JP4383020B2 - 車載バッテリ純抵抗測定方法及び装置 - Google Patents

車載バッテリ純抵抗測定方法及び装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の負荷に電力を供給するため車両に搭載されたバッテリの純抵抗を測定する車載バッテリ純抵抗測定方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、バッテリは放電電流をカバーする充電を行うことによって、その充電容量の範囲内において繰り返し使用できることになっているが、過放電や電解液不足などの不測の事態を招いた場合は勿論のこと、これらの事態を招かなくても、長期間にわたって使用し経年変化が起こると、放電によって負荷に供給できる電力量である放電可能容量が急激に低下するようになる。このため、経年変化によって放電可能容量の低下している状態においては、充電を上回る放電がわずかな期間発生しても、エンジン停止後にスタータモータを起動してエンジンを再始動できなくなる事態を招きかねない。
【0003】
因みに、新品と経年変化の生じているバッテリとを比較した場合、新品に比べて経年変化の生じているバッテリでは、その純抵抗が大きくなることが知られている。そのため、車両の定期点検時などに、バッテリ交換の目安としてバッテリの純抵抗を測定することが考えられている。これは、純抵抗を知ることによって、純抵抗と分極抵抗成分との割合などを考慮し、劣化度を定めることができるからである。また、純抵抗が分かると、バッテリの開回路電圧を推定するためにも利用できる。
【0004】
一般に、バッテリから電流が放電されるとバッテリの端子電圧に降下を生じる。その電圧降下はバッテリの内部インピーダンス(合成抵抗)によるものであるが、バッテリの構造などに基因するIR損(純抵抗、すなわち、オーミック抵抗による電圧降下)と、化学的な反応に基因する分極抵抗成分(活性化分極、濃度分極)による電圧降下に分けることができる。電流−電圧(I−V)特性を求めた場合、図12に示すように、IR損による電圧降下は、バッテリの状態が同じであれば変化しないが、分極抵抗成分による電圧降下は電流の大きさと電流の放電している時間によって変化する。このような分極抵抗成分を含んだI−V特性から、バッテリの様々な状態を推定すると、不正確な推定結果となることがわかっている。そこで、分極抵抗成分を分離した純抵抗のみを測定する技術が必要とされる。
【0005】
従来、バッテリの純抵抗を測定するために一般に使用されている測定器では、バッテリが静的な状態にあるとき、すなわち、充放電により電解液に分極などの電圧上昇や電圧降下が生じていない平衡状態にあるときに、バッテリの純抵抗を測定している。
【0006】
その一例として、バッテリに1kHz〜100kHz程度の周波数の交流を印加して充放電を繰り返し、充電及び放電のいずれの分極も蓄積しない状況で、たとえば1μ秒程度の一定時間内に変化する電圧と電流の関係から純抵抗を求める方法がある。
これは、図13に示すように、放電を止めた後、電圧が急激に回復し、その後に緩やかに回復する現象を捉え、一定時間Δt内の急激な電圧の回復が純抵抗Rによる成分のみにより生じ、その後の緩やかな変化は純抵抗を除く分極を含むその他の要素による成分(キャパシタンスおよびインダクタンス成分)により生じているとみなし、1kHz〜100kHz程度の周波数の交流の各印加サイクルの短い時間内における電圧と電流の変化を捉えて純抵抗を測定しようとするものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、車両に搭載したバッテリを対象として用いる場合には、静的な状態は限られた場合にしか存在せず、車両が使用状態にあるときには適用することができない。
【0008】
また、上述した例の場合、短時間内に電圧Vおよび電流Iのデータを収集する必要から、非常に周期の短いサンプリングを行ってA/D変換を行うことを一定時間Δt内に行わなければならず、単独で使用する測定器として実現できるものの、車両に搭載して使用することは非常に難しい。しかも、求めるΔV/ΔIが精度のよいものとなるためには、ΔV、ΔIの各々が大きな値を示さなければならないが、車両では限られた場合にしかこのようなものは測定できない。さらに、車両動作中に任意の交流をバッテリに印加することができない。したがって、上述した方法は、車両使用中のバッテリの純抵抗を測定するために適用できないという現実がある。
【0009】
よって、本発明は上述した状況に鑑み、車両使用中でもバッテリの純抵抗を測定できる車載バッテリ純抵抗測定方法及び装置を提供することを課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成する請求項1乃至請求項12記載の本発明は車載バッテリ純抵抗測定方法に関するものであり、請求項13記載の本発明は車載バッテリ純抵抗測定装置に関するものである。
【0011】
上記課題を解決するためなされた請求項1記載の発明は、車両の負荷に電力を供給するため車両に搭載されたバッテリの純抵抗を測定する車載バッテリ純抵抗測定方法において、前記負荷のうち予め定めた定負荷に、0からピーク値まで単調増加した後、ピーク値から定常値まで単調減少する突入電流が流れている期間、前記バッテリの放電電流と該放電電流に対応する端子電圧とを周期的に測定し、該測定した放電電流と端子電圧との相関を示す前記突入電流の単調増加期間に対する電流−電圧特性の二次式からなる第1の近似式と前記突入電流の単調減少期間に対する電流−電圧特性の二次式からなる第2の近似式とを求め、前記放電電流が流れることにより生じる電圧降下から、化学的な反応に基因して発生する濃度分極成分による電圧降下を除いた前記第1及び第2の近似式の前記ピーク値に対応する点における単位電流変化当たりの2つの端子電圧変化の値の中間の値を求め、該求めた中間の値をバッテリの純抵抗の値として測定することを特徴とする車載バッテリ純抵抗測定方法に存する。
【0012】
上述した請求項1記載の手順によれば、車両の負荷のうち予め定めた定負荷に、0からピーク値まで単調増加した後、ピーク値から定常値まで単調減少する突入電流が流れている期間、バッテリの放電電流と該放電電流に対応する端子電圧とを周期的に測定してこれら放電電流と端子電圧との相関を示す増加する放電電流に対する電流−電圧特性の二次式からなる第1の近似式と前記減少する放電電流に対する電流−電圧特性の二次式からなる第2の近似式とを求める。
【0013】
次に、放電電流が流れることにより生じる電圧降下から、化学的な反応に基因して発生する濃度分極成分による電圧降下を二次式からなる第1及び第2の近似式から除き、純抵抗と活性化分極のみの近似式にした上で、増加方向と減少方向に共通の点であるピーク値に着目し、濃度分極成分による電圧降下を除いた両近似式のピーク値に対応する点における単位電流変化当たりの2つの端子電圧変化の値の中間の値を求め、求めた中間の値をバッテリの純抵抗の値として測定するようにしている。したがって、車両の通常の使用状態で負荷に電力を供給したときのバッテリの放電電流と端子電圧とを測定し、この測定の結果得られるデータを処理するだけで、バッテリの純抵抗を測定することができる。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の車載バッテリ純抵抗測定方法において、前記中間の値を、前記濃度分極成分による電圧降下を除いた前記第1及び第2の近似式の前記ピーク値に対応する点における単位電流変化当たりの2つの端子電圧変化の値を加算平均して求めることを特徴とする車載バッテリ純抵抗測定方法に存する。
【0015】
上述した請求項2記載の手順によれば、中間の値を、濃度分極成分による電圧降下を除いた第1及び第2の近似式のピーク値に対応する点における単位電流変化当たりの2つの端子電圧変化の値を加算平均して求めているので、ピーク値に対応する点での活性化分極の変化が等しくなる場合には、第1及び第2の近似式のピーク値に対応する点における微分値を加算して2で割ることで、バッテリの純抵抗を測定することができる。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の車載バッテリ純抵抗測定方法において、前記中間の値を、前記濃度分極成分による電圧降下を除いた前記第1及び第2の近似式の前記ピーク値に対応する点における単位電流変化当たりの2つの端子電圧変化の値に、前記突入電流が流れている総時間に占める前記単調増加期間及び前記単調減少期間の時間の割合をそれぞれ乗じた上で加算して求めることを特徴とする車載バッテリ純抵抗測定方法に存する。
【0017】
上述した請求項3記載の手順によれば、中間の値を、濃度分極成分による電圧降下を除いた第1及び第2の近似式のピーク値に対応する点における単位電流変化当たりの2つの端子電圧変化の値に、突入電流が流れている総時間に占める単調増加期間及び単調減少期間の時間の割合をそれぞれ乗じた上で加算して求めているので、活性化分極と濃度分極とが相互に影響し合うことを考慮した中間の値を求め、バッテリの純抵抗の値として測定することができる。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の車載バッテリ純抵抗測定方法において、前記中間の値を求めるに当たって、前記第1及び第2の近似式から前記濃度分極成分による電圧降下を除いた第1及び第2の修正近似式を求め、該第1及び第2の修正近似式の前記ピーク値に対応する点における単位電流変化当たりの2つの端子電圧変化の値を求めることを特徴とする車載バッテリ純抵抗測定方法に存する。
【0019】
上述した請求項4記載の手順によれば、中間の値を求めるに当たって、第1及び第2の近似式から濃度分極成分による電圧降下を除いた第1及び第2の修正近似式を求め、該第1及び第2の修正近似式のピーク値に対応する点における単位電流変化当たりの2つの端子電圧変化の値を求めているので、修正近似式のピーク値における微分値を利用して中間の値を求めれば、純抵抗を測定することができる。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の車載バッテリ純抵抗測定方法において、前記第1及び第2の近似式の放電電流0である点における前記バッテリの端子電圧の差を求め、該差を前記突入電流が0からピーク値に増加しピーク値から0に減少した期間に生じた総濃度分極成分による電圧降下と見なし、該総濃度分極成分に占める前記突入電流が0からピーク値に達するまでに生じる濃度分極成分による電圧降下を求め、該求めた電圧降下を除いた電圧値を、前記第1の二次近似式と定数及び一次係数を等しくした式に代入して二次係数を決定した二次式を前記第1の修正近似式として求めることを特徴とする車載バッテリ純抵抗測定方法に存する。
【0021】
上述した請求項5記載の手順によれば、第1及び第2の近似式の放電電流0である点におけるバッテリの端子電圧の差を突入電流が0からピーク値に増加しピーク値から0に減少した期間に生じた総濃度分極成分による電圧降下と見なし、この総濃度分極成分に占める突入電流が0からピーク値に達するまでに生じる濃度分極成分による電圧降下を求め、この求めた電圧降下を除いた電圧値を、第1の二次近似式と定数及び一次係数を等しくした式に代入して二次係数を決定した二次式を第1の修正近似式として求めているので、精度良く濃度分極成分を除いた修正近似式を得ることができる。
【0022】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の車載バッテリ純抵抗測定方法において、前記ピーク値における前記濃度分極成分による電圧降下を除いた電圧値以外に、ピーク値と0の間の濃度分極成分による電圧降下を除いた2つの電圧値を求め、該3つの電圧値を利用して一次及び二次係数並びに定数を決定した二次式を前記第2の修正近似式として求めることを特徴とする車載バッテリ純抵抗測定方法に存する。
【0023】
上述した請求項6記載の手順によれば、ピーク値における前記濃度分極成分による電圧降下を除いた電圧値以外に、ピーク値と0の間の濃度分極成分による電圧降下を除いた2つの電圧値を求め、3つの電圧値を利用して一次及び二次係数並びに定数を決定した二次式を第2の修正近似式として求めているので、濃度分極成分による電圧降下を除いた第2の修正近似式を簡単に求めることができる。
【0024】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の車載バッテリ純抵抗測定方法において、前記中間の値を求めるために、前記第1及び第2の修正近似式のピーク値での微分値を使用することを特徴とする車載バッテリ純抵抗測定方法に存する。
【0025】
上述した請求項7記載の手順によれば、第1及び第2の修正近似式が共に二次式であるとき、ピーク値での微分値の中間の値を求めるだけでよいので、純抵抗を単純な計算によって測定することができる。
【0026】
請求項8記載の発明は、請求項5記載の車載バッテリ純抵抗測定方法において、前記ピーク値における前記濃度分極成分による電圧降下を除いた電圧値以外に、0点及びピーク値と0の間の中間点の濃度分極成分による電圧降下を除いた2つの電圧値を求め、該3つの電圧値を利用して一次及び二次係数並びに定数を決定した二次式を前記第2の修正近似式として求めることを特徴とする車載バッテリ純抵抗測定方法に存する。
【0027】
上述した請求項8記載の手順によれば、ピーク値における前記濃度分極成分による電圧降下を除いた電圧値以外に、0点及びピーク値と0の間の中間点の濃度分極成分による電圧降下を除いた2つの電圧値を求め、3つの電圧値を利用して一次及び二次係数並びに定数を決定した二次式を第2の修正近似式として求めていて、元々濃度分極成分を含まない0点を利用しているので、濃度分極成分を除く近似式を求めるための処理が少なくできる。
【0028】
請求項9記載の発明は、請求項5記載の車載バッテリ純抵抗測定方法において、前記ピーク値における前記濃度分極成分による電圧降下を除いた電圧値以外に、ピーク値と0の間の中間点の濃度分極成分による電圧降下を除いた電圧値を求め、該2点を結んで決定した一次式を前記第2の修正近似式として求め、前記中間の値を求めるために前記第2の修正近似式の傾きを使用することを特徴とする車載バッテリ純抵抗測定方法に存する。
【0029】
上述した請求項9記載の手順によれば、ピーク値における前記濃度分極成分による電圧降下を除いた電圧値以外に、ピーク値と0の間の中間点の濃度分極成分による電圧降下を除いた電圧値を求め、該2点を結んで決定した一次式を第2の修正近似式として求め、中間の値を求めるために第2の修正近似式の傾きを使用しているので、中間の値を求めるための処理が簡単になる。
【0030】
請求項10記載の発明は、請求項5〜9の何れかに記載の車載バッテリ純抵抗測定方法において、前記総濃度分極成分に占める前記突入電流が0からピーク値に達するまでに生じる濃度分極成分による電圧降下を、前記第1及び第2の近似式の放電電流0である点における前記バッテリの端子電圧の差に、前記突入電流が0からピーク値に増加しピーク値から0に減少したときの電流時間積に対する0からピーク値までの電流時間積の比を乗じて求めることを特徴とする車載バッテリ純抵抗測定方法に存する。
【0031】
上述した請求項10記載の手順によれば、総濃度分極成分に占める突入電流が0からピーク値に達するまでに生じる濃度分極成分による電圧降下を、第1及び第2の近似式の放電電流0である点におけるバッテリの端子電圧の差に、突入電流が0からピーク値に増加しピーク値から0に減少したときの電流時間積に対する0からピーク値までの電流時間積の比を乗じて求めているので、突入電流が0からピーク値に達するまでに生じる濃度分極成分による電圧降下を知り、濃度分極成分による電圧降下を除いたピーク値に対応する電圧値を求めることができる。
【0032】
請求項11記載の発明は、請求項5〜9の何れかに記載の車載バッテリ純抵抗測定方法において、前記第1及び第2の近似式より両式の差の式を求め、前記総濃度分極成分に占める前記突入電流が0からピーク値に達するまでに生じる濃度分極成分による電圧降下を、前記第1及び第2の近似式の放電電流0である点における前記バッテリの端子電圧の差に、前記差の式に基づいて求めた電流値0である点の電圧値とピーク電流値の2倍の電流値である点の電圧値との差に対するピーク電流値である点の電圧値とピーク電流値の2倍の電流値である点の電圧値との差の比を乗じて求めることを特徴とする車載バッテリ純抵抗測定方法に存する。
【0033】
上述した請求項11記載の手順によれば、第1及び第2の近似式より両式の差の式を求め、総濃度分極成分に占める突入電流が0からピーク値に達するまでに生じる濃度分極成分による電圧降下を、第1及び第2の近似式の放電電流0である点におけるバッテリの端子電圧の差に、差の式に基づいて求めた電流値0である点の電圧値とピーク電流値の2倍の電流値である点の電圧値との差に対するピーク電流値である点の電圧値とピーク電流値の2倍の電流値である点の電圧値との差の比を乗じて求めているので、第1及び第2の近似式が分かるだけで電流時間積を求めなくても、突入電流が0からピーク値に達するまでに生じる濃度分極成分による電圧降下を知り、濃度分極成分による電圧降下を除いたピーク値に対応する電圧値を求めることができる。
【0034】
請求項12記載の発明は、車両の負荷に電力を供給するため車両に搭載されたバッテリの純抵抗を測定する車載バッテリ純抵抗測定方法において、前記負荷のうち予め定めた定負荷に、0からピーク値まで単調増加した後、ピーク値から定常値まで単調減少する突入電流が流れている期間、前記バッテリの放電電流と該放電電流に対応する端子電圧とを周期的に測定し、該測定した放電電流と端子電圧との相関を示す前記突入電流の単調増加期間に対する電流−電圧特性の一次式からなる第1の近似式と前記突入電流の単調減少期間に対する電流−電圧特性の二次式からなる第2の近似式とを求め、前記放電電流が流れることにより生じる電圧降下から、化学的な反応に基因して発生する濃度分極成分による電圧降下を除いた前記第1及び第2の近似式の前記ピーク値に対応する点における単位電流変化当たりの2つの端子電圧変化の値の中間の値を求め、該求めた中間の値をバッテリの純抵抗の値として測定することを特徴とする車載バッテリ純抵抗測定方法に存する。
【0035】
上述した請求項12記載の手順によれば、車両の負荷のうち予め定めた定負荷に、0からピーク値まで単調増加した後、ピーク値から定常値まで単調減少する突入電流が流れている期間、バッテリの放電電流と該放電電流に対応する端子電圧とを周期的に測定してこれら放電電流と端子電圧との相関を示す増加する放電電流に対する電流−電圧特性の一次式からなる第1の近似式と前記減少する放電電流に対する電流−電圧特性の二次式からなる第2の近似式とを求める。次に、放電電流が流れることにより生じる電圧降下から、化学的な反応に基因して発生する濃度分極成分による電圧降下を第1及び第2の近似式から除き、純抵抗と活性化分極のみの近似式にした上で、増加方向と減少方向に共通の点であるピーク値に着目し、濃度分極成分による電圧降下を除いた両近似式のピーク値に対応する点における単位電流変化当たりの2つの端子電圧変化の値の中間の値を求め、求めた中間の値をバッテリの純抵抗の値として測定するようにしている。したがって、車両の通常の使用状態で、濃度分極の発生を伴わない短時間にピーク値まで単調増加する突入電流が流れる負荷に電力を供給したときのバッテリの放電電流と端子電圧とを測定し、この測定の結果得られるデータを処理するだけで、バッテリの純抵抗を測定することができ、中間の値を求めるために第1の近似式の傾きを使用し、中間の値を求めるための処理が簡単になるだけでなく、近似式も簡単に求めることができる。
【0036】
上記課題を解決するためなされた請求項13記載の発明は、図1の基本構成図に示す如く、車両の負荷に電力を供給するため車両に搭載されたバッテリの純抵抗を測定する車載バッテリ純抵抗測定装置において、前記負荷のうち予め定めた定負荷に、0からピーク値まで単調増加した後、ピーク値から定常値まで単調減少する突入電流が流れている期間、前記バッテリの放電電流と該放電電流に対応する端子電圧とを周期的に測定する電流・電圧測定手段23a−1と、該電流・電圧測定手段によって測定した放電電流と端子電圧との相関を示す前記突入電流の単調増加期間に対する電流−電圧特性の二次式からなる第1の近似式と前記突入電流の単調減少期間に対する電流−電圧特性の二次式からなる第2の近似式とを求める近似式算出手段23a−2と、前記放電電流が流れることにより生じる電圧降下から、化学的な反応に基因して発生する濃度分極成分による電圧降下を除いた前記第1及び第2の近似式の前記ピーク値に対応する点における単位電流変化当たりの2つの端子電圧変化の値の中間の値を求める演算手段23a−3とを備え、該演算手段によって求めた中間の値をバッテリの純抵抗の値として測定することを特徴とする車載バッテリ純抵抗測定装置に存する。
【0037】
上述した請求項13記載の構成によれば、車両の負荷のうち予め定めた定負荷に、0からピーク値まで単調増加した後、ピーク値から定常値まで単調減少する突入電流が流れている期間、バッテリの放電電流とこの放電電流に対応する端子電圧とを電流・電圧測定手段23a−1が周期的に測定し、この測定した放電電流と端子電圧との相関を示す突入電流の単調増加期間に対する電流−電圧特性の二次式からなる第1の近似式と突入電流の単調減少期間に対する電流−電圧特性の二次式からなる第2の近似式とを近似式算出手段23a−2が求め、放電電流が流れることにより生じる電圧降下から、化学的な反応に基因して発生する濃度分極成分による電圧降下を除いた二次式からなる第1及び第2の近似式のピーク値に対応する点における単位電流変化当たりの2つの端子電圧変化の値の中間の値を演算手段23a−3が求め、この求めた中間の値をバッテリの純抵抗の値として測定するようになっている。したがって、車両の通常の使用状態で負荷に電力を供給したときのバッテリの放電電流と端子電圧とを測定し、この測定の結果得られるデータを処理するだけで、バッテリの純抵抗を測定することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による車載バッテリ純抵抗測定装置を図2を参照して説明する前に、図3〜図9を参照して本発明による車載バッテリ純抵抗測定方法を説明する。
【0039】
ところで、バッテリが搭載され、バッテリから電力供給されて動作する車両負荷として、12V車、42V車、EV車、HEV車には、スタータモータ、モータジェネレータ、走行用モータなどの大電流を必要とする定負荷が搭載されている。例えば、スタータモータ又はこれに類する大電流定負荷をオンしたとき、定負荷には、その駆動開始の初期の段階で突入電流が流れた後、負荷の大きさに応じた定常値の電流が流れるようになる。因みに、負荷がランプである場合には、突入電流に相当するものをラッシュ電流と呼ぶこともある。
【0040】
スタータモータとして直流モータを使用している場合、界磁コイルに流れる突入電流は、図3に示すように、定負荷駆動開始直後の例えば3ミリ秒という短時間内に、ほぼ0から定常電流に比べて何倍も大きなピーク値、例えば500(A)まで単調増加した後、このピーク値から例えば150ミリ秒という短時間内に定負荷の大きさに応じた定常値まで単調減少するような流れ方をし、バッテリから放電電流として供給される。したがって、定負荷に突入電流が流れる状況で、バッテリの放電電流とこれに対応する端子電圧を測定することによって、0からピーク値に至る広い範囲の電流変化に対する端子電圧の変化を示すバッテリの放電電流(I)−端子電圧(V)特性を測定することができる。
【0041】
そこで、スタータモータをオンしたときに流れる突入電流に相当する模擬的な放電として、0からほぼ200Aまで0.25秒かけて増加し、同じ時間をかけてピーク値から0まで減少する放電を電子負荷を使用してバッテリに行わせ、そのときのバッテリの放電電流と端子電圧とを対にして短い一定周期で測定し、これによって得た測定データ対を横軸に放電電流、縦軸に端子電圧をそれぞれ対応させてプロットして図4に示すグラフを得た。図4のグラフに示す放電電流の増加時と減少時の電流−電圧特性は、最小二乗法を用いて以下のような二次式に近似できる。
V=a1I2 +b1I+c1 ……(1)
V=a2I2 +b2I+c2 ……(2)
なお、図中には、二次の近似式の曲線も重ねて描かれている。
【0042】
図4中において、電流増加方向の近似曲線の切片と電流減少方向の近似曲線の切片の電圧差は、電流が流れていない0(A)の時の電圧差であるため、純抵抗と活性化分極による電圧降下を含まない、放電によって新たに発生した濃度分極成分のみによる電圧降下と考えられる。従って、この電圧差は、濃度分極のみによるものであり、この電流0(A)点の濃度分極をVpolc0 とする。この濃度分極Vpolc0 は、突入電流の大きさに電流の流れた時間を乗じて積算したもの、すなわちAh(短時間なので、以下Asec で表す)として求められる。
【0043】
次に、この電流0(A)点の濃度分極Vpolc0 を利用して電流ピーク値の濃度分極を算出する方法を説明する。今、電流ピーク値の濃度分極をVpolcp とすると、Vpolcp は次式のように表される。
Vpolcp =[(電流増加時のAsec )/(放電全体のAsec )]×Vpolc0
……(3)
なお、放電全体のAsec は次式で表される。
放電全体のAsec =(電流増加時のAsec +電流減少時のAsec )
【0044】
上述のようにして求めたピーク値における濃度分極Vpolcp を式(1)のピーク値における電圧に加算して、図5に示すように、ピーク値における濃度分極成分を削除する。なお、ピーク値における濃度分極成分を削除した後の電圧をV1とすると、V1は次式で表される。
V1=a1Ip2+b1Ip +c1+Vpolcp
Ip はピーク値における電流値である。
【0045】
次に、上述のようにして求めたV1を利用して次式で表される、図5に示すような純抵抗と活性化分極だけの電圧降下曲線を求める。
V=a3I2 +b3I+c3 ……(4)
【0046】
式(1)および(4)で表される特性の初期状態、すなわち、電流が0(A)の点に注目すると、初期状態での分極は等しいので、c3=c1である。また、電流増加の初期状態から電流は急激に増加するが、濃度分極の反応は遅く、反応がほとんど進行していないとすると、式(1)および(4)の電流が0(A)の点の微分値は等しくなるので、b3=b1である。従って,c3=c1 、b3=b1 を代入することで、式(4)は
V=a3I2 +b1I+c1 ……(5)
と書き直され、未知数はa3のみとなる。
【0047】
そこで、式(5)に電流増加のピーク値の座標(Ip 、V1)を代入してa3について整理すると、次式が求められる。
a3=(V1−b1Ip −c1)/Ip2
従って、純抵抗と活性化分極成分だけの電圧降下曲線の式(4)が式(5)によって決定される。
【0048】
一般に、純抵抗は化学反応にて生じるものでないので、バッテリの充電状態(SOC)、温度などが変わらなければ一定であるので、1回のスタータモータ作動の間は一定であるといえる。これに対し、活性化分極抵抗は、イオン、電子の受渡しの際の化学反応に伴って生じる抵抗であるので、濃度分極と相互に影響し合うこともあって、活性化分極の電流増加曲線と電流減少曲線は完全に一致しないことから、式(5)は濃度分極成分を除いた純抵抗と活性化分極の電流増加方向の曲線であるということができる。
【0049】
続いて、電流減少曲線からの濃度分極成分の削除の仕方を、以下説明する。純抵抗と活性化分極の電流減少方向の関係式は、電流ピーク値における濃度分極の削除と同様の方法で可能である。ピーク値以外の2点をA点およびB点とし、各点における濃度分極VpolcA 、VpolcB を次式のようにして求める。
VpolcA =[(電流増加時開始からA点までのAsec )/(放電全体のAsec )]×Vpolc0 ……(6)
VpolcB =[(電流増加時開始からB点までのAsec )/(放電全体のAsec )]×Vpolc0 ……(7)
【0050】
上式(6)および(7)によって、ピーク値以外に濃度分極成分を削除した2点が求まったら、この2点とピーク値との3点の座標を利用して次式で表される、図6に示すような、純抵抗と活性化分極の電流減少方向曲線が求められる。
V=a4I2 +b4I+c4 ……(8)
なお、式(8)の一次係数a4、二次係数b4並びに定数c4は、2点A及びBとピーク点の電流値と電圧値とを、式(8)にそれぞれ代入して立てた3点の連立方程式を解くことによって決定できる。
【0051】
次に、純抵抗の算出の仕方を説明する。上式(5)で表される濃度分極成分を削除した純抵抗と活性化分極の電流増加方向の曲線と、式(8)で表される同じく濃度分極成分を削除した純抵抗と活性化分極の電流減少方向の曲線との相違は、活性化分極成分の相違によるものであるので、活性化分極成分を除けば純抵抗が求められる。
【0052】
ところで、活性化分極が互いに等しい値となる両曲線のピーク値に着目し、ピーク値での電流増加の微分値R1と電流減少の微分値R2とを次式によって求める。
R1=2×a3×Ip ×b3 ……(10)
R2=2×a4×Ip ×b4 ……(11)
上式によって求められる微分値R1およびR2の差は、一方が活性化分極の増加方向でのピーク値であるのに対し、他方が減少方向でのピーク値であることに基因する。そして、突入電流に相当する模擬的な放電として、0から200Aまで0.25秒かけて増加し、同じ時間をかけてピーク値から0まで減少する放電を電子負荷を使用してバッテリに行わせた場合には、ピーク値近傍での両者の変化率が等しく、両者の中間に純抵抗による電流−電圧特性が存在すると理解できるので、両微分値を加算して2で割ることによって、純抵抗Rを次式によって求めることができる。
R=(R1+R2)/2 ……(12)
【0053】
以上は、突入電流に相当する模擬的な放電を電子負荷を使用してバッテリに行わせた場合について説明したが、実車両の場合には、上述したようにスタータモータとして直流モータを使用しているとき、界磁コイルに突入電流が流れている間に電流はピークに達し、クランキングはピークに達した後ピーク電流の半分以下に低下した電流で作動している。従って、電流増加方向は3ミリ秒(msec)という短時間で終了してしまい、電流増加ピーク値ではほとんど濃度分極が発生しない早い電流の変化であるが、電流減少方向は電流増加方向に比べて150msecという長い時間電流が流れるので、減少方向とはいえ、大きな濃度分極が発生する。ただし、クランキング期間については、突入電流の流れている期間とは異質の現象が生じているので、この期間のバッテリの放電電流と端子電圧については、電流減少方向の電流−電圧特性を決定するためのデータとしては使用しないようにする。
【0054】
このような状況で、実車両では、図7に示すように、電流増加方向は電流増加開始点とピーク値の2点間を結ぶ直線にて近似することができ、しかもこのピーク値500(A)での濃度分極の発生は0と近似することも可能である。この場合には、電流増加方向については、ピーク値の微分値としては、電流増加方向の近似直線の傾きを使用することになる。
ただし、このような場合には、電流増加方向の近似直線の傾きと、電流減少方向の二次の近似式のピーク点における接線の傾きとを単純に加算平均することはできない。何故ならば、このような状況では、ピーク点までとそれ以降で、活性化分極の発生度合いが全く異なり、ピーク値近傍での両者の変化率が等しくなるという前提が成立しなくなるからである。
このような場合には、純抵抗を求めるに当たって、濃度分極による電圧降下を除いた第1及び第2の近似式のピーク値に対応する点における単位電流変化当たりの2つの端子電圧変化の値、すなわち、傾きに、突入電流が流れている総時間に占める単調増加期間及び単調減少期間の時間の割合をそれぞれ乗じた上で加算すればよい。すなわち、総時間を単調増加及び単調減少にそれぞれ要した時間で比例按分した按分率を各傾きに乗じた上で加算することになる。このようにすることによって、活性化分極と濃度分極とが相互に影響し合うことを考慮して純抵抗を求めることができる。すなわち、活性化分極は原則電流値に応じた大きさのものが生じるが、その時々の濃度分極量に左右され、原則通りには生じることにならず、濃度分極が小さければ活性化分極も小さくなり、大きければ大きくなる。何れにしても、濃度分極成分による電圧降下を除いた2つの近似式のピーク値に対応する点における単位電流変化当たりの2つの端子電圧変化の値の中間の値をバッテリの純抵抗の値として測定することができる。
【0055】
また、最近の車両では、モータとしては、マグネットモータなどのDCブラッシレスなどの三相入力を必要とする交流モータが使用されることが増えてきている。このようなモータの場合、突入電流はそれ程早く短時間にピーク値に達することがなく、100msecほどの時間を要し、電流増加方向においても濃度分極の発生が起こるので、上述した模擬的な放電の場合と同様に、電流増加方向の電流変化曲線は二次近似することが必要になる。
【0056】
また、活性化分極の電流減少方向の近似をする場合、ピーク値とこれ以外の2点を定める際、図8に示すように、B点として電流0(A)の点を使用すると、近似式を求める際の計算を簡略化することができる。
【0057】
さらに、例えば、ピーク電流の1/2程度の電流値に対応する点に濃度分極の削除した点を定めた場合、図9に示すように、この点とピーク値の2点を結ぶ直線に一次近似してもよい。この場合、電流減少方向については、ピーク値の微分値としては、電流減少方向の近似直線の傾きを使用することになるが、二次曲線を使用したものと変わらない、精度のよい純抵抗が求められる。
以上要するに、濃度分極成分による電圧降下を除いた2つの近似式のピーク値に対応する点における単位電流変化当たりの2つの端子電圧変化の値の中間の値をバッテリの純抵抗の値として測定することができる。
【0058】
そこで、車載バッテリ純抵抗測定方法を、定負荷として、増加する放電電流及び減少する放電電流のいずれにおいても濃度分極の発生を伴う突入電流が流れる例えばスタータモータが使用されている場合について具体的に説明する。
【0059】
定負荷が動作されると、バッテリからは定常値を越えて単調増加しピーク値から定常値に単調減少する放電電流が流れる。このときのバッテリの放電電流と端子電圧とを、例えば100マイクロ秒(μsec)の周期にてサンプリングすることで周期的に測定し、バッテリの放電電流と端子電圧との組が多数得られる。
【0060】
このようにして得られたバッテリの放電電流と端子電圧との組の最新のものを、所定時間分、例えばRAMなどの書換可能な記憶手段としてのメモリに格納、記憶して収集する。メモリに格納、記憶して収集した放電電流と端子電圧との組を用いて、最小二乗法により、端子電圧と放電電流との相関を示す増加する放電電流及び減少する放電電流に対する電流−電圧特性について式(1)及び(2)に示すような2つの二次近似式を求める。次に、この2つの近似式から濃度分極成分による電圧降下を削除し、濃度分極成分を含まない修正した二次近似式を求める。
【0061】
このために、まず、式(1)及び(2)の近似式の電流が流れていない0(A)の時の電圧差を、純抵抗と活性化分極による電圧降下はなく、濃度分極によるものであるとして求める。また、この電圧差を利用して、増加する放電電流についての電流−電圧特性の近似式(1)上の電流ピーク値での濃度分極成分による電圧降下を求める。このために、濃度分極は、電流の大きさに電流の流れた時間を乗じた電流時間積によって変化していることを利用する。
【0062】
増加する放電電流についての電流−電圧特性の近似式上の電流ピーク値での濃度分極成分による電圧降下が求まったら次に、濃度分極成分の含まない近似式と含む近似式のいずれも定数及び一次係数が等しいとして、含まない近似式の二次係数を定め、増加する放電電流についての電流−電圧特性の近似式について修正した二次近似式(5)を求める。
【0063】
次に、減少する放電電流に対する電流−電圧特性について近似式(2)から濃度分極成分の含まない近似式を求める。このために、ピーク値以外に濃度分極成分を削除した2点を求める。この際に、濃度分極は、電流の大きさに電流の流れた時間を乗じた電流時間積によって変化していることを利用する。そして、ピーク値以外に濃度分極成分を削除した2点が求まったら、この2点とピーク値との3点の座標を利用して、減少する放電電流についての電流−電圧特性の近似式(2)について修正した二次近似式(8)を求める。
【0064】
上式(5)で表される濃度分極成分を削除した純抵抗と活性化分極の電流増加方向の修正二次近似式と、式(8)で表される濃度分極成分を削除した純抵抗と活性化分極の電流減少方向の修正二次近似式は、活性化分極成分の相違によるものであるので、活性化分極成分を除けば純抵抗が求められる。このために、両近似式のピーク値に着目し、ピーク値での電流増加の微分値と電流減少の微分値との差は、一方が活性化分極の増加方向であるのに対し、他方が減少方向であることに基因するものであるが、ピーク値近傍での両者の変化率の中間に純抵抗による電流−電圧特性が存在するとし、両微分値に突入電流が流れている総時間に占める単調増加期間及び前記単調減少期間の時間の割合をそれぞれ乗じた上で加算することによって、純抵抗を求める。
例えば、電流増加時間が3msec、電流減少時間が100msecとし、ピーク値での電流増加の微分値をRpolk1 、電流減少の微分値をRpolk2 とすると、以下のようにして純抵抗Rを算出することができる。
R=Rpolk1 ×100/103+Rpolk2 ×3/103
【0065】
上述したようなことを可能にして本発明の車載バッテリ純抵抗測定方法を実施する装置の具体的な実施の形態を、図2に戻って以下説明する。
【0066】
図2は本発明の車載バッテリ純抵抗測定方法を適用した本発明の一実施形態に係る車載バッテリの純抵抗測定装置の概略構成を一部ブロックにて示す説明図であり、図中符号1で示す本実施形態の車載バッテリの純抵抗測定装置は、エンジン3に加えてモータジェネレータ5を有するハイブリッド車両に搭載されている。
【0067】
そして、このハイブリッド車両は、通常時はエンジン3の出力のみをドライブシャフト7からディファレンシャルケース9を介して車輪11に伝達して走行させ、高負荷時には、バッテリ13からの電力によりモータジェネレータ5をモータとして機能させて、エンジン3の出力に加えてモータジェネレータ5の出力をドライブシャフト7から車輪11に伝達し、アシスト走行を行わせるように構成されている。
【0068】
また、このハイブリッド車両は、減速時や制動時にモータジェネレータ5をジェネレータ(発電機)として機能させ、運動エネルギを電気エネルギに変換してバッテリ13を充電させるように構成されている。
【0069】
なお、モータジェネレータ5はさらに、図示しないスタータスイッチのオンに伴うエンジン3の始動時に、エンジン3のフライホイールを強制的に回転させるスタータモータとして用いられるが、その場合にモータジェネレータ5には、短時間に大きな突入電流が流される。スタータスイッチのオンによりモータジェネレータ5によってエンジン3が始動されると、イグニッションキー(図示せず。)の操作解除に伴って、スタータスイッチがオフになってイグニッションスイッチやアクセサリスイッチのオン状態に移行し、これに伴ってバッテリ13から流れる放電電流は、定常電流に移行する。
【0070】
話を構成の説明に戻すと、本実施形態の車載バッテリの純抵抗測定装置1は、アシスト走行用のモータやスタータモータとして機能するモータジェネレータ5等、電装品に対するバッテリ13の放電電流Iや、ジェネレータとして機能するモータジェネレータ5からのバッテリ13に対する充電電流を検出する電流センサ15と、バッテリ13に並列接続した1Mオーム程度の抵抗値を有し、バッテリ13の端子電圧Vを検出する電圧センサ17とを備えている。
【0071】
また、本実施形態の車載バッテリの純抵抗測定装置1は、上述した電流センサ15及び電圧センサ17の出力がインタフェース回路(以下、「I/F」と略記する。)21におけるA/D変換後に取り込まれるマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と略記する。)23をさらに備えている。
【0072】
そして、前記マイコン23は、CPU23a、RAM23b、及び、ROM23cを有しており、このうち、CPU23aには、RAM23b及びROM23cの他、前記I/F21が接続されており、また、上述した図示しないスタータスイッチ、イグニッションスイッチやアクセサリスイッチ、モータジェネレータ5以外の電装品(負荷)のスイッチ等が、さらに接続されている。
【0073】
前記RAM23bは、各種データ記憶用のデータエリア及び各種処理作業に用いるワークエリアを有しており、前記ROM23cには、CPU23aに各種処理動作を行わせるための制御プログラムが格納されている。
【0074】
なお、上述した電流センサ15及び電圧センサ17の出力である電流値及び電圧値は、短い周期で高速にサンプリングされてI/F21を介して、マイコン23のCPU23aに取り込まれ、取り込まれた電流値及び電圧値は前記RAM23bのデータエリア(記憶手段に相当する)に収集され、各種の処理のために使用される。
【0075】
次に、前記ROM23cに格納された制御プログラムに従いCPU23aが行う処理を、図10のフローチャートを参照して説明する。
【0076】
バッテリ13からの給電を受けてマイコン23が起動しプログラムがスタートすると、CPU23aは、まず初期設定を実行する(ステップS1)。
【0077】
ステップS1の初期設定が済んだならば、次に、CPU23aは、イグニッション(IG)スイッチがオンされたか否かを判定し(ステップS2)、判定がYESにならないときには他の処理(ステップS3)を行う。なお、このステップS3の処理では、500μsecのサンプリング周期で放電電流及び端子電圧を測定して収集することも行っており、この処理をステップS2の判定がYESになるまで繰り返す。そして、IGスイッチのオンが検出されたときには(ステップS2のYES)、急激に変化するスタータモータの駆動時の急激に変化する突入電流を測定することができるように、サンプリング周期を500μsecから100μsecに短くする(ステップS4)。
【0078】
その後、電流センサ15の検出したバッテリ13の放電電流Iと電圧センサ17の検出したバッテリ13の端子電圧VとのA/D変換値を対にしてI/F21を介して読み込み、読み込んだ実データをRAM23bのデータエリアに格納、記憶して収集する実データ収集処理を実行する(ステップS5)。
【0079】
このステップS5において実データ収集処理を行っている過程で、収集した前後の実データの大小関係を比較することによって突入電流のピーク値を検出する(ステップS6)。ピーク値が検出されたとき(ステップS6のYES)には、ピーク値検出からの時間を計時し、所定時間が経過するまで実データの収集を継続し、所定時間経過した時点(ステップS7のYES)で、ピーク値の前後の所定時間分の実データを保持する(ステップS8)とともに、ピーク値を検出してから所定時間後にサンプリング周期を元の500μsecに戻す(ステップS9)。
【0080】
そして、収集保持した所定時間分の実データが分析され、最小二乗法を適用して、電流−電圧特性の二次近似式を求めるのに適当なものであるかどうかが判定される。すなわち、バッテリから、0からピーク値まで単調増加する放電電流とピーク値から定常値まで単調減少する放電電流が流れているかどうかを分析する分析処理を行う(ステップS10)。
【0081】
ステップS10における分析の結果、電流−電圧特性の二次近似式を求めるのに適当なものが収集されているとき(ステップS11のYES)、増加する放電電流及び減少する放電電流に対する式(1)及び(2)で表される電流−電圧特性の二次近似式を求める近似曲線式算出処理を実行する(ステップS12)。
【0082】
ステップS12の二次近似曲線式算出処理によって求まった二次近似式からバッテリの純抵抗を求めるための演算処理を実行する(ステップS13)。なお、この演算処理においては、二次式に濃度分極成分による電圧降下が含まれている場合、この電圧降下を除いた修正二次近似式を求める修正二次近似式算出処理を行い、この修正二次近似式を用いてバッテリの純抵抗を求めるための演算処理を実行することになり、この場合には、増加する放電電流及び減少する放電電流に対する電流−電圧特性の2つの修正二次近似式のピーク値での微分値を算出した上で、2つの微分値の中間の値をバッテリの純抵抗として求める演算を行う。そして、この求めたバッテリの純抵抗は種々の目的で使用するため、RAM23bのデータエリアに格納されて記憶される(ステップS14)。ステップS14の処理が終了したら、次にステップS2の判定がYESとなるのを待つ。
【0083】
この微分値の中間の値を求める方法としては、突入電流の流れ形によって2つの方法がある。
突入電流の増加方向の時間と減少方向の時間とがほぼ等しいときには、2つの微分値の加算平均値を純抵抗として求める演算を行う。
これに対して、突入電流の増加方向の時間と減少方向の時間とが大きく異なるときには、増加する放電電流に対する電流−電圧特性の修正二次近似式のピーク値での微分値に、放電電流の総時間に占める増加する放電電流の流れた時間の比率を乗じたものと、減少する放電電流に対する電流−電圧特性の2つの修正二次近似式のピーク値での微分値に、放電電流の総時間に占める減少する放電電流の流れた時間の比率を乗じたものとを加算した加算値を純抵抗として求める演算を行う。
いずれの方法で純抵抗を求めた場合にも、バッテリの純抵抗は2つの微分値の中間の値として求められる。
【0084】
また、図10のフローチャートに示した例では、第1及び第2の近似式が共に二次近似式としているが、第1の近似式が一次近似式であるときには、修正近似式を求める処理は当然に不要になる。そして、この場合には、一次式の傾きを微分値に代えて利用することになる。
【0085】
また、本実施形態の車載バッテリの純抵抗測定装置1ではフローチャートにおけるステップS5が請求項中の電流・電圧測定手段に対する処理となっており、ステップS12が請求項中の近似式算出手段に対応する処理となっており、ステップS13が請求項中の演算手段に対応する処理となっている。
【0086】
次に、上述のように構成された本実施形態の車載バッテリの純抵抗測定装置1の動作(作用)について説明する。
【0087】
まず、スタータモータの駆動開始に伴いバッテリ13が放電を行っている状態で、スタータモータに定常値を越えて単調増加しピーク値から定常値に単調減少する突入電流が流れたときのバッテリの端子電圧と放電電流とが周期的に測定される。
【0088】
また、本実施形態の車載バッテリの純抵抗測定装置1では、周期的に測定されたピーク値の前後の所定時間分の実データを、RAM23bのデータエリアに格納、記憶して収集され、収集された放電電流Iと端子電圧Vとの所定時間分の実データは分析され、最小二乗法を適用して、電流−電圧特性の2次の近似曲線式を求めるのに適当なものであるかどうかが判定される。すなわち、バッテリから定常値を越えて単調増加しピーク値から定常値以下に単調減少する放電電流が流れているかどうかが分析される。
【0089】
このため、電流−電圧特性の2次の近似曲線式を求めるのに適当なものが収集されるまで、近似曲線式算出処理が行われることがなく、近似曲線式算出処理も、既に収集した所定時間分の実データを用いて行われればよいので、端子電圧と放電電流との周期的な測定に同期して処理を行わなくてもよく、早い処理速度を必要としない。
【0090】
なお、上述した実施の形態では、スタータモータが駆動開始されるときの放電電流に含まれる突入電流についてのみ注目して本発明を実施しているが、大きさこそ異なるもののスタータモータと同様に駆動開始時に突入電流の流れるスタータモータ以外の負荷にも等しく適用することができる。ただし、この場合には、IGスイッチの代わりに、負荷駆動開始時点を負荷スイッチのオン操作を捕らえて、ステップS4の処理を行うことになり、それ以外の処理は図10のフローチャートと実質的に同じ処理を行うことでよい。
【0091】
なお、上述した実施の形態では、第1及び第2の近似式の放電電流0である点におけるバッテリの端子電圧の差を突入電流が0からピーク値に増加しピーク値から0に減少した期間に生じた総濃度分極成分による電圧降下と見なし、この総濃度分極成分に占める突入電流が0からピーク値に達するまでに生じる濃度分極成分による電圧降下を、第1及び第2の近似式の放電電流0である点におけるバッテリの端子電圧の差に、突入電流が0からピーク値に増加しピーク値から0に減少したときの電流時間積に対する0からピーク値までの電流時間積の比を乗じて求めているが、これを他の方法で求めることも可能であり、以下その方法を説明する。
【0092】
そもそも第1の近似式と第2の近似式の相違点が、濃度分極成分の違いであるとすると、両式の差の式を取ることによって、濃度分極成分が等しくなるピーク電流から電流値0になるまでの濃度分極について両者の差を顕著化することができるとともに、この差の式に基づいて電流値0からピーク電流値に至るまでの濃度分極成分の変化を予測しうる。
【0093】
上記式(1)及び(2)の差を取り、
ΔV= V=(a1−a2)I2 +(b1−b2)I+(c1−c2 ) ……(21)
を求める。これをプロットすると、図11に示すように、ピーク電流値の点で濃度分極成分が0となり、電流値0までの濃度分極成分のみの変化を示す曲線が描かれる。そして、この式(21)によって描かれる曲線を点線で示すようにピーク電流値の2倍の値の点まで延長することによって、電流値0からピーク電流値までの濃度分極成分の変化の様子を予測する。すなわち、電流増加と電流減少の濃度分極の相対的な変化を差の式に基づいて予測する。
【0094】
差の式は、電流値0からピーク電流までの濃度分極と、ピーク電流から電流値0までの濃度分極との発生変化の様子を、電流値0からピーク電流の間に凝縮して表していることになるので、この式によって表される曲線を2倍の放電電流の値まで延長することによって、電流が電流値0−ピーク値−電流値と流れたときの濃度分極の変化の様子を想定することができるようになる。したがって、電流時間積と濃度分極との比例関係が乱れて電流時間積を用いて任意の点の濃度分極を推定したとき精度が悪化するような場合にも有効に適用可能である。
【0095】
そこで、電流値0である点の電圧値V0 と2倍のピーク電流値である点の電圧値V2Pとの差(V2P−V0 )に対するピーク電流値である点の電圧値VP とピーク電流値の2倍の電流値である点の電圧値との差(V2P−VP )の比を求め、これを電流増加方向の近似曲線の切片と電流減少方向の近似曲線の切片の電圧差である電流0(A)点の濃度分極Vpolc0 に乗じることによって、ピーク電流値である点の濃度分極成分を予測する。この予測したピーク電流値である点の濃度分極成分は、上述したVpolcp と同等に扱って、純抵抗と活性化分極だけの電圧降下曲線を求めることができる。
【0096】
電流減少曲線からの濃度分極成分を削除する場合にも、電流ピーク値における濃度分極の削除と同様の方法で可能である。すなわち、ピーク値以外の2点の電圧値を式(21)により求め、電流値0である点の電圧値V0 と2倍のピーク電流値である点の電圧値V2Pとの差に対するピーク値以外の2点の電圧値とピーク電流値の2倍の電流値である点の電圧値との差の比を求め、これを電流増加方向の近似曲線の切片と電流減少方向の近似曲線の切片の電圧差である電流0(A)点の濃度分極Vpolc0 に乗じることによって、各点の濃度分極成分を予測する。この予測した2点の濃度分極成分をピーク電流値である点の濃度分極成分とともに利用することで、純抵抗と活性化分極だけの電圧上昇曲線を求めることができる。
【0097】
以上説明したようにして求めた電圧降下曲線と電圧上昇曲線の修正近似式を利用して純抵抗を求める方法は、電流時間積を利用して求めた修正近似式の場合と同様にして行うことができるので、詳細な説明は省略する。
【0098】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1及び13記載の発明によれば、車両の通常の使用状態で予め定めた定負荷に突入電流が流れている期間、バッテリの放電電流とこの放電電流に対応する端子電圧とを周期的に測定し、この測定の結果得られる放電電流と端子電圧との相関を示す突入電流の単調増加期間に対する電流−電圧特性の二次式からなる第1の近似式と、突入電流の単調減少期間に対する電流−電圧特性の二次式からなる第2の近似式とを求め、放電電流が流れることにより生じる電圧降下から、化学的な反応に基因して発生する濃度分極成分による電圧降下を除いた第1及び第2の近似式のピーク値に対応する点における単位電流変化当たりの2つの端子電圧変化の値の中間の値を求め、この求めた中間の値をバッテリの純抵抗の値として測定しているので、バッテリを通常状態で使用している際、すなわち、車両使用中でも車載バッテリの純抵抗を測定できる車載バッテリ純抵抗測定方法及び装置を提供することができる。
【0099】
上述した請求項2記載の発明によれば、バッテリの純抵抗の値として測定するため求める中間の値が、濃度分極成分による電圧降下を除いた第1及び第2の近似式のピーク値に対応する点における単位電流変化当たりの2つの端子電圧変化の値を加算平均して求められるので、ピーク値に対応する点での活性化分極の変化が等しくなる場合の車載バッテリの純抵抗を正確に測定できる車載バッテリ純抵抗測定方法を提供することができる。
【0100】
上述した請求項3記載の発明によれば、バッテリの純抵抗の値として測定するため求める中間の値が、濃度分極成分による電圧降下を除いた第1及び第2の近似式のピーク値に対応する点における単位電流変化当たりの2つの端子電圧変化の値に、突入電流が流れている総時間に占める単調増加期間及び単調減少期間の時間の割合をそれぞれ乗じた上で加算して求められるので、ピーク値に対応する点での活性化分極の変化が等しくならない場合の車載バッテリの純抵抗を正確に測定できる車載バッテリ純抵抗測定方法を提供することができる。
【0101】
上述した請求項4記載の発明によれば、修正近似式のピーク値における微分値を利用して中間の値を求めれば、純抵抗を測定することができるので、簡単な演算によって測定することができる車載バッテリ純抵抗測定方法を提供することができる。
【0102】
上述した請求項5記載の発明によれば、電圧降下を除いた電圧値を、第1の二次近似式と定数及び一次係数を等しくした式に代入して二次係数を決定した二次式を第1の修正近似式として求めているので、精度良く濃度分極成分を除いた修正近似式を得ることができ、純抵抗を精度良く測定することのできる車載バッテリ純抵抗測定方法を提供することができる。
【0103】
上述した請求項6記載の発明によれば、濃度分極成分による電圧降下を除いた二次式からなる第2の修正近似式を簡単に求めることができるので、面倒な処理なしに純抵抗を測定することのできる車載バッテリ純抵抗測定方法を提供することができる。
【0104】
上述した請求項7記載の発明によれば、第1及び第2の修正近似式が共に二次式であり、ピーク値での微分値の中間の値を求める単純な計算によって純抵抗を測定することができる車載バッテリ純抵抗測定方法を提供することができる。
【0105】
上述した請求項8記載の発明によれば、元々濃度分極成分を含まない0点を利用して二次式の第2の修正近似式を求めているので、濃度分極成分を除く近似式を求めるための処理が少なくて良い車載バッテリ純抵抗測定方法を提供することができる。
【0106】
上述した請求項9記載の発明によれば、中間の値を求めるために第2の修正近似式の傾きを使用しているので、中間の値を求めるための処理が簡単になる車載バッテリ純抵抗測定方法を提供することができる。
【0107】
上述した請求項10記載の発明によれば、総濃度分極成分に占めるピーク値に対応する点の濃度分極成分による電圧降下を知り、濃度分極成分による電圧降下を除いたピーク値に対応する電圧値を求めているので、精度良く濃度分極成分を除いた第1の修正近似式を得ることができ、純抵抗を精度良く測定することのできる車載バッテリ純抵抗測定方法を提供することができる。
【0108】
上述した請求項11記載の発明によれば、請求項10記載の発明同様に、総濃度分極成分に占めるピーク値に対応する点の濃度分極成分による電圧降下を知り、濃度分極成分による電圧降下を除いたピーク値に対応する電圧値を求めているので、精度良く濃度分極成分を除いた第1の修正近似式を得ることができ、しかも、第1及び第2の近似式が分かるだけで電流時間積を求めなくてもよいので、その分電流時間積と濃度分極の発生の対応関係に影響されることなく、かつ、面倒な処理を必要とすることがなくなり、簡単にかつ精度良く純抵抗を測定することのできる車載バッテリ純抵抗測定方法を提供することができる。
【0109】
上述した請求項12記載の発明によれば、車両の通常の使用状態で予め定めた定負荷に突入電流が流れている期間、バッテリの放電電流とこの放電電流に対応する端子電圧とを周期的に測定し、この測定の結果得られる放電電流と端子電圧との相関を示す突入電流の単調増加期間に対する電流−電圧特性の一次式からなる第1の近似式と、突入電流の単調減少期間に対する電流−電圧特性の二次式からなる第2の近似式とを求め、放電電流が流れることにより生じる電圧降下から、化学的な反応に基因して発生する濃度分極成分による電圧降下を除いた第1及び第2の近似式のピーク値に対応する点における単位電流変化当たりの2つの端子電圧変化の値の中間の値を求め、この求めた中間の値をバッテリの純抵抗の値として測定しているので、バッテリを通常状態で使用している際、すなわち、車両使用中でも、濃度分極の発生を伴わない短時間にピーク値まで単調増加する突入電流が流れる負荷に電力を供給したときのバッテリの放電電流と端子電圧とを測定して得られるデータの純抵抗を測定するための処理が簡単になるだけでなく、近似式も簡単に求めることができる車載バッテリ純抵抗測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の車載バッテリ純抵抗測定装置の基本構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の車載バッテリ純抵抗測定方法を適用した本発明の一実施形態に係る車載バッテリ純抵抗測定装置の概略構成を一部ブロックにて示す説明図である。
【図3】スタータモータ駆動開始時の突入電流を伴う放電電流の一例を示すグラフである。
【図4】二次近似式で表したI−V特性の一例を示すグラフである。
【図5】増加方向の近似式から濃度分極成分の除き方の一例を説明するためのグラフである。
【図6】減少方向の近似式から濃度分極成分の除き方の一例を説明するためのグラフである。
【図7】増加方向を一次近似式で表したI−V特性の一例を示すグラフである。
【図8】減少方向の近似式から濃度分極成分の除き方の他の例を説明するためのグラフである。
【図9】減少方向の近似式から濃度分極成分の除き方の別の例を説明するためのグラフである。
【図10】図2中のマイコンが純抵抗測定のため予め定めたプログラムに従って行う処理を示すフローチャートである。
【図11】式(1)及び(2)の差を取ることによって得た差の式に基づいて、ピーク電流値である点、並びに、任意の点の濃度分極成分の求め方を説明するためのグラフである。
【図12】放電に伴う端子電圧の電圧降下の内訳を一般的に示すI−V特性を示すグラフである。
【図13】従来のバッテリの純抵抗の測定の仕方を説明するためのグラフである。
【符号の説明】
23a−1 電流・電圧測定手段(CPU)
23a−2 近似式算出手段(CPU)
23a−3 演算手段(CPU)

Claims (13)

  1. 車両の負荷に電力を供給するため車両に搭載されたバッテリの純抵抗を測定する車載バッテリ純抵抗測定方法において、
    前記負荷のうち予め定めた定負荷に、0からピーク値まで単調増加した後、ピーク値から定常値まで単調減少する突入電流が流れている期間、前記バッテリの放電電流と該放電電流に対応する端子電圧とを周期的に測定し、
    該測定した放電電流と端子電圧との相関を示す前記突入電流の単調増加期間に対する電流−電圧特性の二次式からなる第1の近似式と前記突入電流の単調減少期間に対する電流−電圧特性の二次式からなる第2の近似式とを求め、
    前記放電電流が流れることにより生じる電圧降下から、化学的な反応に基因して発生する濃度分極成分による電圧降下を除いた前記第1及び第2の近似式の前記ピーク値に対応する点における単位電流変化当たりの2つの端子電圧変化の値の中間の値を求め、
    該求めた中間の値をバッテリの純抵抗の値として測定する
    ことを特徴とする車載バッテリ純抵抗測定方法。
  2. 請求項1記載の車載バッテリ純抵抗測定方法において、
    前記中間の値を、前記濃度分極成分による電圧降下を除いた前記第1及び第2の近似式の前記ピーク値に対応する点における単位電流変化当たりの2つの端子電圧変化の値を加算平均して求める
    ことを特徴とする車載バッテリ純抵抗測定方法。
  3. 請求項1記載の車載バッテリ純抵抗測定方法において、
    前記中間の値を、前記電圧降下を除いた前記第1及び第2の近似式の前記ピーク値に対応する点における単位電流変化当たりの2つの端子電圧変化の値に、前記突入電流が流れている総時間に占める前記単調増加期間及び前記単調減少期間の時間の割合をそれぞれ乗じた上で加算して求める
    ことを特徴とする車載バッテリ純抵抗測定方法。
  4. 請求項1〜3の何れかに記載の車載バッテリ純抵抗測定方法において、
    記中間の値を求めるに当たって、前記第1及び第2の近似式から前記濃度分極成分による電圧降下を除いた第1及び第2の修正近似式を求め、該第1及び第2の修正近似式の前記ピーク値に対応する点における単位電流変化当たりの2つの端子電圧変化の値を求める
    ことを特徴とする車載バッテリ純抵抗測定方法。
  5. 請求項4記載の車載バッテリ純抵抗測定方法において、
    前記第1及び第2の近似式の放電電流0である点における前記バッテリの端子電圧の差を求め、該差を前記突入電流が0からピーク値に増加しピーク値から0に減少した期間に生じた総濃度分極成分による電圧降下と見なし、該総濃度分極成分に占める前記突入電流が0からピーク値に達するまでに生じる濃度分極成分による電圧降下を求め、該求めた電圧降下を前記ピーク値に対応する電圧値から除いた値を、定数及び一次係数を前記第1の二次近似式と等しくした式に代入して二次係数を決定した二次式を前記第1の修正近似式として求める
    ことを特徴とする車載バッテリ純抵抗測定方法。
  6. 請求項5記載の車載バッテリ純抵抗測定方法において、
    前記ピーク値における前記濃度分極成分による電圧降下を除いた電圧値以外に、ピーク値と0の間の濃度分極成分による電圧降下を除いた2つの電圧値を求め、該3つの電圧値を利用して一次及び二次係数並びに定数を決定した二次式を前記第2の修正近似式として求める
    ことを特徴とする車載バッテリ純抵抗測定方法。
  7. 請求項6記載の車載バッテリ純抵抗測定方法において、
    前記中間の値を求めるために、前記第1及び第2の修正近似式のピーク値での微分値を使用する
    ことを特徴とする車載バッテリ純抵抗測定方法。
  8. 請求項5記載の車載バッテリ純抵抗測定方法において、
    前記ピーク値における前記濃度分極成分による電圧降下を除いた電圧値以外に、0点及びピーク値と0の間の中間点の濃度分極成分による電圧降下を除いた2つの電圧値を求め、該3つの電圧値を利用して一次及び二次係数並びに定数を決定した二次式を前記第2の修正近似式として求める
    ことを特徴とする車載バッテリ純抵抗測定方法。
  9. 請求項5記載の車載バッテリ純抵抗測定方法において、
    前記ピーク値における前記濃度分極成分による電圧降下を除いた電圧値以外に、ピーク値と0の間の中間点の濃度分極成分による電圧降下を除いた電圧値を求め、該2点を結んで決定した一次式を前記第2の修正近似式として求め、
    前記中間の値を求めるために前記第2の修正近似式の傾きを使用する
    ことを特徴とする車載バッテリ純抵抗測定方法。
  10. 請求項5〜9の何れかに記載の車載バッテリ純抵抗測定方法において、
    前記総濃度分極成分に占める前記突入電流が0からピーク値に達するまでに生じる濃度分極成分による電圧降下を、前記第1及び第2の近似式の放電電流0である点における前記バッテリの端子電圧の差に、前記突入電流が0からピーク値に増加しピーク値から0に減少したときの電流時間積に対する0からピーク値までの電流時間積の比を乗じて求める
    ことを特徴とする車載バッテリ純抵抗測定方法。
  11. 請求項5〜9の何れかに記載の車載バッテリ純抵抗測定方法において、
    前記第1及び第2の近似式より両式の差の式を求め、前記総濃度分極成分に占める前記突入電流が0からピーク値に達するまでに生じる濃度分極成分による電圧降下を、前記第1及び第2の近似式の放電電流0である点における前記バッテリの端子電圧の差に、前記差の式に基づいて求めた電流値0である点の電圧値とピーク電流値の2倍の電流値である点の電圧値との差に対するピーク電流値である点の電圧値とピーク電流値の2倍の電流値である点の電圧値との差の比を乗じて求める
    ことを特徴とする車載バッテリ純抵抗測定方法。
  12. 車両の負荷に電力を供給するため車両に搭載されたバッテリの純抵抗を測定する車載バッテリ純抵抗測定方法において、
    前記負荷のうち予め定めた定負荷に、0からピーク値まで単調増加した後、ピーク値から定常値まで単調減少する突入電流が流れている期間、前記バッテリの放電電流と該放電電流に対応する端子電圧とを周期的に測定し、
    該測定した放電電流と端子電圧との相関を示す前記突入電流の単調増加期間に対する電流−電圧特性の一次式からなる第1の近似式と前記突入電流の単調減少期間に対する電流−電圧特性の二次式からなる第2の近似式とを求め、
    前記放電電流が流れることにより生じる電圧降下から、化学的な反応に基因して発生する濃度分極成分による電圧降下を除いた前記第1及び第2の近似式の前記ピーク値に対応する点における単位電流変化当たりの2つの端子電圧変化の値の中間の値を求め、
    該求めた中間の値をバッテリの純抵抗の値として測定する
    ことを特徴とする車載バッテリ純抵抗測定方法
  13. 車両の負荷に電力を供給するため車両に搭載されたバッテリの純抵抗を測定する車載バッテリ純抵抗測定装置において、
    前記負荷のうち予め定めた定負荷に、0からピーク値まで単調増加した後、ピーク値から定常値まで単調減少する突入電流が流れている期間、前記バッテリの放電電流と該放電電流に対応する端子電圧とを周期的に測定する電流・電圧測定手段と、
    該電流・電圧測定手段によって測定した放電電流と端子電圧との相関を示す前記突入電流の単調増加期間に対する電流−電圧特性の二次式からなる第1の近似式と前記突入電流の単調減少期間に対する電流−電圧特性の二次式からなる第2の近似式とを求める近似式算出手段と、
    前記放電電流が流れることにより生じる電圧降下から、化学的な反応に基因して発生する濃度分極成分による電圧降下を除いた前記第1及び第2の近似式の前記ピーク値に対応する点における単位電流変化当たりの2つの端子電圧変化の値の中間の値を求める演算手段とを備え、
    該演算手段によって求めた中間の値をバッテリの純抵抗の値として測定する
    ことを特徴とする車載バッテリ純抵抗測定装置。
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