JP3833115B2 - データスライス回路 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブルートゥース(Bluetooth)等の無線通信装置に用いられるデータスライサに関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、無線LAN(ocal rea etwork)や携帯電話など無線通信システムにおいて、スペクトラム拡散技術が利用されている。スペクトラム拡散技術とは、データ信号に依存しない符号を用いることにより、データ伝送に必要な周波数帯域幅よりも広い周波数帯域に信号を拡散して、送信対象のデータ伝送を行う技術である。
【0003】
一般に、スペクトラム拡散技術を利用した無線通信システムにおいては、送信側において音声等の入力信号が変調回路において変調され、変調信号が形成される。拡散符号を用いて変調信号をスペクトラム拡散させた後、スペクトラム拡散信号を相手側に送信する。受信側においては、送信側と同じ拡散符号を用いてスペクトラム拡散信号を復調する。復調された信号はデータスライサを用いてデジタル信号に変換される。
【0004】
図12は、一般的なデータスライサの回路図である。図12に示すように、データスライサ501は、復調器(復調回路)502の出力側に接続される。データスライサ501は、コンパレータ(電圧比較回路)503とローパスフィルタ(ow ass ilter:LPF)504とを含む。
【0005】
復調回路502の出力側は、コンパレータ503の第1入力端子T1に接続されるとともに、ローパスフィルタ504の入力側にも接続されている。ローパスフィルタ504の出力は、コンパレータ503の第2入力端子T2に接続されている。コンパレータ503の出力端子は、データスライサ501の出力端子を構成する。ローパスフィルタ504は復調回路502からの入力のうちの低周波成分のみを通過する。コンパレータ503は、復調回路502の出力電圧とローパスフィルタ504の出力電圧とを比較して高低いずれか一方の信号のみを出力することにより、復調回路502の出力を2値化して出力する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
図13及び図14を参照して、上記のデータスライサ501を用いた場合の問題点について説明する。図13はアナログ復調データ信号波形とスライスレベルとの関係と、データスライス出力信号波形とを示す図であって、スライスレベルが低周波成分に追従する場合の状況を示す図である。スライスレベルが低周波成分に追従すると、データ“1”又は“0”が連続する連続ビットが存在する場合に、これらの連続“1”ビットや連続“0”ビットが低周波成分と見なされてしまう可能性がある。
【0007】
図13に示すように、スライスレベルが連続ビットに追従することにより、復調信号を正確には2値化できなくなる可能性がある。例えば、図13の右端に存在するアナログ信号に対しては、スライスレベルがローレベルとほぼ一致しているため、正確な2値化ができていない。
【0008】
加えて、スライスレベルがローレベルとほぼ一致すると、様々なノイズの影響を受けやすい。受信信号が全く存在しない場合においても、コンパレータ503が動作し、破線で示すように出力DCレベルに“0”,“1”の信号が現れる可能性がある。
【0009】
図14は、アナログ復調データ信号波形とスライスレベルとの関係と、データスライス出力信号波形とを示す図であって、スライスレベルの低周波成分に対する追従を少なくした場合の状況を示す図である。図14に示すように、復調器への入力信号が存在しない場合における復調器の出力DCレベルと、復調器への入力信号が存在する場合における復調器の出力DCレベルとが異なる。従って、TDMA方式やFHホッピング方式など、信号が時分割されている方式を用いた場合に、復調器から出力されるDCレベルの入力信号の有無による急激な変動にスライスレベルが追随できなくなる可能性がある。
【0010】
例えば、図14に示すようにスライスレベルが最適な値に設定されていないため、正確な2値化ができなくなる可能性がある。図14では、左から3番目のアナログ信号“1”がデータスライサ出力信号では“0”として出力されてしまう。
本発明の目的は、復調信号を精度良く2値化できるデータスライサを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の一観点によれば、復調信号に基づいて該復調信号をスライスするためのスライスレベルを作成し出力するスライスレベル作成器と、第1及び第2の入力端子を有する比較回路であって前記第1の入力端子から入力される前記復調信号と前記スライスレベル作成器から出力されるスライスレベルとを比較する比較回路と、を備え、前記復調信号を2値化して出力するデータスライサと、前記復調信号が所定の範囲内の振幅を有している場合に、前記データスライサを動作させる制御信号を出力するレベル検知回路とを有するデータスライス回路が提供される。
【0012】
上記データスライス回路においては、前記復調信号を受信しない場合には、前記データスライサが動作しない。従って、前記復調信号を受信しない期間内においてノイズなどの影響を受けにくい。加えて、前記データスライサは、前記レベル検知回路の出力に基づいて動作するため、スライスレベルは、復調信号を受信した際のDCレベルの変動の影響を受けにくい。
【0013】
前記スライスレベル作成器は、前記復調信号の最大ピーク値と最小ピーク値とを更新しつつ記憶し、記憶された前記最大ピーク値と前記最小ピーク値との中間値を求めてスライスレベルとするのが好ましい。前記最大ピーク値と前記最小ピーク値との中間値をスライスレベルとするので、スライスレベルの決定が迅速であり、かつ、スライスレベル作成器の構成も簡単になる。前記復調信号の最大ピーク値と最小ピーク値とは常に更新されるため、受信キャリア周波数ドリフト等によるDCレベル変動に対して追随することができる。
【0014】
前記スライスレベル作成器は、さらに、前記最大ピーク値と前記最小ピーク値との差が前記所定の範囲を超えている超過期間中、前記スライスレベルを更新せずに前記超過期間の直前のスライスレベルに保持するスライスレベル保持回路を有するのが好ましい。
【0015】
ノイズなどの突発的なピーク値の変動があった場合にはピーク値を更新しないため、スライスレベルに対するノイズなどの影響を低減できる。
前記スライスレベル作成器は、入力信号レベルの変化分を検出するレベル変化検出回路と、前記スライスレベルと前記変化分との加算値を新たなスライスレベルとして出力するスライスレベル更新回路とを有するのが好ましい。
【0016】
ピーク値の変動に対してより忠実にスライスレベルを変動させることができ、スライスレベルの作成精度を高めることができる。
前記レベル変化検出回路は、前記2値化されたデータのゼロクロスポイントを起点とした前後1ビット時間の1/2の時点における前記復調信号の値の差を前記変化分とするのが好ましい。
【0017】
最大ピーク値を探す必要がなくなり、より簡単に変化分、従ってスライスレベルを求めることができる。
前記スライスレベル作成器は、さらに、前記変化分が規定された値を超えている期間中、前記変化分をゼロとするレベル変化規制回路を有するのが好ましい。
ノイズなどによる突発的なピーク値の変動があり、変化分が大きすぎた場合でも、スライスレベルを適切な値に保つ。
【0018】
本発明の他の観点によれば、復調信号に基づいて該復調信号をスライスするためのスライスレベル作成回路であって、第1のスライスレベルを作成し出力する第1のスライスレベル作成器と該第1のスライスレベルとは異なる特性を有する第2のスライスレベルを作成し出力する第2のスライスレベル作成器とを有するスライスレベル作成回路と、第1及び第2の入力端子を有する比較回路であって前記第1の入力端子から入力される前記復調信号と前記第1のスライスレベル及び前記第2のスライスレベルのいずれか一方とを比較する比較回路と、を備え、前記復調信号を2値化して出力するデータスライサと、前記復調信号が所定の範囲内の振幅を有している場合に、前記第1のスライスレベル作成器と前記第2のスライスレベル作成器とを動作させることができる制御信号を出力するレベル検知回路と、前記第1のスライスレベル作成器と前記第2のスライスレベル作成器とのいずれに対して前記制御信号を出力するかを選択するとともに、選択された方の出力を前記比較回路の前記第2の端子に入力させるスライスレベル切り替えスイッチとを有するデータスライス回路が提供される。
復調信号が受信されている期間のうちの受信初期と、その後とで異なる特性のスライスレベルを用いてデータの2値化を行うことができる。
【0019】
前記第1のスライスレベル作成器は、前記復調信号の最大ピーク値と最小ピーク値とを更新しつつ記憶し、記憶された前記最大ピーク値と前記最小ピーク値との中間値を求めてスライスレベルとする回路であり、前記制御信号が出力されている制御信号出力期間のうちの初期期間内に選択されるのが好ましい。
初期期間内において、迅速にスライスレベルを決定することにより、例えばプリアンブル信号に対応させることができる。
【0020】
前記第2のスライスレベル作成器は、入力信号レベルの変化分を検出するレベル変化検出回路と、前記スライスレベルと前記変化分との加算値を新たなスライスレベルとして出力するスライスレベル更新回路とを有し、前記制御信号が出力されている制御信号出力期間のうちの前記初期期間経過後に選択されるのが好ましい。
【0021】
初期期間経過後は、スライスレベルを精度良く求めることにより、データ全体を精度良く2値化することができる。
さらに、前記第1のスライスレベル作成器と前記第2のスライスレベル作成器との切り替え時に、前記比較回路に対して切り替え前のスライスレベルを出力するスライスレベル初期設定回路を有するのが好ましい。
前記第1のスライスレベル作成器と前記第2のスライスレベル作成器との切り替え時に、スライスレベルの初期値を新たに設定する場合に比べて、より精度の高いスライスレベルを得ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本明細書において、2値化回路をデータスライサ(以下「DS」と称す。)と称し、DSに加えてDSの動作を制御するために付加されたレベル検知回路や制御回路(制御部)などを含む回路をデータスライス回路(以下「DS回路」と称す)と称する。
【0023】
以下、本発明の第1の実施の形態によるDS回路について、図1から図4までを参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態によるDS回路を含む無線受信回路の回路図である。図2は、図1のDS回路に用いられるレベル検知回路の具体的な回路図である。図3は、DS回路の回路例を示す図である。図4は、DS回路の動作波形を示す図である。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態によるDS回路を含む無線受信回路Aは、アンテナ100と、ローノイズアンプ(LNA)101と、ミキサ102と、ローカル信号発生器103とを含む。さらに、無線受信回路Aは、バンドパスフィルタ(BPF)104と、利得制御(AGC)アンプ105と、復調回路Bと、DS109と、レベル検知回路110とを含む。復調回路Bは、復調回路用ミキサ106と、移相回路107と、ローパスフィルタ(LPF)108とを含む。DS回路は、DS109とレベル検知回路110とを含む。
【0025】
アンテナ100により受信されたRF受信信号は、LNA101により増幅される。次いで、ミキサ102においてローカル信号発生器103からのローカル信号とミキシングされる。ミキシングされた信号は、BPF104においてダウンコンバージョンされた後にBPF104から出力される。この出力は3分岐される。3分岐された出力信号は、復調回路用ミキサ106と、移相回路107と、レベル検知回路110とに入力される。移相回路107に入力した信号は、90度移相を回転させる。レベル検知回路110は、入力信号の有無を調べる
【0026】
移相回路107の出力と、利得制御(AGC)アンプ105の出力とが、復調回路用ミキサ106に入力されることにより、復調回路用ミキサ106からアナログ復調信号が出力される。アナログ復調信号中の高周波成分は、LPF108において除去され、LPF108から出力される低周波成分が、DS109に入力される。入力信号は、DS109において2値化される。DS109は、レベル検知回路110からの制御信号S1によりON/OFFされる。
【0027】
図2は、DS回路のうち、主としてレベル検知回路110の具体的な構成を示す図である。併せて、復調回路BとDS109とを示す。
図2に示すように、DS回路に含まれるレベル検知回路110は、例えば、積分回路131とスイッチ133とを含む。スイッチ133は、例えば図示するFETである。積分回路131の出力はスイッチ(FET)133のゲート端子Gに接続されている。FET133のソース端子Sは接地(GND)されており、ドレイン端子Dは電源電圧VDDに接続されている。ソース端子Sと電源電圧VDDとの間には、負荷抵抗135が設けられている。FET133の出力は、DS109に入力される。
積分回路131は、入力信号幅に応じてDC電位が変化する回路の例であり、代わりに2乗和回路などを用いることもできる。
【0028】
図3は、DS回路のうち主としてDS109の具体的な構成を示す図である。併せて、復調回路Bとレベル検知回路110とを示す。
図3に示すように、DS109は、1つのスライスレベル作成器121と1つのコンパレータ(比較回路)126とを有している。復調回路Bからの出力であるアナログ復調信号と、該アナログ復調信号が入力されるレベル検知回路110からの出力である信号レベル検知信号とがスライスレベル作成器121に入力される。復調回路Bの出力信号とスライスレベル作成器121の出力信号とが、コンパレータ126の2つの入力端子にそれぞれ入力される。コンパレータ126の出力がDS109の出力となる。
【0029】
図4に、本実施の形態によるDS回路を含む無線受信回路の動作を示す。
時間t1において入力変調信号が利得制御(AGC)アンプ105を介してレベル検知回路110に入力されると、レベル検知回路110の出力信号は、ロー(L)からハイ(H)に変化する。より詳細には、入力変調信号の振幅は、時間t1の前後で大きく変化し、時間t1以後は大きな振幅を持つようになる。積分回路131(図2)は、入力信号の振幅幅に応じてDC電位が変化する回路である。積分回路131の出力は、スイッチ133のゲート端子に入力されている。積分回路131のDC電位の変化により、スイッチ133がオン/オフし、スイッチ133の出力端137の電位をハイ又はローに変化させる。
【0030】
この出力端137の電位がDS109に入力され、DS109のスライスレベルを、時間t1より前にはMIN値に固定し、時間t1より後はMAX値とMIN値との間の値に保持する。
上記のDS回路においては、無線入力信号がある一定のレベル(受信可能レベル)であることを検知するレベル検知回路110を有し、レベル検知回路110からの出力信号に連動してDS109の動作が制御されるため、受信信号が存在しない場合における誤動作の可能性が低減する。また、信号検知回路により検知された後にスライスレベル作成回路が動作するため、信号の有無による復調アナログ出力DCレベルの急激な変化を緩和することができ、精度の良いスライスレベルを作成することができる。
【0031】
次に、本発明の第1の実施の形態に第1変形例によるDS回路について、図5を参照して説明する。図5に示すDS回路のうちDS109は、図12に示した一般的なデータスライサ501と同様の回路構成を有している。但し、本発明の第1の実施の形態によるDS回路と同様に、DS109に、さらに、レベル検知回路110が接続されている。
【0032】
図5に示すように、本発明の第1の実施の形態の第1変形例によれば、DS109は、LPF150とコンパレータ156とを有している。LPF150は、抵抗151と、該抵抗とソース−ドレイン間が直列接続されるスイッチ155を有している。復調回路Bからの出力は、抵抗151とスイッチ155との直列接続と、スイッチ155とコンパレータ156の入力端子との間の節点と接地GNDとの間に設けられたキャパシタ153を有している。
【0033】
図5に示すDS回路を用いても、無線受信信号がある一定のレベル(受信可能レベル)であることを検知するレベル検知回路110に連動してDSの動作を制御する回路により、無線受信信号が存在しない場合における誤動作の可能性が低減する。
次に、本発明の第2の実施の形態によるDS回路について、図6及び図7を参照して説明する。
【0034】
図6は、本発明の第2の実施の形態によるDS回路を示す図である。図7は、図6のDS回路を含む無線受信装置の動作波形例である。尚、無線受信装置の全体構成は図1と同様である。従って、適宜、図1を参照する。
図6に示すように、DS回路に含まれるDS200は、第1のスライスレベル作成器201と第2のスライスレベル作成器202と、第1のAND回路203とカウンタ204と、切り替えスイッチ205と、コンパレータ206と、一方の入力にNOT回路が設けられた第2のAND回路207とを有している。
【0035】
例えば、第1のスライスレベル作成器201は、短時間でスライスレベルが決定できる。第1のスライスレベル作成器201は、スライスレベルの作成精度が高い。
アナログ復調信号は、第1のスライスレベル作成器201と、第2のスライスレベル作成器202の第2の入力端子と、コンパレータ206の第1の入力端子とに入力される。信号レベル検知信号は、第1のAND回路203の一方の入力端子と、インバータ回路付きの第2のAND回路207の一方の入力端子とカウンタ204の入力端子とに接続されている。切り替えスイッチ205は、カウンタ204の出力により、第1のスライスレベル作成器201と、これとは異なる特性を有する第2のスライスレベル作成器202とのいずれの出力をコンパレータ206の第2の入力端子に入力するかを決める。
【0036】
カウンタ204の出力は、さらに、第1のAND回路203の他方の入力端子と、第2のAND回路207の他方の入力端子とに出力される。第2のスライスレベル作成器202の第1入力端子とコンパレータ206の出力とが配線L1により接続されている。
【0037】
第1のスライスレベル作成回路201の出力は、第2のスライスレベル作成回路202の第3の入力端子に接続されるとともに、切り替えスイッチ205を介してコンパレータの第2の入力端子に接続される。
アナログ変調信号が入力されると、レベル検知回路110(図1)が入力信号を検知し、レベル検知回路110の出力は、L(ロー)からH(ハイ)に変化する。カウンタ回路204が、レベル検知回路110の出力信号をトリガとして動作を開始する。カウンタ回路204の出力は、動作開始から一定時間が経過するまではHを出力する。
【0038】
切り替えスイッチ205は、カウンタ回路204の出力がHの間は、第1スライスレベル作成器201の出力をコンパレータ206に伝える。カウンタ回路204の出力がLの間は、第2のスレベル作成器202の出力をコンパレータ206に伝える。第1のAND回路203には、カウンタ204の出力と信号レベル検知回路の出力とが入力される。第1のAND回路203の出力はHとなり、第1のスライスレベル作成器201を動作させる。その結果、第1のスライスレベル作成器201の出力とアナログ復調信号とがコンパレータ206に入力され、これらの2入力の値を比較することにより、復調データを2値化する。
【0039】
規定時間経過後は、カウンタ回路204の出力がHからLになるため、第1のAND回路203の出力はHからLになり、第1のスライスレベル作成器201が動作を停止し、第2のスライスレベル作成器202が動作し始める。切り替えスイッチ205によりコンパレータ206に第2のスライスレベル作成器202の出力とアナログ復調出力とが入力される。2入力の値を比較することにより、復調データを2値化する。
【0040】
図7に、上記DS回路を含む復調回路の動作波形を示す。
初期期間、例えば、プリアンブルを受信中は素早くスライスレベルを決定する第1のスライスレベル作成器201が用いられる。第1のスライスレベル作成器201が動作している初期期間においては、短時間でスライスレベルが決定できるため、回路動作を早期に安定させることができる。プリアンブル終了後であって、初期期間経過後には、第2のスライスレベル作成器202を動作させる。このようにすると、回路動作が安定し精度の高いスライスレベルを作成することができる。
以上のように特性の異なる複数(この場合は2つ)のスライスレベル作成器を用いて動作させることにより、全体として、データの2値化の精度を向上させることができる。
【0041】
次に、本発明の第3の実施の形態によるDS回路について、図8及び図9を参照して説明する。図8は、本発明の第3の実施の形態によるDS回路のスライスレベル作成器の構成を示す図である。図9は、第3の実施の形態によるDS回路を含む信号受信回路の動作波形である。尚、図8に示すスライスレベル作成器は、図6の第1のスライスレベル作成器201に適用するのが好ましい。
【0042】
図8に示すように、本発明の第3の実施の形態によるDS回路中に含まれるスライスレベル作成回路は、MAX値検出器301と、MIN値検出器302と、加算回路303と、減算回路304と、アンプ305と、コンパレータ306と、AND回路307と、Dフリップフロップ(D−FF)308とを含む。
動作ON/OFF信号が、MAX値検出器301と、MIN値検出器302と、AND回路307とに入力され、これらの回路をオンオフする。
【0043】
MAX値検出器301は、スライスレベル作成回路に入力したアナログ復調信号の最大ピーク値を検出し記憶する。MIN値検出器302は、アナログ復調信号の最小ピーク値を検出し記憶する。記憶されたMIN値検出器302は、アナログ復調信号の値が上記の値を更新するまで保持される。
最大ピーク値と最小ピーク値とが、加算回路303において加算される。加算値が、アンプ305において1/2され、(MAX値+MIN値)/2の値となる。この出力がD−FF308を経てスライスレベルとして出力される。
【0044】
一方、減算回路304において(MAX値−MIN値)が計算され、コンパレータ306に入力される。(MAX値−MIN値)と、同じくコンパレータ306に入力されるピークレベル超過基準電圧とが比較される。(MAX値−MIN値)の値がピークレベル超過基準電圧を越えた場合には、コンパレータ306が動作(オン)し、AND回路307の出力もオンになる。従って、AND回路307の出力であって、D−FF308に入力される信号により、DFF308が動作を停止し、前回のスライスレベルを保持する。
【0045】
図9に示すように、信号振幅の最大ピーク値(MAX値)と最小ピーク値(MIN値)とを常に更新し、最大ピーク値と最小ピーク値の中間値をスライスレベルとすることで、スライスレベルを更新する。
従って、第1のスライスレベル作成器においては、スライスレベルの決定が迅速にできる。この点において、本発明の第2の実施の形態によるDS回路の第1のスライスレベル作成器に用いるのに適している。
【0046】
また、入力するアナログ復調信号値の変化に応じて最大ピーク値と最小ピーク値とを更新するため、スライスレベルを最適の値に保つことができる。受信キャリの周波数ドリフトなどの影響によるDCレベルの変動に対して出力を追従させることが可能になる。
尚、(MAX値−MIN値)の値がピークレベル超過基準電圧を越えた場合には、前回のスライスレベルを保持することにより、ノイズなどに起因する突発的なピーク値の変動があっても、その影響を低減することができる。
【0047】
次に、本発明の第4の実施の形態によるデータスライサについて、図10及び図11を参照して説明する。図10は、本発明の第4の実施の形態によるDS回路のスライスレベル作成回路の構成を示す図である。図11は、第4の実施の形態によるDS回路を含む信号受信回路の動作波形である。尚、図10に示すスライスレベル作成器は、図6の第2のスライスレベル作成器202に適用するのが好ましい。そこで、適宜、図6を参照して説明する。
【0048】
図10に示すように、本発明の第4の実施の形態によるDS回路中に含まれるスライスレベル作成器は、レベル変化検出回路401と、ゼロクロス検出器402と、第1アンプ403及び第2アンプ405と、加算回路404と、コンパレータ406と、切り替えスイッチ407と、D−FF408と、NOR回路409とを有している。
【0049】
図6に示すDS200において、第1のスライスレベル作成器201から第2のスライスレベル作成器202に動作が切り替わった瞬間は、図10に示す初期値用スイッチ407によってスライスレベル作成器201で形成されたスライスレベル(スライスレベル初期値)が、第2のスライスレベル作成器202に与えられ、コンパレータ206(図6)において2値化される。このスライスレベル初期値は、スライスレベル作成器202にとっては初期値となる。
【0050】
それ以後は、図6に示すコンパレータ206の出力信号が配線L1によりゼロクロス検出器402に入力する。ゼロクロス検出器402は、コンパレータ206の出力信号である2値化出力が“1”から“0”又は“0”から“1”へ変化した場合に、その変化の瞬間を検出する。レベル変化検出回路401は、ゼロクロス検出器402により検出された検出出力を起点として、1ビット時間の1/2前後の時間における復調アナログ信号電圧の変化値を検出する。第1アンプ403は、レベル変化検出回路401により検出された電圧変化分に相当する第1電圧信号を出力する。第1電圧信号と、以前のスライスレベルであって第2のアンプ405を介して得られる第2の信号電圧とを加算回路404において加算する。この加算回路404の出力が新たなスライスレベルになる。
【0051】
但し、上記回路にはレベル変化規制回路が付加されている。レベル変化規制回路は、上記の電圧変化分がコンパレータ406に入力されているレベル変化超過検出基準電圧を超えると、コンパレータ406が動作する。コンパレータ406が動作すると、NOR回路409の出力信号によってDFF408が動作を停止する。従って、以前のスライスレベルを保持する。
【0052】
図11に示すように、スライスレベルは、アナログ復調信号のピーク値(MAXとMIN)との変動にほぼ忠実に変動していることがわかる。また、レベル変化検知回路は、2値化されたデータのゼロクロスポイントを起点として、ゼロクロスポイントより1ビット時間の1/2だけ遅い時点における信号ピーク値の差(MAX−MIN)を変化レベルとして出力する。
【0053】
従って、最大ピーク値(MAX)を検出する必要がなく、回路規模も小さくでき、かつ、処理速度を向上させることができる。
加えて、レベル変化規制回路を設けることにより、ノイズ等に起因するアナログ復調信号のピーク値の突発的な変動があっても、上記変化レベルを大きく設定されすぎて、スライスレベルが適切な値に設定されなくなるという問題点を解消することが可能である。
【0054】
以上、実施の形態に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。その他、種々の変更、改良、組み合わせが可能なことは当業者に自明であろう。
【0055】
【発明の効果】
本発明によるデータスライス回路を有する無線受信回路においては、復調信号を精度良く2値化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるDS回路を含む無線受信回路の回路図である。
【図2】図1のDS回路に用いられるレベル検知回路の具体的な回路図である。
【図3】図1のDS回路の回路例を示す図である。
【図4】DS回路の動作波形を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態の変形例によるDS回路の回路図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態によるDS回路を示す図である
【図7】図6のDS回路を含む無線受信装置の動作波形例である。
【図8】本発明の第3の実施の形態によるDS回路のスライスレベル作成器の構成を示す図である。
【図9】第3の実施の形態によるDS回路を含む信号受信回路の動作波形である。
【図10】本発明の第4の実施の形態によるDS回路のスライスレベル作成回路の構成を示す図である。
【図11】第4の実施の形態によるDS回路を含む信号受信回路の動作波形である。
【図12】一般的なデータスライサの回路図である。
【図13】アナログ復調データ信号波形とスライスレベルとの関係と、データスライス出力信号波形とを示す図である。
【図14】アナログ復調データ信号波形とスライスレベルとの関係と、データスライス出力信号波形とを示す図である。
【符号の説明】
A…無線受信回路、100…アンテナ、101…ローノイズアンプ(LNA)、102…ミキサ、103…ローカル信号発生器、104…バンドパスフィルタ(BPF)、105…利得制御(AGC)アンプ、B…復調回路、109…DS、110…レベル検知回路、201…第1のスライスレベル作成器、202…第2のスライスレベル作成器、203…第1のAND回路、204…カウンタ、205…切り替えスイッチ、206…コンパレータ、207…第2のAND回路、301…MAX値検出器、302…MIN値検出器、303…加算回路、304…減算回路、305…アンプ、306…コンパレータ、307…AND回路、308…Dフリップフロップ(D−FF)、401…レベル変化検出回路401、402…ゼロクロス検出器、403…第1アンプ、404…加算回路、405…第2アンプ405、406…コンパレータ、407…切り替えスイッチ、408…D−FF、409…NOR回路。
15

Claims (7)

  1. 復調信号に基づいて該復調信号をスライスするためのスライスレベルを作成し出力するスライスレベル作成器と、第1及び第2の入力端子を有する比較回路であって前記第1の入力端子から入力される前記復調信号と前記スライスレベル作成器から出力されるスライスレベルとを比較する比較回路と、を備え、前記復調信号を2値化して出力するデータスライサと、前記復調信号が所定の範囲内の振幅を有している場合に、前記データスライサを動作させる制御信号を出力するレベル検知回路とを有し、
    前記スライスレベル作成器は、さらに、前記最大ピーク値と前記最小ピーク値との差が前記所定の範囲を超えている超過期間中、前記スライスレベルを更新せずに前記超過期間の直前のスライスレベルに保持するスライスレベル保持回路を有するデータスライス回路。
  2. 前記スライスレベル作成器は、前記復調信号の最大ピーク値と最小ピーク値とを更新しつつ記憶し、記憶された前記最大ピーク値と前記最小ピーク値との中間値を求めてスライスレベルとする請求項1に記載のデータスライス回路。
  3. 前記スライスレベル作成器は、入力信号レベルの変化分を検出するレベル変化検出回路と、前記スライスレベルと前記変化分との加算値を新たなスライスレベルとして出力するスライスレベル更新回路とを有する請求項1に記載のデータスライス回路。
  4. 前記レベル変化検出回路は、前記2値化されたデータのゼロクロスポイントを起点とした前後1ビット時間の1/2の時点における前記復調信号の値の差を前記変化分とする請求項に記載のデータスライス回路。
  5. 前記スライスレベル作成器は、さらに、前記変化分が規定された値を超えている期間中、前記変化分をゼロとするレベル変化規制回路を有する請求項又はに記載のデータスライス回路。
  6. 復調信号に基づいて該復調信号をスライスするためのスライスレベル作成回路であって、第1のスライスレベルを作成し出力する第1のスライスレベル作成器と該第1のスライスレベルとは異なる特性を有する第2のスライスレベルを作成し出力する第2のスライスレベル作成器とを有するスライスレベル作成回路と、第1及び第2の入力端子を有する比較回路であって前記第1の入力端子から入力される前記復調信号と前記第1のスライスレベル及び前記第2のスライスレベルのいずれか一方とを比較する比較回路と、を備え、前記復調信号を2値化して出力するデータスライサと、前記復調信号が所定の範囲内の振幅を有している場合に、前記第1のスライスレベル作成器と前記第2のスライスレベル作成器とを動作させることができる制御信号を出力するレベル検知回路と、前記第1のスライスレベル作成器と前記第2のスライスレベル作成器とのいずれに対して前記制御信号を出力するかを選択するとともに、選択された方の出力を前記比較回路の前記第2の端子に入力させるスライスレベル切り替えスイッチとを有し、
    前記第1のスライスレベル作成器は、前記復調信号の最大ピーク値と最小ピーク値とを更新しつつ記憶し、記憶された前記最大ピーク値と前記最小ピーク値との中間値を求めてスライスレベルとする回路であり、前記制御信号が出力されている制御信号出力期間のうちの初期期間内に選択され、
    前記第2のスライスレベル作成器は、入力信号レベルの変化分を検出するレベル変化検出回路と、前記スライスレベルと前記変化分との加算値を新たなスライスレベルとして出力するスライスレベル更新回路とを有し、前記制御信号が出力されている制御信号出力期間のうちの前記初期期間経過後に選択されるデータスライス回路。
  7. さらに、前記第1のスライスレベル作成器と前記第2のスライスレベル作成器との切り替え時に、前記比較回路に対して切り替え前のスライスレベルを出力するスライスレベル初期設定回路を有する請求項に記載のデータスライス回路。
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