JP3838803B2 - 複合高強度材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、Al(アルミニウム)を含む複合高強度材及びその製造方法に関するものである。なお、本明細書では記載の簡略化のために、結晶構造が面心立方構造(face-centered cubic lattice, 略してFCC)をとる金属をFCC金属と記し、結晶構造が体心立方構造(body-centered cubic lattice, 略してBCC)をとる金属をBCC金属と記すことにする。
【0002】
【従来の技術】
鉄鋼材料の分野では、ピアノ線、タイヤ用スチールコードなど、引張強度:数GPa又はそれ以上とある程度の延性とを兼ね備えた超高張力鋼線材があり、いずれもシンプルな組成のものが実用に供せられている。これは、バルクの高強度材のさらに数倍といった高い強度レベルに相当する。
【0003】
一方、Al及びAl合金の分野では、ナノ準結晶、ナノ結晶粒子、ナノ非晶質粒子などが微細分散した合金で1.3GPa以上のリボン材などが得られている(井上明久、増本健:軽金属,42巻(1992年),299頁)。但し、これは、単ロール急冷凝固法などによるものであり、厚さ10μm程度の薄膜で、化学組成も通常の素材とは大きく異なる特殊で高価なものである。これらを除けば、現行のAl線材の強度は、高々0.2〜0.3GPaに過ぎない。これは、バルクの超々ジュラルミン系などの高強度材の強度の半分にも満たない低いレベルである。すなわち、現行ではAl及びAl合金の分野で、バルクの強度をしのぐような高強度線材はないと言える。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
機械構造、建築構造などの軽量化が進む昨今、軽量で高強度な構造用線材として、また送電線などのある程度の機能性を備えた材料として、Al及びその合金の線材のニーズは極めて大きい。しかしながら、Al送電線を例にとっても、鋼線を芯線として追加することでようやく構造体を維持し、実用に供しているのが現状である。その他のAl線材の実用例は、自身で自重や外力を受ける構造体を構成するものとしては、皆無に等しい。
【0005】
これを解決すべく、一部には、炭化珪素などのセラミックス連続繊維で強化した複合Al線材の開発例も報告されている(沢田純、菊池武彦、岩井一智、長谷祐児、安富義幸、黒田洋光、鷲見亨、木愽博、岸輝雄:日本金属学会春期大会講演概要集(1998年)第201頁)。しかしながら、この手法では容易に高強度は達成できるものの、長尺材ではセラミックス特有のマス効果の問題がでて、線材が長くなればなるほど強度が極端に低下するという構造用材料として致命的な問題点がある。また、中に入っているセラミックスに起因して、複合線材の延性、靱性、切り欠き感受性などが、Al単体の場合と比較して大きく劣ることは容易に予測される。
【0006】
本発明の目的は、前記課題を解決し、Al合金線材だけではなくバルク材料を含めても、これまでに例のない超高強度と延性・靱性を兼ね備えた高性能なアルミを含む複合高強度材を提供することにある。
【0007】
なおここで、次のような本発明の関連技術を挙げておく。すなわち、従来から、Alと同じFCC金属であるCu(銅)では、BCC金属を添加して強度に塑性加工を施すことにより、高強度が発現することは知られている。例えば、J.Bevkらは、電磁攪拌を行いながらCuとNb(ニオブ)を混合・溶融し、鋳造後スウェージング加工を施して線材を作製し、Nb体積率10.5%で、降伏強度1.19GPaを達成している(Applied Physics 誌、49巻(1978年)、6031頁)。また、S.Pourrahimiらは、Cu粉末とNb粉末とを混合した後、押出加工を施して線材を作製し、最大で1.4GPa程度の引張強度を得ている(Metallurgical Transaction A 誌、23A巻(1992年)、573頁)。
【0008】
しかしながら、これらは全てFCC金属(母相・基地)として、BCC金属と容易に相分離するCuを用いたものであり、Alを基地とするものではない。このように、これまでCuが用いられてAlが用いられなかった理由は、Alは活性な金属であり、ほとんど全ての金属元素と反応して脆性な金属間化合物を生成するため、相分離した状態でAl中にBCC金属を分散させることが困難だからである。仮に、このように脆性な金属間化合物を含むAl線材を作製したとしても、金属間化合物相の早期の破断が起こるため、線材自体の強度、延性などを基地であるAl又はその合金以上に向上させることはできない。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明では、この様な状況に鑑みて、Alを含む(好ましくは中心とする)母相中に、BCC金属を含む(好ましくは中心とする)第二相を分散させ、これを(好ましくは強度の)塑性加工により伸長させることで、BCC金属のフィラメントが相分離した状態でAl又はAl合金を強化した複合高強度材を、単純な強度の塑性加工で製造するものである。この様な手法により、Al合金線材だけではなくバルク材料を含めても、これまでに例のない超高強度と延性・靱性とを兼ね備えた高性能な複合高強度材を提供する事が可能となる。すなわち、次のような手段をとった。
【0010】
(1)Al又はAlを含む合金よりなる母相用材料中に、Nb、Fe、Cr及びTaから選ばれる一種又は二種以上のBCC金属又は前記BCC金属を含む合金よりなる第二相用材料が、後者1に対して前者を範囲で示した体積比で30〜1:1で混ざり分散した混成物に、一方向に塑性加工が施されたことにより、前記Al又はAlを含む合金よりなる母相中に、前記BCC金属又は前記BCC金属を含む合金よりなる第二相のフィラメントが相分離した状態で微細に分散している複合高強度材。
【0011】
(2)300℃以下で、Al又はAlを含む合金よりなる母相用材料中に、BCC金属又はBCC金属を含む合金よりなる第二相用材料が、後者1に対して前者を範囲で示した体積比で30〜1:1で混ざり分散した混成物を作成する混成物作成工程と、前記混成物を300℃以下で一方向に塑性加工することにより、前記Al又はAlを含む合金よりなる母相中に前記BCC金属又はBCC金属を含む合金よりなる第二相のフィラメントを相分離した状態で微細に分散させる塑性加工工程とを含む複合高強度材の製造方法。
【0012】
(3)前記混成物作成工程は、Al又はAlを含む合金の点状体、線状体又は面状体よりなる母相用材料と、BCC金属又はBCC金属を含む合金の点状体、線状体又は面状体よりなる第二相用材料とを混合、結束又は積層することにより行う前記(2)の複合高強度材の製造方法。
【0013】
(4)前記混成物作成工程は、溶射法(各種溶射法が可)、スプレーデポジション法などによりAl又はAlを含む合金の粉末よりなる母相用材料と、BCC金属又はBCC金属を含む合金の粉末よりなる第二相用材料とが混合して堆積した層状物又はバルクを作成することにより行う前記(2)の複合高強度材の製造方法。
【0015】
前記各手段(1)〜(4)において、製造される「複合高強度材」の形状は、特定の形状に限定されず、線材、棒材、管材、板材、型材、各種三次元形状材等を例示することができる。但し、本発明は一方向に大きい加工歪を与えやすい線材に最も適している。
【0016】
「Alを含む合金」とは、Alを実質的に含んでいればその含有率を特に限定しない意味であるが、Alを少なくとも主成分の一つとして含むことが好ましく、さらにAlの含有率が合金元素のうちで最大であることが好ましい。数値で示すと、Alの含有率は30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
「Alを含む合金」におけるAl以外の金属又は非金属は、特に限定されないが、Cu、Mg、Mn、Si、Ni、Fe、Zr等を例示することができる。その合金は、二元系、三元系又はそれ以上の多元系のいずれをも含み、合金組織は特に限定されない(溶け合わないものでも、固溶体をつくるものでも、化合物をつくるものでも、これらの組み合わせでもよい)。
「Al又はAlを含む合金」の母相用材料は、一種でもよいが、二種以上を混合したものでもよい。
【0017】
「BCC金属」は、特定の金属に限定されるものではなく、Nb、Fe(鉄)、Cr(クロム)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)又はW(タングステン)が有効である。
▲1▼ Nb、Fe、Cr、Taは、極低温以上の広い温度域で延性があり塑性加工可能であることから、特に好ましい。
▲2▼ また、Moは24℃、Wは341℃が、それぞれ延性−脆性遷移温度であることから、これらの温度以上かつAl又はAlを含む合金の融点温度以下で塑性加工を行う場合には、これらの元素も使用可能となる。
▲3▼ また、極低温から常温付近までの間で塑性加工を行う場合でも、Nb、Fe、Cr、Ta等に加えて、二次的にMo、W等を混合してもよい。
【0018】
「BCC金属を含む合金」とは、BCC金属を実質的に含んでいればその含有率を特に限定しない意味であるが、BCC金属を少なくとも主成分の一つとして含むことが好ましく、さらにBCC金属の含有率が合金元素のうちで最大であることが好ましい。数値で示すと、BCCの含有率は30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
「BCC金属を含む合金」におけるBCC金属以外の金属又は非金属は、特に限定されない。その合金は、二元系、三元系又はそれ以上の多元系のいずれをも含み、合金組織は特に限定されない(溶け合わないものでも、固溶体をつくるものでも、化合物をつくるものでも、これらの組み合わせでもよい)。
「BCC金属又はBCC金属を含む合金」の第二相用材料は、一種でもよいが、二種以上を混合したものでもよい。
【0019】
「Al又はAlを含む合金」よりなる母相用材料と、「BCC金属又はBCC金属を含む合金」よりなる第二相用材料との混合比は、後者1に対して前者を範囲で示した体積比で、30〜1:1とするが、15〜3:1が最も好ましい。
【0020】
また、「Al又はAlを含む合金」よりなる母相用材料と、「BCC金属又はBCC金属を含む合金」よりなる第二相用材料とに加え、他の結晶構造(例えばFCC、稠密六方格子(hexagonal close-packed lattice, 略してHCP)等)の金属、金属間化合物、セラミックス、ポリマーなどの有機物、又はアモルファス状態の物質などよりなる第三成分材料(例えば点状体、線状体又は面状体)を、二次的に混合し又は生成されることは許容される。
【0021】
前記手段(2)の混成物作成工程において、「Al又はAlを含む合金の融点に達しない温度」とするのは、活性な金属であるAlが溶融し、他の金属元素と反応して脆性な金属間化合物を生成するのを防ぐためであり、その融点は合金により高低があるが、例えば660℃程度である。但し、この温度は、好ましくは300℃以下であり、さらに好ましくは200℃以下である。また、この温度の下限は特にないが、安価な液体窒素により実現できる−196℃程度が現実的であり、0℃以上が好ましい。
【0022】
前記手段(3)において、「点状体、線状体又は面状体」とは、混合、結束又は積層が可能な固体形態である、▲1▼粒子、粉末等の点状体、▲2▼短繊維、長繊維、連続繊維等の線状体、又は▲3▼箔、薄板、前記各繊維による織布若しくは不織布等の面状体(薄物)を意味し、特定の形状・寸法に限定されない。また、母相用材料の形態と第二相用材料の形態とは、例えば次のように同一の形態の混成態様a〜cでもよいし、異なる形態の混成態様d〜iでもよい。
a:点状体よりなる母相用材料と点状体よりなる第二相用材料との混合。
b:線状体よりなる母相用材料と線状体よりなる第二相用材料との混合又は結束。
c:面状体よりなる母相用材料と面状体よりなる第二相用材料との積層。
d:点状体よりなる母相用材料と線状体よりなる第二相用材料との混合。
e:点状体よりなる母相用材料と面状体よりなる第二相用材料との積層。
f:線状体よりなる母相用材料と点状体よりなる第二相用材料との混合。
g:線状体よりなる母相用材料と面状体よりなる第二相用材料との積層。
h:面状体よりなる母相用材料と点状体よりなる第二相用材料との積層。
i:面状体よりなる母相用材料と線状体よりなる第二相用材料との積層。
さらに、母相用材料又は第二相用材料のそれぞれについて、前記各混成態様a〜iのように点状体、線状体又は薄状体から選ばれる一つの形態でもよいが、例えば点状体と線状体とを組み合わせたり、点状体と薄状体とを組み合わせたり、線状体と薄状体とを組み合わせたり、点状体と線状体と薄状体とを組み合わせたりするなど、二つ以上の形態を組み合わせてもよい。
【0023】
前記手段(1)(2)において、「塑性加工」の手法は、特に限定されず、スエージング加工、線引加工、押出加工、圧延加工、鍛造加工、引抜加工などを例示することができ、いずれも同様な効果が得られる。また、これらの加工の一種でもよいが、二種以上を適宜の順序で組み合わせてもよい。
【0024】
「塑性加工」を行う温度としては、前述の理由により「Al又はAlを含む合金の融点に達しない温度」であればよく、下限は特にないが、安価な液体窒素により実現できる−196℃程度が現実的である。但し、この温度は、
▲1▼ 好ましくは、用いる「BCC金属又はBCC金属を含む合金」の延性脆性遷移温度以上で行うことがよい。すなわち、例えばBCC金属として、純Nbを用いる場合は−121℃以上、純Moでは24℃、純Wでは341℃以上で行うことがよい。この温度は、BCC金属の純度や合金元素の添加によって大きく変化する。
▲2▼ また、「Al又はAlを含む合金」中にある程度の塑性歪を蓄積した方が強度向上に有効であるため、好ましくは200℃程度以下で行うことがよい。200℃以上で塑性加工を行った場合、回復に伴う転位の消滅・再配列により「Al又はAlを含む合金」の強度・硬さが低下して若干の加工材の強度低下をきたす。但し、純度99.9%以下のAl合金を用いる場合、介在物などが塑性歪みの解放を妨げるため、300℃程度以下で有効に行うことができる。
【0025】
「塑性加工」は強度の塑性加工が好ましく、塑性加工により混成物に与える加工歪は2以上であることが好ましい。これは、2以下では「BCC金属又はBCC金属を含む合金」よりなる第二相の充分な微細化が達成されないためである。また、同加工歪は10以上であることがさらに好ましい。これは、10以上とすることで、歪の蓄積に伴って急激に線材の強度が上昇するからである。同加工歪を12以上とすれば、「BCC金属又はBCC金属を含む合金」よりなる第二相の厚さ・間隔とも極微小となり、従来のAl合金で得られない超高強度が得られるためさらに好ましい。そして、同加工歪は大きければ大きいほど良く、強度が上昇しすぎて塑性加工(例えば伸線加工)がこれ以上不可能となる限界以下で、所望する強度と延性のバランスやコストなどを勘案して決定できる。
【0026】
前記手段(1)(2)において、「相分離した状態」とは、母相と第二相の大部分(好ましくは半分以上)が相分離している状態を示し、その大部分について「金属間化合物を形成しない」、「相互に固溶しない」等の意味を含む。
【0027】
「BCC金属又はBCC金属を含む合金」よりなる第二相の塑性加工後の平均厚み及び平均間隔は、それぞれ10μm以下であることが好ましい。これは、10μm以下で分散強化の機構が効き始めるため、強度の上昇が期待できるからである。さらに好ましくは1μm以下である。これは、1μm以下では、これらの第二相が「Al又はAlを含む合金」の母相中の転位の移動の障害となり、変形様式が通常のAl又はその合金とは大きく異なってくるため、従来のAl合金にはない高強度が発現されるためである。但し、第二相の塑性加工後の平均厚み及び平均間隔は、可能な限り小さい方が良く、その下限は実質的にはない。
【0028】
本発明による材料の強度発現機構は、次のようなものと考えられる。
すなわち、BCC金属は、塑性加工を行う(例えば線材とする)と、平面歪変形して結晶粒がリボン状に薄く伸びる性質がある。これは、引張軸が[011]方向に平行に配向したBCC結晶では、4つの<111>すべり方向の内、2つのみが例えば線材の伸長に伴う歪を集積し、引張軸に垂直なすべり系は活動しないことによる。
一方、FCC金属であるAl又はAlを含む合金では、塑性加工を行う(例えば線材とする)と、結晶粒が軸対称変形して円筒状又は針状になる。
そして、「Al又はAlを含む合金」よりなる母相中に、「BCC金属又はBCC金属を含む合金」よりなる第二相を分散させた場合、隣接する両相の結晶粒が整合をとるため、第二相はカールして母相の回りを取り囲み、逆に母相は扁平する。第二相で隔てられた薄い母相では、引張負荷などに際して転位の移動がすぐに第二相でブロックされて転位の堆積が生じ、長距離の転位の移動が不可能となる。また、転位の拡張もまた第二相でピン止めされるため、いわゆるフランク・リード源が機能しなくなる。このため、転位の移動の様式は、界面に非整合転位を残しながら、母相が配向する方向にのみ、個々の転位が張り出しながら移動するものとなる。これらの理由により、加工材(例えば線材)の強度が大きく向上する。また、隣接する両相の非整合は、塑性加工中の両相中の転位密度の急激な上昇をももたらし、強度の上昇に貢献する。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の実施に当たっては、次のような実施態様を例示することができる。
(1)Al又はAlを含む合金の粉末よりなる母相用材料とBCC金属又はBCC金属を含む合金の粉末よりなる第二相用材料との混合粉末(混成物の一態様)を、必要に応じて圧粉成形するなどしてビレットとし、このビレットを金属パイプに挿入して押出加工、圧延加工、スエージング加工、線引加工等で線材、棒材、管材、型材等とする態様。
(2)前記(1)と同様のビレットを、直接押出加工、圧延加工、スエージング加工、線引加工等で線材、棒材、管材、型材等とする態様。
(3)前記(1)と同様の混合粉末を、金属パイプに投入し、押出加工、圧延加工、スエージング加工、線引加工等で線材、棒材、管材、型材等とする態様。
(4)前記(1)と同様のビレットを、金属板に挟み、圧延加工で線材、棒材、板材、型材等とする態様。
(5)前記(1)と同様の混合粉末を、直接圧延加工で線材、棒材、板材、型材等とする態様。
(6)前記(1)と同様のビレットを、直接鍛造加工で線材、棒材、管材、板材、型材、各種三次元形状材等とする様態。
(7)前記(1)と同様の混合粉末を、直接鍛造加工で線材、棒材、管材、板材、型材、各種三次元形状材等とする様態。
(8)前記(1)と同様のビレットを、ECAP法により押し出ししてビレット径を減少させずに強加工する態様。ECAP法は、金型中で交差する同じ径の二つの溝孔(Channel)を通して材料を押し出し、曲がり角で材料に大きな剪断変形を与える塑性加工手法である(R.Z.Valiev, E.V.Kozlov, YU.F.Ivanov, J.Lian, A.A.Nazarov, and B.Baudelet: Acta Metall. Mater.誌,42巻(1994年)、2467頁)。ECAP法では、混合粉末を供給しながら連続的に棒材を形成することができる。
(9)前記(1)〜(8)における混合粉末を、前記「課題を解決するための手段」の項で挙げた母相用材料と第二相用材料との各混成態様b〜iのいずれかに置き換えた態様。
(10)前記(4)(5)において、板材を製造する場合、繰り返し重ね接合圧延(斉藤好弘、宇都宮裕、辻伸泰、左海哲夫:日本金属学会春期大会講演概要、1998年、295頁)により板材に強加工を施す様態。
(11)溶射法、スプレーデポジション法などによりAl又はAlを含む合金の点状体よりなる母相用材料とBCC金属又はBCC金属を含む合金の点状体よりなる第二相用材料とが混合して堆積した層状物又はバルクを作成し、その層状物又はバルクに前記(1)〜(10)で挙げたような各種塑性加工を施して形成する態様。
(12)Al用又はAlを含む合金用のメッキ浴の中にBCC金属又はBCC金属を含む合金の粉末よりなる第二相用材料を混入し、前記メッキ浴に浸けた基材の表面に、前記第二相用材料が分散したAl又はAlを含む合金よりなるメッキ層を形成し、そのメッキ層に前記(1)〜(10)で挙げたような各種塑性加工を施して形成する態様。
【0030】
さらに本発明を具体化した実施例1〜4について、図面を参照して説明する。
[実施例1]
純度99.9%、平均粒径27μmの東洋アルミ社製純Al粉末と、100μm以下に分級した純度99.96%のレアメタリック社製Nb粉末とを、体積比でAl:Nb=4:1となるようV型混合機により常温で30分間混合し、Al粉末中にNb粉末が略均一に分散した混合粉末を作成した。
この混合粉末1を、図1(a)に示すように、アムスラー型万能試験機により常温で加圧力118MPaで一軸圧粉成形し、図1(b)に示すように、直径約20mm、高さ20mmのビレット2(混成物の一態様)とした。
このビレット2を、図2に示すように、純Cu製パイプ3に挿入し、ビレット2両端に純Cu製の中実棒4を挿入してシールした後、常温においてビレット2の直径が20mm→2mm(線材)となるまでスエージング加工した。但し、シールは20mm→18mmの最初のスエージングの後に破れ、以後シール無しで行った。
【0031】
その後、同じく常温において線引加工し(図示略)、線材表面のCuを硝酸で除去して再結束し、再びCuパイプに挿入して線引という作業を繰り返すことで、混合粉末の固化と同時に、Nbよりなる第二相(強化相)とAlよりなる母相の組織の微細化を図り、母相中に第二相が相分離した状態で微細に分散するようにした。実施例1の条件では、中間焼鈍処理は施していない。
所定の段階まで線引後、線材表面のCuをエッチングにより除去して、作成された複合高強度線材の硬さ試験及び引張試験を行った。この場合、加工の度合いは、次式の加工歪:ηで整理した。
【0032】
【数1】
η=ln(A0/A)
【0033】
ここで、A0は圧粉成形後のビレット2の断面積、Aは作製した線材の断面積である。ミクロ組織の観察を走査型電子顕微鏡を用いて行った。また、得られた線材中の構成相を知るため、X線回折を行った。
図3(ア)、(イ)、(ウ)は、それぞれη=5.4、10.5、13.0の段階まで加工した線材の縦断面のミクロ組織を示し、白いところがNbであり、黒いところがAlである。加工が進行するとNb粒子が線材の長手方向に伸長することがわかる。η=13.0の段階で、既に(ウ)で観察されるNbフィラメントの厚みは、数百nmまで減少している。
また、図4には、η=13.0の段階の線材の横断面ミクロ組織を示す。Nbは針状に伸長するのではなく、本発明で期待するように直径方向においてもフィラメント状に異方性をもって伸長し、かつこの様なフィラメントがカールしていることがわかる。
図5には、η=5.4の段階の線材のX線回折結果を示す。得られたピークはいずれもAl及びNb単体のピークに相当し、金属間化合物のピークは認められなかった。本発明の通り、二つの金属相が相分離した状態で存在することが確認できる。
図6には、加工歪と引張強度の関係を示した。加工歪の増加に伴い引張強度は徐々に増加し、η=10程度を越えると、さらに急激に増加した。η=13.0の段階では、引張強度で340MPaが得られた。η=13.0の段階では、Nbフィラメントの厚み、間隔とも、平均で300nm程度となっている。
【0034】
[実施例2]
純度99.99%、平均粒径27μmの東洋アルミ社製純Al粉末と、100μm以下に分級した純度99.96%のレアメタリック社製Nb粉末とを、体積比でAl:Nb=4:1となるようV型混合機により常温で30分間混合し、Al粉末中にNb粉末が略均一に分散した混合粉末を作成した。
この混合粉末1を、図1(a)に示すように、アムスラー型万能試験機により常温で加圧力118MPaで一軸圧粉成形し、図1(b)に示すように、直径約20mm、高さ20mmのビレット2とした。
このビレット2を、図2に示すように、純Cu製パイプ3に挿入し、ビレット2両端に純Cu製の中実棒4を挿入してシールした後、常温においてビレット2の直径が20mm→2mm(線材)となるまでスエージング加工した。但し、シールは20mm→18mmの最初のスエージングの後に破れたが、実施例1と異なり、その後もシールが破れる度に再びビレット2両端に純Cu製の中実棒4を挿入してシールをし、ビレット2に絶えず静水圧がかかるようにした。また、実施例1と異なり、塑性加工後、次のパスに移る前に氷水を用いて水冷し、塑性加工による発熱の影響を除去した。
【0035】
その後、実施例1と同じく常温において線引加工し(図示略)、線材表面のCuを硝酸で除去して再結束し、再びCuパイプに挿入して線引という作業を繰り返すことで、混合粉末の固化(粉末同志の接合)と同時に、Nbよりなる第二相(強化相)とAlよりなる母相の組織の微細化を図り、母相中に第二相が相分離した状態で微細に分散するようにした。実施例2の条件では、η=10.4の段階で線材の破断によりこれ以上の塑性加工ができなくなり、250℃で5時間の焼鈍処理を施した。このため、η=14.6の高加工歪の段階を作製することができた。その他の方法は実施例1と同じである。
【0036】
図7、図8は、η=14.6の段階まで加工した線材のそれぞれ縦断面と横断面のミクロ組織であり、白いところがNbであり、黒いところがAlである。実施例1の場合よりもNbフィラメントの厚み、間隔とも減少しており、有効にNbよりなる第二相の微細化が達成されていることがわかる。次の表1は、走査型電子顕微鏡により断面を観察し、Nbフィラメントの厚み、間隔を測定した結果である。η=5.4の段階で既に厚み、間隔とも1μmを下回っており、η=14.6の段階ではいずれも210nmとなっている。これらは平均値であるが、最も微細化が進行した領域では、η=14.6の段階でNbフィラメントの厚み22nm、間隔39nmと、極微細な組織が実現できていることがわかる。
【0037】
【表1】
【0038】
図9には、η=12.4及び14.6の段階の線材のX線回折結果を示す。得られたピークは、いずれの加工歪でもAl及びNb単体のピークのみであり、金属間化合物のピークは認められなかった。本発明の通り、二つの金属相が相分離した状態で存在することが確認できる。
図10には、加工歪とビッカース硬さの関係を、また図11には加工歪と引張強度の関係を示した。加工歪の増加に伴いビッカース硬さ及び引張強度は徐々に増加し、η=10程度を越えると、さらに急激に増加した。η=14.6の段階では、引張強度で1063MPaが得られた。
【0039】
[実施例3]
純度99.99%、平均粒径27μmの東洋アルミ社製純Al粉末と、38μm以下に分級した純度99.9%の高純度化学研究所製純Fe粉末とを、体積比でAl:Fe=4:1となるようV型混合機により常温で30分間混合し、Al粉末中にFe粉末が略均一に分散した混合粉末を作成した。
この混合粉末1を、図1(a)に示すように、アムスラー型万能試験機により常温で加圧力118MPaで一軸圧粉成形し、図1(b)に示すように、直径約20mm、高さ30mmのビレット2とした。
このビレット2を、図2に示すように、純Cu製パイプ3に挿入し、ビレット2両端に純Cu製の中実棒4を挿入してシールした後、常温においてビレット2の直径が20mm→2mm(線材)となるまでスエージング加工した。但し、シールは20mm→18mmの最初のスエージングの後に破れ、以後シール無しで行った。
【0040】
その後、実施例1と同じく常温において線引加工し(図示略)、線材表面のCuを硝酸で除去して再結束し、再びCuパイプに挿入して線引という作業を繰り返すことで、混合粉末の固化と同時に、Feよりなる第二相(強化相)とAlよりなる母相の組織の微細化を図り、母相中に第二相が相分離した状態で微細に分散するようにした。実施例3の条件では、中間焼鈍処理は施していない。その他は、実施例1と同様である。
【0041】
図12、図13は、η=14.8の段階まで加工した線材のそれぞれ縦断面と横断面のミクロ組織であり、白いところがFeであり、黒いところがAlである。る。加工が進行すると鉄粒子が線材の長手方向に伸長することがわかる。但し、実施例1及び2のNbを用いた場合と比較すると、伸長の度合いは顕著ではない。また、横断面からわかるように、本発明で期待するように、Fe粒子は直径方向においてもフィラメント状に異方性をもって伸長し、かつこの様なフィラメントがカールしていることがわかる。
図14には、図中に示す各加工歪段階のX線回折結果を示す。得られたピークはいずれもAl及びFe単体のピークに相当し、金属間化合物のピークは認められなかった。本発明の通り、二つの金属相が相分離した状態で存在することが確認できる。
図15には、加工歪とビッカース硬さの関係を、また図16には、加工歪と引張強度の関係を示した。加工歪の増加に伴いビッカース硬さ及び引張強度は徐々に増加している。η=12.3の段階では、引張強度で230MPaが得られた。これは、実施例1、2の値よりは小さいものの、純Alの強度50MPaの5倍近い値であり、充分に本発明の効果が達成されているものと考える。これは、図12、図13、図14で本発明で期待するような組織形態が実現されていることからも裏付けられる。また、η=14.8の段階では、引張強度がη=12.3の段階より低下している。これは、線材作製時に表面の荒れなどの製造欠陥が発生した結果と考えられる。この様な製造欠陥が製造方法上の工夫により解決されれば、より強度の向上が期待できる。
【0042】
[実施例4]
純度99.99%、平均粒径27μmの東洋アルミ社製純Al粉末と、38μm以下に分級した純度99.9%のレアメタリック製純Cr粉末とを、体積比でAl:Cr=4:1となるようV型混合機により常温で30分間混合し、Al粉末中にCr粉末が略均一に分散した混合粉末を作成した。
この混合粉末1を、図1(a)に示すように、アムスラー型万能試験機により常温で加圧力118MPaで一軸圧粉成形し、図1(b)に示すように、直径約20mm、高さ30mmのビレット2とした。
このビレット2を、図2に示すように、純Cu製パイプ3に挿入し、ビレット2両端に純Cu製の中実棒4を挿入してシールした後、常温においてビレット2の直径が20mm→2mm(線材)となるまでスエージング加工した。但し、シールは20mm→18mmの最初のスエージングの後に破れ、以後シール無しで行った。
【0043】
その後、実施例1と同じく常温において線引加工し(図示略)、線材表面のCuを硝酸で除去して再結束し、再びCuパイプに挿入して線引という作業を繰り返すことで、混合粉末の固化と同時に、Crよりなる第二相(強化相)とAlよりなる母相の組織の微細化を図り、母相中に第二相が相分離した状態で微細に分散するようにした。実施例3の条件では、中間焼鈍処理は施していない。その他は、実施例1と同様である。
【0044】
η=10.0の段階で、Cr相はアスペクト比3程度まで伸長した組織が得られた。また、ビッカース硬さで150Hv、最大引張強さ150MPaが得られた。
【0045】
なお、本発明は前記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)本発明で得られた複合高強度材を別の材料中に分散させて、さらなる複合材料とすること。例えば、実施例で製造中にビレットを挿入したCu製パイプなどを除去せずにそのまま線材とした場合、Cu基材中に複合高強度材が配向した一種の複合材料となる。この場合でも、かなりの高強度化が期待できる。また、線材の再結束段階で、線材表面を金属メッキしたり金属などの箔で巻くなどしてから、同じように強く塑性加工しても、同様のものが得られる。
【0046】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明に係る複合高強度材及びその製造方法によれば、Al合金線材だけではなくバルク材料を含めても、これまでに例のない超高強度と延性・靱性とを兼ね備えた高性能なAlを含む複合高強度材を提供することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の各実施例において混合粉末を圧粉成形してビレットにする工程の概略断面図、(b)は作成したビレットの斜視図である。
【図2】同ビレットをスエージング加工する工程の概略断面図である。
【図3】実施例1の線材を示し、(ア)、(イ)、(ウ)はそれぞれη=5.4、10.5、13.0の各段階まで加工した線材の縦断面のミクロ組織を示す金属組織写真である。
【図4】同じくη=13.0の段階の線材の横断面のミクロ組織を示す金属組織写真である。
【図5】同じくη=5.4の段階の線材のX線回折結果を示すグラフである。
【図6】同じく実施例1における加工歪と引張強度の関係を示すグラフである。
【図7】実施例2の線材においてη=14.6の段階の線材の縦断面のミクロ組織を示す金属組織写真である。
【図8】同じくη=14.6の段階の線材の横断面のミクロ組織を示す金属組織写真である。
【図9】同じくη=12.4、14.6の各段階の線材のX線回折結果を示すグラフである。
【図10】同じく実施例2における加工歪とビッカース硬さの関係を示すグラフである。
【図11】同じく実施例2における加工歪と引張強度の関係を示すグラフである。
【図12】実施例2の線材においてη=14.8の段階の線材の縦断面のミクロ組織を示す金属組織写真である。
【図13】同じくη=14.8の段階の線材の横断面のミクロ組織を示す金属組織写真である。
【図14】同じく図中に示す各加工歪段階のX線回折結果を示すグラフである。
【図15】同じく実施例3における加工歪とビッカース硬さの関係を示すグラフである。
【図16】同じく実施例3における加工歪と引張強度の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 混合粉末
2 ビレット
3 パイプ
4 中実棒
【発明の属する技術分野】
本発明は、Al(アルミニウム)を含む複合高強度材及びその製造方法に関するものである。なお、本明細書では記載の簡略化のために、結晶構造が面心立方構造(face-centered cubic lattice, 略してFCC)をとる金属をFCC金属と記し、結晶構造が体心立方構造(body-centered cubic lattice, 略してBCC)をとる金属をBCC金属と記すことにする。
【0002】
【従来の技術】
鉄鋼材料の分野では、ピアノ線、タイヤ用スチールコードなど、引張強度:数GPa又はそれ以上とある程度の延性とを兼ね備えた超高張力鋼線材があり、いずれもシンプルな組成のものが実用に供せられている。これは、バルクの高強度材のさらに数倍といった高い強度レベルに相当する。
【0003】
一方、Al及びAl合金の分野では、ナノ準結晶、ナノ結晶粒子、ナノ非晶質粒子などが微細分散した合金で1.3GPa以上のリボン材などが得られている(井上明久、増本健:軽金属,42巻(1992年),299頁)。但し、これは、単ロール急冷凝固法などによるものであり、厚さ10μm程度の薄膜で、化学組成も通常の素材とは大きく異なる特殊で高価なものである。これらを除けば、現行のAl線材の強度は、高々0.2〜0.3GPaに過ぎない。これは、バルクの超々ジュラルミン系などの高強度材の強度の半分にも満たない低いレベルである。すなわち、現行ではAl及びAl合金の分野で、バルクの強度をしのぐような高強度線材はないと言える。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
機械構造、建築構造などの軽量化が進む昨今、軽量で高強度な構造用線材として、また送電線などのある程度の機能性を備えた材料として、Al及びその合金の線材のニーズは極めて大きい。しかしながら、Al送電線を例にとっても、鋼線を芯線として追加することでようやく構造体を維持し、実用に供しているのが現状である。その他のAl線材の実用例は、自身で自重や外力を受ける構造体を構成するものとしては、皆無に等しい。
【0005】
これを解決すべく、一部には、炭化珪素などのセラミックス連続繊維で強化した複合Al線材の開発例も報告されている(沢田純、菊池武彦、岩井一智、長谷祐児、安富義幸、黒田洋光、鷲見亨、木愽博、岸輝雄:日本金属学会春期大会講演概要集(1998年)第201頁)。しかしながら、この手法では容易に高強度は達成できるものの、長尺材ではセラミックス特有のマス効果の問題がでて、線材が長くなればなるほど強度が極端に低下するという構造用材料として致命的な問題点がある。また、中に入っているセラミックスに起因して、複合線材の延性、靱性、切り欠き感受性などが、Al単体の場合と比較して大きく劣ることは容易に予測される。
【0006】
本発明の目的は、前記課題を解決し、Al合金線材だけではなくバルク材料を含めても、これまでに例のない超高強度と延性・靱性を兼ね備えた高性能なアルミを含む複合高強度材を提供することにある。
【0007】
なおここで、次のような本発明の関連技術を挙げておく。すなわち、従来から、Alと同じFCC金属であるCu(銅)では、BCC金属を添加して強度に塑性加工を施すことにより、高強度が発現することは知られている。例えば、J.Bevkらは、電磁攪拌を行いながらCuとNb(ニオブ)を混合・溶融し、鋳造後スウェージング加工を施して線材を作製し、Nb体積率10.5%で、降伏強度1.19GPaを達成している(Applied Physics 誌、49巻(1978年)、6031頁)。また、S.Pourrahimiらは、Cu粉末とNb粉末とを混合した後、押出加工を施して線材を作製し、最大で1.4GPa程度の引張強度を得ている(Metallurgical Transaction A 誌、23A巻(1992年)、573頁)。
【0008】
しかしながら、これらは全てFCC金属(母相・基地)として、BCC金属と容易に相分離するCuを用いたものであり、Alを基地とするものではない。このように、これまでCuが用いられてAlが用いられなかった理由は、Alは活性な金属であり、ほとんど全ての金属元素と反応して脆性な金属間化合物を生成するため、相分離した状態でAl中にBCC金属を分散させることが困難だからである。仮に、このように脆性な金属間化合物を含むAl線材を作製したとしても、金属間化合物相の早期の破断が起こるため、線材自体の強度、延性などを基地であるAl又はその合金以上に向上させることはできない。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明では、この様な状況に鑑みて、Alを含む(好ましくは中心とする)母相中に、BCC金属を含む(好ましくは中心とする)第二相を分散させ、これを(好ましくは強度の)塑性加工により伸長させることで、BCC金属のフィラメントが相分離した状態でAl又はAl合金を強化した複合高強度材を、単純な強度の塑性加工で製造するものである。この様な手法により、Al合金線材だけではなくバルク材料を含めても、これまでに例のない超高強度と延性・靱性とを兼ね備えた高性能な複合高強度材を提供する事が可能となる。すなわち、次のような手段をとった。
【0010】
(1)Al又はAlを含む合金よりなる母相用材料中に、Nb、Fe、Cr及びTaから選ばれる一種又は二種以上のBCC金属又は前記BCC金属を含む合金よりなる第二相用材料が、後者1に対して前者を範囲で示した体積比で30〜1:1で混ざり分散した混成物に、一方向に塑性加工が施されたことにより、前記Al又はAlを含む合金よりなる母相中に、前記BCC金属又は前記BCC金属を含む合金よりなる第二相のフィラメントが相分離した状態で微細に分散している複合高強度材。
【0011】
(2)300℃以下で、Al又はAlを含む合金よりなる母相用材料中に、BCC金属又はBCC金属を含む合金よりなる第二相用材料が、後者1に対して前者を範囲で示した体積比で30〜1:1で混ざり分散した混成物を作成する混成物作成工程と、前記混成物を300℃以下で一方向に塑性加工することにより、前記Al又はAlを含む合金よりなる母相中に前記BCC金属又はBCC金属を含む合金よりなる第二相のフィラメントを相分離した状態で微細に分散させる塑性加工工程とを含む複合高強度材の製造方法。
【0012】
(3)前記混成物作成工程は、Al又はAlを含む合金の点状体、線状体又は面状体よりなる母相用材料と、BCC金属又はBCC金属を含む合金の点状体、線状体又は面状体よりなる第二相用材料とを混合、結束又は積層することにより行う前記(2)の複合高強度材の製造方法。
【0013】
(4)前記混成物作成工程は、溶射法(各種溶射法が可)、スプレーデポジション法などによりAl又はAlを含む合金の粉末よりなる母相用材料と、BCC金属又はBCC金属を含む合金の粉末よりなる第二相用材料とが混合して堆積した層状物又はバルクを作成することにより行う前記(2)の複合高強度材の製造方法。
【0015】
前記各手段(1)〜(4)において、製造される「複合高強度材」の形状は、特定の形状に限定されず、線材、棒材、管材、板材、型材、各種三次元形状材等を例示することができる。但し、本発明は一方向に大きい加工歪を与えやすい線材に最も適している。
【0016】
「Alを含む合金」とは、Alを実質的に含んでいればその含有率を特に限定しない意味であるが、Alを少なくとも主成分の一つとして含むことが好ましく、さらにAlの含有率が合金元素のうちで最大であることが好ましい。数値で示すと、Alの含有率は30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
「Alを含む合金」におけるAl以外の金属又は非金属は、特に限定されないが、Cu、Mg、Mn、Si、Ni、Fe、Zr等を例示することができる。その合金は、二元系、三元系又はそれ以上の多元系のいずれをも含み、合金組織は特に限定されない(溶け合わないものでも、固溶体をつくるものでも、化合物をつくるものでも、これらの組み合わせでもよい)。
「Al又はAlを含む合金」の母相用材料は、一種でもよいが、二種以上を混合したものでもよい。
【0017】
「BCC金属」は、特定の金属に限定されるものではなく、Nb、Fe(鉄)、Cr(クロム)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)又はW(タングステン)が有効である。
▲1▼ Nb、Fe、Cr、Taは、極低温以上の広い温度域で延性があり塑性加工可能であることから、特に好ましい。
▲2▼ また、Moは24℃、Wは341℃が、それぞれ延性−脆性遷移温度であることから、これらの温度以上かつAl又はAlを含む合金の融点温度以下で塑性加工を行う場合には、これらの元素も使用可能となる。
▲3▼ また、極低温から常温付近までの間で塑性加工を行う場合でも、Nb、Fe、Cr、Ta等に加えて、二次的にMo、W等を混合してもよい。
【0018】
「BCC金属を含む合金」とは、BCC金属を実質的に含んでいればその含有率を特に限定しない意味であるが、BCC金属を少なくとも主成分の一つとして含むことが好ましく、さらにBCC金属の含有率が合金元素のうちで最大であることが好ましい。数値で示すと、BCCの含有率は30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
「BCC金属を含む合金」におけるBCC金属以外の金属又は非金属は、特に限定されない。その合金は、二元系、三元系又はそれ以上の多元系のいずれをも含み、合金組織は特に限定されない(溶け合わないものでも、固溶体をつくるものでも、化合物をつくるものでも、これらの組み合わせでもよい)。
「BCC金属又はBCC金属を含む合金」の第二相用材料は、一種でもよいが、二種以上を混合したものでもよい。
【0019】
「Al又はAlを含む合金」よりなる母相用材料と、「BCC金属又はBCC金属を含む合金」よりなる第二相用材料との混合比は、後者1に対して前者を範囲で示した体積比で、30〜1:1とするが、15〜3:1が最も好ましい。
【0020】
また、「Al又はAlを含む合金」よりなる母相用材料と、「BCC金属又はBCC金属を含む合金」よりなる第二相用材料とに加え、他の結晶構造(例えばFCC、稠密六方格子(hexagonal close-packed lattice, 略してHCP)等)の金属、金属間化合物、セラミックス、ポリマーなどの有機物、又はアモルファス状態の物質などよりなる第三成分材料(例えば点状体、線状体又は面状体)を、二次的に混合し又は生成されることは許容される。
【0021】
前記手段(2)の混成物作成工程において、「Al又はAlを含む合金の融点に達しない温度」とするのは、活性な金属であるAlが溶融し、他の金属元素と反応して脆性な金属間化合物を生成するのを防ぐためであり、その融点は合金により高低があるが、例えば660℃程度である。但し、この温度は、好ましくは300℃以下であり、さらに好ましくは200℃以下である。また、この温度の下限は特にないが、安価な液体窒素により実現できる−196℃程度が現実的であり、0℃以上が好ましい。
【0022】
前記手段(3)において、「点状体、線状体又は面状体」とは、混合、結束又は積層が可能な固体形態である、▲1▼粒子、粉末等の点状体、▲2▼短繊維、長繊維、連続繊維等の線状体、又は▲3▼箔、薄板、前記各繊維による織布若しくは不織布等の面状体(薄物)を意味し、特定の形状・寸法に限定されない。また、母相用材料の形態と第二相用材料の形態とは、例えば次のように同一の形態の混成態様a〜cでもよいし、異なる形態の混成態様d〜iでもよい。
a:点状体よりなる母相用材料と点状体よりなる第二相用材料との混合。
b:線状体よりなる母相用材料と線状体よりなる第二相用材料との混合又は結束。
c:面状体よりなる母相用材料と面状体よりなる第二相用材料との積層。
d:点状体よりなる母相用材料と線状体よりなる第二相用材料との混合。
e:点状体よりなる母相用材料と面状体よりなる第二相用材料との積層。
f:線状体よりなる母相用材料と点状体よりなる第二相用材料との混合。
g:線状体よりなる母相用材料と面状体よりなる第二相用材料との積層。
h:面状体よりなる母相用材料と点状体よりなる第二相用材料との積層。
i:面状体よりなる母相用材料と線状体よりなる第二相用材料との積層。
さらに、母相用材料又は第二相用材料のそれぞれについて、前記各混成態様a〜iのように点状体、線状体又は薄状体から選ばれる一つの形態でもよいが、例えば点状体と線状体とを組み合わせたり、点状体と薄状体とを組み合わせたり、線状体と薄状体とを組み合わせたり、点状体と線状体と薄状体とを組み合わせたりするなど、二つ以上の形態を組み合わせてもよい。
【0023】
前記手段(1)(2)において、「塑性加工」の手法は、特に限定されず、スエージング加工、線引加工、押出加工、圧延加工、鍛造加工、引抜加工などを例示することができ、いずれも同様な効果が得られる。また、これらの加工の一種でもよいが、二種以上を適宜の順序で組み合わせてもよい。
【0024】
「塑性加工」を行う温度としては、前述の理由により「Al又はAlを含む合金の融点に達しない温度」であればよく、下限は特にないが、安価な液体窒素により実現できる−196℃程度が現実的である。但し、この温度は、
▲1▼ 好ましくは、用いる「BCC金属又はBCC金属を含む合金」の延性脆性遷移温度以上で行うことがよい。すなわち、例えばBCC金属として、純Nbを用いる場合は−121℃以上、純Moでは24℃、純Wでは341℃以上で行うことがよい。この温度は、BCC金属の純度や合金元素の添加によって大きく変化する。
▲2▼ また、「Al又はAlを含む合金」中にある程度の塑性歪を蓄積した方が強度向上に有効であるため、好ましくは200℃程度以下で行うことがよい。200℃以上で塑性加工を行った場合、回復に伴う転位の消滅・再配列により「Al又はAlを含む合金」の強度・硬さが低下して若干の加工材の強度低下をきたす。但し、純度99.9%以下のAl合金を用いる場合、介在物などが塑性歪みの解放を妨げるため、300℃程度以下で有効に行うことができる。
【0025】
「塑性加工」は強度の塑性加工が好ましく、塑性加工により混成物に与える加工歪は2以上であることが好ましい。これは、2以下では「BCC金属又はBCC金属を含む合金」よりなる第二相の充分な微細化が達成されないためである。また、同加工歪は10以上であることがさらに好ましい。これは、10以上とすることで、歪の蓄積に伴って急激に線材の強度が上昇するからである。同加工歪を12以上とすれば、「BCC金属又はBCC金属を含む合金」よりなる第二相の厚さ・間隔とも極微小となり、従来のAl合金で得られない超高強度が得られるためさらに好ましい。そして、同加工歪は大きければ大きいほど良く、強度が上昇しすぎて塑性加工(例えば伸線加工)がこれ以上不可能となる限界以下で、所望する強度と延性のバランスやコストなどを勘案して決定できる。
【0026】
前記手段(1)(2)において、「相分離した状態」とは、母相と第二相の大部分(好ましくは半分以上)が相分離している状態を示し、その大部分について「金属間化合物を形成しない」、「相互に固溶しない」等の意味を含む。
【0027】
「BCC金属又はBCC金属を含む合金」よりなる第二相の塑性加工後の平均厚み及び平均間隔は、それぞれ10μm以下であることが好ましい。これは、10μm以下で分散強化の機構が効き始めるため、強度の上昇が期待できるからである。さらに好ましくは1μm以下である。これは、1μm以下では、これらの第二相が「Al又はAlを含む合金」の母相中の転位の移動の障害となり、変形様式が通常のAl又はその合金とは大きく異なってくるため、従来のAl合金にはない高強度が発現されるためである。但し、第二相の塑性加工後の平均厚み及び平均間隔は、可能な限り小さい方が良く、その下限は実質的にはない。
【0028】
本発明による材料の強度発現機構は、次のようなものと考えられる。
すなわち、BCC金属は、塑性加工を行う(例えば線材とする)と、平面歪変形して結晶粒がリボン状に薄く伸びる性質がある。これは、引張軸が[011]方向に平行に配向したBCC結晶では、4つの<111>すべり方向の内、2つのみが例えば線材の伸長に伴う歪を集積し、引張軸に垂直なすべり系は活動しないことによる。
一方、FCC金属であるAl又はAlを含む合金では、塑性加工を行う(例えば線材とする)と、結晶粒が軸対称変形して円筒状又は針状になる。
そして、「Al又はAlを含む合金」よりなる母相中に、「BCC金属又はBCC金属を含む合金」よりなる第二相を分散させた場合、隣接する両相の結晶粒が整合をとるため、第二相はカールして母相の回りを取り囲み、逆に母相は扁平する。第二相で隔てられた薄い母相では、引張負荷などに際して転位の移動がすぐに第二相でブロックされて転位の堆積が生じ、長距離の転位の移動が不可能となる。また、転位の拡張もまた第二相でピン止めされるため、いわゆるフランク・リード源が機能しなくなる。このため、転位の移動の様式は、界面に非整合転位を残しながら、母相が配向する方向にのみ、個々の転位が張り出しながら移動するものとなる。これらの理由により、加工材(例えば線材)の強度が大きく向上する。また、隣接する両相の非整合は、塑性加工中の両相中の転位密度の急激な上昇をももたらし、強度の上昇に貢献する。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の実施に当たっては、次のような実施態様を例示することができる。
(1)Al又はAlを含む合金の粉末よりなる母相用材料とBCC金属又はBCC金属を含む合金の粉末よりなる第二相用材料との混合粉末(混成物の一態様)を、必要に応じて圧粉成形するなどしてビレットとし、このビレットを金属パイプに挿入して押出加工、圧延加工、スエージング加工、線引加工等で線材、棒材、管材、型材等とする態様。
(2)前記(1)と同様のビレットを、直接押出加工、圧延加工、スエージング加工、線引加工等で線材、棒材、管材、型材等とする態様。
(3)前記(1)と同様の混合粉末を、金属パイプに投入し、押出加工、圧延加工、スエージング加工、線引加工等で線材、棒材、管材、型材等とする態様。
(4)前記(1)と同様のビレットを、金属板に挟み、圧延加工で線材、棒材、板材、型材等とする態様。
(5)前記(1)と同様の混合粉末を、直接圧延加工で線材、棒材、板材、型材等とする態様。
(6)前記(1)と同様のビレットを、直接鍛造加工で線材、棒材、管材、板材、型材、各種三次元形状材等とする様態。
(7)前記(1)と同様の混合粉末を、直接鍛造加工で線材、棒材、管材、板材、型材、各種三次元形状材等とする様態。
(8)前記(1)と同様のビレットを、ECAP法により押し出ししてビレット径を減少させずに強加工する態様。ECAP法は、金型中で交差する同じ径の二つの溝孔(Channel)を通して材料を押し出し、曲がり角で材料に大きな剪断変形を与える塑性加工手法である(R.Z.Valiev, E.V.Kozlov, YU.F.Ivanov, J.Lian, A.A.Nazarov, and B.Baudelet: Acta Metall. Mater.誌,42巻(1994年)、2467頁)。ECAP法では、混合粉末を供給しながら連続的に棒材を形成することができる。
(9)前記(1)〜(8)における混合粉末を、前記「課題を解決するための手段」の項で挙げた母相用材料と第二相用材料との各混成態様b〜iのいずれかに置き換えた態様。
(10)前記(4)(5)において、板材を製造する場合、繰り返し重ね接合圧延(斉藤好弘、宇都宮裕、辻伸泰、左海哲夫:日本金属学会春期大会講演概要、1998年、295頁)により板材に強加工を施す様態。
(11)溶射法、スプレーデポジション法などによりAl又はAlを含む合金の点状体よりなる母相用材料とBCC金属又はBCC金属を含む合金の点状体よりなる第二相用材料とが混合して堆積した層状物又はバルクを作成し、その層状物又はバルクに前記(1)〜(10)で挙げたような各種塑性加工を施して形成する態様。
(12)Al用又はAlを含む合金用のメッキ浴の中にBCC金属又はBCC金属を含む合金の粉末よりなる第二相用材料を混入し、前記メッキ浴に浸けた基材の表面に、前記第二相用材料が分散したAl又はAlを含む合金よりなるメッキ層を形成し、そのメッキ層に前記(1)〜(10)で挙げたような各種塑性加工を施して形成する態様。
【0030】
さらに本発明を具体化した実施例1〜4について、図面を参照して説明する。
[実施例1]
純度99.9%、平均粒径27μmの東洋アルミ社製純Al粉末と、100μm以下に分級した純度99.96%のレアメタリック社製Nb粉末とを、体積比でAl:Nb=4:1となるようV型混合機により常温で30分間混合し、Al粉末中にNb粉末が略均一に分散した混合粉末を作成した。
この混合粉末1を、図1(a)に示すように、アムスラー型万能試験機により常温で加圧力118MPaで一軸圧粉成形し、図1(b)に示すように、直径約20mm、高さ20mmのビレット2(混成物の一態様)とした。
このビレット2を、図2に示すように、純Cu製パイプ3に挿入し、ビレット2両端に純Cu製の中実棒4を挿入してシールした後、常温においてビレット2の直径が20mm→2mm(線材)となるまでスエージング加工した。但し、シールは20mm→18mmの最初のスエージングの後に破れ、以後シール無しで行った。
【0031】
その後、同じく常温において線引加工し(図示略)、線材表面のCuを硝酸で除去して再結束し、再びCuパイプに挿入して線引という作業を繰り返すことで、混合粉末の固化と同時に、Nbよりなる第二相(強化相)とAlよりなる母相の組織の微細化を図り、母相中に第二相が相分離した状態で微細に分散するようにした。実施例1の条件では、中間焼鈍処理は施していない。
所定の段階まで線引後、線材表面のCuをエッチングにより除去して、作成された複合高強度線材の硬さ試験及び引張試験を行った。この場合、加工の度合いは、次式の加工歪:ηで整理した。
【0032】
【数1】
η=ln(A0/A)
【0033】
ここで、A0は圧粉成形後のビレット2の断面積、Aは作製した線材の断面積である。ミクロ組織の観察を走査型電子顕微鏡を用いて行った。また、得られた線材中の構成相を知るため、X線回折を行った。
図3(ア)、(イ)、(ウ)は、それぞれη=5.4、10.5、13.0の段階まで加工した線材の縦断面のミクロ組織を示し、白いところがNbであり、黒いところがAlである。加工が進行するとNb粒子が線材の長手方向に伸長することがわかる。η=13.0の段階で、既に(ウ)で観察されるNbフィラメントの厚みは、数百nmまで減少している。
また、図4には、η=13.0の段階の線材の横断面ミクロ組織を示す。Nbは針状に伸長するのではなく、本発明で期待するように直径方向においてもフィラメント状に異方性をもって伸長し、かつこの様なフィラメントがカールしていることがわかる。
図5には、η=5.4の段階の線材のX線回折結果を示す。得られたピークはいずれもAl及びNb単体のピークに相当し、金属間化合物のピークは認められなかった。本発明の通り、二つの金属相が相分離した状態で存在することが確認できる。
図6には、加工歪と引張強度の関係を示した。加工歪の増加に伴い引張強度は徐々に増加し、η=10程度を越えると、さらに急激に増加した。η=13.0の段階では、引張強度で340MPaが得られた。η=13.0の段階では、Nbフィラメントの厚み、間隔とも、平均で300nm程度となっている。
【0034】
[実施例2]
純度99.99%、平均粒径27μmの東洋アルミ社製純Al粉末と、100μm以下に分級した純度99.96%のレアメタリック社製Nb粉末とを、体積比でAl:Nb=4:1となるようV型混合機により常温で30分間混合し、Al粉末中にNb粉末が略均一に分散した混合粉末を作成した。
この混合粉末1を、図1(a)に示すように、アムスラー型万能試験機により常温で加圧力118MPaで一軸圧粉成形し、図1(b)に示すように、直径約20mm、高さ20mmのビレット2とした。
このビレット2を、図2に示すように、純Cu製パイプ3に挿入し、ビレット2両端に純Cu製の中実棒4を挿入してシールした後、常温においてビレット2の直径が20mm→2mm(線材)となるまでスエージング加工した。但し、シールは20mm→18mmの最初のスエージングの後に破れたが、実施例1と異なり、その後もシールが破れる度に再びビレット2両端に純Cu製の中実棒4を挿入してシールをし、ビレット2に絶えず静水圧がかかるようにした。また、実施例1と異なり、塑性加工後、次のパスに移る前に氷水を用いて水冷し、塑性加工による発熱の影響を除去した。
【0035】
その後、実施例1と同じく常温において線引加工し(図示略)、線材表面のCuを硝酸で除去して再結束し、再びCuパイプに挿入して線引という作業を繰り返すことで、混合粉末の固化(粉末同志の接合)と同時に、Nbよりなる第二相(強化相)とAlよりなる母相の組織の微細化を図り、母相中に第二相が相分離した状態で微細に分散するようにした。実施例2の条件では、η=10.4の段階で線材の破断によりこれ以上の塑性加工ができなくなり、250℃で5時間の焼鈍処理を施した。このため、η=14.6の高加工歪の段階を作製することができた。その他の方法は実施例1と同じである。
【0036】
図7、図8は、η=14.6の段階まで加工した線材のそれぞれ縦断面と横断面のミクロ組織であり、白いところがNbであり、黒いところがAlである。実施例1の場合よりもNbフィラメントの厚み、間隔とも減少しており、有効にNbよりなる第二相の微細化が達成されていることがわかる。次の表1は、走査型電子顕微鏡により断面を観察し、Nbフィラメントの厚み、間隔を測定した結果である。η=5.4の段階で既に厚み、間隔とも1μmを下回っており、η=14.6の段階ではいずれも210nmとなっている。これらは平均値であるが、最も微細化が進行した領域では、η=14.6の段階でNbフィラメントの厚み22nm、間隔39nmと、極微細な組織が実現できていることがわかる。
【0037】
【表1】
【0038】
図9には、η=12.4及び14.6の段階の線材のX線回折結果を示す。得られたピークは、いずれの加工歪でもAl及びNb単体のピークのみであり、金属間化合物のピークは認められなかった。本発明の通り、二つの金属相が相分離した状態で存在することが確認できる。
図10には、加工歪とビッカース硬さの関係を、また図11には加工歪と引張強度の関係を示した。加工歪の増加に伴いビッカース硬さ及び引張強度は徐々に増加し、η=10程度を越えると、さらに急激に増加した。η=14.6の段階では、引張強度で1063MPaが得られた。
【0039】
[実施例3]
純度99.99%、平均粒径27μmの東洋アルミ社製純Al粉末と、38μm以下に分級した純度99.9%の高純度化学研究所製純Fe粉末とを、体積比でAl:Fe=4:1となるようV型混合機により常温で30分間混合し、Al粉末中にFe粉末が略均一に分散した混合粉末を作成した。
この混合粉末1を、図1(a)に示すように、アムスラー型万能試験機により常温で加圧力118MPaで一軸圧粉成形し、図1(b)に示すように、直径約20mm、高さ30mmのビレット2とした。
このビレット2を、図2に示すように、純Cu製パイプ3に挿入し、ビレット2両端に純Cu製の中実棒4を挿入してシールした後、常温においてビレット2の直径が20mm→2mm(線材)となるまでスエージング加工した。但し、シールは20mm→18mmの最初のスエージングの後に破れ、以後シール無しで行った。
【0040】
その後、実施例1と同じく常温において線引加工し(図示略)、線材表面のCuを硝酸で除去して再結束し、再びCuパイプに挿入して線引という作業を繰り返すことで、混合粉末の固化と同時に、Feよりなる第二相(強化相)とAlよりなる母相の組織の微細化を図り、母相中に第二相が相分離した状態で微細に分散するようにした。実施例3の条件では、中間焼鈍処理は施していない。その他は、実施例1と同様である。
【0041】
図12、図13は、η=14.8の段階まで加工した線材のそれぞれ縦断面と横断面のミクロ組織であり、白いところがFeであり、黒いところがAlである。る。加工が進行すると鉄粒子が線材の長手方向に伸長することがわかる。但し、実施例1及び2のNbを用いた場合と比較すると、伸長の度合いは顕著ではない。また、横断面からわかるように、本発明で期待するように、Fe粒子は直径方向においてもフィラメント状に異方性をもって伸長し、かつこの様なフィラメントがカールしていることがわかる。
図14には、図中に示す各加工歪段階のX線回折結果を示す。得られたピークはいずれもAl及びFe単体のピークに相当し、金属間化合物のピークは認められなかった。本発明の通り、二つの金属相が相分離した状態で存在することが確認できる。
図15には、加工歪とビッカース硬さの関係を、また図16には、加工歪と引張強度の関係を示した。加工歪の増加に伴いビッカース硬さ及び引張強度は徐々に増加している。η=12.3の段階では、引張強度で230MPaが得られた。これは、実施例1、2の値よりは小さいものの、純Alの強度50MPaの5倍近い値であり、充分に本発明の効果が達成されているものと考える。これは、図12、図13、図14で本発明で期待するような組織形態が実現されていることからも裏付けられる。また、η=14.8の段階では、引張強度がη=12.3の段階より低下している。これは、線材作製時に表面の荒れなどの製造欠陥が発生した結果と考えられる。この様な製造欠陥が製造方法上の工夫により解決されれば、より強度の向上が期待できる。
【0042】
[実施例4]
純度99.99%、平均粒径27μmの東洋アルミ社製純Al粉末と、38μm以下に分級した純度99.9%のレアメタリック製純Cr粉末とを、体積比でAl:Cr=4:1となるようV型混合機により常温で30分間混合し、Al粉末中にCr粉末が略均一に分散した混合粉末を作成した。
この混合粉末1を、図1(a)に示すように、アムスラー型万能試験機により常温で加圧力118MPaで一軸圧粉成形し、図1(b)に示すように、直径約20mm、高さ30mmのビレット2とした。
このビレット2を、図2に示すように、純Cu製パイプ3に挿入し、ビレット2両端に純Cu製の中実棒4を挿入してシールした後、常温においてビレット2の直径が20mm→2mm(線材)となるまでスエージング加工した。但し、シールは20mm→18mmの最初のスエージングの後に破れ、以後シール無しで行った。
【0043】
その後、実施例1と同じく常温において線引加工し(図示略)、線材表面のCuを硝酸で除去して再結束し、再びCuパイプに挿入して線引という作業を繰り返すことで、混合粉末の固化と同時に、Crよりなる第二相(強化相)とAlよりなる母相の組織の微細化を図り、母相中に第二相が相分離した状態で微細に分散するようにした。実施例3の条件では、中間焼鈍処理は施していない。その他は、実施例1と同様である。
【0044】
η=10.0の段階で、Cr相はアスペクト比3程度まで伸長した組織が得られた。また、ビッカース硬さで150Hv、最大引張強さ150MPaが得られた。
【0045】
なお、本発明は前記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)本発明で得られた複合高強度材を別の材料中に分散させて、さらなる複合材料とすること。例えば、実施例で製造中にビレットを挿入したCu製パイプなどを除去せずにそのまま線材とした場合、Cu基材中に複合高強度材が配向した一種の複合材料となる。この場合でも、かなりの高強度化が期待できる。また、線材の再結束段階で、線材表面を金属メッキしたり金属などの箔で巻くなどしてから、同じように強く塑性加工しても、同様のものが得られる。
【0046】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明に係る複合高強度材及びその製造方法によれば、Al合金線材だけではなくバルク材料を含めても、これまでに例のない超高強度と延性・靱性とを兼ね備えた高性能なAlを含む複合高強度材を提供することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の各実施例において混合粉末を圧粉成形してビレットにする工程の概略断面図、(b)は作成したビレットの斜視図である。
【図2】同ビレットをスエージング加工する工程の概略断面図である。
【図3】実施例1の線材を示し、(ア)、(イ)、(ウ)はそれぞれη=5.4、10.5、13.0の各段階まで加工した線材の縦断面のミクロ組織を示す金属組織写真である。
【図4】同じくη=13.0の段階の線材の横断面のミクロ組織を示す金属組織写真である。
【図5】同じくη=5.4の段階の線材のX線回折結果を示すグラフである。
【図6】同じく実施例1における加工歪と引張強度の関係を示すグラフである。
【図7】実施例2の線材においてη=14.6の段階の線材の縦断面のミクロ組織を示す金属組織写真である。
【図8】同じくη=14.6の段階の線材の横断面のミクロ組織を示す金属組織写真である。
【図9】同じくη=12.4、14.6の各段階の線材のX線回折結果を示すグラフである。
【図10】同じく実施例2における加工歪とビッカース硬さの関係を示すグラフである。
【図11】同じく実施例2における加工歪と引張強度の関係を示すグラフである。
【図12】実施例2の線材においてη=14.8の段階の線材の縦断面のミクロ組織を示す金属組織写真である。
【図13】同じくη=14.8の段階の線材の横断面のミクロ組織を示す金属組織写真である。
【図14】同じく図中に示す各加工歪段階のX線回折結果を示すグラフである。
【図15】同じく実施例3における加工歪とビッカース硬さの関係を示すグラフである。
【図16】同じく実施例3における加工歪と引張強度の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 混合粉末
2 ビレット
3 パイプ
4 中実棒
Claims (8)
- Al又はAlを含む合金よりなる母相用材料中に、Nb、Fe、Cr及びTaから選ばれる一種又は二種以上のBCC金属又は前記BCC金属を含む合金よりなる第二相用材料が、後者1に対して前者を範囲で示した体積比で30〜1:1で混ざり分散した混成物に、一方向に塑性加工が施されたことにより、前記Al又はAlを含む合金よりなる母相中に、前記BCC金属又は前記BCC金属を含む合金よりなる第二相のフィラメントが相分離した状態で微細に分散している複合高強度材。
- 300℃以下で、Al又はAlを含む合金よりなる母相用材料中に、BCC金属又はBCC金属を含む合金よりなる第二相用材料が、後者1に対して前者を範囲で示した体積比で30〜1:1で混ざり分散した混成物を作成する混成物作成工程と、前記混成物を300℃以下で一方向に塑性加工することにより、前記Al又はAlを含む合金よりなる母相中に前記BCC金属又はBCC金属を含む合金よりなる第二相のフィラメントを相分離した状態で微細に分散させる塑性加工工程とを含む複合高強度材の製造方法。
- 前記混成物作成工程は、Al又はAlを含む合金の点状体、線状体又は面状体よりなる母相用材料と、BCC金属又はBCC金属を含む合金の点状体、線状体又は面状体よりなる第二相用材料とを混合、結束又は積層することにより行う請求項2記載の複合高強度材の製造方法。
- 前記混成物作成工程は、溶射法、スプレーデポジション法などによりAl又はAlを含む合金の粉末よりなる母相用材料と、BCC金属又はBCC金属を含む合金の粉末よりなる第二相用材料とが混合して堆積した層状物又はバルクを作成することにより行う請求項2記載の複合高強度材の製造方法。
- 前記複合高強度材が線材である請求項1記載の複合高強度材又は請求項2〜4のいずれか一項に記載の複合高強度材の製造方法。
- 前記塑性加工により前記混成物に与える加工歪が2以上である請求項1記載の複合高強度材又は請求項2〜4のいずれか一項に記載の複合高強度材の製造方法。
- 前記第二相の塑性加工後の平均厚みが10μm以下である請求項1記載の複合高強度材又は請求項2〜4のいずれか一項に記載の複合高強度材の製造方法。
- 前記第二相の塑性加工後の平均間隔が10μm以下である請求項1記載の複合高強度材又は請求項2〜4のいずれか一項に記載の複合高強度材の製造方法。
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