JP3839994B2 - ビタミン類の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステロール−脂肪酸エステル類又はビタミン類、特にトコフェロール類、トコトリエノール類の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
天然油脂、特に植物油脂には、ビタミン類(ビタミンA類、ビタミンD類、トコフェロール類、トコトリエノール類等)及びステロール類が多く含まれており、植物油脂の製造に際し、脱臭処理工程の副産物である、いわゆるスカムの中にかなりの量が分配されてくる。
【0003】
従来、スカムからのトコフェロール類及びステロール類の分離回収法は、まず、スカム中の脂肪酸類及び脂肪酸エステル類(主としてグリセリド)を化学触媒の存在下で脂肪酸メチルに変換する。その後、(1)ステロール類を有機溶媒中で結晶化させて分離する、(2)脂肪酸メチルを蒸留により留去し、蒸留残渣に含まれているステロール類を有機溶媒中で結晶化して分離する、あるいは、(3)(2)の脂肪酸メチルを留去した蒸留残渣からステロール類とトコフェロール類を蒸留留分(以下、単に留分ということがある)として回収し、ステロール類を有機溶媒中で結晶化して分離する、等のステロール類の分離操作の後、トコフェロール類を高真空蒸留による濃縮、およびイオン交換クロマトグラフィー等により、分離、精製することにより、トコフェロール類及びステロール類が分離回収されている。
【0004】
最近、特開平7−2827号公報には、スカムを150℃〜250℃で加熱して、スカム中に存在する脂肪酸類とステロール類のエステル(以下、ステロール−脂肪酸エステルという)を合成し、ついで蒸留することにより、トコフェロール類を回収し、蒸留残渣中のステロール−脂肪酸エステル類を分解後、ステロール類を回収することが記載されている。
【0005】
しかし、この方法は、スカムを150℃〜250℃で加熱しなければならないため、エネルギー消費型の反応であるとともに、加熱による反応でトコフェロール類が変性したり、トコフェロール−脂肪酸エステル類等の副生物を生じるので、トコフェロール類の分離には好ましくない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、エネルギー非消費型であり、かつ有機溶媒をほとんど使用することなく、種々の夾雑物が含まれるスカム中で、選択的にステロール−脂肪酸エステル類を生成させ、ビタミン類とステロール−脂肪酸エステル類を分離する方法が望まれている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明により上記課題が解決される。
【0008】
すなわち、本発明は水酸基を有するビタミン類と、ステロール類と、脂肪酸類及び/又は脂肪酸エステル類とを含む混合物にエステラーゼを作用させて、ステロール−脂肪酸エステル類を選択的に製造させる工程;及び
得られたステロール−脂肪酸エステル類を分離する工程;
を含む、ステロール−脂肪酸エステル類の製造方法に関する。
【0009】
好ましい実施態様においては、前記製造方法における分離工程が、蒸留、溶媒分画、膜分離又はイオン交換クロマトグラフィーであるか、もしくはこれらを組合せて分離する工程である。
【0010】
好ましい実施態様においては、前記製造方法に用いる混合物が、油脂の製造工程において得られるスカム及び/又は回収物である。
【0011】
より好ましい実施態様において、前記製造方法に用いる混合物が、スカムを蒸留して得られる留分である。
【0012】
本発明はまた、水酸基を有するビタミン類と、ステロール類と、脂肪酸類及び/又は脂肪酸エステル類とを含む混合物にエステラーゼを作用させて、ステロール−脂肪酸エステル類を選択的に合成する工程;及び
得られた脂肪酸エステル類と水酸基を有するビタミン類とを分離する工程;
を含む、水酸基を有するビタミン類の製造方法に関する。
【0013】
好ましい実施態様においては、前記製造方法の分離工程が、蒸留、溶媒分画、膜分離又はイオン交換クロマトグラフィーであるか、もしくはこれらを組合せて分離する工程である。
【0014】
より好ましい実施態様においては、前記水酸基を有するビタミン類がトコフェロール類及び/又はトコトリエノール類である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる水酸基を有するビタミン類としては、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB6(ピリドキサル、ピリドキシン、ピリドキサミン)、ビオチン、パントテン酸、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE(α−、β−、γ−、δ−トコフェロール及びα−、β−、γ−、δ−トコトリノール)等が挙げられる。ビタミン類というときは、ビタミンの混合物のみならず、1種類のビタミンのみの場合も含む。
【0016】
ステロール類は、ステロイド骨格に水酸基を有する物質をいい、コレステロール、ブラシカステロール、カンペステロール、スチグマステロール、β−シトステロール、エルゴステロール等が挙げられる。ステロール類というときは、ステロールの混合物のみならず、1種類のステロールのみの場合も含む。
【0017】
脂肪酸は、特に制限がなく、遊離の酸でもよく、塩であってもよい。中でも、炭素数が6〜24程度の、飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐の脂肪酸が好ましい。脂肪酸類というときは、脂肪酸の混合物のみならず、1種類の脂肪酸のみの場合も含む。
【0018】
脂肪酸エステル類は、脂肪酸とアルコールとのエステルであり、アルコールは一価のアルコールのみならず、多価アルコールを含んでもよい。従って、グリセロールの脂肪酸エステル(モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド)であってもよい。脂肪酸エステル類というときは、脂肪酸エステルの混合物のみならず、1種類の脂肪酸エステルのみの場合も含む。
【0019】
エステラーゼとは、エステルを分解する酵素の総称であり、リパーゼ、エステラーゼを生産する微生物が含まれる。エステラーゼとしては、水酸基を有するビタミン類の存在下においても、選択的にステロール類と脂肪酸類とからステロール−脂肪酸エステル類を合成できるものであれば、どのような酵素でもよく、微生物、動物、植物など、いずれの起源の酵素であってもよい。リパーゼの場合、トリグリセリドのエステル結合の位置に対して非特異的であることが好ましいが、1,3−特異的であってもよい。市販のリパーゼも使用できる。酵素の形態は遊離型であっても、固定化したものであってもよく、酵素を保持した微生物菌体又はその固定化菌体であってもよい。固定化したリパーゼあるいは固定化した菌体は回収して再利用できるので、より好ましい。また、耐熱性、好熱性のリパーゼも好適に用いられる。
【0020】
混合物中に、ビタミン類と、ステロール類と、脂肪酸類及び/又は脂肪酸エステル類とは任意の割合で存在できる。混合物中、ビタミン類は約1〜80重量%、ステロール類は約1〜60重量%、脂肪酸類及び/又は脂肪酸エステル類は約1〜90重量%含まれていてもよい。エステラーゼは、ステロール類、脂肪酸類及び/又は脂肪酸エステル類の含量に応じて適切な量を選択すればよい。
【0021】
反応は、適切な条件下、例えば、約10℃〜80℃、約pH2〜10、水分約0〜80%を含んだ系で行うことができる。有機溶媒は特に添加する必要はない。添加するとすれば、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン、ヘキサン等の有機溶媒が用いられる。
【0022】
本発明において、出発原料としては、油脂の製造工程の一つである脱臭工程において得られる副産物(スカム)及び脱酸工程における回収物が好適である。ここで、回収物とは、蒸留脱酸の回収物(蒸留物)及びアルカリ脱酸における回収物(いわゆるダーク油)をいう。スカム及び回収物には、水酸基を有するビタミン類と、ステロール類と、脂肪酸類及び/又は脂肪酸エステル類とが含まれており、本発明は、このスカム及び回収物中のステロール類をステロール−脂肪酸エステル類に変換し、このステロール−脂肪酸エステル類とビタミン類とを効率よく分離するのに有効である。
【0023】
なお、特公平5−33712号公報には、リパーゼを用いてステロール−脂肪酸エステル類が製造された例が報告されている。しかし、この反応は、反応基質がステロール類と脂肪酸類だけであるのに対し、本発明は、他の水酸基を有する化合物(ここでは、主としてビタミン類)が存在する場合、特に、ビタミン類等の種々の水酸基を含む化合物が存在する場合において、ステロール−脂肪酸エステル類の合成が効率よく進行するが、ビタミン類は、全くあるいはほとんど脂肪酸類及び/又は脂肪酸エステル類と反応しないことを初めて明らかにしたものである。
【0024】
以下、スカム及び回収物を例に挙げて、本発明のステロール−脂肪酸エステル類の製造方法及び、ビタミン類、特にトコフェロール類の分離方法を説明する。
【0025】
スカム及び回収物は、食用油脂の製造工程における副生物である。植物油脂のスカム及び回収物中には、ビタミン類、特にトコフェロール類、トコトリエノール類、ステロール類が多く含まれるので、植物油脂のスカム及び回収物が好ましい。植物油脂としては、大豆油、米糠油、パーム油、サフラワー油、コーン油、菜種油、綿実油、オリーブ油、落花生油等が挙げられる。これらのスカム及び回収物の中には、ビタミン類(特に、トコフェロール類、トコトリエノール類)、ステロール類(ブラシカステロール、カンペステロール、スチグマステロール、β−シトステロール等)、遊離脂肪酸類、脂肪酸エステル類(トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド)、その他炭化水素類等が多く含まれている。
【0026】
このスカム又は回収物にエステラーゼ(好ましくはリパーゼ)と必要に応じて水を添加して攪拌しながら反応させると、ステロール類と脂肪酸類とが選択的に反応して、ステロール−脂肪酸エステル類が生成する。
【0027】
スカムにリパーゼを添加する前に、スカムを約0.005〜0.5mmHg、好ましくは約0.05〜0.1mmHgの真空下で、約150℃〜250℃、好ましくは約220℃〜240℃で蒸留すると、スカムに含まれる有臭物質、グリセリド、炭化水素、高沸点物質等が除去され、次のエステル化反応がスムーズに進み、例えば、スカム中に含まれているステロール類の約70〜90%がステロール−脂肪酸エステル類に変換される。さらに、ステロール−脂肪酸エステル類の回収も効率よく行われる。
【0028】
エステル化反応終了後、約0.005〜0.5mmHg、好ましくは約0.05〜0.1mmHgの真空下で、約100℃〜270℃、好ましくは約150℃〜240℃で蒸留する。ビタミン類、未反応の脂肪酸類、未反応のステロール類を留分に回収し、合成されたステロール−脂肪酸エステル類は、蒸留残渣から回収することができる。
【0029】
回収した留分に、ビタミン類、未反応の脂肪酸類、未反応のステロール類等が含有されている場合は、さらにエステラーゼ(リパーゼ)と、必要に応じて水を添加して、エステル化反応を行うこともでき、反応後、蒸留画分(留分)にビタミン類、未反応の脂肪酸類、未反応のステロール類を回収し、ついで、残渣からステロール−脂肪酸エステル類を回収することもできる。
【0030】
ビタミン類は、留分から回収される。留分に含まれているビタミン類、未反応の脂肪酸類、未反応のステロール類等を、例えば、蒸留により分離する。ビタミン類がトコフェロール類あるいはトコトリエノール類である場合、まず、約0.005mmHg〜0.5mmHgの真空条件下、約140℃〜230℃、好ましくは約160℃〜200℃で蒸留することにより、まず、脂肪酸類が留分として回収される。ついで、やや温度を上げて、約170℃〜260℃、好ましくは約180℃〜255℃で蒸留することにより、ビタミン類(トコフェロール類、トコトリエノール類)が留分として回収される。混在していたステロール−脂肪酸エステル類は、残渣として回収される。なお、蒸留条件は真空度と温度により変化させることができる。
【0031】
また、蒸留方法、装置は問わない。例えば、流下薄膜式蒸留装置、遠心式分子蒸留装置、精密蒸留装置等が用いられる。
【0032】
エステル化反応終了後、蒸留操作のみならず、蒸留操作、溶媒分画、イオン交換クロマトグラフィー、膜分離などの分離操作を単独で、あるいは組合せて用いて、ステロール−脂肪酸エステル類、ビタミン類を分離、回収することができる。溶媒分画は、メタノール、エタノール等の有機溶媒を用いて行うことができる。イオン交換クロマトグラフィーは、カラムを用いる方法が一般的であり、ヘキサン、メタノール、エタノール等の有機溶媒を用いて行うことができる。
【0033】
例えば、エステル化反応−蒸留−イオン交換クロマトグラフィー−蒸留、エステル化反応−蒸留−溶媒分画−イオン交換クロマトグラフィー、エステル化反応−イオン交換クロマトグラフィー−蒸留等、適切に組合せて行えばよい。
【0034】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。
(実施例1)
大豆油スカムを原料として使用した。大豆油スカムは以下の組成を有していた。単位は重量%である。
遊離脂肪酸類 36.0%
ステロール類 12.7%
トコフェロール類 11.8%
(酸価:71.9)
【0035】
この大豆油スカム4g、水1gの反応混液に、反応混液1g当り、200Uのリパーゼを添加して、35℃、20時間、500rpmで振盪しながら、反応させた。なお、リパーゼ1Uは、1分間にオリーブ油から1μmolの脂肪酸を遊離させる酵素量をいう。反応終了後、遠心分離して油分を回収し、トリカプロインを内部標準とするガスクロマトグラフィーにより、トコフェロール類及びトコトリエノール類の合計含量を測定し、トコフェロール類重量とした。エステル化率は、反応前後の全ステロール含量から、以下の式で求めた。
【0036】
【数1】
Figure 0003839994
【0037】
結果を表1に示す。なお、表1において、LIPOSAMは、昭和電工(株)製のリパーゼであり、Candidaは、Candida cylindracea由来のリパーゼ(以下、Candidaリパーゼという)であり、名糖産業(株)から販売されている。
【0038】
【表1】
Figure 0003839994
【0039】
この結果より、Candidaリパーゼによりトコフェロール類は全くエステル化されず、ステロール類だけが選択的にエステル化されることが分かった。ステロール類が脂肪酸類でエステル化されると酸価は減少するはずであるが、本反応で酸価の上昇が認められた。この現象は、スカムに含まれていた脂肪酸エステル類(モノグリセリドを含む)が、リパーゼによる加水分解を受け、脂肪酸類が遊離したことによるものと考えられる。
【0040】
(実施例2)
実施例1で使用した大豆油スカムを、流下薄膜式蒸留装置を用いて、0.2mmHg、240℃で蒸留し、留分を集めて蒸留大豆油スカムを得た。17.7重量%の高沸点物質が蒸留残渣として除去された。蒸留大豆油スカムは以下の組成を有していた。単位は重量%である。
遊離脂肪酸類 41.5%
ステロール類 16.6%
トコフェロール類 14.5%
(酸価:83.1)
【0041】
この蒸留大豆油スカムと原料の大豆油スカムの酵素処理結果を比較した。反応条件は実施例1と同じであった。結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
Figure 0003839994
【0043】
この結果から、未蒸留スカム(原料のスカム)と比較して、蒸留大豆油スカムを原料として用いる方が、わずかではあるが、ステロール類がエステル化されやすいこと、および高いエステル化率が達成できることが示され、蒸留大豆油スカムが反応性の向上に寄与することが示された。また、蒸留大豆油スカムを用いてもその中に含まれるトコフェロール類はCandidaリパーゼによって全くエステル化されないことが認められた。さらに、分子量の大きな高沸点不純物が予め除去されるので、酵素反応によって合成されるステロール−脂肪酸エステル類の精製に有利である。
【0044】
(実施例3)
スカム中のステロール−脂肪酸エステル類合成に対する水分の影響について検討した。実施例2で得られた蒸留大豆油スカムと水分の合計が5gとなるように混合し、Candidaリパーゼを1000U加えて、35℃、20時間、500rpmで攪拌しながら反応させた。結果を表3に示す。
【0045】
【表3】
Figure 0003839994
【0046】
この結果から、ステロール類のエステル化反応には水分量はあまり影響しないこと及び水分量が変化してもトコフェロール類はCandidaリパーゼによってエステル化されなかったことが示された。
【0047】
(実施例4)
スカム中のステロール−脂肪酸エステル類合成に対する温度の影響について検討した。実施例2の蒸留大豆油スカムを4g、水1g、Candidaリパーゼを1000Uを加えて混合し、表4に記載の温度で、3.5時間及び23時間、500rpmで攪拌しながら反応させた。結果を表4に示す。
【0048】
【表4】
Figure 0003839994
【0049】
反応初期(3.5時間)のステロール類のエステル化率は温度に依存したが、平衡状態に達したとき(23時間)のエステル化率は30〜35℃のときに最大値を示した。この結果は、40℃以上で反応を行うと酵素は徐々に失活することを示している。なお、温度を変化させてもトコフェロール類はCandidaリパーゼによってエステル化されないこともわかった。
【0050】
(実施例5)
Candidaリパーゼによるスカム中のステロール類のエステル化反応におよぼす酵素量および反応時間の影響について検討した。実施例2で得られた蒸留大豆油スカムを4g、水1gにCandidaリパーゼを反応混液1g当り50U、200U、800Uになるように加えて、35℃で攪拌しながら反応させた。その結果を表5に示す。
【0051】
【表5】
Figure 0003839994
【0052】
この結果より、酵素量を増加するとステロール類のエステル化速度の上昇が観察され、平衡状態に達する時間が短縮されることがわかった。しかし、最終的に到達するステロール類のエステル化率は、酵素量に依存しないことがわかった。また、酵素量を変えても、また、反応時間を延長してもトコフェロールの量の変化は認められなかった。
【0053】
(実施例6)
実施例1で使用した大豆油スカム10Kgを出発原料として、トコフェロール類およびステロール−脂肪酸エステル類を分離、精製した。この精製操作における物質収支を表6に示す。
【0054】
【表6】
Figure 0003839994
【0055】
まず、原料大豆油スカムを流下薄膜式蒸留装置を用いて、0.2mmHg、240℃で蒸留し、蒸留大豆油スカムを8.23Kg得た(留分−1)。この蒸留大豆油スカム中のステロール類およびトコフェロール類の含量は、それぞれ、13.3重量%と13.7重量%であった。蒸留大豆油スカム(留分−1)を20重量%の水と、この反応混液1g当り50UのCandidaリパーゼを加えて、35℃、24時間、攪拌しながら反応させた。この酵素処理により、遊離ステロール類の含有量は13.3%から2.5%に減少した(エステル化率81.2%)が、トコフェロール類の含有量の減少は、ほとんど認められなかった。なお、反応スケールが大きくなったことにより攪拌効率がよくなり、小スケールの場合に比べて反応効率が向上した。
【0056】
酵素反応液から油分を回収し、脱水した後、0.2mmHg、250℃で蒸留して留分−2を回収した。この留分には、なお遊離のステロール類が混在していたので、再度、上記と同条件で酵素処理を行った。その結果、トコフェロール類の損失はほとんどなく、遊離ステロール類の含有量を0.5重量%まで減らすことができた(ステロール類のエステル化率は81.5%)。
【0057】
2回目の酵素処理を行った反応液から油分を回収し、脱水した後、0.2mmHg、160℃で蒸留し、留分3−1を回収した。ついで温度を200℃に上げて留分3−2を回収し、さらに真空度0.04mmHg、230℃で留分3−3を回収した後、最後に温度を255℃まで上げて留分3−4を回収した。この一連の蒸留工程における残渣を残渣−3とした。留分3−3は0.95Kg回収され、この留分3−3の遊離ステロール類の含量及びトコフェロール類の含量は、それぞれ、2.9重量%と65.3重量%であった。また、この留分3−3の中に初発の大豆油スカムに含まれていたトコフェロール類の52.5%を回収することができた。
【0058】
なお、留分3−2および留分3−4にもそれぞれ17.1%と23.8%のトコフェロールが含まれていた。実際の工業生産プロセスを想定すると、これらの留分は、次回の酵素処理の画分と混合して蒸留を行うことができるので、トコフェロール類の損失は留分3−1及び残渣の分だけということになる。従って、大豆油スカムからのトコフェロール類の精製において、酵素反応の工程を導入することにより、有機溶媒を全く使用せず、蒸留法と組合せるだけで、少なくとも80%以上の高収率でトコフェロール類の含量を65重量%以上に高められることが実証できた。
【0059】
次に、上記工程で、残渣2と残渣3とを混合した画分(合計1.84Kg)の遊離脂肪酸類の量、遊離ステロール類の量及びトコフェロール類の量はそれぞれ、1.1重量%、1.2重量%、及び2.2重量%であった。この画分を薄層クロマトグラフィー(TLC)分析によると、ステロール−脂肪酸エステル類の展開位置に単一のスポットが検出された。なお、展開溶媒は、ヘキサン:酢酸エチル:酢酸=90:10:1(体積)であり、硫酸発色法で検出した。また、この画分をナトリウムメチラートの存在下で脂肪酸類をメチル化した後、ガスクロマトグラフィーにより分析した。その結果、脂肪酸メチル類とステロール類のみが1:1のモル比で検出できた。このことから、残渣2と残渣3との混合画分には、少なくとも90%かそれ以上の純度を有するステロール−脂肪酸エステル類が含まれていることが推定された。
【0060】
(実施例7)
実施例2で得られた蒸留大豆油スカム200gを、再度0.2mmHg、200℃で蒸留し、脱酸大豆油スカム(以下、脱酸スカムという)を蒸留残渣として48.1g回収した。脱酸スカムの組成は、以下の通りであった。
遊離脂肪酸類 1.4重量%
ステロール類 31.8重量%
トコフェロール類 27.3重量%
モノグリセリド類 0.4重量% (酸価 2.8)
【0061】
この脱酸スカムに、表7に示す組成で、モノオレイングリセリド及びオレイン酸、水、リパーゼを加えて、反応系1〜5の反応混液を作成した。
【0062】
【表7】
Figure 0003839994
【0063】
この反応混液を35℃、24時間攪拌しながら反応させ、反応前後の酸価、モノグリセリド類含量、ステロール類含量、トコフェロール類含量を測定した。結果を表8に示す
【0064】
【表8】
Figure 0003839994
【0065】
反応系1にはほとんど遊離脂肪酸類が含まれていないにも係わらず、ステロール類は効率よくエステル化されていた。また、反応によりモノグリセリドが加水分解されていることから、加水分解によって生じた脂肪酸類がステロール類とのエステル化反応の基質として使用されていることが示唆された。なお、反応系中の遊離脂肪酸類が多いほど、ステロール類のエステル化率が上昇することが認められたが、これは、反応混液の流動性と関連していると思われる。
【0066】
【発明の効果】
本発明により、リパーゼを触媒として用いると、水酸基を有するビタミン類が存在しても、ステロール類と脂肪酸類とのエステル化反応が選択的に進行する。特に、植物油などの脱臭工程において生じるスカム中でもこの酵素反応が効率よく進行することを初めて明らかにした。従来ビタミン類の分別を困難にしていたステロール類を、有機溶媒を全く使用することなく除去できるので、ビタミン類、特に、トコフェロール類を安全かつ収率よく、高純度に回収するのに有益である。

Claims (7)

  1. 水酸基を有するビタミン類と、ステロール類と、脂肪酸類及び/又は脂肪酸エステル類とを含む混合物にエステラーゼを作用させて、ステロール−脂肪酸エステル類を選択的に製造させる工程;及び
    得られたステロール−脂肪酸エステル類を分離する工程;
    を含む、ステロール−脂肪酸エステル類の製造方法。
  2. 前記分離工程が、蒸留、溶媒分画、膜分離又はイオン交換クロマトグラフィーであるか、もしくはこれらを組合せて分離する工程である、請求項1に記載のステロール−脂肪酸エステル類の製造方法。
  3. 前記混合物が油脂の製造工程において得られるスカム及び/又は回収物である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記混合物がスカムを蒸留して得られる留分である、請求項1ないし3いずれかの項に記載の方法。
  5. 水酸基を有するビタミン類と、ステロール類と、脂肪酸類及び/又は脂肪酸エステル類とを含む混合物にエステラーゼを作用させて、ステロール−脂肪酸エステル類を選択的に合成する工程;及び
    得られたステロール脂肪酸エステル類と水酸基を有するビタミン類とを分離する工程;
    を含む、水酸基を有するビタミン類の回収方法。
  6. 前記分離工程が、蒸留、溶媒分画、膜分離又はイオン交換クロマトグラフィーであるか、もしくはこれらを組合せて分離する工程である、請求項5に記載の水酸基を有するビタミン類の回収方法。
  7. 前記ビタミン類がトコフェロール類及び/又はトコトリエノール類である、請求項5または6に記載の水酸基を有するビタミン類の回収方法。
JP11838399A 1999-04-26 1999-04-26 ビタミン類の製造方法 Expired - Lifetime JP3839994B2 (ja)

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