JP3832113B2 - アルミニウム含有合成石英ガラス粉、アルミニウム含有石英ガラス成形体及びこれらの製造方法 - Google Patents

アルミニウム含有合成石英ガラス粉、アルミニウム含有石英ガラス成形体及びこれらの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体分野、特に1000℃以上の高温度領域で使用される半導体製造用石英ガラス用、或いは光ファイバー等の製造時に高温処理されるプロセスを有する光学用として好適な合成石英粉末、石英ガラス製品に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、半導体産業分野に使用される石英ガラス製品については、その純度に関し非常に厳しい管理が行われている。この様な高純度のガラスを得るに際し、従来天然石英を精製、粉砕して得た天然石英粉を溶融することにより製造されていたが、半導体の高集積化、歩留まりの向上の要求が厳しくなるにつれ、精製技術についてもコストの高いものが要求されるようになってきている。一方これとは別に、高純度の石英ガラスを得る方法として、四塩化珪素を原料とした気相法によるものがあるが、多くのエネルギーを要し、効率が悪いという欠点を有している。これらの問題点を解決する方法として、例えばシリコンアルコキシド等の有機珪素化合物を原料として液相反応によりシリカゲルとし、更に乾燥、粉砕、焼成等の工程を経てガラスとする、いわゆるゾルゲル法による合成石英粉末を得、これを溶融成形して石英ガラス製品とする方法がある。
【0003】
しかしながら、合成石英粉を溶融成形して得られた石英ガラス製品は一般に、天然石英粉を原料としたものと比較して高温粘性が低いため、単独で高温用途に用いられる例は少なく、例えば、外側を天然石英、内側を合成石英とした二重構造のルツボを作製し、高温強度を確保する工夫がなされている(特開平3−40989号公報)。また、合成石英ガラス自体の高温粘性を向上させる手法として、ガラス中にアルミニウムを微量添加する方法が知られている(特開昭61−236619号公報、特開平3−45530号公報)。アルミニウム添加による高温粘性向上のメカニズムの詳細は未だ判明してはいないが、(1)Na、K、OH等のガラス修飾酸化物(末端基)として存在し、高温粘性を低下させるようなイオンをトラップさせる、(2)高融点のアルミナがガラスの粘性流動を阻害する、等の説が有力である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
合成石英ガラスの用途として特にシリコン単結晶引き上げ用ルツボは、1400〜1500℃という高温で長時間使用される。特に近年、連続的に原料シリコンを投入しながら行う連続引き上げ法が実施されるようになり、更にルツボの使用時間が長時間化してきている。ルツボの形態であるガラス相(非晶質)は準安定相であるため、前述の温度領域で長時間保持すると、安定相である結晶質(クリストバライト)へ転移しようとする。特に、金属不純物等が存在するとこれが結晶核となって、より結晶化を促進する。単結晶引き上げ中に、この現象(一般に失透と呼ばれている)が生じると、ルツボ内壁部分に生成した結晶質部分が分離して、シリコン融液中に混入し、単結晶化を妨害する事となる(UCS半導体基盤技術研究会編集「シリコンの科学」,1996)。また、シリコンウエハーの熱処理等に用いられる炉心管についても、その使用温度は低いものの、長時間使用することにより失透が生じると、加熱・冷却の繰り返しにより、結晶質と非晶質の部分で熱膨張率が異なるため、強度低下、破損の要因となる。これらの問題点に対して、合成石英ガラスは金属不純物含有量が天然水晶粉と比較して極めて低いレベルにあり、失透しにくい。
【0005】
上述のように、合成石英ガラスの高温粘性向上には、アルミニウムの微量添加が効果があるとされているが、その一方で、アルミニウムの添加により、失透現象が発現しやすくなることが、本発明者らの検討により明らかとなった。石英ガラス製品の表面にアルミニウムを塗布して焼き付けることで高粘性を図ることが行われており、この方法では石英ガラス製品の表面が失透しやすい。つまり、アルミニウムの存在により失透を引き起こすことは知られている。これに対しては、アルミニウムの添加時期として、ガラス中に分子レベルで均一に分散させるためにはゾルゲル法を採用し、その加水分解時に添加することが考えられる。実際、ゾルゲル法に関する上記各公知技術ではアルミニウムのアルコキシドを珪素アルコキシドの加水分解液に添加している。
【0006】
しかしながら、こうして得られたアルミニウム含有合成石英ガラス粉を用いて溶融成形すると、できあがった成形体中には多くの泡が発生する問題が生じることがあった。本発明者らは先に、アルミニウム含有合成石英ガラスの発泡現象を抑えるため、ゾルゲル法での原料段階でアルミニウム化合物を添加することを提案している(特開平10−287417号公報、特開平10−287418号公報)。しかしながら、こうして発泡現象が抑えられたアルミニウム含有合成石英粉を用いて溶融成形したところ、出来上がったインゴット中には多くの失透スポットが発生する事があった。
これは、アルミニウムが局所的に高濃度で存在する部分があるためと推測される。つまり、一般に原料を均一分散しうると考えられるゾルゲル法を採用してガラス化以前にアルミニウム化合物を添加してもなお、失透現象を防止できるほどのアルミニウムの分散の均一性が達成できてはいないことが推測された。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、特定の評価方法で評価した物性値が一定の基準内にあるアルミニウム含有合成石英ガラス粉は、溶融成形した際の失透現象の発生を防止できることを見出した。そして、このようなアルミニウム含有合成石英ガラス粉は、ゾルゲル法において特定の手段をとることにより得ることができることをも見出した。すなわち、本発明は、アルミニウムを含有する合成石英ガラス粉であって、1780〜1800℃で真空溶融してインゴットとし、1630℃において5時間保持した場合、該インゴット中に発生する20μmφ以上の大きさの失透スポットが10個/50g以下であることを特徴とするアルミニウム含有合成石英ガラス粉、アルミニウムを含有する合成石英ガラス粉を、1700℃以上で且つ30分以上保持する工程を含むことを特徴とするアルミニウム含有石英ガラス成形体等に存する。
本発明のアルミニウム含有合成石英ガラス粉を溶融成形すると失透スポットの発生が抑えられるメカニズムは明らかではないが、おそらくアルミニウムが高度に分散しており、このことからアルミニウムが局所的に高濃度で存在せず、失透スポットの発生が防止できていると考えられる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明を満足するようなアルミニウム含有合成石英ガラス粉の製造方法として最も好ましくは、シリコンアルコキシドの加水分解・ゲル化等によりシリカゲルを得、これをガラス化するゾルゲル法によって行う方法がある。
ここでシリカゲルを得る方法は限定されないが、代表的にはシリコンアルコキシドと水を反応させて加水分解、ゲル化、乾燥してシリカゲルとする方法がある。
シリコンアルコキシドとしては、特に限定されるものではないが、得られるアルミニウム含有合成石英ガラス粉へのカーボンの残存を容易に防止できる点から珪素に結合している基の全てが加水分解可能な基であるものが好ましく、特に塩素等の残存も防止できる点からテトラアルコキシシランが特に好ましい。テトラアルコキシシランとしてはC1〜C4の低級アルコキシシラン、或いはその低縮合物であるオリゴマーが、加水分解が容易でありシリカゲル中への炭素残存が少ない点から好ましい。特に価格の安価な点からはテトラメトキシシランが望ましい。
【0009】
これらシリコンアルコキシドを水と反応させて加水分解、ゲル化、乾燥してシリカゲルとするのであるが、アルミニウム源を添加することによりアルミニウム含有シリカゲルとする。最終ガラス製品の高温粘性を向上させるためのアルミニウム含有量としては0.5〜50ppm程度あれば十分であり、これ以上添加されても高温粘性向上の効果はほとんど変わらず、また、半導体に対して不純物となるアルミニウム濃度が、あまり高くなることは好ましくない場合がある。一方、上記範囲よりアルミニウム添加量が少ないと、1000℃以上の高温使用に十分耐え得るだけの粘性向上効果が不十分となる。アルミニウムの含有量としては0.1〜100ppm、通常は0.5〜50ppmである。
【0010】
用いることのできるアルミニウム源は特に限定されないが、シリコンアルコキシドと相溶性のあるアルミニウム化合物が好ましく、具体的にはアルミニウムのキレート化合物を用いるのが特に望ましい。アルミニウムのキレート化合物としては特に限定されず、例えばアルミニウムトリス(エチルアセトナート)、アルミニウムモノアセチルアセトナートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)(アルミニウムアセチルアセトナートともいう)が挙げられる。その中でも特に、シリコンアルコキシドと加水分解速度が近く、相溶性も高いことからアルミニウムアセチルアセトナートが好適に用いられる。この、アルミニウムキレート化合物を、最終ガラス製品中に上記濃度となるよう添加するのであるが、添加時期としてはゲル化前の段階、特にシリコンアルコキシドに水を添加する前が、本発明のアルミニウム含有合成石英ガラス粉を得るには好ましいことが本発明者らの検討により明らかとなった。添加方法としては、最終製品中の目標濃度が低いため、予めアルミニウム濃度が対SiO2 換算で60〜1500ppm、好ましくは80〜1200ppm程度の濃厚溶液を調整し、これを後述するように放置した後、シリコンアルコキシドを追加して使用する方がアルミニウム濃度調整の精度がよく、また効率的である。
【0011】
さて、このアルミニウムキレート化合物をシリコンアルコキシド中に添加した後、すぐに加水分解反応を開始すると、ゲル化、粉砕、乾燥後に得られた乾燥ゲルは、通常のシリコンアルコキシドのみで反応して得られたゲルと比較して、比表面積が小さく、焼成時に未燃カーボンに由来する黒色異物が発生し、溶融した際に発泡の多いものとなることが本発明者らにより見出されており、これを回避するため、以下に述べるようにアルミニウム化合物を添加したシリコンアルコキシドを5時間〜1日放置することを先に提案している(特開平10−287417号公報、特開平10−287418号公報)。しかしながら、この程度の放置では、発泡は抑えられるものの、失透は充分に抑えられないことが判明した。失透防止には、少なくとも2日以上放置することが効果的であることが本発明者らにより見いだされた。
【0012】
このように長時間放置することにより失透が防止できるメカニズムは明らかではないが、おそらく以下のことが考えられる。均一混合を達成するには加水分解速度の面からアルミニウム含有化合物としてアルミニウムキレート化合物を用いるのが望ましいと考えられることは上述のとおりであるが、アルミニウムキレート化合物は一般に数個のアルミニウム含有単位が会合した多量体として存在するが、テトラアルコキシシラン等のケイ素化合物に混合された後、次第に会合状態が解放されて、単分子レベルで分散していくと考えられ、失透スポットの発現を引き起こさない程度の均一分散性を得るには、通常予測されうる時間より大幅に長時間を要しているものと推測される。つまり、アルミニウムキレート化合物はシリコンアルコキシドへの溶解度は大きく、添加すれば速やかに溶解することから、アルミニウムキレート化合物が溶解した時点では既にアルミニウムの均一分散性として充分であると考えるのが通常であるが、そのような予測に反して、単に溶解させただけでは失透防止には十分でなく、アルミニウム化合物が何らかの経時変化を経て、しかる後に加水分解されることが、失透防止に寄与しているのではないかと推測される。この経時変化のメカニズムは明らかではないものの、加熱により変化が促進されると考えられることから、室温では少なくとも2日以上の放置が適当であるが、加熱下では、より短時間でも充分であると考えられる。
【0013】
放置を行わず又は放置が不十分な段階で後述の加水分解反応を実施すると、最終的に得られる成形体中の失透明スポットが増加する。
放置時には、単に放置するのみではなく混合、撹拌、加熱等を行ってもよいが、一般にアルミニウムキレート化合物のシリコンアルコキシドへの溶解度は大きく、添加すればすみやかに溶解し、添加後単に放置すれば本発明の効果は十分である。すなわち如何なる機構によるものかは不明であるが、意外にも添加後2日以上加水分解に要する水を添加せずにおくという簡単な要件を満たすことにより、本発明のアルミニウム含有合成石英ガラス粉、さらには本発明のアルミニウム含有石英ガラス成形体を得ることができるのである。
【0014】
このように、特定時間放置したシリコンアルコキシド中のアルミニウム濃度が最終ガラス製品の目標濃度を超えている場合は、最終的なアルミニウムの濃度に応じてシリコンアルコキシドを追加してアルミニウム濃度を希釈してから水を加えて加水分解反応を開始する。このシリコンアルコキシドでの希釈後は、直ちに加水分解反応を開始させてもその効果は妨げられない。なお、加える水の量としては、通常、反応に必要な1倍当量以上10倍当量以下である。また、加水分解時に必要に応じてアルコキシドと水双方に相溶性のあるアルコール類や、エーテル類、ケトン類等の有機溶媒を混合しても良い。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等が、エーテル類としてはジエチルエーテル等が、ケトン類としてはアセトン等が挙げられる。
但し、加水分解反応の進行につれてアルコキシドに結合していたアルコキシ基がアルコールとして遊離するため、ゲル化する以前に反応液が均一な状態となる場合、すなわち、加水分解速度の大きいアルコキシ基(例えばメトキシ基)を有するような原料の場合、アルコールの添加を行わなくとも実際上支障無く運転できる。なお、これらの原料液は、当然ながら全て高純度とする。
【0015】
加水分解反応は、アルコキシドと水との均一溶液が形成された時点以降にほぼ終了する。次いで均一相になった後は、溶液がゲル化するまで静置すればよい。加水分解反応及びゲル化の条件は用いられる原料によって異なるが、通常20〜80℃の温度下、常圧の圧力条件下で20分〜10時間程度である。
加水分解物をゲル化させるには、加熱すれば直ちにゲルを得ることが出来るが、常温で放置しても数時間でゲル化するので、加熱の温度を調節することによって、ゲル化時間を調整することが出来る。ゲルの比表面積は限定されないが、窒素吸着法により測定した比表面積が400m2 /g以上、さらには500m2 /g以上のものとすることにより、残存炭素に由来すると考えられる石英ガラス成形体中の発泡を抑えるのには効果的である。
このようにして得られたゲルは、通常水分を70重量%以上含有するウェットゲルである。
【0016】
こうして得られたシリカゲルを必要に応じて粉砕等により細分化し、シリカゲル粉末とする。また、一般には後述する焼成に先駆けてシリカゲルを乾燥する。この場合、ゲルを細分化してから乾燥しても良いし、乾燥してから細分化しても良い。いずれにしても、乾燥後の粒径が、10〜1000μm、好ましくは100〜600μmとなるよう細分化を行い、平均粒径を150〜300μmとする。
得られたウェットゲルは、粉砕により任意の粒度に調整される。この時、目的とする最終製品の粒度分布を得るため、乾燥、焼成による収縮分を考慮してウェットゲルの最適粒度を決めればよい。通常は、最終製品として50〜1000μmの範囲の粒度に調整される。
【0017】
粉砕されたウェットゲルは、乾燥後、焼成して合成石英粉末とする。ここで、乾燥は、通常50〜200℃の温度で実施され、ウェットゲル中の遊離水及び遊離メタノールを除去し、ドライゲルとする。
乾燥は常圧下でも減圧下でも良く、加熱温度は条件によっても異なるが、通常50〜200℃である。また、操作は回分、連続のいずれによっても行うことが出来る。乾燥の程度は、通常、水の含有量で1〜30重量%まで行われる。
このようにして得られた乾燥シリカゲル粉末は、最終的に、1000〜1300℃の温度領域で加熱し無孔化させて合成石英粉とするが、300〜600℃の温度領域での保持時間を長くし、吸着アルコール或いはアルコキシ基に由来するカーボン成分を、ゲルの封孔が生じる前に十分に除去してやる方が溶融時の発泡を抑制する上で好ましい。
【0018】
これは、ドライゲル中に残存しているカーボン成分(大部分がアルコキシ基)を、ゲルの無孔化が進行する前に充分に除去してやる事が、得られた合成石英粉末溶融時の発泡を抑制するために重要であり、このため、酸素含有雰囲気中で、特にアルコキシ基の脱離温度である300〜600℃の温度領域に於いて、昇温勾配を緩やかにしたり、保持を設けたりする工夫を行うことが効果的である。しかしながら、この際、焼成前のシリカゲル粉末の比表面積が400m2 /g未満であると、前記の様な焼成条件の工夫を行っても、黒色異物の発生を問題のない範囲に抑える事が難しくなる。従って、この焼成前のシリカゲル粉末の段階に於いて、少なくとも400m2 /g以上、好ましくは500m2 /g以上としておくのが望ましい。このように、比表面積の大きなゲルを製造する方法としては、例えば、前述したようにアルミニウム化合物とシリコンアルコキシド混合溶液を放置することで達成できる。
【0019】
一方、最終的に得られる合成石英ガラス粉の用途が1000℃以上の高温領域で使用される石英ガラス部材である場合は、焼成後のシラノール基残存量が低い方が高温粘性が高いので好ましく、通常、残存シラノール濃度としては、100ppm以下、好ましくは60ppm以下のものが好ましい。シラノール濃度を効率的に下げるには、雰囲気ガスの露点は低い方が良く、露点−20℃以下、好ましくは−40℃以下であることが好ましい。焼成最高温度としては、高い方がシラノールの拡散速度が速くなるため、より短時間で目的のシラノール濃度のものを得ることが出来るが、粒子同士の焼結、焼成容器の耐熱性の問題等から、通常1000〜1300℃の範囲で実施される。
【0020】
また、焼成の雰囲気としては、少なくとも600℃付近までは酸素含有雰囲気とすることが好ましい。更に、シラノール基の含有量の低い石英ガラス粉末を得るためには、水分含有量の低いガス、具体的には、露点−20℃以下、好ましくは露点−40℃以下のガスを系内に導入しながら焼成を行う。この時に導入するガスについては、金属ミスト等の不純物が系内に入らないよう、予めフィルターにより濾過したものを使用する。フィルターの能力としては、1μm以上、好ましくは0.5μm以上の粒子を除去できる性能のものを選択する。また、フィルターの材質としては、高純度の有機高分子系、具体的には、ポリプロピレン、テフロン製のものが好適に用いられる。有機高分子系であっても、灰分量の高いもの、特にアルカリ、アルカリ土類系金属含有量の高いものは好ましくない。焼成の最高温度における保持時間は、温度によりシラノール基の減少速度が異なるため、保持時間もおのずと異なってくるが、通常10〜100Hrの範囲である。
【0021】
本発明のアルミニウム含有合成石英ガラス粉は例えば以上述べた方法によって得ることができるが、これに限定されない。アルミニウムを含有する合成石英ガラス粉であって、1780〜1800℃で真空溶融してインゴットとし、これを1630℃で5時間保持した場合、このインゴット中に発生している20μmφ以上の大きさの失透スポットが10個/50g以下のものであればよい。この失透明スポットは以下のようにして測定するものである。すなわち、合成石英ガラス粉50gをルツボ等の耐熱容器に入れ、1780〜1800℃の温度で真空溶融、冷却しインゴットを作製する。このインゴットを、1630℃の範囲に加熱し5時間保持し、冷却する。このインゴットの中を観察すると、数十〜1mm程度の白色球状に変化したものが観察されることがあるが、これが問題となる「失透スポット」である。本発明者らが研究を重ねた結果、この「失透スポット」の発現数と、最終製品に成型しこれを使用時に発生する結晶化との間に、大きな相関のあることが判り、20μmφ以上の大きさの失透スポットが10個/50g以下、好ましくは5個/50g以下、特に好ましくは2個/50g以下である様なアルミニウム含有合成石英ガラス粉を用いて、シリコン単結晶引き上げ用ルツボ等、高温で使用する石英ガラス部材を製造すれば、この石英ガラス部材を通常の条件下で使用しても問題となるようなガラスの結晶化現象が生じないことが判明した。そして、従来、失透スポットが発現しやすかったアルミニウム含有合成石英ガラス粉において、実際に失透スポットの発現を極めて低レベルに抑えたものを得ることに成功したのである。
【0022】
失透スポットの大きさは、例えば光学顕微鏡等を用いて拡大して測定することができる。失透スポットの形状がほぼ球形であれば、その直径をもって大きさを規定する。失透スポットの形状は必ずしも球形でないこともあるが、その場合は、長径で大きさを規定する。
なお、失透スポットの発生する機構は複雑であると考えられ未だ明らかではないが、アルミニウムの局所的な高濃度での存在が核形成物質として働き、高温使用時に結晶化を生じることが考えられる。そして、上述の方法で原料段階での長時間放置という手段により、核形成物質として働くような形態でのアルミニウムの存在が抑えられ、失透防止に効果的なのではないかと推測される。
このように、アルミニウムが局所的な高濃度での存在が失透を引き起こすことが推測されることから、アルミニウムの局所的な高濃度での存在を防止するため、ガラス化した後に1700℃以上で保持することにより、合成石英ガラス中でアルミニウムを高分散化させる処理が効果的である。このような処理により、アルミニウム含有石英ガラス成形体中での失透スポットを低減させることができる。
この場合、上述したように、アルミニウム含有合成石英ガラス粉としてテトラアルコキシシランの加水分解、乾燥、焼成によって得たものを用い、さらにアルミニウムの添加をガラス化以前の段階で行うのが、よりアルミニウムの分散状態の均一性と失透防止の観点からは好ましい。
【0023】
この様にして得られたアルミニウム含有合成石英粉末を用いて溶融成形して石英ガラス成形体として各種のガラス部材することにより、その耐熱性についても、従来のアルミニウム無添加合成石英ガラス部材と比較して高いものを得ることができる上、成形体における結晶化を防止することができる。
より具体的には、アークメルト法、ベルヌーイ法の真空溶融法等種々の成形法により、シリコン単結晶引き上げ用ルツボ、拡散炉のチュープや治具等の半導体製造用石英ガラス部材等、高温強度の要求される高純度石英ガラス部材として特に好適である。勿論、光ファイバー、IC封止材等、高温での使用以外の用途に使用しても差し支えない。
以下、実施例により、更に詳細に説明する。
【0024】
(実施例1)
アルミニウムアセチルアセトナート粉末:12.0gをテトラメトキシシラン:1000gに溶解させて、1リットルのポリ容器にいれ、密栓状態で48時間、室温で放置した(これを溶液Aと称す)。次に、5リットルのジャケット付きセパラブルフラスコ中に、テトラメトキシシラン:2000gと、上記の溶液A:4gを仕込み、撹拌しながら水:1184gを添加して加水分解反応を開始させた。なお、この反応時のジャケット温度は50℃とした。最初はエマルジョン状態で溶液は白濁していたが、約20分後に透明均一相となった。更に3分後、反応容器下部より反応液を5リットルポリ容器に移し変えて、静置・ゲル化させた。ゲル化したものを、開口径900μmのナイロン網を通過させながら粉砕し、200℃で10時間真空乾燥を行い、ドライゲル粉末とし、100〜500μmの範囲に分級を行った。その後、このドライゲル粉末を2リットルの角型石英ガラス容器に入れ、電気炉にセットした。仕込み粉体表面には露点−40℃の脱湿空気を流通させながら、500℃まで2時間で昇温、500℃で10時間保持、1200℃まで4時間で昇温、1200℃で40時間して焼成を行った。また、分析の結果、粉体中のアルミニウム含有量は4.8ppmと、ほぼ計算値通りにアルミニウムがドープされていることが確認された。
【0025】
得られた粉体であるアルミニウム含有合成石英ガラス粉を取り出し、このうち50gを黒鉛製のルツボに入れ、1800℃で真空溶融し、インゴットを作製した。このインゴットを、Arガス雰囲気中で1630℃で5Hr保持し、冷却後、得られたインゴットの内部を顕微鏡で観察したところ、20μmφ以上の大きさの失透スポットは見られなかった。
【0026】
(比較例1)
アルミニウムアセチルアセトナート粉末をテトラメトキシシランに溶解させ、ポリ容器に移した後の密栓状態での放置時間を48時間に変えて24時間とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。50gのインゴット中、失透スポットは100個観察された。
【0027】
【発明の効果】
本発明により、高温使用時に結晶化の抑えられたアルミニウム含有石英ガラス成形体を得ることができる。

Claims (4)

  1. アルミニウムを含有するシリカゲル粉末であって、焼成してアルミニウム含有合成石英ガラス粉とし、1780〜1800℃で真空溶融してインゴットとし、更に1630℃で5時間保持した場合、そのインゴット中に発生する20μmφ以上の大きさの失透スポットが10個/50g以下であるアルミニウム含有シリカゲル粉末。
  2. 請求項記載のアルミニウム含有シリカゲル粉末を焼成してなるアルミニウム含有合成石英ガラス粉。
  3. アルミニウムを含有する合成石英ガラス粉を、1700℃以上で且つ30分以上保持する工程を含むことを特徴とするアルミニウム含有石英ガラス成形体の製造方法。
  4. アルミニウムを含有する合成石英ガラス粉が、テトラアルコキシシランの加水分解、乾燥、焼成によって得られたものである請求項記載のアルミニウム含有石英ガラス成形体の製造方法。
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