JP3836402B2 - 繊維成形マット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維を主体として構成され、所望の形状を保持するように成形できる繊維成形マットに関し、特に、自動車の乗員室、荷室等を構成するパネルに沿う形状に成形して敷設するのに適した繊維成形マットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車の乗員室、荷室等を構成するパネルに対して、繊維を主体として構成された繊維成形マットを内装材として敷設することが知られている。内装材は、パネルを被覆して、意匠性を高める、触感をソフトにする、音波や熱の伝達を軽減するといった作用を果たす。これらの作用を果たすためには、内装材として、繊維を主体として構成されたマットを用いるのが有利である。また、特に自動車の乗員室、荷室を構成するパネルは、その大半が平坦ではないために、そこに敷設される内装材は、予め、敷設位置のパネルに合った形状に成形することが好ましい。
【0003】
従来の繊維成形マットは、繊維マットの裏面に熱可塑性樹脂の裏打ちを施したり、エマルジョンを含浸させたりすることによって、成形性を付与されている。すなわち、これら熱可塑性樹脂やエマルジョンが加熱した際に可塑化する性質を有していることから、これらを付与した繊維成形マットでは、予備加熱して熱可塑性樹脂やエマルジョンを可塑化させた後、対の成形型間に配してプレス成形することによって、所望の成形形状を得ることが可能である。
【0004】
また、自動車の内装材としての繊維成形マットには、意匠性、成形性、クッション性、吸音性など複数の機能を果たすことが要求される。これらの機能を同時に果たすようにするために、繊維成形マットとしては、複数の層からなり、各層が各機能を分担して果たすようにしたものが提案されている。
【0005】
このような複層化された繊維成形マットの一例が、実公平1―41631号公報(実願昭55―87995号)に開示されている。この公報に記載された繊維成形マットの模式的断面図を図4に示す。この繊維成形マットは、「上に織物、不織布等の布帛1、中間層に絡み繊維2、下層に雑綿3が積層され、前記布帛1、絡み繊維2および雑綿3はニードルパンチ加工により絡み繊維2を交叉してフェルト状ウェブ5が形成され、前記雑綿3の下部には熱可塑性合成樹脂エマルジョンを含浸させた含浸層4が形成され、該含浸層4が形成されたフェルト状ウェブ5を予熱後、金型にて所望形状に成形されたことを特徴とする車両用内装材」である。
【0006】
この例の繊維成形マットでは、車内側に配置される、上の布帛1により高い意匠性が付与され、中間層の絡み繊維3によって優れたクッション性が付与されている。そして、下層の雑綿3に熱可塑性合成樹脂エマルジョンを含浸させて積層された含浸層4によって成形性が付与され、金型を用いた熱プレス成形によって、比較的低温で成形を行うことができる。また、布帛1と絡み繊維3によってある程度の通気性が確保され、優れた吸音効果を得ることができる。この際、最上層に樹脂材などを配した内装材におけるように、通気性を確保するために穿孔を施す必要もない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述の実公平1―41631号公報にも記載されているように、内装材の吸音性を高めるためには、内装材に十分な通気性があることが好ましい。本発明者らの研究によれば、近年求められている程度の十分な吸音性を得るためには、通気性の程度を示す数値である通気抵抗値が1000Nsm-3未満であるのが好ましいことが分かっている。
【0008】
一方、前述の公報には、車両用内装材の通気性を確保できることが記載されているものの、通気性の程度に関しては詳細には記載されていない。本発明者らが試作、評価した結果、繊維を主体とする繊維マットであっても、上述の公報に記載されているように、エマルジョンを含浸させた場合、通気性がある程度低下し、吸音性が低下してしまうのは避けられない。これは、エマルジョンを含浸させる代わりに、これに類する熱可塑性樹脂を裏打ちした場合にも同様である。
【0009】
繊維成形マットを、大きな曲率の湾曲部を有する自動車パネルに沿った形状にするためには、深い絞り成形を行い、しかもその形状を維持させるためには、プレス成形を強い押圧下で行う必要がある。この際の押圧によって、熱可塑性樹脂やエマルジョンを用いた繊維成形マットでは、可塑化した熱可塑性樹脂やエマルジョンが押し潰されて、繊維組織の多くの通気目を塞いでしまう。このため、本発明者らの評価では、実用的な成形性を与えることができるようにエマルジョンの含浸や熱可塑性樹脂の裏打ちを行った場合には、通気抵抗値を1000Nsm-3未満にするのは困難であることが分かった。
【0010】
本発明は、上記のような従来技術に対して、繊維成形マットの吸音性をさらに向上させることを目的として成されたものである。すなわち、本発明の目的は、深い絞り成形を行っても、高い通気性を維持することができ、したがって、十分な通気性を維持したまま、自動車の室内パネルのような、大きく屈曲した部分を有するパネルに沿った形状に成形することができる、特に自動車の内装材として用いるのに適している繊維成形マットを提供することにある。
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明の繊維成形マットは、それぞれ異なる組成の繊維からなる意匠層と保形層と吸音層を積層して構成されたトランクルームトリムとしての繊維成形マットであって、意匠層は、意匠性を高めるための意匠性繊維から構成され、吸音層は、繊維から構成され、嵩高性を有しており、保形層は、意匠性繊維および吸音層の母材繊維の融点より融点が低い繊維を主成分として構成されており、該繊維は部分的に溶融された後固化されて該繊維間に空隙を有して通気性を有していることを特徴とする。
【0012】
このように、本発明の繊維成形マットは、全体が実質的に繊維のみで構成されており、このうちの、意匠性繊維および吸音層の母材繊維の融点より融点が低い前記繊維によって成形性を確保し、すなわち所望の形状に変形させて、その形状を保つことができるように構成されている。すなわち、繊維成形マットを、保形層を構成する、意匠性繊維および吸音層の母材繊維の融点より融点が低い前記繊維が部分的に溶融する温度まで予加熱した後、例えばプレス成形して所望の形状に成形すると、一旦軟化し、変形させられた、意匠性繊維および吸音層の母材繊維の融点より融点が低い前記繊維がその形状で固まり、それによって繊維成形マット全体が所望の形状に安定して保たれるようにすることができる。
【0013】
この際、保形層を含む全体が実質的に繊維のみから構成されていることによって、従来の含浸樹脂やエマルジョンによって成形性を付与した場合に比べて、成形後も繊維成形マットの通気性が大きく低下しないようにできる。すなわち、意匠性繊維および吸音層の母材繊維の融点より融点が低い前記繊維間には、成形後もある程度の空隙を残すことができ、それによってある程度の通気性を保たせることができる。また、意匠性繊維および吸音層の母材繊維の融点より融点が低い前記繊維が部分的に溶融する温度まで繊維成形マットを加熱しても、意匠性繊維、吸音層の母材繊維には、溶融するなどの影響はほとんど生じないようにでき、それぞれの意匠性を高める機能とクッション性や通気性を高め、したがって吸音性を高める機能を損なうことはない。
【0014】
本発明の繊維成形マットでは、保形層に、意匠性繊維および吸音層の母材繊維の融点より融点が低い前記繊維として、低融点繊維と、融点が低融点繊維の融点より高い中融点繊維を含ませることが好ましい。このようにすることによって、成形後の繊維成形マットに、多少の熱が加わっても、その形状を良好に保たせることができ、すなわち良好な耐熱形状保持性を付与することができる。
【0015】
また、吸音層に、融点が保形層の低融点繊維の融点と同程度であるかまたはより高い低融点繊維をいくらか含ませることによって、成形時に、吸音層にも形状を保つ作用をいくらか果たさせることができる。
【0016】
このように、本発明の繊維成形マットは、低融点繊維および中融点繊維が少なくとも部分的に溶融され、それによって所定の形状に成形されている。この繊維成形マットには、一般成形部に対してより薄く押し潰された強成形部を部分的に設けることが好ましい。このように薄く押し潰すことによって、強成形部は比較的高い剛性を有するようにすることができる。そこで、繊維成形マットの所定の形状において比較的大きく屈曲する部分にこの強成形部を設けることによって、繊維成形マット全体の形状保持性を効果的に高めることができる。また、繊維成形マットの縁部などの外力が加わりやすい部分に強成形部を設けることによって、繊維成形マットの耐久性を高めることができる。
【0017】
強成形部は、例えば、プレス成形において、成形型間のクリアランスを一般成形部におけるよりも小さくして、強(圧縮)成形することによって形成できる。この際、前述のように、吸音層に低融点繊維を含ませておけば、より効果的に強成形部の剛性を高めることができ、好ましい。また、強成形部は、十分な形状安定性を確保できるように、一般成形部に対して50%以上薄く押し潰すことが好ましい。
【0018】
一方、一般成形部を残しておくのは、十分な通気性を確保することができ、好ましい。十分な通気性が得られるように、一般成形部の厚みは3mm以上、好ましくは5mm以上とするのが適している。また、一般成形部の面積比は全体の50%以上、好ましくは80%以上とするのが適している。そして、一般成形部の総通気抵抗値は、特に、1000Nsm-3未満にすることが好ましく、これによって、前述のように、自動車の内装材として要求される十分な吸音性を得ることができる。
【0019】
本発明の繊維成形マットは、このように、比較的大きな曲率を有する形状にも良好に成形でき、成形後も、通気性、吸音性、クッション性、意匠性などを高く保つことができる。したがって、本発明の成形マットは、特に、これらの諸機能が要求される、自動車の車内の壁や床に沿って敷設される内装材として用いるのに適している。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1に、本実施形態の繊維成形マット10の模式的断面図を示す。この繊維成形マットは、図2に模式的に示すように、乗用自動車20のトランクルームに、トランクルームトリムとして成形されて配設されている。図1の模式図は、図2のA−A線に沿って切断した断面図である。
【0022】
この繊維成形マット10は、乗用自動車20のトランクルームを構成するパネル側に配置された、繊維から形成され、嵩高性を高める働きをする、すなわち繊維間に比較的多くの空隙を生じた状態で安定するように構成された吸音層10cを有している。吸音層10c上には、主として、繊維成形マット10を構成する他の構成繊維の融点に比べて融点が低い低融点繊維から形成された保形層10bが積層されている。さらに、保形層10b上には、意匠性を高める働きをする意匠性繊維を絡めて形成した意匠層10aが積層されており、この意匠層10aは乗用自動車20のトランクルームの内面に面している。
【0023】
この繊維成形マット10は、乗用自動車20のトランクルームを構成するパネルに沿う形状に成形されている。この成形によって、繊維成形マット10には、一般成形部12に比べて薄く、すなわち強く押し潰された強成形部11が部分的に形成されている。強成形部11は、トランクルームの内装材として強度が必要とされる縁部や取付孔部の周囲、およびタイヤ沿い等の、比較的大きく屈曲する部分に、線状または周状に設けられている。一方、一般成形部12は、上述の部分以外の、ほぼ平坦な部分や緩やかに湾曲した部分に設けられている。
【0024】
以下、意匠層10a、保形層10b、吸音層10cの構成と、繊維成形マット10の成形方法について、より詳細に説明する。
【0025】
(意匠層)
意匠層10aには、ニードルパンチ不織布が適している。繊維の種類としては、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アセテート等の樹脂を比較的高い融点を有するように組成して形成した繊維を用いる。意匠層10aは、前述のように自動車の室内側に配置されるものであり、その構成繊維としては、特に、染色された繊維や、捲縮加工を施した繊維などの、高い意匠性を有する繊維を用いるのが好ましく、それによって繊維成形マット10の見栄えを向上させることができる。繊維径は2〜30デシテックス、好ましくは3〜15デシテックス、繊維長は30〜80mm、好ましくは38〜76mmであるのが適している。
【0026】
意匠層10aとなるニードルパンチ不織布は、単位面積当たりの重量が50〜500g/m2、好ましくは80〜400g/m2のウェブに対して、ニードルパンチ機を用いてニードリング加工を施し、厚さ1〜15mm、好ましくは2〜10mmに形成するのが適している。また、構成繊維の一部を特殊なニードルで表面に突き出して、起毛加工を加えることも、意匠性を高めることができ、好ましい。
【0027】
(保形層)
保形層10bは、主として低融点繊維から形成する。さらに、融点が低融点繊維の融点に比べて少し高く、他の構成繊維の融点に比べて低い中融点繊維を分散させることが好ましい。低融点繊維と中融点繊維の比率は、重量比率で20:80〜80:20の範囲とすることが好ましいが、保形層10bには、低融点繊維のみ、すなわち1種類の繊維のみを用いてもよい。保形層10bは、これら繊維を絡合したニードルパンチ不織布として形成するのが適している。保形層10bの単位面積当たりの重量は10〜1000g/m2、好ましくは50〜300g/m2とするのが適している。
【0028】
低融点繊維や中融点繊維としては、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン等を組成し、変性して融点を調整した熱可塑性樹脂からなる繊維が適している。低融点繊維の融点は90〜150℃とするのが適している。中融点繊維の融点は、低融点繊維の融点に対して50〜100℃高くするのが適しており、150〜200℃とするのが適している。低融点繊維、中融点繊維の繊維径は2〜30デシテックス、好ましくは3〜15デシテックス、繊維長は30〜80mm、好ましくは38〜76mmとするのが適している。
【0029】
低融点繊維や中融点繊維としては、繊維全体が均質の繊維を用いてもよいが、芯繊維の周囲を低融点成分または中融点成分で鞘状に囲んで形成した芯鞘構造の繊維を用いることも可能である。このような芯鞘構造の繊維を用いるのは、本実施形態の繊維成形マットを加熱、成形する際に形状保持性を高め、また収縮を抑える上で有利である。
【0030】
(吸音層)
吸音層10cは、嵩高性を有するように加工された繊維を母材として構成されている。吸音層10cには、さらに、融点が保形層10bの低融点繊維と同様であるかまたはより高い低融点繊維を少ない比率で分散させるのが適している。吸音層10cの単位面積当たりの重量は100〜2000g/m2、好ましくは500〜1500g/m2とし、未成形の状態で厚さが3mm以上になるようにするのが適している。
【0031】
吸音層10cの母材繊維としては、具体的には、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等を用いることができ、高捲縮加工や中空処理を施すことによって嵩高性を高めたものが適している。また、ニードリングによって母材繊維の嵩高性を高めてもよい。低融点繊維としては、変性ポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン等を組成、変性して融点を調整した熱可塑性樹脂からなる繊維を用いるのが適している。低融点繊維と母材繊維の比率は、重量比率で10:90〜90:10、特には30:70〜70:30の範囲とすることが好ましい。
【0032】
(成形)
上記の意匠層10a、保形層10b、吸音層10cを積層してマットを形成する。各層の間は、僅かなニードリングで各層の繊維を絡めるか、ホットメルトで貼着して結合する。この際、各層の間に通気性を阻害する性質の層が形成されないようにする。
【0033】
次に、積層形成されたマットを自動車のパネルに沿う形状等の、所望の形状に成形する手順を以下に示す。
【0034】
まず、マットを予備加熱して、マットに含まれる低融点繊維あるいは中融点繊維の融点以上で母材繊維の融点に近い温度まで昇温する。この温度まで加熱することによって、マットの構成繊維のうち、低融点繊維あるいは中融点繊維はほぼ溶融した状態となる。一方、他の繊維は実質的に加熱前の状態に保たれる。
【0035】
予備加熱したマットを、型面が所望の成形形状を有するように作製された、対のプレス成形型間に配してプレス成形する。これによって、溶融状態にある低融点繊維と中融点繊維が潰されながら、所定の形状に成形される。すなわち、溶融状態にある低融点繊維と中融点繊維は、溶融していない繊維間を橋渡しするように、その間に溶け広がる。低融点繊維と中融点繊維は、成形後にマットの温度が下がった時には再固化して繊維間をつなぐ働きをし、それによってマットに形状保持性を付与する。この際、低融点繊維間にはある程度の空隙が残され、したがってある程度の通気性を維持できる。また、吸音層10cでは、成形型間のクリアランスに応じて、所望の嵩高性が維持され、それによって、繊維成形マットには、成形後にも高い通気性が、したがって高い吸音性が維持される。
【0036】
中融点繊維を設けた場合、それによって、成形後の繊維成形マットの耐熱性、耐熱形状保持性を向上させることができる。すなわち、繊維成形マットは、多少加熱されても、中融点繊維が繊維間をつないでいるため、その形状を良好に保つことができる。また中融点繊維を設けた場合、成形後に層の厚みがいくらか復元する性質が見られ、保形層10bにより良好にある程度の厚さを確保することもできる。
【0037】
成形の際には、成形形状において多くの面積比率を占める一般成形部12よりも薄い厚さに強く潰し成形された強成形部11を形成する。強成形部11は、成形型間のクリアランスを一般成形部12の部分に比べて小さくした部分を設けておくことによって形成することができる。
【0038】
強成形部11では、このように低融点繊維を強く潰すことによって、曲げ剛性を高めることができる。したがって、このような強成形部11を、前述のように、繊維成形マット10の、大きく屈曲する部分に設けることによって、繊維成形マット10全体の形状が安定して保たれるようにすることができる。このような作用を生じさせるため、強成形部11は、一般成形部に対して50%以上薄く押し潰すことが好ましい。それによって、強成形部11では、一般成形部12に対して200〜400%程度に剛性を高めることができる。
【0039】
このように強成形部11に一定の剛性を与えることができるようにするために、前述のように吸音層10cにも低融点繊維を多少分散させておくのが好ましい。また、強成形部11を、前述のように、縁部などに設けることによって、繊維成形マット10の耐久性を高めることができる。
【0040】
これに対して一般成形部12は、自動車のパネルの、あまり大きくは屈曲していない部分に沿う形状になるようにある程度成形されるものの、強成形部11におけるほど強くは押し潰されない。このため、一般成形部12では、厚さ方向にいくらかの復元性が維持され、すなわち一般成形部12の部分を構成する繊維は、繊維間に比較的大きな空隙を生じた状態で安定する。一般成形部12は、特に、力が加わっていない状態で厚さが3mm以上、好ましくは5mm以上になるようにするのが適している。このように復元性が維持されるようにすることによって、一般成形部12では総通気抵抗値を1000Nsm-3未満に維持し、高い吸音性を確保することができる。
【0041】
この際、前述のように、保形層10aに中融点繊維を分散させておくことは、このように、特に一般成形部12において、厚さ方向に一定の復元性が生じるようにし、それによって通気抵抗値を低く保ち、高い吸音性を確保する上でも好ましい。また、繊維成形マット10全体としてこのような高い通気性と吸音性を確保するために、一般成形部12は、繊維成形マット10全体の多くの部分、具体的には50%以上、好ましくは80%以上の面積比率を占めるようにするのが適している。
【0042】
以上説明したように、本実施形態による繊維成形マット10では、意匠層10aによって高い意匠性を確保し、主として保形層10bによって成形性を確保し、すなわち安定して所望の形状に保たれるようにできる。この際、保形層10bは低融点繊維から構成されており、成形によってある程度押し潰されるものの、繊維間にはある程度の空隙が確保され、したがって比較的高い通気性を確保することができる。さらに吸音層10cを設けることによって、繊維成形マット10全体として、高い通気性、したがって高い吸音性を確保することができ、またクッション性も確保することができる。
【0043】
【実施例】
次に、本発明に沿って、一般的な自動車のトランクルームトリム形状に成形した繊維成形マットを作製した実施例について説明する。本実施例の繊維成形マットの作製条件を以下に示す。
【0044】
(意匠層)
単位面積重量…150g/m2、構成繊維…ポリエステル繊維(繊維径3.3デシテックス、繊維長51mm)
(保形層)
単位面積重量…200g/m2、構成繊維…低融点ポリエステル繊維(繊維径4.4デシテックス、繊維長51mm)、中融点ポリエステル繊維(繊維径4.4デシテックス、繊維長51mm)、繊維比率…低融点繊維:中融点繊維=100:100
(吸音層)
単位面積重量…750g/m2、構成繊維…ポリプロピレン繊維(繊維径7.7デシテックス、繊維長64mm)、ポリエステル繊維(繊維径6.6デシテックス、繊維長64mm)、繊維比率…ポリプロピレン繊維:ポリエステル繊維=40:60
(成形条件)
加熱温度…200℃、プレス成形型プレス時間…40秒、一般成形部厚み…6mm、強成形部厚み…2mm
(比較例)
比較例として、従来、自動車のトランクルームトリムに最も一般的に用いられている、以下の構成の繊維成形マットを実施例と同形状に成形して作製した。
【0045】
(マット素材、構成)
ポリエステル繊維(繊維径9〜11デシテックス、繊維長64〜76mm)をニードリングして作製した、単位面積重量600g/m2のニードルパンチ不織布に対して、片面側から、SBR系の熱可塑性樹脂エマルジョンを単位面積重量500g/m2だけ塗布し、含浸させて樹脂含浸タイプの繊維成形マットを形成した。
【0046】
(成形条件)
加熱温度…200℃、プレス成形型プレス時間…40秒、成形厚み…2.5mm
(測定、評価)
実施例および比較例により作製した繊維成形マットについて、比較的平坦に成形された部位(したがって、実施例の構成では一般成形部)から試験片を切り出し、以下の試験に供して曲げ剛性と吸音性を測定、評価した。
【0047】
曲げ剛性…試験片をスパン100mmだけ離れた2点で支持し、支持点の間の位置で速度50mm/minで押圧を行い、発生する荷重を測定して、曲げ剛性の指標となる曲げ荷重を得た。結果を図3に示す。
【0048】
吸音性…垂直入射吸音率を2―マイクロホーン法により測定した。これによって得られた、実施例と比較例それぞれについての、各周波数の音波の吸音率を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
(評価結果)
図3から、実施例の繊維成形マットは、一般成形部でも比較例の数倍の最大曲げ荷重を得られることが分かる。すなわち、実施例の繊維成形マットは、従来の繊維成形マットに比して、形状安定性に優れていることが分かる。また、強成形部ではさらに高い曲げ剛性を得ることができる。
【0051】
表1から、実施例の繊維成形マットは、広範囲の周波数域の音波について、一般成形部においても、強成形部においても、比較例に対して高い吸音特性を示すことが分かる。実施例の繊維成形マットでは、特に、高周波数域になるほど比較例に比べて顕著に高い吸音性が得られた。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、自動車の室内パネルのような、大きく屈曲した部分を有するパネルに沿った形状に成形できる繊維成形マットを提供できる。しかも本発明の繊維成形マットは、実質的に繊維のみから構成され、成形性を低融点繊維によって得ており、プレス成形を行った後でも高い通気性を維持することができ、同時に高い吸音性を確保することができる。したがって、本発明の繊維成形マットは、自動車内装材として好適に用いることが可能である。
【0053】
また、本発明の繊維成形マットは、単体で高い吸音性能を発現する構成となることから、自動車のトランクルームを構成するパネルにトランクルーム内装材として施設した場合、従来のトランクルーム内装材(前述の実公平1−41631号公報など参照)を敷設する場合には、パネルとの間に配設することを必要としていた吸音材(フェルトなど)を設ける必要がない。このため、本発明の繊維成形マットには、それを用いることによって構成部品数を少なくして軽量化を図ることができ、また、工程数を減らすことができるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の繊維成形マットの模式的断面図である。
【図2】図1の繊維成形マットをトランクルームトリムとして取り付けた乗用自動車の模式図である。
【図3】剛性の測定結果を示す図である。
【図4】従来の成形マットの模式的断面図である。
【符号の説明】
1 布帛
2 絡み繊維
3 雑綿
4 含浸層
5 フェルト状ウェブ
10 繊維成形マット
10a 意匠層
10b 保形層
10c 吸音層
11 強成形部
12 一般成形部
Claims (10)
- それぞれ異なる組成の繊維からなる意匠層と保形層と吸音層を積層して構成されたトランクルームトリムとしての繊維成形マットであって、
前記意匠層は、意匠性を高めるための意匠性繊維から構成され、前記吸音層は、繊維から構成され、嵩高性を有しており、前記保形層は、前記意匠性繊維、および前記吸音層を構成する繊維のうち主体となる母材繊維の融点より融点が低い繊維を主成分として構成されており、該繊維は部分的に溶融された後固化して該繊維間に空隙を有して通気性を有している繊維成形マット。 - 前記保形層は、前記意匠性繊維、および前記吸音層を構成する繊維のうち主体となる母材繊維の融点より融点が低い前記繊維として、低融点繊維と、融点が該低融点繊維の融点より高い中融点繊維を含んでいる、請求項1に記載の繊維成形マット。
- 前記吸音層は、融点が、前記保形層を構成する低融点繊維の融点と同様であるかまたはより高い融点の低融点繊維を含んでいる、請求項2に記載の繊維成形マット。
- 前記意匠性繊維、および前記吸音層を構成する繊維のうち主体となる母材繊維の融点より融点が低い前記繊維が部分的に溶融され、それによって所定の形状に成形されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の繊維成形マット。
- 一般成形部に対してより薄く押し潰された強成形部が、繊維成形マットが屈曲している部分に形成されている、請求項4に記載の繊維成形マット。
- 前記強成形部の厚さは前記一般成形部の50%以下である、請求項5に記載の繊維成形マット。
- 前記一般成形部の厚さが3mm以上である、請求項5または6に記載の繊維成形マット。
- 前記一般成形部の面積比率が全体の50%以上である、請求項5から7のいずれか1項に記載の繊維成形マット。
- 前記一般成形部における総通気抵抗値が1000Nsm-3未満である、請求項5から8のいずれか1項に記載の繊維成形マット。
- 自動車の車内の壁や床に沿って敷設されている、請求項1から9のいずれか1項に記載の繊維成形マット。
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