JP3825660B2 - 車載用バッテリの開回路電圧演算方法及びその装置、車載用バッテリの充電容量状態検出方法及びその装置 - Google Patents
車載用バッテリの開回路電圧演算方法及びその装置、車載用バッテリの充電容量状態検出方法及びその装置 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の負荷に電力を供給するバッテリの予め定められた設定充電電圧値による定電圧充電中に、バッテリの平衡状態における端子電圧に相当する開回路電圧を演算する方法及びその装置と、そのような定電圧充電中においてバッテリの充電容量に関する状態を検出する方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両に搭載されるバッテリは、特にモータを唯一の推進駆動源とする電気自動車においては、一般のエンジンを推進駆動源とする車両におけるガソリンに相当するものであることから、充電状態SOC(State of charge )等、バッテリがどの程度充電されているのかを認識しておくことは、車両の正常な走行を確保する上で非常に重要である。
【0003】
また、近年、エンジンを推進動力源とする一般車や、エンジンの発生するパワーの不足分をモータによりアシストするハイブリッド車両においては、環境保護の観点から、交差点の信号待ち等による停車時にエンジンを停止させるアイドルストップ機能の搭載が進められている。
【0004】
この機能を搭載した車両においては、エンジンの再始動時に、セルモータやセルモータを兼ねたパワーアシスト用のモータに対してかなりの大電流放電を行うことから、逆に、エンジン再始動のための大電流放電に耐え得るだけの放電可能容量がバッテリに残っていないと、迂闊にアイドルストップさせるわけには行かなくなる。
【0005】
そのため、上述した充電状態SOCや、バッテリにあとどのくらい放電可能な容量が残っているかを示す放電可能容量等、車両に搭載されるバッテリの充電容量に関する状態を正確に把握することは、先に述べた電気自動車では勿論のこと、一般車やハイブリッド車両においても、非常に重要となる。
【0006】
ところで、バッテリの充電状態SOCを認識するには、それらと相関のあるバッテリの開回路状態における端子電圧を求める方法があるが、そのためには車両上の負荷装置や充電装置からバッテリを電気的に切り離さなければならず、あまり現実的ではない。
【0007】
また、バッテリの充電状態SOCを認識する他の方法としては、充放電電流を時間で積算した充電電流積算値や放電電流積算値を、一定の充放電条件で求めた既知のバッテリの放電可能容量に対して加算、減算して、現在の放電可能容量を求める、電流積算方式や電力積算方式が知られている。
【0008】
しかし、これらの方式では、バッテリの個体差や劣化の進行度合い等によって、元々の満充電容量の値が変化してしまうので、バッテリの現在の放電可能容量を正確に割り出すことができない。
【0009】
そこで本出願人は、車両に搭載したまま充電状態SOCを把握する方法として、放電中に測定したバッテリの端子電圧と放電電流の複数の対からバッテリの電圧−電流特性(I−V特性)を求め、この電圧−電流特性からバッテリの開回路状態における端子電圧を推定した推定電圧を用いて充電状態SOCを求める方式を、例えば特開平8−278351号公報等において過去に提案した。
【0010】
また、上述した放電中の端子電圧及び放電電流からバッテリの充電状態SOCを求める方式に関連するものとして本出願人は、バッテリの放電中に分極が発生してバッテリの端子電圧を低下させてしまうことに着目した、分極による電圧降下分を割り出し補償して充電状態SOCを求める方式等の提案を、その後も行っている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述したこれまでの本出願人による提案は、いずれも、バッテリの放電中に測定した端子電圧や放電電流を用いた計算によってバッテリの放電可能容量等を求めるものであることから、バッテリが放電を行っている間は、最新の充電状態SOCを求めることができる。
【0012】
しかしながら、一般車やハイブリッド車両のように、放電だけでなく充電も頻繁に行われる車両では、放電時にバッテリの充電状態SOCを最新値に更新できるだけでは不十分であり、充電時にもバッテリの充電状態SOCを求めて最新値に更新できるようにすることが好ましい。
【0013】
とはいえ、一般にバッテリの充電が定電圧充電によって行われることを考えると、放電時のように、様々な値の端子電圧と充電電流との対をサンプリングすることができず、それゆえ、充電中の端子電圧と充電電流とからバッテリの電圧−電流特性(I−V特性)を求めることができないので、充電状態SOCや放電可能容量等の、バッテリがどの程度充電されているかの指標となる値や、その値と相関を持つバッテリの平衡状態における開回路電圧等を、充電中に求めることは、従来から未解決のまま残っていた。
【0014】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、電圧が変化しないが故に様々な値の端子電圧と充電電流との対をサンプリングして電圧−電流特性を求めることのできない充電中であっても、開回路電圧や充電容量に関する状態を正確に演算することのできるバッテリの開回路電圧演算方法やバッテリの充電容量状態検出方法と、これらの方法を実施する際に用いて好適なバッテリの開回路電圧演算装置やバッテリの充電容量状態検出装置とを提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成する請求項1乃至請求項4に記載した本発明は、車載用バッテリの開回路電圧演算方法に関するものであり、請求項5に記載した本発明は、車載用バッテリの充電容量状態検出方法に関するものであると共に、請求項6乃至請求項9に記載した本発明は、車載用バッテリの開回路電圧演算装置に関するものであり、請求項10に記載した本発明は、車載用バッテリの充電容量状態検出装置に関するものである。
【0016】
そして、請求項1に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法は、車両の負荷に電力を供給するバッテリの定電圧充電中に、該バッテリの平衡状態における端子電圧に相当する開回路電圧を演算するに当たり、前記バッテリの定電圧充電中に、該バッテリの充電電流の減少を伴いつつ前記バッテリの端子電圧が定電圧充電の設定充電電圧値付近で安定する電圧安定領域の開始時点を検出し、前記設定充電電圧値と前記定電圧充電の開始前における前記バッテリの開回路電圧との差値を、前記検出した前記電圧安定領域の開始時点における前記バッテリの充電電流の値により除することで、前記検出した前記電圧安定領域の開始時点における前記バッテリの内部抵抗を求め、前記検出した前記電圧安定領域の開始時点以降の、前記バッテリの充電電流の減少量に、前記検出した前記電圧安定領域の開始時点における、前記求めた前記バッテリの内部抵抗を乗じた値を、予め求められた前記バッテリの前記定電圧充電の開始前における開回路電圧に加えることで、前記バッテリの現在の開回路電圧を演算するようにしたことを特徴とする。
【0017】
また、請求項2に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法は、請求項1に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法において、前記電圧安定領域の開始時点の検出を、前記充電電流の単位時間当たりの減少量が所定値を下回った時点の検出により行うようにした。
【0018】
さらに、請求項3に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法は、請求項1に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法において、前記電圧安定領域の開始時点の検出を、前記バッテリの定電圧充電の開始から所定時間が経過した時点の検出により行うようにした。
【0019】
また、請求項4に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法は、請求項1、2又は3に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法において、前記検出した前記電圧安定領域の開始時点以降において、該バッテリの端子電圧を測定し、該測定したバッテリの端子電圧と前記設定充電電圧値との差に応じて、前記演算した前記バッテリの定電圧充電中における開回路電圧の値を補正するようにした。
【0020】
さらに、請求項5に記載した本発明の車載用バッテリの充電容量状態検出方法は、請求項1、2、3又は4に記載の車載用バッテリの開回路電圧演算方法によって演算した前記バッテリの定電圧充電中における開回路電圧から、前記バッテリの現在の充電容量に関する状態を検出するようにしたことを特徴とする。
【0021】
また、請求項6に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置は、図1の基本構成図に示すように、車両の負荷に電力を供給するバッテリ13の予め定められた設定充電電圧値による定電圧充電中に、前記バッテリ13の平衡状態における端子電圧に相当する開回路電圧を演算する装置であって、前記バッテリ13に対する充電電流を測定する電流測定手段Aと、前記バッテリ13の定電圧充電中に、該バッテリ13の充電電流の減少を伴いつつ前記バッテリ13の端子電圧が前記設定充電電圧値付近で安定する電圧安定領域の開始時点を検出する開始時点検出手段23Aと、前記設定充電電圧値と前記定電圧充電の開始前における前記バッテリ13の開回路電圧との差値を、前記開始時点検出手段23Aにより検出された前記電圧安定領域の開始時点において前記電流測定手段Aにより測定された前記バッテリ13の充電電流の値によって除することで、前記開始時点検出手段23Aにより検出された前記電圧安定領域の開始時点における前記バッテリ13の内部抵抗を求める内部抵抗割出手段23Bと、前記開始時点検出手段23Aにより検出された前記電圧安定領域の開始時点以降の、前記電流測定手段Aにより測定された前記バッテリ13の充電電流の減少量に、前記内部抵抗割出手段23Bにより求められた、前記開始時点検出手段23Aにより検出された前記電圧安定領域の開始時点における前記バッテリ13の内部抵抗を乗じた値を、予め求められた前記バッテリ13の前記定電圧充電の開始前における開回路電圧に加えることで、前記バッテリ13の現在の開回路電圧を演算する演算手段23Cとを備えることを特徴とする。
【0022】
さらに、請求項7に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置は、請求項6に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置において、前記開始時点検出手段23Aが、前記定電圧充電中において前記電流測定手段Aにより測定された前記バッテリ13の充電電流の単位時間当たりの減少量を検出する減少量検出手段23Dを有しており、該減少量検出手段23Dにより検出された前記バッテリ13の充電電流の単位時間当たりの減少量が所定値を下回った時点を、前記電圧安定領域の開始時点として検出するものとした。
【0023】
また、請求項8に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置は、請求項6に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置において、前記開始時点検出手段23Aが、前記バッテリ13の定電圧充電の開始からの経過時間を計測する経過時間計測手段23Eを有しており、該経過時間計測手段23Eにより計測される前記バッテリ13の定電圧充電の開始からの経過時間が所定時間に達した時点を、前記電圧安定領域の開始時点として検出するものとした。
【0024】
さらに、請求項9に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置は、請求項6、7又は8に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置において、前記バッテリ13の端子電圧を測定する電圧測定手段Bと、前記開始時点検出手段23Aにより検出された前記電圧安定領域の開始時点以降に前記電圧測定手段Bにより測定された前記バッテリ13の端子電圧及び前記設定充電電圧値の差に応じて、前記演算手段23Cにより演算された前記バッテリ13の定電圧充電中における開回路電圧の値を補正する補正手段23Fとをさらに備えているものとした。
【0025】
また、請求項10に記載した本発明の車載用バッテリの充電容量状態検出装置は、請求項6、7、8又は9に記載の車載用バッテリの開回路電圧演算装置を備えており、該車載用バッテリの開回路電圧演算装置により演算された前記バッテリ13の現在の開回路電圧から、該バッテリ13の現在の充電容量に関する状態を検出することを特徴とする。
【0026】
請求項1に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法によれば、バッテリに充電電圧を印加すると、当初の間は、バッテリの充電電流が増加するにつれて充電側分極の進行(増加)によりバッテリの内部抵抗が上昇し、その結果、バッテリの充電電流が減少に転じると共にバッテリの端子電圧が徐々に低下して行き、その間、定電圧充電によってバッテリに与えられるエネルギーは、殆ど充電側分極に転化し、バッテリの内部起電力の増加には寄与しない。
【0027】
しかし、その後、バッテリに生じた充電側分極の増加がストップし、充電側分極が飽和すると、バッテリの内部抵抗の上昇もストップすることから、定電圧充電によってバッテリに与えられるエネルギーが、充電側分極の増加に寄与せずバッテリの内部起電力の増加に寄与するようになり、その結果、バッテリの充電電流の減少を伴いつつ端子電圧が定電圧充電の設定充電電圧値付近で安定して、電圧安定領域の開始時点に至る。
【0028】
そして、電圧安定領域の開始時点では、バッテリに生じた充電側分極の増加がストップし、充電側分極が飽和していることから、電圧安定領域の開始以降には、バッテリの内部起電力の増加以外の要因でバッテリの内部抵抗が変化することはなく、したがって、バッテリの内部起電力の増加量さえ正確に把握すれば、その中に、バッテリの内部起電力の増加に伴うバッテリの内部抵抗の変化(減少)分が折り込まれたことになり、充電中のバッテリの開回路電圧を求める上で、バッテリの内部起電力の増加に伴うバッテリの内部抵抗の変化(減少)を考慮する必要はないことになる。
【0029】
よって、電圧安定領域の開始以降の充電電流の減少量に、電圧安定領域の開始時点に求めたバッテリの内部抵抗を乗じた値は、電圧安定領域の開始以降におけるバッテリの内部起電力の増加分ということになり、これを、予め求められたバッテリの定電圧充電の開始前における開回路電圧に加えることで、充電中にある現在のバッテリの開回路電圧が求まることになる。
【0030】
また、請求項2に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法によれば、請求項1に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法において、バッテリの端子電圧が定電圧充電の設定充電電圧値付近で安定する電圧安定領域の開始時点までは、バッテリの充電電流の変化スピードが大きく、電圧安定領域の開始時点に近づくにつれて、バッテリの充電電流はその変化スピードを鈍らせつつ減少することから、充電電流の単位時間当たりの減少量が所定値を下回った時点を検出すると、その時点が電圧安定領域の開始時点に相当することになる。
【0031】
さらに、請求項3に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法によれば、請求項1に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法において、バッテリに印加する充電電圧値によってバッテリの充電電流が定まり、この充電電流に応じてバッテリに発生する充電側分極の飽和に向かった進行速度が定まることから、バッテリの端子電圧が定電圧充電の設定充電電圧値付近で安定する電圧安定領域の開始時点までの、定電圧充電の開始からの経過時間は、設定充電電圧値に応じてほぼ一義的に定まり、よって、バッテリの定電圧充電の開始から所定時間が経過した時点を検出すると、その時点が電圧安定領域の開始時点に相当することになる。
【0032】
また、請求項4に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法によれば、請求項1、2又は3に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法において、バッテリに印加される充電電圧が定電圧であるといっても、交流発電による電力で定電圧充電を行う場合や、定電圧充電となるように充電電流を可変制御する場合に、それらの動作が精度良く行われないと、定電圧であるべき充電電圧が変動する可能性がある。
【0033】
そこで、定電圧充電中におけるバッテリの端子電圧の測定値と、定電圧充電の本来あるべき設定充電電圧値との間に差がある場合に、その差に応じて、充電中に求められるバッテリの開回路電圧の値を補正すると、定電圧充電の精度が良くない場合であっても、充電中に求められるバッテリの開回路電圧の値の補正により、その良くない精度の分が補償されることになる。
【0034】
さらに、請求項5に記載した本発明の車載用バッテリの充電容量状態検出方法によれば、バッテリの充電容量に関する状態を検出するのに用いるバッテリの開回路電圧の値が、請求項1、2、3又は4に記載の車載用バッテリの開回路電圧演算方法により演算された、定電圧充電中のものであることから、放電可能容量値や充電可能容量値、充電状態(SOC)といった、バッテリの充電容量に関する状態の値が、充電中においても検出可能になることになる。
【0035】
また、請求項6に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置によれば、図1に示すように、バッテリ13に充電電圧を印加すると、当初の間は、電流測定手段Aにより測定されたバッテリ13の充電電流が増加するにつれて充電側分極の進行(増加)によりバッテリ13の内部抵抗が上昇し、その結果、電流測定手段Aにより測定されるバッテリ13の充電電流が減少に転じると共にバッテリ13の端子電圧が徐々に低下して行き、その間、定電圧充電によってバッテリ13に与えられるエネルギーは、殆ど充電側分極に転化し、バッテリ13の内部起電力の増加には寄与しない。
【0036】
しかし、その後、バッテリ13に生じた充電側分極の増加がストップし、充電側分極が飽和すると、バッテリ13の内部抵抗の上昇もストップすることから、定電圧充電によってバッテリ13に与えられるエネルギーが、充電側分極の増加に寄与せずバッテリ13の内部起電力の増加に寄与するようになり、その結果、バッテリ13の充電電流の減少を伴いつつ端子電圧が定電圧充電の設定充電電圧値付近で安定して、電圧安定領域の開始時点に至り、そのことが開始時点検出手段23Aによって検出される。
【0037】
そして、開始時点検出手段23Aによる電圧安定領域の開始の検出時点では、バッテリ13に生じた充電側分極の増加がストップし、充電側分極が飽和していることから、電圧安定領域の開始以降には、バッテリ13の内部起電力の増加以外の要因でバッテリ13の内部抵抗が変化することはなく、したがって、バッテリ13の内部起電力の増加量さえ正確に把握すれば、その中に、バッテリ13の内部起電力の増加に伴うバッテリ13の内部抵抗の変化(減少)分が折り込まれたことになり、充電中のバッテリ13の開回路電圧を求める上で、バッテリ13の内部起電力の増加に伴うバッテリ13の内部抵抗の変化(減少)を考慮する必要はないことになる。
【0038】
よって、電圧安定領域の開始以降に電流測定手段Aにより測定される充電電流の減少量に、開始時点検出手段23Aによる電圧安定領域の開始の検出時点に求めたバッテリ13の内部抵抗を乗じた値は、開始時点検出手段23Aによる電圧安定領域の開始の検出以降におけるバッテリ13の内部起電力の増加分ということになり、これを、予め求められたバッテリ13の定電圧充電の開始前における開回路電圧に加える演算を演算手段23Cが行うことで、充電中にある現在のバッテリ13の開回路電圧が求まることになる。
【0039】
さらに、請求項7に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置によれば、請求項6に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置において、バッテリ13の端子電圧が定電圧充電の設定充電電圧値付近で安定する電圧安定領域の開始時点までは、バッテリの充電電流の変化スピードが大きく、電圧安定領域の開始時点に近づくにつれて、バッテリの充電電流はその変化スピードを鈍らせつつ減少することから、充電電流の単位時間当たりの減少量が所定値を下回った時点を減少量検出手段23Dにより検出すると、その時点が、開始時点検出手段23Aにより検出すべき電圧安定領域の開始時点に相当することになる。
【0040】
また、請求項8に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置によれば、請求項6に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置において、バッテリ13に印加する充電電圧値によってバッテリ13の充電電流が定まり、この充電電流に応じてバッテリ13に発生する充電側分極の飽和に向かった進行速度が定まることから、バッテリ13の端子電圧が定電圧充電の設定充電電圧値付近で安定する電圧安定領域の開始時点までの、定電圧充電の開始からの経過時間は、設定充電電圧値に応じてほぼ一義的に定まり、よって、バッテリ13の定電圧充電の開始から所定時間が経過した時点を経過時間計測手段23Eにより検出すると、その時点が、開始時点検出手段23Aにより検出すべき電圧安定領域の開始時点に相当することになる。
【0041】
さらに、請求項9に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置によれば、請求項6、7又は8に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置において、バッテリ13に印加される充電電圧が定電圧であるといっても、交流発電による電力で定電圧充電を行う場合や、定電圧充電となるように充電電流を可変制御する場合に、それらの動作が精度良く行われないと、定電圧であるべき充電電圧が変動する可能性がある。
【0042】
そこで、開始時点検出手段23Aにより検出された電圧安定領域の開始時点以降に電圧測定手段Bにより測定される定電圧充電中におけるバッテリ13の端子電圧の測定値と、定電圧充電の本来あるべき設定充電電圧値との間に差がある場合に、その差に応じて、充電中に演算手段23Cにより演算されるバッテリ13の開回路電圧の値を補正手段23Fにより補正すると、定電圧充電の精度が良くない場合であっても、充電中に演算手段23Cにより演算されるバッテリ13の開回路電圧の値を補正手段23Fにより補正することにより、その良くない精度の分が補償されることになる。
【0043】
また、請求項10に記載した本発明の車載用バッテリの充電容量状態検出装置によれば、バッテリ13の充電容量に関する状態を検出するのに用いるバッテリ13の開回路電圧の値が、請求項6、7、8又は9に記載の車載用バッテリの開回路電圧演算装置の演算手段23Cにより演算された、定電圧充電中のものであることから、放電可能容量値や充電可能容量値、充電状態(SOC)といった、バッテリ13の充電容量に関する状態の値が、少なくとも、充電中においても検出可能になることになる。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による車載用バッテリの開回路電圧演算方法及び車載用バッテリの充電容量状態検出方法を、本発明による車載用バッテリの開回路電圧演算装置及び車載用バッテリの充電容量状態検出装置と共に、図面を参照して説明する。
【0045】
図2は本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法を適用した車載用バッテリの開回路電圧演算装置を内在する、本発明の車載用バッテリの充電容量状態検出方法を適用した本発明の一実施形態に係る車載用バッテリの充電容量状態検出装置の概略構成を一部ブロックにて示す説明図であり、図2中引用符号1で示す本実施形態の車載用バッテリ充電容量状態検出装置は、エンジン3に加えてモータジェネレータ5を有するハイブリッド車両に搭載されている。
【0046】
そして、このハイブリッド車両は、通常時はエンジン3の出力のみをドライブシャフト7からディファレンシャルケース9を介して車輪11に伝達して走行させ、高負荷時には、バッテリ13からの電力によりモータジェネレータ5をモータとして機能させて、エンジン3の出力に加えてモータジェネレータ5の出力をドライブシャフト7から車輪11に伝達し、アシスト走行を行わせるように構成されている。
【0047】
また、このハイブリッド車両は、減速時や制動時にモータジェネレータ5をジェネレータ(発電機)として機能させ、運動エネルギを電気エネルギに変換してバッテリ13を充電させるように構成されている。
【0048】
尚、モータジェネレータ5はさらに、不図示のスタータスイッチのオンに伴うエンジン3の始動時に、エンジン3のフライホイールを強制的に回転させるセルモータとして用いられる。
【0049】
ちなみに、本実施形態のハイブリッド車両においては、不図示のキーシリンダに差し込んだキー(図示せず。)を1段階目までひねると、それまでオフ状態であった不図示のアクセサリスイッチがオンとなり、さらにキーを2段階目までひねると、アクセサリスイッチはオン状態のまま、それまでオフ状態であった不図示のイグニッションスイッチがオンとなる。
【0050】
さらに、キーシリンダに差し込んだキーを3段階目までひねると、アクセサリスイッチ及びイグニッションスイッチはオン状態のまま、それまでオフ状態であった前記スタータスイッチがオンとなる。
【0051】
尚、3段階目までひねったキーから手を離すと、キーが自動的に2段階目まで戻ってスタータスイッチがオフとなるが、2段階目では逆向きにひねらない限りキーがその位置で止まってアクセサリスイッチ及びイグニッションスイッチはオン状態のままとなり、同様に、1段階目でも逆向きにひねらない限りキーがその位置で止まってアクセサリスイッチはオン状態のままとなる。
【0052】
逆に、アクセサリスイッチがオンされ、その上でスタータスイッチがオンされて、エンジン3を始動させるためにモータジェネレータ5をセルモータとして作動させる際には、例え他の電装品が何も作動していなくても、およそ250A(アンペア)に達する放電電流がバッテリ9から瞬時的に流れる。
【0053】
話を構成の説明に戻して、本実施形態の車載用バッテリ充電容量状態検出装置1は、アシスト走行用のモータやセルモータとして機能するモータジェネレータ5等に対するバッテリ13の放電電流Iや、ジェネレータとして機能するモータジェネレータ5からのバッテリ13に対する充電電流を検出する電流センサ15と、バッテリ13に並列接続した無限大抵抗を有し、バッテリ13の端子電圧Vを検出する電圧センサ17とを備えている。
【0054】
尚、上述した電流センサ15及び電圧センサ17は、イグニッションスイッチのオン状態によって閉回路状態となる回路上に配置されている。
【0055】
また、本実施形態の車載用バッテリ充電容量状態検出装置1は、上述した電流センサ15や電圧センサ17の出力がインタフェース回路(以下、「I/F」と略記する。)21におけるA/D変換後に取り込まれるマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と略記する。)23をさらに備えている。
【0056】
そして、前記マイコン23は、CPU23a、RAM23b、及び、ROM23cを有しており、このうち、CPU23aには、RAM23b及びROM23cの他、前記I/F21が接続されており、また、上述した不図示のイグニッションスイッチのオンオフ状態を示す信号が入力される。
【0057】
前記RAM23bは、各種データ記憶用のデータエリア及び各種処理作業に用いるワークエリアを有しており、前記ROM23cには、CPU23aに各種処理動作を行わせるための制御プログラム等が格納されている。
【0058】
そして、前記マイコン23は、不図示のイグニッションスイッチのオフ状態では、バッテリ13から供給される暗電流により必要最小限の処理のみを行うスリープモードとなり、イグニッションスイッチのオンによりウェイクアップして通常のアクティブモードとなる。
【0059】
次に、前記ROM23cに格納された制御プログラムに従いCPU23aが行う処理を、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0060】
バッテリ13からの給電を受けてマイコン23が起動しプログラムがスタートすると、CPU23aは、まず、不図示の充放電回路に対するバッテリ13の接続状態を確認する等して、バッテリ13が充電中であるか否かを確認する(ステップS1)。
【0061】
バッテリ13が充電中である場合は(ステップS1でY)、後述するステップS3に進み、充電中でない場合は(ステップS1でN)、充電開始前におけるバッテリ13の平衡状態における端子電圧に相当する開回路電圧OCVの算出処理を行った後(ステップS2)、ステップS1にリターンする。
【0062】
そして、ステップS2の充電開始前におけるバッテリ13の開回路電圧OCVの算出処理で行われる、具体的な処理の内容を、放電中の端子電圧及び放電電流からバッテリの充電状態SOCを求める方式に関連する本出願人による最新の出願である、特願2000−369220において提案した内容を用いて、以下に説明する。
【0063】
まず、ステップS2では、バッテリ13が放電を行った際に、I/F21を介して電流センサ15や電圧センサ17の出力のA/D変換値の組を周期的に収集することで、バッテリ13の端子電圧V及び放電電流Iを周期的に測定し、その測定値を用いたバッテリ13の純抵抗Rの測定と、この純抵抗Rの成分のみに依存した分極の影響を含まないバッテリ13の電圧−電流特性の割り出しとを行う。
【0064】
これと共に、ステップS2では、バッテリ13の放電中の特に放電電流の減少中における端子電圧Vと放電電流Iとの測定値から、分極の影響を含むバッテリ13の電圧−電流特性の割り出しを行う。
【0065】
そして、これらバッテリ13の分極の影響を含まない電圧−電流特性と分極の影響を含む電圧−電流特性とを用いて、計算上のバッテリ13の開回路電圧である推定電圧Vnを推定する。
【0066】
そこでまず、一般的なバッテリそのものの特性について検討する。
【0067】
ちなみに、エンジンを推進動力源とする一般車や、エンジンの発生するパワーの不足分をモータによりアシストするハイブリッド車両には、スタータモータやモータジェネレータなどの大電流を必要とする負荷が搭載されており、これらの負荷に電力を供給するバッテリの電圧−電流(V−I)特性の例は図4及び図5に示す点のようになる。
【0068】
従来、V−I特性は図4に示すように、1次式V=aI+bで近似する方式が一般に行われてきたが、図6に示す分極抵抗成分の非直線形の特性の影響により、1次式よりも2次式の方が、高い相関を有する式を得ることができることがわかった。そこで、本実施形態においてバッテリ13の純抵抗による近似V−I特性を求める際には、図5に示すように、V=aI2 +bI+cなる2次式の近似曲線式を最小二乗法によって得ることによって、高い相関を有する近似式を用いるようにする。
【0069】
上述したような大電流を必要とする負荷を駆動したときには、負荷への最大供給電力値に相当する所定の大電流値による定負荷放電が行われる。このときのバッテリの端子電圧と放電電流とを周期的に測定してこれら端子電圧と放電電流との相関を示す実データに基づいて、図7のグラフ中に示すように、放電電流の増加中におけるバッテリのV−I特性の第1の近似曲線式M1と、放電電流の減少中におけるバッテリのV−I特性の第2の近似曲線式M2の2つの式が得られる。なお、図7中に記載の式は実データによって得られた具体的な近似曲線式の一例である。これらの2つの近似曲線式M1と近似曲線式M2との違いを以下分析する。
【0070】
一方の近似曲線式M1の場合、放電開始時点での分極抵抗成分を基準にすると、放電が開始し電流が増加すると、分極抵抗成分は徐々に増加していく。その後、電流が最大値になったところで、分極抵抗成分がピークに達し、電流の減少に伴って分極が解消していくはずである。しかし、実際には、電流の減少に比例して分極抵抗成分は解消するのではなく反応が遅れて現れるため、近似曲線式M2の場合、増加方向と同じV−I特性を示さず、増加方向よりも大きな電圧降下を発生させることになり、電流の増加と減少時にそれぞれ対応する2つの近似曲線式M1及びM2が得られることになる。
【0071】
上述したV−I特性の2つの近似曲線式M1及びM2で表される近似曲線を用いて、バッテリの純抵抗Rを測定する方法を、図8乃至図10を参照して、以下具体的に説明する。
【0072】
まず、図8に示すように、上記近似曲線式の一方M1で表される近似曲線上の実データの範囲内に任意の点Aを選択し、式M1の近似曲線の縦軸に対する切片C1から近似曲線上の点Aまでの電圧降下ΔV1を求める。このΔV1を点Aでの電流I1で除算した値は、純抵抗Rに純抵抗を除くその他の抵抗成分である分極抵抗成分のその時点での値Rpol1を加算した合成抵抗である。すなわち、
R+Rpol1=ΔV1/I1
である。
【0073】
同様に、図8に示すように、上記近似曲線式の他方M2で表される近似曲線上の実データの範囲内に任意の点Bを選択し、式M2の近似曲線の縦軸に対する切片C2から近似曲線上の点Bまでの電圧降下ΔV2を求める。このΔV2を点Bでの電流I2で除算した値は、純抵抗Rに純抵抗を除くその他の抵抗成分である分極抵抗成分のその時点での値Rpol2を加算した合成抵抗である。すなわち、
R+Rpol2=ΔV2/I2
である。
【0074】
上記2点A及びBの合成抵抗の値の差ΔRは
ΔR=R+Rpol1−(R+Rpol2)=Rpol1−Rpol2
となり、点A及びBにおける分極抵抗成分の差となる。これは、1回の放電中の純抵抗Rは変化しないことから明らかである。
【0075】
なお、式M1で表される近似曲線上には、図9に示すように、式M2の近似曲線上に選択した任意の点Bにおける合成抵抗(R+Rpol2)に等しい値(R+Rpol1′)をもった点A′が存在する。また、式M2で表される近似曲線上にも、図9に示すように、式M1の近似曲線上に選択した任意の点Aにおける合成抵抗(R+Rpol1)に等しい値(R+pol2′)をもった点B′が存在する。すなわち、
R+Rpol1′=R+Rpol2
となる点A′が式M1で表される近似曲線上に存在し、
R+Rpol1=R+Rpol2′
となる点B′が式M2で表される近似曲線上に存在する。
【0076】
要するに、点A′における電流及び電圧をそれぞれI1′及びV1′とし、点B′における電流及び電圧をそれぞれI2′及びV2′とすると、点A′の座標(I1′、V1′)と点Bの座標(I2、V2)の分極抵抗成分の値が互いに等しく、また点Aの座標(I1、V1)と点B′(I2′、V2′)の分極抵抗成分の値も互いに等しいことがわかる。
【0077】
まず、B点を基準とし、この点Bの合成抵抗の値(R+Rpol2)と等しい値を持つ点A′の電流I1′と電圧V1′の算出の仕方を以下説明する。
【0078】
今、式1で表される近似曲線の縦軸に対する切片C1からこの点A′までの電圧降下をΔV1′とすると、これは
ΔV1′=C1−(a1I1′2 +b1I1′+C1)=(R+Rpol2)I1′
となり、この式を整理すると、
−(a1I1′ +b1)=R+Rpol2
となり、点A′の電流I1′は
I1′=−(b1+R+Rpol2)/a1
となる。なお、
R+Rpol2(=R+pol1′)=ΔV2/I2(=ΔV1′/I1′)
であるので、
I1′=−〔b1+(ΔV2/I2)〕/a1
=−〔b1+(ΔV1′/I1′)〕/a1
となる。また、点A′の電圧V1′は、上記式から明らかなように、
V1′=a1I1′2 +b1I1′+C1
であるので、点A′の座標(I1′、V1′)は既知の値から定められる。
【0079】
同様にして、A点を基準とし、この点Aの抵抗値(R+Rpol1)と等しい値を持つ点B′の電流I2′と電圧V2′も、
I2′=−〔b2+(ΔV1/I1)〕/a2
=−〔b2+(ΔV2′/I2′)〕/a2
V2′=a2I2′2 +b2I2′+C2
により既知の値から算出できる。なお、ΔV2′は、式2で表される近似曲線の縦軸に対する切片C2からこの点B′までの電圧降下である。
【0080】
上述のようにして、点A′の座標(I1′、V1′)が定まったら、図9に示すように、点A′の座標(I1′、V1′)と点Bの座標(I2、V2)とを結ぶ直線L1の傾斜を求めることによって合成抵抗の値R1が求められる。この合成抵抗の値R1は、純抵抗と分極抵抗成分Rpol2とからなる合成抵抗によって生じる電圧降下の差(V1′−V2)を各点において流れる電流の差(I1′−I2)によって除算することによって求められる。すなわち、
R1=(V1′−V2)/(I1′−I2)
となる。
【0081】
同様にして、点B′の座標(I2′、V2′)が定まったら、図10に示すように、点B′の座標(I2′、V2′)と点Aの座標(I1、V1)とを結ぶ直線L2の傾斜を求めることによって合成抵抗の値R2が求められる。この合成抵抗の値R2は、純抵抗と分極抵抗成分Rpol1とからなる合成抵抗によって生じる電圧降下の差(V1−V2′)を各点において流れる電流の差(I1−I2′)によって除算することによって求められる。すなわち、
R2=(V1−V2′)/(I1−I2′)
となる。
【0082】
しかしながら、上述のようにして求められる合成抵抗の値R1及びR2は、純抵抗と分極抵抗成分とからなる合成抵抗によって生じる電圧降下の差を各点において流れる電流の差によって除算して求めたもので、純抵抗とは一致しない。2点間の傾きを純抵抗と一致させるには、分極抵抗成分によって生じる電圧降下分を除いた電圧降下の差を電流差によって除算してやればよい。
【0083】
先ず、点Bを基準にした場合について説明すると、今、合成抵抗の値R1を
R1=R1′+Rpol2=R1′+Rpol1′
とすると、抵抗R1′に点A′の電流I1′と点Bの電流I2との差に相当する電流が流れることによって生じる電圧降下は、分極抵抗成分Rpol1′(又はRpol2)に点A′の電流I1′と点Bの電流I2の差に相当する電流が流れることによって生じる電圧降下分だけ、点A′の電圧を持ち上げて補正してやればよく、次式が成立する。
R1′(I1′−I2)=〔V1′+Rpol1′(I1′−I2)〕−V2
【0084】
この式を整理すると、
R1′(I1′−I2)=(V1′−V2)+Rpol1′(I1′−I2)
となる。ここで、Rpol1′=ΔV1′/I1′−R1′であるので、
R1′(I1′−I2)=(V1′−V2)+(ΔV1′/I1′−R1′)×(I1′−I2)
2R1′(I1′−I2)=(V1′−V2)+ΔV1′/I1′(I1′−I2)
となり、結果として、
R1′=〔(V1′−V2)+(ΔV1′/I1′)×(I1′−I2)〕/2(I1′−I2)
が求められる。なお、(ΔV1′/I1′)は(ΔV2/I2)と置き換えることができる。
【0085】
次に、点Aを基準にした場合にも同様にして
R2=R2′+Rpol1=R2′+Rpol2′
とすると、この抵抗R2′に点Aの電流I1と点B′の電流I2′の差に相当する電流が流れることによって生じる電圧降下は、分極抵抗成分Rpol12′(又はRpol1)に点Aの電流I1と点B′の電流I2′との差に相当する電流が流れることによって生じる電圧降下分、点B′の電圧を引き下げて補正してやればよく、次式が成立する。
R2′(I1−I2′)=V1−〔V2′−Rpol2′(I1−I2′)〕
【0086】
この式を整理すると、
R2′(I1−I2′)=(V1−V2′)+Rpol2′(I1−I2′)
となる。ここで、Rpol2′=ΔV2′/I2′−R2′であるので、
R2′(I1−I2′)=(V1−V2′)+(ΔV2′/I2′−R2′)(I1−I2′)
2R2′(I1−I2′)=(V1−V2′)+ΔV2′/I2′(I1−I2′)
となり、結果として、
R2′=〔(V1−V2′)+(ΔV2′/I2′)(I1−I2′)〕/2(I1−I2′)
が求められる。なお、(ΔV2′/I2′)は(ΔV1/I1)と置き換えることができる。
【0087】
上述したように求められた2つの値R1′及びR2′は、2つの点A及びBを基準にし、異なる分極抵抗成分(Rpol1′=Rpol2)と(Rpol1=Rpol2′)を用い、しかも異なる切片C1からの電圧降下Δ1′(ΔV1)と切片C2からの電圧降下Δ2′(ΔV2)を用いて求めたものであるので、真の純抵抗Rとなり得ない。したがって、両者の加算平均
R=(R1′+R2′)/2
をとることによって、真の純抵抗Rが求められる。
【0088】
そこで、バッテリ13の純抵抗を求めるに当たっては、I/F21を介して収集される電流センサ15や電圧センサ17の出力のA/D変換値の組の最新のものを用いて、最小二乗法により、放電電流Iの増加中におけるバッテリ13の端子電圧Vと放電電流Iとの相関を示す電圧−電流特性である、例えばV1(I)=a1I2 +b1+C1なる2次式で表される第1の近似曲線式M1と、減少する放電電流に対する電圧−電流特性の例えばV2(I)=a2I2 +b2I+C2なる2次式で表される第2の近似曲線式M2とを求める。
【0089】
次に、第1の近似曲線式M1によって表される電圧−電流特性曲線上に第1の点Aを定めると共に、第2の近似曲線式M2によって表される電圧−電流特性曲線上に第2の点Bを定める。このとき、第1の近似曲線式M1によって表される電圧−電流特性曲線上に定められる第1の点Aと、第2の近似曲線式M2によって表される電圧−電流特性曲線上に定められる第2の点Bとは、各近似曲線式を求める際に使用された端子電圧と放電電流の実データの存在する範囲内に好ましく定められる。このように定めることによって、その後、各点に対応する想定点を想定する際に、想定点が大きく外れた位置に想定されることがなくなる。また、好ましくは、第1の点Aと第2の点Bは、分極抵抗成分が最大となる点の両側に定められるのがよい。このように定めることによって、最大点の両側に想定点が定められるようになるようになり、その後、純抵抗を求める際の精度が高まるようになる。
【0090】
そして、第2の点Bに対応する第2の放電電流I2が流れたとき第2の電圧降下ΔV2を生じさせる、バッテリの純抵抗と第2の分極抵抗成分Rpol2からなる第2の合成抵抗R2と同一の抵抗値を有する第1の想定点A′を、第1の近似曲線式M1上に想定すると共に、第1の点Aに対応する第1の放電電流I1が流れたとき第1の電圧降下ΔV1を生じさせる、バッテリ13の純抵抗と第1の分極抵抗成分Rpol1からなる第1の合成抵抗R1と同一の抵抗値を有する第2の想定点B′を、第2の近似曲線式M2上に想定する。
【0091】
2つの想定点A′及びB′が想定できたら、第2の点Bと第1の想定点A′とを結ぶ直線L1の第1の傾斜R1を、第2の放電電流I2と第1の想定点A′での放電電流I1′とによってそれぞれ生じる、第2の分極抵抗成分Rpol2による電圧降下の差分Rpol2(I1′−I2)により補正した上で、第2の分極抵抗成分Rpol2による電圧降下分を除いた第1の補正傾斜R1′を求めると共に、前記第1の点と前記第2の想定点B′とを結ぶ直線L2の第2の傾斜R2を、第1の放電電流I1と第2の想定点B′での放電電流I2′とによってそれぞれ生じる、第1の分極抵抗成分Rpol1による電圧降下の差分Rpol1(I1−I2′)により補正した上で、第1の分極抵抗成分Rpol1による電圧降下分を除いた第2の補正傾斜R2′を求める。
【0092】
このようにして求めた第1の補正傾斜R1′と第2の補正傾斜R2′とを加算平均することで、これら第1の補正傾斜R1′と第2の補正傾斜R2′との平均傾斜を、バッテリ13の純抵抗Rとして求める。
【0093】
このようにしてバッテリ13の純抵抗Rを求めたならば、その値に、先に収集された最新の所定時間分の実データにおける放電電流Iを乗じて、この放電電流Iのサンプル数と同数の、純抵抗によるバッテリ13の放電中における端子電圧Vを求め、求めた複数の端子電圧Vと、先に収集された複数の放電電流Iとの対に、最小二乗法を適用して、純抵抗によるバッテリ13の分極の影響を含まない直線的な電圧−電流特性式VR =aR I+bR を割り出す。
【0094】
続いて、先に収集されたバッテリ13の放電電流Iの実データのうち、ピーク値から減少する部分の実データについて、そのデータの相関性を確認した上で、その減少する部分の複数の放電電流Iと、それら複数の放電電流Iに対応する複数の端子電圧Vとの対に、最小二乗法を適用して、バッテリ13の分極の影響を含む直線的な電圧−電流特性式V=aI+bを割り出す。
【0095】
次に、先に割り出した、純抵抗によるバッテリ13の分極の影響を含まない直線的な電圧−電流特性式VR =aR I+bR 上の、ピーク電流値よりも低い、セルモータやモータジェネレータを作動させる際に必ず流れる電流値(I1 )とそのときの電圧値(V1 )とからなる座標値(V1 ,I1 )を通るように、バッテリ13の分極の影響を含む電圧−電流特性式V=aI+bを電圧軸方向にシフトさせた、シフト後電圧−電流特性式V´=aI+b´を求める。
【0096】
続いて、定電流放電における推定電圧Vnがバッテリ13の容量に対して直線的な特性を示すようになる仮想電流値Is=−10A(アンペア)を、先に求めたシフト後電圧−電流特性式V´=aI+b´に代入して、推定電圧Vnを推定し、この推定電圧Vnに、予め定められた残存電圧降下値e0 を加算して、補正後推定電圧Vn´を求める。
【0097】
ここで、予め定められた残存電圧降下値e0 とは、セルモータやモータジェネレータによりエンジンを始動させるためにバッテリ13が瞬時的に定負荷放電を行った際に、その定負荷放電中に電流センサ15や電圧センサ17により検出されたバッテリ13の端子電圧Vと放電電流Iとの相関を基にして、上述のように推定した、定負荷放電状態における推定上の端子電圧Vである推定電圧Vnを、予め求めておいたバッテリ13の開回路電圧OCVから差し引いた、バッテリ13の放電終了時における残存分極の影響による残存電圧降下量のことである。
【0098】
以上が、ステップS2において実際に行われる、充電開始前におけるバッテリ13の開回路電圧OCV(補正後推定電圧Vn´)を求める具体的な処理の内容である。
【0099】
尚、ここで説明した、充電開始前におけるバッテリ13の開回路電圧OCV(補正後推定電圧Vn´)を求める処理の内容は、あくまで一例であって、他の内容による処理で充電開始前におけるバッテリ13の開回路電圧OCVを求めても一向に構わない。
【0100】
図3のフローチャートに説明を戻して、ステップS1においてバッテリ13が充電中である場合(Y)に進むステップS3では、I/F21を介して電流センサ15や電圧センサ17の出力のA/D変換値を適当数収集し、次に、その適当数のA/D変換値を平均して、バッテリ13の端子電圧Vや充電電流ICHG の平均値を求め(ステップS4)、求めた端子電圧Vの平均値が安定状態にあるか否かを確認する(ステップS5)。
【0101】
ちなみに、このステップS5における端子電圧Vの平均値が安定状態にあるか否かの確認は、バッテリ13の端子電圧Vが予め設定された充電電圧値に収斂したか否かを確認することを意味する。
【0102】
そして、バッテリ13の端子電圧Vが予め設定された充電電圧値に収斂する際には、図11のグラフにおける(ア)の領域における、バッテリ13に発生する充電側分極の進行に伴うバッテリ13の充電電流ICHG の変化が、5〜10秒程度で起こるのに対して、これに続く図11中の(イ)の領域における、端子電圧Vがほぼ一定でありながらバッテリ13の充電電流ICHG の平均値が減少するという変化が10分程度かかって起こるというように、バッテリ13の充電電流ICHG の平均値の減少スピードが格段に下がる。
【0103】
そのため、この充電電流ICHG の平均値の減少スピードが所定値を下回るほど格段に下がったか否かを確認することによって、ステップS5における端子電圧Vの平均値が安定状態にあるか否かの確認を行うことができる。
【0104】
また、バッテリ13の端子電圧Vが予め設定された充電電圧値に収斂する際には、バッテリ13に印加する充電電圧値によってバッテリ13の充電電流ICHG が定まり、この充電電流ICHG に応じてバッテリ13に発生する充電側分極の飽和に向かった進行速度が定まることから、5〜10秒程度で起こると先に説明した、図11中の(ア)の領域におけるバッテリ13の充電電流ICHG の変化の所要時間、つまり、充電の開始から充電電圧値に収斂するまでの経過時間が、その充電電圧値に応じてほぼ一義的に定まる。
【0105】
そのため、予め設定された充電電圧値に対応する充電開始から充電電圧値に収斂するまでの必要経過時間を予めROM23c等に設定しておき、この必要経過時間が充電の開始から経過したか否かを確認することによって、ステップS5における端子電圧Vの平均値が安定状態にあるか否かの確認を行うこともできる。
【0106】
以上のようにして、ステップS5における端子電圧Vの平均値が安定状態にあるか否かの確認を行い、その結果、端子電圧Vの平均値が安定状態にない場合は(ステップS5でN)、ステップS3にリターンし、安定状態にある場合は(ステップS5でY)、ステップS4で求めた端子電圧Vの平均値を、予め設定された充電電圧値、即ち、設定充電電圧値VT と位置づけると共に、ステップS4で求めた充電電流ICHG の平均値を、図11中の(ア)の領域と(イ)の領域との境界、つまり、電圧安定領域の開始時点における充電電流の値ICHG0と位置づける(ステップS6)。
【0107】
続いて、この時点、即ち、電圧安定領域の開始時点におけるバッテリ13の内部抵抗R+Rpol(純抵抗Rとそれ以外の抵抗成分である分極抵抗成分のその時点での値Rpolを加算した合成抵抗)を求める(ステップS7)。
【0108】
このステップS7におけるバッテリ13の内部抵抗R+Rpolの具体的な求め方とその考え方は、次のとおりである。
【0109】
まず、バッテリ13が設定充電電圧値VT により定電圧充電されている状態で、電圧センサ17を用いて実際に測定されるバッテリ13の端子電圧Vが、ステップS5で確認したように設定充電電圧値VT に収斂して安定状態に達したということは、定電圧充電によってバッテリ13に生じた充電側分極の増加がストップし、充電側分極が飽和したものと見倣すことができる。
【0110】
そして、この充電側分極が飽和した電圧安定領域の開始時点に至るまでには、先に説明したとおり5〜10秒程度しか経過しておらず、しかも、その程度の時間の間にバッテリ13の充電側分極が最大値に達していることになるから、この電圧安定領域の開始時点に至るまでの間の充電によってバッテリ13に与えられたエネルギーは、殆ど充電側分極に転化し、バッテリ13の内部起電力E0 の増加に対しては、この電圧安定領域の開始時点に至るまでの間、充電の開始時点から寄与していないものと見倣すことができる。
【0111】
ところで、バッテリ13の平衡状態における端子電圧Vであるところの開回路電圧OCVとは、そもそもバッテリ13の内部起電力E0 であるわけであるから、充電の開始時点から電圧安定領域の開始時点に至るまでの間、充電によってバッテリ13に与えられたエネルギーがバッテリ13の内部起電力E0 の増加に寄与していないとすると、電圧安定領域の開始時点における内部起電力E0 の値は、ステップS2で求めた充電開始前におけるバッテリ13の開回路電圧OCVの値と同じ値ということになる。
【0112】
そこで、この点を踏まえて、電圧安定領域の開始時点におけるバッテリ13の状態を式で表すと、バッテリ13の端子電圧Vであるところの設定充電電圧値VT から、バッテリ13の内部起電力E0 を減じた値が、バッテリ13の内部抵抗R+Rpolに、電圧安定領域の開始時点における充電電流の値ICHG0を乗じた値と等しくなるはずである。
VT −E0 =(R+Rpol)×ICHG0
【0113】
したがって、バッテリ13の内部抵抗R+Rpolは、次式、
(R+Rpol)=(VT −E0 )/ICHG0(但し、E0 =OCV=Vn´)
で求めることができる。
【0114】
このようにして、ステップS7においてバッテリ13の内部抵抗R+Rpolを求めたならば、次に、I/F21を介して電流センサ15の出力のA/D変換値を収集して、電圧安定領域の開始以後、即ち、図11中の(イ)の領域におけるバッテリ13の充電電流ICHG をサンプリングし(ステップS8)、そのサンプリングしたバッテリ13の充電電流の値ICHG1を用いて、充電中のバッテリ13の開回路電圧OCV´の算出を行う(ステップS9)。
【0115】
このステップS9における、充電中のバッテリ13の開回路電圧OCV´の算出の具体的な内容とその考え方は、次のとおりである。
【0116】
まず、このステップS9の時点では、充電側分極が飽和した電圧安定領域の開始時点を過ぎていることから、バッテリ13の内部抵抗R+Rpolは変化しないはずであり、そうすると、図11中の(イ)の領域におけるバッテリ13の充電電流ICHG の減少は、電圧安定領域の開始以後の充電によるバッテリ13の内部起電力E0 の増加が、その全ての原因となるはずである。
【0117】
ちなみに、図11中の(イ)の領域におけるバッテリ13の内部抵抗R+Rpolは、実際には変化(低下)するが、その要因はバッテリ13の内部起電力E0 の増加によるものが全てであり、言い換えると、バッテリ13の内部起電力E0 の増加以外の要因でバッテリ13の内部抵抗R+Rpolが変化(低下)することはない。
【0118】
よって、バッテリ13の内部起電力E0 の増加量さえ正確に把握すれば、その中に、バッテリ13の内部起電力E0 の増加に伴うバッテリ13の内部抵抗R+Rpolの変化(減少)分が折り込まれたことになり、充電中のバッテリ13の開回路電圧OCV´を求める上で、バッテリ13の内部起電力E0 の増加に伴うバッテリ13の内部抵抗R+Rpolの変化(減少)を考慮する必要はないことになる。
【0119】
したがって、増加後のバッテリ13の内部起電力をE0 ´とすると、次式、
VT −E0 ´=(R+Rpol)×ICHG1(但し、E0 ´>E0 )
が成り立つことになるから、これと、電圧安定領域の開始時点におけるバッテリ13の状態を示す上記の式、
VT −E0 =(R+Rpol)×ICHG0
とを、電圧安定領域の開始以降のバッテリ13の充電電流ICHG の減少量ICHG0−ICHG1を表す式に整理すると、
E0 ´−E0 =(R+Rpol)×(ICHG0−ICHG1)
となる。
【0120】
そこで、電圧安定領域の開始以降のバッテリ13の内部起電力E0 ´が、電圧安定領域の開始以降のバッテリ13の開回路電圧OCV´であり、上述したように、電圧安定領域の開始時点におけるバッテリ13の内部起電力E0 が、ステップS2で求めた充電開始前におけるバッテリ13の開回路電圧OCVの値であるとなると、次式、
E0 ´=E0 +(R+Rpol)×(ICHG0−ICHG1)
を計算することで、充電中のバッテリ13の開回路電圧OCV´を求めることができるわけである。
【0121】
以上のようにしてステップS9における充電中のバッテリ13の開回路電圧OCV´の算出が済んだならば、この充電中のバッテリ13の開回路電圧OCV´を、電圧比による算出式、
SOC={(OCV´−Ve)/(Vs−Ve)}×100(%)
又は、電力比による算出式、
(但し、Vsは満充電時の開回路電圧、Veは放電終止時の開回路電圧)
のいずれかの式に代入して、充電中のバッテリ13の充電状態SOCを求め、この充電状態SOCと、満充電時や放電終止時のバッテリ13の開回路電圧OCVとの関係から割り出される相関から、求めた充電状態SOCに対応するバッテリ13の放電可能容量を求める(ステップS10)。
【0122】
続いて、不図示の充放電回路に対するバッテリ13の接続状態を確認する等して、バッテリ13が未だに充電中であるか否かを確認し(ステップS11)、充電中である場合は(ステップS11でY)、ステップS8にリターンし、充電中でない場合は(ステップS11でN)、ステップS2にリターンする。
【0123】
以上の説明からも明らかなように、本実施形態の車載用バッテリ充電容量状態検出装置1では、図3のフローチャートにおけるステップS5が、請求項中の減少量検出手段23Dや経過時間計測手段23Eに対応する処理となっていて、これが、請求項中の開始時点検出手段23Aに対応する処理を構成している。
【0124】
また、本実施形態の車載用バッテリ充電容量状態検出装置1では、図3中のステップS7が、請求項中の内部抵抗割出手段23Bに対応する処理となっており、図3中のステップS9が、請求項中の演算手段23Cに対応する処理となっている。
【0125】
さらに、本実施形態の車載用バッテリ充電容量状態検出装置1では、図3中のステップS2やステップS3、ステップS8において行われる、電流センサ15の出力のA/D変換値をI/F21を介して収集する処理と、電流センサ15とにより、請求項中の電流測定手段Aが構成されており、図3中のステップS2やステップS3において行われる、電圧センサ17の出力のA/D変換値をI/F21を介して収集する処理と、電圧センサ17とにより、請求項中の電圧測定手段Bが構成されている。
【0126】
次に、上述のように構成された本実施形態の車載用バッテリ充電容量状態検出装置1の動作(作用)について説明する。
【0127】
まず、車載用バッテリ充電容量状態検出装置1においては、不図示の充放電回路に対するバッテリ13の接続状態に基づいて、バッテリ13が充電中であるか否かが監視され、その結果、バッテリ13が放電中であることが認識されている状態では、放電時に測定されるバッテリ13の端子電圧Vと放電電流Iとを基にして、充電開始前におけるバッテリ13の平衡状態における端子電圧に相当する開回路電圧OCVの算出が行われる。
【0128】
そしてその後、バッテリ13が充電中であることが認識されている状態では、バッテリ13の端子電圧Vが設定充電電圧値VT に収斂して安定状態に達したかどうかが監視され、安定状態に達したことが確認されると、バッテリ13の充電側分極の増加がストップし、充電側分極が飽和したものと見倣して、この充電側分極が飽和した電圧安定領域の開始時点におけるバッテリ13の内部抵抗R+Rpolが求められる。
【0129】
そして、この内部抵抗R+Rpolと、充電開始前におけるバッテリ13の開回路電圧OCVに等しい電圧安定領域の開始時点におけるバッテリ13の内部起電力E0 と、電圧安定領域の開始時点におけるバッテリ13の充電電流の値ICHG0と、電圧安定領域の開始以降に測定されるバッテリ13の充電電流の値ICHG1とを用いて、充電中のバッテリ13の開回路電圧OCV´や放電可能容量が、定電圧充電の終了までの間、繰り返し周期的に算出される。
【0130】
このように、本実施形態の車載用バッテリ充電容量状態検出装置1によれば、従来の放電中やバッテリ13の平衡状態における開回路電圧OCV´や放電可能容量の算出に加えて、充電により開回路電圧OCVや放電可能容量が変化する充電中においても、バッテリ13の開回路電圧OCV´や放電可能容量を求めることができるようになるので、バッテリ13の充電容量に関する状態のマネージメントの実行可能な状況を充電中にも広げて、広範囲でのマネージメントの実現を図ることができる。
【0131】
尚、本実施形態の車載用バッテリ充電容量状態検出装置1では、充電中のバッテリ13の端子電圧Vが、必ず設定充電電圧値VT に収斂することを前提に説明したが、実際には、バッテリ13の定電圧充電の電力供給源となる発電機(オルタネータやジェネレータとして機能するモータジェネレータ5)が交流発電機であることから、発電された電圧波形に高周波成分が重畳され、これが原因となって、バッテリ13に対する充電電圧の定電圧制御が正確に働かず、バッテリ13の端子電圧Vが微妙に変動する可能性がある。
【0132】
また、充電電圧を定電圧に維持するための発電機側における、バッテリ13の内部起電力E0 に伴う充電電流ICHG の減少のためのフィードバック制御が有効に働かず、オーバーシュートやアンダーシュートの繰り返しによって、バッテリ13の端子電圧Vが微妙に変動する可能性もある。
【0133】
そこで、図3のフローチャートにおけるステップS8において、I/F21を介して電圧センサ17の出力のA/D変換値を電流センサ15の出力のA/D変換値と共に収集し、その収集値を、予めROM23c等に設定された目標の設定充電電圧値VT と比較して、目標の設定充電電圧値VT よりも収集値が高い場合は、その誤差分に応じて、電圧安定領域の開始以後におけるバッテリ13の内部起電力E0 ´、乃至、これに等しい充電中のバッテリ13の開回路電圧OCV´を増加させる補正を行うことが望ましく、同様に、目標の設定充電電圧値VT よりも収集値が低い場合は、その誤差分に応じて、電圧安定領域の開始以後におけるバッテリ13の内部起電力E0 ´、乃至、これに等しい充電中のバッテリ13の開回路電圧OCV´を減少させる補正を行うことが望ましい。
【0134】
そのようにする場合は、電圧センサ17と組み合わせて請求項中の電圧測定手段Bを構成するものとして、図3中のステップS8における、電流センサ15の出力のA/D変換値の収集と共に行われる電圧センサ17の出力のA/D変換値を収集する処理が、加わることになり、また、目標の設定充電電圧値VT と収集した電圧センサ17の出力のA/D変換値との比較に応じた、電圧安定領域の開始以後におけるバッテリ13の内部起電力E0 ´、乃至、充電中のバッテリ13の開回路電圧OCV´を減少させる補正の処理が、請求項中の補正手段23Fに対応する処理ということになる。
【0135】
ちなみに、本実施形態では、バッテリ13の充電容量に関する状態として、バッテリ13の放電可能容量値を検出する場合について説明したが、充電可能容量値や充電状態SOC等を、バッテリ13の充電容量に関する状態として検出するようにしてもよい。
【0136】
また、本実施形態では、バッテリ13の充電側分極の解消時点を把握してその把握した充電側分極の解消時点後に電圧センサ17により測定される端子電圧値を用いて、バッテリ13の充電容量に関する状態を検出するバッテリ充電容量状態検出装置について説明したが、本発明は、種々の目的で利用することのできる、バッテリ13の充電側分極の解消を把握するバッテリの充電側分極解消検出装置として利用、実施することも、当然可能である。
【0137】
さらに、本実施形態では、バッテリの純抵抗Rを測定するのに当たって、V−I特性の2つの近似曲線式M1及びM2で表される近似曲線上の実データの存在する範囲内に任意の点A及びBを選択しているが、これらの点を2つの近似曲線式M1及びM2上の、これらの式を求めるため測定したバッテリの放電電流の最大値に相当する点Pに選択し、両方の点を共通のデータを使用して特定することで、誤差の入ることを少なくすることができ、図12乃至図14を参照して、以下具体的に説明する。
【0138】
まず、図12に示すように、2つの近似曲線式M1及びM2上のバッテリの放電電流の最大値に相当する点Pを選択する。そして、式M1の近似曲線の縦軸に対する切片C1から近似曲線上の点Pまでの電圧降下ΔV1を求める。このΔV1を点Pでの電流Ipで除算した値は、純抵抗Rに純抵抗を除くその他の抵抗成分である分極抵抗成分のその時点での値Rpol1を加算した合成抵抗である。すなわち、
R+Rpol1=ΔV1/Ip
である。
【0139】
次に、同図に示すように、式M2の近似曲線の縦軸に対する切片C2から近似曲線上の点Pまでの電圧降下ΔV2を求める。このΔV2を点Pでの電流Ipで除算した値は、純抵抗Rに純抵抗を除くその他の抵抗成分である分極抵抗成分のその時点での値Rpol2を加算した合成抵抗である。すなわち、
R+Rpol2=ΔV2/Ip
である。
【0140】
上記式M1の近似曲線上の点Pと式M2の近似曲線上の点Pの合成抵抗の値の差ΔRは
ΔR=R+Rpol1−(R+Rpol2)=Rpol1−Rpol2
となり、異なる近似曲線上の点Pにおける分極抵抗成分の差となる。これは、1回の放電中の純抵抗Rは変化しないことから明らかである。
【0141】
なお、式M1で表される近似曲線上には、図13に示すように、式M2の近似曲線上に選択した任意の点Pにおける合成抵抗(R+Rpol2)に等しい値(R+Rpol1′)をもった点P1が存在する。また、式M2で表される近似曲線上にも、図13に示すように、式M1の近似曲線上に選択した任意の点Pにおける合成抵抗(R+Rpol1)に等しい値(R+pol2′)をもった点P2が存在する。すなわち、
R+Rpol1′=R+Rpol2となる点P1が式M1で表される近似曲線上に、R+Rpol1=R+Rpol2′となる点P2が式M2で表される近似曲線上にそれぞれ存在する。
【0142】
要するに、点P1における電流及び電圧をそれぞれIp1及びVp1とし、点P2における電流及び電圧をそれぞれIp2及びVp2とすると、点P1の座標(Ip1、Vp1)と点Pの座標(Ip、Vp)の分極抵抗成分の値が互いに等しく、また点Pの座標(Ip、Vp)と点P2(Ip2、Vp2)の分極抵抗成分の値も互いに等しいことがわかる。
【0143】
まず、式M2の近似曲線上の点Pを基準とし、この点Pの合成抵抗の値(R+Rpol2)と等しい値(R+Rpol1′)を持つ点P1の電流Ip1と電圧Vp1の算出の仕方を以下説明する。
【0144】
今、式M1で表される近似曲線の縦軸に対する切片C1からこの点P1までの電圧降下をΔVp1とすると、これは
ΔVp1=C1−(a1Ip12 +b1p1+C1)=(R+Rpol2)Ip1
となり、この式を整理すると、
−(a1Ip1 +b1)=R+Rpol2
となり、点P1の電流Ip1は
Ip1=−(b1+R+Rpol2)/a1
となる。なお、R+Rpol2(=R+pol1′)=ΔVp/Ip(=ΔVp1/Ip1)であるので、
となる。また、点P1の電圧Vp1は、上記式から明らかなように、
Vp1=a1Ip12 +b1Ip1+C1
であるので、点P1の座標(Ip1、Vp1)は既知の値から定められる。
【0145】
同様にして、式M1の近似曲線上の点Pを基準とし、P点を基準とし、この点Pの抵抗値(R+Rpol1)と等しい値(R+Rpol2′)を持つ点P2の電流Ip2と電圧Vp2も、
により既知の値から算出できる。なお、ΔVp2は、式M2で表される近似曲線の縦軸に対する切片C2からこの点P2までの電圧降下である。
【0146】
上述のようにして、点P1の座標(Ip1、Vp1)が定まったら、図13に示すように、点P1の座標(Ip1、Vp1)と点Pの座標(Ip、Vp)とを結ぶ直線L1の傾斜を求めることによって合成抵抗の値R1が求められる。この合成抵抗の値R1は、純抵抗と分極抵抗成分Rpol2とからなる合成抵抗によって生じる電圧降下の差(Vp1−Vp)を各点において流れる電流の差(Ip1−Ip)によって除算することによって求められる。すなわち、
R1=(Vp1−Vp)/(Ip1−Ip)
となる。
【0147】
同様にして、点P2の座標(Ip2、Vp2)が定まったら、図14に示すように、点P2の座標(Ip2、Vp2)と点Pの座標(Ip、Vp)とを結ぶ直線L2の傾斜を求めることによって合成抵抗の値R2が求められる。この合成抵抗の値R2は、純抵抗と分極抵抗成分Rpol1とからなる合成抵抗によって生じる電圧降下の差(Vp−Vp2)を各点において流れる電流の差(Ip−Ip2)によって除算することによって求められる。すなわち、
R2=(Vp−Vp2)/(Ip−Ip2)
となる。
【0148】
しかしながら、上述のようにして求められる合成抵抗の値R1及びR2は、純抵抗と分極抵抗成分とからなる合成抵抗によって生じる電圧降下の差を各点において流れる電流の差によって除算して求めたもので、純抵抗とは一致しない。2点間の傾きを純抵抗と一致させるには、分極抵抗成分によって生じる電圧降下分を除いた電圧降下の差を電流差によって除算してやればよい。
【0149】
先ず、式M2の近似曲線上の点Pを基準にした場合について説明すると、今、合成抵抗の値R1を
R1=R1′+Rpol2=R1′+Rpol1′
とすると、抵抗R1′に点P1の電流Ip1と点Pの電流Ipとの差に相当する電流が流れることによって生じる電圧降下は、分極抵抗成分Rpol1′(又はRpol2)に点P1の電流Ip1と点P2の電流Ipの差に相当する電流が流れることによって生じる電圧降下分だけ、点P1の電圧を持ち上げて補正してやればよく、次式が成立する。
R1′(Ip1−Ip)=〔Vp1+Rpol1′(Ip1−Ip)〕−V2
【0150】
この式を整理すると、
R1′(Ip1−Ip)=(Vp1−Vp)+Rpol1′(Ip1−Ip)
となる。ここで、Rpol1′=ΔVp1/Ip1−R1′であるので、
R1′(Ip1−Ip)=(Vp1−Vp)+(ΔVp1/Ip1−R1′)(Ip1−Ip)
2R1′(Ip1−Ip)=(Vp1−Vp)+ΔVp1/Ip1(Ip1−Ip)
となり、結果として、
R1′=〔(Vp1−Vp)+(ΔVp1/Ip1)(Ip1−Ip)〕/2(Ip1−Ip)
が求められる。なお、(ΔVp1/Ip1)は(ΔV2/Ip)と置き換えることができる。
【0151】
次に、式M1の近似曲線上の点Pを基準にした場合にも同様にして
R2=R2′+Rpol1=R2′+Rpol2′
とすると、この抵抗R2′に点Pの電流Ipと点P2の電流Ip2の差に相当する電流が流れることによって生じる電圧降下は、分極抵抗成分Rpol2′(又はRpol1)に点Pの電流Ipと点P2の電流Ip2との差に相当する電流が流れることによって生じる電圧降下分、点P2の電圧を引き下げて補正してやればよく、次式が成立する。
R2′(Ip−Ip2)=Vp−〔Vp2−Rpol2′(Ip−Ip2)〕
【0152】
この式を整理すると、
R2′(Ip−Ip2)=(Vp−Vp2)+Rpol2′(Ip−Ip2)
となる。ここで、Rpol2′=ΔVp2/Ip2−R2′であるので、
R2′(Ip−Ip2)=(Vp−Vp2)+(ΔVp2/Ip2−Rp2)(Ip−Ip2)
2R2′(Ip−Ip2)=(Vp−Vp2)+ΔVp2/Ip2(Ip−Ip2)
となり、結果として、
R2′=〔(Vp−Vp2)+(ΔVp2/Ip2)(Ip−Ip2)〕/2(Ip−Ip2)
が求められる。なお、(ΔVp2/Ip2)は(ΔVp/Ip)と置き換えることができる。
【0153】
上述したように求められた2つの値R1′及びR2′は、2つの点A及びBを基準にし、異なる分極抵抗成分(Rpol1′=Rpol2)と(Rpol1=Rpol2′)を用い、しかも異なる切片C1からの電圧降下ΔVp1(ΔVp)と切片C2からの電圧降下ΔVp2(ΔVp)を用いて求めたものであるので、真の純抵抗Rとなり得ない。したがって、両者の加算平均
R=(R1′+R2′)/2
をとることによって、真の純抵抗Rが求められる。
【0154】
図12乃至図14を参照して説明したバッテリの純抵抗測定方法では、2つの近似曲線式M1及びM2上のバッテリの放電電流の最大値に相当する点に点Pをそれぞれ定め、共通のデータを使用して特定しているので、誤差の入ることを少なくすることができる。
【0155】
そして、第2の近似曲線式M2で表される曲線上の点Pに対応する放電電流Ipが流れたとき第2の電圧降下ΔV2を生じさせる、バッテリの純抵抗と第2の分極抵抗成分Rpol2からなる第2の合成抵抗R2と同一の抵抗値を有する第1の想定点P1を第1の近似曲線式M1上に、第1の近似曲線M1で表される曲線上の点Pに対応する放電電流Ipが流れたとき第1の電圧降下ΔV1を生じさせる、バッテリの純抵抗と第1の分極抵抗成分Rpol1からなる第1の合成抵抗R1と同一の抵抗値を有する第2の想定点P2を第2の近似曲線式M2上にそれぞれ想定する。
【0156】
2つの想定点P1及びP2が想定できたら、点Pと第1の想定点P1とを結ぶ直線L1の第1の傾斜R1を、放電電流Ipと第1の想定点P1での放電電流Ip1とによってそれぞれ生じる、第2の分極抵抗成分Rpol2による電圧降下の差分Rpol2(Ip1−Ip)に相当する量補正して、第2の分極抵抗成分Rpol2による電圧降下分を除いた第1の補正傾斜R1′を求めるとともに、前記点Pと前記第2の想定点P2とを結ぶ直線L2の第2の傾斜R2を、放電電流Ipと第2の想定点P2での放電電流Ip2とによってそれぞれ生じる、第1の分極抵抗成分Rpol1による電圧降下の差分Rpol1(Ip−Ip2)に相当する量補正して、第1の分極抵抗成分Rpol1による電圧降下分を除いた第2の補正傾斜R2′を求める。
【0157】
このようにして求めた第1の補正傾斜R1′と第2の補正傾斜R2′とを加算平均して平均傾斜を求め、この求めた平均傾斜をバッテリの純抵抗Rとして測定する。
【0158】
なお、このようにして純抵抗を測定する具体的な手順は、2つの近似曲線式M1及びM2上のバッテリの放電電流の最大値に相当する共通の点Pに2点を定めている点を除き、図7乃至図9について上述した純抵抗の測定手順と同じである。
【0159】
【発明の効果】
以上に説明したように請求項1に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法によれば、車両の負荷に電力を供給するバッテリの定電圧充電中に、該バッテリの平衡状態における端子電圧に相当する開回路電圧を演算するに当たり、前記バッテリの定電圧充電中に、該バッテリの充電電流の減少を伴いつつ前記バッテリの端子電圧が定電圧充電の設定充電電圧値付近で安定する電圧安定領域の開始時点を検出し、前記設定充電電圧値と前記定電圧充電の開始前における前記バッテリの開回路電圧との差値を、前記検出した前記電圧安定領域の開始時点における前記バッテリの充電電流の値により除することで、前記検出した前記電圧安定領域の開始時点における前記バッテリの内部抵抗を求め、前記検出した前記電圧安定領域の開始時点以降の、前記バッテリの充電電流の減少量に、前記検出した前記電圧安定領域の開始時点における、前記求めた前記バッテリの内部抵抗を乗じた値を、予め求められた前記バッテリの前記定電圧充電の開始前における開回路電圧に加えることで、前記バッテリの現在の開回路電圧を演算するようにした。
【0160】
また、請求項6に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置によれば、車両の負荷に電力を供給するバッテリの予め定められた設定充電電圧値による定電圧充電中に、前記バッテリの平衡状態における端子電圧に相当する開回路電圧を演算する装置であって、前記バッテリに対する充電電流を測定する電流測定手段と、前記バッテリの定電圧充電中に、該バッテリの充電電流の減少を伴いつつ前記バッテリの端子電圧が前記設定充電電圧値付近で安定する電圧安定領域の開始時点を検出する開始時点検出手段と、前記設定充電電圧値と前記定電圧充電の開始前における前記バッテリの開回路電圧との差値を、前記開始時点検出手段により検出された前記電圧安定領域の開始時点において前記電流測定手段により測定された前記バッテリの充電電流の値によって除することで、前記開始時点検出手段により検出された前記電圧安定領域の開始時点における前記バッテリの内部抵抗を求める内部抵抗割出手段と、前記開始時点検出手段により検出された前記電圧安定領域の開始時点以降の、前記電流測定手段により測定された前記バッテリの充電電流の減少量に、前記内部抵抗割出手段により求められた、前記開始時点検出手段により検出された前記電圧安定領域の開始時点における前記バッテリの内部抵抗を乗じた値を、予め求められた前記バッテリの前記定電圧充電の開始前における開回路電圧に加えることで、前記バッテリの現在の開回路電圧を演算する演算手段とを備える構成とした。
【0161】
このため、請求項1に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法と、請求項6に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置とのいずれによっても、従来の放電中やバッテリの平衡状態における開回路電圧の算出に加えて、充電により開回路電圧が変化する充電中においても、バッテリの開回路電圧を求めることができるようにして、バッテリのマネージメントの実行可能な状況を充電中にも広げて、広範囲でのマネージメントの実現を図ることができる。
【0162】
さらに、請求項2に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法によれば、請求項1に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法において、前記電圧安定領域の開始時点の検出を、前記充電電流の単位時間当たりの減少量が所定値を下回った時点の検出により行うようにした。
【0163】
また、請求項7に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置によれば、請求項6に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置において、前記開始時点検出手段が、前記定電圧充電中において前記電流測定手段により測定された前記バッテリの充電電流の単位時間当たりの減少量を検出する減少量検出手段を有しており、該減少量検出手段により検出された前記バッテリの充電電流の単位時間当たりの減少量が所定値を下回った時点を、前記電圧安定領域の開始時点として検出する構成とした。
【0164】
このため、請求項2に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法によれば、請求項1に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法において、また、請求項7に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置によれば、請求項6に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置において、いずれも、バッテリの充電電流の変化を監視するだけで、開回路電圧の演算に用いるバッテリの充電電流の減少量を測定する電圧安定領域の開始時点を容易に検出することができる。
【0165】
さらに、請求項3に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法によれば、請求項1に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法において、前記電圧安定領域の開始時点の検出を、前記バッテリの定電圧充電の開始から所定時間が経過した時点の検出により行うようにした。
【0166】
また、請求項8に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置によれば、請求項6に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置において、前記開始時点検出手段が、前記バッテリの定電圧充電の開始からの経過時間を計測する経過時間計測手段を有しており、該経過時間計測手段により計測される前記バッテリの定電圧充電の開始からの経過時間が所定時間に達した時点を、前記電圧安定領域の開始時点として検出する構成とした。
【0167】
このため、請求項3に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法によれば、請求項1に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法において、また、請求項8に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置によれば、請求項6に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置において、いずれも、バッテリの定電圧充電の開始からの経過時間を計測するだけで、開回路電圧の演算に用いるバッテリの充電電流の減少量を測定する電圧安定領域の開始時点を容易に検出することができる。
【0168】
さらに、請求項4に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法によれば、請求項1、2又は3に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法において、前記検出した前記電圧安定領域の開始時点以降において、該バッテリの端子電圧を測定し、該測定したバッテリの端子電圧と前記設定充電電圧値との差に応じて、前記演算した前記バッテリの定電圧充電中における開回路電圧の値を補正するようにした。
【0169】
また、請求項9に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置によれば、請求項6、7又は8に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置において、前記バッテリの端子電圧を測定する電圧測定手段と、前記開始時点検出手段により検出された前記電圧安定領域の開始時点以降に前記電圧測定手段により測定された前記バッテリの端子電圧及び前記設定充電電圧値の差に応じて、前記演算手段により演算された前記バッテリの定電圧充電中における開回路電圧の値を補正する補正手段とをさらに備えている構成とした。
【0170】
このため、請求項4に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法によれば、請求項1、2又は3に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法において、また、請求項9に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置によれば、請求項6、7又は8に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置において、いずれも、定電圧充電の精度が良くない場合であっても、充電中に求められるバッテリの開回路電圧の値の補正により、その良くない精度の分を補償して、充電中におけるバッテリの開回路電圧の演算精度を高めることができる。
【0171】
さらに、請求項5に記載した本発明の車載用バッテリの充電容量状態検出方法によれば、請求項1、2、3又は4に記載の車載用バッテリの開回路電圧演算方法によって演算した前記バッテリの定電圧充電中における開回路電圧から、前記バッテリの現在の充電容量に関する状態を検出するようにした。
【0172】
また、請求項10に記載した本発明の車載用バッテリの充電容量状態検出装置によれば、請求項6、7、8又は9に記載の車載用バッテリの開回路電圧演算装置を備えており、該車載用バッテリの開回路電圧演算装置により演算された前記バッテリの現在の開回路電圧から、該バッテリの現在の充電容量に関する状態を検出する構成とした。
【0173】
このため、請求項5に記載した本発明の車載用バッテリの充電容量状態検出方法と、請求項10に記載した本発明の車載用バッテリの充電容量状態検出装置とのいずれによっても、放電可能容量値や充電可能容量値、充電状態(SOC)といった、バッテリの充電容量に関する状態が、充電中においても検出できるようにして、バッテリのマネージメントの実行可能な状況を充電中にも広げて、広範囲でのマネージメントの実現を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の車載用バッテリの充電側分極解消検出装置及び車載用バッテリ充電容量状態検出装置の基本構成図である。
【図2】本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法を適用した車載用バッテリの開回路電圧演算装置を内在する、本発明の車載用バッテリの充電容量状態検出方法を適用した本発明の一実施形態に係る車載用バッテリの充電容量状態検出装置の概略構成を一部ブロックにて示す説明図である。
【図3】図2のマイクロコンピュータのROMに格納された制御プログラムに従いCPUが行う処理を示すフローチャートである。
【図4】1次近似式で表したバッテリの電圧−電流特性の一例を示すグラフである。
【図5】2次近似式で表したバッテリの電圧−電流特性の一例を示すグラフである。
【図6】電流に対する分極の変化の一例を示すグラフである。
【図7】1回の放電によって得られる2つの2次の近似曲線式で表される近似特性曲線の一例を示すグラフである。
【図8】2つの近似特性曲線上への2つの任意の点の定め方を説明するためのグラフである。
【図9】一方の近似特性曲線に定めた点に対する想定点の定め方と2点間の傾斜の補正の仕方とを説明するためのグラフである。
【図10】他方の近似特性曲線に定めた点に対する想定点の定め方と2点間の傾斜の補正の仕方とを説明するためのグラフである。
【図11】図2の車載用バッテリ充電容量状態検出装置を用いて放電可能容量を検出するバッテリにおいて発生する充放電電流の経時変化を示すグラフである。
【図12】バッテリの純抵抗を測定する他の手順において、2つの近似特性曲線上への2つの点の定め方を説明するためのグラフである。
【図13】バッテリの純抵抗を測定する他の手順において、一方の近似特性曲線に定めた点に対する想定点の定め方と2点間の傾斜の補正の仕方とを説明するためのグラフである。
【図14】バッテリの純抵抗を測定する他の手順において、他方の近似特性曲線に定めた点に対する想定点の定め方と2点間の傾斜の補正の仕方とを説明するためのグラフである。
【符号の説明】
13 バッテリ
23 マイクロコンピュータ
23a CPU
23b RAM
23c ROM
23A 開始時点検出手段
23B 内部抵抗割出手段
23C 演算手段
23D 減少量検出手段
23E 経過時間計測手段
23F 補正手段
A 電流測定手段
B 電圧測定手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の負荷に電力を供給するバッテリの予め定められた設定充電電圧値による定電圧充電中に、バッテリの平衡状態における端子電圧に相当する開回路電圧を演算する方法及びその装置と、そのような定電圧充電中においてバッテリの充電容量に関する状態を検出する方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両に搭載されるバッテリは、特にモータを唯一の推進駆動源とする電気自動車においては、一般のエンジンを推進駆動源とする車両におけるガソリンに相当するものであることから、充電状態SOC(State of charge )等、バッテリがどの程度充電されているのかを認識しておくことは、車両の正常な走行を確保する上で非常に重要である。
【0003】
また、近年、エンジンを推進動力源とする一般車や、エンジンの発生するパワーの不足分をモータによりアシストするハイブリッド車両においては、環境保護の観点から、交差点の信号待ち等による停車時にエンジンを停止させるアイドルストップ機能の搭載が進められている。
【0004】
この機能を搭載した車両においては、エンジンの再始動時に、セルモータやセルモータを兼ねたパワーアシスト用のモータに対してかなりの大電流放電を行うことから、逆に、エンジン再始動のための大電流放電に耐え得るだけの放電可能容量がバッテリに残っていないと、迂闊にアイドルストップさせるわけには行かなくなる。
【0005】
そのため、上述した充電状態SOCや、バッテリにあとどのくらい放電可能な容量が残っているかを示す放電可能容量等、車両に搭載されるバッテリの充電容量に関する状態を正確に把握することは、先に述べた電気自動車では勿論のこと、一般車やハイブリッド車両においても、非常に重要となる。
【0006】
ところで、バッテリの充電状態SOCを認識するには、それらと相関のあるバッテリの開回路状態における端子電圧を求める方法があるが、そのためには車両上の負荷装置や充電装置からバッテリを電気的に切り離さなければならず、あまり現実的ではない。
【0007】
また、バッテリの充電状態SOCを認識する他の方法としては、充放電電流を時間で積算した充電電流積算値や放電電流積算値を、一定の充放電条件で求めた既知のバッテリの放電可能容量に対して加算、減算して、現在の放電可能容量を求める、電流積算方式や電力積算方式が知られている。
【0008】
しかし、これらの方式では、バッテリの個体差や劣化の進行度合い等によって、元々の満充電容量の値が変化してしまうので、バッテリの現在の放電可能容量を正確に割り出すことができない。
【0009】
そこで本出願人は、車両に搭載したまま充電状態SOCを把握する方法として、放電中に測定したバッテリの端子電圧と放電電流の複数の対からバッテリの電圧−電流特性(I−V特性)を求め、この電圧−電流特性からバッテリの開回路状態における端子電圧を推定した推定電圧を用いて充電状態SOCを求める方式を、例えば特開平8−278351号公報等において過去に提案した。
【0010】
また、上述した放電中の端子電圧及び放電電流からバッテリの充電状態SOCを求める方式に関連するものとして本出願人は、バッテリの放電中に分極が発生してバッテリの端子電圧を低下させてしまうことに着目した、分極による電圧降下分を割り出し補償して充電状態SOCを求める方式等の提案を、その後も行っている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述したこれまでの本出願人による提案は、いずれも、バッテリの放電中に測定した端子電圧や放電電流を用いた計算によってバッテリの放電可能容量等を求めるものであることから、バッテリが放電を行っている間は、最新の充電状態SOCを求めることができる。
【0012】
しかしながら、一般車やハイブリッド車両のように、放電だけでなく充電も頻繁に行われる車両では、放電時にバッテリの充電状態SOCを最新値に更新できるだけでは不十分であり、充電時にもバッテリの充電状態SOCを求めて最新値に更新できるようにすることが好ましい。
【0013】
とはいえ、一般にバッテリの充電が定電圧充電によって行われることを考えると、放電時のように、様々な値の端子電圧と充電電流との対をサンプリングすることができず、それゆえ、充電中の端子電圧と充電電流とからバッテリの電圧−電流特性(I−V特性)を求めることができないので、充電状態SOCや放電可能容量等の、バッテリがどの程度充電されているかの指標となる値や、その値と相関を持つバッテリの平衡状態における開回路電圧等を、充電中に求めることは、従来から未解決のまま残っていた。
【0014】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、電圧が変化しないが故に様々な値の端子電圧と充電電流との対をサンプリングして電圧−電流特性を求めることのできない充電中であっても、開回路電圧や充電容量に関する状態を正確に演算することのできるバッテリの開回路電圧演算方法やバッテリの充電容量状態検出方法と、これらの方法を実施する際に用いて好適なバッテリの開回路電圧演算装置やバッテリの充電容量状態検出装置とを提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成する請求項1乃至請求項4に記載した本発明は、車載用バッテリの開回路電圧演算方法に関するものであり、請求項5に記載した本発明は、車載用バッテリの充電容量状態検出方法に関するものであると共に、請求項6乃至請求項9に記載した本発明は、車載用バッテリの開回路電圧演算装置に関するものであり、請求項10に記載した本発明は、車載用バッテリの充電容量状態検出装置に関するものである。
【0016】
そして、請求項1に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法は、車両の負荷に電力を供給するバッテリの定電圧充電中に、該バッテリの平衡状態における端子電圧に相当する開回路電圧を演算するに当たり、前記バッテリの定電圧充電中に、該バッテリの充電電流の減少を伴いつつ前記バッテリの端子電圧が定電圧充電の設定充電電圧値付近で安定する電圧安定領域の開始時点を検出し、前記設定充電電圧値と前記定電圧充電の開始前における前記バッテリの開回路電圧との差値を、前記検出した前記電圧安定領域の開始時点における前記バッテリの充電電流の値により除することで、前記検出した前記電圧安定領域の開始時点における前記バッテリの内部抵抗を求め、前記検出した前記電圧安定領域の開始時点以降の、前記バッテリの充電電流の減少量に、前記検出した前記電圧安定領域の開始時点における、前記求めた前記バッテリの内部抵抗を乗じた値を、予め求められた前記バッテリの前記定電圧充電の開始前における開回路電圧に加えることで、前記バッテリの現在の開回路電圧を演算するようにしたことを特徴とする。
【0017】
また、請求項2に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法は、請求項1に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法において、前記電圧安定領域の開始時点の検出を、前記充電電流の単位時間当たりの減少量が所定値を下回った時点の検出により行うようにした。
【0018】
さらに、請求項3に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法は、請求項1に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法において、前記電圧安定領域の開始時点の検出を、前記バッテリの定電圧充電の開始から所定時間が経過した時点の検出により行うようにした。
【0019】
また、請求項4に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法は、請求項1、2又は3に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法において、前記検出した前記電圧安定領域の開始時点以降において、該バッテリの端子電圧を測定し、該測定したバッテリの端子電圧と前記設定充電電圧値との差に応じて、前記演算した前記バッテリの定電圧充電中における開回路電圧の値を補正するようにした。
【0020】
さらに、請求項5に記載した本発明の車載用バッテリの充電容量状態検出方法は、請求項1、2、3又は4に記載の車載用バッテリの開回路電圧演算方法によって演算した前記バッテリの定電圧充電中における開回路電圧から、前記バッテリの現在の充電容量に関する状態を検出するようにしたことを特徴とする。
【0021】
また、請求項6に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置は、図1の基本構成図に示すように、車両の負荷に電力を供給するバッテリ13の予め定められた設定充電電圧値による定電圧充電中に、前記バッテリ13の平衡状態における端子電圧に相当する開回路電圧を演算する装置であって、前記バッテリ13に対する充電電流を測定する電流測定手段Aと、前記バッテリ13の定電圧充電中に、該バッテリ13の充電電流の減少を伴いつつ前記バッテリ13の端子電圧が前記設定充電電圧値付近で安定する電圧安定領域の開始時点を検出する開始時点検出手段23Aと、前記設定充電電圧値と前記定電圧充電の開始前における前記バッテリ13の開回路電圧との差値を、前記開始時点検出手段23Aにより検出された前記電圧安定領域の開始時点において前記電流測定手段Aにより測定された前記バッテリ13の充電電流の値によって除することで、前記開始時点検出手段23Aにより検出された前記電圧安定領域の開始時点における前記バッテリ13の内部抵抗を求める内部抵抗割出手段23Bと、前記開始時点検出手段23Aにより検出された前記電圧安定領域の開始時点以降の、前記電流測定手段Aにより測定された前記バッテリ13の充電電流の減少量に、前記内部抵抗割出手段23Bにより求められた、前記開始時点検出手段23Aにより検出された前記電圧安定領域の開始時点における前記バッテリ13の内部抵抗を乗じた値を、予め求められた前記バッテリ13の前記定電圧充電の開始前における開回路電圧に加えることで、前記バッテリ13の現在の開回路電圧を演算する演算手段23Cとを備えることを特徴とする。
【0022】
さらに、請求項7に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置は、請求項6に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置において、前記開始時点検出手段23Aが、前記定電圧充電中において前記電流測定手段Aにより測定された前記バッテリ13の充電電流の単位時間当たりの減少量を検出する減少量検出手段23Dを有しており、該減少量検出手段23Dにより検出された前記バッテリ13の充電電流の単位時間当たりの減少量が所定値を下回った時点を、前記電圧安定領域の開始時点として検出するものとした。
【0023】
また、請求項8に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置は、請求項6に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置において、前記開始時点検出手段23Aが、前記バッテリ13の定電圧充電の開始からの経過時間を計測する経過時間計測手段23Eを有しており、該経過時間計測手段23Eにより計測される前記バッテリ13の定電圧充電の開始からの経過時間が所定時間に達した時点を、前記電圧安定領域の開始時点として検出するものとした。
【0024】
さらに、請求項9に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置は、請求項6、7又は8に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置において、前記バッテリ13の端子電圧を測定する電圧測定手段Bと、前記開始時点検出手段23Aにより検出された前記電圧安定領域の開始時点以降に前記電圧測定手段Bにより測定された前記バッテリ13の端子電圧及び前記設定充電電圧値の差に応じて、前記演算手段23Cにより演算された前記バッテリ13の定電圧充電中における開回路電圧の値を補正する補正手段23Fとをさらに備えているものとした。
【0025】
また、請求項10に記載した本発明の車載用バッテリの充電容量状態検出装置は、請求項6、7、8又は9に記載の車載用バッテリの開回路電圧演算装置を備えており、該車載用バッテリの開回路電圧演算装置により演算された前記バッテリ13の現在の開回路電圧から、該バッテリ13の現在の充電容量に関する状態を検出することを特徴とする。
【0026】
請求項1に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法によれば、バッテリに充電電圧を印加すると、当初の間は、バッテリの充電電流が増加するにつれて充電側分極の進行(増加)によりバッテリの内部抵抗が上昇し、その結果、バッテリの充電電流が減少に転じると共にバッテリの端子電圧が徐々に低下して行き、その間、定電圧充電によってバッテリに与えられるエネルギーは、殆ど充電側分極に転化し、バッテリの内部起電力の増加には寄与しない。
【0027】
しかし、その後、バッテリに生じた充電側分極の増加がストップし、充電側分極が飽和すると、バッテリの内部抵抗の上昇もストップすることから、定電圧充電によってバッテリに与えられるエネルギーが、充電側分極の増加に寄与せずバッテリの内部起電力の増加に寄与するようになり、その結果、バッテリの充電電流の減少を伴いつつ端子電圧が定電圧充電の設定充電電圧値付近で安定して、電圧安定領域の開始時点に至る。
【0028】
そして、電圧安定領域の開始時点では、バッテリに生じた充電側分極の増加がストップし、充電側分極が飽和していることから、電圧安定領域の開始以降には、バッテリの内部起電力の増加以外の要因でバッテリの内部抵抗が変化することはなく、したがって、バッテリの内部起電力の増加量さえ正確に把握すれば、その中に、バッテリの内部起電力の増加に伴うバッテリの内部抵抗の変化(減少)分が折り込まれたことになり、充電中のバッテリの開回路電圧を求める上で、バッテリの内部起電力の増加に伴うバッテリの内部抵抗の変化(減少)を考慮する必要はないことになる。
【0029】
よって、電圧安定領域の開始以降の充電電流の減少量に、電圧安定領域の開始時点に求めたバッテリの内部抵抗を乗じた値は、電圧安定領域の開始以降におけるバッテリの内部起電力の増加分ということになり、これを、予め求められたバッテリの定電圧充電の開始前における開回路電圧に加えることで、充電中にある現在のバッテリの開回路電圧が求まることになる。
【0030】
また、請求項2に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法によれば、請求項1に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法において、バッテリの端子電圧が定電圧充電の設定充電電圧値付近で安定する電圧安定領域の開始時点までは、バッテリの充電電流の変化スピードが大きく、電圧安定領域の開始時点に近づくにつれて、バッテリの充電電流はその変化スピードを鈍らせつつ減少することから、充電電流の単位時間当たりの減少量が所定値を下回った時点を検出すると、その時点が電圧安定領域の開始時点に相当することになる。
【0031】
さらに、請求項3に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法によれば、請求項1に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法において、バッテリに印加する充電電圧値によってバッテリの充電電流が定まり、この充電電流に応じてバッテリに発生する充電側分極の飽和に向かった進行速度が定まることから、バッテリの端子電圧が定電圧充電の設定充電電圧値付近で安定する電圧安定領域の開始時点までの、定電圧充電の開始からの経過時間は、設定充電電圧値に応じてほぼ一義的に定まり、よって、バッテリの定電圧充電の開始から所定時間が経過した時点を検出すると、その時点が電圧安定領域の開始時点に相当することになる。
【0032】
また、請求項4に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法によれば、請求項1、2又は3に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法において、バッテリに印加される充電電圧が定電圧であるといっても、交流発電による電力で定電圧充電を行う場合や、定電圧充電となるように充電電流を可変制御する場合に、それらの動作が精度良く行われないと、定電圧であるべき充電電圧が変動する可能性がある。
【0033】
そこで、定電圧充電中におけるバッテリの端子電圧の測定値と、定電圧充電の本来あるべき設定充電電圧値との間に差がある場合に、その差に応じて、充電中に求められるバッテリの開回路電圧の値を補正すると、定電圧充電の精度が良くない場合であっても、充電中に求められるバッテリの開回路電圧の値の補正により、その良くない精度の分が補償されることになる。
【0034】
さらに、請求項5に記載した本発明の車載用バッテリの充電容量状態検出方法によれば、バッテリの充電容量に関する状態を検出するのに用いるバッテリの開回路電圧の値が、請求項1、2、3又は4に記載の車載用バッテリの開回路電圧演算方法により演算された、定電圧充電中のものであることから、放電可能容量値や充電可能容量値、充電状態(SOC)といった、バッテリの充電容量に関する状態の値が、充電中においても検出可能になることになる。
【0035】
また、請求項6に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置によれば、図1に示すように、バッテリ13に充電電圧を印加すると、当初の間は、電流測定手段Aにより測定されたバッテリ13の充電電流が増加するにつれて充電側分極の進行(増加)によりバッテリ13の内部抵抗が上昇し、その結果、電流測定手段Aにより測定されるバッテリ13の充電電流が減少に転じると共にバッテリ13の端子電圧が徐々に低下して行き、その間、定電圧充電によってバッテリ13に与えられるエネルギーは、殆ど充電側分極に転化し、バッテリ13の内部起電力の増加には寄与しない。
【0036】
しかし、その後、バッテリ13に生じた充電側分極の増加がストップし、充電側分極が飽和すると、バッテリ13の内部抵抗の上昇もストップすることから、定電圧充電によってバッテリ13に与えられるエネルギーが、充電側分極の増加に寄与せずバッテリ13の内部起電力の増加に寄与するようになり、その結果、バッテリ13の充電電流の減少を伴いつつ端子電圧が定電圧充電の設定充電電圧値付近で安定して、電圧安定領域の開始時点に至り、そのことが開始時点検出手段23Aによって検出される。
【0037】
そして、開始時点検出手段23Aによる電圧安定領域の開始の検出時点では、バッテリ13に生じた充電側分極の増加がストップし、充電側分極が飽和していることから、電圧安定領域の開始以降には、バッテリ13の内部起電力の増加以外の要因でバッテリ13の内部抵抗が変化することはなく、したがって、バッテリ13の内部起電力の増加量さえ正確に把握すれば、その中に、バッテリ13の内部起電力の増加に伴うバッテリ13の内部抵抗の変化(減少)分が折り込まれたことになり、充電中のバッテリ13の開回路電圧を求める上で、バッテリ13の内部起電力の増加に伴うバッテリ13の内部抵抗の変化(減少)を考慮する必要はないことになる。
【0038】
よって、電圧安定領域の開始以降に電流測定手段Aにより測定される充電電流の減少量に、開始時点検出手段23Aによる電圧安定領域の開始の検出時点に求めたバッテリ13の内部抵抗を乗じた値は、開始時点検出手段23Aによる電圧安定領域の開始の検出以降におけるバッテリ13の内部起電力の増加分ということになり、これを、予め求められたバッテリ13の定電圧充電の開始前における開回路電圧に加える演算を演算手段23Cが行うことで、充電中にある現在のバッテリ13の開回路電圧が求まることになる。
【0039】
さらに、請求項7に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置によれば、請求項6に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置において、バッテリ13の端子電圧が定電圧充電の設定充電電圧値付近で安定する電圧安定領域の開始時点までは、バッテリの充電電流の変化スピードが大きく、電圧安定領域の開始時点に近づくにつれて、バッテリの充電電流はその変化スピードを鈍らせつつ減少することから、充電電流の単位時間当たりの減少量が所定値を下回った時点を減少量検出手段23Dにより検出すると、その時点が、開始時点検出手段23Aにより検出すべき電圧安定領域の開始時点に相当することになる。
【0040】
また、請求項8に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置によれば、請求項6に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置において、バッテリ13に印加する充電電圧値によってバッテリ13の充電電流が定まり、この充電電流に応じてバッテリ13に発生する充電側分極の飽和に向かった進行速度が定まることから、バッテリ13の端子電圧が定電圧充電の設定充電電圧値付近で安定する電圧安定領域の開始時点までの、定電圧充電の開始からの経過時間は、設定充電電圧値に応じてほぼ一義的に定まり、よって、バッテリ13の定電圧充電の開始から所定時間が経過した時点を経過時間計測手段23Eにより検出すると、その時点が、開始時点検出手段23Aにより検出すべき電圧安定領域の開始時点に相当することになる。
【0041】
さらに、請求項9に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置によれば、請求項6、7又は8に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置において、バッテリ13に印加される充電電圧が定電圧であるといっても、交流発電による電力で定電圧充電を行う場合や、定電圧充電となるように充電電流を可変制御する場合に、それらの動作が精度良く行われないと、定電圧であるべき充電電圧が変動する可能性がある。
【0042】
そこで、開始時点検出手段23Aにより検出された電圧安定領域の開始時点以降に電圧測定手段Bにより測定される定電圧充電中におけるバッテリ13の端子電圧の測定値と、定電圧充電の本来あるべき設定充電電圧値との間に差がある場合に、その差に応じて、充電中に演算手段23Cにより演算されるバッテリ13の開回路電圧の値を補正手段23Fにより補正すると、定電圧充電の精度が良くない場合であっても、充電中に演算手段23Cにより演算されるバッテリ13の開回路電圧の値を補正手段23Fにより補正することにより、その良くない精度の分が補償されることになる。
【0043】
また、請求項10に記載した本発明の車載用バッテリの充電容量状態検出装置によれば、バッテリ13の充電容量に関する状態を検出するのに用いるバッテリ13の開回路電圧の値が、請求項6、7、8又は9に記載の車載用バッテリの開回路電圧演算装置の演算手段23Cにより演算された、定電圧充電中のものであることから、放電可能容量値や充電可能容量値、充電状態(SOC)といった、バッテリ13の充電容量に関する状態の値が、少なくとも、充電中においても検出可能になることになる。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による車載用バッテリの開回路電圧演算方法及び車載用バッテリの充電容量状態検出方法を、本発明による車載用バッテリの開回路電圧演算装置及び車載用バッテリの充電容量状態検出装置と共に、図面を参照して説明する。
【0045】
図2は本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法を適用した車載用バッテリの開回路電圧演算装置を内在する、本発明の車載用バッテリの充電容量状態検出方法を適用した本発明の一実施形態に係る車載用バッテリの充電容量状態検出装置の概略構成を一部ブロックにて示す説明図であり、図2中引用符号1で示す本実施形態の車載用バッテリ充電容量状態検出装置は、エンジン3に加えてモータジェネレータ5を有するハイブリッド車両に搭載されている。
【0046】
そして、このハイブリッド車両は、通常時はエンジン3の出力のみをドライブシャフト7からディファレンシャルケース9を介して車輪11に伝達して走行させ、高負荷時には、バッテリ13からの電力によりモータジェネレータ5をモータとして機能させて、エンジン3の出力に加えてモータジェネレータ5の出力をドライブシャフト7から車輪11に伝達し、アシスト走行を行わせるように構成されている。
【0047】
また、このハイブリッド車両は、減速時や制動時にモータジェネレータ5をジェネレータ(発電機)として機能させ、運動エネルギを電気エネルギに変換してバッテリ13を充電させるように構成されている。
【0048】
尚、モータジェネレータ5はさらに、不図示のスタータスイッチのオンに伴うエンジン3の始動時に、エンジン3のフライホイールを強制的に回転させるセルモータとして用いられる。
【0049】
ちなみに、本実施形態のハイブリッド車両においては、不図示のキーシリンダに差し込んだキー(図示せず。)を1段階目までひねると、それまでオフ状態であった不図示のアクセサリスイッチがオンとなり、さらにキーを2段階目までひねると、アクセサリスイッチはオン状態のまま、それまでオフ状態であった不図示のイグニッションスイッチがオンとなる。
【0050】
さらに、キーシリンダに差し込んだキーを3段階目までひねると、アクセサリスイッチ及びイグニッションスイッチはオン状態のまま、それまでオフ状態であった前記スタータスイッチがオンとなる。
【0051】
尚、3段階目までひねったキーから手を離すと、キーが自動的に2段階目まで戻ってスタータスイッチがオフとなるが、2段階目では逆向きにひねらない限りキーがその位置で止まってアクセサリスイッチ及びイグニッションスイッチはオン状態のままとなり、同様に、1段階目でも逆向きにひねらない限りキーがその位置で止まってアクセサリスイッチはオン状態のままとなる。
【0052】
逆に、アクセサリスイッチがオンされ、その上でスタータスイッチがオンされて、エンジン3を始動させるためにモータジェネレータ5をセルモータとして作動させる際には、例え他の電装品が何も作動していなくても、およそ250A(アンペア)に達する放電電流がバッテリ9から瞬時的に流れる。
【0053】
話を構成の説明に戻して、本実施形態の車載用バッテリ充電容量状態検出装置1は、アシスト走行用のモータやセルモータとして機能するモータジェネレータ5等に対するバッテリ13の放電電流Iや、ジェネレータとして機能するモータジェネレータ5からのバッテリ13に対する充電電流を検出する電流センサ15と、バッテリ13に並列接続した無限大抵抗を有し、バッテリ13の端子電圧Vを検出する電圧センサ17とを備えている。
【0054】
尚、上述した電流センサ15及び電圧センサ17は、イグニッションスイッチのオン状態によって閉回路状態となる回路上に配置されている。
【0055】
また、本実施形態の車載用バッテリ充電容量状態検出装置1は、上述した電流センサ15や電圧センサ17の出力がインタフェース回路(以下、「I/F」と略記する。)21におけるA/D変換後に取り込まれるマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と略記する。)23をさらに備えている。
【0056】
そして、前記マイコン23は、CPU23a、RAM23b、及び、ROM23cを有しており、このうち、CPU23aには、RAM23b及びROM23cの他、前記I/F21が接続されており、また、上述した不図示のイグニッションスイッチのオンオフ状態を示す信号が入力される。
【0057】
前記RAM23bは、各種データ記憶用のデータエリア及び各種処理作業に用いるワークエリアを有しており、前記ROM23cには、CPU23aに各種処理動作を行わせるための制御プログラム等が格納されている。
【0058】
そして、前記マイコン23は、不図示のイグニッションスイッチのオフ状態では、バッテリ13から供給される暗電流により必要最小限の処理のみを行うスリープモードとなり、イグニッションスイッチのオンによりウェイクアップして通常のアクティブモードとなる。
【0059】
次に、前記ROM23cに格納された制御プログラムに従いCPU23aが行う処理を、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0060】
バッテリ13からの給電を受けてマイコン23が起動しプログラムがスタートすると、CPU23aは、まず、不図示の充放電回路に対するバッテリ13の接続状態を確認する等して、バッテリ13が充電中であるか否かを確認する(ステップS1)。
【0061】
バッテリ13が充電中である場合は(ステップS1でY)、後述するステップS3に進み、充電中でない場合は(ステップS1でN)、充電開始前におけるバッテリ13の平衡状態における端子電圧に相当する開回路電圧OCVの算出処理を行った後(ステップS2)、ステップS1にリターンする。
【0062】
そして、ステップS2の充電開始前におけるバッテリ13の開回路電圧OCVの算出処理で行われる、具体的な処理の内容を、放電中の端子電圧及び放電電流からバッテリの充電状態SOCを求める方式に関連する本出願人による最新の出願である、特願2000−369220において提案した内容を用いて、以下に説明する。
【0063】
まず、ステップS2では、バッテリ13が放電を行った際に、I/F21を介して電流センサ15や電圧センサ17の出力のA/D変換値の組を周期的に収集することで、バッテリ13の端子電圧V及び放電電流Iを周期的に測定し、その測定値を用いたバッテリ13の純抵抗Rの測定と、この純抵抗Rの成分のみに依存した分極の影響を含まないバッテリ13の電圧−電流特性の割り出しとを行う。
【0064】
これと共に、ステップS2では、バッテリ13の放電中の特に放電電流の減少中における端子電圧Vと放電電流Iとの測定値から、分極の影響を含むバッテリ13の電圧−電流特性の割り出しを行う。
【0065】
そして、これらバッテリ13の分極の影響を含まない電圧−電流特性と分極の影響を含む電圧−電流特性とを用いて、計算上のバッテリ13の開回路電圧である推定電圧Vnを推定する。
【0066】
そこでまず、一般的なバッテリそのものの特性について検討する。
【0067】
ちなみに、エンジンを推進動力源とする一般車や、エンジンの発生するパワーの不足分をモータによりアシストするハイブリッド車両には、スタータモータやモータジェネレータなどの大電流を必要とする負荷が搭載されており、これらの負荷に電力を供給するバッテリの電圧−電流(V−I)特性の例は図4及び図5に示す点のようになる。
【0068】
従来、V−I特性は図4に示すように、1次式V=aI+bで近似する方式が一般に行われてきたが、図6に示す分極抵抗成分の非直線形の特性の影響により、1次式よりも2次式の方が、高い相関を有する式を得ることができることがわかった。そこで、本実施形態においてバッテリ13の純抵抗による近似V−I特性を求める際には、図5に示すように、V=aI2 +bI+cなる2次式の近似曲線式を最小二乗法によって得ることによって、高い相関を有する近似式を用いるようにする。
【0069】
上述したような大電流を必要とする負荷を駆動したときには、負荷への最大供給電力値に相当する所定の大電流値による定負荷放電が行われる。このときのバッテリの端子電圧と放電電流とを周期的に測定してこれら端子電圧と放電電流との相関を示す実データに基づいて、図7のグラフ中に示すように、放電電流の増加中におけるバッテリのV−I特性の第1の近似曲線式M1と、放電電流の減少中におけるバッテリのV−I特性の第2の近似曲線式M2の2つの式が得られる。なお、図7中に記載の式は実データによって得られた具体的な近似曲線式の一例である。これらの2つの近似曲線式M1と近似曲線式M2との違いを以下分析する。
【0070】
一方の近似曲線式M1の場合、放電開始時点での分極抵抗成分を基準にすると、放電が開始し電流が増加すると、分極抵抗成分は徐々に増加していく。その後、電流が最大値になったところで、分極抵抗成分がピークに達し、電流の減少に伴って分極が解消していくはずである。しかし、実際には、電流の減少に比例して分極抵抗成分は解消するのではなく反応が遅れて現れるため、近似曲線式M2の場合、増加方向と同じV−I特性を示さず、増加方向よりも大きな電圧降下を発生させることになり、電流の増加と減少時にそれぞれ対応する2つの近似曲線式M1及びM2が得られることになる。
【0071】
上述したV−I特性の2つの近似曲線式M1及びM2で表される近似曲線を用いて、バッテリの純抵抗Rを測定する方法を、図8乃至図10を参照して、以下具体的に説明する。
【0072】
まず、図8に示すように、上記近似曲線式の一方M1で表される近似曲線上の実データの範囲内に任意の点Aを選択し、式M1の近似曲線の縦軸に対する切片C1から近似曲線上の点Aまでの電圧降下ΔV1を求める。このΔV1を点Aでの電流I1で除算した値は、純抵抗Rに純抵抗を除くその他の抵抗成分である分極抵抗成分のその時点での値Rpol1を加算した合成抵抗である。すなわち、
R+Rpol1=ΔV1/I1
である。
【0073】
同様に、図8に示すように、上記近似曲線式の他方M2で表される近似曲線上の実データの範囲内に任意の点Bを選択し、式M2の近似曲線の縦軸に対する切片C2から近似曲線上の点Bまでの電圧降下ΔV2を求める。このΔV2を点Bでの電流I2で除算した値は、純抵抗Rに純抵抗を除くその他の抵抗成分である分極抵抗成分のその時点での値Rpol2を加算した合成抵抗である。すなわち、
R+Rpol2=ΔV2/I2
である。
【0074】
上記2点A及びBの合成抵抗の値の差ΔRは
ΔR=R+Rpol1−(R+Rpol2)=Rpol1−Rpol2
となり、点A及びBにおける分極抵抗成分の差となる。これは、1回の放電中の純抵抗Rは変化しないことから明らかである。
【0075】
なお、式M1で表される近似曲線上には、図9に示すように、式M2の近似曲線上に選択した任意の点Bにおける合成抵抗(R+Rpol2)に等しい値(R+Rpol1′)をもった点A′が存在する。また、式M2で表される近似曲線上にも、図9に示すように、式M1の近似曲線上に選択した任意の点Aにおける合成抵抗(R+Rpol1)に等しい値(R+pol2′)をもった点B′が存在する。すなわち、
R+Rpol1′=R+Rpol2
となる点A′が式M1で表される近似曲線上に存在し、
R+Rpol1=R+Rpol2′
となる点B′が式M2で表される近似曲線上に存在する。
【0076】
要するに、点A′における電流及び電圧をそれぞれI1′及びV1′とし、点B′における電流及び電圧をそれぞれI2′及びV2′とすると、点A′の座標(I1′、V1′)と点Bの座標(I2、V2)の分極抵抗成分の値が互いに等しく、また点Aの座標(I1、V1)と点B′(I2′、V2′)の分極抵抗成分の値も互いに等しいことがわかる。
【0077】
まず、B点を基準とし、この点Bの合成抵抗の値(R+Rpol2)と等しい値を持つ点A′の電流I1′と電圧V1′の算出の仕方を以下説明する。
【0078】
今、式1で表される近似曲線の縦軸に対する切片C1からこの点A′までの電圧降下をΔV1′とすると、これは
ΔV1′=C1−(a1I1′2 +b1I1′+C1)=(R+Rpol2)I1′
となり、この式を整理すると、
−(a1I1′ +b1)=R+Rpol2
となり、点A′の電流I1′は
I1′=−(b1+R+Rpol2)/a1
となる。なお、
R+Rpol2(=R+pol1′)=ΔV2/I2(=ΔV1′/I1′)
であるので、
I1′=−〔b1+(ΔV2/I2)〕/a1
=−〔b1+(ΔV1′/I1′)〕/a1
となる。また、点A′の電圧V1′は、上記式から明らかなように、
V1′=a1I1′2 +b1I1′+C1
であるので、点A′の座標(I1′、V1′)は既知の値から定められる。
【0079】
同様にして、A点を基準とし、この点Aの抵抗値(R+Rpol1)と等しい値を持つ点B′の電流I2′と電圧V2′も、
I2′=−〔b2+(ΔV1/I1)〕/a2
=−〔b2+(ΔV2′/I2′)〕/a2
V2′=a2I2′2 +b2I2′+C2
により既知の値から算出できる。なお、ΔV2′は、式2で表される近似曲線の縦軸に対する切片C2からこの点B′までの電圧降下である。
【0080】
上述のようにして、点A′の座標(I1′、V1′)が定まったら、図9に示すように、点A′の座標(I1′、V1′)と点Bの座標(I2、V2)とを結ぶ直線L1の傾斜を求めることによって合成抵抗の値R1が求められる。この合成抵抗の値R1は、純抵抗と分極抵抗成分Rpol2とからなる合成抵抗によって生じる電圧降下の差(V1′−V2)を各点において流れる電流の差(I1′−I2)によって除算することによって求められる。すなわち、
R1=(V1′−V2)/(I1′−I2)
となる。
【0081】
同様にして、点B′の座標(I2′、V2′)が定まったら、図10に示すように、点B′の座標(I2′、V2′)と点Aの座標(I1、V1)とを結ぶ直線L2の傾斜を求めることによって合成抵抗の値R2が求められる。この合成抵抗の値R2は、純抵抗と分極抵抗成分Rpol1とからなる合成抵抗によって生じる電圧降下の差(V1−V2′)を各点において流れる電流の差(I1−I2′)によって除算することによって求められる。すなわち、
R2=(V1−V2′)/(I1−I2′)
となる。
【0082】
しかしながら、上述のようにして求められる合成抵抗の値R1及びR2は、純抵抗と分極抵抗成分とからなる合成抵抗によって生じる電圧降下の差を各点において流れる電流の差によって除算して求めたもので、純抵抗とは一致しない。2点間の傾きを純抵抗と一致させるには、分極抵抗成分によって生じる電圧降下分を除いた電圧降下の差を電流差によって除算してやればよい。
【0083】
先ず、点Bを基準にした場合について説明すると、今、合成抵抗の値R1を
R1=R1′+Rpol2=R1′+Rpol1′
とすると、抵抗R1′に点A′の電流I1′と点Bの電流I2との差に相当する電流が流れることによって生じる電圧降下は、分極抵抗成分Rpol1′(又はRpol2)に点A′の電流I1′と点Bの電流I2の差に相当する電流が流れることによって生じる電圧降下分だけ、点A′の電圧を持ち上げて補正してやればよく、次式が成立する。
R1′(I1′−I2)=〔V1′+Rpol1′(I1′−I2)〕−V2
【0084】
この式を整理すると、
R1′(I1′−I2)=(V1′−V2)+Rpol1′(I1′−I2)
となる。ここで、Rpol1′=ΔV1′/I1′−R1′であるので、
R1′(I1′−I2)=(V1′−V2)+(ΔV1′/I1′−R1′)×(I1′−I2)
2R1′(I1′−I2)=(V1′−V2)+ΔV1′/I1′(I1′−I2)
となり、結果として、
R1′=〔(V1′−V2)+(ΔV1′/I1′)×(I1′−I2)〕/2(I1′−I2)
が求められる。なお、(ΔV1′/I1′)は(ΔV2/I2)と置き換えることができる。
【0085】
次に、点Aを基準にした場合にも同様にして
R2=R2′+Rpol1=R2′+Rpol2′
とすると、この抵抗R2′に点Aの電流I1と点B′の電流I2′の差に相当する電流が流れることによって生じる電圧降下は、分極抵抗成分Rpol12′(又はRpol1)に点Aの電流I1と点B′の電流I2′との差に相当する電流が流れることによって生じる電圧降下分、点B′の電圧を引き下げて補正してやればよく、次式が成立する。
R2′(I1−I2′)=V1−〔V2′−Rpol2′(I1−I2′)〕
【0086】
この式を整理すると、
R2′(I1−I2′)=(V1−V2′)+Rpol2′(I1−I2′)
となる。ここで、Rpol2′=ΔV2′/I2′−R2′であるので、
R2′(I1−I2′)=(V1−V2′)+(ΔV2′/I2′−R2′)(I1−I2′)
2R2′(I1−I2′)=(V1−V2′)+ΔV2′/I2′(I1−I2′)
となり、結果として、
R2′=〔(V1−V2′)+(ΔV2′/I2′)(I1−I2′)〕/2(I1−I2′)
が求められる。なお、(ΔV2′/I2′)は(ΔV1/I1)と置き換えることができる。
【0087】
上述したように求められた2つの値R1′及びR2′は、2つの点A及びBを基準にし、異なる分極抵抗成分(Rpol1′=Rpol2)と(Rpol1=Rpol2′)を用い、しかも異なる切片C1からの電圧降下Δ1′(ΔV1)と切片C2からの電圧降下Δ2′(ΔV2)を用いて求めたものであるので、真の純抵抗Rとなり得ない。したがって、両者の加算平均
R=(R1′+R2′)/2
をとることによって、真の純抵抗Rが求められる。
【0088】
そこで、バッテリ13の純抵抗を求めるに当たっては、I/F21を介して収集される電流センサ15や電圧センサ17の出力のA/D変換値の組の最新のものを用いて、最小二乗法により、放電電流Iの増加中におけるバッテリ13の端子電圧Vと放電電流Iとの相関を示す電圧−電流特性である、例えばV1(I)=a1I2 +b1+C1なる2次式で表される第1の近似曲線式M1と、減少する放電電流に対する電圧−電流特性の例えばV2(I)=a2I2 +b2I+C2なる2次式で表される第2の近似曲線式M2とを求める。
【0089】
次に、第1の近似曲線式M1によって表される電圧−電流特性曲線上に第1の点Aを定めると共に、第2の近似曲線式M2によって表される電圧−電流特性曲線上に第2の点Bを定める。このとき、第1の近似曲線式M1によって表される電圧−電流特性曲線上に定められる第1の点Aと、第2の近似曲線式M2によって表される電圧−電流特性曲線上に定められる第2の点Bとは、各近似曲線式を求める際に使用された端子電圧と放電電流の実データの存在する範囲内に好ましく定められる。このように定めることによって、その後、各点に対応する想定点を想定する際に、想定点が大きく外れた位置に想定されることがなくなる。また、好ましくは、第1の点Aと第2の点Bは、分極抵抗成分が最大となる点の両側に定められるのがよい。このように定めることによって、最大点の両側に想定点が定められるようになるようになり、その後、純抵抗を求める際の精度が高まるようになる。
【0090】
そして、第2の点Bに対応する第2の放電電流I2が流れたとき第2の電圧降下ΔV2を生じさせる、バッテリの純抵抗と第2の分極抵抗成分Rpol2からなる第2の合成抵抗R2と同一の抵抗値を有する第1の想定点A′を、第1の近似曲線式M1上に想定すると共に、第1の点Aに対応する第1の放電電流I1が流れたとき第1の電圧降下ΔV1を生じさせる、バッテリ13の純抵抗と第1の分極抵抗成分Rpol1からなる第1の合成抵抗R1と同一の抵抗値を有する第2の想定点B′を、第2の近似曲線式M2上に想定する。
【0091】
2つの想定点A′及びB′が想定できたら、第2の点Bと第1の想定点A′とを結ぶ直線L1の第1の傾斜R1を、第2の放電電流I2と第1の想定点A′での放電電流I1′とによってそれぞれ生じる、第2の分極抵抗成分Rpol2による電圧降下の差分Rpol2(I1′−I2)により補正した上で、第2の分極抵抗成分Rpol2による電圧降下分を除いた第1の補正傾斜R1′を求めると共に、前記第1の点と前記第2の想定点B′とを結ぶ直線L2の第2の傾斜R2を、第1の放電電流I1と第2の想定点B′での放電電流I2′とによってそれぞれ生じる、第1の分極抵抗成分Rpol1による電圧降下の差分Rpol1(I1−I2′)により補正した上で、第1の分極抵抗成分Rpol1による電圧降下分を除いた第2の補正傾斜R2′を求める。
【0092】
このようにして求めた第1の補正傾斜R1′と第2の補正傾斜R2′とを加算平均することで、これら第1の補正傾斜R1′と第2の補正傾斜R2′との平均傾斜を、バッテリ13の純抵抗Rとして求める。
【0093】
このようにしてバッテリ13の純抵抗Rを求めたならば、その値に、先に収集された最新の所定時間分の実データにおける放電電流Iを乗じて、この放電電流Iのサンプル数と同数の、純抵抗によるバッテリ13の放電中における端子電圧Vを求め、求めた複数の端子電圧Vと、先に収集された複数の放電電流Iとの対に、最小二乗法を適用して、純抵抗によるバッテリ13の分極の影響を含まない直線的な電圧−電流特性式VR =aR I+bR を割り出す。
【0094】
続いて、先に収集されたバッテリ13の放電電流Iの実データのうち、ピーク値から減少する部分の実データについて、そのデータの相関性を確認した上で、その減少する部分の複数の放電電流Iと、それら複数の放電電流Iに対応する複数の端子電圧Vとの対に、最小二乗法を適用して、バッテリ13の分極の影響を含む直線的な電圧−電流特性式V=aI+bを割り出す。
【0095】
次に、先に割り出した、純抵抗によるバッテリ13の分極の影響を含まない直線的な電圧−電流特性式VR =aR I+bR 上の、ピーク電流値よりも低い、セルモータやモータジェネレータを作動させる際に必ず流れる電流値(I1 )とそのときの電圧値(V1 )とからなる座標値(V1 ,I1 )を通るように、バッテリ13の分極の影響を含む電圧−電流特性式V=aI+bを電圧軸方向にシフトさせた、シフト後電圧−電流特性式V´=aI+b´を求める。
【0096】
続いて、定電流放電における推定電圧Vnがバッテリ13の容量に対して直線的な特性を示すようになる仮想電流値Is=−10A(アンペア)を、先に求めたシフト後電圧−電流特性式V´=aI+b´に代入して、推定電圧Vnを推定し、この推定電圧Vnに、予め定められた残存電圧降下値e0 を加算して、補正後推定電圧Vn´を求める。
【0097】
ここで、予め定められた残存電圧降下値e0 とは、セルモータやモータジェネレータによりエンジンを始動させるためにバッテリ13が瞬時的に定負荷放電を行った際に、その定負荷放電中に電流センサ15や電圧センサ17により検出されたバッテリ13の端子電圧Vと放電電流Iとの相関を基にして、上述のように推定した、定負荷放電状態における推定上の端子電圧Vである推定電圧Vnを、予め求めておいたバッテリ13の開回路電圧OCVから差し引いた、バッテリ13の放電終了時における残存分極の影響による残存電圧降下量のことである。
【0098】
以上が、ステップS2において実際に行われる、充電開始前におけるバッテリ13の開回路電圧OCV(補正後推定電圧Vn´)を求める具体的な処理の内容である。
【0099】
尚、ここで説明した、充電開始前におけるバッテリ13の開回路電圧OCV(補正後推定電圧Vn´)を求める処理の内容は、あくまで一例であって、他の内容による処理で充電開始前におけるバッテリ13の開回路電圧OCVを求めても一向に構わない。
【0100】
図3のフローチャートに説明を戻して、ステップS1においてバッテリ13が充電中である場合(Y)に進むステップS3では、I/F21を介して電流センサ15や電圧センサ17の出力のA/D変換値を適当数収集し、次に、その適当数のA/D変換値を平均して、バッテリ13の端子電圧Vや充電電流ICHG の平均値を求め(ステップS4)、求めた端子電圧Vの平均値が安定状態にあるか否かを確認する(ステップS5)。
【0101】
ちなみに、このステップS5における端子電圧Vの平均値が安定状態にあるか否かの確認は、バッテリ13の端子電圧Vが予め設定された充電電圧値に収斂したか否かを確認することを意味する。
【0102】
そして、バッテリ13の端子電圧Vが予め設定された充電電圧値に収斂する際には、図11のグラフにおける(ア)の領域における、バッテリ13に発生する充電側分極の進行に伴うバッテリ13の充電電流ICHG の変化が、5〜10秒程度で起こるのに対して、これに続く図11中の(イ)の領域における、端子電圧Vがほぼ一定でありながらバッテリ13の充電電流ICHG の平均値が減少するという変化が10分程度かかって起こるというように、バッテリ13の充電電流ICHG の平均値の減少スピードが格段に下がる。
【0103】
そのため、この充電電流ICHG の平均値の減少スピードが所定値を下回るほど格段に下がったか否かを確認することによって、ステップS5における端子電圧Vの平均値が安定状態にあるか否かの確認を行うことができる。
【0104】
また、バッテリ13の端子電圧Vが予め設定された充電電圧値に収斂する際には、バッテリ13に印加する充電電圧値によってバッテリ13の充電電流ICHG が定まり、この充電電流ICHG に応じてバッテリ13に発生する充電側分極の飽和に向かった進行速度が定まることから、5〜10秒程度で起こると先に説明した、図11中の(ア)の領域におけるバッテリ13の充電電流ICHG の変化の所要時間、つまり、充電の開始から充電電圧値に収斂するまでの経過時間が、その充電電圧値に応じてほぼ一義的に定まる。
【0105】
そのため、予め設定された充電電圧値に対応する充電開始から充電電圧値に収斂するまでの必要経過時間を予めROM23c等に設定しておき、この必要経過時間が充電の開始から経過したか否かを確認することによって、ステップS5における端子電圧Vの平均値が安定状態にあるか否かの確認を行うこともできる。
【0106】
以上のようにして、ステップS5における端子電圧Vの平均値が安定状態にあるか否かの確認を行い、その結果、端子電圧Vの平均値が安定状態にない場合は(ステップS5でN)、ステップS3にリターンし、安定状態にある場合は(ステップS5でY)、ステップS4で求めた端子電圧Vの平均値を、予め設定された充電電圧値、即ち、設定充電電圧値VT と位置づけると共に、ステップS4で求めた充電電流ICHG の平均値を、図11中の(ア)の領域と(イ)の領域との境界、つまり、電圧安定領域の開始時点における充電電流の値ICHG0と位置づける(ステップS6)。
【0107】
続いて、この時点、即ち、電圧安定領域の開始時点におけるバッテリ13の内部抵抗R+Rpol(純抵抗Rとそれ以外の抵抗成分である分極抵抗成分のその時点での値Rpolを加算した合成抵抗)を求める(ステップS7)。
【0108】
このステップS7におけるバッテリ13の内部抵抗R+Rpolの具体的な求め方とその考え方は、次のとおりである。
【0109】
まず、バッテリ13が設定充電電圧値VT により定電圧充電されている状態で、電圧センサ17を用いて実際に測定されるバッテリ13の端子電圧Vが、ステップS5で確認したように設定充電電圧値VT に収斂して安定状態に達したということは、定電圧充電によってバッテリ13に生じた充電側分極の増加がストップし、充電側分極が飽和したものと見倣すことができる。
【0110】
そして、この充電側分極が飽和した電圧安定領域の開始時点に至るまでには、先に説明したとおり5〜10秒程度しか経過しておらず、しかも、その程度の時間の間にバッテリ13の充電側分極が最大値に達していることになるから、この電圧安定領域の開始時点に至るまでの間の充電によってバッテリ13に与えられたエネルギーは、殆ど充電側分極に転化し、バッテリ13の内部起電力E0 の増加に対しては、この電圧安定領域の開始時点に至るまでの間、充電の開始時点から寄与していないものと見倣すことができる。
【0111】
ところで、バッテリ13の平衡状態における端子電圧Vであるところの開回路電圧OCVとは、そもそもバッテリ13の内部起電力E0 であるわけであるから、充電の開始時点から電圧安定領域の開始時点に至るまでの間、充電によってバッテリ13に与えられたエネルギーがバッテリ13の内部起電力E0 の増加に寄与していないとすると、電圧安定領域の開始時点における内部起電力E0 の値は、ステップS2で求めた充電開始前におけるバッテリ13の開回路電圧OCVの値と同じ値ということになる。
【0112】
そこで、この点を踏まえて、電圧安定領域の開始時点におけるバッテリ13の状態を式で表すと、バッテリ13の端子電圧Vであるところの設定充電電圧値VT から、バッテリ13の内部起電力E0 を減じた値が、バッテリ13の内部抵抗R+Rpolに、電圧安定領域の開始時点における充電電流の値ICHG0を乗じた値と等しくなるはずである。
VT −E0 =(R+Rpol)×ICHG0
【0113】
したがって、バッテリ13の内部抵抗R+Rpolは、次式、
(R+Rpol)=(VT −E0 )/ICHG0(但し、E0 =OCV=Vn´)
で求めることができる。
【0114】
このようにして、ステップS7においてバッテリ13の内部抵抗R+Rpolを求めたならば、次に、I/F21を介して電流センサ15の出力のA/D変換値を収集して、電圧安定領域の開始以後、即ち、図11中の(イ)の領域におけるバッテリ13の充電電流ICHG をサンプリングし(ステップS8)、そのサンプリングしたバッテリ13の充電電流の値ICHG1を用いて、充電中のバッテリ13の開回路電圧OCV´の算出を行う(ステップS9)。
【0115】
このステップS9における、充電中のバッテリ13の開回路電圧OCV´の算出の具体的な内容とその考え方は、次のとおりである。
【0116】
まず、このステップS9の時点では、充電側分極が飽和した電圧安定領域の開始時点を過ぎていることから、バッテリ13の内部抵抗R+Rpolは変化しないはずであり、そうすると、図11中の(イ)の領域におけるバッテリ13の充電電流ICHG の減少は、電圧安定領域の開始以後の充電によるバッテリ13の内部起電力E0 の増加が、その全ての原因となるはずである。
【0117】
ちなみに、図11中の(イ)の領域におけるバッテリ13の内部抵抗R+Rpolは、実際には変化(低下)するが、その要因はバッテリ13の内部起電力E0 の増加によるものが全てであり、言い換えると、バッテリ13の内部起電力E0 の増加以外の要因でバッテリ13の内部抵抗R+Rpolが変化(低下)することはない。
【0118】
よって、バッテリ13の内部起電力E0 の増加量さえ正確に把握すれば、その中に、バッテリ13の内部起電力E0 の増加に伴うバッテリ13の内部抵抗R+Rpolの変化(減少)分が折り込まれたことになり、充電中のバッテリ13の開回路電圧OCV´を求める上で、バッテリ13の内部起電力E0 の増加に伴うバッテリ13の内部抵抗R+Rpolの変化(減少)を考慮する必要はないことになる。
【0119】
したがって、増加後のバッテリ13の内部起電力をE0 ´とすると、次式、
VT −E0 ´=(R+Rpol)×ICHG1(但し、E0 ´>E0 )
が成り立つことになるから、これと、電圧安定領域の開始時点におけるバッテリ13の状態を示す上記の式、
VT −E0 =(R+Rpol)×ICHG0
とを、電圧安定領域の開始以降のバッテリ13の充電電流ICHG の減少量ICHG0−ICHG1を表す式に整理すると、
E0 ´−E0 =(R+Rpol)×(ICHG0−ICHG1)
となる。
【0120】
そこで、電圧安定領域の開始以降のバッテリ13の内部起電力E0 ´が、電圧安定領域の開始以降のバッテリ13の開回路電圧OCV´であり、上述したように、電圧安定領域の開始時点におけるバッテリ13の内部起電力E0 が、ステップS2で求めた充電開始前におけるバッテリ13の開回路電圧OCVの値であるとなると、次式、
E0 ´=E0 +(R+Rpol)×(ICHG0−ICHG1)
を計算することで、充電中のバッテリ13の開回路電圧OCV´を求めることができるわけである。
【0121】
以上のようにしてステップS9における充電中のバッテリ13の開回路電圧OCV´の算出が済んだならば、この充電中のバッテリ13の開回路電圧OCV´を、電圧比による算出式、
SOC={(OCV´−Ve)/(Vs−Ve)}×100(%)
又は、電力比による算出式、
(但し、Vsは満充電時の開回路電圧、Veは放電終止時の開回路電圧)
のいずれかの式に代入して、充電中のバッテリ13の充電状態SOCを求め、この充電状態SOCと、満充電時や放電終止時のバッテリ13の開回路電圧OCVとの関係から割り出される相関から、求めた充電状態SOCに対応するバッテリ13の放電可能容量を求める(ステップS10)。
【0122】
続いて、不図示の充放電回路に対するバッテリ13の接続状態を確認する等して、バッテリ13が未だに充電中であるか否かを確認し(ステップS11)、充電中である場合は(ステップS11でY)、ステップS8にリターンし、充電中でない場合は(ステップS11でN)、ステップS2にリターンする。
【0123】
以上の説明からも明らかなように、本実施形態の車載用バッテリ充電容量状態検出装置1では、図3のフローチャートにおけるステップS5が、請求項中の減少量検出手段23Dや経過時間計測手段23Eに対応する処理となっていて、これが、請求項中の開始時点検出手段23Aに対応する処理を構成している。
【0124】
また、本実施形態の車載用バッテリ充電容量状態検出装置1では、図3中のステップS7が、請求項中の内部抵抗割出手段23Bに対応する処理となっており、図3中のステップS9が、請求項中の演算手段23Cに対応する処理となっている。
【0125】
さらに、本実施形態の車載用バッテリ充電容量状態検出装置1では、図3中のステップS2やステップS3、ステップS8において行われる、電流センサ15の出力のA/D変換値をI/F21を介して収集する処理と、電流センサ15とにより、請求項中の電流測定手段Aが構成されており、図3中のステップS2やステップS3において行われる、電圧センサ17の出力のA/D変換値をI/F21を介して収集する処理と、電圧センサ17とにより、請求項中の電圧測定手段Bが構成されている。
【0126】
次に、上述のように構成された本実施形態の車載用バッテリ充電容量状態検出装置1の動作(作用)について説明する。
【0127】
まず、車載用バッテリ充電容量状態検出装置1においては、不図示の充放電回路に対するバッテリ13の接続状態に基づいて、バッテリ13が充電中であるか否かが監視され、その結果、バッテリ13が放電中であることが認識されている状態では、放電時に測定されるバッテリ13の端子電圧Vと放電電流Iとを基にして、充電開始前におけるバッテリ13の平衡状態における端子電圧に相当する開回路電圧OCVの算出が行われる。
【0128】
そしてその後、バッテリ13が充電中であることが認識されている状態では、バッテリ13の端子電圧Vが設定充電電圧値VT に収斂して安定状態に達したかどうかが監視され、安定状態に達したことが確認されると、バッテリ13の充電側分極の増加がストップし、充電側分極が飽和したものと見倣して、この充電側分極が飽和した電圧安定領域の開始時点におけるバッテリ13の内部抵抗R+Rpolが求められる。
【0129】
そして、この内部抵抗R+Rpolと、充電開始前におけるバッテリ13の開回路電圧OCVに等しい電圧安定領域の開始時点におけるバッテリ13の内部起電力E0 と、電圧安定領域の開始時点におけるバッテリ13の充電電流の値ICHG0と、電圧安定領域の開始以降に測定されるバッテリ13の充電電流の値ICHG1とを用いて、充電中のバッテリ13の開回路電圧OCV´や放電可能容量が、定電圧充電の終了までの間、繰り返し周期的に算出される。
【0130】
このように、本実施形態の車載用バッテリ充電容量状態検出装置1によれば、従来の放電中やバッテリ13の平衡状態における開回路電圧OCV´や放電可能容量の算出に加えて、充電により開回路電圧OCVや放電可能容量が変化する充電中においても、バッテリ13の開回路電圧OCV´や放電可能容量を求めることができるようになるので、バッテリ13の充電容量に関する状態のマネージメントの実行可能な状況を充電中にも広げて、広範囲でのマネージメントの実現を図ることができる。
【0131】
尚、本実施形態の車載用バッテリ充電容量状態検出装置1では、充電中のバッテリ13の端子電圧Vが、必ず設定充電電圧値VT に収斂することを前提に説明したが、実際には、バッテリ13の定電圧充電の電力供給源となる発電機(オルタネータやジェネレータとして機能するモータジェネレータ5)が交流発電機であることから、発電された電圧波形に高周波成分が重畳され、これが原因となって、バッテリ13に対する充電電圧の定電圧制御が正確に働かず、バッテリ13の端子電圧Vが微妙に変動する可能性がある。
【0132】
また、充電電圧を定電圧に維持するための発電機側における、バッテリ13の内部起電力E0 に伴う充電電流ICHG の減少のためのフィードバック制御が有効に働かず、オーバーシュートやアンダーシュートの繰り返しによって、バッテリ13の端子電圧Vが微妙に変動する可能性もある。
【0133】
そこで、図3のフローチャートにおけるステップS8において、I/F21を介して電圧センサ17の出力のA/D変換値を電流センサ15の出力のA/D変換値と共に収集し、その収集値を、予めROM23c等に設定された目標の設定充電電圧値VT と比較して、目標の設定充電電圧値VT よりも収集値が高い場合は、その誤差分に応じて、電圧安定領域の開始以後におけるバッテリ13の内部起電力E0 ´、乃至、これに等しい充電中のバッテリ13の開回路電圧OCV´を増加させる補正を行うことが望ましく、同様に、目標の設定充電電圧値VT よりも収集値が低い場合は、その誤差分に応じて、電圧安定領域の開始以後におけるバッテリ13の内部起電力E0 ´、乃至、これに等しい充電中のバッテリ13の開回路電圧OCV´を減少させる補正を行うことが望ましい。
【0134】
そのようにする場合は、電圧センサ17と組み合わせて請求項中の電圧測定手段Bを構成するものとして、図3中のステップS8における、電流センサ15の出力のA/D変換値の収集と共に行われる電圧センサ17の出力のA/D変換値を収集する処理が、加わることになり、また、目標の設定充電電圧値VT と収集した電圧センサ17の出力のA/D変換値との比較に応じた、電圧安定領域の開始以後におけるバッテリ13の内部起電力E0 ´、乃至、充電中のバッテリ13の開回路電圧OCV´を減少させる補正の処理が、請求項中の補正手段23Fに対応する処理ということになる。
【0135】
ちなみに、本実施形態では、バッテリ13の充電容量に関する状態として、バッテリ13の放電可能容量値を検出する場合について説明したが、充電可能容量値や充電状態SOC等を、バッテリ13の充電容量に関する状態として検出するようにしてもよい。
【0136】
また、本実施形態では、バッテリ13の充電側分極の解消時点を把握してその把握した充電側分極の解消時点後に電圧センサ17により測定される端子電圧値を用いて、バッテリ13の充電容量に関する状態を検出するバッテリ充電容量状態検出装置について説明したが、本発明は、種々の目的で利用することのできる、バッテリ13の充電側分極の解消を把握するバッテリの充電側分極解消検出装置として利用、実施することも、当然可能である。
【0137】
さらに、本実施形態では、バッテリの純抵抗Rを測定するのに当たって、V−I特性の2つの近似曲線式M1及びM2で表される近似曲線上の実データの存在する範囲内に任意の点A及びBを選択しているが、これらの点を2つの近似曲線式M1及びM2上の、これらの式を求めるため測定したバッテリの放電電流の最大値に相当する点Pに選択し、両方の点を共通のデータを使用して特定することで、誤差の入ることを少なくすることができ、図12乃至図14を参照して、以下具体的に説明する。
【0138】
まず、図12に示すように、2つの近似曲線式M1及びM2上のバッテリの放電電流の最大値に相当する点Pを選択する。そして、式M1の近似曲線の縦軸に対する切片C1から近似曲線上の点Pまでの電圧降下ΔV1を求める。このΔV1を点Pでの電流Ipで除算した値は、純抵抗Rに純抵抗を除くその他の抵抗成分である分極抵抗成分のその時点での値Rpol1を加算した合成抵抗である。すなわち、
R+Rpol1=ΔV1/Ip
である。
【0139】
次に、同図に示すように、式M2の近似曲線の縦軸に対する切片C2から近似曲線上の点Pまでの電圧降下ΔV2を求める。このΔV2を点Pでの電流Ipで除算した値は、純抵抗Rに純抵抗を除くその他の抵抗成分である分極抵抗成分のその時点での値Rpol2を加算した合成抵抗である。すなわち、
R+Rpol2=ΔV2/Ip
である。
【0140】
上記式M1の近似曲線上の点Pと式M2の近似曲線上の点Pの合成抵抗の値の差ΔRは
ΔR=R+Rpol1−(R+Rpol2)=Rpol1−Rpol2
となり、異なる近似曲線上の点Pにおける分極抵抗成分の差となる。これは、1回の放電中の純抵抗Rは変化しないことから明らかである。
【0141】
なお、式M1で表される近似曲線上には、図13に示すように、式M2の近似曲線上に選択した任意の点Pにおける合成抵抗(R+Rpol2)に等しい値(R+Rpol1′)をもった点P1が存在する。また、式M2で表される近似曲線上にも、図13に示すように、式M1の近似曲線上に選択した任意の点Pにおける合成抵抗(R+Rpol1)に等しい値(R+pol2′)をもった点P2が存在する。すなわち、
R+Rpol1′=R+Rpol2となる点P1が式M1で表される近似曲線上に、R+Rpol1=R+Rpol2′となる点P2が式M2で表される近似曲線上にそれぞれ存在する。
【0142】
要するに、点P1における電流及び電圧をそれぞれIp1及びVp1とし、点P2における電流及び電圧をそれぞれIp2及びVp2とすると、点P1の座標(Ip1、Vp1)と点Pの座標(Ip、Vp)の分極抵抗成分の値が互いに等しく、また点Pの座標(Ip、Vp)と点P2(Ip2、Vp2)の分極抵抗成分の値も互いに等しいことがわかる。
【0143】
まず、式M2の近似曲線上の点Pを基準とし、この点Pの合成抵抗の値(R+Rpol2)と等しい値(R+Rpol1′)を持つ点P1の電流Ip1と電圧Vp1の算出の仕方を以下説明する。
【0144】
今、式M1で表される近似曲線の縦軸に対する切片C1からこの点P1までの電圧降下をΔVp1とすると、これは
ΔVp1=C1−(a1Ip12 +b1p1+C1)=(R+Rpol2)Ip1
となり、この式を整理すると、
−(a1Ip1 +b1)=R+Rpol2
となり、点P1の電流Ip1は
Ip1=−(b1+R+Rpol2)/a1
となる。なお、R+Rpol2(=R+pol1′)=ΔVp/Ip(=ΔVp1/Ip1)であるので、
となる。また、点P1の電圧Vp1は、上記式から明らかなように、
Vp1=a1Ip12 +b1Ip1+C1
であるので、点P1の座標(Ip1、Vp1)は既知の値から定められる。
【0145】
同様にして、式M1の近似曲線上の点Pを基準とし、P点を基準とし、この点Pの抵抗値(R+Rpol1)と等しい値(R+Rpol2′)を持つ点P2の電流Ip2と電圧Vp2も、
により既知の値から算出できる。なお、ΔVp2は、式M2で表される近似曲線の縦軸に対する切片C2からこの点P2までの電圧降下である。
【0146】
上述のようにして、点P1の座標(Ip1、Vp1)が定まったら、図13に示すように、点P1の座標(Ip1、Vp1)と点Pの座標(Ip、Vp)とを結ぶ直線L1の傾斜を求めることによって合成抵抗の値R1が求められる。この合成抵抗の値R1は、純抵抗と分極抵抗成分Rpol2とからなる合成抵抗によって生じる電圧降下の差(Vp1−Vp)を各点において流れる電流の差(Ip1−Ip)によって除算することによって求められる。すなわち、
R1=(Vp1−Vp)/(Ip1−Ip)
となる。
【0147】
同様にして、点P2の座標(Ip2、Vp2)が定まったら、図14に示すように、点P2の座標(Ip2、Vp2)と点Pの座標(Ip、Vp)とを結ぶ直線L2の傾斜を求めることによって合成抵抗の値R2が求められる。この合成抵抗の値R2は、純抵抗と分極抵抗成分Rpol1とからなる合成抵抗によって生じる電圧降下の差(Vp−Vp2)を各点において流れる電流の差(Ip−Ip2)によって除算することによって求められる。すなわち、
R2=(Vp−Vp2)/(Ip−Ip2)
となる。
【0148】
しかしながら、上述のようにして求められる合成抵抗の値R1及びR2は、純抵抗と分極抵抗成分とからなる合成抵抗によって生じる電圧降下の差を各点において流れる電流の差によって除算して求めたもので、純抵抗とは一致しない。2点間の傾きを純抵抗と一致させるには、分極抵抗成分によって生じる電圧降下分を除いた電圧降下の差を電流差によって除算してやればよい。
【0149】
先ず、式M2の近似曲線上の点Pを基準にした場合について説明すると、今、合成抵抗の値R1を
R1=R1′+Rpol2=R1′+Rpol1′
とすると、抵抗R1′に点P1の電流Ip1と点Pの電流Ipとの差に相当する電流が流れることによって生じる電圧降下は、分極抵抗成分Rpol1′(又はRpol2)に点P1の電流Ip1と点P2の電流Ipの差に相当する電流が流れることによって生じる電圧降下分だけ、点P1の電圧を持ち上げて補正してやればよく、次式が成立する。
R1′(Ip1−Ip)=〔Vp1+Rpol1′(Ip1−Ip)〕−V2
【0150】
この式を整理すると、
R1′(Ip1−Ip)=(Vp1−Vp)+Rpol1′(Ip1−Ip)
となる。ここで、Rpol1′=ΔVp1/Ip1−R1′であるので、
R1′(Ip1−Ip)=(Vp1−Vp)+(ΔVp1/Ip1−R1′)(Ip1−Ip)
2R1′(Ip1−Ip)=(Vp1−Vp)+ΔVp1/Ip1(Ip1−Ip)
となり、結果として、
R1′=〔(Vp1−Vp)+(ΔVp1/Ip1)(Ip1−Ip)〕/2(Ip1−Ip)
が求められる。なお、(ΔVp1/Ip1)は(ΔV2/Ip)と置き換えることができる。
【0151】
次に、式M1の近似曲線上の点Pを基準にした場合にも同様にして
R2=R2′+Rpol1=R2′+Rpol2′
とすると、この抵抗R2′に点Pの電流Ipと点P2の電流Ip2の差に相当する電流が流れることによって生じる電圧降下は、分極抵抗成分Rpol2′(又はRpol1)に点Pの電流Ipと点P2の電流Ip2との差に相当する電流が流れることによって生じる電圧降下分、点P2の電圧を引き下げて補正してやればよく、次式が成立する。
R2′(Ip−Ip2)=Vp−〔Vp2−Rpol2′(Ip−Ip2)〕
【0152】
この式を整理すると、
R2′(Ip−Ip2)=(Vp−Vp2)+Rpol2′(Ip−Ip2)
となる。ここで、Rpol2′=ΔVp2/Ip2−R2′であるので、
R2′(Ip−Ip2)=(Vp−Vp2)+(ΔVp2/Ip2−Rp2)(Ip−Ip2)
2R2′(Ip−Ip2)=(Vp−Vp2)+ΔVp2/Ip2(Ip−Ip2)
となり、結果として、
R2′=〔(Vp−Vp2)+(ΔVp2/Ip2)(Ip−Ip2)〕/2(Ip−Ip2)
が求められる。なお、(ΔVp2/Ip2)は(ΔVp/Ip)と置き換えることができる。
【0153】
上述したように求められた2つの値R1′及びR2′は、2つの点A及びBを基準にし、異なる分極抵抗成分(Rpol1′=Rpol2)と(Rpol1=Rpol2′)を用い、しかも異なる切片C1からの電圧降下ΔVp1(ΔVp)と切片C2からの電圧降下ΔVp2(ΔVp)を用いて求めたものであるので、真の純抵抗Rとなり得ない。したがって、両者の加算平均
R=(R1′+R2′)/2
をとることによって、真の純抵抗Rが求められる。
【0154】
図12乃至図14を参照して説明したバッテリの純抵抗測定方法では、2つの近似曲線式M1及びM2上のバッテリの放電電流の最大値に相当する点に点Pをそれぞれ定め、共通のデータを使用して特定しているので、誤差の入ることを少なくすることができる。
【0155】
そして、第2の近似曲線式M2で表される曲線上の点Pに対応する放電電流Ipが流れたとき第2の電圧降下ΔV2を生じさせる、バッテリの純抵抗と第2の分極抵抗成分Rpol2からなる第2の合成抵抗R2と同一の抵抗値を有する第1の想定点P1を第1の近似曲線式M1上に、第1の近似曲線M1で表される曲線上の点Pに対応する放電電流Ipが流れたとき第1の電圧降下ΔV1を生じさせる、バッテリの純抵抗と第1の分極抵抗成分Rpol1からなる第1の合成抵抗R1と同一の抵抗値を有する第2の想定点P2を第2の近似曲線式M2上にそれぞれ想定する。
【0156】
2つの想定点P1及びP2が想定できたら、点Pと第1の想定点P1とを結ぶ直線L1の第1の傾斜R1を、放電電流Ipと第1の想定点P1での放電電流Ip1とによってそれぞれ生じる、第2の分極抵抗成分Rpol2による電圧降下の差分Rpol2(Ip1−Ip)に相当する量補正して、第2の分極抵抗成分Rpol2による電圧降下分を除いた第1の補正傾斜R1′を求めるとともに、前記点Pと前記第2の想定点P2とを結ぶ直線L2の第2の傾斜R2を、放電電流Ipと第2の想定点P2での放電電流Ip2とによってそれぞれ生じる、第1の分極抵抗成分Rpol1による電圧降下の差分Rpol1(Ip−Ip2)に相当する量補正して、第1の分極抵抗成分Rpol1による電圧降下分を除いた第2の補正傾斜R2′を求める。
【0157】
このようにして求めた第1の補正傾斜R1′と第2の補正傾斜R2′とを加算平均して平均傾斜を求め、この求めた平均傾斜をバッテリの純抵抗Rとして測定する。
【0158】
なお、このようにして純抵抗を測定する具体的な手順は、2つの近似曲線式M1及びM2上のバッテリの放電電流の最大値に相当する共通の点Pに2点を定めている点を除き、図7乃至図9について上述した純抵抗の測定手順と同じである。
【0159】
【発明の効果】
以上に説明したように請求項1に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法によれば、車両の負荷に電力を供給するバッテリの定電圧充電中に、該バッテリの平衡状態における端子電圧に相当する開回路電圧を演算するに当たり、前記バッテリの定電圧充電中に、該バッテリの充電電流の減少を伴いつつ前記バッテリの端子電圧が定電圧充電の設定充電電圧値付近で安定する電圧安定領域の開始時点を検出し、前記設定充電電圧値と前記定電圧充電の開始前における前記バッテリの開回路電圧との差値を、前記検出した前記電圧安定領域の開始時点における前記バッテリの充電電流の値により除することで、前記検出した前記電圧安定領域の開始時点における前記バッテリの内部抵抗を求め、前記検出した前記電圧安定領域の開始時点以降の、前記バッテリの充電電流の減少量に、前記検出した前記電圧安定領域の開始時点における、前記求めた前記バッテリの内部抵抗を乗じた値を、予め求められた前記バッテリの前記定電圧充電の開始前における開回路電圧に加えることで、前記バッテリの現在の開回路電圧を演算するようにした。
【0160】
また、請求項6に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置によれば、車両の負荷に電力を供給するバッテリの予め定められた設定充電電圧値による定電圧充電中に、前記バッテリの平衡状態における端子電圧に相当する開回路電圧を演算する装置であって、前記バッテリに対する充電電流を測定する電流測定手段と、前記バッテリの定電圧充電中に、該バッテリの充電電流の減少を伴いつつ前記バッテリの端子電圧が前記設定充電電圧値付近で安定する電圧安定領域の開始時点を検出する開始時点検出手段と、前記設定充電電圧値と前記定電圧充電の開始前における前記バッテリの開回路電圧との差値を、前記開始時点検出手段により検出された前記電圧安定領域の開始時点において前記電流測定手段により測定された前記バッテリの充電電流の値によって除することで、前記開始時点検出手段により検出された前記電圧安定領域の開始時点における前記バッテリの内部抵抗を求める内部抵抗割出手段と、前記開始時点検出手段により検出された前記電圧安定領域の開始時点以降の、前記電流測定手段により測定された前記バッテリの充電電流の減少量に、前記内部抵抗割出手段により求められた、前記開始時点検出手段により検出された前記電圧安定領域の開始時点における前記バッテリの内部抵抗を乗じた値を、予め求められた前記バッテリの前記定電圧充電の開始前における開回路電圧に加えることで、前記バッテリの現在の開回路電圧を演算する演算手段とを備える構成とした。
【0161】
このため、請求項1に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法と、請求項6に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置とのいずれによっても、従来の放電中やバッテリの平衡状態における開回路電圧の算出に加えて、充電により開回路電圧が変化する充電中においても、バッテリの開回路電圧を求めることができるようにして、バッテリのマネージメントの実行可能な状況を充電中にも広げて、広範囲でのマネージメントの実現を図ることができる。
【0162】
さらに、請求項2に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法によれば、請求項1に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法において、前記電圧安定領域の開始時点の検出を、前記充電電流の単位時間当たりの減少量が所定値を下回った時点の検出により行うようにした。
【0163】
また、請求項7に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置によれば、請求項6に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置において、前記開始時点検出手段が、前記定電圧充電中において前記電流測定手段により測定された前記バッテリの充電電流の単位時間当たりの減少量を検出する減少量検出手段を有しており、該減少量検出手段により検出された前記バッテリの充電電流の単位時間当たりの減少量が所定値を下回った時点を、前記電圧安定領域の開始時点として検出する構成とした。
【0164】
このため、請求項2に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法によれば、請求項1に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法において、また、請求項7に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置によれば、請求項6に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置において、いずれも、バッテリの充電電流の変化を監視するだけで、開回路電圧の演算に用いるバッテリの充電電流の減少量を測定する電圧安定領域の開始時点を容易に検出することができる。
【0165】
さらに、請求項3に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法によれば、請求項1に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法において、前記電圧安定領域の開始時点の検出を、前記バッテリの定電圧充電の開始から所定時間が経過した時点の検出により行うようにした。
【0166】
また、請求項8に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置によれば、請求項6に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置において、前記開始時点検出手段が、前記バッテリの定電圧充電の開始からの経過時間を計測する経過時間計測手段を有しており、該経過時間計測手段により計測される前記バッテリの定電圧充電の開始からの経過時間が所定時間に達した時点を、前記電圧安定領域の開始時点として検出する構成とした。
【0167】
このため、請求項3に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法によれば、請求項1に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法において、また、請求項8に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置によれば、請求項6に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置において、いずれも、バッテリの定電圧充電の開始からの経過時間を計測するだけで、開回路電圧の演算に用いるバッテリの充電電流の減少量を測定する電圧安定領域の開始時点を容易に検出することができる。
【0168】
さらに、請求項4に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法によれば、請求項1、2又は3に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法において、前記検出した前記電圧安定領域の開始時点以降において、該バッテリの端子電圧を測定し、該測定したバッテリの端子電圧と前記設定充電電圧値との差に応じて、前記演算した前記バッテリの定電圧充電中における開回路電圧の値を補正するようにした。
【0169】
また、請求項9に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置によれば、請求項6、7又は8に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置において、前記バッテリの端子電圧を測定する電圧測定手段と、前記開始時点検出手段により検出された前記電圧安定領域の開始時点以降に前記電圧測定手段により測定された前記バッテリの端子電圧及び前記設定充電電圧値の差に応じて、前記演算手段により演算された前記バッテリの定電圧充電中における開回路電圧の値を補正する補正手段とをさらに備えている構成とした。
【0170】
このため、請求項4に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法によれば、請求項1、2又は3に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法において、また、請求項9に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置によれば、請求項6、7又は8に記載した本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算装置において、いずれも、定電圧充電の精度が良くない場合であっても、充電中に求められるバッテリの開回路電圧の値の補正により、その良くない精度の分を補償して、充電中におけるバッテリの開回路電圧の演算精度を高めることができる。
【0171】
さらに、請求項5に記載した本発明の車載用バッテリの充電容量状態検出方法によれば、請求項1、2、3又は4に記載の車載用バッテリの開回路電圧演算方法によって演算した前記バッテリの定電圧充電中における開回路電圧から、前記バッテリの現在の充電容量に関する状態を検出するようにした。
【0172】
また、請求項10に記載した本発明の車載用バッテリの充電容量状態検出装置によれば、請求項6、7、8又は9に記載の車載用バッテリの開回路電圧演算装置を備えており、該車載用バッテリの開回路電圧演算装置により演算された前記バッテリの現在の開回路電圧から、該バッテリの現在の充電容量に関する状態を検出する構成とした。
【0173】
このため、請求項5に記載した本発明の車載用バッテリの充電容量状態検出方法と、請求項10に記載した本発明の車載用バッテリの充電容量状態検出装置とのいずれによっても、放電可能容量値や充電可能容量値、充電状態(SOC)といった、バッテリの充電容量に関する状態が、充電中においても検出できるようにして、バッテリのマネージメントの実行可能な状況を充電中にも広げて、広範囲でのマネージメントの実現を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の車載用バッテリの充電側分極解消検出装置及び車載用バッテリ充電容量状態検出装置の基本構成図である。
【図2】本発明の車載用バッテリの開回路電圧演算方法を適用した車載用バッテリの開回路電圧演算装置を内在する、本発明の車載用バッテリの充電容量状態検出方法を適用した本発明の一実施形態に係る車載用バッテリの充電容量状態検出装置の概略構成を一部ブロックにて示す説明図である。
【図3】図2のマイクロコンピュータのROMに格納された制御プログラムに従いCPUが行う処理を示すフローチャートである。
【図4】1次近似式で表したバッテリの電圧−電流特性の一例を示すグラフである。
【図5】2次近似式で表したバッテリの電圧−電流特性の一例を示すグラフである。
【図6】電流に対する分極の変化の一例を示すグラフである。
【図7】1回の放電によって得られる2つの2次の近似曲線式で表される近似特性曲線の一例を示すグラフである。
【図8】2つの近似特性曲線上への2つの任意の点の定め方を説明するためのグラフである。
【図9】一方の近似特性曲線に定めた点に対する想定点の定め方と2点間の傾斜の補正の仕方とを説明するためのグラフである。
【図10】他方の近似特性曲線に定めた点に対する想定点の定め方と2点間の傾斜の補正の仕方とを説明するためのグラフである。
【図11】図2の車載用バッテリ充電容量状態検出装置を用いて放電可能容量を検出するバッテリにおいて発生する充放電電流の経時変化を示すグラフである。
【図12】バッテリの純抵抗を測定する他の手順において、2つの近似特性曲線上への2つの点の定め方を説明するためのグラフである。
【図13】バッテリの純抵抗を測定する他の手順において、一方の近似特性曲線に定めた点に対する想定点の定め方と2点間の傾斜の補正の仕方とを説明するためのグラフである。
【図14】バッテリの純抵抗を測定する他の手順において、他方の近似特性曲線に定めた点に対する想定点の定め方と2点間の傾斜の補正の仕方とを説明するためのグラフである。
【符号の説明】
13 バッテリ
23 マイクロコンピュータ
23a CPU
23b RAM
23c ROM
23A 開始時点検出手段
23B 内部抵抗割出手段
23C 演算手段
23D 減少量検出手段
23E 経過時間計測手段
23F 補正手段
A 電流測定手段
B 電圧測定手段
Claims (10)
- 車両の負荷に電力を供給するバッテリの定電圧充電中に、該バッテリの平衡状態における端子電圧に相当する開回路電圧を演算するに当たり、
前記バッテリの定電圧充電中に、該バッテリの充電電流の減少を伴いつつ前記バッテリの端子電圧が定電圧充電の設定充電電圧値付近で安定する電圧安定領域の開始時点を検出し、
前記設定充電電圧値と前記定電圧充電の開始前における前記バッテリの開回路電圧との差値を、前記検出した前記電圧安定領域の開始時点における前記バッテリの充電電流の値により除することで、前記検出した前記電圧安定領域の開始時点における前記バッテリの内部抵抗を求め、
前記検出した前記電圧安定領域の開始時点以降の、前記バッテリの充電電流の減少量に、前記検出した前記電圧安定領域の開始時点における、前記求めた前記バッテリの内部抵抗を乗じた値を、予め求められた前記バッテリの前記定電圧充電の開始前における開回路電圧に加えることで、前記バッテリの現在の開回路電圧を演算するようにした、
ことを特徴とする車載用バッテリの開回路電圧演算方法。 - 前記電圧安定領域の開始時点の検出を、前記充電電流の単位時間当たりの減少量が所定値を下回った時点の検出により行うようにした請求項1記載の車載用バッテリの開回路電圧演算方法。
- 前記電圧安定領域の開始時点の検出を、前記バッテリの定電圧充電の開始から所定時間が経過した時点の検出により行うようにした請求項1記載の車載用バッテリの開回路電圧演算方法。
- 前記検出した前記電圧安定領域の開始時点以降において、該バッテリの端子電圧を測定し、該測定したバッテリの端子電圧と前記設定充電電圧値との差に応じて、前記演算した前記バッテリの定電圧充電中における開回路電圧の値を補正するようにした請求項1、2又は3記載の車載用バッテリの開回路電圧演算方法。
- 請求項1、2、3又は4に記載の車載用バッテリの開回路電圧演算方法によって演算した前記バッテリの定電圧充電中における開回路電圧から、前記バッテリの現在の充電容量に関する状態を検出するようにした、
ことを特徴とする車載用バッテリの充電容量状態検出方法。 - 車両の負荷に電力を供給するバッテリの予め定められた設定充電電圧値による定電圧充電中に、前記バッテリの平衡状態における端子電圧に相当する開回路電圧を演算する装置であって、
前記バッテリに対する充電電流を測定する電流測定手段と、
前記バッテリの定電圧充電中に、該バッテリの充電電流の減少を伴いつつ前記バッテリの端子電圧が前記設定充電電圧値付近で安定する電圧安定領域の開始時点を検出する開始時点検出手段と、
前記設定充電電圧値と前記定電圧充電の開始前における前記バッテリの開回路電圧との差値を、前記開始時点検出手段により検出された前記電圧安定領域の開始時点において前記電流測定手段により測定された前記バッテリの充電電流の値によって除することで、前記開始時点検出手段により検出された前記電圧安定領域の開始時点における前記バッテリの内部抵抗を求める内部抵抗割出手段と、
前記開始時点検出手段により検出された前記電圧安定領域の開始時点以降の、前記電流測定手段により測定された前記バッテリの充電電流の減少量に、前記内部抵抗割出手段により求められた、前記開始時点検出手段により検出された前記電圧安定領域の開始時点における前記バッテリの内部抵抗を乗じた値を、予め求められた前記バッテリの前記定電圧充電の開始前における開回路電圧に加えることで、前記バッテリの現在の開回路電圧を演算する演算手段と、
を備えることを特徴とする車載用バッテリの開回路電圧演算装置。 - 前記開始時点検出手段は、前記定電圧充電中において前記電流測定手段により測定された前記バッテリの充電電流の単位時間当たりの減少量を検出する減少量検出手段を有しており、該減少量検出手段により検出された前記バッテリの充電電流の単位時間当たりの減少量が所定値を下回った時点を、前記電圧安定領域の開始時点として検出する請求項6記載の車載用バッテリの開回路電圧演算装置。
- 前記開始時点検出手段は、前記バッテリの定電圧充電の開始からの経過時間を計測する経過時間計測手段を有しており、該経過時間計測手段により計測される前記バッテリの定電圧充電の開始からの経過時間が所定時間に達した時点を、前記電圧安定領域の開始時点として検出する請求項6記載の車載用バッテリの開回路電圧演算装置。
- 前記バッテリの端子電圧を測定する電圧測定手段と、前記開始時点検出手段により検出された前記電圧安定領域の開始時点以降に前記電圧測定手段により測定された前記バッテリの端子電圧及び前記設定充電電圧値の差に応じて、前記演算手段により演算された前記バッテリの定電圧充電中における開回路電圧の値を補正する補正手段とをさらに備えている請求項6、7又は8記載の車載用バッテリの開回路電圧演算装置。
- 請求項6、7、8又は9に記載の車載用バッテリの開回路電圧演算装置を備えており、該車載用バッテリの開回路電圧演算装置により演算された前記バッテリの現在の開回路電圧から、該バッテリの現在の充電容量に関する状態を検出する、
ことを特徴とする車載用バッテリの充電容量状態検出装置。
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