JP3832031B2 - 液体クロマトグラフィー用充填剤、その製造方法、それを用いたカラム、分析方法及び分析装置 - Google Patents

液体クロマトグラフィー用充填剤、その製造方法、それを用いたカラム、分析方法及び分析装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は分析イオンを分析する液体クロマトグラフィーに使用する分離用充填剤、その製造方法、それを用いたカラム、分析方法及び分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、分析イオンの分析法として多用されているイオンクロマトグラフィー(以下「IC」という)では溶離液により被測定イオンをイオン交換基を有する分離カラムへと導入し、分離カラムにおいてイオン交換作用を利用して分離が達成されている。
【0003】
しかしながら、従来のICでは、被測定イオンの分離をイオン交換カラムにより行なっており、被測定イオンをカラム外へ溶出させるために、通常、溶離液に数mM程度のイオン性物質を含有させる必要があった。
【0004】
ここでICによる被測定イオンの検出方法としては、その多くの場合に、電気伝導度検出器により溶離液の電気伝導度をモニターする方法と、溶離液に含有させるイオン性物質に紫外可視吸収を有する物質を使用し、被測定イオンである分析イオンとの間の吸光度差を利用することにより検出を行なうという紫外可視間接吸光度検出法が採用されているが、いずれの検出方法においても溶離液に数mM程度のイオン性物質を含有させることが検出感度の下限を制限する原因となっている。
【0005】
すなわち、電気伝導度による検出方法においては、イオン性物質を含有した溶離液により、その濃度に応じて電気伝導度のバックグラウンドが上昇するためにノイズレベルが増大し、その結果として、検出感度が制限されてしまっていた。
【0006】
また、紫外可視間接吸光度検出法においては、検出に使用する紫外可視吸光度検出器には通常吸光度と検出器応答との間の直線性に上限があり、通常両者の直線関係が成立する範囲において用いられるため、この検出方法により定量的な分析を行なう場合、使用する溶離液の吸光度はその上限が制限されることとなってしまっていた。そのため溶離液の濃度が高い場合には、溶液の吸光度は溶質の濃度とその吸光度係数の積に比例するため、吸光度係数の大きなイオン性物質が使用できず、吸光度係数の大きなイオン性物質を使用するほど感度が向上する紫外可視間接吸光度検出法においては、このことが検出感度の制約となっていた。
【0007】
これらのことより、いずれの検出方法においても溶離液中に添加する数mM程度のイオン性物質により、その検出感度が制限されてしまっているという問題があった。
【0008】
このために、電気伝導度検出におけるバックグラウンドを低下させる試みとして、イオン交換膜等を使用することによりカラムからの溶出液の電気伝導度を低下させるサプレッサ法があった。しかしながら、この方法では装置構成が複雑、かつ高価であり、溶離液の調製が煩雑であるという問題があった。
【0009】
一方、溶離液に添加するイオン性物質の濃度を低下させる試みとしては、陽、陰両性イオン荷電部を有する化合部を固定化したカラムを使用し、純水あるいは水系溶媒を溶離液とする方法があった。しかしながら、この方法では被測定イオンは、イオンペアのような形(ion−pairing−like form)として溶出するために、そのクロマトグラムにおける保持容量は、被測定試料中に共存するその対イオンにより大きく変化するという現象が見られ、このため、例えば、被測定試料中のn種の陰イオンを分離定量する場合において、被測定試料中にm種の陽イオンが共存すれば、n×m種のピークがあらわれることとなり、それらを完全分離し、被測定試料中の各陰イオンの定量することがが困難であるため、その適用できる試料が限られてしまっているという問題があった。また、この方法では、陽、陰両性イオン荷電部を有する化合物のカラムへの固定化方法としては、充填剤表面との疎水的相互作用を利用した報告例があるだけである。このため、この方法において、カラムへ有機溶媒を含有する溶液を送液した場合、陽、陰両性イオン荷電部を有する化合物がカラム外へ溶出してしまうという問題があった。従って、ICにおいて通常使用されている手法である疎水性の高い試料を測定する場合の溶離液への有機溶媒の添加や、カラムに被測定試料中の疎水性の高い夾雑物質が吸着してカラム効率が低下した場合の有機溶媒を含有する溶液によるカラム洗浄ができないという問題があり、また有機溶媒を含有する試料への適用も困難であるという問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記記載の従来技術の問題点を克服し、イオン性成分の分離を可能とし、電気伝導度検出、紫外可視間接吸光度検出において高感度、かつ装置構成が簡潔で、良好な分析イオンの分離パターンが得られ、有機溶媒を含有する溶液の使用も可能である液体クロマトグラフィー用充填剤、その製造方法、それを用いたカラム、分析方法及び分析装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行なった結果、支持担体に、陽イオン性及び/又は陰イオン性荷電部を複数有する水溶性高分子化合物を固定化した液体クロマトグラフィー用充填剤(以下、単に「液クロ用充填剤」という)を充填したカラムを使用することにより、1)溶離液として1mM以下という希薄なイオン性物質を含有する水溶液あるいは水系溶媒によるイオン性成分の分離を可能となること、2)電気伝導度検出、紫外可視間接吸光度検出において高感度検出が可能であること、3)良好な被測定イオンの分離パターンが得られること、4)さらに有機溶媒を含有する溶液の使用も可能であることを見出だし、本発明を完成した。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明において用いられる陽イオン性及び/又は陰イオン性荷電部を複数有する水溶性高分子化合物(以下、単に「イオン性高分子化合物」という)としては、充填剤に固定化できるものであれば特に制限なく用いることができ、例えば、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ヒアルロン酸といったムコ多糖類、ポリスチレンスルホン酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドンといった合成高分子、又はそれらの塩が例示できる。塩としては、ナトリウム、カリウム等との塩が挙げられる。また、その分子量については本発明の目的が達成できるものであれば特に制限はないが、溶解性が良く、充填剤に効率良く固定化するために、重量平均分子量で10000〜1000000が、さらに30000〜300000のものが好ましく用いられる。
【0014】
固定化に使用される支持担体としては、イオン性高分子化合物を固定化できる充填剤であることが好ましく、さらに、その表層部に陽イオン及び/又は陰イオン交換基を有した、例えば、高分子化合物やシリカゲル等の基材に陽イオン及び/又は陰イオン交換基を導入したものが好ましく、これらの充填剤はイオン的相互作用によりイオン性高分子化合物が固定化されることが望ましい。さらに詳しくいえば、好適な充填剤としては、高分子化合物基材の固定相表面に陰イオン交換基が化学結合されたTSKgel IC−Anion−PWXL、陽イオン交換基が化学結合されたTSKgel IC−Cation I/II、シリカゲル基材に陰イオン交換基が化学結合されたTSKgel IC−Anion−SW、陽イオン交換基が化学結合されたTSKgel IC−Cation−SW等(以上、いずれも東ソー製)が例示できる。
【0015】
例えば、固定化に使用される充填剤とイオン性高分子化合物の組み合わせとしては、TSKgel IC−Anion−SWとコンドロイチン硫酸−Cが挙げられる。
【0016】
また、本発明において用いられるイオン性高分子化合物の固定化の方法は、イオン性高分子化合物と充填剤表面のイオン交換基とのイオン的相互作用を利用する方法や、イオン性高分子化合物を充填剤表面に化学結合させる方法等、イオン性高分子化合物が充填剤の表層部に固定化される方法であれば特に限定されるものではない。
【0017】
イオン性高分子化合物の充填剤の固定相表面への固定化の方法、すなわち本発明の液体クロ用充填剤の製造方法としては次の2つに大別でき、本発明においてはいずれの方法でも構わない。第一の方法は、充填剤をカラムに充填した状態で固定化を実施する方法であり、第二の方法は、充填剤をカラムに充填しない状態で固定化を実施する方法である。
【0018】
第一の方法により製造を行なう場合、使用する装置の一例として図1に示すことができる。図中、2の送液ポンプに製造を施すカラム3を接続する。1の溶液タンクにはイオン性高分子化合物の水溶液を満たした溶液タンクを用意する。その濃度はその溶解度の範囲内であれば特に制限されるものではないが、0.1%(重量/容量)程度が好ましく用いられる。
【0019】
製造の手順としては、まず送液ポンプ2によりイオン性高分子化合物の水溶液をカラム3へと一定流速で一定時間送液する。ここで、送液の際の流速はカラムの耐えられる圧力の範囲内であれば特に制限されるものでない。また、送液の時間についても特に制限されるものではないが、例えば、カラム3の大きさが内径4.6mm×長さ50mmの場合、1ml/分の流速で2時間程度の送液することで良く、その後適当な廃液タンク4へ排出される。
【0020】
以上の操作により完了する。
【0021】
一方、第二の方法により製造を行なう場合、充填剤をイオン性高分子化合物の水溶液と共に、これらの量に応じた適切な大きさ、形状を有する容器に入れ、これらを分散させる。一定時間経過後、処理された充填剤を回収することにより完了する。ここで、その充填剤を回収する方法としては、通常用いられる方法であれば良く、例えば、フィルターによる分離、遠心沈降等を利用した分離などを採用できる。
【0022】
本発明の分析イオンの分析方法における溶離液は、所定の分析イオンを移動させることができるものであれば良く、液クロ用充填剤の種類、分析イオンの種類等により種々選択される。その組成としては、イオン性物質を含有する水溶液あるいは水系溶媒が使用でき、通常のICで使用されているフタル酸、酒石酸といった有機酸、及びそれらの塩や、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸緩衝液等の無機系化合物の水溶液を使用できる。
【0023】
また、溶離液中のイオン性物質の濃度としては、1mM以下が好ましく、さらに0.01〜1mMが、特に0.01〜0.1mMが好ましい。この濃度範囲にあれば、検出時のノイズも小さくなり、高感度な分析が可能となる。例えば、酒石酸の50μM水溶液において良好な分離が達成できる。
【0024】
本発明の方法又は装置により分離できる対象、すなわち分析イオンとしては、無機イオン、有機酸、アミノ酸、タンパク質等、イオン性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、血清、血漿、尿等の体液成分や、廃液などあらゆる試料を対象とすることができる。また、分析イオンとしては、目的、用途により種々選択可能であり、1以上の陰イオンのみ、1以上の陽イオンのみ又は1以上の両性イオンのみとすることもできるし、これらの混合物とすることもできる。また、これらのイオンの価数は問わず、価数の異なったイオンの混合物でも良い。
【0025】
これらを具体的に記載すると、無機の陰イオンとして、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンのハロゲンイオン;ハロゲン酸イオン;亜硝酸、硝酸、次亜リン酸、亜リン酸、リン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、亜硫酸、硫酸、チオ硫酸、チオシアン酸、二チオン酸、亜ヒ酸、亜セレン酸、セレン酸、クロム酸、モリブデン酸、タングステン酸、フッ化ホウ酸、アジ化酸、イオウ、シアン等の酸の陰イオン;EDTA及びその金属との錯イオンが挙げられる。
【0026】
無機陽イオンとして、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属イオン;鉄、鉛、銅、カドミウム、コバルト、亜鉛、ニッケル、マンガン、アルミニウム、アンモニウム、金、白金等の金属イオン;ランタニド族のイオンが挙げられる。
【0027】
有機酸イオンとして、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、バレリアン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、ステアリン酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマール酸、ピルビン酸、グルコン酸、キニン酸、ジクロル酢酸、トリクロル酢酸、アクリル酸、メタクリル酸等の有機カルボン酸陰イオン;炭酸、ホウ酸、アルカンスルホン酸、芳香族スルホン酸、アルキルリン酸等のイオン;アミン類、エタノールアミン類等の有機陽イオンが挙げられる。
【0028】
また、糖類、アルコール類、フェノール類、アミノ酸類、核酸類、タンパク質等も挙げられる。
【0029】
これらのうち、分析イオンの分離能の面から、無機の陰イオンを測定することが好ましく、さらに、ハロゲンイオン、ハロゲン酸イオン、又は酸の陰イオンを測定することが好ましい。
【0030】
本発明により製造したカラムは図2に示すような分析装置に接続して使用される。図中、装置は溶離液タンク5、送液ポンプ6、試料注入部7、分離カラム8、検出器9、記録計10からなる。
【0031】
図2において、溶離液タンク5は溶離液を貯蔵するためのタンクであり、それぞれ、その大きさ、形状、材質は特に限定されるものではなく、大きさとしては、分析するために必要な溶離液を越える量貯蔵できればよく、形状も次に示す送液ポンプ6により、その貯蔵されている溶離液が送液できるものであればよい。材質としても溶離液を貯蔵した場合に安定的に貯蔵できれば良く、例えば、ガラスや高分子樹脂などが例示できる。
【0032】
送液ポンプ6は溶離液を送液するためものである。送液の条件としては、特に限定はなく、試料中の分析イオンを分析するような小規模のシステムにより実施する場合には、分離用カラムの大きさにより異なるが、通常1.5ml/分以下の流速により実施される。さらに具体的には、カラムの内径が4.6mm程度の場合には、0.7〜1.0ml/分の範囲の流速が、カラムの内径が2.0mm程度の場合には、0.1〜0.2ml/分の範囲の流速が好ましく用いられ、このような流速を達成できる送液ポンプであればよい。
【0033】
試料注入部7は、用いられる試料の容量を任意の容量に変えることができ、又、注入に際しては、手動によりもしくは自動的に注入できる。
【0034】
分離カラム8は、本発明の液クロ用充填剤を充填したものであり、必要に応じて恒温槽を用いて一定の温度に保つこともできる。その温度としては、分離の対象、目的にも左右されるため、一概にはいえないが、10〜70℃の温度範囲が好ましく、さらに20〜40℃の温度範囲が好ましい。この範囲を外れるような温度条件の場合には、分離性能が悪くなったり、充填剤の劣化を招くことがある。また、分離カラムの大きさ、形状としては、目的、用途により種々選択できる。
【0035】
検出器9としては、分析イオンの検出が可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば電気伝導度検出器、紫外可視吸光検出器、示差屈折率計等が例示できる。また、必要に応じて恒温槽を用いることもできる。検出器を通過した液は適当な廃液タンク11へ排出される。
【0036】
記録計10としては、検出器9で得られた信号を記録するものであり、信号を記録紙に出力するのみならず、直接電子記録媒体等へ記録することもできる。
【0037】
また、上記記載の5〜9と11の各部との間を接続する送液管については、耐圧性があれば、その材質、内径、外径、長さ等には特に限定されることはなく、通常、ステンレス等の金属や、高分子樹脂などが用いられる。
【0038】
さらに、本発明の分析方法により分析イオンを分析するにあたっては、試料中に1の分析イオンしかない場合も複数存在する場合も共に測定することができる。例えば、試料中に1の分析イオンしかない場合には、得られる出力をピークとして捉えることができ、その保持時間等の測定により分析イオンの同定等の定性の目的に使用でき、ピークの面積や高さ等の測定から分析イオンの定量にも適用できる。また、試料中に複数の分析イオンが存在する場合には、これらの分析イオンを分離し、それぞれの保持時間等の測定により分析イオンの同定等の定性の目的に使用でき、ピークの面積や高さ等の測定から分析イオンの定量にも適用できる。
【0039】
【実施例】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
実施例1
固定相として使用される充填剤としてTSKgel IC−Anion−SWを、陽イオン性及び/又は陰イオン性荷電部を複数有する水溶性高分子化合物としてコンドロイチン硫酸ナトリウム−C(ナカライテスク社製、重量平均分子量として約64000)を用い、以下のようにカラムを製造した。
【0041】
製造は、充填剤をカラムに充填した状態で図1示した装置を用いて行った。1の溶液タンクにはコンドロイチン硫酸ナトリウム−Cの0.1%(重量/容量)水溶液を満たした溶液タンクを用意し、送液ポンプ2によりコンドロイチン硫酸ナトリウム−Cの0.1%水溶液をカラムへと、流速1ml/分で2時間送液した。この状態でカラムの出口側に紫外吸光度検出器を接続して、カラムからの溶出液の210nmにおける吸光度の変化を送液開始時からモニターし、その結果を図3に示した。
【0042】
カラムからの溶出液の吸光度は、送液開始後しばらくは低いものの、その後は上昇する傾向にあり、約40分を過ぎるあたりから高い水準でほぼ一定になっていることが示されている。これは送液開始からしばらくはコンドロイチン硫酸−Cがイオン交換作用によりカラム内に取り込まれているためにカラムからの溶出液中のコンドロイチン硫酸−C濃度が低いのに対し、時間の経過とともにカラム内のイオン交換基がコンドロイチン硫酸−Cのイオン的吸着により減少するためにカラムのコンドロイチン硫酸−Cの吸着能力が低下し、カラムからの溶出液中のコンドロイチン硫酸−C濃度が徐々に高くなり、イオン交換基がコンドロイチン硫酸−Cにより完全に飽和された約40分(図3において、矢印にて示される点)以後はカラムからの溶出液のコンドロイチン硫酸−Cはほぼ一定になっていることによる結果であると考えられる。なお、送液開始後約5〜20分で一時的な吸光度の上昇が見られるが、これは使用したカラムのイオン交換基の対イオンとして酒石酸が使用されており、これがコンドロイチン硫酸−Cにより置換され溶出しているためのものと考えられる。図3に示すデータよりコンドロイチン硫酸−Cがカラム内に取り込まれていることが示されている。
【0043】
以下には上記に例示した一連の手順によりコンドロイチン硫酸−Cが固定化されたTSKgel IC−Anion−SW(内径4.6mm×長さ50mm)を使用して得られたデータを示す。以下に示す操作は、分離温度25℃、吸光度検出は25℃、電気伝導度検出は40℃にて実施された。
【0044】
図4は上記手順により本発明による製造を施したカラム(コンドロイチン硫酸−Cを固定化したTSKgel IC−Anion−SW)と本発明による製造を施していない従来のICにおいて一般に使用されているカラム(TSKgelIC−Anion−SW、内径4.6mm×長さ50mm)との間の無機陰イオンに対する保持挙動の比較を行った結果である。ここでは、溶離液として硫酸ナトリウム水溶液を使用して、その濃度を変化させた場合の被測定イオンである硝酸イオンの両カラムにおけるリテンションファクター(図4において、kにて示される)の対数を調べた。製造を施していないカラムと比較して製造を施したカラムでは全体的に保持が小さくなり、また製造を施したカラム調製後では溶離液の硫酸ナトリウム濃度が20〜100mMの範囲では保持はほぼ一定であり、硫酸ナトリウム濃度が20mM以下では硫酸ナトリウム濃度が低くなるに従って保持が小さくなる傾向が見られた。
【0045】
通常のICでは、本データの製造を施していないカラムに見られるように溶離液中の塩濃度が低くなるに従って保持は大きくなる傾向にあり、本発明による製造を施したカラムでは、その保持挙動が変化していることが示されている。また図4は通常のICでは、使用する溶離液中のイオン性物質が希薄である場合には保持が極めて大きく、分析に長時間を要し、実用的でないのに対し、本発明による製造を施したカラムでは溶離液中にイオン性物質が希薄である場合においても被測定イオンが短時間に溶出し、従って、溶離液として含有するイオン性物質が希薄な水溶液が使用可能であることをを示している。
【0046】
図5は本発明による製造を施したカラム(コンドロイチン硫酸−Cを固定化したTSKgel IC−Anion−SW、内径4.6mm×長さ50mm)を使用してヨウ素酸イオン、塩化物イオン、亜硝酸イオン、臭化物イオン、硝酸イオン、ヨウ化物イオン、チオシアン化物イオン、硫酸イオン各0.1mMの混合溶液を分析した例である(注入量21μl)。ここでは溶離液を50μM酒石酸として電気伝導度検出を行った。従来のICでは酒石酸を溶離液として使用する場合、通常、数mM程度の濃度を必要とするが、本発明においては、約70分以内でその100分の1程度の濃度で各陰イオンの分離においてほぼベースライン分離が達成できる。具体的に分離度Rs(Rs=2(t1−t2)/(t1w+t2w)、式中、t1はピーク1の保持時間、t2はピーク2の保持時間、t1wはピーク1のピークバンド幅、t2wはピーク2のピークバンド幅)を求めると、1.5以上となり、良好な分離が達成できた。従来のICにおいてこのような希薄な溶離液では被測定イオンを溶出させることは困難であり、また、もしも溶出した場合であっても、その溶出には長時間を要するばかりでなく、ピーク幅が増大し、その検出も困難である。50μM酒石酸を溶離液とした場合の電気伝導度のバックグラウンドは30μS/cmであった。2mM酒石酸を溶離液とした場合、通常、電気伝導度のバックグラウンドは500μS/cm程度であり、本分析におけるバックグラウンドが従来のICと比較して極めて低い値であり、ノイズレベルの低減により検出感度の改善が可能となることが示されている。また、本分析においては、溶離液が希薄であるため、その調製に要する費用も安価であるという利点もある。
【0047】
実施例2
図6は実施例1で得たカラムを用いて、溶離液を10mM硫酸ナトリウムとし、硝酸イオン、ヨウ化物イオン、チオシアン化物イオン各0.1mMの混合溶液の分離を行い、紫外吸光検出(220nm)した例を示している(注入量21μl)。このカラムでは、このように従来のICにおける通常の溶離液濃度範囲においても使用可能である。この測定条件にて、被測定イオンの濃度とピーク高さの関係を調べた結果を図7に示す。各被測定イオン0.01〜0.1mMの範囲でピーク高さとの良好な直線関係が得られた。このため、低試料濃度域における定量性も良好となる。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、ICにおいて希薄なイオン性物質を含有する水溶液を溶離液として使用することが可能であることから、溶離液の調製が簡便で、電気伝導度検出、紫外可視間接吸光検出において高感度、かつ簡潔な装置構成で、良好な分析イオンの分離、定量が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の充填剤をカラムに充填した状態で製造するための装置の概略図である。
【図2】本発明の充填剤を充填したカラムの適用するイオンクロマトグラフィー装置の概略図である。
【図3】実施例1の製造過程におけるカラムからの溶出液の紫外吸光度(210nm)の変化を示す図である。図において、縦軸は吸光度を示し、横軸は操作開始後の時間(分)を示す。
【図4】無機陰イオンに対する保持挙動の比較を行った結果を示す図である。図において、縦軸はリテンションファクター(k)の対数値(logk)を示し、logk=log{(tR−t0)/t0}(式中、tRは目的物質である硝酸イオンの保持時間を、t0はカラムを素通りする物質の保持時間を示す)より計算される。横軸は、硫酸ナトリウム水溶液の濃度(mM)を示す。また、図において、白丸はコンドロイチン硫酸−Cを充填剤に固定化しない場合を、黒丸は固定化した場合を示す。
【図5】実施例1の結果を示すクロマトグラムである。図において、縦軸は電気伝導度(単位として、μS/cmであり、両矢印の長さは1μS/cm)を示し、横軸は操作開始後の時間(分)を示す。
【図6】実施例2の結果を示すクロマトグラムである。図において、縦軸は220nmにおける吸光度を示し、横軸は操作開始後の時間(分)を示す。
【図7】実施例2における検量線である。図において、縦軸は各イオンのピーク高さに基づく220nmにおける吸光度を示し、横軸は各イオンの濃度(mM)を示す。
【符号の説明】
図において番号は共通のものであり、その番号は以下に示す。
1:溶液タンク
2:送液ポンプ
3:製造を施すカラム
4:廃液タンク
5:溶離液タンク
6:送液ポンプ
7:試料注入部
8:分離カラム
9:検出器
10:記録計
11:廃液タンク

Claims (8)

  1. 陽イオン性及び/又は陰イオン性荷電部を複数有する水溶性高分子化合物が、その表層部に陰イオン及び/又は陽イオン交換基を有する支持担体に固定化されてなることを特徴とするイオンクロマトグラフィー用の液体クロマトグラフィー用充填剤。
  2. 水溶性高分子化合物が多糖であることを特徴とする請求項1に記載のイオンクロマトグラフィー用の液体クロマトグラフィー用充填剤。
  3. 多糖がコンドロイチン硫酸又はその塩であることを特徴とする請求項2に記載のイオンクロマトグラフィー用の液体クロマトグラフィー用充填剤。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の液体クロマトグラフィー用充填剤により形成されてなるイオンクロマトグラフィー用の液体クロマトグラフィー用カラム。
  5. 請求項4に記載のイオンクロマトグラフィー用の液体クロマトグラフィー用カラムに1以上の分析イオンを含む試料を注入し、その後、溶離液を展開させて該分析イオンを分析することを特徴とする分析方法。
  6. 分析イオンが無機の陰イオンであることを特徴とする請求項5に記載の分析方法。
  7. 溶離液として1mM以下のイオン性物質を含有する水溶液を用いることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の分析方法。
  8. 請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の分析方法を用いることを特徴とする分析装置。
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