上記特記文献3にかかる加熱・加圧式のハンドレイアップ法においては、手作業によって積層していく過程で一層ごとに熱硬化性樹脂を低温で仮に硬化(高粘性化)させることによって、積層のずれを防ぐとともに液体状態の熱硬化性樹脂が積層されたガラスロービングクロス等の繊維材料の目を滴り落ちて下方に溜まってしまうという事態を防止していたが、上記特記文献3にかかる加熱・加圧式のハンドレイアップ法以外にも、本発明者は、液体状態の熱硬化性樹脂が積層されたガラスロービングクロス等の繊維材料の下方に溜まるのを防いで、強度の高いFRP成形体を得ることができる加熱・加圧式のハンドレイアップ法を開発した。
そこで、本発明は、高い応力のかかる部品についてもハンドレイアップ法によるFRP成形体を使用して軽量化・低コスト化を一層推し進めるために、強度の高いFRP成形体を得ることができる水門の扉体のスキンプレート、水門の扉体の桁材、水門の扉体のガセットプレート、水門の扉体のゴム押え板、水門の扉体の水位調節用角落し板、水門の扉体、水門の戸当りを提供することを課題とするものである。
請求項1の発明にかかる水門の扉体のFRP製スキンプレートは、水門の扉体のスキンプレートの型を組み立てて離型剤を塗布し、さらにゲルコートを塗布して加熱して硬化させ、前記ゲルコートの上に、繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングを積層し、硬化剤及び硬化促進剤入りの熱硬化性樹脂を前記繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングの上から塗布することの繰り返しを1回当り1分〜30分の間に行うことにより、10分〜5時間の間に所定の高さになるまで前記繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングと前記熱硬化性樹脂を積層して成形体を形成し、それに0.43kgf/cm2 〜0.8kgf/cm2の範囲の圧力を掛けて所定の厚さにするとともに前記成形体中の空気を抜きつつ、前記成形体を常温〜140℃の範囲の温度で加熱することによって形成したものである。
請求項2の発明にかかる水門の扉体のFRP製桁材は、水門の扉体の桁材の型を組み立てて離型剤を塗布し、さらにゲルコートを塗布して加熱して硬化させ、前記ゲルコートの上に、繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングを積層し、硬化剤及び硬化促進剤入りの熱硬化性樹脂を前記繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングの上から塗布することの繰り返しを1回当り1分〜30分の間に行うことにより、10分〜5時間の間に所定の高さになるまで前記繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングと前記熱硬化性樹脂を積層して成形体を形成し、それに0.43kgf/cm2 〜0.8kgf/cm2の範囲の圧力を掛けて所定の厚さ及び断面形状にするとともに前記成形体中の空気を抜きつつ、前記成形体を常温〜140℃の範囲の温度で加熱することによって形成したものである。
請求項3の発明にかかる水門の扉体のFRP製ガセットプレートは、水門の扉体のガセットプレートの型を組み立てて離型剤を塗布し、さらにゲルコートを塗布して加熱して硬化させ、前記ゲルコートの上に、繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングを積層し、硬化剤及び硬化促進剤入りの熱硬化性樹脂を前記繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングの上から塗布することの繰り返しを1回当り1分〜30分の間に行うことにより、10分〜5時間の間に所定の高さになるまで前記繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングと前記熱硬化性樹脂を積層して成形体を形成し、それに0.43kgf/cm2 〜0.8kgf/cm2の範囲の圧力を掛けて所定の厚さにするとともに前記成形体中の空気を抜きつつ、前記成形体を常温〜140℃の範囲の温度で加熱することによって形成したものである。
請求項4の発明にかかる水門の扉体のFRP製ゴム押え板は、水門の扉体のゴム押え板の型を組み立てて離型剤を塗布し、さらにゲルコートを塗布して加熱して硬化させ、前記ゲルコートの上に、繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングを積層し、硬化剤及び硬化促進剤入りの熱硬化性樹脂を前記繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングの上から塗布することの繰り返しを1回当り1分〜30分の間に行うことにより、10分〜5時間の間に所定の高さになるまで前記繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングと前記熱硬化性樹脂を積層して成形体を形成し、それに0.43kgf/cm2 〜0.8kgf/cm2の範囲の圧力を掛けて所定の厚さにするとともに前記成形体中の空気を抜きつつ、前記成形体を常温〜140℃の範囲の温度で加熱することによって形成したものである。
請求項5の発明にかかる水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板は、水門の扉体の水位調節用角落し板の型を組み立てて離型剤を塗布し、さらにゲルコートを塗布して加熱して硬化させ、前記ゲルコートの上に、繊維ロービングクロスまたは繊維ロービングクロス及び繊維チョップドストランドマットを積層し、硬化剤及び硬化促進剤入りの熱硬化性樹脂を前記繊維ロービングクロスまたは繊維ロービングクロス及び繊維チョップドストランドマットの上から塗布することの繰り返しを1回当り1分〜30分の間に行うことにより、10分〜5時間の間に所定の高さになるまで前記繊維ロービングクロスまたは繊維ロービングクロス及び繊維チョップドストランドマットと前記熱硬化性樹脂を積層して成形体を形成し、それに0.43kgf/cm2 〜0.8kgf/cm2の範囲の圧力を掛けて所定の厚さにするとともに前記成形体中の空気を抜きつつ、前記成形体を常温〜140℃の範囲の温度で加熱することによって形成したものである。
請求項6の発明にかかる水門の扉体のFRP製スキンプレート、水門の扉体のFRP製桁材、水門の扉体のFRP製ガセットプレート、水門の扉体のFRP製ゴム押え板、または水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板は、請求項1乃至請求項5のいずれか1つの構成において、前記繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングを積層する手順と、前記硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を前記繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングの上から塗布する手順との繰り返しを前記所定の高さの成形体になるまで繰り返す工程の前と後に、ビニロン製ロービングクロスを積層して前記硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を塗布する工程を各1回または数回行うものである。
請求項7の発明にかかる水門の扉体のFRP製スキンプレート、水門の扉体のFRP製桁材、水門の扉体のFRP製ガセットプレート、水門の扉体のFRP製ゴム押え板、または水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板は、請求項1乃至請求項6のいずれか1つの構成において、前記繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングは、ガラスロービングクロス、ガラスチョップドストランドマットまたはガラスロービングであるものである。
請求項8の発明にかかる水門の扉体のFRP製スキンプレート、水門の扉体のFRP製桁材、水門の扉体のFRP製ガセットプレート、水門の扉体のFRP製ゴム押え板、または水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板は、請求項1乃至請求項6のいずれか1つの構成において、前記繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングは、アラミド繊維ロービングクロス、アラミド繊維チョップドストランドマットまたはアラミド繊維ロービングであるものである。
請求項9の発明にかかる水門のFRP製扉体は、請求項1及び請求項6乃至請求項8のいずれか1つに記載の水門の扉体のFRP製スキンプレートに水密ゴムと請求項4及び請求項6乃至請求項8のいずれか1つに記載の水門の扉体のFRP製ゴム押え板とを組み付けて、または水門の扉体のFRP製スキンプレートに水密ゴムと水門の扉体のFRP製ゴム押え板とを組み付けたものにさらに請求項2及び請求項6乃至請求項8のいずれか1つに記載の水門の扉体のFRP製桁材を組み付けて、またはさらに請求項3及び請求項6乃至請求項8のいずれか1つに記載の水門の扉体のFRP製ガセットプレートを組み付けて、またはさらに請求項5乃至請求項8のいずれか1つに記載の水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板を組み付けて製造したものである。
請求項10の発明にかかる水門のFRP製戸当りは、水門の戸当りの構成部材の型を組み立てて離型剤を塗布し、さらにゲルコートを塗布して加熱して硬化させ、前記ゲルコートの上に、繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングを積層し、硬化剤及び硬化促進剤入りの熱硬化性樹脂を前記繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングの上から塗布することの繰り返しを1回当り1分〜30分の間に行うことにより、10分〜5時間の間に所定の高さになるまで前記繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングと前記熱硬化性樹脂を積層して成形体を形成し、それに0.43kgf/cm2 〜0.8kgf/cm2の範囲の圧力を掛けて所定の厚さ及び断面形状にするとともに前記成形体中の空気を抜きつつ、前記成形体を常温〜140℃の範囲の温度で加熱することによって形成したものである。
請求項11の発明にかかる水門のFRP製戸当りは、請求項10の構成において、前記繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングを積層する手順と、前記硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を前記繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングの上から塗布する手順との繰り返しを前記所定の高さの成形体になるまで繰り返す工程の前と後に、ビニロン製ロービングクロスを積層して前記硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を塗布する工程を各1回または数回行うものである。
請求項12の発明にかかる水門のFRP製戸当りは、請求項10または請求項11の構成において、前記繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングは、ガラスロービングクロス、ガラスチョップドストランドマットまたはガラスロービングであるものである。
請求項13の発明にかかる水門のFRP製戸当りは、請求項10または請求項11の構成において、前記繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングは、アラミド繊維ロービングクロス、アラミド繊維チョップドストランドマットまたはアラミド繊維ロービングであるものである。
請求項14の発明にかかる水門の扉体のFRP製スキンプレート、水門の扉体のFRP製桁材、水門の扉体のFRP製ガセットプレート、水門の扉体のFRP製ゴム押え板、水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板、または水門のFRP製戸当りは、スキンプレート、桁材、ガセットプレート、ゴム押え板、水位調節用角落し板、または戸当りの型を組み立てて離型剤を塗布し、さらにゲルコートを塗布して加熱して硬化させ、前記ゲルコートの上に、ガラスロービングクロス及び/またはガラスチョップドストランドマット及び/またはガラスロービングを積層し、硬化剤及び硬化促進剤入りの熱硬化性樹脂を前記ガラスロービングクロス及び/またはガラスチョップドストランドマット及び/またはガラスロービングの上から塗布することを1回当り1分〜30分の間に行うことの繰り返しにより、10分〜5時間の間に所定の高さになるまで前記ガラスロービングクロス及び/またはガラスチョップドストランドマット及び/またはガラスロービングと前記熱硬化性樹脂を積層して成形体を形成し、それに0.43kgf/cm2 〜0.8kgf/cm2の範囲の圧力を掛けて所定の厚さにするとともに前記成形体中の空気を抜きつつ、前記成形体を常温〜140℃の範囲の温度で加熱することによって形成したものである。
請求項15の発明にかかる水門の扉体のFRP製スキンプレート、水門の扉体のFRP製桁材、水門の扉体のFRP製ガセットプレート、水門の扉体のFRP製ゴム押え板、水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板、または水門のFRP製戸当りは、スキンプレート、桁材、ガセットプレート、ゴム押え板、水位調節用角落し板、または戸当りの型を組み立てて離型剤を塗布し、さらにゲルコートを塗布して加熱して硬化させ、前記ゲルコートの上に、炭素繊維ロービングクロス及び/または炭素繊維チョップドストランドマット及び/または炭素繊維ロービングを積層し、硬化剤及び硬化促進剤入りの熱硬化性樹脂を前記炭素繊維ロービングクロス及び/または炭素繊維チョップドストランドマット及び/または炭素繊維ロービングの上から塗布することを1回当り1分〜30分の間に行うことの繰り返しにより、10分〜5時間の間に所定の高さになるまで前記炭素繊維ロービングクロス及び/または炭素繊維チョップドストランドマット及び/または炭素繊維ロービングと前記熱硬化性樹脂を積層して成形体を形成し、それに0.43kgf/cm2 〜0.8kgf/cm2の範囲の圧力を掛けて所定の厚さにするとともに前記成形体中の空気を抜きつつ、前記成形体を常温〜140℃の範囲の温度で加熱することによって形成したものである。
請求項16の発明にかかる水門の扉体のFRP製スキンプレート、水門の扉体のFRP製桁材、水門の扉体のFRP製ガセットプレート、水門の扉体のFRP製ゴム押え板、水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板、または水門のFRP製戸当りは、スキンプレート、桁材、ガセットプレート、ゴム押え板、水位調節用角落し板、または戸当りの型を組み立てて離型剤を塗布し、さらにゲルコートを塗布して加熱して硬化させ、前記ゲルコートの上に、炭素繊維ロービングクロス及び/または炭素繊維チョップドストランドマット及び/または炭素繊維ロービングを積層し、硬化剤及び硬化促進剤入りの熱硬化性樹脂を前記炭素繊維ロービングクロス及び/または炭素繊維チョップドストランドマット及び/または炭素繊維ロービングの上から塗布し、ガラスロービングクロス及び/またはガラスチョップドストランドマット及び/またはガラスロービングを前記熱硬化性樹脂の上に積層し、前記熱硬化性樹脂を前記ガラスロービングクロス及び/またはガラスチョップドストランドマット及び/またはガラスロービングの上から塗布することを1回当り1分〜30分の間に行うことの繰り返しにより、10分〜5時間の間に所定の高さになるまで前記炭素繊維ロービングクロス及び/または炭素繊維チョップドストランドマット及び/または炭素繊維ロービングと前記熱硬化性樹脂と前記ガラスロービングクロス及び/またはガラスチョップドストランドマット及び/またはガラスロービングを積層して成形体を形成し、それに0.43kgf/cm2 〜0.8kgf/cm2の範囲の圧力を掛けて所定の厚さにするとともに前記成形体中の空気を抜きつつ、前記成形体を常温〜140℃の範囲の温度で加熱することによって形成したものである。
請求項17の発明にかかる水門の扉体のFRP製スキンプレート、水門の扉体のFRP製桁材、水門の扉体のFRP製ガセットプレート、水門の扉体のFRP製ゴム押え板、水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板、または水門のFRP製戸当りは、スキンプレート、桁材、ガセットプレート、ゴム押え板、水位調節用角落し板、または戸当りの型を組み立てて離型剤を塗布し、さらにゲルコートを塗布して加熱して硬化させ、前記ゲルコートの上に、炭素繊維とガラス繊維からなるハイブリッド繊維ロービングクロスを積層し、硬化剤及び硬化促進剤入りの熱硬化性樹脂を前記ハイブリッド繊維ロービングクロスの上から塗布することを1回当り1分〜30分の間に行うことの繰り返しにより、10分〜5時間の間に所定の高さになるまで前記ハイブリッド繊維ロービングクロスと前記熱硬化性樹脂を積層して成形体を形成し、それに0.43kgf/cm2 〜0.8kgf/cm2の範囲の圧力を掛けて所定の厚さにするとともに前記成形体中の空気を抜きつつ、前記成形体を常温〜140℃の範囲の温度で加熱することによって形成したものである。
請求項18の発明にかかる水門の扉体のFRP製スキンプレート、水門の扉体のFRP製桁材、水門の扉体のFRP製ガセットプレート、水門の扉体のFRP製ゴム押え板、または水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板は、請求項15乃至請求項17のいずれか1つの構成において、前記成形体の最上面に炭素繊維を積層して表面に前記炭素繊維を突出させたものである。
請求項19の発明にかかる水門の扉体のFRP製スキンプレート、水門の扉体のFRP製桁材、水門の扉体のFRP製ガセットプレート、水門の扉体のFRP製ゴム押え板、または水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板は、請求項14乃至請求項17のいずれか1つの構成において、前記繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングを積層する手順と、前記硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を前記繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングの上から塗布する手順との繰り返しを前記所定の高さの成形体になるまで繰り返す工程の前と後に、ビニロン製ロービングクロスを積層して前記硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を塗布する工程を各1回または数回行うものである。
請求項20の発明にかかる水門のFRP製扉体は、請求項14乃至請求項19のいずれか1つに記載の水門の扉体のFRP製スキンプレートに、水密ゴムと請求項14乃至請求項19のいずれか1つに記載の水門の扉体のFRP製ゴム押え板とを組み付けて、または水門の扉体のFRP製スキンプレートに水密ゴムと水門の扉体のFRP製ゴム押え板とを組み付けたものにさらに請求項14乃至請求項19のいずれか1つに記載の水門の扉体のFRP製桁材を組み付けて、またはさらに請求項14乃至請求項19のいずれか1つに記載の水門の扉体のFRP製ガセットプレートを組み付けて、またはさらに請求項14乃至請求項19のいずれか1つに記載の水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板を組み付けて製造したものである。
請求項1の発明にかかる水門の扉体のFRP製スキンプレートは、水門の扉体のスキンプレートの型を組み立てて離型剤を塗布し、さらにゲルコートを塗布して加熱して硬化させ、ゲルコートの上に、繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングを積層し、硬化剤及び硬化促進剤入りの熱硬化性樹脂を繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングの上から塗布することの繰り返しを1回当り1分〜30分の間に行うことにより、10分〜5時間の間に所定の高さになるまで繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングと熱硬化性樹脂を積層して成形体を形成し、それに0.43kgf/cm2 〜0.8kgf/cm2の範囲の圧力を掛けて所定の厚さにするとともに成形体中の空気を抜きつつ、成形体を常温〜140℃の範囲の温度で加熱することによって形成したものである。
ここで、「繊維」としては、ガラスファイバー、炭素繊維、アラミド繊維、及びこれらの混合繊維等がある。また、「熱硬化性樹脂」としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等がある。
本発明にかかる水門の扉体のFRP製スキンプレートの成形方法が、上記特許文献3にかかるFRP成形体の成形方法と異なる点は、塗布する熱硬化性樹脂として硬化剤及び硬化促進剤入りの熱硬化性樹脂を用いた点と、熱硬化性樹脂を塗布するたびに低温で仮に硬化(高粘性化)させるのを止めて一気に積層する点と、積層の1回の繰返しに要する時間を1分〜30分の範囲に、積層工程に要する時間を10分〜5時間の範囲に限定した点と、加圧力を0.43kgf/cm2 〜0.8kgf/cm2の範囲に限定した点である。
本発明者がさらに鋭意実験研究を積み重ねた結果、最も高強度の成形体が得られるのは、積層された成形体にかける圧力が0.43kgf/cm2 〜0.7kgf/cm2であるときであり、この圧力を中心として成形体にかける圧力が0.43kgf/cm2 〜0.8kgf/cm2 の範囲である場合により高強度の成形体が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
これによって、積層された成形体が適切な加圧力で圧縮されるので内部の空気が抜けて空隙の少ないスキンプレートとなり、同時に成形体が常温〜140℃の範囲の温度で加熱されるので、硬化速度が促進されてより成形体の強度が高まり、かつ成形サイクルが短くなって時間当り成形数を増やすことができ、スキンプレートの低コスト化につながる。また、スキンプレートの強度が向上することにより、厚さを薄くすることができるとともに補強のための桁材を減らすことができ、扉体全体の軽量化・低コスト化と製造工程の簡易化が可能になる。
このようにして、ハンドレイアップ法において成形圧力・成形温度を高めるとともに成形速度を速めることによって、成形体強度の向上と成形時間の短縮を図ることができ、低コスト化することができる水門の扉体のFRP製スキンプレートとなる。
請求項2の発明にかかる水門の扉体のFRP製桁材は、水門の扉体の桁材の型を組み立てて離型剤を塗布し、さらにゲルコートを塗布して加熱して硬化させ、ゲルコートの上に、繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングを積層し、硬化剤及び硬化促進剤入りの熱硬化性樹脂を繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングの上から塗布することの繰り返しを1回当り1分〜30分の間に行うことにより、10分〜5時間の間に所定の高さになるまで繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングと熱硬化性樹脂を積層して成形体を形成し、それに0.43kgf/cm2 〜0.8kgf/cm2の範囲の圧力を掛けて所定の厚さ及び断面形状にするとともに成形体中の空気を抜きつつ、成形体を常温〜140℃の範囲の温度で加熱することによって形成したものである。
これによって、積層された成形体が適切な加圧力で圧縮されるので内部の空気が抜けて空隙の少ない桁材となり、同時に成形体が常温〜140℃の範囲の温度で加熱されるので、硬化速度が促進されてより成形体の強度が高まり、かつ成形サイクルが短くなって時間当り成形数を増やすことができ、桁材の低コスト化につながる。また、桁材の強度が向上することにより、スキンプレートの補強のための桁材を減らすことができ、扉体全体の軽量化・低コスト化と製造工程の簡易化が可能になる。
このようにして、ハンドレイアップ法において成形圧力・成形温度を高めるとともに成形速度を速めることによって、成形体強度の向上と成形時間の短縮を図ることができ、低コスト化することができる水門の扉体のFRP製桁材となる。
請求項3の発明にかかる水門の扉体のFRP製ガセットプレートは、水門の扉体のガセットプレートの型を組み立てて離型剤を塗布し、さらにゲルコートを塗布して加熱して硬化させ、ゲルコートの上に、繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングを積層し、硬化剤及び硬化促進剤入りの熱硬化性樹脂を繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングの上から塗布することの繰り返しを1回当り1分〜30分の間に行うことにより、10分〜5時間の間に所定の高さになるまで繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングと熱硬化性樹脂を積層して成形体を形成し、それに0.43kgf/cm2 〜0.8kgf/cm2の範囲の圧力を掛けて所定の厚さにするとともに成形体中の空気を抜きつつ、成形体を常温〜140℃の範囲の温度で加熱することによって形成したものである。
このガセットプレートも積層された成形体が適切な加圧力で圧縮されるので内部の空気が抜けて空隙の少ないガセットプレートとなり、同時に成形体が常温〜140℃の範囲の温度で加熱されるので、硬化速度が促進されてより成形体の強度が高まり、かつ成形サイクルが短くなって時間当り成形数を増やすことができ、ガセットプレートの低コスト化につながる。また、ガセットプレートの強度が向上することにより、厚さを薄くすることができるとともに補強のための桁材を減らすことができ、扉体全体の軽量化・低コスト化と製造工程の簡易化が可能になる。
このようにして、ハンドレイアップ法において成形圧力・成形温度を高めるとともに成形速度を速めることによって、成形体強度の向上と成形時間の短縮を図ることができ、低コスト化することができる水門の扉体のFRP製ガセットプレートとなる。
請求項4の発明にかかる水門の扉体のFRP製ゴム押え板は、水門の扉体のゴム押え板の型を組み立てて離型剤を塗布し、さらにゲルコートを塗布して加熱して硬化させ、ゲルコートの上に、繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングを積層し、硬化剤及び硬化促進剤入りの熱硬化性樹脂を繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングの上から塗布することの繰り返しを1回当り1分〜30分の間に行うことにより、10分〜5時間の間に所定の高さになるまで繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングと熱硬化性樹脂を積層して成形体を形成し、それに0.43kgf/cm2 〜0.8kgf/cm2の範囲の圧力を掛けて所定の厚さにするとともに成形体中の空気を抜きつつ、成形体を常温〜140℃の範囲の温度で加熱することによって形成したものである。
このゴム押え板も積層された成形体が適切な加圧力で圧縮されるので内部の空気が抜けて空隙の少ないゴム押え板となり、同時に成形体が常温〜140℃の範囲の温度で加熱されるので、硬化速度が促進されてより成形体の強度が高まり、かつ成形サイクルが短くなって時間当り成形数を増やすことができ、ゴム押え板の低コスト化につながる。また、ゴム押え板の強度が向上することにより、厚さを薄くすることができるために水密ゴム固定用のボルト穴を穿設するのがより容易になり、扉体全体の軽量化・低コスト化と製造工程の簡易化が可能になる。
このようにして、ハンドレイアップ法において成形圧力・成形温度を高めるとともに成形速度を速めることによって、成形体強度の向上と成形時間の短縮を図ることができ、低コスト化することができる水門の扉体のFRP製ゴム押え板となる。
請求項5の発明にかかる水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板は、水門の扉体の水位調節用角落し板の型を組み立てて離型剤を塗布し、さらにゲルコートを塗布して加熱して硬化させ、ゲルコートの上に、繊維ロービングクロスまたは繊維ロービングクロス及び繊維チョップドストランドマットを積層し、硬化剤及び硬化促進剤入りの熱硬化性樹脂を繊維ロービングクロスまたは繊維ロービングクロス及び繊維チョップドストランドマットの上から塗布することの繰り返しを1回当り1分〜30分の間に行うことにより、10分〜5時間の間に所定の高さになるまで繊維ロービングクロスまたは繊維ロービングクロス及び繊維チョップドストランドマットと熱硬化性樹脂を積層して成形体を形成し、それに0.43kgf/cm2 〜0.8kgf/cm2の範囲の圧力を掛けて所定の厚さにするとともに成形体中の空気を抜きつつ、成形体を常温〜140℃の範囲の温度で加熱することによって形成したものである。
水位調節用角落し板とは、水路の水位を少し下げようとする場合に、水路が深いと水門の扉体を少し上げると高い水圧の水流が扉体の下を流れ出して閉じることができなくなってしまうため、水圧の低い水面近くの水を流して水位を下げるために、扉体の上部に設けられる取外し可能な水位調節用の板である。ここで、積層する繊維を「繊維ロービングクロスまたは繊維ロービングクロス及び繊維チョップドストランドマット」と限定しているのは、ガラスチョップドストランドマットのみを積層したFRP製水位調節用角落し板は既に公知であるが、水圧に耐えられずに割れてしまうことが判明したために、より強度の高い繊維ロービングクロスのみか、繊維チョップドストランドマットに繊維ロービングクロスを混入させて積層して、強度を上げる必要があるためである。
このようにして、ハンドレイアップ法において成形圧力・成形温度を高めるとともに成形速度を速めることによって、成形体強度の向上と成形時間の短縮を図ることができ、低コスト化することができる水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板となる。
請求項6の発明にかかる水門の扉体のFRP製スキンプレート、水門の扉体のFRP製桁材、水門の扉体のFRP製ガセットプレート、水門の扉体のFRP製ゴム押え板、または水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板は、繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングを積層する手順と、硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングの上から塗布する手順との繰り返しを所定の高さの成形体になるまで繰り返す工程の前と後に、ビニロン製ロービングクロスを積層して硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を塗布する工程を各1回または数回行うものである。
本発明にかかる水門の扉体のFRP部材は、加熱して硬化させるとともに圧力を掛けて所定の厚さにしているため、完成品の表面は充分に平滑で見た目も美しいが、場合によっては繊維ロービングクロス等の跡が良く見ると僅かに浮き出て見える場合もある。そこで、より確実に平滑な仕上げ面を確保するために、成形体を積層する前と後に柔軟性に優れたビニロン製ロービングクロスを積層して硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を塗布することによって、加圧によってビニロン製繊維は押し潰されるためロービングクロス等の跡が浮き出ることもなく、より意匠性に優れた平滑な仕上げ面を確実に得ることができ、商品価値も向上する。
このようにして、ハンドレイアップ法において、成形圧力・成形温度を高めるとともに成形速度を速めることによって、成形体強度の向上と成形時間の短縮を図ることができ、また成形体表面が極めて平滑で意匠性に優れた水門の扉体のFRP製スキンプレート、水門の扉体のFRP製桁材、水門の扉体のFRP製ガセットプレート、水門の扉体のFRP製ゴム押え板、または水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板となる。
請求項7の発明にかかる水門の扉体のFRP製スキンプレート、水門の扉体のFRP製桁材、水門の扉体のFRP製ガセットプレート、水門の扉体のFRP製ゴム押え板、または水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板は、請求項1乃至請求項6のいずれか1つの構成において、前記繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングは、ガラスロービングクロス、ガラスチョップドストランドマットまたはガラスロービングである。
このように、ガラス繊維を用いることによって、低コストで高強度のFRP製品を得ることができる。そして、ハンドレイアップ法によるガラス繊維強化プラスティック(GFRP)成形体の製造において、適切な圧力で加圧されることによって内部の空気が抜けて空隙の少ない成形体となる。それと同時に成形体が常温〜140℃の範囲の温度で加熱されるので、硬化速度が促進されてより成形体の強度が高まり、かつ成形サイクルが短くなって時間当り成形数を増やすことができ、低コスト化につながる。
このようにして、ハンドレイアップ法において、成形圧力・成形温度を高めるとともに成形速度を速めることによって、成形体強度の向上と成形時間の短縮を図ることができ、低コスト化することができる水門の扉体のFRP製スキンプレート、水門の扉体のFRP製桁材、水門の扉体のFRP製ガセットプレート、水門の扉体のFRP製ゴム押え板、または水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板となる。
請求項8の発明にかかる水門の扉体のFRP製スキンプレート、水門の扉体のFRP製桁材、水門の扉体のFRP製ガセットプレート、水門の扉体のFRP製ゴム押え板、または水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板は、繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングは、アラミド繊維ロービングクロス、アラミド繊維チョップドストランドマットまたはアラミド繊維ロービングである。
アラミド繊維強化プラスティックはFRPの中でも強度が炭素繊維強化プラスティック(CFRP)よりもさらに際立って大きく、したがってガラス繊維のみを用いたFRPに比べて、設計上同強度を持たせるためには、アラミド繊維強化プラスティックは1/3程度の厚さで済み、その分軽量化することができる。また、アラミド繊維はガラス繊維よりコストが高いが、使用量を1/3程度にでき、また施工も容易になることから、全体としてはコストアップすることはない。
このようにして、ハンドレイアップ法において、成形圧力・成形温度を高めるとともに成形速度を速めることによって、成形体強度の向上と成形時間の短縮を図ることができ、またアラミド繊維を用いることによってより高強度が得られる水門の扉体のFRP製スキンプレート、水門の扉体のFRP製桁材、水門の扉体のFRP製ガセットプレート、水門の扉体のFRP製ゴム押え板、または水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板となる。
請求項9の発明にかかる水門のFRP製扉体は、請求項1及び請求項6乃至請求項8のいずれか1つに記載の水門の扉体のFRP製スキンプレートに水密ゴムと請求項4及び請求項6乃至請求項8のいずれか1つに記載の水門の扉体のFRP製ゴム押え板とを組み付けて、または水門の扉体のFRP製スキンプレートに水密ゴムと水門の扉体のFRP製ゴム押え板とを組み付けたものにさらに請求項2及び請求項6乃至請求項8のいずれか1つに記載の水門の扉体のFRP製桁材を組み付けて、またはさらに請求項3及び請求項6乃至請求項8のいずれか1つに記載の水門の扉体のFRP製ガセットプレートを組み付けて、またはさらに請求項5乃至請求項8のいずれか1つに記載の水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板を組み付けて製造したものである。
これによって、各部材が高強度・薄型・低コストであるので、これらを組み合わせて製造した水門の扉体全体も高強度・軽量化・低コスト化することができる。なお、水門のFRP製扉体は、強度がそれほど必要でない場合にはFRP製スキンプレートに水密ゴムとFRP製ゴム押え板とを組み付けるのみで製造でき、強度がある程度必要な場合はさらにFRP製桁材を組み付ければ良く、より強度が必要な場合にはさらにFRP製ガセットプレートを組み付けて、水位調節が必要な場合にはFRP製水位調節用角落し板を組み付けて製造すれば良い。
このようにして、ハンドレイアップ法において成形圧力・成形温度を高めるとともに成形速度を速めて、成形体強度の向上と成形時間の短縮を図ることができ、低コスト化することができる水門の扉体のFRP製スキンプレート、水門の扉体のFRP製桁材、水門の扉体のFRP製ガセットプレート、水門の扉体のFRP製ゴム押え板、水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板を組み合わせることによって、高強度・軽量化・低コスト化できる水門のFRP製扉体となる。
請求項10の発明にかかる水門のFRP製戸当りは、水門の戸当りの構成部材の型を組み立てて離型剤を塗布し、さらにゲルコートを塗布して加熱して硬化させ、ゲルコートの上に、繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングを積層し、硬化剤及び硬化促進剤入りの熱硬化性樹脂を繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングの上から塗布することの繰り返しを1回当り1分〜30分の間に行うことにより、10分〜5時間の間に所定の高さになるまで繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングと熱硬化性樹脂を積層して成形体を形成し、それに0.43kgf/cm2 〜0.8kgf/cm2の範囲の圧力を掛けて所定の厚さ及び断面形状にするとともに成形体中の空気を抜きつつ、成形体を常温〜140℃の範囲の温度で加熱することによって形成したものである。
水門の戸当りは、水門の扉体の両側端が嵌まり込む溝状の部材及び扉体の下面が密着する底面からなり、扉体が上下するときのガイド溝になり、扉体が下端に来た時には扉体と一体となって水の流れを堰き止めるものである。なお、水漏れを防ぐために扉体の戸当りと接する面には水密ゴムが取付けられる。この戸当りも扉体の各部材と同様に形成されるので、同様に高強度・薄型・低コストとなる。
このようにして、ハンドレイアップ法において成形圧力・成形温度を高めるとともに成形速度を速めることによって、成形体強度の向上と成形時間の短縮を図ることができ、低コスト化することができる水門のFRP製戸当りとなる。
請求項11の発明にかかる水門のFRP製戸当りは、請求項10の構成において、前記繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングを積層する手順と、前記硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を前記繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングの上から塗布する手順との繰り返しを前記所定の高さの成形体になるまで繰り返す工程の前と後に、ビニロン製ロービングクロスを積層して前記硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を塗布する工程を各1回または数回行うものである。
本発明にかかる水門のFRP製戸当りは、加熱して硬化させるとともに圧力を掛けて所定の厚さにしているため、完成品の表面は充分に平滑で見た目も美しいが、場合によっては繊維ロービングクロス等の跡が良く見ると僅かに浮き出て見える場合もある。そこで、より確実に平滑な仕上げ面を確保するために、成形体を積層する前と後に柔軟性に優れたビニロン製ロービングクロスを積層して硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を塗布することによって、加圧によってビニロン製繊維は押し潰されるためロービングクロス等の跡が浮き出ることもなく、より意匠性に優れた平滑な仕上げ面を確実に得ることができ、商品価値も向上する。
このようにして、ハンドレイアップ法において、成形圧力・成形温度を高めるとともに成形速度を速めることによって、成形体強度の向上と成形時間の短縮を図ることができ、また成形体表面が極めて平滑で意匠性に優れた水門のFRP製戸当りとなる。
請求項12の発明にかかる水門のFRP製戸当りは、繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングは、ガラスロービングクロス、ガラスチョップドストランドマットまたはガラスロービングである。
このように、ガラス繊維を用いることによって、低コストで高強度のFRP製品を得ることができる。そして、ハンドレイアップ法によるガラス繊維強化プラスティック(GFRP)成形体の製造において、適切な圧力で加圧されることによって内部の空気が抜けて空隙の少ない成形体となる。それと同時に成形体が常温〜140℃の範囲の温度で加熱されるので、硬化速度が促進されてより成形体の強度が高まり、かつ成形サイクルが短くなって時間当り成形数を増やすことができ、低コスト化につながる。
このようにして、ハンドレイアップ法において、成形圧力・成形温度を高めるとともに成形速度を速めることによって、成形体強度の向上と成形時間の短縮を図ることができ、低コスト化することができる水門のFRP製戸当りとなる。
請求項13の発明にかかる水門のFRP製戸当りは、繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングが、アラミド繊維ロービングクロス、アラミド繊維チョップドストランドマットまたはアラミド繊維ロービングである。
アラミド繊維強化プラスティックはFRPの中でも強度が炭素繊維強化プラスティック(CFRP)よりもさらに際立って大きく、したがってガラス繊維のみを用いたFRPに比べて、設計上同強度を持たせるためには、アラミド繊維強化プラスティックは1/3程度の厚さで済み、その分軽量化することができる。また、アラミド繊維はガラス繊維よりコストが高いが、使用量を1/3程度にでき、また施工も容易になることから、全体としてはコストアップすることはない。
このようにして、ハンドレイアップ法において、成形圧力・成形温度を高めるとともに成形速度を速めることによって、成形体強度の向上と成形時間の短縮を図ることができ、またアラミド繊維を用いることによってより高強度が得られる水門のFRP製戸当りとなる。
請求項14の発明にかかる水門の扉体のFRP製スキンプレート、水門の扉体のFRP製桁材、水門の扉体のFRP製ガセットプレート、水門の扉体のFRP製ゴム押え板、水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板、または水門のFRP製戸当りは、スキンプレート、桁材、ガセットプレート、ゴム押え板、水位調節用角落し板、または戸当りの型を組み立てて離型剤を塗布し、さらにゲルコートを塗布して加熱して硬化させ、ゲルコートの上に、ガラスロービングクロス及び/またはガラスチョップドストランドマット及び/またはガラスロービングを積層し、硬化剤及び硬化促進剤入りの熱硬化性樹脂をガラスロービングクロス及び/またはガラスチョップドストランドマット及び/またはガラスロービングの上から塗布することを1回当り1分〜30分の間に行うことの繰り返しにより、10分〜5時間の間に所定の高さになるまでガラスロービングクロス及び/またはガラスチョップドストランドマット及び/またはガラスロービングと熱硬化性樹脂を積層して成形体を形成し、それに0.43kgf/cm2 〜0.8kgf/cm2の範囲の圧力を掛けて所定の厚さにするとともに成形体中の空気を抜きつつ、成形体を常温〜140℃の範囲の温度で加熱することによって形成したものである。
このように、ガラス繊維を用いることによって、低コストで高強度のFRP製品を得ることができる。そして、ハンドレイアップ法によるガラス繊維強化プラスティック(GFRP)成形体の製造において、適切な圧力で加圧されることによって内部の空気が抜けて空隙の少ない成形体となる。それと同時に成形体が常温〜140℃の範囲の温度で加熱されるので、硬化速度が促進されてより成形体の強度が高まり、かつ成形サイクルが短くなって時間当り成形数を増やすことができ、低コスト化につながる。
このようにして、ハンドレイアップ法において、成形圧力・成形温度を高めるとともに成形速度を速めることによって、成形体強度の向上と成形時間の短縮を図ることができ、低コスト化することができる水門の扉体のFRP製スキンプレート、水門の扉体のFRP製桁材、水門の扉体のFRP製ガセットプレート、水門の扉体のFRP製ゴム押え板、水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板、または水門のFRP製戸当りとなる。
請求項15の発明にかかる水門の扉体のFRP製スキンプレート、水門の扉体のFRP製桁材、水門の扉体のFRP製ガセットプレート、水門の扉体のFRP製ゴム押え板、水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板、または水門のFRP製戸当りは、スキンプレート、桁材、ガセットプレート、ゴム押え板、水位調節用角落し板、または戸当りの型を組み立てて離型剤を塗布し、さらにゲルコートを塗布して加熱して硬化させ、ゲルコートの上に、炭素繊維ロービングクロス及び/または炭素繊維チョップドストランドマット及び/または炭素繊維ロービングを積層し、硬化剤及び硬化促進剤入りの熱硬化性樹脂を炭素繊維ロービングクロス及び/または炭素繊維チョップドストランドマット及び/または炭素繊維ロービングの上から塗布することを1回当り1分〜30分の間に行うことの繰り返しにより、10分〜5時間の間に所定の高さになるまで炭素繊維ロービングクロス及び/または炭素繊維チョップドストランドマット及び/または炭素繊維ロービングと熱硬化性樹脂を積層して成形体を形成し、それに0.43kgf/cm2 〜0.8kgf/cm2の範囲の圧力を掛けて所定の厚さにするとともに成形体中の空気を抜きつつ、成形体を常温〜140℃の範囲の温度で加熱することによって形成したものである。
このように、ハンドレイアップ法による炭素繊維強化プラスティック(CFRP)成形体の製造において、適切な圧力で加圧されることによって内部の空気が抜けて空隙の少ない成形体となる。それと同時に成形体が常温〜140℃の範囲の温度で加熱されるので、硬化速度が促進されてより成形体の強度が高まり、かつ成形サイクルが短くなって時間当り成形数を増やすことができ、低コスト化につながる。
このようにして、ハンドレイアップ法において、成形圧力・成形温度を高めるとともに成形速度を速めることによって、成形体強度の向上と成形時間の短縮を図ることができ、CFRP成形体の長所と相俟って、水門の扉体のスキンプレート、桁材、ガセットプレート、ゴム押え板、水位調節用角落し板、または水門の戸当りを製造することによって、より一層強度向上させて、軽量化かつ低コスト化することができる。
請求項16の発明にかかる水門の扉体のFRP製スキンプレート、水門の扉体のFRP製桁材、水門の扉体のFRP製ガセットプレート、水門の扉体のFRP製ゴム押え板、水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板、または水門のFRP製戸当りは、スキンプレート、桁材、ガセットプレート、ゴム押え板、水位調節用角落し板、または戸当りの型を組み立てて離型剤を塗布し、さらにゲルコートを塗布して加熱して硬化させ、ゲルコートの上に、炭素繊維ロービングクロス及び/または炭素繊維チョップドストランドマット及び/または炭素繊維ロービングを積層し、硬化剤及び硬化促進剤入りの熱硬化性樹脂を炭素繊維ロービングクロス及び/または炭素繊維チョップドストランドマット及び/または炭素繊維ロービングの上から塗布し、ガラスロービングクロス及び/またはガラスチョップドストランドマット及び/またはガラスロービングを熱硬化性樹脂の上に積層し、熱硬化性樹脂をガラスロービングクロス及び/またはガラスチョップドストランドマット及び/またはガラスロービングの上から塗布することを1回当り1分〜30分の間に行うことの繰り返しにより、10分〜5時間の間に所定の高さになるまで炭素繊維ロービングクロス及び/または炭素繊維チョップドストランドマット及び/または炭素繊維ロービングと熱硬化性樹脂とガラスロービングクロス及び/またはガラスチョップドストランドマット及び/またはガラスロービングを積層して成形体を形成し、それに0.43kgf/cm2 〜0.8kgf/cm2の範囲の圧力を掛けて所定の厚さにするとともに成形体中の空気を抜きつつ、成形体を常温〜140℃の範囲の温度で加熱することによって形成したものである。
このようにして、本発明のHBRP(ハイブリッド繊維強化プラスティック)成形体は、炭素繊維、熱硬化性樹脂、ガラス繊維、熱硬化性樹脂の順に積層して、ハンドレイアップ法において成形圧力・成形温度を高めるとともに成形速度を速めることによって、成形体強度の向上と成形時間の短縮を図ることができ、炭素繊維及び/またはガラス繊維の混入割合を変化させたり、炭素繊維またはガラス繊維の層の数を増減したりすることによって、水門の扉体のスキンプレート、桁材、ガセットプレート、ゴム押え板、水位調節用角落し板、または水門の戸当りの微妙な強度設定が可能になり、適切な製品価格を見出すことができる。
請求項17の発明にかかる水門の扉体のFRP製スキンプレート、水門の扉体のFRP製桁材、水門の扉体のFRP製ガセットプレート、水門の扉体のFRP製ゴム押え板、水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板、または水門のFRP製戸当りは、スキンプレート、桁材、ガセットプレート、ゴム押え板、水位調節用角落し板、または戸当りの型を組み立てて離型剤を塗布し、さらにゲルコートを塗布して加熱して硬化させ、ゲルコートの上に、炭素繊維とガラス繊維からなるハイブリッド繊維ロービングクロスを積層し、硬化剤及び硬化促進剤入りの熱硬化性樹脂をハイブリッド繊維ロービングクロスの上から塗布することを1回当り1分〜30分の間に行うことの繰り返しにより、10分〜5時間の間に所定の高さになるまでハイブリッド繊維ロービングクロスと熱硬化性樹脂を積層して成形体を形成し、それに0.43kgf/cm2 〜0.8kgf/cm2の範囲の圧力を掛けて所定の厚さにするとともに成形体中の空気を抜きつつ、成形体を常温〜140℃の範囲の温度で加熱することによって形成したものである。
このようにして、本発明のHBRP成形体は、炭素繊維とガラス繊維を編み込んでなるハイブリッド繊維ロービングクロスと熱硬化性樹脂を交互に積層して、ハンドレイアップ法において成形圧力・成形温度を高めるとともに成形速度を速めることによって、成形体強度の向上と成形時間の短縮を図ることができ、ハイブリッド繊維ロービングクロス中の炭素繊維及びガラス繊維の混入割合を変化させたりすることによって、水門の扉体のスキンプレート、桁材、ガセットプレート、ゴム押え板、水位調節用角落し板、または水門の戸当りの微妙な強度設定が可能になり、適切な製品価格を見出すことができる。
請求項18の発明にかかる水門の扉体のFRP製スキンプレート、水門の扉体のFRP製桁材、水門の扉体のFRP製ガセットプレート、水門の扉体のFRP製ゴム押え板、または水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板は、成形体の最上面に炭素繊維を積層して表面に炭素繊維を突出させたものである。
自然の水路・河川・湖沼・海岸や溜池等の水に浸っている部分には、藻や水草等の水棲植物が生えるが、FRP成形体からなるスキンプレート、桁材、ゴム押え板、水位調節用角落し板、ガセットプレートを組み合わせてなる水門の扉体の水に浸っている部分には藻や水草等は生えず、自然環境がそこだけ破壊されているような印象を与える。そこで、発明者は請求項15乃至請求項17のいずれか1つの構成において、成形体の最上面に炭素繊維を積層して表面に炭素繊維を突出させることによって、この炭素繊維に藻がついて成長することを見出し、この知見に基いて本発明を完成したものである。これによって、水門の扉体の水に浸っている部分には藻や水草等が生えて、自然のままの水路・河川・湖沼・海岸の一部となり、環境に優しいスキンプレート、桁材、ガセットプレート、ゴム押え板、水位調節用角落し板となる。
なお、水門の戸当りがこの請求項18に入っていないのは、水門の戸当りは水門の扉体が嵌まり込んで水路を開閉する部分であり、藻等が多く付着すると水路を密閉することができなくなるからである。
請求項19の発明にかかる水門の扉体のFRP製スキンプレート、水門の扉体のFRP製桁材、水門の扉体のFRP製ガセットプレート、水門の扉体のFRP製ゴム押え板、または水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板は、繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングを積層する手順と、硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を繊維ロービングクロス及び/または繊維チョップドストランドマット及び/または繊維ロービングの上から塗布する手順との繰り返しを所定の高さの成形体になるまで繰り返す工程の前と後に、ビニロン製ロービングクロスを積層して硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を塗布する工程を各1回または数回行うものである。
本発明にかかる水門の扉体のFRP製スキンプレート等は、加熱して硬化させるとともに圧力を掛けて所定の厚さにしているため、完成品の表面は充分に平滑で見た目も美しいが、場合によっては繊維ロービングクロス等の跡が良く見ると僅かに浮き出て見える場合もある。そこで、より確実に平滑な仕上げ面を確保するために、成形体を積層する前と後に柔軟性に優れたビニロン製ロービングクロスを積層して硬化剤及び硬化促進剤入り熱硬化性樹脂を塗布することによって、加圧によってビニロン製繊維は押し潰されるためロービングクロス等の跡が浮き出ることもなく、より意匠性に優れた平滑な仕上げ面を確実に得ることができ、商品価値も向上する。
このようにして、ハンドレイアップ法において、成形圧力・成形温度を高めるとともに成形速度を速めることによって、成形体強度の向上と成形時間の短縮を図ることができ、また成形体表面が極めて平滑で意匠性に優れた水門の扉体のFRP製スキンプレート、水門の扉体のFRP製桁材、水門の扉体のFRP製ガセットプレート、水門の扉体のFRP製ゴム押え板、または水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板となる。
請求項20の発明にかかる水門のFRP製扉体は、請求項14乃至請求項19のいずれか1つに記載の水門の扉体のFRP製スキンプレートに、水密ゴムと請求項14乃至請求項19のいずれか1つに記載の水門の扉体のFRP製ゴム押え板とを組み付けて、または水門の扉体のFRP製スキンプレートに水密ゴムと水門の扉体のFRP製ゴム押え板とを組み付けたものにさらに請求項14乃至請求項19のいずれか1つに記載の水門の扉体のFRP製桁材を組み付けて、またはさらに請求項14乃至請求項19のいずれか1つに記載の水門の扉体のFRP製ガセットプレートを組み付けて、またはさらに請求項14乃至請求項19のいずれか1つに記載の水門の扉体のFRP製水位調節用角落し板を組み付けて製造したものである。
これによって、それぞれの部材の特徴を生かした水門の扉体とすることができる。例えば、請求項15に記載の水門の扉体の桁材とゴム押え板とガセットプレートを複数、請求項15に記載のスキンプレートに組み付けて、またはさらに請求項15に記載の水門の扉体の水位調節用角落し板を組み付けてなる水門の扉体は、全てCFRP成形体からなるため、ガラス繊維を用いたFRPに比べて設計上同強度を持たせるためには半分から2/3の厚さで済み、その分軽量化することができる。また、炭素繊維はガラス繊維よりコストが高いが、使用量を半分程度にでき、しかも水門の扉体が軽量化されるので扉体の開閉装置の能力を低荷重に設定できることから、全体としては低コスト化することができる。
また、自然排水・自然止水(逆流防止)を目的とした自然開閉式水門の扉体として上記CFRP成形体からなる扉体を用いることによって、扉体が軽いため可動性能を高めることができ、排水条件・逆水防止に優れた自然開閉式水門となる。自然開閉式水門としては、フラップゲート(吊り下げ式)、スイングゲート(横開き)、マイターゲート(観音開き)がある。
また、請求項16に記載の水門の扉体の桁材とゴム押え板とガセットプレートを複数、請求項16に記載のスキンプレートに組み付けて、またはさらに請求項16に記載の水門の扉体の水位調節用角落し板を組み付けてなる水門の扉体は、ハンドレイアップ法において成形圧力・成形温度を高めることによって、成形体強度の向上と成形時間の短縮を図ることができ、炭素繊維及び/またはガラス繊維の混入割合を変化させたり、炭素繊維またはガラス繊維の層の数を増減したりすることによって、水門の扉体のスキンプレート、桁材、ゴム押え板、水位調節用角落し板、ガセットプレートの微妙な強度設定が可能になるので、水門の扉体の微妙な強度設定が可能になり、適切な製品価格を見出すことができる。
また、自然排水・自然止水(逆流防止)を目的とした自然開閉式水門の扉体として上記HBRP成形体からなる扉体を用いることによって、扉体が軽いため可動性能を高めることができ、排水条件・逆水防止に優れた自然開閉式水門となる。
また、請求項17に記載の水門の扉体の桁材とゴム押え板とガセットプレートを複数、請求項17に記載のスキンプレートに組み付けて、またはさらに請求項17に記載の水門の扉体の水位調節用角落し板を組み付けてなる水門の扉体は、全てHBRP成形体からなるため、炭素繊維とガラス繊維の混合比と使用量を調節することによって、微妙な強度設定が可能になり、適切な製品価格を見出すことができる。また、自然排水・自然止水(逆流防止)を目的とした自然開閉式水門の扉体として上記HBRP成形体からなる扉体を用いることによって、扉体が軽いため可動性能を高めることができ、排水条件・逆水防止に優れた自然開閉式水門となる。
また、請求項18に記載の水門の扉体の桁材とゴム押え板とガセットプレートを複数、請求項18に記載のスキンプレートに組み付けて、またはさらに請求項18に記載の水門の扉体の水位調節用角落し板を組み付けてなる水門の扉体は、炭素繊維が表面に突出しているので、水に浸っている部分には藻や水草等が生えて、自然のままの水路・河川・湖沼・海岸の一部となり、環境に優しい水門の扉体となる。但し、プレートガーダ方式の水門の扉体においては、戸当りに嵌まり込んで上下するスキンプレートの両端部分には藻等が多く付くと上下動がスムーズに行かなくなるので、この部分には炭素繊維を突出させないようにする。
なお、水門のFRP製扉体は、強度がそれほど必要でない場合にはFRP製スキンプレートに水密ゴムとFRP製ゴム押え板とを組み付けるのみで製造でき、強度がある程度必要な場合はさらにFRP製桁材を組み付ければ良く、より強度が必要な場合にはさらにFRP製ガセットプレートを組み付けて、水位調節が必要な場合にはFRP製水位調節用角落し板を組み付けて製造すれば良い。
このようにして、ハンドレイアップ法において成形圧力・成形温度を高めるとともに成形速度を速めることによって、成形体強度の向上と成形時間の短縮を図ることができ、低コスト化することができる水門のFRP製扉体となる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1にかかる水門の扉体及び水門の戸当りについて、図1乃至図7を参照して説明する。
図1は本発明の実施の形態1にかかるFRP成形体の成形方法を示すフローチャートである。図2は本発明の実施の形態1にかかるFRP成形体を組み立てて製造したFRP製品としての水門の扉体を示す正面図である。図3(a)は本発明の実施の形態1にかかるFRP製品である水門の扉体の部品であるスキンプレート、(b)は縦桁、(c)は縦桁をカバーするガセットプレート、(d)は短い横桁、(e)は長い横桁のそれぞれ斜視図である。図4(a)は本発明の実施の形態1にかかるFRP製品である水門の扉体の部品であるスキンプレートを他の部品に組み付ける方法を示す正面図、(b)は裏面図である。図5(a)は本発明の実施の形態1にかかるFRP製品である水門の扉体の部品であるスキンプレートの組み付け部を隠す構造を示す図、(b)は隠した状態を示す図である。図6は本発明の実施の形態1にかかるFRP製品である水門の扉体の部品であるガセットプレートの他の例を示した斜視図である。図7は本発明の実施の形態1にかかるFRP製品である水門の戸当りを扉体とともに示す斜視図である。
まず、本実施の形態1のFRP成形体の成形方法について、図1のフローチャートを参照して説明する。まず、ステップS1で製造するFRP成形体(例えば、水門の扉体のスキンプレート)の型を組み立てる。このとき、型の下には型を加熱するための加熱手段(例えば、電気ヒータ)をセットしておく。次に、組み立てた型の内面に離型剤を塗布し(ステップS2)、さらに型の内側底面にゲルコートを塗布して(ステップS3)、電気ヒータで略25〜45℃の範囲に加熱してゲルコートを硬化させる(ステップS4)。このゲルコートはFRP成形体が完成したときに、この面の見栄えを向上させるとともに太陽光中の紫外線を遮断してFRP成形体の耐候性を向上させる役割をする。
次に、ハンドレイアップ法の工程を実施する。即ち、まずガラスチョップドストランドマットを型内に敷いて(ステップS5)、熱硬化性樹脂としての不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を流し込み、作業者が塗布ロールで表面をならして(ステップS6)、続いてガラスロービングクロスを積層体の上に敷いて(ステップS7)、不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を流し込み、作業者が塗布ロールで表面をならして(ステップS8)、この手順を約5分間で積層体が所定の高さになるまで繰り返し、約1時間で完了する。なお、ガラスチョップドストランドマットの積層工程(ステップS5,S6)も、ガラスロービングクロスの積層工程(ステップS7,S8)も、常温で行なわれる。
また、より強度が必要なFRP成形体の場合には、ステップS8の後にステップS5へ戻らずに、図1に別の矢印で示されるようにステップS7へ戻って再度ガラスロービングクロスを積層体の上に敷いて不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を流し込んで作業者が塗布ロールで表面をならすという手順を繰り返す。即ち、ガラスチョップドストランドマットよりもガラスロービングクロスの方が強度が高いので、ステップS7,S8のガラスロービングクロスの積層工程のみを繰り返して、積層体が所定の高さになるまで約1時間で完了する。
そして、所定の高さになった成形体としての積層体の上に第2の加熱手段としての電気ヒータを備えた加圧手段としてのプレス機を置いて、この電気ヒータと型の下にセットした電気ヒータによって成形体としての積層体を約140℃に加熱しながらプレス機によって約0.7kgf/cm2で加圧する(ステップS9)。これによって、積層体の内部の空気が押し出されて密な構造となり、約140℃の高温で加熱されることによって短時間で樹脂が硬化するとともにより強度の高いFRP成形体となる。このようにして、加熱硬化と加圧が終了したら、FRP成形体が冷えるのを待って型から外す(ステップS10)。ステップS2において型の内面に離型剤を塗布してあるので、FRP成形体はスムーズに外れる。
なお、水門の扉体のスキンプレートのように、両面が太陽光に曝される可能性のあるFRP成形体の場合には、両面にゲルコート膜を形成する必要がある。このような場合には、プレス機のプレス面(下面)にも離型剤を塗布してその上からゲルコートを塗布して第2の加熱手段としての電気ヒータで加熱して硬化させておく。そして、ステップS9の加熱・加圧工程においてプレス機の下面に形成されたゲルコート膜を積層体の表面に密着させて一体化させる。そして、FRP成形体が冷えるのを待って型から外せば、プレス機の下面にも離型剤が塗布されているため、硬化したゲルコート膜はスムーズにプレス機の下面から離れて、両面にゲルコート膜が形成されたFRP成形体を得ることができる。
なお、このように積層体の上面にもゲルコート膜を付着させる場合には、図1のフローチャートのようにガラスロービングクロスの積層工程(ステップS7,S8)の直ぐ後に加熱・加圧工程(ステップS9)を行うのではなく、ガラスチョップドストランドマットの積層工程(ステップS5,S6)を1回以上挟んでから加熱・加圧工程(ステップS9)を行った方が、ガラスチョップドストランドマットとゲルコート膜の密着性が高いのでより好ましい。
このようにして製造した様々な形状・大きさのFRP成形体を組み合わせることによって、多種多様なFRP製品とすることができる。具体例として、図2に示される水門の扉体1の場合について説明する。この扉体1は、平板状のスキンプレート2と、これを強化する桁材としての5本の縦桁3と、これら5本の縦桁3の間を繋いで補強する桁材としての2種類の長さの短い横桁4,5と、扉体1が捩れたり歪んだりするのを防ぐために縦桁3の上に設置されるガセットプレート3bとが、多数のステンレス製のボルト・ナットで接続されて組み立てられている。
これらの部品のさらに詳しい形状について、図3を参照して説明する。
図3(a)に示されるように、扉体1の土台となるスキンプレート2は単なる平板形状であり、図3(b)に示されるように、縦桁3は2本のC形チャンネル部材が背中合わせに接着されて断面H形の部材となったものである。図3(c)に示されるように、ガセットプレート3bは平板形状であり、縦桁3の上に設置されて一体にステンレス製のボルトでボルト締めされる。そして、図3(d),(e)に示されるように、横桁4,5も縦桁3と同様に、2本のC形チャンネル部材が背中合わせに接着されて断面H形の部材となったものである。なお、桁材は断面H形の部材に限られず、断面C形(コの字形)のチャンネル部材を用いても良いし、断面H形の部材と断面C形の部材を混合して用いても構わない。
次に、これらの桁材を平板状のスキンプレート2と接続する方法について、図4を参照して説明する。ここでは、断面C形の横桁14と接続する場合について示している。
図4に示されるようにスキンプレート2と横桁14とは六角ボルト・ナットによって接合される。ステンレス製の六角ボルト6がスキンプレート2側から通されて、ステンレス製の六角ナット9によって締め付けられるが、横桁14の内側の受け面がテーパ状になっているため、逆テーパのステンレス製のテーパワッシャー7を用いて受け面を平行にして、さらに締め付け力を増すためにステンレス製のスプリングワッシャー8を介して六角ナット9で締め付けている。
図4(a)に示されるように、このような通常の組み付け方では、六角ボルト6の頭が見えてしまうが、これが美観上支障のある場合には、図5に示されるように、ボルト穴10の加工をする際に皿もみをしてステンレス製の皿ボルト11による固定をした後、その表面を樹脂コーティング12で隠す場合もある。
また、ガセットプレートの別の例として、図6に示されるように、スキンプレート2のコーナー部で突き合わされたC形チャンネルの横桁14と縦桁15を、5角形のガセットプレート16をボルト締めして接続し、これを4箇所のコーナー部全てについて行うことによって、扉体が捩れたり歪んだりするのを防ぐことができる。
このようにして水門の扉体1が完成するが、各部材2,3a,3b,4a,5a,14,15,16の製造方法はいずれも図1のフローチャートにしたがって説明した上述の通りである。したがって、高温加熱・加圧されることによって内部に空隙が少なく高い強度のFRP成形体となり、薄型とできるので、これらを組み立てた扉体1も軽量で強固な構造物となる。
次に、この扉体1が上下する水門の戸当りについて、図7を参照して説明する。この水門の戸当り20は、水門の扉体1の両側端が嵌まり込む溝部を有する断面H形の部材17,18及び扉体1の下面が密着する底面部材19からなり、扉体1が上下するときのガイド溝になり、扉体1が下端に来た時には扉体1と一体となって水の流れを堰き止めるものである。なお、水漏れを防ぐために扉体1の戸当り20と接する面にはゴムが貼り付けられる。また、断面H形の部材17,18は断面C形のFRP成形体を背中合わせに貼り付けたものであり、底面部材19は断面C形のFRP成形体を突起部分を下にして設置したものである。これらの部材17,18,19からなる水門の戸当り20は、水路中にコンクリートで固定される。
これらの部材17,18,19の製造方法も、いずれも図1のフローチャートにしたがって説明した上述の通りである。したがって、高温加熱・加圧されることによって内部に空隙が少なく高い強度のFRP成形体となり、これらを組み立てた戸当り20も強固な構造物となる。
なお、扉体1の上下は扉体1の上面にボルトで固定される固定板22に溶接された支持棒21を上方で電動モータまたは手動ハンドルを回転させることによって行なわれる。また、本実施の形態1においては、図7に示されるように昇降部の断面H形の戸当り20について説明したが、戸当りの形状としてはこれに限られるものでなく、以下の実施の形態2において説明するような昇降部の断面が帽子形状のハット形と呼ばれる戸当り130を用いることもでき、他にも昇降部の断面がコの字形の戸当りを始めとして種々の形状の戸当りを用いることができる。
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2にかかる水門のFRP製扉体と戸当りについて、図8を参照して説明する。図8(a)は本発明の実施の形態2にかかる水門のFRP製扉体の全体構造を示す正面図、(b)は平面図である。
図8(a),(b)に示されるように、本実施の形態2にかかる水門のFRP製扉体120は、FRP製スキンプレート121にFRP製桁材122、FRP製ゴム押え板123、FRP製水位調節用角落し板125等が組み付けられてなるものである。これらのFRP製スキンプレート121、FRP製桁材122、FRP製ゴム押え板123、FRP製水位調節用角落し板125も、図1のフローチャートに示される工程にしたがって、高温加熱・加圧されることによって内部に空隙が少なく高い強度のFRP成形体として製造されたものである。
ここで、まずFRP製ゴム押え板123について説明すると、本実施の形態2にかかる水門の昇降式FRP製扉体120の左右と底辺の三方にFRP製戸当り130との間で水密を保つための水密ゴム124が取付けられており、これらの水密ゴム124は図8(b)に示されるように屈曲してFRP製戸当り130に密着するため、水密ゴム124のFRP製スキンプレート121への取付け部には大きな応力が掛かる。しかも、多くのボルト123aでボルト止めされるため多くのボルト穴が開けられ、強度的に不利になる。このため、従来は水門のFRP製扉体においても、ゴム押え板のみはステンレス板が用いられていたが、本実施の形態2にかかるFRP製扉体120においては、図1のフローチャートにしたがって製造された高強度のFRP製ゴム押え板123が用いられており、強度的にも全く問題はない。
次に、FRP製水位調節用角落し板125について説明する。図8(a)に示されるように、本実施の形態2にかかるFRP製スキンプレート121には、上部に2箇所の切欠き部分が設けられており、その切欠き部分の縁に沿って受け部材128が取付けられている。これらの受け部材128に、各2枚のFRP製水位調節用角落し板125が嵌め込まれており、常時はFRP製扉体120の上辺まで塞がれて、上辺まで水路に水を溜めることができる。
ここで、水路の水位を少し下げようとするとき、スピンドル129を上昇させることによってFRP製扉体120の底辺を水路の底部から少し浮かせて隙間を作ると、水位が高いため水路の底部の水圧が高く、水圧の高い水流がこの隙間から流れ出てFRP製扉体120を降ろして水門を閉じることができなくなってしまう。そこで、図8(a)に示されるように、取外し可能なFRP製水位調節用角落し板125を取付けておき、水路の水位を少し下げる場合には、これら4枚のFRP製水位調節用角落し板125を任意の枚数だけ取っ手126を持って外し、水面近くの水を流すようにする。水面近くの水には高い水圧が掛かっていないため、目標とする水位まで下がったらまたFRP製水位調節用角落し板125を嵌め込むことによって、容易に水流を止めることができる。
この取っ手126も図1のフローチャートにしたがって製造された高強度のFRP製であるため、FRP製水位調節用角落し板125に接着によって固定することもできるし、ボルト止めで固定することもできる。本実施の形態2においては、取っ手126を水位調節用角落し板125にボルト止めで固定しており、そのボルトからゴム押え板123の固定ボルト123aにφ3リンクチェーン127が繋がれている。これによって、水位調節用角落し板125を外したときに、落下したり紛失したりする事態を防止している。
このように、本実施の形態2にかかる水門のFRP製扉体120においては、FRP製水位調節用角落し板125が取付けられているため、FRP製扉体120を図8(b)に示されるようなハット形の水門のFRP製戸当り130に沿って上下させることなく水位の調節を行うことができる。そして、FRP製扉体120を構成するFRP製スキンプレート121、FRP製桁材122、FRP製ゴム押え板123、FRP製水位調節用角落し板125は、いずれも図1のフローチャートにしたがって製造された高強度のFRP成形体であるため、高い水圧にも充分耐えることができ、ステンレス製品を置換することができるため、軽量かつ低コストにすることができる。
なお、前記実施の形態1にかかる水門のFRP製扉体1においても、図示されていないが同様に水密ゴムとFRP製ゴム押え板が取付けられている。
実施の形態3
次に、本発明の実施の形態3にかかる水門の扉体と戸当り及び扉体の上下(開閉)機構について、図1乃至図7を参考にしながら、図9及び図10を参照して説明する。図9は本発明の実施の形態3にかかるCFRP(炭素繊維強化プラスティック)成形体の成形方法を示すフローチャートである。図10(a)は本発明の実施の形態3にかかる手動開閉式水門の全体構成を示す正面図、(b)は側面図である。
まず、本実施の形態3のCFRP成形体の成形方法について、図9のフローチャートを参照して説明する。ステップS11〜S14については、図1のステップS1〜S4と全く同様なので説明を省略する。次に、ハンドレイアップ法の工程を実施する。即ち、まず炭素繊維ロービングクロスを型内に敷いて(ステップS15)、熱硬化性樹脂としての不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を流し込み、作業者が塗布ロールで表面をならして(ステップS16)、続いて炭素繊維チョップドストランドマットを積層体の上に敷いて(ステップS17)、不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を流し込み、作業者が塗布ロールで表面をならして(ステップS18)、この手順を積層体が所定の高さになるまで繰り返す。
ここで、成形体(例えば、水門の扉体のスキンプレート)の強度が実施の形態1と同程度で良いのであれば、CFRPはガラス繊維のみを用いたFRPよりもずっと強度的に優れているので、積層体の高さを低くすることができ、積層工程に要する時間が短縮される。なお、炭素繊維ロービングクロスの積層工程(ステップS15,S16)も、炭素繊維チョップドストランドマットの積層工程(ステップS17,S18)も、常温で行なわれる。
また、より強度が必要なCFRP成形体の場合には、ステップS18の後にステップS15へ戻らずに、図9に別の矢印で示されるようにステップS17へ戻って再度炭素繊維ロービングクロスを積層体の上に敷いて不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を流し込んで作業者が塗布ロールで表面をならすという手順を繰り返す。即ち、炭素繊維チョップドストランドマットよりも炭素繊維ロービングクロスの方が強度が高いので、ステップS17,S18の炭素繊維ロービングクロスの積層工程のみを繰り返して、積層体が所定の高さになるまで約45分で完了する。
そして、所定の高さになった成形体としての積層体の上に第2の加熱手段としての電気ヒータを備えた加圧手段としてのプレス機を置いて、この電気ヒータと型の下にセットした電気ヒータによって成形体としての積層体を約140℃に加熱しながらプレス機によって約0.8kgf/cm2で加圧する(ステップS19)。これによって、積層体の内部の空気が押し出されて密な構造となり、約140℃の高温で加熱されることによって短時間で樹脂が硬化するとともにより強度の高いCFRP成形体となる。
このようにして、加熱硬化と加圧が終了したら、CFRP成形体が冷えるのを待って型から外す(ステップS20)。ステップS12において型の内面に離型剤を塗布してあるので、CFRP成形体はスムーズに外れる。
なお、水門の扉体のスキンプレートのように、両面が太陽光に曝される可能性のあるCFRP成形体の場合には、両面にゲルコート膜を形成する必要がある。このような場合には、プレス機のプレス面(下面)にも離型剤を塗布してその上からゲルコートを塗布して第2の加熱手段としての電気ヒータで加熱して硬化させておく。そして、ステップS19の加熱・加圧工程においてプレス機の下面に形成されたゲルコート膜を積層体の表面に密着させて一体化させる。そして、CFRP成形体が冷えるのを待って型から外せば、プレス機の下面にも離型剤が塗布されているため、硬化したゲルコート膜はスムーズにプレス機の下面から離れて、両面にゲルコート膜が形成されたCFRP成形体を得ることができる。
なお、このように積層体の上面にもゲルコート膜を付着させる場合には、図9のフローチャートのように炭素繊維ロービングクロスの積層工程(ステップS17,S18)の直ぐ後に加熱・加圧工程(ステップS19)を行うのではなく、炭素繊維チョップドストランドマットの積層工程(ステップS15,S16)を1回以上挟んでから加熱・加圧工程(ステップS19)を行った方が、炭素繊維チョップドストランドマットとゲルコート膜の密着性が高いのでより好ましい。
このようにして製造した様々な形状・大きさのCFRP成形体を組み合わせることによって、多種多様なCFRP製品とすることができる。具体例として、図2に示される水門の扉体1の場合について説明する。この扉体1は、平板状のスキンプレート2と、これを強化する桁材としての5本の縦桁3と、これら5本の縦桁3の間を繋いで補強する桁材としての2種類の長さの短い横桁4,5と、扉体1が捩れたり歪んだりするのを防ぐために縦桁3の上に設置されるガセットプレート3bとが、多数のボルト・ナットで接続されて組み立てられている。
前述の如く、CFRP成形体はガラス繊維のみを用いたFRP成形体よりも強度が高いため、この扉体1の部品2,3a,3b,4a,5a(図3参照)も薄く作ることができ、さらに、5本の縦桁3を4本に減らしたりすることもできるので、これらの部品を組み立ててなるCFRP成形体の扉体は、実施の形態1の扉体1よりもずっと軽くなる。
次に、この扉体が上下する水門の戸当りは、図7に示されるように、水門の扉体の両側端が嵌まり込む溝部を有する断面H形の部材17,18及び扉体の下面が密着する底面部材19からなり、これらの部材17,18,19も図9のフローチャートにしたがって、CFRP成形体としてより薄く、またCFRP成形体の扉体の薄さに合わせて溝幅もより狭く作られ、こうして製造されたCFRP成形体からなる水門の戸当りは、水路中にコンクリートで固定される。
ここで、図9のフローチャートのステップS18で所定の高さに達して、ステップS19の高温加熱・圧縮工程に移る前に、もう一度炭素繊維ロービングクロスまたは炭素繊維チョップドストランドマット(あるいは炭素繊維ロービング)の積層を実施することによって、完成したCFRP成形体の表面に炭素繊維を突出させることができる。したがって、これらの部品を組み立ててなるCFRP成形体の扉体の表面にも炭素繊維が突出し、本発明者は水中でこの炭素繊維に藻がついて成長することを見出した。これによって、水門の扉体の水に浸っている部分には藻や水草等が生えて、自然のままの水路・河川・湖沼・海岸の一部となり、環境に優しい水門の扉体となる。
なお、水門の戸当り及び水門の扉体の溝に嵌まり込んで上下する両端には、炭素繊維を突出させないようにする。水門の戸当りと水門の扉体の両端に藻等が多く付着すると、扉体の上下動がスムーズに行えなくなり、また水路を密閉することができなくなるからである。
さらに、扉体の上下動は扉体の上面にボルトで固定される固定板22に溶接された支持棒21を上方で電動モータまたは手動ハンドルを回転させて引き上げることによって行なわれる。本実施の形態2にかかる水門の扉体は軽くできているので、かかる扉体の開閉装置(電動モータまたは手動ハンドル)の能力を低荷重に設定できる。これによって、炭素繊維はガラス繊維よりコストが高いが、CFRP成形体を薄くできることから使用量を半分程度にでき、水門の扉体が軽くなって開閉装置の能力を低荷重に設定できることから、全体としては低コスト化することができる。
次に、かかる水門の扉体と戸当り及び扉体の開閉装置の具体例について、図10を参照して説明する。図10に示されるように、上記のようにして製造されたCFRP成形体からなる水門の扉体33及び水門の戸当り34は、手動式開閉式のスライド式水門25に使用されている。
このスライド式水門25は、下半分を水路中にコンクリートで固定されるCFRP成形体からなる戸当り34と、この戸当り34の溝に嵌合して上下動するCFRP成形体からなる扉体33と、戸当り34の上端に水平に固定される鉄製のフレーム35と、扉体33の上端中央にボルト締めされる固定板30と、この固定板30にピンで接続される支持棒としてのスピンドル29と、前記フレーム35上に固定された前記スピンドル29と噛み合うべベルギアが収められたギアボックス27と、ギアボックス27及びスピンドル29を雨水等からカバーするスピンドルカバー28、そして、ギアボックス27内のベベルギアと直結していて回すことによってベベルギアが回転し、それによってスピンドル29が上下動して扉体33を上下にスライドさせる手動ハンドル26とを備えている。
さらに、図10(b)に示されるように、手動ハンドル26を回す操作者が立つための操作台31と水路の両岸から操作台31へ上がるための1対のステップ32が戸当り34に取付けられている。そして、操作者が操作台31の中央に立って手動ハンドル26の取っ手26aを持ち、手動ハンドル26を右回り(時計回り)に回すと、ギアボックス27内のベベルギアが回転してスピンドル29が上昇して水門の扉体33もスライドして上昇し、スライド式水門25が開かれる。上昇したスピンドル29は、スピンドルカバー28内に入って行く。また、操作者が手動ハンドル26を左回り(反時計回り)に回すと、スピンドル29が下降して水門の扉体33もスライドして下降し、スライド式水門25が閉じられる。
なお、図10(b)に示されるように、操作台31側から戸当り34を通過する水流が主水流であり、これと逆方向に流れるのが逆水流である。水が水路を主水流の方向に流れているときは、通常は水門の扉体33は上昇して開かれており、大雨等でスライド式水門25の左側の水位が増して逆水流が流れ出したときには、水門の扉体33を降下させてスライド式水門25が閉じられる。ここで、密閉を保つため、水門の扉体33の底面及び両側面には水密ゴム33aが貼り付けられている。そして、これらの水密ゴム33aもCFRP製のゴム押え板によって扉体33に固定されている。
ここで、上述したようにCFRP製の扉体33はごく軽量であるため、これを持ち上げるためのスピンドル29、ギアボックス27、手動ハンドル26等からなる手動開閉機構の能力も小さくて済み、値段の高い炭素繊維を用いたCFRP製の扉体33であっても強度が高いため薄手にすることができて炭素繊維の使用量を減らすことができ、さらにこのように手動開閉機構の能力も小さくできるため、スライド式水門25全体としてはコストダウンすることができる。
このようにして、本実施の形態2にかかる水門の扉体はCFRP成形体からなるため、ガラス繊維を用いたFRPに比べて設計上同強度を持たせるためには半分から2/3の厚さで済み、その分軽量化することができる。また、炭素繊維はガラス繊維よりコストが高いが、使用量を半分程度にでき、しかも水門の扉体が軽量化されるので扉体の開閉装置の能力を低荷重に設定できることから、水門全体としては低コスト化することができる。
実施の形態4
次に、本発明の実施の形態4にかかる水門の扉体と戸当り及び扉体の上下(開閉)機構並びに管理橋について、図11及び図12を参照して説明する。図11は本発明の実施の形態4にかかるCFRP成形体からなる水門の扉体と戸当りを用いた電動開閉式水門の全体構成を示す正面図である。図12は本発明の実施の形態4にかかる電動開閉式水門及び管理橋の全体構成を示す側面図である。
図11に示されるように、本実施の形態4にかかる電動開閉式水門41は、コンクリート製の門柱44を中心として構成されており、戸当り48の底面から門柱44の上端(防護柵43の下端)までの高さが約8.75mある大きいものである。水門の扉体50の高さも約1.9mあり、幅が約2.2mで、この面に掛かる水圧を受け止めなければならないことから、スキンプレートを破断して示されているように、縦横に桁を張り巡らせて強化している。しかし、この水門の扉体50も実施の形態3と同様に図9のフローチャートにしたがって、CFRP成形体で(スキンプレート、縦桁、横桁、ガセットプレート全てが)製造されているので、ガラス繊維のみを用いて製造されたFRP成形体に比べて格段に強度的に優れており、扉体50の各部品をより薄く作ることが可能になるので、扉体50を軽量化することができる。
扉体50は上端中央部にボルト締めされた固定部材49に固定されたラック棒45が上方に伸びて、門柱44の上端がほぼ正方形の防護柵43に囲まれた操作台44aとなっており、そのほぼ中心に固定された電動ラック式開閉機42に嵌合している。ラック棒45は鋼材に防錆メッキしてなるもので、長いため途中で撓まないように門柱44に固定された支持部材46に取付けられた中間振止47の中を貫通して、略垂直に保たれるように支持されている。電動ラック式開閉機42は、ラック棒45とその下端に取付けられた扉体50を引き上げるときは、ラック棒45に噛み合ったピニオンギアを電動モータで回転させて上昇させる。
なお、扉体50の左右には上下2個ずつのローラ50aが取付けられており、これらのローラ50aが戸当り48の面に当接して回転しながら上昇・下降するローラゲートとなっている。
このとき、扉体50は上述の如くCFRP成形体からなり、軽いため電動ラック式開閉機42の引き上げ能力が小さいもので済み、水門41全体として低コスト化することができる。なお、扉体50を下降させるときは電動ラック式開閉機42のロックを外して、扉体50とラック棒45の自重で下降させるが、一気に戸当り48の底面まで落下せずブレーキが掛かるようになっている自重降下型の電動ラック式開閉機42を用いている。
次に、この電動開閉式水門41を河川の堤防に用いた場合について、図12を参照して説明する。なお、図11と同一の部材については同一の符号を付して、説明を省略する。
電動開閉式水門41の扉体50を開けた水路の中は、天井・床面52そして両側面をコンクリートで覆われた暗渠51になっている。この暗渠51は電動開閉式水門41を介して河川に通じており、堤防53の矩面53aの地下に作られていて、反対側の出口は堤防53の外側の水路・河川・湖沼或いは海岸に通じている。ここで、電動ラック式開閉機42の操作台44aへ上がるには、堤防53が矩面53aになっているため、堤防53の頂上53bから操作台44aまで管理橋55を設ける必要がある。
管理橋55は、短い桁56を接続してなる1対の橋桁(向う側の橋桁は手前の橋桁に隠れて図示されない)、その1対の橋桁間に渡されて人が踏んで渡る踏み板57、そして1対の橋桁上にそれぞれ取付けられる1対の防護柵58からなる。これらの部材(桁56と踏み板57と防護柵58)としては、図9のフローチャートにしたがってCFRP成形体として製造されたものが用いられる。さらに、踏み板57は図9のフローチャートのステップS19において約0.7kgf/cm2の圧力を掛けて圧縮・空気抜きをした後、表面に砂利を撒いてから、約140℃に加熱して完全硬化させる。こうしてCFRP成形体からなる踏み板57の表面に砂利を埋め込むことによって、表面に凹凸を形成して滑り難くして、冬期の雪が降ったときや凍結したときでも転倒の危険が少ない踏み板57となる。
管理橋55の組み立ては、短い桁56を互いに突き合わせて複数のボルト・ナットで固定して繋ぎ合わせて行き、所定の長さになったら操作台44aと堤防53の頂上53bに固定されたコンクリートブロック55aの間に渡して、操作台44aとコンクリートブロック55aの所定位置にそれぞれボルトで固定する。このようにして、1対の橋桁が所定間隔をおいて平行に設置されたら、1対の橋桁間に踏み板57を渡して踏み板57を橋桁に複数のボルト・ナットで固定して行く。本実施の形態3においては、操作台44aとコンクリートブロック55aの間が約8mあり、踏み板57は1枚の長さが約2mに作られているので、4枚のCFRP成形体からなる踏み板57が1対の橋桁間に固定されることになる。
そして、同じく図9のフローチャートにしたがってCFRP成形体として製造された1対の防護柵58をそれぞれ1対の橋桁に固定して、全てCFRP成形体からなる管理橋55が完成する。この管理橋55は、従来の鋼鉄製のものに比べて各部材を格段に軽くできるので、施工が容易になり、また防食性に非常に優れており鋼鉄製のもののように錆びるということがないので長期間使用することができる。
このようにして、本実施の形態4にかかる水門の扉体50及び戸当り48並びに管理橋55は、CFRP成形体からなるため、ガラス繊維を用いたFRPに比べて設計上同強度を持たせるためには半分から2/3の厚さで済み、その分軽量化することができる。また、炭素繊維はガラス繊維よりコストが高いが、使用量を半分程度にでき、しかも水門の扉体が軽量化されるので扉体の開閉装置の能力を低荷重に設定でき、戸当り48並びに管理橋55も軽量化されるので施工が容易になることから、電動開閉式水門41全体としては低コスト化することができる。
実施の形態5
次に、本発明の実施の形態5にかかる自然開閉式水門(フラップゲート)の扉体と戸当り及びそれらの製造方法について、図13乃至図15を参照して説明する。図13は本発明の実施の形態5にかかるHBRP(ハイブリッド繊維強化プラスティック)成形体の成形方法を示すフローチャートである。図14は本発明の実施の形態5にかかるフラップゲートの構造を示す模式縦断面図である。図15(a)は本発明の実施の形態5にかかるフラップゲートの全体構成を示す河川側から見た正面図、(b)は縦断面図である。
まず、本実施の形態5のHBRP成形体の成形方法について、図13のフローチャートを参照して説明する。ステップS21〜S24については、図1のステップS1〜S4と全く同様なので説明を省略する。次に、ハンドレイアップ法の工程を実施する。
即ち、まずガラスロービングクロスを型内に敷いて(ステップS25)、熱硬化性樹脂としての不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を流し込み、作業者が塗布ロールで表面をならして(ステップS26)、続いて炭素繊維ロービングクロスを積層体の上に敷いて(ステップS27)、不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を流し込み、作業者が塗布ロールで表面をならして(ステップS28)、次にガラスチョップドストランドマットを積層体の上に敷いて(ステップS29)、不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を流し込み、作業者が塗布ロールで表面をならして(ステップS30)、続いて炭素繊維チョップドストランドマットを積層体の上に敷いて(ステップS31)、不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を流し込み、作業者が塗布ロールで表面をならして(ステップS32)、この手順を積層体が所定の高さになるまで繰り返す。
ここで、成形体(例えば、水門の扉体のスキンプレート)の強度が実施の形態1と同程度で良いのであれば、HBRPはガラス繊維のみを用いたFRPよりも強度的に優れているので、積層体の高さを低くすることができ、積層工程に要する時間が短縮される。なお、ガラスロービングクロスの積層工程(ステップS25,S26)も、炭素繊維ロービングクロスの積層工程(ステップS27,S28)も、ガラスチョップドストランドマットの積層工程(ステップS29,S30)も、炭素繊維チョップドストランドマットの積層工程(ステップS31,S32)も常温で行なわれる。
また、より強度が必要なHBRP成形体の場合には、ステップS32の後にステップS25へ戻らずに、図13に別の矢印で示されるようにステップS29へ戻って再度ガラスロービングクロスを積層体の上に敷いて不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を流し込んで作業者が塗布ロールで表面をならし、炭素繊維ロービングクロスを積層体の上に敷いて不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を流し込んで作業者が塗布ロールで表面をならすという手順を繰り返す。即ち、繊維チョップドストランドマットよりも繊維ロービングクロスの方が強度が高いので、ステップS29,S30,S31,S32のガラスロービングクロス及び炭素繊維ロービングクロスの積層工程を繰り返して、積層体が所定の高さになるまで約45分で完了する。
また、さらに強度が必要なHBRP成形体の場合には、ステップS32の後にステップS25へ戻らずに、図13に別の矢印から分岐した矢印で示されるようにステップS31へ戻って再度炭素繊維ロービングクロスを積層体の上に敷いて不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を流し込んで作業者が塗布ロールで表面をならすという手順を繰り返す。即ち、ガラスロービングクロスよりも炭素繊維ロービングクロスの方が強度が高いので、ステップS31,S32の炭素繊維ロービングクロスの積層工程だけを繰り返して、積層体が所定の高さになるまで約45分で完了する。
そして、所定の高さになった成形体としての積層体の上に第2の加熱手段としての電気ヒータを備えた加圧手段としてのプレス機を置いて、この電気ヒータと型の下にセットした電気ヒータによって成形体としての積層体を約140℃に加熱しながらプレス機によって約0.7kgf/cm2で加圧する(ステップS33)。これによって、積層体の内部の空気が押し出されて密な構造となり、約140℃の高温で加熱されることによって短時間で樹脂が硬化するとともにより強度の高いHBRP成形体となる。
このようにして、加熱硬化と加圧が終了したら、HBRP成形体が冷えるのを待って型から外す(ステップS34)。ステップS22において型の内面に離型剤を塗布してあるので、HBRP成形体はスムーズに外れる。もう1つのHBRP成形体の製造方法としては、図9のフローチャートのステップS15とステップS17において、炭素繊維ロービングクロスと炭素繊維チョップドストランドマットの代わりに、炭素繊維とガラス繊維からなるハイブリッド繊維ロービングクロスを積層する方法がある。
図13のフローチャートによるHBRP成形体の製造方法においては、炭素繊維ロービングクロス・マットとガラスロービングクロス・マットの積層量を変化させることによって、成形体の強度と価格を制御することができる。もう1つのハイブリッド繊維ロービングクロスを積層する方法においては、予めハイブリッド繊維ロービングクロスの炭素繊維とガラス繊維の割合を変化させることによって、成形体の強度と価格を制御することができる。
なお、水門の扉体のスキンプレートのように、両面が太陽光に曝される可能性のあるHBRP成形体の場合には、両面にゲルコート膜を形成する必要がある。このような場合には、プレス機のプレス面(下面)にも離型剤を塗布してその上からゲルコートを塗布して第2の加熱手段としての電気ヒータで加熱して硬化させておく。そして、ステップS33の加熱・加圧工程においてプレス機の下面に形成されたゲルコート膜を積層体の表面に密着させて一体化させる。そして、HBRP成形体が冷えるのを待って型から外せば、プレス機の下面にも離型剤が塗布されているため、硬化したゲルコート膜はスムーズにプレス機の下面から離れて、両面にゲルコート膜が形成されたHBRP成形体を得ることができる。
なお、このように積層体の上面にもゲルコート膜を付着させる場合には、図13のフローチャートのように炭素繊維ロービングクロスの積層工程(ステップS31,S32)の直ぐ後に加熱・加圧工程(ステップS33)を行うのではなく、炭素繊維チョップドストランドマットの積層工程(ステップS27,S28)を1回以上挟んでから加熱・加圧工程(ステップS33)を行った方が、炭素繊維チョップドストランドマットとゲルコート膜の密着性が高いのでより好ましい。
このようにして製造した様々な形状・大きさのHBRP成形体を組み合わせることによって、多種多様なHBRP製品とすることができる。具体例として、図14及び図15に示されるフラップゲート60の扉体61の場合について説明する。
図14に示されるように、このフラップゲート60は自然開閉式水門の1種で、通常時には天井・床面及び両側面をコンクリートC1で覆われた暗渠から河川の方へ水が流れる。扉体61は軽く作られていてヒンジ62によって吊り下げられており、暗渠内を流れてくる水の圧力で自然に実線で示されるように開いて、暗渠内の水を河川へ排水する。一方、大雨が降ったりして河川の水かさが増し、河川から逆水方向に水が入り込もうとすると、その水圧によって想像線で示されるように扉体61が図示しない戸当りに密着して閉じ、扉体61の裏側の周囲に設けられている密閉用ゴム63によって河川の水が暗渠内へ入り込むのを防ぐ。そして、四方に取付けられたこの密閉用ゴム63もHBRP製ゴム押え板によって、扉体61に固定されている。
このように、このフラップゲート60は、扉体(ゲート本体)61がHBRP成形体で作られていて軽量であるため少量の水位で可動可能であり、通常時には実線で示されるように排水条件に優れており、非常時には想像線で示されるように逆水防止に優れている。同様に、自然開閉式水門であるスイングゲート(横開き)、マイターゲート(観音開き)の自然排水・自然止水を目的としたゲートも、扉体(ゲート本体)をHBRPまたはCFRPで製造することによって軽量となり、排水条件・逆水防止に優れた自然開閉式水門となる。
次に、このフラップゲート60及び扉体(ゲート本体)61の詳細な構造について、図15を参照して説明する。図15(a)に示されるように、フラップゲート60の扉体61は、暗渠の出口のコンクリート部分C1に取付けられた1対のヒンジ62によって吊り下げられている。このヒンジ62は、図15(b)に示されるように、それぞれコンクリートC1側に固定された1対の支持チャンネル62aと、この支持チャンネル62aに挟まれてピン62bで回動自在に止められる吊り下げ板62c、この吊り下げ板62cの下端を挟んでピン62dで回動自在に止められ、扉体61の上端に固定される固定治具62eによって構成されている。
扉体61は全て図13のフローチャートにしたがって製造されたHBRP成形体によって構成されており、1枚のスキンプレート65に、Cチャンネル形の3本の横桁66、同じくCチャンネル形の3本の縦桁67、各縦桁67を覆って取付けられる平板状の3枚のガセットプレート68、そして1対のスキンプレート補強治具69が複数のボルト・ナットで組み付けられて成り立っている。さらに、図15(b)に示されるように、スキンプレート65の外縁に沿って、密閉用のP形ゴム63がスキンプレート65の上縁・下縁・両側縁に隙間なく貼り付けられている。
一方、暗渠の出口のコンクリート部分C1側には、やはりHBRP成形体からなるLチャンネル形の戸当り64が4本、扉体61より一回り大きい正方形を形成してコンクリート部分C1に埋め込まれている。前述の如く、大雨等で河川の水位が上昇して河川の水が暗渠内へ逆流しそうになったときは、河川の微妙な水圧の変化によって軽くて可動性能に優れた扉体61が戸当り64に密着して、P形ゴム63によって密閉状態を形成し、逆流を防止する。ここで、河川の水位がさらに上昇して扉体61及び戸当り64にかかる水圧が高くなったときに戸当り64を支えるために、支持用鉄板T1が戸当り64のコーナーに当接してコンクリート部分C1内に埋め込まれている。
このようにして、本実施の形態5のフラップゲート60は、HBRP(ハイブリッド繊維強化プラスティック)成形体からなる扉体61及び戸当り64を用いたことによって、強度が高くなって軽量化できることから可動性能が向上し、排水条件及び逆水防止に優れた自然開閉式水門となる。また、HBRP成形体は強度の微妙な調節が可能であり、適切な製品価格のフラップゲート60とすることができる。
なお、フラップゲート60をCFRP(炭素繊維強化プラスティック)成形体からなる扉体61及び戸当り64から構成すれば、強度はさらに高くなってより一層の軽量化が可能になることから可動性能は一段と向上するが、コストが高くなる。そこで、必要な強度、可動性能と製品価格を考慮した上で扉体61及び戸当り64の材質を決定する必要がある。スイングゲート、マイターゲートについても同様であり、また実施の形態3のスライドゲート、実施の形態4のローラゲートについても同様である。
実施の形態6
次に、本発明の実施の形態6にかかるFRP成形体の成形方法について、図16乃至図18を参照して説明する。図16は本発明の実施の形態6にかかるGFRP(ガラス繊維強化プラスティック)成形体の成形方法を示すフローチャートである。図17は本発明の実施の形態6の第1変形例にかかるCFRP(炭素繊維強化プラスティック)成形体の成形方法を示すフローチャートである。図18は本発明の実施の形態6の第2変形例にかかるHBRP(ハイブリッド繊維強化プラスティック)成形体の成形方法を示すフローチャートである。
図16に示されるように、本実施の形態6にかかるGFRP(ガラス繊維強化プラスティック)成形体の成形方法は、ガラス繊維と熱硬化性樹脂の積層工程(ステップS47〜S50)の前と後にビニロン製ロービングクロスを1枚または2枚積層する点に特徴を有する。本発明にかかるGFRP成形体の成形方法は、加熱して硬化させるとともに圧力を掛けて所定の厚さにしているため、完成品の表面は充分に平滑で見た目も美しいが、場合によってはガラスロービングクロス等の跡が良く見ると僅かに浮き出て見える場合もある。そこで、より確実に平滑な仕上げ面を確保するために、かかる工程を実施する。
まず、ステップS41で製造するGFRP成形体(例えば、水門の扉体のスキンプレート)の型を組み立てる。このとき、型の下には型を加熱するための加熱手段(例えば、電気ヒータ)をセットしておく。次に、組み立てた型の内面に離型剤を塗布し(ステップS42)、さらに型の内側底面にゲルコートを塗布して(ステップS43)、電気ヒータで略25〜45℃の範囲に加熱してゲルコートを硬化させる(ステップS44)。このゲルコートはGFRP成形体が完成したときに、この面の見栄えを向上させるとともに太陽光中の紫外線を遮断してGFRP成形体の耐候性を向上させる役割をする。
次に、硬化したゲルコートの上からビニロン製ロービングクロスを型内に敷いて(ステップS45)、熱硬化性樹脂としての不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を流し込み、作業者が塗布ロールで表面をならして(ステップS46)、この手順を2回行うことによって、ビニロン製ロービングクロスが2枚積層される。
それから、通常のハンドレイアップ法の工程を実施する。即ち、ガラスチョップドストランドマットをビニロン製ロービングクロスの上に敷いて(ステップS47)、不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を塗布し、作業者が塗布ロールで表面をならして(ステップS48)、続いてガラスロービングクロスを積層体の上に敷いて(ステップS49)、不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を塗布し、作業者が塗布ロールで表面をならして(ステップS50)、この手順を約5分間で積層体が所定の高さになるまで繰り返し、約1時間20分で完了する。なお、ガラスチョップドストランドマットの積層工程(ステップS47,S48)も、ガラスロービングクロスの積層工程(ステップS49,S50)も、常温で行なわれる。
また、より強度が必要なGFRP成形体の場合には、ステップS50の後にステップS47へ戻らずに、図16に別の矢印で示されるようにステップS49へ戻って再度ガラスロービングクロスを積層体の上に敷いて不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を流し込んで作業者が塗布ロールで表面をならすという手順を繰り返す。即ち、ガラスチョップドストランドマットよりもガラスロービングクロスの方が強度が高いので、ステップS49,S50のガラスロービングクロスの積層工程のみを繰り返して、積層体が所定の高さになるまで約1時間20分で完了する。
そして、所定の高さになった成形体としての積層体の上に、再びビニロン製ロービングクロスを敷いて(ステップS51)、不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を流し込み、作業者が塗布ロールで表面をならして(ステップS52)、第2の加熱手段としての電気ヒータを備えた加圧手段としてのプレス機を置いて、この電気ヒータと型の下にセットした電気ヒータによって成形体としての積層体を約140℃に加熱しながらプレス機によって約0.7kgf/cm2で加圧する(ステップS53)。これによって、積層体の内部の空気が押し出されて密な構造となり、約140℃の高温で加熱されることによって短時間で樹脂が硬化するとともにより強度の高いGFRP成形体となる。
それと同時に、成形体の両面に積層されたビニロン製ロービングクロスを構成するビニロン製繊維は加圧によって押し潰されるため、ガラスロービングクロス等の跡が僅かに浮き出ることもなく、より意匠性に優れた平滑な仕上げ面を確実に得ることができ、商品価値も向上する。このようにして、加熱硬化と加圧が終了したら、GFRP成形体が冷えるのを待って型から外す(ステップS54)。ステップS42において型の内面に離型剤を塗布してあるので、GFRP成形体はスムーズに外れる。
なお、水門の扉体のスキンプレートのように、両面が太陽光に曝される可能性のあるGFRP成形体の場合には、両面にゲルコート膜を形成する必要がある。このような場合には、プレス機のプレス面(下面)にも離型剤を塗布してその上からゲルコートを塗布して第2の加熱手段としての電気ヒータで加熱して硬化させておく。そして、ステップS53の加熱・加圧工程においてプレス機の下面に形成されたゲルコート膜を積層体の表面に密着させて一体化させる。そして、GFRP成形体が冷えるのを待って型から外せば、プレス機の下面にも離型剤が塗布されているため、硬化したゲルコート膜はスムーズにプレス機の下面から離れて、両面にゲルコート膜が形成されたGFRP成形体を得ることができる。
次に、本実施の形態6の第1変形例にかかるCFRP(炭素繊維強化プラスティック)成形体の成形方法について、図17を参照して説明する。ステップS61〜S64までは図16のステップS41〜S44と全く同一なので、説明を省略する。続いて、硬化したゲルコートの上からビニロン製ロービングクロスを型内に敷いて(ステップS65)、熱硬化性樹脂としての不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を流し込み、作業者が塗布ロールで表面をならして(ステップS66)、この手順を2回行うことによって、ビニロン製ロービングクロスが2枚積層される。
それから、通常のハンドレイアップ法の工程を実施する。即ち、炭素繊維チョップドストランドマットをビニロン製ロービングクロスの上に敷いて(ステップS67)、不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を塗布し、作業者が塗布ロールで表面をならして(ステップS68)、続いて炭素繊維ロービングクロスを積層体の上に敷いて(ステップS69)、不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を塗布し、作業者が塗布ロールで表面をならして(ステップS70)、この手順を約5分間で積層体が所定の高さになるまで繰り返し、約1時間20分で完了する。なお、炭素繊維チョップドストランドマットの積層工程(ステップS67,S68)も、炭素繊維ロービングクロスの積層工程(ステップS69,S70)も、常温で行なわれる。
また、より強度が必要なCFRP成形体の場合には、ステップS70の後にステップS67へ戻らずに、図17に別の矢印で示されるようにステップS69へ戻って再度炭素繊維ロービングクロスを積層体の上に敷いて不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を流し込んで作業者が塗布ロールで表面をならすという手順を繰り返す。即ち、炭素繊維チョップドストランドマットよりも炭素繊維ロービングクロスの方が強度が高いので、ステップS69,S70のガラスロービングクロスの積層工程のみを繰り返して、積層体が所定の高さになるまで約1時間20分で完了する。
そして、所定の高さになった成形体としての積層体の上に、再びビニロン製ロービングクロスを敷いて(ステップS71)、不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を流し込み、作業者が塗布ロールで表面をならして(ステップS72)、第2の加熱手段としての電気ヒータを備えた加圧手段としてのプレス機を置いて、この電気ヒータと型の下にセットした電気ヒータによって成形体としての積層体を約140℃に加熱しながらプレス機によって約0.7kgf/cm2で加圧する(ステップS73)。これによって、積層体の内部の空気が押し出されて密な構造となり、約140℃の高温で加熱されることによって短時間で樹脂が硬化するとともにより強度の高いCFRP成形体となる。
それと同時に、成形体の両面に積層されたビニロン製ロービングクロスを構成するビニロン製繊維は加圧によって押し潰されるため、炭素繊維ロービングクロス等の跡が僅かに浮き出ることもなく、より意匠性に優れた平滑な仕上げ面を確実に得ることができ、商品価値も向上する。このようにして、加熱硬化と加圧が終了したら、CFRP成形体が冷えるのを待って型から外す(ステップS74)。ステップS62において型の内面に離型剤を塗布してあるので、CFRP成形体はスムーズに外れる。
なお、水門の扉体のスキンプレートのように、両面が太陽光に曝される可能性のあるCFRP成形体の場合には、両面にゲルコート膜を形成する必要がある。このような場合には、プレス機のプレス面(下面)にも離型剤を塗布してその上からゲルコートを塗布して第2の加熱手段としての電気ヒータで加熱して硬化させておく。そして、ステップS73の加熱・加圧工程においてプレス機の下面に形成されたゲルコート膜を積層体の表面に密着させて一体化させる。そして、CFRP成形体が冷えるのを待って型から外せば、プレス機の下面にも離型剤が塗布されているため、硬化したゲルコート膜はスムーズにプレス機の下面から離れて、両面にゲルコート膜が形成されたCFRP成形体を得ることができる。
次に、本実施の形態6の第2変形例にかかるHBRP(ハイブリッド繊維強化プラスティック)成形体の成形方法について、図18を参照して説明する。ステップS81〜S84までは図16のステップS41〜S44と全く同一なので、説明を省略する。続いて、硬化したゲルコートの上からビニロン製ロービングクロスを型内に敷いて(ステップS85)、熱硬化性樹脂としての不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を流し込み、作業者が塗布ロールで表面をならして(ステップS86)、この手順を2回行うことによって、ビニロン製ロービングクロスが2枚積層される。
それから、通常のHBRP成形体のハンドレイアップ法の工程を実施する。即ち、ガラスチョップドストランドマットをビニロン製ロービングクロスの上に敷いて(ステップS87)、不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を塗布し、作業者が塗布ロールで表面をならして(ステップS88)、続いて炭素繊維チョップドストランドマットを積層体の上に敷いて(ステップS89)、不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を塗布し、作業者が塗布ロールで表面をならし(ステップS90)、ガラスロービングクロスを敷いて(ステップS91)、不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を塗布し、作業者が塗布ロールで表面をならし(ステップS92)、炭素繊維ロービングクロスを敷いて(ステップS93)、不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を塗布し、作業者が塗布ロールで表面をならして(ステップS94)、この手順を約10分間で積層体が所定の高さになるまで繰り返し、約1時間で完了する。なお、これらの積層工程(ステップS87〜S94)も、常温で行なわれる。
また、より強度が必要なHBRP成形体の場合には、ステップS94の後にステップS87へ戻らずに、図18に別の矢印で示されるようにステップS91へ戻って再度ガラスロービングクロスを積層体の上に敷いて不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を流し込んで作業者が塗布ロールで表面をならし、炭素繊維ロービングクロスを積層体の上に敷いて不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を流し込んで作業者が塗布ロールで表面をならすという手順を繰り返す。即ち、繊維チョップドストランドマットよりも繊維ロービングクロスの方が強度が高いので、ステップS91,S92,S93,S94のガラスロービングクロス及び炭素繊維ロービングクロスの積層工程のみを繰り返して、積層体が所定の高さになるまで約1時間で完了する。
また、さらに強度が必要なHBRP成形体の場合には、ステップS94の後にステップS87へ戻らずに、図18に別の矢印から分岐した矢印で示されるようにステップS93へ戻って再度炭素繊維ロービングクロスを積層体の上に敷いて不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を流し込んで作業者が塗布ロールで表面をならすという手順を繰り返す。即ち、ガラスロービングクロスよりも炭素繊維ロービングクロスの方が強度が高いので、ステップS93,S94の炭素繊維ロービングクロスの積層工程のみを繰り返して、積層体が所定の高さになるまで約1時間で完了する。
そして、所定の高さになった成形体としての積層体の上に、再びビニロン製ロービングクロスを敷いて(ステップS95)、不飽和ポリエステル樹脂及び硬化剤・硬化促進剤を流し込み、作業者が塗布ロールで表面をならして(ステップS96)、第2の加熱手段としての電気ヒータを備えた加圧手段としてのプレス機を置いて、この電気ヒータと型の下にセットした電気ヒータによって成形体としての積層体を約140℃に加熱しながらプレス機によって約0.7kgf/cm2で加圧する(ステップS97)。これによって、積層体の内部の空気が押し出されて密な構造となり、約140℃の高温で加熱されることによって短時間で樹脂が硬化するとともにより強度の高いHBRP成形体となる。
それと同時に、成形体の両面に積層されたビニロン製ロービングクロスを構成するビニロン製繊維は加圧によって押し潰されるため、炭素繊維ロービングクロス等の跡が僅かに浮き出ることもなく、より意匠性に優れた平滑な仕上げ面を確実に得ることができ、商品価値も向上する。このようにして、加熱硬化と加圧が終了したら、HBRP成形体が冷えるのを待って型から外す(ステップS98)。ステップS82において型の内面に離型剤を塗布してあるので、HBRP成形体はスムーズに外れる。
なお、水門の扉体のスキンプレートのように、両面が太陽光に曝される可能性のあるHBRP成形体の場合には、両面にゲルコート膜を形成する必要がある。このような場合には、プレス機のプレス面(下面)にも離型剤を塗布してその上からゲルコートを塗布して第2の加熱手段としての電気ヒータで加熱して硬化させておく。そして、ステップS97の加熱・加圧工程においてプレス機の下面に形成されたゲルコート膜を積層体の表面に密着させて一体化させる。そして、HBRP成形体が冷えるのを待って型から外せば、プレス機の下面にも離型剤が塗布されているため、硬化したゲルコート膜はスムーズにプレス機の下面から離れて、両面にゲルコート膜が形成されたHBRP成形体を得ることができる。
以上説明した本実施の形態6にかかるFRP成形体の成形方法は、上記実施の形態1の水門の扉体及び水門の戸当りにも、実施の形態2の水門のFRP製扉体にも、実施の形態3の水門の扉体と戸当りにも、実施の形態4の水門の扉体と戸当り及び管理橋にも、実施の形態5のフラップゲートの扉体と戸当りにも適用することができる。
上記各実施の形態においては、加熱温度を約140℃、加圧力を約0.7kgf/cm2としたが、常温〜約140℃及び約0.01kgf/cm2 〜約1.6kgf/cm2の範囲内であれば良い。
また、実施の形態1と実施の形態5,6を除いた上記各実施の形態においては、FRP成形体としてCFRP(炭素繊維強化プラスティック)成形体を用いた製品の例について説明したが、強度的に問題がなければ(強度を上げるために厚さを増しても良い)、CFRP成形体の代わりにHBRP(ハイブリッド繊維強化プラスティック)成形体またはGFRP(ガラス繊維強化プラスティック)を製品の一部または全体に用いても良い。これによって、より低コスト化を図ることができる。
さらに、上記各実施の形態においては、熱硬化性樹脂として不飽和ポリエステル樹脂を用いた例について説明しているが、その他にもエポキシ樹脂、ポリビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂を始めとして種々の熱硬化性樹脂を用いることができる。
また、上記各実施の形態においては、繊維としてガラスロービングクロスを用いた例について説明したが、ガラスチョップドストランドマット、ガラスロービング等を共に、或いは代わりに用いることもでき、またガラス繊維に限られず、炭素繊維や、ガラス繊維と炭素繊維を交互に用いたり、ガラス繊維と炭素繊維を混合して用いたりしても良い。
本発明を実施するに際しては、水門の扉体のFRP製スキンプレート、FRP製桁材、FRP製ガセットプレート、FRP製ゴム押え板、FRP製水位調節用角落し板、FRP製扉体、水門のFRP製戸当りのその他の部分の構成、形状、数量、材質、大きさ、接続関係等についても、上記各実施の形態に限定されるものではない。