直方向に所定の角度で交差するように、発光部302と受光部303を固定している。
【0016】
このように発光部302と受光部303を検煙空間に対する取付面側に埋め込み、光軸の散乱角を60〜90°の範囲に設定した状態で水平方向及び垂直方向の両方に所定の角度を持つように配置したことで、取付面に対する光軸交点の飛び出し高さを低くし、検煙空間全体として更に薄型にできる。
【0017】
また発光部と受光部の光軸交差による散乱角を60〜90°程度の範囲に設定することで、煙の粒子選択性を低減することができる。更に、取付面に対し光軸交点の飛び出し高さを低くしても、発光部と受光部を近づくことが無いため、受光部が受ける電気的な誘導や漏れ光の影響などの問題も起きない。
【0018】
【特許文献1】
実公昭59−10606号公報
【特許文献2】
特開昭60−10393号公報
【特許文献3】
特開平7−72073号公報
【特許文献4】
実開昭63−103190号公報
【特許文献5】
特開平1−259495号公報
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
ところで図13に示す散乱光式煙感知器において、発光部開口部220と受光部開口部221の開口形状は矩形状となっており、受光部開口部220と発光部開口部221の間隔はセンター部222においても、エッジ部223においても一律、距離L5が保たれる。
【0020】
これに対し図14のように発光部302と受光部303を検煙空間に対する取付面側に埋め込んで水平方向及び垂直方向の両方に所定の角度を持つように配置した散乱光式煙感知器にあっては、発光側矩形開口部301及び受光側矩形開口部304との間の距離は、各開口部のセンター部cの間の距離L4と各開口部のエッジ部d間の距離L3とが異なることとなる。
【0021】
このため、発光側の矩形開口305における受光側の矩形開口306に近いエッヂdの点線の丸の部分に粉塵や糸埃などが付着した場合、発光部302からの光が粉塵や糸埃などに当って散乱することにより迷光を増大させ、同等の大きさの粉塵やその糸埃がセンター部cに付着した場合よりも散乱による迷光が受光部に入射し易くなるという問題がある。
【0022】
本発明は、検煙空間に対する取付面側に埋め込こまれた発光部及び受光部の開口部付近に粉塵や糸埃などが付着した場合の受光部への影響を最小限に抑えるようにした散乱光式煙感知器を提供することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため本発明は次のように構成する。まず本発明は、発光部および受光部を検煙空間内に突出することなく開口部を設けて取付面側に埋設すると共に、検煙空間に向かう発光部からの光軸と検煙空間内の煙粒子によって散乱されて受光部に向かう散乱光の光軸が、水平方向に所定の角度で交差し且つ鉛直方向に所定の角度で交差するように、発光部と受光部を配置した散乱光式煙感知器を対象とする。
【0024】
このような構造の散乱光式煙感知器につき本発明にあっては、発光部及び又は受光部の各開口部の向かい合う側での開口形状を略楕円形状の一部とし、各開口部の向かい合う側の間隔を大きくすることを特徴とする。また、開口形状は、矩形開口のコーナ部を垂直方向に切り欠いた形状であっても良い。
【0025】
このように発光部と受光部の向かい合う側の開口形状を略楕円形状の一部とすることで、従来の矩形開口における開口部の間隔を短くしているエッジ部分がなくなり、開口縁部に粉塵や糸埃などが付着しても、受光部側開口との距離を長くできることで、受光部に対する影響を最小限に抑え、S/N比の低下を防ぐことができる。
【0026】
また発光部及び受光部の開口部は、開ロ部周囲に側壁を起立している。また受光側側壁と発光側側壁の高さが略同等であり、更に、発光部側側壁において受光部に近い側の側壁が受光部に遠い側の側壁よりも高く形成される。
【0027】
このような発光部側壁の受光部に近い側の側壁を反対側の側壁に対し高く形成することで、受光部に遠い側の低い方の側壁に糸埃などが付着して散乱光を生じても、この散乱光は開放高い方の側壁に当たって遮られ、受光部に対する影響を最小限に抑え、S/N比の低下を防ぐことができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
図1は本発明による散乱光式煙検知器の実施形態を示した断面図である。図1において、散乱光式煙感知器は、感知器本体1とカバー2で構成される。感知器本体1は、検煙部本体5の下部に取り付けられた検煙部カバー6と検煙部本体5の上部に取り付けられた端子盤13で構成されている。
【0031】
検煙部本体5の下部に配置された検煙部カバー6内には、検煙空間4が形成されている。検煙空間4の周囲には検煙部カバー6と一体にラビリンス14が形成され、外部からの煙を容易に流入させる経路をつくると同時に、外部からの光の入射を遮っている。このラビリンス14の周囲に位置するカバー2の部分には煙流入口3が開口されている。
【0032】
検煙部本体5はその裏側となる上部に回路基板12を配置すると共に、検煙空間4側に発光部7と受光部8を設けており、それぞれのリード線を回路基板12に接続し、発光駆動及び受光処理を行うようにしている。発光部7は発光側開口部9を介して検煙空間4に光を照射し、検煙空間4に煙が流入した際の煙粒子に光が当たった時に生ずる散乱光を、受光側開口部10を介して受光部8に入射するようにしている。
【0033】
ここで本発明にあっては、検煙空間4に向かう発光部7からの光軸と、検煙空間内の煙粒子によって散乱されて受光部8に向かう散乱光の光軸が水平方向に所定の角度αで交差し、且つ鉛直方向に所定角度βで交差するように検煙部本体5に発光部7と受光部8を配置している。
【0034】
図2は図1の散乱光式煙感知器の組立分解図である。図2において、感知器本体1は、端子盤13に対し下側より検煙部本体5を組み付け、更に検煙部本体5に対し下側から検煙部カバー6を組み付けている。組立の済んだ感知器本体1はカバー2に収納され、図1のような組立状態を得ることができる。
【0035】
図3は本発明における検煙部本体5を検煙空間4側から見た斜視図である。検煙部本体5の検煙空間側の面には発光側開口部9と受光側開口部10が形成されている。この検煙部本体5における発光側開口部9及び受光側開口部10の部分の断面は、図4に示すようになる。
【0036】
図4は本発明における検煙部本体5と検煙部カバー6を組み合わせた検煙部アッセンブリの断面図であり、図1,図2に対し上下を逆にして示している。図4において、検煙部本体5に対し発光部7及び受光部8は検煙空間4に向かう発光部7からの発光光軸25と、検煙空間4内の煙粒子によって散乱された受光部8に向かう散乱光の受光光軸26が、後の説明で明らかにするように、水平方向に所定の角度αで交差し、且つ鉛直方向に角度βで交差するように配置している。
【0037】
また発光部7の収納部に続いては円筒穴15が形成され、この円筒穴15に続いて開口凹部16が形成され、円筒穴15は開口凹部16の内壁面に開口している。同様に受光部8側についても受光穴18と開口凹部19が形成され、開口凹部19に受光穴18が開口している。
【0038】
図5(A)は図3の検煙部本体5に設けている発光部7と受光部8の設置位置に対応した光学的な位置関係を3次元座標空間で模式的に表している。
【0039】
図5(A)において、発光部7による発光点Pからの発光光軸25をベクトルで示し、光軸交点Oからの散乱光が入射する受光光軸26を受光部9の受光点Qに対するベクトルで示している。
【0040】
この発光点P、光軸交点O及び受光点Qを結ぶ三角形が本発明の煙感知器構造における散乱光式煙検知のための仮想的な光学面であり、三角形POQを形成する面はxy平面となる水平面及びzx平面となる鉛直面のそれぞれに対し、ある角度を持って配置されている。
【0041】
説明を簡単にするため発光点Pのx軸上への投影を投影点Aとなるように配置しており、従って発光光軸14の鉛直方向の傾斜角φは、この場合x軸に対する角度となる。
【0042】
ここで発光光軸25と受光光軸26をxy平面となる水平面から見ると図5(B)のように、投影点Aが発光点Pに対応し、投影点Bが受光点Qに対応する。すなわち発光光軸25と受光光軸26は、水平方向において、所定の角度αをもって交差している。一方、発光光軸14と受光光軸15を面ABQPに投影すると、発光光軸と受光光軸が鉛直方向において、所定の角度βをもって交差する。
【0043】
例えば垂直方向の傾斜角φ=30°に設定し、水平面でのみかけ上の構成角α=120°とすると、構成角δ=97°となる。また水平面でのみかけ上の構成角αをα=120°、傾斜角φをφ=9.8°に設定していると、構成角δはδ=117°となる。
【0044】
これをまとめると、みかけ上の構成角α=120°を一定に保った場合の傾斜角φ=9.8°,30°に対し、実際の構成角δ=117°,97°となり、発光点Pと受光点Qの水平方向での位置を変化させない場合、垂直方向の傾斜角φを大きくすれば、逆に実際の構成角δを小さくする関係が得られる。もちろん垂直方向の傾斜角φを小さくすれば光軸交点Oの高さが低くなることから、より薄型化することになる。
【0045】
図5のような発光から受光までの光軸の3次元関係に基づき、本発明の実施形態では、発光光軸25と受光光軸26の構成角δを略110°としている。もちろんこの構成角δ=110°に対応する散乱角θはθ=180°−δ=70°である。
【0046】
このように本発明にあっては、発光部7の光軸25と受光部8の光軸26を構成角δ=110°に設定した状態で水平面におけるみかけ上の構成角α及び垂直面における傾斜角φをもつように検煙部本体5内に埋め込み配置することで、煙粒子の大きさに対する感度の影響の少ない最適な角度配置を行っても、煙に対する光軸交点の飛び出し量を低く抑え、感知器の薄型構造を実現できる。
【0047】
図6は本発明における検煙部本体5の発光側開口部9及び受光側開口部10を検煙空間側から見た平面図であり、開口部以外の部分は省略して単なる円で表している。
【0048】
図6において、発光側開口部9と受光側開口部10は互いに向かいあう側において、図6の斜線で囲う領域において開口形状を楕円形の一部であるとした楕円開口20,21を形成している。この楕円開口20,21における最小間隔は図示のL1となっている。
【0049】
図7及び図8は従来の開口部と本発明の開口部を対比して示した説明図である。図7(A)は従来の開口部であり、これは図13に示したものと同じである。一方、図7(B)は本発明の開口部であり、図6に相当するものである。
【0050】
また図8(C)は本発明の開口部の他の実施形態であり、発光部の発光方向中心線25aと受光部の受光方向中心26aにより挟まれない、即ち互いに向かい合わない側の発光側開口部9と受光側開口部10の形状が矩形の一部となっている点で図7(B)と異なる。ただし、両開口部の最も近接する位置は、発光側開口部と受光側開口部が互いに向かう合う側にあり、最小距離L1である。
【0051】
更に図8(D)は本発明の開口部の他の実施形態であり、発光部の発光方向中心線25aと受光部の受光方向中心26aにより挟まれた発光側部開口部9、受光側開口部10が互いに向かい合う側において、矩形形状の一部を切り欠いた開口部形状となっている。即ち発光側開口部、受光側開口部のうちの切り欠いた1辺29a、29bの方向とが、発光方向中心線25a又は受光方向中心線26aとそれぞれ90°未満の交差角φ1,φ2で交差する1辺を有する開口部形状となっており、発光側開口部9と受光側開口部10の最小距離はL1に保たれる。
【0052】
ここで、図7(A)の従来の開口部にあっては、即ち発光部の発光方向中心線25aと受光部の受光方向中心線26aによりはさまれる領域において発光側開口部301及び受光側開口部304と共に矩形開口305,306であり、受光部と発光部の感知器内での位置を固定した場合、矩形開口305のエッジaと矩形開口306のエッジbの間の距離は上述の距離L1より短い距離L2となる。
【0053】
このような矩形開口305,306のエッジa,b間の距離L2が短いと、発光側のエッジaの点線の丸の部分に糸埃などが付着した時、糸埃に当った光の散乱による迷光が受光側の矩形開口306から受光部に入射し易くなってしまう。
【0054】
この発光側開口部のエッジa付近での埃の付着による迷光を低減するためには、距離L2を大きくする必要があり、そのために発光部と受光部の間隔を広げなければならない。しかしながら、発光部と受光部の間隔を広げると埃の付着による迷光の影響は低減できるが、絶対光量が低下するという問題がある。
【0055】
そこで本発明にあっては、図7(B)、図8(C)(D)のように、発光部と受光部の配置位置を変化させずに、即ち絶対光量を落とさずに発光側開口部9に付着した埃などによる影響だけを低減させるため、発光側開口部9及び受光側開口部10の向かいあう側を楕円開口20,21又は矩形の一部を切り欠いた形状の切り欠き開口22,23としている。
【0056】
これによって図7(A)の従来の矩形開口305,306における開口部の間隔を縮めているエッジa,bをなくすることによって、楕円開口20,21及び切欠開口22,23のいずれの場合も最近接距離としてL1を保っている。この各開口20,21,22,23間の距離L1は、図7(A)の矩形開口305,306の距離L2に比べ、発光部及び受光部の配置位置を変えることなく、開口部の間隔を大きくすることができ、これによって発光側楕円開口20の縁に付着した埃などによる迷光の影響を低減し、感知器のS/N比を向上させることができる。
【0057】
図9は埃の付着に対する受光部の相対出力を従来の開口部と本発明の開口部について対比して示したグラフ図である。図9において、従来の矩形開口特性40は埃の大きさが0.5mm付近で相対出力が出はじめ、0.7mmを超えると相対出力が急激に増加している。
【0058】
これに対し本発明の楕円開口特性又は切欠開口特性41にあっては、埃の大きさが1mm付近から相対出力が表れ、1.2mmを超えると相対出力が急激に増加している。このような埃の大きさに対する相対出力の特性から、本発明による発光部及び受光部の開口部を楕円開口としたことによる埃の付着に対するS/N比の改善効果が十分に得られていることが確認できる。
【0059】
なお、実施例の説明では楕円という用語を用いて説明したが、本願発明は、「2点間の距離の和が一定になる点全体のあつまり」といういわゆる楕円の定義を厳格に満足していなければならないものではなく、矩形開口部の一部もしくは全部を曲線とした開口形状であっても良く、これらを包括した略楕円形状であれば問題はない。
【0060】
図10は本発明における発光側開口部の円筒穴開口の上部に設けられる遮光部30の説明図である。図10(A)は検煙部本体5の斜視図であり、発光側開口部9の光軸方向を正面に見て表している。図10(B)は図4における発光側開口部9の点線位置で切った場合の矢印X−X方向から見た場合の筒穴開口部の垂直断面を取り出して拡大している。
【0061】
図10(B)において、開口部断面はU字型の溝形状を持っており、図4に示した発光部7からの光を出射する円筒穴15が開口している。
【0062】
また、本発明にあっては円筒穴15の開口上部に遮光部24を形成している。この遮光部24は受光部に対し近い側の内側端部24aが上がり、遠い側の外側端部24bが下がった円弧状の遮光形状を持っており、遮光部24の傾きγはγ=5°程度に設定されている。
【0063】
また角度γの傾きを持った円弧形状の遮光部24に合わせ、開口凹部16の受光部に近い方の近受光側壁9aが高く、受光部に遠い方の遠受光側壁9bが低くなるようにしている。
【0064】
ここで発光側開口部9及び受光側開口部10の開口に沿って起立された側壁構造を図3を参照して説明すると次のようになる。発光側開口部9には開口に沿って受光部に近い近受光側側壁9aと受光部に遠い遠受光部側側壁9bを起立している。また受光部側開口部10には開口に沿って発光部に近い近発光側側壁10aと発光部に遠い遠発光側側壁10bを起立している。
【0065】
本発明にあっては,図10(B)に示すように、発光側開口部9の近遠受光側側壁9aは遠受光側側壁9bに比して高くなるように形成されている。このため遠受光側側壁9bの上縁部に糸埃が付着しても、近受光側側壁9aが高く形成されているので、糸埃が後述の図11(B)に示す受光領域に入る可能性が低下する。よって、発光側開口部9の近受光側側壁9aと遠受光側側壁9bの突出量が同じ場合に比較して、遠受光側側壁9bの上縁部に糸埃が付着した場合の影響を低減する。
【0066】
また本発明にあっては、近受光側側壁9aと近発光側側壁10aの検煙部本体からの突出高さは、略同等に形成される。これは、図11(A)に示すように、発光部7からの光は遮光部24と発光側開口部9の近受光側側壁9a、遠受光側側壁9bによって監視領域11aが形成される。この場合、受光側開口部10の近発光側側壁10aまたは遠発光側側壁l0bが監視領域11aに入る事がないように、特に近発光側側壁10aと近受光側側壁9a突出高さが略同等であることが望ましい。
【0067】
さらに、図11(B)に示すように、逆に受光部8が光を受ける受光領域1lbに発光側開口部9の近受光側側壁9aおよび遠受光側側壁9bが入らないようにするため、特に受光側開口部10の近発光側側壁10aと近受光側側壁9aの突出高さが略同等である必要がある。なお、遠受光側側壁9bは近受光側側壁9aより低いことから、受光領域1lbに入ることはない。
【0068】
このように本発明にあっては、発光側開口部9における発光部からの光が出射される円筒穴15の上部に円弧状の遮光部24を形成したことで、発光部からの光が遮光部24により遮られ、直接、検煙空間4の天井側にあたって散乱光となり、検知器のS/N比を悪化させることを防ぐようにしている。
【0069】
また埃が付着しやすい発光側開口部9の遠受光側側壁9bが近受光側側壁9aより下がった低い位置にあるが、図11(B)のように、遮光部24は内側端部24aより外側端部24bで低くなる所定の角度γの傾きをもって配置されることで、低い遠受光側側壁を超えて光がラビリンス方向に照射されることを防止する。
【0070】
尚、上記の実施形態にあっては説明を簡単にするため、発光光軸と受光光軸が鉛直方向に等角度となるように発光部と受光部を埋め込んだ場合を例にとっているが、発光光軸と受光光軸が鉛直方向にそれぞれ異なる角度となるように発光部と受光部を埋め込むようにしても良い。
【0071】
また本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含む。さらに上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【0072】
【発明の効果】
以上説明してきたように本発明によれば、発光部及び又は受光部の各開ロ部の向かい合う側での開口形状を、略楕円形状の一部、又は矩形開口のコーナ部を垂直方向に切り欠いた形状にして、各開口部の向かい合う側の間隔を大きくすることで、従来の矩形開口における開口部の間隔を短くしているエッジ部分がなくなり、開口縁部に粉塵や糸埃などが付着しても楕円開口によって受光側開口部との距離を長くできることで、埃などの付着などで生じた迷光が受光部に入射してしまうことを防ぎ、感知器のS/N比を改善することができる。
【0073】
また発光部及び受光部の開口部は、開ロ部周囲に側壁を起立し、受光側側壁と発光側側壁の高さが略同等とし、更に、発光部側側壁において受光部に近い側の側壁が受光部に遠い側の側壁よりも高く形成することで、受光部に遠い側の低い方の側壁に糸埃などが付着して散乱光を生じても、この散乱光は開放高い方の側壁に当たって遮られ、受光部に対する影響を最小限に抑え、S/N比の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による散乱光式煙感知器の実施形態を示した断面図
【図2】図1の散乱光式煙感知器の組立分解図
【図3】本発明における検煙部本体の検煙空間側から見た斜視図
【図4】本発明における検煙部本体と検煙部カバーを組み合わせた検煙部アッセンブリの断面図
【図5】本発明における発光部と受光部の位置関係の説明図
【図6】本発明における検煙部本体の検煙空間側から見た平面図
【図7】従来の開口部と本発明の開口部を対比して示した説明図
【図8】本発明の開口部における他の実施形態の説明図
【図9】埃の付着に対する受光部の相対出力を従来の開口部と本発明の開口部について対比して示したグラフ図
【図10】本発明において発光側開口部の円筒穴開口の上部に設けられる遮光部の説明図
【図11】本発明の検煙空間における監視領域と受光領域の説明図
【図12】従来の感知器構造の説明図
【図13】検煙空間に発光部、受光部等を突出させない従来構造の説明図
【図14】本願出願人が提案している散乱光式感知器における発光部と受光部の矩形開口をもつ開口部の説明図
【符号の説明】
1:感知器本体
2:カバー
3:煙流入口
4:検煙空間
5:検煙部本体
6:検煙部カバー
7:発光部
8:受光部
9:発光側開口部
9a:近受光側側壁
9b:遠受光側側壁
10:受光側開口部
10a:近発光側側壁
10b:遠発光側側壁
11a:監視領域
11b:受光領域
12:回路基板
13:端子盤
14:ラビリンス
15:円筒穴
18:受光穴
20,21:楕円開口
22,23:切欠開口
24:遮光部
25,26:光軸
25a:発光方向中心線
26a:受光方向中心線
30:遮光部
Claims (3)
- 発光部及び受光部を検煙空間内に突出することなく開口部を設けて取付面側に埋設すると共に、前記検煙空間に向かう前記発光部からの光軸と前記検煙空間内の煙粒子によって散乱されて前記受光部に向かう散乱光の光軸が、水平方向に所定の角度で交差し且つ鉛直方向に所定の角度で交差するように、前記発光部と前記受光部を配置した散乱光式煙感知器に於いて、
前記発光部及び又は受光部の各開ロ部の向かい合う側での開口形状を、略楕円形状の一部、又は矩形開口のコーナ部を垂直方向に切り欠いた形状にすることで、前記各開口部の向かい合う側の間隔を大きくすることを特徴とする散乱光式煙感知器。 - 請求項1記載の散乱光式煙感知器において、前記発光部及び受光部の開口部は、開口部周囲に側壁を起立したことを特徴とする散乱光式煙感知器。
- 請求項1又は2記載の散乱光式煙感知器において、前記発光部及び受光部の開ロ部は、開ロ部周囲に側壁を起立しており、受光側側壁と発光側側壁の高さが略同等であり、更に、発光部側側壁において受光部に近い側の側壁が受光部に遠い側の側壁よりも高く形成されたことを特徴とする散乱光式煙感知器。
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