JP3829483B2 - 赤外線検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、人体から輻射される赤外線エネルギーを検出し、人体の存在や移動の検知を行う赤外線検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図5は、従来の赤外線検出装置のブロック図である。赤外線の検出部としては、焦電素子1が広く利用されており、レンズ系等を用いて検知エリア内からの赤外線を焦電素子1に集め、焦電素子1からは集められた赤外線量の変化に応じた電流が出力される。焦電素子1から出力された電流は、I/V変換回路2において電圧に変換された後、更に電圧増幅部3で増幅される。発報部4は、第1の電圧増幅部3aで増幅された図6(c)に示すような出力が、予め定められた所定値Vh0又はVl0を超えたときに、検知エリア内に人体が存在・移動するとして図6(d)に示すような発報信号Q0を出力する。
【0003】
赤外線検出装置における周波数特性は、人体の動きに合わせて設定されており、第1の電圧増幅部3aには、大凡1Hzを中心とするバンドパスフィルタが付加されている。これにより、人体に対する感度を上げることが可能になるとともに、人体の移動に関係しないと思われる帯域の信号により誤動作が生じることを防止することができるようになっている。
【0004】
ところが、焦電素子1からポップコーンノイズと呼ばれる単発性のノイズ出力が生じることがある。ポップコーンノイズは、焦電素子1を構成する焦電体基板や支持台、接着剤、回路基板等の熱膨張率の違いにより、焦電体基板や電極といった素子材料の欠陥部やダイシング等により生じるピッチング部、マイクロクラック部等に圧縮・引っ張りのストレスが集中し、不要な電荷が発生するために起こると考えられている。
【0005】
そこで、従来は、このような単発性のノイズ出力であるポップコーンノイズに対して、第1の電圧増幅部3aより高い周波数を選択して、I/V変換回路2の出力を増幅する第2の電圧増幅部3bを設けている。焦電素子1においては、人体等の移動による出力と比較してポップコーンノイズは、はるかに立ち上がりが早い。そこで、第2の電圧増幅部3bは、数十Hz以上の成分を通過させる高帯域通過フィルタの特性を有しており、これによりポップコーンノイズを人体の移動による出力と、区別できることになる。
【0006】
一方、ポップコーンノイズ検知部5では、図7(b)に示すような第2の電圧増幅部3bから出力された信号が予め定めた所定値Vh1を超えたところで、焦電素子1からポップコーンノイズが、出力されたとして出力制御回路6に対して図7(e)に示すようなポップコーンノイズ検出信号P1を出力する。出力制御回路6は、ポップコーンノイズ検知部5からポップコーンノイズ検出信号が入力されると、数秒間T1にわたりスイッチ回路7を通してI/V変換回路2に対し、図7(f)に示すような出力制御信号Q1を出力する。
【0007】
スイッチ回路7では、出力制御回路6から出力制御信号Q1が出力されている間、I/V変換回路2の変換インピーダンスを下げて、出力を低下させる。これにより、図7(c)に示すように第1の電圧増幅部3aから出力される信号が発報部4に入力されたとしても、予め定めた所定値Vh0又はVl0を超えないため、図7(d)に示すように発報信号が外部に出力されることはなく、ポップコーンノイズによる誤作動を防止することが可能となる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、スイッチ回路7がオフするときにスイッチングノイズがI/V変換回路2の出力に発生することがある。このスイッチングノイズに関して、以下簡単に図5及び図9を用いて、その発生のメカニズムについて述べる。なお、図9は図5に示すI/V変換回路2及びスイッチ回路7の具体的なブロック図である。ここで、コンデンサ12はI/V変換を行う容量であり、この容量をCfとするとインピーダンスZ=1/(ω・Cf)=1/(2π・f・Cf)でI/V変換が行なわれる。ちなみに、ここではf=1Hz、Cf=6pFであるのでこのインピーダンスは、非常に高いものとなっている。従って、入力端子SINも非常にインピーダンスの高い端子となる。
【0009】
そこで、出力制御回路6からスイッチ回路7に対しての出力制御信号が切れる時,FET10のゲート電圧は、HighからLowになってΔV1ほど変化することになるが、FET10のゲートとソース間には寄生容量11が存在するので、この寄生容量11の容量をCpaとすると、Q=Cpa・ΔV1の電荷が貯まることになる。また、前述のように入力端子SINは非常にインピーダンスが高いので、この電荷はすぐには放電されない。よって、コンデンサ12の容量をCfとすると、コンデンサ12の両端にはΔV2=Q/Cf=(Cpa・ΔV1)/Cfの電圧が、生じることになる。ここで、入力端子SINはオペアンプ9により基準電圧に仮想接地されており、このΔV2が出力端子OUTの電圧変化として、現れることになる。このΔV2が、所謂スイッチングノイズと呼ばれるものである。
【0010】
このスイッチングノイズは高周波信号であるので、第1の電圧増幅部は低帯域通過フィルタの特性を有しているため大部分除去されて、発報部4に入力されたとしても、予め定めた所定値を超えないために検知信号が外部に出力されることはない。しかし、第2の電圧増幅部は高帯域通過フィルタの特性を有しているため、このスイッチングノイズ即ち図8(a)に示すNsが、第2の電圧増幅部3bによって、図8(b)にNoutとして示すように増幅されて出力され、ポップコーンノイズ検知部5からは図8(c)に示すポップコーンノイズ検出信号P2として出力され、再び出力制御回路6がスイッチ回路7を通してI/V変換回路2へ、図8(d)に示すような出力制御信号Q2を出力することになる。従って、出力制御回路6は図8(d)に示すようにオン・オフを繰り返す発振状態に陥ってしまい、I/V変換回路2の出力が低下した状態が継続することになり、赤外線検出感度が低下してしまうという問題点があった。
【0011】
本発明は、上記の問題点を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、焦電素子からのポップコーンノイズを以って検出対象を検出したとして、発報信号を出力してしまう所謂誤報をなくすとともに、検出感度を不必要に長期間低下させてしまうことにより、本来の人体の存在や移動の検知ができなくなる所謂失報を防ぐ、優れた赤外線検出装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、ポップコーンノイズを出力する恐れのある焦電素子と、該焦電素子から出力された電流信号を電圧信号に変換するI/V変換回路と、該I/V変換回路からの電圧信号を増幅する第1の電圧増幅部と、該第1の電圧増幅部からの出力電圧が予め定められた所定値を超えると発報信号を出力する発報部と、前記第1の電圧増幅部より高い周波数を選択して前記I/V変換回路からの電圧信号を増幅する第2の電圧増幅部と、該第2の電圧増幅部からの電圧出力が予め定めた所定値を超えるとポップコーンノイズ検出信号を出力するポップコーンノイズ検知部と、前記ポップコーンノイズ検出信号を受信すると予め定められた時間のみ前記I/V変換回路2の出力を制御する出力制御回路と、を備える赤外線検出装置において、前記I/V変換回路と出力制御回路との間に出力制御回路からの制御信号を、所定の時定数をもって切り替える緩衝回路を設けたことを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る赤外線検出装置の一実施の形態を図1、図2、図3及び図4に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1は赤外線検出装置のブロック図である。また、図2は上記赤外線検出装置の動作を説明するタイミングチャートであり、図3及び図4は、上記赤外線検出装置の緩衝回路の周波数特性及びその一実施例である。
【0015】
本実施の形態の赤外線検出装置は、図1に示すように焦電素子1と、I/V変換回路2と、第1の電圧増幅部3aと、第2の電圧増幅部3bと、発報部4と、ポップコーンノイズ検知部5と、制御回路6、緩衝回路7及びスイッチ回路8とから構成される。
【0016】
焦電素子1は、検知エリア内から輻射される赤外線量の変化に応じた電流を出力する。
【0017】
I/V変換回路2は、焦電素子1から出力された検出電流を電圧に変換するものである。電圧に変換された信号は分岐され、一方は第1の電圧増幅部3aに入力され、他方は第2の電圧増幅部3bに入力される。
【0018】
第1の電圧増幅部3aは、I/V変換回路2から入力された信号を増幅して発報部4に入力する。なお、第1の電圧増幅部3aは、人体の移動のスピードに応じた1Hz付近の成分を通過させる帯域通過フィルタの特性を有している。
【0019】
発報部4は、第1の電圧増幅部3aから出力された信号と予め設定された所定値とをコンパレータにて比較し、第1の電圧増幅部3aから入力された信号が所定値以上の振幅を有している場合、発報信号を出力する。
【0020】
第2の電圧増幅部3bは、第1の電圧増幅部3aより高い周波数を選択してI/V変換回路2の出力を増幅する。焦電素子1において人体等の移動による出力と比較してポップコーンノイズは、はるかに立ち上がりが早い。そこで、第2の電圧増幅部3bは、数十Hz以上の成分を通過させる高帯域通過フィルタの特性を有している。これによりポップコーンノイズを人体の移動による出力と区別できる。ただし、必要以上に高い周波数を有する信号を通過させると、S/N比が悪化し、ポップコーンノイズが雑音に埋もれることになる。そこで、本実施の形態では、数十Hzから数百Hzの成分を通過させる帯域通過フィルタの特性を第2の電圧増幅部3bに与えている。
【0021】
ポップコーンノイズ検知部5は、図2(b)に示す第2の電圧増幅部3bの出力が予め定めた所定値Vh1,Vl1以上の振幅を有している場合、出力制御回路6に対して図2(d)に示すポップコーンノイズ検出信号P1を出力する。
【0022】
出力制御回路6は、ポップコーンノイズ検出信号が入力されると、予め定めた時間T1にわたって緩衝回路7に対して出力制御信号Q1を出力する。
【0023】
スイッチ回路8は、緩衝回路7を通して出力制御信号Q1が入力される間、I/V変換回路2の変換インピーダンスを下げ第1の電圧増幅部3aに入力されるポップコーンノイズにより生じた信号の信号レベルを下げている。これにより図2(c)に示すように第1の電圧増幅部aの出力が、発報部4において予め定められた所定値Vh0,Vl0を超えないためポップコーンノイズが,発報信号として 出力されることはない。
【0024】
ここで、緩衝回路7は、図4に示すようにC,R等で構成された回路であり、出力制御回路6からの出力制御信号Q1の立ち下がり時間を、調整してスイッチ回路8へ伝える。なお、緩衝回路7の時定数はC,Rで決まるがこれを、図3に示すように第1の電圧増幅部aの利得がおよそ最大になる1HZ付近から、第2の電圧増幅部3bの利得がおよそ最大になる100HZ付近の間で最適周波数F0に設定する。つまり図2(a)にNs1として示すスイッチングノイズが、第1の電圧増幅部3aで増幅され図2(c)にNout2として示すように、予め定められた所定値Vh0,Vl0を超えず、発報部4から発報信号として出力されないように、また第2の電圧増幅部3bで増幅され図2(b)にNout1として示すように、予め定められた所定値Vh1,Vl1を超えずポップコーンノイズ検知部5からポップコーンノイズ検知信号として、出力されない程度の利得になるように設定する。なお実験的には、最適周波数F0を10Hz程度になるように設定すれば、安定した出力を得ることが出きた。
【0025】
以上のことにより、R,C等の小規模な回路にて、スイッチ回路8がオフするときに生じるスイッチングノイズにより焦電素子からのポップコーンノイズを以って検出対象を検出したとして、発報信号を出力してしまう所謂誤報をなくすことが、可能となる。
【0026】
【発明の効果】
以上の説明のように、本発明による赤外線検出装置においては、焦電素子からのポップコーンノイズを以って検出対象を検出したとして、発報信号を出力してしまう所謂誤報をなくすとともに、検出感度を不必要に長期間低下させてしまうことにより、本来の人体の存在や移動の検知ができなくなる所謂失報を防ぐ、優れた赤外線検出装置を提供するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る赤外線検出装置を示すブロック図である。
【図2】上記赤外線検出装置の動作を説明するタイミングチャートである。
【図3】上記赤外線検出装置の緩衝回路の周波数特性を説明する図である
【図4】上記赤外線検出装置の緩衝回路の要部回路図である
【図5】従来の赤外線検出装置のブロック図である。
【図6】上記赤外線検出装置の正常な発報時における動作を説明するタイミングチャートである。
【図7】上記赤外線検出装置のポップコーンノイズ検出時における動作を説明するタイミングチャートである。
【図8】上記赤外線検出装置の動作を説明するタイミングチャートである。
【図9】上記赤外線検出装置のI/V変換回路及びスイッチ回路を示す回路図である。
【符号の説明】
1 焦電素子
2 I/V変換回路
3a 第1の電圧増幅部
3b 第2の電圧増幅部
4 発報部
5 ポップコーンノイズ検知部
6 出力制御回路
7 緩衝回路
8 スイッチ回路
Claims (1)
- ポップコーンノイズを出力する恐れのある焦電素子と、該焦電素子から出力された電流信号を電圧信号に変換するI/V変換回路と、該I/V変換回路からの電圧信号を増幅する第1の電圧増幅部と、該第1の電圧増幅部からの出力電圧が予め定められた所定値を超えると発報信号を出力する発報部と、前記第1の電圧増幅部より高い周波数を選択して前記I/V変換回路からの電圧信号を増幅する第2の電圧増幅部と、該第2の電圧増幅部からの電圧出力が予め定めた所定値を超えるとポップコーンノイズ検出信号を出力するポップコーンノイズ検知部と、前記ポップコーンノイズ検出信号を受信すると予め定められた時間のみ前記I/V変換回路2の出力を制御する出力制御回路と、を備える赤外線検出装置において、前記I/V変換回路と出力制御回路との間に出力制御回路からの制御信号を、所定の時定数をもって切り替える緩衝回路を設けたことを特徴とする赤外線検出装置。
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