JP3835368B2 - 水素消費機器における加熱装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素を吸蔵する際の水素吸蔵合金の発熱を用いた加熱装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水素消費機器、特に燃料電池ではその発電作用に伴って水が生成されるため、0℃以下では燃料電池の停止中に水分が氷結する可能性がある。この水分の氷結を防止するため、燃料電池を補助的に加熱する必要が生じる。
【0003】
そこで、例えば特開2000−164233号公報に記載のものでは、水素を燃焼させて直接燃料電池を加熱する手段を提案している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記公報に記載のものでは、本来発電に寄与されるべき水素を燃焼器を用いて直接燃焼させ、燃料電池加熱用に使用し消費するという問題点がある。また、燃焼という安全上好ましくない手段を取っている。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、水素を用いて、しかも燃焼によらない水素消費機器における加熱装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、水素を貯蔵する水素貯蔵装置(15)と、
水素貯蔵装置(15)から水素が供給され、水素を吸蔵して発熱する水素吸蔵合金(10)と、
水素を消費して所定の仕事を行う水素消費機器(12)とを備え、
水素の供給圧力をPSとし、水素吸蔵合金(10)の吸蔵プラトー圧をPVとし、水素吸蔵合金(10)の放出プラトー圧をPRとしたとき、
水素消費機器(12)の温度(TF)が加熱を必要とする第1所定温度(TA)以下である場合はPV<PSとなり、
水素消費機器(12)の温度(TF)が第1所定温度(TA)より所定温度高い第2所定温度(TB)より更に高い場合はPR>PSとなるように水素吸蔵合金(10)の組成を選定し、
水素吸蔵合金(10)と水素消費機器(12)との間を結合する閉回路で構成された熱経路(14)を有し、
水素吸蔵合金(10)が水素を吸蔵して発生した熱を熱経路(14)を流れる熱媒体により水素消費機器(12)に伝達するようになっており、
さらに、熱経路(14)内に、熱媒体を冷却するラジエータ(21)と、
ラジエータ(21)をバイパスするバイパス経路(26)と、
熱媒体がラジエータ(21)を通る場合とバイパス経路(26)を通る場合とを切り換える切替手段(27)とが備えられていることを特徴とする。
【0007】
これによれば、水素消費機器(12)の加熱が必要である所定温度(TA)以下の場合には水素吸蔵合金(10)に供給する水素圧力(PS)より水素吸蔵合金(10)の吸蔵プラトー圧(PV)が低くなるので、水素吸蔵合金(10)が水素を吸蔵して発熱する。この熱を水素消費機器(12)に伝達することにより、水素を燃焼させることなく水素消費機器(12)を加熱することができる。したがって、水素消費機器(12)の水分の氷結を水素吸蔵合金(10)の発熱によって解凍することができる。
【0008】
また、水素消費機器(12)の温度(TF)が第1所定温度(TA)より所定温度高い第2所定温度(TB)より高い場合には、水素吸蔵合金(10)に供給される水素圧力(PS)より水素吸蔵合金(10)の放出プラトー圧(PR)が高くなるので、水素吸蔵合金(10)が水素を放出することができ、次回の水素吸蔵に備えることができる。
さらに、切替手段(27)によって、熱媒体がラジエータ(21)を流れる場合と、バイパス経路(26)を流れる場合とに切り換えることができるので、水素消費機器(12)を冷却する場合は、切替手段(27)によって熱媒体がラジエータ(21)を流れるようにして熱媒体を効率良く放熱させることができる。また、水素消費機器(12)を加熱する場合は、切替手段(27)によって熱媒体がラジエータ(21)を流れないようにして、水素消費機器(12)を効率よく加熱することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1において、水素消費機器(12)の温度(TF)が第2所定温度(TB)より高い場合に、水素吸蔵合金(10)に熱経路(14)を流れる熱媒体により熱が供給され、PR>PSとなることを特徴とする。
【0010】
これによれば、水素消費機器(12)の温度(TF)が第2所定温度(TB)より高い場合に、水素吸蔵合金(10)に熱経路(14)を流れる熱媒体により熱が供給される。その結果、水素吸蔵合金(10)の放出プラトー圧(PR)が水素の供給圧力(PS)より高くなるので、水素吸蔵合金(10)が水素を吸蔵している場合に水素を放出することができる。
また、水素吸蔵合金(10)に対して熱経路(14)の熱媒体により熱が供給されるので、新たな加熱用機器を設けなくてもよく製作コストを低減できる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2において、熱経路(14)のうち、水素消費機器(12)の外部に位置する部位に、水素吸蔵合金(10)を充填する容器(11)が設けられていることを特徴とする。
【0013】
これによれば、水素吸蔵合金(10)が充填された容器(11)が水素消費機器(12)の外部にある熱経路(14)内に設けられるので、後述の請求項7ないし9のように燃料電池(12)内に水素吸蔵合金を内蔵した場合に比べて水素消費機器(12)を小さく構成できる。
【0016】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つにおいて、熱経路(14)のうち、熱媒体が常時流れる部位に、水素吸蔵合金(10)を充填する容器(11)が設けられていることを特徴とする。
【0017】
これによれば、熱媒体が常時流れる部位に容器(11)が設けられているので、水素消費機器(12)の加熱が必要な場合は、水素吸蔵合金(10)が水素を吸蔵したときに発生する熱を水素消費機器(12)に伝達でき、水素吸蔵合金(10)の加熱が必要な場合は、水素消費機器(12)から得た熱を水素吸蔵合金(10)に伝達することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つにおいて、水素貯蔵装置(15)から水素吸蔵合金(10)に水素を供給する水素経路(13)のうち、水素吸蔵合金(10)の入口部に、水素経路(13)に水素吸蔵合金(10)が飛散することを防止するフィルタ(11b、31c)が設けられていることを特徴とする。
【0019】
これによれば、水素吸蔵合金(10)の入口部にフィルタ(31c)を設けたので、水素吸蔵合金(10)が飛散し、水素経路(13)または水素消費機器(12)内に水素吸蔵合金(10)が混入することを防止できる。
【0020】
請求項6に記載の発明のように、請求項1ないし5のいずれか1つにおいて、水素消費機器は具体的には燃料電池(12)であり、燃料電池(12)の水分の氷結を水素吸蔵合金(10)の発熱によって防止することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明では、請求項1または2において、水素消費機器は燃料電池(12)であり、燃料電池(12)の内部に水素吸蔵合金(10)が内蔵されていることを特徴とする。
【0022】
これによれば、燃料電池(12)の内部に水素吸蔵合金(10)が内蔵されているので、水素吸蔵合金(10)が水素を吸蔵して発生した熱を効率良く燃料電池(12)に伝達することができる。
【0023】
請求項8に記載の発明のように、請求項7において、燃料電池(12)のうち、電解質膜を分離するセパレータ(31)の内部空間(31b)に水素吸蔵合金(10)を内蔵するように構成してもよい。
【0024】
請求項9に記載の発明のように、請求項7において、燃料電池(12)を構成する複数の燃料電池セル(30)の相互間に、水素吸蔵合金(10)を内蔵したパネル部材(32)を配置するように構成してもよい。
【0025】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
第1実施形態は水素消費機器として、車両用の電動モータに電気を供給する燃料電池を用いたものである。
【0027】
第1実施形態に示す水素消費機器における加熱装置は、図1に示すように、水素吸蔵合金10を充填した容器11および燃料電池12に水素を供給する水素経路13と、水素吸蔵合金10が水素を吸蔵し、この反応熱を熱媒体を介して燃料電池12に伝達する熱経路14を有する。
【0028】
最初に、本発明の水素経路13について説明する。水素経路13は水素ガスを貯蔵する高圧水素タンク15から配管によって燃料電池12と容器11に水素を供給する水素供給経路である。高圧水素タンク15は本発明の水素貯蔵装置を構成するものである。
【0029】
水素経路13のうち、高圧水素タンク15から燃料電池12への配管は、高圧水素タンク15側から第1減圧弁16、第2減圧弁17となるように接続されている。第1減圧弁16と第2減圧弁17はそれぞれ水素の供給圧力を設定できるようになっており、具体的には、その圧力差がたとえば10気圧となるように第1減圧弁16が調整される。なお、第1減圧弁16と第2減圧弁17の間には配管分岐点18が設けられている。
【0030】
一方、高圧水素タンク15から容器11への配管は、高圧水素タンク15から第1減圧弁16および配管分岐点18を通って、水素吸蔵合金10が充填された容器11に接続されている。水素吸蔵合金10は、具体的にはLaNi5合金が用いられており、第1実施形態では粉末状態になっている。したがって、水素吸蔵合金10の粉末が水素経路13に混入するのを防ぐために、容器11の水素供給入り口部にフィルタ11bが設けられている。フィルタ11bの材料としては微細孔を有するカーボン、セラミック多孔体、シリカなどが用いられる。
【0031】
なお、水素吸蔵合金10は容器11に弾性樹脂と混合充填され、容器11の変形を防止している。また、配管分岐点18と容器11の間には水素の供給を遮断する開閉弁19が設けられており、開閉弁19の開閉は制御部20によって自動的に行われる。
【0032】
次に、本発明の熱経路14について説明する。熱経路14は、容器11、燃料電池12、ラジエータ21、冷却水循環ポンプ22を、配管によって順次接続した閉回路により構成されており、内部を熱媒体が循環している。なお、熱媒体は、具体的には冷却水循環ポンプ22により循環する冷却水である。
【0033】
容器11には内部に熱交換器11aが設けられており、水素吸蔵合金10と熱媒体との間で熱交換するようになっている。なお、容器11には水素吸蔵合金10の温度TMを計測する温度計測センサ23が、容器11の熱交換器11aの出口部には熱媒体温度TWを計測する温度計測センサ24が設けられている。
【0034】
ところで、熱媒体は制御部20によって制御された冷却水循環ポンプ22によって熱経路14内を循環しているので、熱交換器11a内の熱媒体は燃料電池12に運ばれる。この燃料電池12の内部には全面に渡って蛇行した熱媒体用の熱交換器12aがあり、燃料電池12と熱媒体との間で熱交換を行うようになっている。なお、燃料電池12には燃料電池12の温度TFを計測する温度計測センサ25が設けられている。
【0035】
その後、燃料電池12の熱媒体は、ラジエータ21に供給され、外部環境温度と熱交換が行われる。そして、ラジエータ21から熱媒体が排出されると、冷却水循環ポンプ22を経由して容器11に供給される。
【0036】
次に、水素吸蔵合金10の組成について説明する。水素吸蔵合金10は、燃料電池12の「加熱が必要な環境温度域」では
(条件1)吸蔵プラトー圧PV<水素吸蔵合金への供給圧力PS
燃料電池12の「常用温度域」では
(条件2)放出プラトー圧PR>水素吸蔵合金への供給圧力PS
となるように組成が選定されている。
【0037】
ここで、「加熱が必要な環境温度域」であるか「常用温度域」であるかは、燃料電池12の本体部に取り付けられた温度計測センサ25によって計測された燃料電池12の温度TFにより判定される。
【0038】
すなわち、「加熱が必要な環境温度域」とは燃料電池12によって生成された水が氷結する温度域であって、具体的には第1所定温度TAを0℃とした場合に、燃料電池12の温度TFがTA以下の温度域を言う。「常用温度域」とは、燃料電池12が効率よく機能する場合の温度域であって、第1所定温度TAより所定温度高い第2所定温度TBを60℃とした場合に、燃料電池12の温度TFがTB以上の温度域を言う。
【0039】
次に、水素吸蔵合金10のプラトー圧について説明する。図2は一定温度下での平衡水素圧を縦軸にとり、水素吸蔵合金10中の水素濃度を横軸にとったものである。一般に、水素吸蔵合金10は水素を吸蔵して内部に水素を固溶し、水素化物を形成する。水素の固溶した金属相をα相、水素ガスと反応して水素化物が形成された金属相をβ相とすると、α相とβ相の2つが存在する組成範囲があり、この組成範囲内では定温条件で平衡水素圧が一定となる。この一定な部分をプラトーと呼び、そのときの平衡水素圧をプラトー圧と称する。
【0040】
ここで、第1実施形態におけるプラトー圧と水素供給圧力の関係を、具体的に説明する。図2において、燃料電池12の加熱が必要な温度域、すなわち所定温度TA以下の場合の水素吸蔵合金10の温度をT1とし、燃料電池12の常用運転温度域、すなわち所定温度TB以上の場合の水素吸蔵合金10の温度をT2とする。
【0041】
この場合、温度T1のときの水素圧力と水素吸蔵合金10中の水素濃度との関係は、水素圧力を上昇させていくとA1→B1→C1→D1、逆に水素圧力を下降させていくとD1→E1→F1→A1で表される。また、温度T2のときの水素圧力と水素吸蔵合金10中の水素濃度との関係は、水素圧力を上昇させていくとA2→B2→C2→D2、逆に水素圧力を下降させていくとD2→E2→F2→A2で表される。
【0042】
このうち、図2中の水平な部分B1−C1およびB2−C2の水素平衡圧をそれぞれ温度T1、T2における吸蔵プラトー圧といい、E1−F1およびE2−F2の水素平衡圧をそれぞれ温度T1、T2における放出プラトー圧という。このように、プラトー圧を示す部分は一定温度下で2つあり、これは水素の吸蔵、放出過程で平衡水素圧にヒステリシスが発生することを示している。
【0043】
そこで、温度T1における吸蔵プラトー圧をPV、温度T2における放出プラトー圧をPR、供給圧力をPSとして、吸蔵プラトー圧PVが供給圧力PSより小さくなるように、放出プラトー圧PRが供給圧力PSより大きくなるように素吸蔵合金10の組成を選定すれば、条件1および2を満足する。
【0044】
したがって、水素吸蔵合金10の温度がT1の場合には、吸蔵プラトー圧PVが供給圧力PSより小さいので、水素が供給されると、水素は吸蔵プラトー圧PVを越えPSと平衡となる水素濃度G1まで吸蔵されて発熱することができる。
【0045】
また、燃料電池12が加熱され、あるいは燃料電池12自体が発熱することによって水素吸蔵合金10の温度がT2になると、放出プラトー圧PRが供給圧力PSより大きくなって、水素濃度G2まで水素を放出する。
【0046】
以上のことから、総発熱量は水素吸蔵量に比例するため、より多くの水素が吸蔵、放出可能になるよう、つまり、水素濃度G1、G2の差を大きく取れるように、水素吸蔵合金の組成を決定する。
【0047】
なお、水素吸蔵合金10は水素の吸蔵能力上限に達すると、それ以上吸蔵できなくなり、発熱しなくなるので、あらかじめ加熱に必要な熱量を確保できる量の水素吸蔵合金10が容器11に充填されている。
【0048】
次に、本発明における燃料電池における加熱装置の動作を図3および図4のフローチャートを用いて説明する。
【0049】
最初に、下記フローチャートの動作を行うプログラムが制御部20で作動し、ステップS10に進む。
【0050】
ステップS10ではTF≦TAを判定する。ここで、TAは具体的には前述した0℃であるから、ステップS10では燃料電池12の温度TFが0℃以下であるか否かを判定する。TF≦TAならばステップS20に進む。
【0051】
ステップS20では水素放出済み信号=「ON」を判定する。水素放出済み信号=「ON」ならばステップS30に進む。水素放出済み信号が「ON」であるか否かは制御部20の記憶部に記憶されている状態により判定される。なお、工場出荷時には水素吸蔵合金10は水素が完全に放出された状態になっており、この場合の初期値は水素放出済み信号は「ON」になっている。
【0052】
ステップS30では開閉弁19を「開」にする。
開閉弁19が「開」になると、水素高圧水素タンク15から容器11に水素が圧力PSにて供給される。この際、水素吸蔵合金10の吸蔵プラトー圧PVはこの水素圧力PSより小さく設定されているので、容器11内の水素吸蔵合金10が水素を吸蔵して発熱を始める。
【0053】
ステップS40ではタイマー1がスタートする。
【0054】
ステップS50ではタイマー1の時間≧設定時間を判定する。このタイマー1の設定時間は水素吸蔵合金10の温度TMと熱交換器11aの出口部の熱媒体温度TWが前もって設定された設定下限温度TLより高くなる時間を見込んで設定されている。ここで、TLは設定下限温度であり、具体的には0℃ないし10℃の範囲で設定される。タイマー1の時間≧設定時間ならば、ステップS60に進む。
【0055】
ステップS60ではTW<TUを判定する。このとき、設定上限温度TUは、水素消費機器である燃料電池12の耐熱温度である。TW<TUならば、ステップS70に進む。
【0056】
ステップS70ではTM−TW<TLを判定する。ところで、水素吸蔵合金10の発熱が完了すると、すなわち水素吸蔵合金10が水素を完全に吸収すると、次第に水素吸蔵合金10の温度TMと熱媒体温度TWの差TDが設定下限温度TLの設定範囲内になるので、ステップS70によって水素吸蔵合金10が水素を完全に吸収したか否かが判定される。TM−TW<TLならば、ステップS80に進む。
【0057】
ステップS80では開閉弁19を「閉」にし、水素放出済み信号を「OFF」にして、ステップS10に戻る。
【0058】
前述のステップS20で水素放出済み信号=「ON」でないと判定された場合はステップS90でエラー信号を出力し、ステップS10に進む。
【0059】
前述のステップS60の判定がNOであるときはステップS100で開閉弁19を「閉」にしてステップS60に戻る。ここでは、開閉弁19を「閉」にすることによって、水素の供給を遮断し、水素吸蔵合金10の発熱を押さえることにより燃料電池12がオーバーヒートするのを防止している。
【0060】
前述のステップS10でTF>TAを判定した場合には、ステップS110でTF≧TBを判定する。このステップS110では、燃料電池12が「常用温度域」であるか否かを判定する。TF≧TBならば、ステップS120に進む。
【0061】
ステップS120では水素放出済み信号=「ON」を判定する。
水素放出済み信号=「ON」でない場合にステップS130に進む。
【0062】
ステップS130では開閉弁19を「開」にする。ここでは、水素吸蔵合金10の水素が放出されていない場合に、開閉弁19が「開」に制御される。開閉弁19が「開」に制御されると、容器11内の水素吸蔵合金10の温度TMより熱媒体温度TWの方が高いので、熱媒体によって水素吸蔵合金10に熱が供給される。
これにより、水素吸蔵合金10の放出プラトー圧PRが水素供給圧力PSより大きくなり、水素吸蔵合金10は水素の放出を開始する。放出された水素は配管側に逆流する。
【0063】
ステップS140ではTM≧TWを判定する。ここでは、TM<TWであったものが、水素吸蔵合金10の水素放出が収束を終えようとする段階でTM=TWに近づき、TM≧TWとなった時点でステップS150に進むようにしている。したがって、水素吸蔵合金10が水素を放出したかをTMとTWの比較により判定して、TM≧TWならばステップS150に進む。
【0064】
ステップS150ではタイマー2がスタートする。
【0065】
ステップS160ではタイマー2の時間≧設定時間であるかを判定する。ここでは、水素吸蔵合金10が水素の放出を完了する時間をタイマーにより設定している。タイマー2の時間≧設定時間ならばステップS170に進む。
【0066】
ステップS170では開閉弁19を「閉」にして、水素放出済み信号をONにして終了する。
【0067】
前述のステップS120で水素放出済み信号=「ON」を判定した場合にはステップS180で開閉弁19を「閉」にして終了する。
【0068】
なお、ステップS70の判定は、ステップS60にてTW<TUと判定されてからタイマーによって所定時間経過させることによって代用できる。この場合は、それぞれの水素消費機器の適用対象によってタイマー時間を設定する。タイマー時間は概ね1分から30分である。
【0069】
次に第1実施形態の効果について述べる。上記構成によれば、燃料電池12の反応生成物である水が氷結した場合に、水素吸蔵合金10に水素が吸蔵されたときの反応熱によって燃料電池12が加熱されるので、例えば燃料ガスを燃焼させて加熱する装置のように、本来の発電に寄与されるべき燃料を加熱用に使用しなくてよい。また、燃焼に寄らずに熱を発生せしめることが可能なので、燃焼という安全上からはあまり好ましくない手段をとらなくても良い。
【0070】
(第2実施形態)
第2実施形態では図5に示すように、第1実施形態に示す熱経路14にラジエータ21をバイパスするバイパス経路26を設けている。具体的には、熱経路14の燃料電池12とラジエータ21の間に、本発明の切替手段を構成する切換バルブ27が設けられ、この切換バルブ27から冷却水循環ポンプ22の出口側に合流するようになっている。そして、この出口側の合流点28と切換バルブ27の間には冷却水循環ポンプ29が配置されている。
【0071】
切換バルブ27は具体的には電磁弁または図示しないモータ駆動による3方弁で構成され、冷却水循環ポンプ22、29とともに制御部20によって制御されている。
【0072】
これによれば、燃料電池12の温度TFが0℃以下である場合は、バイパス経路26に熱媒体が流れるように、制御部20によって切換バルブ27が切り換えられる。この際、冷却水循環ポンプ29が駆動され、熱媒体はラジエータ21を通過せずにバイパス経路26を流れるので、燃料電池12を急速に加熱することができる。なお、冷却水循環ポンプ29が駆動する場合は、冷却水循環ポンプ22は停止される。
【0073】
また、燃料電池12の温度TFが60℃以上である場合は、ラジエータ21を熱媒体が流れるように、制御部20によって切換バルブ27が切り換えられる。この際、冷却水循環ポンプ22が駆動され、熱媒体がラジエータ21を通過して冷却されるので、燃料電池12を冷却することができる。なお、冷却水循環ポンプ22が駆動する場合は、冷却水循環ポンプ29は停止される。
【0074】
(第3実施形態)
第1実施形態では、加熱装置として容器11が設けられていたが、第3実施形態では、容器11に替わり、図6に示す燃料電池12を構成する燃料電池セルのセパレータ31内に水素吸蔵合金10を内蔵することで燃料電池12そのものを直接加熱する。なお、燃料電池セルは後述の図8に符号30として図示されている。
【0075】
ここで、燃料電池セルについて説明する。一般的に燃料電池は、複数の燃料電池セルから構成される。この燃料電池セルは、表面に白金触媒が担持された電解質膜と、電解質膜の両外側に供給される空気(酸素)と水素とを電解質膜全体に拡がるように拡散させるカーボンクロス(拡散層)と、カーボンクロス(拡散層)の外側に各電解質膜を分離するとともに、電極を構成する炭素製のセパレータ31により構成されている。ただし、セパレータ31は隣り合う燃料電池セルで共用されている。
【0076】
ところで、第3実施形態では、図6に示すように、セパレータ31には専用の水素供給用マニホールド31aが設けられ、水素供給用マニホールド31aに連通する内部空間31bが形成されている。この内部空間31bには水素吸蔵合金10が充填されている。
【0077】
また、水素吸蔵合金10の飛散防止のため、フィルタ31cが水素供給用マニホールド31aと水素吸蔵合金10の内部空間31bの間に設けられている。フィルタ31cの材料は、第1実施形態と同様のものが用いられる。
【0078】
さらに、セパレータ31には熱媒体が供給される冷却水供給用マニホールド31dと、熱媒体が排出される冷却水排出用マニホールド31eとが設けられていり、両者31d、31eに連通して、熱媒体が流れる熱媒体用流路31fがセパレータ31の内部を全面に渡って蛇行するように設けられている。
【0079】
そして、このように構成された燃料電池12は図7に示すように連結されている。すなわち、第1実施形態では水素が開閉弁19から容器11に供給されたが、第3実施形態では開閉弁19からセパレータ31の水素供給用マニホールド31aを経由し、水素吸蔵合金10の内部空間31bに供給されている。また、第1実施形態において水素吸蔵合金10の温度TMを計測する温度計測センサ23が燃料電池12の内部空間31b付近に設けられており、制御部20によって温度を監視するようになっている。
【0080】
これによれば、燃料電池12のセパレータ31内に水素吸蔵合金10が内蔵されており、この水素吸蔵合金10に水素が供給されるので、燃料電池12そのものを直接加熱することができる。また、容器11が不要となり、加熱装置の占有面積を小さくできる。なお、水素吸蔵合金10の配置場所は氷結が懸念される近傍など適所に配置することが望ましい。
【0081】
(第4実施形態)
第3実施形態では、燃料電池12の燃料電池セルのセパレータ31内に水素吸蔵合金10を内蔵することで燃料電池12そのものを直接加熱するようにしたが、第4実施形態では、図8に示すように、燃料電池12の複数の燃料電池セル30の間に適所、水素吸蔵合金10を充填したパネル部材32を挿入するようにした。
【0082】
燃料電池セル30とパネル部材32には水素経路13から水素が供給される共通の水素供給用マニホールド32aがあり、図9に示すように、パネル部材32の水素流路32bと連通している。水素流路32bは第4実施形態では、水素供給用マニホールド32aから垂直方向に形成され、さらに連通して水平方向に複数形成されている。
【0083】
この水平方向の水素流路32bの下側には水素吸蔵合金10を入れる内部空間32cが形成されている。水素吸蔵合金10を入れる領域は水素吸蔵に伴う水素吸蔵合金10の膨張によるパネルの変形を防ぐため、両端を傾斜させている。
【0084】
これによれば、燃料電池12の燃料電池セル30とパネル部材32がユニット化できるので、容易に燃料電池セル30またはパネル部材32を交換でき、燃料電池セル30とパネル部材32の積層構成も容易に変更できる。
【0085】
なお、図6と同様に、水素流路32b内の内部空間32c近傍各所へ水素吸蔵合金10の飛散防止のためのフィルタを設置してもよい。
【0086】
(その他の実施形態)
第1実施形態ないし第4実施形態における水素貯蔵装置として高圧水素タンク15を用いたが、液体水素タンク、水素吸蔵合金を用いた供給装置等であってもよい。
【0087】
第1実施形態ないし第4実施形態における水素消費機器は燃料電池12としたが、その他の水素を消費する機器であってもよい。
【0088】
また、第4実施形態において、水素吸蔵合金10の膨張によるパネル32の変形防止方法は、例えば弾性樹脂との混合充填など、種々の方法を適用することができる。
【0089】
また、第1、第2実施形態では、水素吸蔵合金10で発生する熱を機器へ伝える手段として媒体を、第3、第4実施形態では燃料電池に内蔵した例を掲げているが、その他の手段、例えばヒートパイプにより熱を伝えてもよい。
【0090】
なお、第1実施形態では、燃料電池12が暖気途中で動作に入った場合でも、図3および図4に示すフローチャートのステップS170に達するまで、すなわち、一旦吸蔵した水素を燃料電池12からの排熱で暖められた熱媒体により再放出するまで、本機器を含む装置全体を停止させないようになっている。
【0091】
これによれば、例えば水素吸蔵合金10の水素吸蔵途中で停止されることがなく、ステップS170が終了した時点で、必ず水素吸蔵合金10が水素を放出した状態になる。したがって、再び燃料電池12の温度TFが「加熱が必要な環境温度域」となる第1所定温度TA以下の温度域になっても、燃料電池12を加熱できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態による加熱装置の配管図である。
【図2】水素吸蔵合金のプラトー圧の説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図5】第2実施形態による加熱装置の配管図である。
【図6】第3実施形態による燃料電池のセパレータの断面図である。
【図7】第3実施形態による加熱装置の配管図である。
【図8】第4実施形態によるパネル部材の配置図である。
【図9】第4実施形態によるパネル部材の断面図である。
【符号の説明】
10…水素吸蔵合金、11…容器、11b…フィルタ、
12…燃料電池(水素消費機器)、13…水素経路、14…熱経路、
15…高圧水素タンク(水素貯蔵装置)、21…ラジエータ、
26…バイパス経路、27…切替手段、31…セパレータ、
31b…内部空間、31c…フィルタ、32…パネル部材。
Claims (9)
- 水素を貯蔵する水素貯蔵装置(15)と、
前記水素貯蔵装置(15)から前記水素が供給され、前記水素を吸蔵して発熱する水素吸蔵合金(10)と、
前記水素を消費して所定の仕事を行う水素消費機器(12)とを備え、
前記水素の供給圧力をPSとし、前記水素吸蔵合金(10)の吸蔵プラトー圧をPVとし、前記水素吸蔵合金(10)の放出プラトー圧をPRとしたとき、
前記水素消費機器(12)の温度(TF)が加熱を必要とする第1所定温度(TA)以下である場合はPV<PSとなり、
前記水素消費機器(12)の前記温度(TF)が前記第1所定温度(TA)より所定温度高い第2所定温度(TB)より更に高い場合はPR>PSとなるように前記水素吸蔵合金(10)の組成を選定し、
前記水素吸蔵合金(10)と前記水素消費機器(12)との間を結合する閉回路で構成された熱経路(14)を有し、
前記水素吸蔵合金(10)が前記水素を吸蔵して発生した熱を前記熱経路(14)を流れる熱媒体により前記水素消費機器(12)に伝達するようになっており、
さらに、前記熱経路(14)内に、前記熱媒体を冷却するラジエータ(21)と、
前記ラジエータ(21)をバイパスするバイパス経路(26)と、
前記熱媒体が前記ラジエータ(21)を通る場合と前記バイパス経路(26)を通る場合とを切り換える切替手段(27)とが備えられていることを特徴とする水素消費機器における加熱装置。 - 前記水素消費機器(12)の前記温度(TF)が前記第2所定温度(TB)より高い場合に、前記水素吸蔵合金(10)に前記熱経路(14)を流れる熱媒体により熱が供給され、PR>PSとなることを特徴とする請求項1に記載の水素消費機器における加熱装置。
- 前記熱経路(14)のうち、前記水素消費機器(12)の外部に位置する部位に、前記水素吸蔵合金(10)を充填する容器(11)が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の水素消費機器における加熱装置。
- 前記熱経路(14)のうち、前記熱媒体が常時流れる部位に、前記水素吸蔵合金(10)を充填する容器(11)が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の水素消費機器における加熱装置。
- 前記水素貯蔵装置(15)から前記水素吸蔵合金(10)に前記水素を供給する水素経路(13)のうち、前記水素吸蔵合金(10)の入口部に、前記水素経路(13)に前記水素吸蔵合金(10)が飛散することを防止するフィルタ(11b、31c)が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の水素消費機器における加熱装置。
- 前記水素消費機器が燃料電池(12)であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の水素消費機器における加熱装置。
- 前記水素消費機器は燃料電池(12)であり、前記燃料電池(12)の内部に前記水素吸蔵合金(10)が内蔵されていることを特徴とする請求項1または2に記載の水素消費機器における加熱装置。
- 前記燃料電池(12)には、電解質膜を分離するセパレータ(31)が備えられており、前記セパレータ(31)の内部空間(31b)に前記水素吸蔵合金(10)が内蔵されていることを特徴とする請求項7に記載の水素消費機器における加熱装置。
- 前記燃料電池(12)を構成する複数の燃料電池セル(30)の相互間に、前記水素吸蔵合金(10)を内蔵したパネル部材(32)が配置されたことを特徴とする請求項7に記載の水素消費機器における加熱装置。
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