JP3825251B2 - 排ガス測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般廃棄物や産業廃棄物を焼却する焼却炉から排出される燃焼排ガス内に含まれるダイオキシン類の前駆体であるクロロフェノール類、クロロベンゼン類や未燃物質の指標である炭化水素類を大気圧から低真空域でイオン化し、そのイオンを質量分析して、排ガス中のダイオキシン類やクロロフェノール類、クロロベンゼン類や炭化水素類の濃度を連続的に求める排ガス測定装置に係り、特に装置自身の較正と自己診断技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、気体や液体中の微量成分を高感度に検出する方法として質量分析計が多く用いられており、超微量分析が必要とされる分野で不可欠な計測・分析装置となっている。
【0003】
この種の装置は、測定対象の試料をイオン化し、生成したイオンを質量分析部にて分析するものであり、より高感度、微量分析を実現する構成として、大気圧イオン化(以下、APIと略称する)を利用した質量分析計、特に、液体クロマトグラフ直結形大気圧イオン化質量分析計(以下、LC/API質量分析計と略称する)が知られている。この方法は、複雑な前処理過程を経て濃縮されたダイオキシン類等の被測定体混合物を液体クロマトグラフィー(以下、LCと略称する)に導入して分離し、溶出する前記試料および移動相はテフロン(登録商標)パイプ等の管を通して霧化部に送られ、ここで熱を加えられることにより霧化される。更に、霧化された試料および移動相は分子状態となり、イオン化室において針状電極により発生するコロナ放電によってイオン化される。イオン化された移動相分子は試料分子と分子反応を起こし、イオン化がまだされていない試料分子へ電荷を移すことによって試料分子は隠やかに且つほぼ全ての分子がイオン化される。イオン化された試料分子は高分解能の質量分析部に送られ質量分析される。この方法によれば、検出されたイオンの質量数からダイオキシンの定性分析(塩素がいくつ結合したダイオキシンであるかや、ジベンゾパラジオキシン或いはジベンゾフラン骨格を有するのか、等ダイオキシンの種類を知る)を行うことが出来るばかりでなく、検出されたイオンの強度からダイオキシンの定量分析も出来るという特徴がある。この種の装置は、主として、専門の分析センターや実験室等で多く活用されているが、近年では、種々改良がなされ、ごみ焼却場等のプラントに設置され、オンライン形の質量分析モニタとして活用が期待されている。
【0004】
又近年では、ごみ焼却場で廃棄物を焼却すると、その排ガス中に猛毒のダイオキシンが発生し、環境汚染を引き起こし、深刻な社会問題となっている。ここで、ダイオキシンとは75種類の異性体を持つポリ塩化ジベンゾパラジオキシン(PCDDs)および135種類の異性体を持つポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)の総称であり、より広義には、コプラナポリ塩化ビフェニル(Coplanar PCBs)を含めることもある。以後、ダイオキシンおよびそれに関した化合物群を総称してダイオキシン類と略記する。
【0005】
このダイオキシン類の定量分析は極めて複雑な化学的処理と高価な分析機器を駆使して行われている。そのため、分析結果の取得までには、一週間/一検体の時間が必要であった。
【0006】
横浜国立大学環境研究用(第18巻、1992年)、特開平4−161849号、特開平5−312796号に記載されている技術は、クロロベンゼン類をガスクロマトフィー(GC)により測定し、ダイオキシン類の代替指標として用いるものである。両者の相関からダイオキシン類を推定する方法であった。
【0007】
特開平10−332658号公報に示された技術は、排ガスのように種々の化合物が含まれている場合であっても、形成された凝縮物の除去等のメンテナンス作業を必要とせず、正確度および精度の高いクロロベンゼン類の分析値を得ることの出来る現場設置形のオンライン分析装置を提供するものであった。
【0008】
一方、特開平9−243601号公報に記載されている技術は、排ガス中のクロロベンゼン類とクロロフェノール類をリアルタイムで測定し、ダイオキシン類の濃度を連続的に求めようとするものである。排ガスをレーザイオン化質量分析装置に導きイオン化、質量分析することでクロロベンゼン類、クロロフェノール類の濃度を求め、ひいてはダイオキシン類の濃度を間接的に求めようとするものであり、クロロベンゼン類のリアルタイム濃度測定の可能性を示している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
横浜国立大学環境研究用(第18巻、1992年)、特開平4−161849号、特開平5−312796号公報に記載されている技術はダイオキシン類の前駆物質として考えられるクロロベンゼン類をトラップ管に捕捉濃縮しガスクロマトグラフィー(GC)により分離、検出を行っている。このため、試料濃縮採取及びGC測定に最低一時間以上の時間が必要である。又、GCの検知器では大量に存在する有機化合物の中から目的とするクロロベンゼン類を過ちなく且つ選択的に検出することは困難である。又、妨害物質による定量値の誤認も起こる可能性があり、改良の余地が残されている。
【0010】
特開平10−332658号公報に示された技術は、排ガスのように種々の化合物が含まれている場合であっても、ダストを取り除くための除塵器と、吸着剤を用いる濃縮器と、再濃縮のためのコールドトラップインジェクタと、ガスクロマトグラフ装置(検出器には有機塩素化合物類に対し選択的で高感度な電子捕獲型検出器)を備え、且つ除塵器の中に炭酸カルシウムの層を具備することで、形成された凝縮物の除去等のメンテナンス作業を必要とせず、正確度および精度の高いクロロベンゼン類の分析値を得ることの出来る現場設置形のオンライン分析装置を提供するものである。しかし、クロロベンゼン類の定量は専ら、時間のかかるGCを基本としているため、その分析時間は1時間以上必要であり、間欠的であった。仮に測定対象を1成分に限定しても、約15分程度の時間に短縮出来るが、リアルタイム性は実現出来ない。
【0011】
又、かかる従来技術では、前記除塵器を駆使しても、安定した長時間の連続運転は困難であり、改良の余地が残されている。
【0012】
特開平9−243601号公報に記載されている技術はクロロベンゼン類のリアルタイム濃度測定の可能性を示唆している。しかし、この方式におけるイオン化は多光子イオン化である。このイオン化において、モノクロロベンゼン類はある程度測定出来る。しかし、この多光子イオン化においてはベンゼン核に置換した塩素の数が一個ずつ増えるたびに1/7から1/10の感度低下が起こるとされる。トリクロロベンゼンはモノクロロベンゼンの約1/100の効率でしかイオン化されない。即ち、トリクロロベンゼンはモノクロロベンゼンの約1/100の感度しかないといえる。
【0013】
一方、毒性が最も高いダイオキシンとして知られている2,3,7,8−テトラクロロジベンゾ−P−ダイオキシン(2,3,7,8−TCDD)はダイオキシンの2,3,7,8位の4個の水素が塩素に置換された化合物である。又、有毒なダイオキシン類は全て塩素が4個以上置換したダイオキシン類である。この猛毒のダイオキシン類はクロロフェノール類、クロロベンゼン類が前駆体物質である。 この従来例で示された多光子イオン化方式では、多置換塩素化合物を効率良くイオン化出来ない。即ち、燃焼炉排ガス中の濃度1000ng/Nm3(1ppb)程度のクロロフェノール類やクロロベンゼン類の測定は非常に難しい。更には、排ガス採集時にどのように定量するかについての具体的な手段は開示されていない。
【0014】
従って、当然実際の焼却炉の運転状況下でのリアルタイムモニタは不可能であった。
【0015】
以上説明したように、
(1)現在まで、排ガスをオンラインで採取し、ダイオキシン類又はその前駆体物質や、排気ガスの未燃物質である炭化水素類の成分をリアルタイムで連続して測定する装置は示されていない。
(2)前記クロロフェノール類、クロロベンゼン類や炭化水素類を大気圧から低真空域でイオンを生成し、そのイオンを質量分析する装置自身の長期安定性を確保する具体的な技術は開示されていない。
(3)排ガス中の微量成分ガスを質量分析計にて測定する場合、前記排ガス中に存在する塩化水素、CO、NOX,SOX等の夾雑成分の影響を受け、イオン化効率が変化してしまうという問題に加えて、排ガス採取口から分析計に至る配管やフィルタ等に測定対象物が付着していまい、採集口の濃度と分析計に導入される試料の濃度が異なってしまうという問題があった。
(4)通常の分析計では、その測定精度や感度を確保するため、既知の規定濃度の試薬を投入することにより、装置としての検量が可能である。しかし、現場監視形の装置では測定対象が未知濃度であるので、一般には、実ガスをサンプリングしてその濃度を求め、その濃度に対応した入出力特性とする必要がある(実ガス導入時の較正)。かかる理由として、測定対象とガスの性状が各サイトで異なり、且つその夾雑成分も異なるためである。
【0016】
従って、プラントやそのプロセス立ち上げ時の費用と期間は多大であり、経済的効率に欠けるという欠点がある。
【0017】
本発明の課題は、排ガス中のダイオキシン類やクロロフェノール類、クロロベンゼン類や炭化水素類の濃度を連続的に求める場合にその濃度の確度を向上し、且つ測定工数を低減し、更には装置自身の自己診断を行い、保守性やメンテナンス性に優れた排ガス測定装置を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、質量分析計を用いた測定ガス(排ガス)の連続計測時に、排ガス中の測定物の濃度と装置の出力との較正手段として、前記測定物とそのイオン化効率の類似する物質、即ち希少同位体で且つ既知の一定濃度の第一の標準物質を前記排ガス引き込みラインに添加して、その量を測定し、又装置の較正時には前記排ガス中の測定物と全く同一の物質で且つ既知の一定濃度の第二の標準物質を前記排ガス引き込みラインに添加して、その量を較正する。
【0019】
更には、前記第一の標準物質と第二の標準物質の時間的変動や前記イオン化効率や質量分析部の効率を連続して監視しすることにより、装置自身の劣化診断を行う。
【0020】
これにより、各サイトの多様な夾雑物を含む排ガス中における測定対象物質の濃度を短時間で較正することが出来、且つ連続して高精度の分析・計測が可能になる。
【0021】
具体的には、次のようにして測定対象物質濃度を較正し、定量化する。
(1)試料ガス(排ガス)導入中に、測定物質とイオン化効率、蒸気圧等の物性値が類似した少なくとも一つ以上の希少な同位体の第一の標準物質を前記イオン源の上流側に一定濃度で、前記ラインの前処理ラインに注入し、標準物質のイオン強度(Is)と前記標準物質の絶対濃度(Ns)からその比(Ns/Is)を測定する。
(2)前記第一の標準物質を前記イオン源の上流側に一定濃度で、前記ラインの前処理ラインに注入する上流側、即ち、前記前処理部の排ガス採取口を少なくとも2分割した採集ラインを設け、前記採集ラインの一方側には、前記排ガス中の測定物質のみを除去することが可能な除去手段(フィルタや除去剤)を具備し、前記除去手段の下流側に、前記排ガス中の測定対象物と同じ第二の標準物質を注入する注入口を具備する。
【0022】
この前記2ラインにはその動作を異にする切り替え手段を具備し、前記試料ガスの導入中は、前記第二の標準物質側の切り替え手段はそのラインを封止するように動作し、一方他方のライン側の切り替え手段はそのラインを封止しないように動作する。
(3)排ガス中の測定物質濃度と装置出力
前記装置に用いられている質量分析部により観測される信号量、即ちイオン強度(XI)は、前記排ガス中の測定物の濃度(XN)に比例する。
【0023】
XI∝XN
前記装置には前記排ガスを煙道から前記装置まで引き込むために、前処理部が具備され、前記前処理部にはフィルターや除去剤を有する配管系で構成されている。このため、
▲1▼前記前処理部においては、排ガス中の測定物質は配管内壁での吸着や、夾雑物の濃度、水分濃度、フィルターへの付着、温度、流量、圧力等によりその濃度が変化し、又部品の腐食や劣化によっても変化する。かかる係数をγ(・)とする。
▲2▼:イオン化部においては、構成体内壁での吸着や夾雑物の濃度、水分濃度、温度、流量、圧力により排ガス中の測定物質の濃度が変化し、又部品の腐食や劣化によっても変化する。かかる係数をα(・)とする。
▲3▼質量分析部においては、構成体内壁での付着、温度、圧力により排ガス中の測定物質の濃度が変化し、又検出器の劣化によっても変化する。かかる係数をβ(・)とする。
【0024】
従って、
XI=XN*γ(・)*α(・)*β(・)
となる。更に詳しくは、
前記▲1▼項に関して、夾雑成分の濃度や水分濃度の影響係数をE1とし、温度をT1、流量をQ1、圧力をP1とし、前記▲2▼項に関して、夾雑成分の濃度や水分濃度の影響係数をE2とし、温度をT2、流量をQ2、圧力をP2とし、前記▲3▼項に関して、水分濃度や検出器の劣化の影響係数をE3とし、温度をT3、流量をQ3、圧力をP3とすると、質量分析計にて観測されるイオン強度XIと対象となる試料の濃度XNは
XI=XN*γ(E1、Q1、T1、P1)*α(E2、Q2、T2、P2)*β(E3、Q3、T3、P3)
となる。
【0025】
更に、前記式において、一般に流量、温度、圧力パラメータは前記前処理部や装置の計測時の設定パラメータであり、固定値とすることが可能である。従って、
XI=XN*γ(E1’)*α(E2’)*β(E3’)
となる。
【0026】
今、前記装置の較正時に、前記第一の標準物質の既知濃度XNsに対するイオン強度XIsが求まっているとすると、
XIs=XNs*γs(E1’)*αs(E2’)*βs(E3’)
となる。
【0027】
一方、排ガス中の試料濃度濃度xNに対するイオン強度xIは
xI=xN*γx(E1’)*αx(E2’)*βx(E3’)
となり、求めるxNは
xN=XNs*(xI/XIs)
但し、(γs(E1’)*αs(E2’)*βs(E3’))=
(γx(E1’)*αx(E2’)*βx(E3’))
となる。
【0028】
しかしながら、かかる関係式は、その各係数“γ(E1’)*α(E2’)*β(E3’)”が変化していないこと、或いは同条件で実施しなければならないことを意味する。つまり、排ガスを導入しながら、較正が必要であるということである。
【0029】
従って、排ガス中の測定物質と同じ物質を前記排ガス中に既知の濃度で注入して較正を実施しなければならない。この方法(従来)では、測定物質と較正用の標準物質が重なり合ってしまい、その精度は低下する。更に、前記較正用の標準物質も排ガス中の夾雑成分の影響を受けるので、実ガスをサンプリングしてその濃度を確定しなければならないので多大な費用と期間を要していた。
【0030】
一方、排ガスを導入しないで、例えばエアー等を流して、本エアー等を擬似排ガスとして前記測定物質と同じ物質を前記擬似排ガス中に既知の濃度で注入して較正する方法もある。しかし、この場合は前記係数“γ(E1’)*α(E2’)*β(E3’)”が異なるので、較正法としては不適である。
【0031】
本発明では前述の測定物質と較正用の標準物質の重なりを防止するため、測定物質とイオン化効率、蒸気圧等の物性値が類似した希少な同位体の物質を第一の標準物質として、前記イオン源の上流側に一定濃度で、前記ラインの前処理ラインに常時注入する。この時、第一の標準物質のイオン強度(XI1s)と、その絶対濃度(XN1s)は、
XI1s=XN1s*γ1(E1’)*α1(E2’)*β1(E3’)
一方測定物の濃度は
xI=xN*γx(E1’)*αx(E2’)*βx(E3’)
となり、上式から、
xN=(xI/XI1s)*XN1s*(γ1(E1’)*α1(E2’)*β1(E3’))/(γx(E1’)*αx(E2’)*βx(E3’))
xN=(xI/XI1s)*XN1s*ζ1s/((γx(E1’)*αx(E2’)*βx(E3’))
xN=(xI/XI1s)*XN1s*(ζ1s/ζx)
となり、装置で観測される排ガス中の測定物の濃度は信号強度信号と前記第一の標準物質の係数ζ1sと測定対象物の係数ζxとの比の積となる。
【0032】
次に、前記(2)の手段を具備することにより、所定の期間で、第二の標準物質を前記ラインに添加する。この時、前記第二の標準物質は、前記測定対象物と全くその物質、化学特性が同じもので、既知の定量化済みの濃度を使用する。更に、その入り口で、排ガス中の測定対象物のみを除去し、夾雑物のみが透過する。従って、
XI2s=XN2s*γ2(E1’)*α2(E2’)*β2(E3’)
ここで、
γ2(E1’)*α2(E2’)*β2(E3’)=γx(E1’)*αx(E2’)*βx(E3’)
であるから、
XI2s=XN2s*γx(E1’)*αx(E2’)*βx(E3’)
となり、
XI2s/XN2s=ζx
この時、少なくとも前記第ニの標準試料の濃度を2点で発生出来るようして、その係数を求める。
【0033】
ζx=(XN2sf−XN2s0)/(XI2sf−XI2s0)
となり、
ここで、ζ1sは常時監視可能であるが、ζxは常時監視が不可能であるので、時間的な分離が必要である。このため、
(1)実ガス導入時にζ1s収集
(2)第二の標準試料を添加してζxを算出
(3)係数kηを算出
(4)実ガス導入時のxIからxNを算出する
という測定モードにて行うことを基本シーケンスとするが、実用上は前記(2)は所定の間隔で十分である。何故なら、前記第一の標準物質と前記測定物質は前述の如く、イオン化率や蒸気圧等の物性値が類似した物質であり、その挙動は概ね同一である。従って、前述の(1)項の挙動が大きく変化した時点或いは規定値を外れた場合のみ、前記(2)項で、そのζxを確認する。
【0034】
即ち、前記第一の標準物質のζ1sの変動やトレンドを常時監視しながら、且つ定期的に前記第二の標準物質のζxを求めて、その比kηて、逐次補正を行いながら、前記測定対象物の濃度を連続計測する。
【0035】
更には、上記各係数:γ(・)、α(・)とβ(・)は各構成部の時間的な変化を示す指標でもあり、かかる係数の時間的な変化を個々に捉えることが出来れば、前記装置やそれに付帯する構成体の保守やメンテナンスに好都合であるので、以下の機能により実現している。
(A)係数γ(・)の追跡(フィルタ、配管、除去剤を含む前処理部)。
【0036】
より、Fγ(t)は前記γ(・)のみの時間的変遷を示す。このFγ(t)は一般的には、定量値か或いは単調な増加や減少であるので、所定の閾値を設定することにより、継続して使用可能か或いは保守、メンテナンスが必要であるかを判断出来る。
(B)係数α(・)の追跡(イオン化部)。
【0037】
バイパス系の配管系において、イオン源フランジ内に大気開放用の通路とオンオフバルブを具備し、前記オンオフバルブの操作により、前記イオン源内に空気を流入させ、バイパス管に計測時流入する流れ方向とは逆方向に大気を流入させることにより(測定ガスを遮断)、その時のイオン強度(XIio)を求める。かかる場合は、一切前記排ガスと前記標準試料は流入しないので、イオン源部以降の構成体の時間的変遷を示す。
【0038】
Fαβ(t)=XIio−XIms
このFαβ(t)は一般的には、定量値か或いは単調な増加や減少であるので、所定の閾値を設定することにより、継続して使用可能か或いは保守、メンテナンスが必要であるかを判断出来る。
(C)係数β(・)の追跡(質量分析部)。
【0039】
イオン源部の針電極に印加する電圧或いは電流を遮断すると、前記測定物質や前記標準試料はイオン化出来ない。このため、かかる操作時のイオン強度(XIms)は前記質量分析部の構成体や電気系統部の時間的変遷を示す。
【0040】
Fβ(t)=XIms
このFβ(t)は一般的には、定量値か或いは単調な増加や減少であるので、所定の閾値を設定することにより、継続して使用可能か或いは保守、メンテナンスが必要であるかを判断出来る。
(4)標準試料発生器
前記質量分析と前記配管系統と別に、前記標準試料発生部を少なくとも一つ具備する。前記発生部は少なくとも2分割以上の配管ラインを具備し、一方はエアーのみであり、他方に標準試料のラインを具備する。前記エアーラインには少なくとも一つ以上のオンオフバルブを具備し、前記標準試料ラインには、その上流側にオンオフバルブとリークバルブを具備する。前記リークバルブの一端は前記配管系統のいずれかに接続している。
(1)排ガス導入中に、測定物質とイオン化効率、蒸気圧等の物性値が類似した少なくとも一つ以上の希少な同位体の第一の標準物質を前記イオン源の上流側に一定濃度で、前記ラインの前処理ラインに注入し、標準物質のイオン強度(Is)と前記標準物質の絶対濃度(Ns)からその比(Ns/Is)を常時観測・測定することにより前記ζ1sを求め、且つかかる係数の変動に対応して、測定物の信号強度を補正・較正することにより、排ガス導入中下でも高精度の測定物の濃度計測を連続して実施することが出来る。
(2)前記第一の標準物質を前記イオン源の上流側に一定濃度で、前記ラインの前処理ラインに注入する上流側、即ち、前記前処理部の排ガス採取口を少なくとも2分割した採集ラインを設け、前記採集ラインの一方側には、前記排ガス中の測定物質のみを除去することが可能な除去手段(フィルタや除去剤)を具備し、前記除去手段の下流側に、前記排ガス中の測定対象物と同じ第二の標準物質を注入する注入口を具備し、この前記2ラインにはその動作を異にする切り替え手段を具備し、前記排ガス導入中は、前記第二の標準物質側の切り替え手段はそのラインを封止するように動作し、他方のライン側の切り替え手段はそのラインを封止しないように動作させることにより、前記測定物質のイオン強度(xI)とその出力(xN)を関係付ける係数ζxを同定出来る。
(3)前述の(1)、(2)項より、排ガス導入中でも、測定物質の濃度と装置出力とが、種々の影響因子(前述の係数α、β、γ)を含めて逐次較正され、前記測定物の絶対濃度が高精度化出来る。
【0041】
又、前記操作は排ガス導入中に逐次実施され、前記装置を停止することがないので、連続計測を可能とし、且つ較正作業が簡素化されその費用と期間を圧縮出来る。
(4)測定物質のイオン強度(xI)とその出力(xN)とを関係付ける係数(γ(・)、α(・)とβ(・))を各係数毎に単独で監視して各部位毎の時間的な変遷を見極めることが出来るので、装置自身の劣化診断が可能である。従って、保守、メンテナンスが容易となり、長期の安定運転が可能である。
(5)前記質量分析と前記配管系統と別に、前記標準試料発生部を少なくとも一つ具備し、前記発生部は少なくとも2分割以上の配管ラインを具備し、一方はエアーのみであり、他方に標準試料のラインを具備し、前記エアーラインには少なくとも一つ以上のオンオフバルブを具備し、前記標準試料ラインには、その上流側にオンオフバルブとリークバルブを具備する。前記リークバルブの一端は前記配管系統のいずれかに接続させることにより、定量化された既定の濃度を前記計測ラインに注入出来るので、検量・較正のために必要な発生器を改めて準備する必要もなく、又多種準備する必要がなく、検量・較正の作業とその費用を低減出来る。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下図面を使って、本発明の実施の形態を説明する。
【0043】
図1はの排ガス中のクロロベンゼン類、クロロフェノール類、炭化水素類や他の成分を自動的に連続分析・計測するための排ガス計測装置の構成を示した図である。
【0044】
図2は図1におけるイオン源部と質量分析計部の構成例を詳細に示した図である。
【0045】
以下図1、2を用いて説明する。
【0046】
この装置は、測定すべき排ガスの成分を分析・計測する質量分析装置部10000と、測定すべき排ガスをプラントの配管或いは煙突から直接サンプリングする採集管1000a,1000bと、
前記採取された排ガス内のダストやオイルやミスト更には塩化水素を除去するフィルタ(1)1004aと、前記採取された排ガスを質量分析装置本体に導入する試料輸送管(1)1001と、装置本体とは別に具備される試料輸送管(2)1003と、前記試料輸送管(2)1003とは別に、前記装置本体と連結して本体内に試料接続管400を具備し、前記試料輸送管1001の一端にて分岐して、前記排ガスの試料を装置に取り込んで所定の流量のダイオキシン類、クロロフェノール類、クロロベンゼン類を含む排ガスを導き、試料導入フランジ33(図2)の試料導入管34(図2)に接続する。
【0047】
前記試料接続管400を通して導入された試料は試料導入フランジ33に具備された試料導入管34を介して前記試料導入フランジ33内に導入される。
【0048】
前記試料導入フランジ33内に導入された試料の一部は、イオン化室10に導入され、残りは試料導入フランジ3に具備した排出管(2)36、或いはイオン化室10に具備した排出管(1)16より排出される。
【0049】
前記イオン化室10に導入される流量と前記排出管(2)36或いはイオン化室10に具備した排出管(1)16から排出される流量の合計は約1〜2l/min程度である。
【0050】
これらの流量は前記試料接続管400内に具備されるフローメータ402と可変絞り機器401により設定する。前記フローメータ402と可変絞り機器401はマスフローコントローラにて一体化しても良い。
【0051】
イオン化室10に導入される試料は、前記試料導入フランジ33の一方の面に具備された電極(1)2の細孔21(図2)より流出し、その流線は前記細孔21により拡散しない。
【0052】
この検出体を含む試料は前記電極(1)2と高電圧を印加した針電極1の間で生成するコロナ放電域にてイオン化される。この部分が“イオン化部”に相当する。前記針電極1に印加される電圧は、正イオンを生成させる場合には1〜6kV程度、負イオンを生成させる場合には−1〜−6kV程度であり、Hv電源110(図2)から定電圧あるいは定電流方式にて供給する。
【0053】
前記電極(1)2と高電圧を印加した針電極1の間で生成するコロナ放電域にて前記排ガス中の成分がイオン化・分子反応する。かかる時、イオン化・分子反応の過程で、NO3-等のイオン生成反応を抑制し、O2-とNOとの存在領域が重複しないことが重要であるので、細孔21により流出する試料速度を高めることにより、O2- + NO →NO3-の反応を抑制し、イオン化効率を高めることが重要である。
【0054】
一方、O2- +CP(クロロフェノール類) → (CP_H)- + HO2 で生成したイオンは前記電極(1)2と高電圧を印加した針電極(1)間に生成する電界により、流れに打ち勝ってイオンを引き出し、質量分析部に取り込む。
【0055】
又、排ガス中に塩化水素等の夾雑物質が存在すると、前記O2-イオンと前記夾雑物質間でイオン・分子反応が起こり、前記クロロフェノール類等のイオン化が変化する。
【0056】
このため、O2-+HCL → CL-+ HO2の反応は前記試料接続管400に具備する除去剤や前記試料輸送管(1)1001内に具備する除去剤や前記フィルタ(1)1004a、採集管1000b内の除去剤により低減することが望ましい。
【0057】
しかし、100%の除去率は期待出来ないので、むしろ前記HCL等の腐食ガスの夾雑物質がある程度存在しても、イオン化部の効率が一定で安定していれば、連続計測上は実用上問題ない。このため、イオン源部は安定したコロナ放電と耐久性を確保出来る構成とすることが望ましく、実施例では、前記コロナ放電部の安定化と耐久性を確保するため、前記針電極1が位置するイオン化部に別途ドライエアー、アルゴン等の純粋ガスを前記イオン化部に供給する手段を備えている構成例である。この供給量は、一般には前記細孔21から流出する流量よりも低く設定している。
【0058】
図2に従って説明する。前記針電極1は針ホルダー管11の先端に固定し、前記針ホルダー管11の一端にはバックガス2供給管12を連結し、他端には電源を供給するためのHV端子13を具備ている。
【0059】
前記バックガス2供給管12の先端には外部からドライエアー、アルゴン等のガスを供給するバックガス接続管300とその量を制御するフローメータ302と可変絞り機器301が具備される。
【0060】
かかる構成においては、前記ドライエアー、アルゴン等の純粋なガスが、前記針ホルダー管11内を介して、常時平行流として前記針電極1の先端部に供給され、特に、供給流体がドライエアーの場合は、前記コロナ放電域に一次イオン化の種源である酸素を連続供給出来るので、試料ガス中の酸素濃度に依存しない一定の一次イオンを生成出来る。このため、コロナ放電が安定する。又、この供給ガスは最も高温である針先部を隔離するシルードガスの役目をしているので、益々安定化すると共に、前記針電極1の腐食防止にも効果がある。かかる構成は、前記排ガスの性状よっては具備させる必要がないと判断出来る場合は削除しても良い。
【0061】
前記針ホルダー管11は針固定金具14に取り付けられ、前記針固定金具14はイオン化フランジ15に取り付ける構成とすることにより、着脱可能としている。かかる構成により、万一、コロナ放電部が支障を来たした場合でも、本部位のみを容易に交換やクリーニング等で再生出来るので、メンテナンス性が向上する。
【0062】
前記イオン化部を通過した試料は、前記イオン化フランジ15に設けられた排出管(1)16から排出される。一方前記イオン化フランジ15には、更にヒータ(1)17を装着している。これは、イオン化部のイオン化温度を一定にするために具備するものである。これにより、益々イオン化が安定化する。
【0063】
更に、前記イオン化フランジ15は前記試料導入フランジ33に端子板(1)22を介して取り付けられる。前記端子板22の内部には前記電極(1)2が取り付けられ、前記端子板2の端子が電源線121を介して電源発生部120に連結している。
【0064】
更に、かかる構成においては前記針電極1と前記細孔21とイオン化フランジ15と前記試料導入フランジ33は同軸上に配置され、機能別にユニット化(コロナ針放電部、試料排気・加温部、コロナ放電電極部、試料導入部)されているので、各ユニット単位でも分解・再組立・交換作業を可能としている。
【0065】
前記イオン化された排ガス中の検出体、酸素、HCL等の分子は前記細孔21を通過して前記試料導入フランジ33内に、前記細孔21の孔径域で流出する。これは前記試料導入フランジ33内の流速は前記コロナ放電域の流速に比してその速度が遅く、イオン化した分子の運動エネルギが大きいため、試料の流れに逆行してもイオンを引き出せることを意味している。
【0066】
次に、これらのイオン化した分子を後述する差動排気室の初段に取り込めれば良いわけであるが、差動排気室の初段部の細孔は、前記細孔21の径と同じ場合は別として、一般には差動排気室に具備するポンプの排気能力には限界があるので、その圧力減衰比を概ね、1/10〜1/100程度としている。このため、生成したイオンを前記差動排気室の初段に取り込む前に収束する必要がある。又、前記生成したイオンの中にはHCL等の腐食性ガスも含まれている。これらのガスが差動排気室や後述する質量分析部に流入すると、検出感度の劣化や、装置自体の耐久性が低下する。更に、真空室内の各部品の交換・再生は非常にメンテナンスが悪化することが危惧される。このため、本実施例では、前記試料導入フランジ33に流出したイオンを収束する手段(イオンドリフト部20)を設け、HCL等の腐食性ガスを後述する真空室に流入させない構成とした。
【0067】
前記試料導入フランジ33内のイオンドリフト部20を通過したイオンは前記電極(2)3の細孔31に流入する。この時、前記電極(2)3の他方の面側(試料ガスが流れる面の裏側)に前記試料導入フランジ33室の圧力と同等で、且つ純粋なガス体を提供することにより、前記腐食性ガスを含む試料ガスの流入を阻止出来るので、後述する差動排気室や質量分析部の寿命を延命出来る。
【0068】
つまり、本実施例においては、前記電極(2)3と差動排気室の第一細孔フランジ4間に前記純粋なガス体を引き込む密閉された微少空間域を具備する構成としている。この空間は前記電極(2)3と第一細孔4間に端子板(2)32或いはシール体を介在させ、前記第一細孔フランジ4の第一細孔41以外の位置にバックガス1供給管44を具備し、前記バックガス1供給管44の末端部には外部からドライエアー、アルゴン、窒素、ヘリウム等のガスを供給するバックガス接続管303とその量を制御するフローメータ305と可変絞り機器304が具備される。
【0069】
かかる構成においては、前記ドライエアー、アルゴン、窒素、ヘリウム等の純粋なガスが、前記バックガス1供給管44を介して、前記空間内に常時供給され、前記第一細孔41より差動排気室の内部に流入する。この時、差動室に引き込まれる流量とほぼ同じ流量とすることにより、前記試料ガスは一切流入しないようになる。
【0070】
更に、図2に示すように、前記バックガス1供給管44と前記第一細孔41の位置は隔離しているので、その流線は前記第一細孔41に集中するようになる。又、前記第一細孔41と前記電極(2)3の細孔31は同軸上に配置し、イオンの拡散を防止している。
【0071】
一方、前記電極(2)3の細孔31まで引き出されたイオン化された分子は、前記ドライエアー、アルゴン、窒素、ヘリウム等のガス流線内に混合される。この時、この流線は前記第一細孔41に集中しているので、効率良く(流線に沿って混合されているので)前記第一細孔41に取り込まれる(イオンドリフト30)。
【0072】
更に、図2に示すように、前記電極(2)3は前記端子板(2)32を介し、前記電源発生部120と接続線122を介して外部から電圧を印加している。この時、前記第一細孔41と前記電極(2)3には電位差が発生し、前記イオンを加速すると共に、前記第一細孔41の凸部形状により、前記第一細孔41にイオンを収束出来る。
【0073】
即ち、前記電極(2)3の細孔31まで引き出されたイオン化した分子は、前記ドライエアー、アルゴン、窒素、ヘリウム等のガス流の流体力と、前記第一細孔41と前記電極(2)3の電界力扶助により、前記第一細孔41に高効率で輸送される。又、前記試料ガスは流入しないので、真空室は高純度の不活性ガスの希薄流体のみで充満し、そのケミカルノイズあるいはバックガスによる影響が少なくなり、長期間の連続運転が可能である。
【0074】
かかる構成において、正イオンを測定する場合には、前記電極(1)2の電圧は前記電極(2)3より高く設定し、実際には電極(1)2は1000V(V1)、電極(2)3は300V(V2)程度、前記第一細孔フランジ4の電圧は50V(V3)程度である。逆に、負イオンを測定する場合には、正イオン測定の場合とは逆で、前記電極(1)2の電圧は前記電極(2)3より高く設定し、実際には電極(1)2は−1000V(V1)、電極(2)3は−300V(V2)程度、前記第一細孔フランジ:4の電圧は−50V(V3)程度である。
【0075】
かかる正、負の切り替え操作は前記HV電源110により、手操作或いは装置に具備される測定シーケンスの一連の動作内にて実行することが可能となっている。
【0076】
更に、前記試料導入フランジ33内のイオンドリフト部20や前記電極(2)3と前記第一細孔フランジ間やイオンドリフト部30の温度は均一化した方が安定するので、試料導入フランジ33の一端にヒータ(2)35と前記第一細孔フランジ4にヒータ42を具備し、外部から制御し、温度を均一化している(図示せず)。
【0077】
かかる前記イオンドリフト部30を構成する配管類や電極2や端子板2は、前記排ガスの性状よっては具備させる必要がないと判断出来る場合は削除しても良い。
【0078】
上述の如く、前記生成した正、或いは負イオンは前記第一細孔41に取り込まれる。
【0079】
本実施例では、前記第一細孔41に取り込まれたイオンを徐々に低圧力化した真空室を通過させて、高真空室の質量分析部(室)に導入する排気系の形状や配置に対し、よりイオンの透過性を向上出来る差動排気室構成を達成している。
【0080】
かかる構成において、前記第一細孔41と第二細孔51間の第一差動室の圧力は約0.1〜10Torrとし、前記第ニ細孔51と第三細孔61間の第ニ差動室の圧力の減衰比を1/10〜1/50程度とし、更に前記第三細孔61と第四細孔71間の第三差動室の圧力の減衰比を1/10程度とすることにより、前記第三差動室の圧力を0.001〜0.005Torrまで低下させることが出来、且つイオンを約φ0.2〜0.6の収束したイオンビーム流として取り出せた。
【0081】
このイオンビームは前記第四細孔71(φ0.2〜0.6)から噴出し、前記質量分析室80にてイオン分子流となる。
【0082】
かかる構成では、高圧力下でのイオンビーム流的(粘性流的)挙動をしていたイオンは、徐々に圧力が低下すると、平均自由行程が長くなる。この時、イオンを加速する方向に電界を生成すると、イオンは電界中を加速飛行し、中性分子との衝突を繰り返すようになる。この衝突により、水分子等脱離させることが出来ると共に前述のイオン化部の如く、その収束性も圧力が低くなるに従って良くなる方向である。そこで、前記差動室の各質を形成する前記第一細孔41の第一細孔フランジ43、第ニ細孔51の第ニ細孔フランジ5、第三細孔61の第三細孔フランジ6、第四細孔71の第四細孔フランジ7にイオン加速電界を生成するため、前記ドリフト電源(2)130から、前記各細孔フランジに各々V1,V2,V3,V4の電圧を印加する。ここで、イオンが正イオンの場合はV1>V2>V3>V4となるように、イオンが負の場合はV1<V2<V3<V4となるように印加する。
【0083】
又、これらの各フランジ内の各細孔は同軸上に配置され、偏芯によるイオン透過域の芯ずれを抑えている構成としている。更に、これらの電位は外部から調整・設定することにより、イオンと中性分子との衝突による脱溶媒の程度を変化させ、更にイオンの収束性と、組み立ての時の誤差が生じてた場合でもその誤差を吸収出来るようにしている。
【0084】
前記差動排気部に具備する排気ポンプは、ロータリポンプ、スクロールポンプ、又はメカニカルブースタポンプ、ターボ分子ポンプ等の排気ポンプが適用可能である。図2では、差動排気部の排気にスクロールポンプ210を採用(排気量は300〜900l/min 程度)し、前記質量分析部80の排気にターボ分子ポンプ220(排気量は150〜300 l/s程度)を用いた場合を示している。前記ターボ分子ポンプ220の背圧は連結管(B)76により前記スクロールポンプ210にて兼用している。
【0085】
更に、前記各フランジには、各圧力を調整するための細孔52、62、72を具備し、適用する排気ポンプの能力に合わせて各室の圧力調整を可能にしている。
【0086】
前記差動排気室の最終段から流出した分子流域のイオンは、先ず前記質量分析部80の入り口に具備される第一の収束レンズにより収束される。この収束レンズは、通常、3枚(81、82、83)の電極から成るアインツエルレンズ等が用いられる。
【0087】
次に収束したイオンはさらに、スリットを具備したレンズ電極84を通過する。前記収束レンズ81、82、83の電極により、前記第四細孔71を通過したイオンはこのレンズ電極84にて収束し、収束されない中性子等はこのレンズ電極84のスリット部分に衝突し、質量分析部側に行きにくい構造となっている。
【0088】
前記レンズ電極84を通過したイオンは、多数の開口部を備えた内筒電極86と外筒電極85よりなる二重円筒型偏光器により偏光且つ収束される。二重円筒型偏光器では、内筒電極86の開口部より染み出した外筒電極85の電界を用いて偏向し且つ収束している。
【0089】
前記二重円筒型偏光器を通過したイオンは、イオントラップ質量分析部に導入される。前記イオントラップ質量分析部は、ゲート電極91a、エンドキャップ電極92、リング電極94、つば電極921、絶縁リング93、イオン取り出しレンズ91bより構成される。
【0090】
前記ゲート電極91aはイオントラップ質量分析部内に捕捉したイオンをイオントラップ質量分析部外に取り出す際に、外部からイオンが質量分析部内に導入されないようにする役目をする。
【0091】
前記エンドキャップ電極92の細孔92aを通してイオントラップ質量分析部内に導入されたイオンは、イオントラップ質量分析部内部に導入されたヘリウム等のバファーガスと衝突してその軌道が小さくなった後、エンドキャップ電極92とリング電極94間に印加された高周波電圧を走査することによって質量分析数毎にエンドキャップ電極92の細孔92bからイオントラップ質量分析部外に排出され、イオン取り出しレンズ91bを経て、イオン変換器101とイオン検出器140により検出される。前記バッファーガスは外部に設けたHe等のバックガス3のボンベ105から、バックガス3接続管103とバックガス3供給管104により連続的に供給される。
【0092】
前記バッファーガスを導入した際のイオントラップ質量分析部内部の圧力は10 −3 〜10 −4 Torr程度である。
【0093】
前記イオントラップ質量分析部の測定シーケンスやデータ処理や電圧制御は、質量分析部内のデータ処理・制御部230にて実行される。
【0094】
前記イオントラップ質量分析計のメリットの一つは、イオンを捕捉する特性を有するので、試料の濃度が希薄でも溜め込み時間を延ばせば検出出来る点にある。従って、試料濃度が低い場合でも、イオントラップ質量分析部のところでイオンの高倍率濃縮が可能となり、濃縮等の試料の前処理を非常に簡便化出来る。
【0095】
前記生成したイオンを質量分析するに当たっては、いろいろな種類の質量分析部が適用可能であり、例えば、同じ高周波電界を用いた質量分離を行う四重極質量分析計や、磁場内での質量分散を用いた磁場型質量分析部や、或いは他の質量分析計を用いた場合でも同様である。
【0096】
図1に従って説明する。前記イオン源にてイオン化済みのガス分子や未反応のガスは、前記試料導入フランジ33の前記排出管(2)36や前記イオン化フランジ15の排出管(1)16を介して、排出管(s)1005から排出される。この排出されたガスは前記試料輸送管(2)1003に戻される。
【0097】
更にこのガスは前記試料輸送管1001、1003系内(配管)に設けられた吸引ポンプ1002にて吸引され、更に、前記吸引ポンプの下流側に位置した排気ファン1006にて送り出され、排ガス排出管1007を経て、前記排ガスをプラントの配管或いは煙突等に排出するような配管系の構成としている。
【0098】
又、前記試料輸送管(2)1003の上流側に前記試料接続管400の一端が連結され、その下流側に差圧発生体(絞り機構)1008を具備し、その下流側に前記排出管(s)1005が連結しており、差圧発生体1008の差圧の発生量で前記試料接続管400の流量を設定している。
【0099】
又、前記バックガス1接続管300、バックガス2接続管303の上流側にポンプ1009が具備され、大気を吸引し、且つその下流側にミスト除去のためのフィルター等(図示せず)を介して清浄化して、前記イオン源やイオンドリフト部へのバックガスとして供給している。
【0100】
前記配管系(1001から1007で構成された流路)は、採取した試料ガスを安定に且つ途中で測定対象物質の吸着、凝縮等による損失が無く、且つ一定流量でモニタ部に送り込む役目を果たしている。このため試料採取部全体は100℃〜300℃程度に加熱されている。
【0101】
前記質量分析部(モニタ)では、送り込まれた試料ガス中の測定対象物質を選択的に且つ高効率でイオン化し、生成したイオンを質量分析部で質量分析することにより、測定対象物を連続的に検出する。
【0102】
前記質量分析部にイオントラップ質量分析計を用いると、通常のマススペクトルに比較して、さらに高い選択性を得ることが出来る。これは、イオントラップ質量分析部内部に捕捉した分子イオンにエネルギを注入し、電極内バッファガス(He等)分子と衝突させて分子イオンを解離するMS/MS法による。有機塩化化合物の場合、分子イオンから塩素原子が一又はニ個脱離するイオンがMS/MS法で観測される。例えば、2,4ジクロロフェノールの場合、負のコロナ放電を用いてイオン化すると、(M-H)-、(M:分子、H:水素)という負イオンが生成する。この負イオンをMS/MS法により解離すると、塩素原子が1個脱離した負イオンが生成する。この負イオンを観測するということは、非常に高い選択性を得ることが出来る。このピーク強度から塩素原子が1個脱離した負イオンの量を定量すれば、排ガス中のジクロロフェノールの量を推定出来る。測定すべき分子種が複数ある場合にはこの測定過程を繰り返す。
【0103】
以上、主として、負イオン化モードの大気圧化学イオン化法を用いた場合について述べてきたが、排ガス中には種々の成分が含まれている。このため、ベンゼン等に代表される芳香族化合物の炭化水素系化合物や塩素数の少ない化合物については、本質量分析部により、正イオン化モードでの連続測定も可能である。例えば、未燃物質の主体である炭化水素系のイオンや、更にベンゼンやモノクロロベンゼンでは、正イオン化モードの大気圧化学イオン化法により、M+のイオン種が生成する。
【0104】
従って、実際の試料ガス測定では、図2に示すHV電源110により、装置の測定シーケンスと同期して、電源発生部120とその電源線123から各電圧が供給され、所定の制御の元に正、負イオン化モードを交互に或いは所定の期間で繰り返し測定する。
【0105】
更に、本実施例においては、図1に示すように、下記の構成が具備される。
【0106】
即ち、測定すべき排ガスをプラントの配管或いは煙突から直接サンプリングする前記採集管1000aの下流側に、採集分岐管(1)1011と採集分岐管(2)1010が具備され、前記排ガスを分流出来る構成としている。
【0107】
前記採集分岐管(1)1011の下流側にはバルブ(2)1016が具備され、採集分岐管(11)1014を介して、その一端が前記採集管1000bと連結する。
【0108】
一方、前記採集分岐管(2)1010の下流側には前記排ガスの測定物質を除去するフィルター(s)1012が具備され、その下流側にバルブ(1)1015が具備され、採集分岐管(21)1013を介して、その一端が前記採集管1000bと連結する。さらに、前記フィルター(s)1012と前記バルブ(1)1015間には、前記検出体或いは測定物の濃度を定量化するために具備される標準試料発生器1100で生成される一定濃度の標準ガスを注入する配管(s2)1102bが連通している。
【0109】
更に、前記標準試料発生器1100で生成される一定濃度のもう一つの標準ガスは、前記採集管1000bの下流側で且つ前記フィルタ1004aの上流位置で配管(s1)1102aを介して注入される。前記標準試料発生器1100には少なくとも、排ガス中の測定物質とそのイオン化効率や蒸気圧等の物質性状が同等な同位体物質と、測定物質と全く同じ物質を標準物質として具備し、所定の一定濃度のガスとして供給される。
【0110】
かかる構成により、測定対象物に由来する質量数におけるイオン強度値と、あらかじめ作成された標準物質の濃度と前記質量分析部のイオン強度の関係から、対象物質の濃度を定量的に求めることが出来ると共に、排ガス導入中においても較正が可能である。
【0111】
以下例として、前記排ガス中の測定物質をクロロフェノール類として説明する。
【0112】
求めるべきクロロフェノール類の濃度は、基本的にはモノ、ジ、トリ、テトラ、ペンタクロロフェノールの各濃度の総和である。しかし、実際の焼却炉から発生するクロロフェノール類を分析すると、ペンタクロロフェノールは非常に少なく、又モノクロロフェノールは塩素化ダイオキシンを生成する確率が非常にちいさいので、ジ(Ndcp)、トリ(Ntcp)、テトラ(Ntecp)クロロフェノールの濃度の総和となる。
【0113】
従って、その濃度をNcpとすると、
Ncp≒Ndcp+Ntcp+Ntecp
となる。質量分析計にて観測されるイオン強度XIと対象となる測定物質濃度XNは
XIdcp=XNdcp *γ(E1,Q1,T1,P1)*α(E2,Q2,T2,P2)*β(E3,Q3,T3,P3)
XItcp=XNtcp *γ(E1,Q1,T1,P1)*α(E2,Q2,T2,P2)*β(E3,Q3,T3,P3)
XItecp=XNtecp *γ(E1,Q1,T1,P1)*α(E2,Q2,T2,P2)*β(E3,Q3,T3,P3)
となる。ここで、
γ(・)は、前記前処理部において、排ガス中の測定物質は配管内壁での吸着や、夾雑物の濃度、水分濃度、フィルターへの付着、温度、流量、圧力等によりその濃度が変化し、又部品の腐食や劣化により変化するので、その変化を表す係数である。
【0114】
α(・)は、イオン化部においては、構成体内壁での吸着や夾雑物の濃度、水分濃度、温度、流量、圧力により排ガス中の測定物質の濃度が変化し、又部品の腐食や劣化によっても変化するので、その変化を表す係数である。
【0115】
β(・)は質量分析部においては、構成体内壁での付着、温度、圧力により排ガス中の測定物質の濃度が変化し、又検出器の劣化によっても変化するので、その変化を表す係数である。更に詳しくは、前記γ(・)は、夾雑成分の濃度や水分濃度の影響係数をE1とし、温度をT1、流量をQ1、圧力をP1とし、前記α(・)は、夾雑成分の濃度や水分濃度の影響係数をE2とし、温度をT2、流量をQ2、圧力をP2とし前記β(・)は、水分濃度や検出器の劣化の影響係数をE3とし、温度をT3、流量をQ3、圧力をP3とする。
【0116】
更に、上式においては、一般に流量、温度、圧力パラメータは前記前処理部や装置の計測時の設定パラメータであり、固定値とすることが可能である。
【0117】
従って、
XIdcp=XNdcp *γi(E1’)*αi(E2’)*βi(E3’) i=dcp
XItcp=XNtcp *γi(E1’)*αi(E2’)*βiE3’) i=tcp
XItecp=XNtecp *γi(E1’)*αi(E2’)*βi(E3’) i=tecp
となる。上式において、γi(E1’)、βi(E3’)が一定とすると
Ncp=
(XIdcp/αdcp(E2’)+XItcp/αtcp(E2’)+XItecp/αtecp(E2’))/(γ(E1’)*β(E3’))
となり、その総量は各信号の強度の和(係数γ(E1’)*αdcp(E2’)*β(E3’)を含む)で表現出来る。
【0118】
しかし、その絶対濃度は、前記排ガス中に既知の一定濃度の被検出体と同じ試料を注入して、較正する必要がある。つまり、上記係数γi(E1’)*αi(E2’)*βi(E3’)を実ガス中で較正しなければならない。
【0119】
かかる場合の手法として、一般には、前記実ガスをサンプリングしてその濃度を求め、その濃度に対応した信号強度の入出力関係を取り係数或いは目盛の較正を行う。かかる理由として、測定対象物とガスの性状が各サイトで異なり、且つその夾雑成分も異なるためである。
【0120】
又、本装置の出荷時には、前記排ガスと同じ性状の擬似ガスを用いてその濃度に対応した信号強度の入出力関係を較正することも考えられる。しかし、使用されるガスはあくまでも擬似ガスであるので、最終的には、設置後に、再度前記実ガスをサンプリングしてその濃度を求め、その濃度に対応した信号強度の入出力関係を取り係数或いは目盛の較正を行っている。
【0121】
図3はその相違例を示した図である。図3(A)は前記擬似ガスを用いて較正を実施し、設置後に実ガスを導入した場合の濃度と信号強度との入出力関係を示したものであり、図3(B)はその時間的変化の相違を示した図である。
【0122】
いずれの図においても、擬似ガスを用いて較正した入出力関係と実ガスを導入した場合の濃度と信号強度との入出力関係では、その勾配が相違してしまう。これは前述の如く、勾配係数γi(E1’)*αi(E2’)*βi(E3’)が前記擬似ガスでは完全に一致させることは不可能であり、改めて、実ガス導入時に再較正を行うということを意味する。
【0123】
従って、実ガスをサンプリングしてその較正直線を得るので、多大な費用と期間を要していた。
【0124】
本実施例では、かかる問題に対処するため、以下の手段によって解決を図っている。
(1)排ガス導入中に、測定物質とイオン化効率、蒸気圧等の物性値が類似した少なくとも一つ以上の第一の標準物質を前記標準試料発生器1100にて一定濃度で発生させ、そのガス体を内試料接続管1101と配管(s)1102a,bを介して、前記イオン源の上流側に位置する前記フィルタ1004aの上流側部にて前記採集管1000bのラインに注入する。その時の前記第一の標準物質のイオン強度(Is)と前記標準物質の絶対濃度(Ns)の関係と、前記排ガス中の測定物の濃度(xNi)とイオン強度(xIi)の関係は以下となる。
【0125】
XI1s=XN1s*γs(E1’)*αs(E2’)*βs(E3’)
xIi=xNi*γi(E1’)*αi(E2’)*βi(E3’)(i=dcp,tcp,tecp)上式から、
xNi=(xIi/XI1s)*XN1s*(γs(E1’)*αs(E2’)*βs(E3’))/(γi(E1’)*αi(E2’)*βi(E3’))
となり、上記係数γs(E1’)*αs(E2’)*βs(E3’)とγi(E1’)*αi(E2’)*βi(E3’)が同じ場合には、
xNi=xII*(XN1s/XI1s)
となり、前記第一の標準物質の一定濃度(XN1s)に前記装置で観測される強度の比(xIi/XI1s)から前記測定物の濃度を求めることが出来る。
【0126】
しかしながら、その係数“γ(E1’)*α(E2’)*β(E3’)”が全く同じであるという保証はない。従って、
xNi=xIi/(γi(E1’)*αi(E2’)*βi(E3’)/(XI1s/(XN1s*(γs(E1’)*αs(E2’)*βs(E3’))
となり、その係数γi(E1’)*αi(E2’)*βi(E3’)を逐次求めて補正することにより、その精度は向上する。このため、図1に示すように、前記第一の標準物質を前記イオン源の上流側に一定濃度で、前記ラインの前処理ラインに注入する上流側、即ち、前記採集管1000bの上流側において、その流路を2分割した採集ライン(採集分岐管(1)1011と採集分岐管(2)1010)を設け、前記採集管1000aと連通する構成とし、前記採集分岐管(2)1010のライン側のみに前記排ガス中の測定物質のみを除去することが可能な除去手段(フィルタ(s)1012)を具備し、前記フィルタ(s)1012の下流側に、前記排ガス中の測定対象物と同じ第二の標準物質を注入出来る注入管1102bを接続する。更に、前記採集分岐管(1)1011と採集分岐管21010の下流側には、その動作を異にする切り替え手段(バルブ(1)1015、バルブ(2)1016)を具備して、前記試料ガスを導入中は、前記第二の標準物質側の切り替え手段はそのラインを封止しするように動作し、一方他方のライン側の切り替え手段はそのラインを封止しないように動作させる。
【0127】
前記バルブ(1)1015が“閉”で前記バルブ(2)1016が“開”の場合は、前述の如く、前記第一の標準物質を排ガス中に注入している場合に相当する。
【0128】
一方、バルブ(1)1015が“開”で前記バルブ(2)1016が“閉”の場合には、前記第ニの標準物質と前記第一の標準物質とを同時に排ガス中に注入している場合に相当する。この場合の排ガスは、前記フィルタ(s)1012により、前記排ガスの測定物質が除去され他の夾雑成分は透過する性状となる。更に、このガス性状に前記一定濃度の第二の標準物質(XN2s)が前記注入管1102bより混合される。従って、
XI1s=XN1s*γs1(E1’)*αs1(E2’)*βs1(E3’) XI2s=XN2s*γs2(E1’)*αs2(E2’)*βs2(E3’)
xIi=xNi*γi(E1’)*αi(E2’)*βi(E3’) ( i=dcp, tcp, tecp )…(1)
となるが、
γs2(E1’)*αs2(E2’)*βs2(E3’)=γi(E1’)*αi(E2’)*βi(E3’)
が成立し、
γi(E1’)*αi(E2’)*βi(E3’)=XI2s/XN2s=ζ ix …(2)となる。従って
xNi=xIi/(γi(E1’)*αi(E2’)*βi(E3’)/(XI1s/(XN1s*(γs1(E1’)*αs1(E2’)*βs1(E3’))
=xIi /(XI2s /XN2s) /(XI1s/(XN1s*(γs1(E1’)*αs1(E2’)*βs1(E3’))
= xIi/XI1s*XN1s*(γs(E1’)*αs(E2’)*βs(E3’)/ζix)
= xI i /XI1s * XN1s *( ζ 1s /ζ ix) …(3)
=xIi/XI1s*Kη …(4)
となり、装置で観測される排ガス中の測定物の濃度は前記第一の標準物質と排ガス中の測定物質の信号強度の比と前記第一の標準物質の濃度と前記第一の標準物質の係数ζ1sと前記測定対象物の係数ζixとの比の積となる。
【0129】
ここで、前記第一の標準物質の濃度XN1sは、既知の一定濃度であり、固定定数である。従って、仮に前記信号強度XI1sが変化した場合には、その係数ζ1sが変化しているものと判断出来る。
【0130】
即ち、前記XI1sは常時監視して、その値が既定値以内なら、前記ζixも一定であると判断出来るので、ζixは固定値或いは前回の確認値をそのまま適用出来る。一方、前記XI1sの値が大きく変化する場合や既定範囲外なら、前記ζixも変化している可能性が高いので、前記第二の標準試料を添加して、その係数ζixを確認し、或いは補正を行う。この時、前記ζixの係数は前記第ニの標準試料の濃度を少なくとも2点以上(一定濃度XN2sfと0濃度点XN2s0)発生して、その係数を求める(図3参照。XNfs=XN2sf、XIfs=XI2sfで対応)。
【0131】
ζix=(XN2sf−XN2s0)/(XI2sf−XI2s0)
前記第一の標準物質の濃度は上述の如く、既知の一定濃度であるがその係数γs1(E1’)*αs1(E2’)*βs1(E3’)が変化するとその出力も変化するので、その濃度の検証は一般的には間欠的な別の手段にて実施されるが本実施例では、以下の手法により、実施している。
【0132】
XI1s(t0)=XN1s*ζ1s(t0)
XI1s(t1)=XN1s*ζ1s(t1)
▲1▼ζ1s(t0)とζ1s(t1)或いはXI1s(t0)とXI1s(t1)が変化なければ、前記第一の標準物質の濃度は変化していない。
▲2▼ζ1s(t0)とζ1s(t1)或いはXI1s(t0)とXI1s(t1)が変化している場合は、
XI1s(t0)/ζ1s(t0)−XI1s(t1)/ζ1s(t1)=0から
XI1s(t0)*ζ1s(t1)−XI1s(t1)*ζ1s(t0)=fn1(t) …(5)
となり、fn(t)が0を平均として、所定の変動範囲内にある場合に、前記前記第一の標準物質の濃度は変化していないと判断する。かかる手法により、実ガス導入下においても、前記第一の標準物質の濃度を監視出来る。
【0133】
かかる手法は前記第二の標準試料に関しても同様である。即ち、
XI2si(t0)*ζ2si(t1)−XI2si(t1)*ζ2si(t0)=fn2(t)
により、各標準試料に関して、その確認時ζix(式(3))に同時に行えば良い。
【0134】
以上を纏めると、その測定手順と較正は以下となる。図4を参照して説明する。
(1)排ガス導入時の装置出力xIi、XI1sを収集する。この時、前記第一の標準試料の濃度XN1sとXI1sからその係数ζ1so或いはKηoを算出する(図4の▲1▼:連続計測時)。
【0135】
或いは、所定の期間にて、定期的にその係数ζ1s、ζix、Kηを確認することも可能である(図4の▲2▼:定期的係数確認・較正時)。
【0136】
更に、fn(t)を逐次確認することにより、前記第一の標準試料の濃度の変化を確認する。
(2)前記(1)のζ1sにおいて、
▲1▼既定の範囲内の変動(平均値、標準偏差)の場合は、前回の値(係数はζ1so、ζixo)、或いは今回再計算されたζ1so(T2)、ζixo(T2)を適用する。
【0137】
▲2▼既定の範囲外の変動(平均値、標準偏差)の場合は、例えば図4に示す4A部の如くXI1sが大きく変化した場合は前記ζ1sが変化している可能性があるので、前記第二の標準試料を添加して前記ζixを確認しなければならない(図4の▲3▼:係数確認・較正時)。
【0138】
その結果、前記ζix(T3)とζ1s(T3)の値は前回の値に比して変化しているが、その比Kηは変化なかった。このため、その原因は前記排ガスの性状が大きく変化してその係数ζ1sとζixが共に変化したものと推定される。かかる場合は今回の値(ζix(T3))とζ1s(T3)を適用して、計測を継続する。
【0139】
▲3▼既定の範囲外の変動(平均値、標準偏差)であり、且つその比:Kηが前回値と異なる場合は、種々の要因が考えられので、計測を停止する。
(3)排ガス導入時の装置出力xII、XI1sと第一の標準試料の濃度XN1sと確認或いは補正された係数ζix、ζ1sから、排ガスの測定物の濃度xNiを算出する。
【0140】
これによれば、排ガスの導入時でも、逐次較正が可能になり、その精度の確度が向上する。又、前記装置の出力を較正のためにサンプリング等で一部停止することがないので、その期間を延期することが可能である。
【0141】
前記フィルタ(s)1012に具備される前記測定物の付着剤或いは吸着剤としては、種々確認の結果、チタニア、アルミナ、シリカ、ジルコニア等をベースとして無機質のNa2O,Ag2O,Ba2Oを添加した混合体から成る吸着剤とモレキュラーシーブ13X等のいずれでも適用可能であることを見出した。又、これらの比表面積は概ね300〜600程度であり、平均孔径は10〜100オングストロングであった。
【0142】
図5は前記質量分析部の信号強度(マススペクトル)の出力例を示した図である。
【0143】
前述の如く、前記係数γ(・)、α(・)とβ(・)は各構成部の時間的な変化を示す指標でもあり、かかる係数の時間的な変化を個々に捉えることが出来れば、前記装置やそれに付帯する構成体の保守やメンテナンスに好都合である。
(A)係数γ(・)の追跡(フィルタ、配管、除去剤を含む前処理部)。
【0144】
かかる係数は前記第一の標準試料或いは第二の標準試料の濃度0時の出力と下記(B)に示す出力値の差を求めることにより分離可能である。
【0145】
このFγ(t)は一般的には、定量値か或いは単調な増加や減少であるので、所定の閾値を設定することにより、継続して使用可能か或いは保守、メンテナンスが必要であるかを判断出来る。
(B)係数α(・)の追跡(イオン化部)。
【0146】
かかる係数は前記バイパス系の配管系(図1、2に示す試料接続管400、イオン源部10、20、排出管(1)16、排出管(2)36、排出管(s)1005)において、前記試料導入フランジ33と連通する前記排出管(2)36の一端に大気開放用オンオフバルブ(1)362を具備し、前記オンオフバルブ(1)362の下流側で前記排出管(s)1005と前記排出管(1)16の上流側の位置にオンオフバルブ(2)361を具備し、かかるオンオフバルブ(1)362、オンオフバルブ(2)361の操作により、前記イオン源内に空気を流入させ、バイパス管に計測時流入する流れ方向とは逆方向に大気を流入させることにより(測定ガスを遮断)、その時のイオン強度(XIio)を求める。
【0147】
かかる係数は前記第一の標準試料或いは第二の標準試料の濃度0時の出力と下記(C)に示す出力値の差を求めることにより分離可能である。
【0148】
Fαβ(t)=XIio−XIms
かかる場合は、一切前記排ガスと前記標準試料は流入しないので、イオン源部以降の構成体の時間的変遷を示す。又、このFαβ(t)は一般的には、定量値か或いは単調な増加や減少であるので、所定の閾値を設定することにより、継続して使用可能か或いは保守、メンテナンスが必要であるかを判断出来る。
(C)係数β(・)の追跡(質量分析部)。
【0149】
前記イオン源部の針電極:1に印加する電圧或いは電流を遮断すると、前記測定物質や前記標準試料はイオン化出来ない。このため、かかる操作時のイオン強度(XIms)は前記質量分析部の構成体や電気系統部の時間的変遷を示す。
【0150】
Fβ(t)=XIms
このFβ(t)は一般的には、定量値か或いは単調な増加や減少であるので、所定の閾値を設定することにより、継続して使用可能か或いは保守、メンテナンスが必要であるかを判断出来る。
【0151】
図6に前述の各係数の時間的変化の例を示す。
【0152】
期間T1〜Tnにおいて、定期的な係数確認・較正に際し、その係数ζ1s、ζix、Kηは所定の範囲内で変動しており、又各部の安定指標係数:Fγ(t)、Fαβ(t)、Fβ(t)も増加、減少の兆候が全く見られず、安定した計測を実現している。
【0153】
期間Tn〜Tn+1では、何らかの理由により、前記係数ζ1s、ζixの値のみが同じ勾配(θ11=θ21)で減衰してるが、その比Kηは変化していない。このため、この変化は主として前記排ガスの性状の変化により変化した可能性が高いので、継続して計測することが可能である。
【0154】
Tn+1以降では、前記係数ζ1sとζixの時間係数は異なっている(θ13≧θ23)ので、その比Kηも変化している。更に、前記係数Fγ(t)、Fαβ(t)にも単調な増加、減少の兆候が見える。かかる場合は、主としてイオン源部、標準試料、配管系の腐食の進行等種々の原因が考えられるので、もはや計測を継続することは不可能であるので、装置として異常であるという警告を行うと共に、保守或いはメンテナンスのモードに入る。従って、誤った濃度を送出することがないので、信頼性が向上する。
【0155】
図7は前記図6の各係数の監視と前記排ガス中の測定物質を計測する手順の例を示した図である。
【0156】
先ず、本装置を所定の位置に設置した後、前記質量分析部の測定条件や、温度、採取流量等の装置の設定パラメータの設定と定期的な自己診断期間の設定を行う。この時の種々のパラメータは前記質量分析計10000のデータ処理部230に格納する。
【0157】
次に、排ガスを導入しないで、前記各標準試料の濃度と信号強度との関係を取得する。少なくとも、その入出力特性のゼロ点とスパンを求め、かかる値を前記質量分析計10000のデータ処理部230に格納する。
【0158】
次に、排ガスを導入し、測定対象物の測定を開始する。この時、所定の期間或いは、前記排ガスの性状が大きく変化している期間、特に塩化水素や水分量が大きく変化している期間を見極めて、前記係数ζ1s、ζix、Kηや前記各部の安定指標係数Fγ(t)、Fαβ(t)、Fβ(t)を収集する。かかる値が統計的に安定になった時点で、その平均値と標準偏差を前記質量分析計10000のデータ処理部230に格納する。
【0159】
次に、前記データ群が格納された時点で連続的に濃度の計測と前記各係数を計測する。その時、前記設定した自己診断期間以内なら、継続して測定対象物の濃度と各係数が逐次、図6に示すように、前記データ処理部230に追加されて格納される。一方、自己診断期間に達すると自動的にそのモードを自己診断モードに切り替え、前記各係数ζ1s、ζix、Kηと安定指標係数Fγ(t)、Fαβ(t)、Fβ(t)を確認し、それらの値が格納される。
【0160】
かかる時点で、前記図6の異常警告部に示すように、いずれかの係数に有意差を生じた場合は、計測を停止又はホールドして装置が異常であることを警告開示し、較正モードや保守・メンテナンスモードに移る。一方、有意差がない場合は通常の濃度・計測モードに復帰して、濃度の測定を継続する。
【0161】
更に、濃度・計測モードにおいては、前述の如く、前記係数ζ1sのみが常時観測され、前記データ処理部230に追加されて格納される。この時、もし、図6のTn〜Tn+1のような変動が発生した場合には、前記自己診断モードに切り替えてその値を確認して、連続計測の可否を判断する。
【0162】
前記較正モードや保守・メンテナンスモードでは、前述の積み上げられた各係数の各データ群と設定パラメータとが比較、検討されるので、かかる状態の原因追及の一助となり、その再立ち上げ期間を縮減出来、期間短縮を図ることが可能である。
【0163】
図8は前記前処理部とバイパス系に具備した各バルブ1015、1016、361、362と前記濃度・計測モードや前記自己診断モード下における動作状況と前記排ガスと標準試料の流れ形態を示した図である。
【0164】
図に示すように、通常の濃度・計測モードと前記ζ1sのデータ収集では、前記バルブ1015とバルブ362は“閉”であり、且つ前記標準試料1のみがラインに添加されている。このため、前記排ガス中の測定物の濃度を計測出来ると共に、ζ1sの変動を監視出来る。
【0165】
又、自己診断モードでは前記バルブ1015を“開”とし、バルブ1016を“閉”とすることにより、前記排ガス中の測定物質が前記フィルター(s)1012により除去され、新たに一定濃度の第二の標準試料が注入される。このため、排ガス中のζ1sとζixが再度算出されて、確認或いは較正される。更にこの時、前記各標準試料の濃度をゼロにした時の出力値XI2s0、X1s0(ゼロ点)を確認出来る。
【0166】
又、前述の濃度・計測モード或いは自己診断モードに係わらず、前記バルブ361、362を“開”とすることにより、前記イオン源部10内に空気を流入させ、バイパス管400に計測時流入する流れ方向とは逆方向に大気を流入させることにより、前記排ガスを遮断出来る。このため、その時のイオン強度(XIio)は前記イオン源部と前記質量分析部のみの出力或いはゼロ点となる。
【0167】
更に、前述のいずれのモードにおいても、前記イオン源の針電極1の電圧或いは電流を遮断することにより、前記排ガス中のいかなる成分もイオン化せず、又前記各標準試料もイオン化されないので検出されない。従って、かかる場合の観測されるイオン強度は、前記質量分析計と検出器のみの信号強度である。
【0168】
以上、基本的には4つのバルブの開閉操作のみで、4つの観測モードを自在に切り替えることが可能となっており、拡張性と操作性にすぐれ、その作業効率が大幅に改善されている。
【0169】
図9(A)は前記標準試料発生器1100の内部の構成例を詳細に示した図である。
【0170】
本実施例では、前記第一の標準試料11001のラインと、前記第二の標準試料11002のラインと、単にドライエアー等のバックガス源のからガスを連通するラインから構成される。前記標準試料を含むラインには、その上流側(バックガス源側)に開閉バルブVs1、Vs2を具備し、その下流の位置に開放バルブVsr1、Vsr2を具備し、その下流側に前記標準試料が位置する。又前記バックガス源のからガスを連通するラインにはその上流側(バックガス源側)に開閉バルブVsaを具備する。前記各ラインの構成においては、その温度が一定に成るように別途具備される温度調整機器にて制御される(図示せず)。
【0171】
かかる構成によれば、例えば、図9(B)の表に示すバルブ操作を行うことにより、前記第一の標準試料の濃度をそのNf値(スパン)とNo値(ゼロ)に設定出来、さらに前記開閉バルブVsaの調整により、その濃度を所定の値で希釈出来る。例示した図9(B)では、前記開閉バルブVsaの開閉操作により、その半分の値の濃度(Nf*0.5)を設定出来るように配管の管路抵抗と各バルブの抵抗を設定している。この時、前記第二の標準試料ラインには、前記開閉バルブVs2を閉とし前記開放バルブVsr2を開としているので、前記第一の標準試料ガス流が逆流し放出される。このため、前記第一の標準試料ガスを一定濃度で送出出来る。又、前述の前記第一の標準試料ラインと前記第二の標準試料ラインの操作を反転することにより、前記第ニの標準試料ガスを一定濃度で送出出来る。
【0172】
更に、前記第一の標準試料ラインと前記第二の標準試料ラインのバルブ操作を同じにすることにより、前記第一の標準試料ガスと前記第ニの標準試料ガスとを、同時に一定濃度或いはその任意の希釈値で送出出来る。
【0173】
かかる構成によれば、前記標準試料の一定の濃度値を極めて容易な構成で実現出来るので、又その信頼性も高く、且つ小型化が可能なので前記装置内に組み込むことが可能であり、高価な発生器を準備する必要がなく、経済性に富む。
【0174】
図9(C)は前記図9(A)の他の実施例を示した図である。かかる構成においてもその試料の定量的な発生機能は変化しないが、前記各標準試料を単独で管理出来るというメリットがあると共に、制御バルブを少なく出来るのでその動作の信頼性が向上する。かかる場合は前記各内試料輸送管1101、1102は分岐されて独立した配管系(1101a、1102a)としている。
【0175】
図10は、前記図9の第一の標準試料或いは第二の標準試料の内部の構成例を詳細に示した図である。
【0176】
本構成例では、前記第二の標準試料11002a、b、c、d4個を一括に収納した構成例である。前記第二の標準試料としては、前記クロロフェーノール類のジ、トリ、テトラ、ペンタクロロフェーノールが具備されている。一方前記第一の標準試料としては前記第二の標準試料の希少な同位体で置換した物質が具備され、同構成の発生器にて図9(C)の如く構成している。
【0177】
前記各第二の標準試料物質は、試料ホルダ11003内に固体として充填され、部材(S3)11004にて所定の場所に配置され、部材(S2)11005、部材(S1)11006にて形成される容器内に収納され、パッキン11007にて外気と封止される。前記部材(S2)11005には前記収納体にドライエラー等の純粋なガスを送る内試料送出管(1)1103が具備され、かかるガスと前記標準試料のガス化した(蒸発)分子が所定の濃度で混合され、前記部材(S1)11006に具備した内試料輸送管1101より送出される。かかる構成においては、前記標準試料の蒸発温度を一定にするために、温度調節器にその温度が制御される(図示せず)。又、前記試料ホルダ11003への安定化した熱供給と温度勾配の発生を回避するため、前記部材(S3)11004には、多数の孔(1104a、b、c、d、e、f、g)を具備して、前記収納体内のガス流と温度を均一化している。
【0178】
かかる構成によれば、前記標準試料の一定の濃度値を極めて容易な構成で実現出来るので、又その信頼性も高く、且つ小型化が可能なので前記装置内に組み込むことが可能であり、高価な発生器を準備する必要がなく、経済性に富む。
(その他の実施例)
図11に他の実施例を示し、図12は前記図1のバルブ(1)1015、バルブ(2)1016の他実施例にて適用した自動バルブの構成例を示す。
【0179】
測定すべき排ガスをプラントの配管或いは煙突から直接サンプリングする前記採集管1000aの下流側に、採集分岐管(1)1011と採集分岐管(2)1010が具備され、前記排ガスを分流出来る構成としている。前記採集分岐管(1)1011の下流側にはバルブ(1)1016が具備され、その一端が前記採集管1000bと連結する。
【0180】
一方、前記採集分岐管(2)1010の下流側には前記排ガスの測定物質を除去するフィルター(s)1012が具備され、その下流側にバルブ(2)1015が具備され、その一端が前記採集管1000bと連結する。さらに、前記フィルター(s)1012と前記バルブ(2)1015間には、前記検出体或いは測定物の濃度を定量化するために具備される標準試料発生器1100で生成される一定濃度の標準ガスを注入する配管(s2)1102bが接続されている。
【0181】
更に、前記標準試料発生器1100で生成される一定濃度の標準ガスの配管は、前記採集管1000bの下流側で且つ前記フィルタ1004aの上流位置に接続されている。前記標準試料発生器1100には少なくとも、排ガス中の測定物質とそのイオン化効率や蒸気圧等の物質性状が同等な同位体物質と、測定物質と全く同じ物質を標準物質として具備し、所定の一定濃度のガスとして供給される。
【0182】
前記バルブ(1)1016とバルブ(2)1015において、かかる操作が遠隔操作可能であれば、前記装置としては好都合であり、又より省力的な装置と成り得る。このため、本実施例では、かかるバルブの操作を遠隔操作が可能であるように構成した例である。
【0183】
図11、12において、前記各バルブは空気圧駆動方式とし、その駆動部は薄板の耐食性に富むハステロイ等のダイアフラム10154で構成され、その中央部にセンターボス10155を有し、前記センターボス10155には、前記ダイアフラムの圧力受圧面の反対側に、封止体10156が具備される。前記ダイアフラムはその外周部が部材(2)10153と部材(1)10152とに密封接合され、前記ダイアフラムの一方の面と前記部材(1)10152間で駆動室10157を形成する。一方前記ダイアフラムのもう一方の面側と前記部材(2)10153間には、前記排ガスを連通する流路が形成される。この流路は前記部材(2)10153に具備される連通路(21)10153bと連通路(22)10153dと連通路(23)10153eとに連通する。かかる構成において、前記駆動室10157に圧力が加わると、前記ダイアフラムは前記部材(2)10153の方向に変形する。この時、前記部材(2)10153の波形形状部10153aと密着し、その流路抵抗が増大する。更に、その中央に位置する前記センターボス10155も同方向に移動し、前記部材(2)10153に具備された台座1015cと前記封止体10156を介して密着する。従って、前記連通路(21)10153bと連通路(22)10153dとが遮断され、オンオフバルブとして動作する。
【0184】
前記各バルブの駆動室の圧力は、前記装置内に具備したエアーポンプ1021により、接続管(1)1017、接続管(2)1018を介して個々に印加される。又、前記接続管(1)1017、接続管(2)1018の経路内には、例えば電磁弁等の接続開閉バルブ1019、1020が個々に具備され、かかるバルブの操作により、その印加圧力を制御(オンオフ)する。
【0185】
かかる構成によれば、前述の各モードの移行に従って、前記接続開閉バルブ1019、1020の操作を測定手順として組み込むことにより、遠隔にてしかも自動的にその開閉操作を実施することが可能である。このため、益々省力的な装置と成り得るという効果がある。
【0186】
【発明の効果】
本発明により、排ガス中のダイオキシン類、クロロフェノール類やクロロベンゼン類の特定物質を直接煙道から連続して採取することが出来、連続してモニタすることが可能である。
【0187】
又、本発明によれば、イオン化効率の類似する物質、例えば希少な同位体の一定濃度の物質を第一の標準物質として、前記排ガス中に添加し、その信号値と前記排ガス中の測定物との入出力関係から測定物の濃度を算出し、同時に前記第一の標準物質の信号強度と添加濃度の勾配の変動を監視し、更に、必要に応じて前記排ガス中の測定物と同じ物質の第二の標準試料を添加することにより、逐次前記第一の標準物質の信号強度と添加濃度の勾配の変動を較正することにより、前記排ガス中の測定物の濃度を高精度に計測出来る。更に、前述の較正時には、前記装置を停止して別な方法にて較正する必要がないので、その作業費用と工数が大幅に低減出来、且つその立ち上げ期間をも短縮出来る。
【0188】
更に、本装置の前処理部やイオン源や質量分析部の各部毎の効率変遷や変動状態を逐次監視して、自己診断出来るので、保守性やメンテナンス性に優れると共に、信頼性が高く、且つ安定した計測が実現出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の排ガス測定装置の構成例を示す図である。
【図2】イオン源・質量分析計部の構成例を詳細に示す図である。
【図3】試料濃度と装置出力の関係例を説明する図である。
【図4】測定の例を示す図である。
【図5】係数α、β、γの定義を説明する図である。
【図6】各係数(監視)の時間変化例を示す図である。
【図7】測定シーケンスの例を示す図である。
【図8】封止手段の動作と系内流量の方向を示す図である。
【図9】標準試料発生部の系統と動作例を示す図である。
【図10】標準試料発生部の構成例を示す図である。
【図11】本発明の他の実施例を示す図である。
【図12】空気圧駆動型バルブの構成例を示す図である。
【符号の説明】
1…針電極、2…電極(1)、3…電極(2)、4…第一細孔フランジ、5…第二細孔フランジ、6…第三細孔フランジ、7…第四細孔フランジ、10…イオン化室、11…針ホルダー、12…バックガス2供給管、13…HV端子、14…針固定金具、15…イオン化フランジ、16…排出管1、17…ヒータ(1)、20…イオンドリフト部、21…電極1内細孔、22…端子板(1)、30…他のイオンドリフト部、31…電極2内細孔、32…端子板(2)、33…試料導入フランジ、34…試料導入管、35…ヒータ(2)、36…排出管(2)、41…第一細孔、42…スペーサ、43…第一細孔フランジ(2)、44…バックガス1供給管、51…第ニ細孔、52…サイド孔(2)、61…第三細孔、62…サイド孔(3)、71…第四細孔、72…サイド孔(4)、73…ヒータ、76…連結管(B)、80…質量分析部、81、82、83…収束レンズ、84…レンズ電極、85…外筒電極、86…内筒電極、91…ゲート電極、92…エンドキャップ電極、92a,b…エンドキャップ電極の細孔、93…絶縁リング、94…リング電極、101…イオン変換器、103…バックガス3供給管、104…バックガス3接続管、105…バックガス3のボンベ、110…Hv電源、120…ドリフト電源(1)、121、122、123…電源線、130…ドリフト電源(2)、140…イオン検出器、210…ポンプ(1)、220…ポンプ、230…データ処理部、300…イオン検出器、301…可変絞り機器、302…フローメータ、361…オンオフバルブ(2)、362…オンオフバルブ(1)、400…試料接続管、401…可変絞り機器、402…フローメータ、921…つば電極、1000a,b…採集管、1001…試料輸送管(1)、1002…吸引ポンプ、1003…試料輸送管(2)、1004a、b、c…フィルター、1005…排出管(s)、1006…排気ファン、1007…排ガス排出管、1008…差圧発生体(絞り機構)、1009…ポンプ、1010…採集分岐管(2)、1011…採集分岐管(1)、1012…フィルタ(s)、1013…採集分岐管(21)、1014…採集分岐管(11)、1015…バルブ(1)、1016…バルブ(2)、1017、1018…接続管(1)、(2)、1100…標準試料発生器、1101…内試料輸送管(1)、1102…内試料輸送管(2)、1102a…配管(s1)、1102b…配管(s2)、1103…内試料送出管(1)、1019、1020…接続開閉バルブ、1021…エアーポンプ、10000…質量分析計、10151…部材1内の接続管、10152…部材(1)、10153…部材(2)、10153a…波形形状部、10153b…連通路(21)、10153c…台座、10153d…連通路(22)、10153e…連通路(23)、10154…ダイアフラム、10155…センターボス、10156…封止体、10157…駆動室、11001…標準試料(1)、11002a、b、c、d…標準試料(2)、11003a、b、c、d…試料ホルダ、11004…部材(S3)、11004a、b、c、d、e、f、g…部材S3内の孔、11005…部材(S2)、11006…部材(S1)、11007…パッキン。
Claims (5)
- 排ガスを採取する採取部と、採取された排ガスを後段のイオン源に導く導入部と、当該導入部から導かれた排ガスをイオン化するイオン源と、前記イオン源にて生成されたイオンを質量分析する質量分析部と、前記質量分析の結果を処理するデータ処理部とを具備し、前記排ガス中の測定対象物質の濃度を定量する排ガス測定装置であって、
前記導入部に、前記排ガス中の測定対象物質の濃度を算出するために、濃度が既知であり且つ一定の第一の標準物質を添加する添加手段と、前記第一の標準物質の測定値を校正するために、前記排ガス中の測定対象物質と同じ物質である第二の標準物質を添加する添加手段を備え
排ガス導入中に、前記第一の標準物質を所定の濃度(N1s)で注入し、前記第一の標準物質のイオン強度(I1s)と前記第一の標準物質の濃度(N1s)からその入出力関係を求め、前記第一の標準物質の入出力関係を用いて、前記排ガス中の測定対象物質の濃度を算出し、
任意の時期に前記第二の標準物質を添加し、前記第一の標準物質のイオン強度(I1s)の値を校正することを特徴とする排ガス測定装置。 - 請求項1の排ガス測定装置において、
前記イオン源には、前記排ガスを排出する手段と、大気を導入する手段を具備したことを特徴とする排ガス測定装置。 - 請求項1の排ガス測定装置において、
前記第一の標準物質のイオン強度(I1s)とその濃度(N1s)の比(I1s/N1s)を監視し、その値が大きく変動するか或いは規定の範囲から外れた場合に、前記第二の標準物質を添加することを特徴とする排ガス測定装置。 - 請求項第1の排ガス測定装置において、
前記排ガス中の測定対象物を連続して計測中に、所定の時間間隔にて、前記第二の標準物質側を添加することを特徴とする排ガス測定装置。 - 請求項1の排ガス測定装置において、
前記導入部は、チタニア、アルミナ、シリカ、ジルコニアをベースとして無機質のNa2O、Ag2O、Ba2Oを添加した混合物質或いはモレキュラーシーブのいずれかで構成した付着剤或いは吸着剤を備えたフィルタを配置したことを特徴とする排ガス測定装置。
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