JP3835915B2 - 銅基焼結軸受材料およびその製造方法 - Google Patents
銅基焼結軸受材料およびその製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、船舶、一般産業機械などに好適に用いられる銅基軸受材料およびその製造方法に係り、特に、トラック用リーフスプリングブッシュや射出成形機用タイバーブッシュなどのように、過酷な条件で使用される軸受用の銅基軸受材料およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記のような用途に用いるブッシュとしては、従来、鋼製焼入ブッシュ、砲金製ブッシュなどが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の鋼製焼入れブッシュや砲金製ブッシュは、安価で強度が高いという利点を有する反面、摩擦係数が高く、耐焼付性、耐摩耗性が問題となり、これらの欠点を解決するべく相手軸との摺動部に強制的に潤滑油を供給する強制給油を行って用いているのが実情である。ところで、近年、環境改善や大幅なコストダウンを目的として、上記用途に使用されるブッシュにおいては、無給油ないし含油軸受の使用が望まれている。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、摺動特性(低摩擦抵抗)および耐凝着性に優れ、過酷な使用条件においても使用可能な銅基焼結軸受材料とその製造方法を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、耐摩耗性と耐凝着性が良好なCu−10Zn−7.5Sn系焼結合金に着目し、この合金のマトリックスを強化するためにAlを5重量%程度添加したところ、強度の高いCu−Zn−Alのα固溶体に、非常に硬質なSn−Al合金相が網目状に析出し、パーライトのような組織を呈することを見い出した。本来、Snは、Cu,Znとともにα固溶体を構成する元素であるが、Alの存在によってその一部がα固溶体から抽出され、Alと結合して析出したものと考えられる。ただし、これはあくまでも推定であって、かかる作用の有無により本発明が限定されないことは言うまでもない。また、上記したAlの添加量やSn−Al合金相の組織の形態もあくまでも一例である。そして、本発明者等は、さらにマトリックス中に自己潤滑性に優れた黒鉛を分散させることによって、マトリックスの強化と相まって摺動特性および耐摩耗性が大幅に向上することを見い出した。
【0005】
本発明は、上記した知見に基づいてなされたもので、鋼製裏金の表面に、重量比でZn:10〜30%、Sn:3〜10%、Al:2〜20%、黒鉛:3〜10%、残部Cuおよび不可避不純物からなる焼結合金を一体的に設けたことを特徴としている。以下、上記数値限定の根拠について説明する。ただし、以下の説明において「%」は全て「重量%」を言うものとする。
【0006】
Zn:10〜30%
ZnはCuと固溶体を形成してマトリックスを強化し、合金の耐摩耗性を向上させるとともに、劣化油に対する耐食性を向上させる。Znの含有量は、10%未満であるとそのような効果が不充分となり、30%を超えて含有すると合金が脆化する。
Sn:3〜10%
SnはZnとともにCuと固溶体を形成してマトリックスを強化し、合金の耐摩耗性を向上させる。Snの含有量は、3%未満であるとそのような効果が不充分となり、10%を超えて含有すると合金が脆化する。
【0007】
Al:2〜20%
AlはZnと同じ添加効果を発揮し、しかもZnよりも少量で効果が生じる(すなわち、亜鉛当量が大きい)。一方、Znの含有量を増やすとβ相の析出により材料が脆化するが、Alを添加することでZnの含有量を少なくして脆化を抑制することができる。また、Alの一部はCu−Znマトリックス中に固溶してCu−Zn−Al固溶体を形成し、一部は前述のようにSnと結合して非常に硬質なSn−Al合金相として析出する。Alの含有量が少ない場合には、Sn−Al合金相は網目状であるが、Alの含有量が増えるにしたがってSn−Al合金相の占める割合が増加して塊状となる。つまり、Alの含有量が増加するにしたがって、マトリックスの硬度が高くなり、耐摩耗性が向上する。Alの含有量は、2%未満では上記したような効果が充分ではなく、20%を超えて含有すると合金が脆化する。また、後述するように、裏金に焼結合金を設けて曲げ加工等を行うような場合には、加工性を向上させるためにAlの含有量は10%以下であることが望ましく、5%以下であればさらに好適である。
【0008】
黒鉛:3〜10%
黒鉛は、マトリックス中に機械的に分散し、固体潤滑剤として作用する。さらに、黒鉛は油との親和性に富み、境界潤滑領域下においてその効果を発揮する。黒鉛の含有量は、3%未満であると潤滑効果が充分ではなく、10%を超えて含有するとマトリックスの強度が低下する。
【0009】
次に、本発明の銅基焼結軸受材料を製造するには、鋼製裏金または表面に銅メッキを有する鋼製裏金の表面に、混合粉末を散布し、これら全体を焼結して焼結合金に圧延加工を施す。以下、本発明のより好適な実施の形態について説明する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の銅基焼結軸受材料には、以下の潤滑成分を含有させるとさらに耐凝着性および摺動特性(低摩擦抵抗)を向上させることができる。
Pb:2〜5%
PbはCuにほとんど固溶せず、マトリックス中に軟質金属として分散し、耐凝着性の向上に寄与する。Pbの含有量は、2%未満であるとそのような効果が不充分となり、5%を超えて含有すると材料の硬さが低下する。
【0011】
また、MoS2、WS2、BNのいずれか1種または2種以上を合計で3〜7%含有させることによって摺動特性をさらに向上させることができる。特に、MoS2はマトリックス中に分散し、潤滑油と相乗的に働いて摺動特性を向上させるので好適である。ただし、上記潤滑成分の含有量が7%を上回ると材料の強度が低下する。
【0012】
【実施例】
以下、本発明を具体的な実施例によりより詳細に説明する。
黄銅系原料粉末または青銅系粉末を混合し、混合粉末を金型内に充填して4ton/cm2の圧力で一辺が30mm、厚さ5mmの方形の圧粉体を形成した。次に、圧粉体を還元雰囲気中にて780〜800℃で30〜40分間焼結し、これに含油処理を施して複数種類の比較例の試料No.1,2と、参考例の試料No.6〜23を作製した。また、比較例の試料No.3、本発明例の試料No.4,No.5は、後述するように裏金の上に原料粉末を散布して焼結し、圧延加工を施したクラッド材であり、これを焼結バイメタル、他の焼結体のみからなる試料を焼結ソリッドと称して区別する。なお、参考例6〜23は、成分が本発明の範囲内である焼結ソリッドである。これら試料の成分を表1に示す。また、各試料の焼結後の密度、硬さ、および含油率(焼結バイメタルNo.3を除く)を表2に示す。
【0013】
【表1】
【0014】
【表2】
【0015】
表2から判るように、含油率は本発明例は比較例と同等以上であるため、含油軸受としての機能を備えている。一方、硬さは、比較例と較べて本発明例の方が総じて高く、マトリックスがSn−Al合金相により強化されていることが判る。そして、この硬さの上昇により、本発明例では、以下に示すように耐摩耗性が著しく向上される。
【0016】
上記焼結ソリッドのうちNo.1,No.7,No.9,No.11,No.22および焼結バイメタルNo.3,No.4を用いてスラスト摩擦試験を実施した。図1は、スラスト摩擦試験の概略を示すもので、焼結ソリッドまたは焼結バイメタルに円筒状の相手試験片を押圧し、相手試験片を回転させて試料の摩耗量(深さ)を測定するようになっている。本実施例では、相手試験片としてSUS304材を用い、試験の開始前にリチウム系グリースを相手試験片表面に僅かに塗布して、加圧力50kgf/cm2、摩擦速度4m/minの条件で20時間行った。
【0017】
図2に各試料の摩耗量を示す。比較例の焼結ソリッドNo.1と焼結バイメタルNo.3では、摩耗量がそれぞれ0.058mmと0.033mmであるのに対し、本発明の焼結バイメタルNo.4では0.013mmであり、摩耗が極めて少ないことが判る。
以上のように、本発明では摺動特性および耐摩耗性が著しく改善され、焼付き等が発生する心配は皆無であることが確認された。
【0018】
[実施例2]
Al粉末および黄銅系原料粉末を混合し、この混合粉末をCuメッキが施された鋼板上に所定層厚となるように均一に散布し、これを還元雰囲気中にて780〜800℃で10〜30分間焼結した。次に、このようにして得られた焼結板の焼結層を圧延ロールにて緻密化し、さらに二次焼結を行って焼結層の厚さが2.0mm、全体の厚さが3.0mmの表1のNo.4に示す組成を有する焼結バイメタルを作製した。この焼結バイメタルを曲げ加工して内径40mm、外径46mm、長さ30mmの軸受ブッシュを作製した。そして、この軸受ブッシュを用いてジャーナル摩擦試験を行った。
【0019】
図3は、ジャーナル摩擦試験の概略を示すもので、軸受ブッシュに軸を貫通させ、軸受ブッシュに上方へ向かう荷重をかけながら軸を所定時間回転させ、摩擦係数の経時変化と軸受ブッシュの摩耗量(深さ)とを測定するようになっている。本実施例では、加圧力を100kgf/cm2、摩擦速度5m/minの条件で100時間行った。このジャーナル摩擦試験においても、摩耗量は極めて僅かであり、摩擦係数は0.05程度で安定していた。
【0020】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、摺動特性および耐摩耗性に優れるとともに耐凝着性に優れ、過酷な使用条件においても無給油で焼付き等が発生することがなく、たとえばトラック用リーフスプリングブッシュなどの用途にも充分に軸受性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 スラスト摩擦試験の概要を示す図である。
【図2】 スラスト摩擦試験における摩擦量を示す線図である。
【図3】 ジャーナル摩擦試験の概要を示す図である。
Claims (4)
- 鋼製裏金の表面に、重量比でZn:10〜30%、Sn:3〜10%、Al:2〜20%、黒鉛:3〜10%、残部Cuおよび不可避不純物からなる焼結合金を一体的に設けたことを特徴とする銅基焼結軸受材料。
- Pbを2〜5重量%含有することを特徴とする請求項1に記載の銅基焼結軸受材料。
- MoS2,WS2,BNの1種もしくは2種以上を3〜7重量%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の銅基焼結軸受材料。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の焼結合金を摺動材部材として有する銅基焼結軸受材料の製造方法であって、鋼製裏金の表面に、混合粉末を散布して全体を焼結し、次いで、焼結合金に圧延加工を施すことを特徴とする銅基軸受材料の製造方法。
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